これは主に次の理由によります。
まず、蚊は人を刺す時に、血液が固まって傷口が塞がるのを防ぐために、唾液を人の体内に注入します。しかし、蚊は一度吸った人の血液を自らの栄養として消化し、吸収してしまうので、次の人に、その前に吸った人の血液を注入するようなことはしません。
このため、蚊を介して病気が感染するためには、人の血液と共に蚊の消化管の中に入った病原体(ウイルス、細菌、原虫など)が蚊の体内で増殖し、唾液腺に移動して蚊の唾液の中に含まれていなければなりません。
例えば、マラリアの原因となるマラリア原虫は、蚊の消化管内でも繁殖し、蚊の体内で消化管から唾液腺へと移動します。日本脳炎の原因となる日本脳炎ウイルスも蚊の体内で数万倍から数十万倍に増殖し、蚊の体液と共に唾液腺に移動します。
これに対して、エイズの原因となるHIVは蚊やダニの体内では増殖できません。また、蚊の消化管から唾液腺に移動することもありません。このため、蚊やダニを介して、エイズが感染することはありません。
なお、蚊に刺された直後に、蚊を手で叩き潰すと血液が手に付くことがありますが、蚊は一度、人の血液を吸った後、その血液を消化するまで、次の人を刺すことはないので、この時の血液は自分自身のものと考えて良いでしょう。
2000年11月12日