AIDS 年表


【1992年】

1月ジュネーブの世界保健機構(WHO)は、1991年末現在で確認された全世界のエイズ患者は446,681人に達したと発表した。加盟163ヶ国政府からの報告に基づく数字をまとめたもので、現実には150万人に近い患者がいると推定している。海外
エイズウイルスに感染しプロバスケットボールを引退し政府エイズ対策委員会にの委員に就任したマービン“マジック”ジョンソン選手はブッシュ大統領と会い、エイズ対策の強化を要請した。海外
シンガポール政府は、エイズ患者やウイルス保持者が、相手に感染の危険を「事前通告」しないで性行為をした場合、1万シンガポール・ドル(約78万円)以下の罰金か2年以内の禁固、またはその両方とする伝染病法の改正案を、議会に提出した。エイズ患者またはウイルス保持者が感染を知って献血した場合も、同様の処罰を受けるとしている。海外
米ロサンゼルス統一学区理事会は、エイズ防止教育の一貫として、公立高生徒にコンドームを無料配布する方針を決定した。配布対象を高校生に限って、親の同意の下で、という条件が加えられている。ニューヨーク、フィラデルフィア、シアトル、サンフランシスコの各学区に次いで全米で5番目の決定。海外
厚生省は、平成3年(1991)末現在、わが国におけるHIV感染の状況を発表。エイズ患者・感染者の急増、在日外国人感染者の急増、異性間・性行為での感染者の増加等HIV感染の新たな局面を迎える。日本
「世界はエイズに真剣です」をテーマに、世界各国でエイズの予防や撲滅のために作成、提示されているポスターを集めた展覧会が2月6日まで東京・銀座で開かれた。
エイズ予防財団などが集めた24ヶ国の約120点のポスターが提示された。1日平均300〜400人の見学者が訪れ、展覧会場のギャラリーは開設以来の大入りを記録した。
日本
2月ジュネーブの世界保健機構(WHO)は、過去8ヶ月間に全世界で百万人以上がエイズウイルスに感染し、このうち大人の感染者の90%以上は異性間の性的交渉が原因とする報告書を発表。
WHOの報告は、1991年4月に次ぐものでこの間に大人90万人が新たに感染、10万人の子供がウイルスに感染した母親から感染乳児として生まれたと指摘。これによって世界のエイズ感染者はこれまでに大人900〜1,000万人、子供100万人の計1,000〜1,200万人にのぼったと推定している。
海外
公衆衛生審議会伝染病予防部会エイズ対策委員会を設置。日本
3月米ロサンゼルス郊外のノースリッジ地区で、注射器を持った男が飲食店などに押し入り、「エイズに感染した血が入っている」と店員らを脅し、現金を奪う「エイズ強盗」が多発しているという報告があった。海外
閣議後の記者会見で鳩山邦夫文部大臣は、文部省が高校生を対象にした本格的なエイズ予防教育を実施する方針を明らかにした。教材はエイズを分かりやすく解説したパンフレットで、基礎知識、予防法、感染者・患者への差別をなくすことなどが盛り込まれ、1992年中に全国の国公私立高校に配布され保険体育やホームルームなどの時間を使って指導される予定。
合わせて現在、小、中、高校教師用に配布している指導手引書を前面改訂し、小学校からのエイズ予防教育にも力を入れる方針であると発表された。
日本
政府は、5年ぶりにエイズ対策閣僚会議を開き、わが国のエイズ対策の基本となるエイズ問題総合対策大網を改正した。改正された大網では、まず海外での感染が依然として多いことから海外旅行者、在留邦人等に対する啓発活動を強化することを重点対策に加えた。
また、外国人感染者の急増に対応するため、入国する外国人への啓発活動の強化、外国語の相談窓口の充実などの対策を取り入れた。さらに、保険所で実施している匿名検査の体制整備を進めることとし、検査日の増加、結果通知までの期間短縮などを図ることとした。感染者・患者に対しては、入院、手術などが受けられる医療機関を確保するとともに、カウンセリング体制の充実を目指して、医療関係者を対象とするカウンセラーの養成事業をさらに進めることも新たに盛り込まれた。
日本
4月フランスのキュリアン研究技術相は、25日付の朝刊紙リベラシオンとの会見でエイズウイルスに関して米国と特許料を折半する合意は誤りに基づいており、フランス人科学者の名誉を守るため合意を破棄、新たに法的措置を取る用意があると言明した。エイズウイルスは米国のロバート・ギャロ博士が1984年に発表したが、フランス側はウイルスはパスツール研究所が1983年に分離し、同博士に送付した試料を盗用したものと主張。
一大科学論争となり1987年に当時のレーガン米大統領とシラク・フランス首相との間で特許料はパスツール研究所と米国立衛生研究所(NIH)の間で折半するとの合意が成立していた。キュリアン研究技術相は近く訪米、サリバン米厚生長官と、この問題を討議するとしている。また、パスツール研究所のマキシム・シュワルツ所長も4月21日、エイズウイルスに関する1987年の仏米政府間合意の修正問題で、法的措置を含めて新しい行動を起こす用意があることを明らかにした。
海外
米食品医薬品局(FDA)の抗ウイルス薬諮問委員会はスイスの医薬品メーカー、ホフマン・ラ・ロッシュが開発したジデオキシシチジン(DDC)を抗エイズ薬として承認するようFDAの長官に答申した。すでに抗エイズ薬として使われているアジドチミジン(AZT)との併用に限って推薦したもので、FDAはAZT、DDI(ジデオキシイノシン)に続く第3の抗エイズ薬としてDDCの販売を認める見通しである。諮問委員会は単独使用による効果は顕著に表われていないとして臨床試験をやり直すように求めたが、AZTとの併用については副作用が軽減し、延命効果があると判断した。FDAが新薬を審査する期間は通常3年かかるが、DDIについては加速審査制度が初めて取り入れられ、約6ヶ月で承認が行われた。海外
エイズ訴訟で全国ただ1人実名を公表している原告石田吉明さん(46)の写真展が京都市のギャラリーで開かれた。石田さんは、血友病の治療に使った輸入血液製剤が原因でエイズに感染し、1989年に原告に加わった。原告代表として名前を公表していた赤瀬範保さんが亡くなったため、顔の見える原告として社会に理解を訴えようと、1991年9月に氏名を公表した。日本
エイズ患者・感染者が急増している問題で、厚生省は患者・感染者の多い自治体の担当者を集めて対策協議会を開催。会議に参加したのは、東京、茨城、長野、愛知、大阪など昨年末現在で患者・感染者が10人を超えた都道府県の担当者。厚生省側は先月開かれたエイズ対策閣僚会議の趣旨などを説明し、今後も患者・感染者の徹底把握と匿名検査体制の推進などを呼び掛けた。自治体担当者の間からは国立病院での患者の受入れ態勢づくりやカウンセラー養成を進めて欲しいなどの要望が出された。日本
5月エイズウイルス感染のため引退した、米プロバスケットボールのマジック・ジョンソン選手は十代の若者向けのエイズ教育用ビデオ「プレイ・イット・セーフエイズについての真実とあなた」をパラマウント映画から発売する予定。
ジョンソン選手と著名なトークショー司会者のアーセナル・ホール氏らがコンドームなどについての話をするという。売上げは全額、ジョンソン選手がエイズ研究のために設立した「マジック・ジョンソン基金」に寄付される予定。
海外
6月第8回国際エイズ会議がオランダのアムステルダムで開催された。
登録者11,373名(うち、報道メディア1,100名。)
NGO関係の活動が特に目立った。例えば、実験動物使用反対、人体実験反対、エイズ治療薬で多大の利益をあげている薬品会社に対する薬価引下げ等種々のスローガンで気勢を上げていた。
海外
DDI(ジデオキシイノシン)承認。日本
8月日本商工会議所及び東京商工会議所は「エイズ対策の拡充について緊急要望」を政府に提出。日本
10月文部省は高校生用教材「AIDS−正しい理解のために」を各高等学校等へ配布。都道府県・指定都市の学校保健担当者を対象とした中央研修会開催。日本
東京商工会議所が企業のエイズ対策の手引きとして小冊子「職場とエイズ」を刊行。日本
公衆衛生審議会伝染病予防会エイズ対策委員会が「エイズ対策に関する提言−エイズについての緊急アピール」を意見具申。日本
厚生省内に厚生大臣を本部長とする「エイズストップ作戦本部」を設置。日本
平田豊氏、日本人の性交渉による感染者としてはじめてエイズ患者であることを公表。日本
12月HIV検査目的のために来日した韓国人男性からHIV2型が発見された。海外
文部省は世界エイズデー・シンポジウム開催。
教師用指導資料「エイズに関する指導の手引」を全面改訂。全国の小、中、高等学校へ配布。(65万部)
高校生用教材「AIDS−正しい理解のために」を高校生全員に配布。(約580万部)
日本
首都圏の33歳の会社員、HIV感染を理由に不当解雇されたとして、東京地裁に地位確保等の訴訟を提訴。日本