インフルエンザ(H5N1)感染症に対するアマンタジン(Amantadine)の使用


平成9年12月9日
香港政庁保健局からの勧告

インフルエンザ(H5N1)感染症に対するアマンタジン(Amantadine)の使用

 二人の患者から分離されたインフルエンザ(H5N1)ウイルスに対する薬物感受性の研究がアメリカ疾病予防管理センター(CDC)により行われた。これにより、インフルエンザ(H5N1)ウイルスがアマンタジンに対して感受性を有することが明らかにされた。
 アマンタジンは、インフルエンザAの治療と予防のために効果的な薬剤である。ただし、インフルエンザBには無効である。(なお、インフルエンザ(H5N1)ウイルスは、インフルエンザAウイルスの一種である。)
 しかし、インフルエンザウイルスが急速にアマンタジンに対する抵抗を獲得するであろうことを指摘することは、実に賢明である。
 それ故、医師は、インフルエンザの治療または予防に際して、アマンタジンを適切に使うように忠告される。

 医師への参考として、CDC専門家からのアドバイスを含んだ次のガイドラインが勧められる。
  1. インフルエンザ(H5N1)感染が確認された症例

     インフルエンザ(H5N1)患者を治療するために、アマンタジンを1回100mg、1日2回5日間、使うことができる。
     もし、発病から48時間以内に治療が開始されれば、アマンタジンは病気の重症度を減らして、病気の持続時間を短くすることができる。
     基礎疾患として腎臓病を有する人々、子供、高齢者に対しては、投薬量を減らすべきである。
     1歳から9歳までの小児に対しては、5mg/kg/日、最高1日150ミリグラムを2回に分けて、投薬する。
     9歳以上の小児に対しては、成人と同じ量を投薬することができる。しかし、もし小児の体重が45kg以下であるならば、5mg/kg/日、最高1日150ミリグラムを2回に分けて処方する。

  2. インフルエンザ(H5N1)患者に対する臨床的あるいは積極的な接触者

     密接な接触者、すなわち家庭内の接触とインフルエンザ(H5N1)感染患者に対して直接の介護を提供する医療従事者は、医学的な監視下におかれるべきである。
     もし、彼らがインフルエンザと合致する徴候(咳あるいは咽頭炎を伴う38℃以上の発熱)を生じたならば、ウィルス培養のために咽頭分泌物を採取すべきである。
     アマンタジンを使っての治療(1回100mgを1日2回5日間)は、ウィルスの培養結果を待ってから、始めるべきである。

  3. 接触者に対する化学予防

     組織的な発生の調査について責任を有する保健担当官のアドバイスがある場合にのみ、 アマンタジンは、密接な接触者に対する化学予防として、処方されるべきである。

  4. 副作用

     アマンタジンは神経系と胃腸の副作用を起こす。
     健康な成人を対象とした研究によれば、アマンタジンを投与された人の約14%に副作用が発生した。
     神経系の副作用は、神経質、不安、集中困難、めまいなどである。
     顕著な行動変容、精神錯乱、幻覚、興奮、発作のような、より重篤な神経系の副作用も観察されている。
     胃腸の副作用は吐き気、嘔吐、腹痛、便秘などである。
     これらの副作用は、投薬が中止されれば、治まる。
     腎機能障害者と高齢者については、副作用に十分に注意すべきである
     アマンタジンは、てんかん発作障害者に対しては、禁忌である。

  5. その他

     冬季がインフルエンザのピークではないことに注意すべきである。
     インフルエンザではない多くの普通の風邪、あるいはインフルエンザに似た病気がアデノウイルス(adenovirus)、パラインフルエンザウイルス(parainfluenza virus)などの他のウイルスによって起こされる。(これらの風邪の治療または予防には、アマンタジンは効果がない。)


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DEC. 15, 1997