国立ハンセン病療養所

1 ハンセン病について

 ハンセン病は、らい菌によって引き起こされる慢性の細菌感染症の一種であるが、らい菌の毒力は極めて弱く、殆どの人に対して病原性を持たないため、人の体内にらい菌が侵入し、感染が成立しても発病することは極めて稀である。
 また、仮に発病した場合であっても、治療方法の確立されている現在では、早期発見と早期治療により短期間で完治する病気である。

 ハンセン病は、過去においては良い薬がなく、治らない病気とされ、種々の偏見を生じてきたが、1943年(昭和18年)治らい薬(プロミン)が開発されてからは、治る病気になった。特効薬が発見される前に病気が進行した者の中には、末梢神経や皮膚などが冒され、失明、顔や手足に残る変形等の後遺症が強いため、いつまでも病気が治らないと誤解されてきた。

2 国立ハンセン病療養所の現状

(1)施設数 全国13か所

施設名

所在地

開設年月(公立時を含む)

国立療養所 松丘保養園 青森県 青森市 明治42年 4月
国立療養所 東北新生園 宮城県 迫町 昭和14年10月
国立療養所 粟生楽泉園 群馬県 草津町 昭和 7年11月
国立療養所 多摩全生園 東京都 東村山市 明治42年 9月
国立駿河療養所 静岡県 御殿場市 昭和19年12月
国立療養所 長島愛生園 岡山県 邑久町 昭和 5年11月
国立療養所 邑久光明園 岡山県 邑久町 明治42年 4月大阪府大阪市に外島保養園として開設
昭和 9年 9月室戸台風の被害により壊滅
昭和13年 4月現在地に移転・改称し、再建
国立療養所 大島青松園 香川県 庵治町 明治42年 4月
国立療養所 菊池恵楓園 熊本県 合志町 明治42年 4月
国立療養所 星塚敬愛園 鹿児島県 鹿屋市 昭和10年10月
国立療養所 奄美和光園 鹿児島県 名瀬市 昭和18年 4月
国立療養所 沖縄愛楽園 沖縄県 名護市 昭和13年11月
国立療養所 宮古南静園 沖縄県 平良市 昭和 6年 3月
(2)病床数

4,769床

(2000年度入院定床)
(3)入所者数

4,565人

(2000年5月1日現在)
(4)平均年齢

73.6歳

(2000年5月1日現在)
(5)職員定数

3,155人

(2000年度定員 医師144人 看護婦士1,075人 その他1,936人)

3 国立ハンセン病療養所の処遇等の内容

ア)医療の充実

 国立ハンセン病療養所の入所者の平均年齢は、73.6歳(平成12年5月1日現在)と高齢化し生活習慣病等の合併症を有する入所者、更には身体障害及び視覚障害を有する入所者の増加、日常生活上の不自由者度の進行等の問題を抱えており国立ハンセン病療養所の運営に当たっては、次の施策を重点として進めている。

@ 入所者の高齢化に伴う合併症増加対策(入所者の90%以上が何らかの合併症を有している)の一環として、全国に4か所(多度全生園、長島愛生園、菊池恵楓園、沖縄愛楽園)の治療センター(病床40〜50床)を整備し、治療に当たっている。

A 合併症を有する入所者の増加により各種の医薬品の必要度が増えており、医薬品等購入費を増額している。

B 悪性新生物等専門的な医療を必要とする入所者については、専門病院等に入院委託を行い、治療を行っている。

C 医師をはじめ医療従事者の確保に苦慮しており、その確保に全力を挙げるとともに、国立ハンセン病療養所相互問の診療援助及び近隣の国立病院・療養所、医科大学等から診療援助を受けている。

イ)職員の増員

@ 国立ハンセン病療養所においては、入所者の疾病、障害度(不自由度)等に応じて病棟、不自由者棟、その他に区分し、できるだけ入所者の自立を図るような医療、看護及び介護の体制をとっているところである。しかし、高齢化とともに病棟のみならず不自由者棟においても、医療の必要な入所者が増加しており、看護力の強化が必要となっている。このため計画的に看護婦を増員している。

A 視覚障害、肢体障害、感覚麻痺の重複障害に加え、高齢化が急速に進んでいることから、日常生活の介護のため、介護員の増員を図っている。

B その他、身体障害の進行に伴い、リハビリテーション医療(日常生活動作訓練、機能回復訓練等の理学療法、件業療法)の強化を図ってきたが、今後は、福祉室の業務(入所者の金銭管理等)の増加、複雑化に対応していくことが必要となってくる。

ウ)入所者対策

@ 入所者の日常生活の費用として、国民年金法の障害基礎年金1級相当額(平成11年4月から月額83,775円)を入所者給与金として支給している。

A 高齢者及び身体障害者が多いことから、老人、身体障害者、盲人に対する三対策として重点的に取り組んでいるところであり、補装具、老人のおむつ、身体障害者用食器等、老人クラブと盲人クラブの運営費、盲人教養文化責等の予算措置を行っている。

B 療養所の管理作業は従来入所者に委ねて来たが、不自由度の進行と高齢化を理由とした入所者の作業返還の要請を受け、職員に切り替えを進めてきた。しかし、軽作業については引続き入所者の作業としており、作業謝金の予算措置を行っている。

C 盲人及び老人が、園内を歩行する際の危険地域への進入防止と、手摺り用に盲導索や盲導鈴を整博し歩行の安全を図っている。

エ)施設の整備

 入所者の居住者棟整備を計画的に進めるほか、病棟、治療棟及びその他の老朽建物の更新築保守保安整備を重点に行っている。


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2001年05月27日