AIDS 年表


【1989年】

1月血液製剤によるHIV感染被害救済事業の開始。日本
「後天性免疫不全症候群の予防に関する法律(エイズ予防法)」公布。日本
2月「後天性免疫不全症候群の予防に関する法律(エイズ予防法)」施行。日本
3月エイズ対策閣僚会議が開かれ「エイズ問題総合大網」の一部が改正された。
新しい大網によると、保健所や医療機関によってまちまちだった検査体制を匿名で受けられるように整備する。また、海外での感染が多いことから、海外旅行者や外国で生活している在留邦人に旅行代理店を通じてパンフレットを配り、意識を啓発する。在日外国人の感染者が多いため、英語や東南アジアなどの言葉で書かれたパンフレットを作成したり、外国人のための相談窓口も設置する。
さらに感染者の医療や相談体制を確保するため、医療機関の連携を深めて、受け入れる医療機関を増やしたり、エイズ感染者が手術を受ける場合はエイズ治療に実績を持つ病院で行うことも検討している。この場合個別の病院名は公表しないことにしている。
日本
4月「HIV医療機関内感染予防対策指針」作成(厚生省)日本
5月4月末の世界のエイズ患者が1ヶ月前より約5,000人増え、151,790人になったとWHOが発表。177ヶ国地域の報告を集計したもので、このうち149ヶ国地域が「エイズ患者がいる」と報告している。国別では、
(1)米国    89,501人
(2)フランス  6,409人
(3)ウガンダ  5,998人
(4)ブラジル  5,712人
(5)タンザニア 4,158人の順
日本は本年1月末で97人の患者の届出。
海外
6月第5回国際エイズ会議が、4日〜9日の6日間、カナダのモントリオール市で開催された。昨年のストックホルム会議の7,000人を大幅に上回る約12,000人が参加し、盛況を極めた。しかし、AIDSの病態解明、またワクチンを含めた治療法の開発等に関しては、飛躍的な進展は見られなかった。
アメリカの移民政策に反対するエイズ活動家の活動が目立ち、ゲイのグループをはじめ、エイズの社会的側面を追求する動きが活発であった。
海外
国際エイズ学会理事会において日本は会議開催の立候補を表明。海外
米国では、貧困で医療保険に入れない人々のために連邦政府と州の共同事業として「メディケイド(Medicaid)」という医療費援助制度がある。特にエイズの場合、他の疾患と比べてはるかに多い約40%の患者がこれを受けているという。
しかしこの制度がカバーする医療サービスの内容と費用は限られているため、例えばニューヨーク市立ベレビュー病院では支払能力のない患者の不足分を市の財政で補っている。
海外
米国ニューヨーク市では近年、結核の発生が増加している。1988年結核罹患率は米国全体が人口10万対9なのに対し、ニューヨーク市は10万対32と3倍であった。結核患者の中でエイズを発症した者は、1981年に0.3%であったが、1987年では13.1 %を占めるようになった。逆にエイズ患者の中で結核を発症した者の割合も1981年の0.9%から1987年7.1%まで増加している。
今後結核とエイズの合併問題はますます重要性を増すと当局は予測。
海外
国際会議「放送メディアとエイズ」が12日〜16日の5日間、WHO・厚生省主催、エイズ予防財団協賛のもと、東京、築地の国際研究交流会館で開かれた。
会議には、日本、オーストラリア、香港、ラオス、マレーシア、フィリピン、シンガポールなど主として、アジア・太平洋14ヶ国地域からの報道関係者24名の他、厚生省、WHOの担当者など41名が参加した。
初日には、Abcede氏(WHO西太平洋地域事務局広報担当)がWHOの広報戦略を、また梅内拓生氏(同感染症対策部長)が世界のエイズ現状について講演した他、各国の代表がビデオを用いて報告。2日目以後はグループに分かれて、放送メディアの状況、プライバシーの保護、報道のあり方などが討議された
日本
7月輸入血液製剤でHIVに感染した血友病患者の書道家赤瀬範保氏(愛媛県今治市)と京都府内に住む40歳代の男性が、国と製薬会社2社を相手に総額2億3千万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が28日大阪地裁民事18部(亀岡幹雄裁判長)で開かれた。
被告の国と製薬会社は答弁書で法的責任を否定。また「被害は予想できた」とする原告側主張に対しても「争う」として予見可能性を否定した。
輸入血液製剤をめぐっては26日、赤瀬氏らの提訴(第1次訴訟)に続いて、近畿に住む血友病患者7人が国と製薬会社5社を相手に総額8億500万円の損害賠償を求める2次訴訟を起こしている。
日本
厚生省は先天性血液凝固因子障害患者の医療負担の軽減及び、精神的、身体的不安を解消することを目的として、患者の医療保険の自己負担分を公費負担することとし、保健医療局長名で都道府県知事宛に「先天性血液凝固因子障害治療研究事業実施要網」を通達した。日本
8月エイズ患者の散在性疾患及び重症の網膜炎の原因になることが知られているサイトメガロウイルス(CMV)感染は、痴呆や副腎の炎症など進行したエイズの合併症の発現にも重要な役割を果たしていることが、カリフォルニア大学、サンディエゴ校の2つの研究グループによって明らかにされた。海外
サリバン米厚生長官らは、AZTにはエイズの発症を遅らせる効果のあることがNIHの研究で明らかにされたと発表した。海外
9月米国国立衛生研究所(NIH)のアレルギー・感染症研究所(NIAID)のA.Fauchi所長は米国のエイズの現状についてつぎのように語った。
HIV感染者は100万人から150万人と予測。疫学上、HIV感染の状況は変化しており男性同性愛者の新規感染率は低下している一方で麻薬常用者やその性的パートナー、子供の間での感染が増えている。治療ではAZTなど疾病の進行を遅らせる薬はいくつも出ている。広く使えるようになるワクチンの開発は早くて90年代後半になるだろが、動物実験では期待できる結果が出てきている。
DDIのように副作用が少ないとみられる新薬の開発もある。
海外
10月米ブリストルマイヤーズ社が開発中の治療薬DDI(ジデオキシイノシン)が臨床試験第2段階に入った。早ければ1年半か2年後にも第3段階に入る見通しである。米食品医薬局(FDA)が承認したもので同時にFDAは、試験に参加できない患者にもDDIを無料で配布することを許可した。新薬を求める患者の要望が強く、人道的な見地から取られた特別措置である。ブリストルマイヤーズ社では、相談窓口を設けて患者からの希望に対応している。海外
血友病治療のために投与された非加熱凝固因子製剤によってHIVに感染した患者や遺族、計14家族21人が27日、「HIV感染は危険な薬品を承認した国(厚生省)とウイルス感染を予見できた上に商品に対する安全確保配慮の義務を怠った製薬会社5社の責任」として、総額16億3千3百万円を求める損害賠償請求訴訟を東京地裁に起こした。血友病患者のHIV感染では感染者が大阪地裁に提訴しているが、発症者と死亡者の家族が提訴したのは初めて。被告は国と血液製剤製造販売会社としてミドリ十字・(財)化学及血清療法研究所・血液製剤輸入販売会社のバクスター・バイエル薬品・日本臓器製薬の計5社。日本