AIDS FAQ


Q.タイのエイズの流行はどのような状況ですか?


 1984年、バンコクでアメリカ帰りの男性同性愛者がタイ初のHIV感染者と報告されました。しかし、少し後の1986年に、中東への出稼ぎ労働者となるための通関/手続きの一つとして、何千人ものタイ人がHIV抗体検査を受けましたが陽性者は一人も出ませんでした。
 タイで最初に爆発的な感染率を示したのは静脈注射をした薬物乱用者のグループでした(1988年)。1992年6月の報告では、タイには3万6600人の静注薬物乱用者がいるといわれていますが,その平均感染率は36%と報告されています。静注薬物乱用者の次には、売春婦に爆発的な感染が認められました。1989年6月のタイの売春婦のHIV感染率は平均3.5%でしたが、その後1990年に9.3%、1991年には15.2%となり、最新の報告(1992年6月)では23.8%にまで上昇しています。売春婦に広がったHIVが次いでその客の男性に広がりました。1992年の時点で男性の性感染症患者HIV陽性率は5.7%、徴兵検査に集まった一般の若者では3.7%でした。タイでは、一般女性には性的な貞淑さを要求する反面、男性の性行動に対しては寛容であるという社会状況が、HIV感染の拡大に拍車をかけているようです。さらにHIVは感染リスクの少ない女性たちに広がり、1989年6月に0%であった国立産院の妊産婦の感染率は、1992年6月には1%と報告されました。タイでは、決まった相手以外と性交渉を行う女性は極めてまれなので、HIV感染はもっぱら夫か恋人からということになります。男性の性行動に変化を与える革新的なプログラムの実施がタイでは緊急に必要とされています。このため政府組織、NGO(非政府組織)ともに、総力をあげて小学生からの徹底した予防教育を行うなど、必死の努力が続けられています。
 タイにおける1993年末の感染者は50万〜100万人と推計されていますが、西暦2000年には350万人(300万〜600万人)の感染者と、年間10万人以上のエイズ患者の発生が予測されています。