AIDS 年表


【1995年】

1月ニューヨークのマンハッタンの市立中学校の前でエイズ予防を呼びかけるパンフレットとコンドームが配られ、中学生にまでコンドームを配布するのが適切かどうか論争が起きている。コンドームを配ったのはエイズ対策団体「ACTUP」のメンバーの高校生らが中心になっている「Youth Education Life Line 」のグループ。市立ワグナー中学校の9年生(日本の中学3年に相当)を対象に4,000個のコンドームとパンフレットを用意してエイズ予防を呼びかけた。
中学生へのコンドーム配布には、父母から「7年生も受け取ることになる。
11歳の子供にコンドームはやり過ぎではないか」とクレームがつき、市教委は「高校の建物に教室がある9年生には配っていいが、中学生の校舎の9年生への配布は禁止」という苦肉の決定を出している。
海外
WHOは最近の推定数を発表。それによるとHIV感染者は1,950万人(うち子供150万人)、エイズ患者は450万人、感染者数は昨年7月1日に発表された推定数より250万人増えており、WHOスポークスマンは「エイズ患者数は着実に増え続け、HIV感染者の増加は南・中央アフリカ地域及び南アジアを中心に一段と拍車がかかっている」としている。各国が公式にエイズ患者と確認した人だけでも100万人を突破したとことになる。海外
HIV感染者の治療やエイズ発症の重症患者のターミナルケアを積極的に行う、わが国最初の専門病棟が国立療養所東京病院に設置され7月にオープンの予定。エイズ治療を目的とした都道府県の拠点病院整備が遅れているなかで、先導的な役割を果たすモデルケースとして期待される。日本
2月厚生省サーベイランス委員会の発表によると、血液製剤による感染例を除いた平成6年1年間の患者・感染者数は前年に比べ71人(19.5%)増で435人。
平成4年の493人に次ぐ多さとなった。国籍・性別でみると、日本人男性は226人(前年比44.9%増)と年間報告数としては過去最高。日本人女性も42名(前年比55.6%増)と大幅増となっており日本人間での感染の急激な拡大が懸念されている。感染原因別では、異性間性的接触が194人と最も多く、次いで同性間性的接触114人、母子感染4人、静脈注射による薬物濫用3人となっている。
日本
未熟児で生まれた新生児出血症の治療で非加熱の血液製剤を投与された少女が、HIVに感染したことが分かった。血友病以外の患者にまで感染がひろがっていたことが確認されたのは初めて。日本
労働省は「職場におけるエイズ問題に関するガイドライン」を策定し、労働基準局長及び職業安定局長の両局長名で各都道府県知事及び都道府県労働基準局長に通知した。
1994年9月の労働分野におけるエイズ問題検討委員会の報告書を踏まえて、10項目の「基本的な考え方」を示し、事業者のエイズ問題に対する自主的な取り組みを促した。
日本
3月9日付の英字紙ネーションによると、ケニア政府は刑務所内でのエイズ感染防止と犯罪激増で満杯状態になっている刑務所の“混雑緩和”のため、こんな緊急避難対策を打ち出した。
既に、エイズが発症している囚人で殺人や強盗など重罪で服役している者は対象から除外される。ケニアのエイズ感染率は、公式統計では全人口の5.4%だが、実際はこれよりはるかに多いとみられ、大きな社会問題になっている。
また、犯罪もここ数年激増傾向にあり、国内に80ある刑務所はすでに、満杯の状態でHIV感染の服役囚は一般の囚人から隔離しようと政府は考えているようなので、エイズの差別を助長するものと反発も予想される。
海外
中央労働災害防止協会は労働者の委託を受けて、全国7ヶ所で産業保健従事者に対するエイズ教育指導者講習会を開催。日本
厚生省エイズ研究班の調査で、日本赤十字社の献血血液からHIVの感染を示す抗体が発見された人は、昨年1年間で36人に上り、過去最高記録となったことが判明。これで献血者10万人あたりの感染率も全国レベルで初めて0.5人を突破した。日本赤十字社では検査代わりの献血を絶対にしないようさらに強力を呼びかけることにしている。日本
HIVに感染した血友病患者らが国と製薬会社に損害賠償を求めている「東京HIV訴訟」で6日、原告の19歳の少年と母親が記者会見し「薬害の被害者として顔も名前も出して裁判を戦いたい。」と自ら実名を公表した。これまでは、原告のプライバシーを守るため匿名を原則に進められており原告が実名を公表したのは初めて。都内に住む川田竜平さん(19)と母の悦子さん(46) 日本
27日「東京HIV訴訟」結審。日本
日本病院会は、エイズの診療に携わる医療従事者専用の電話相談システム「エイズ・ウォームライン」を開設し、日本病院会内の会議室で開所式を行った。診療方法など医学的な事項に限り、質問をFAXで受け付ける。
FAX03-3265-0496
日本
3月末現在でエイズ拠点病院に30県70医療機関が選定されていたが、このうち病院名を公表しているのは、7県26医療機関のみであった。日本
エイズの予防などのノウハウを共有し、各国の対策作りに生かしてもらおうと厚生省はアジア・太平洋地域諸国の行政担当者ならびにエイズ専門家を対象にした2つの研修会をスタートした。
◎第1回「国際エイズ対策行政官研修事業」
 3月6日〜17日の間、都内のホテルで開く。
 厚生省から委託をうけたエイズ予防財団は国際厚生事業団の協力を得て実施。
◎第1回「アジア地域エイズ専門家研修事業」
 2月15日〜3月25日の間、清瀬市にある結核予防会結核研究所にて開催。
 厚生省から委託をうけたエイズ予防財団は結核予防会結核研究所の協力を得て実施。
日本
HIVに感染した男性の元社員(35歳)が、雇用先のコンピューターソフト会社と出向先のソフト販売会社などに、雇用継続の確認と2,000万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決が東京地裁であり、裁判長は「HIV感染を理由とした解雇は著しく社会的相当性を逸脱した違法行為」という判断を示した。
その上で元会社員の解雇を無効とし解雇時以降の賃金計900万円の支払いを命じるとともに、会社側に計600万円の慰謝料の支払いを命じ、原告全面勝訴した。
日本
文部省は、中学生用エイズ教育ビデオ「未来からのメッセージ〜知ってほしいエイズのこと〜」を作成し、全国の中学校等へ配布(18,000本)。日本
小学生用ポスター・パネル教材「エイズってな〜に?」を作成し、全国の小学校へ配布。(ポスター59,000枚、パネル26,000組)日本
4月フランスではHIV感染者数が1994年末で11万人に達した。異性間の感染が広がっているのが近年の傾向。
なかでも、パートナーが感染者であるのを知らなかったといケースが大半を占める。過去2年間で新たに抗体陽性者となった男女の38%が異性間感染であり、このうち女性の感染率が男性の4〜5倍と高い。
海外
米国オレゴン州ポートランドのアメリカ広告博物館ではニューヨークの二つのギャラリーを皮切りに、世界のエイズ・ポスターの巡回展示を開始した。
展示は、地球を覆うHIV渦の惨状をビジュアルに展示するとともに、エイズ克服の優れた啓蒙活動を紹介。展示ポスターは電通EYEと日本のエイズ予防財団のコレクションとE・C・アトウォーター博士(ニューヨーク州ロチェスター在住)のコレクションからなり、48ヶ国、130拠点のエイズ予防ポスターは各国の文化・医療環境を浮き彫りにするもの。
海外
エリツィン・ロシア大統領は、3日エイズ法案に署名。
同法の成立により、ロシア国内に3ヶ月以上滞在する外国人は、HIVの非感染者であることを証明する文書の提出が義務付けられる。8月1日より施行の予定。
海外
第24回医学会総会(名古屋)において、パスツール研究所のリュック・モンタニエ博士が講演。「エイズが広まった80年代以前にも人類は感染していた。患者が急増したのは、地域的に発生する寄生虫や他のバクテリア、サイトメガロウイルス等に感染している等別の要因が重なったため。エイズ治療は抗エイズ薬だけでなくこうした微生物等を抑える対策が大切である」と指摘した。日本
名古屋市で開催された日本医学会総会の2日目(4月8日)、学術講演のメインイベントとして、名古屋とバンコクを結ぶ、衛生ライブ討論会「今、エイズを問う」が行われ、日本、タイ、両国のパネリストにより、今後のエイズ対策の報告を探る活発な意見交換が展開された。日本
輸入された血液製剤によってHIVに感染した血友病患者の代表として、早くから実名を公表して薬害エイズを訴え続けてきた京都市在住の石田吉明氏が21日逝去。被害者救済や感染者の心の支えになるための機関誌「京都からの手紙」を発行。自らの生涯とエイズ問題への思いをつづった共著「そして僕らはエイズになった」があるが、1993年PWA(People with AIDS)賞を受賞。日本