平成8年5月23日
第四十七回結核予防全国大会

第四十七回結核予防全国大会決議

 我が国の結核の状況は、昭和二十六年に現行結核予防法が制定されて以来、国を挙げての強力な対策の推進により、目覚ましい改善を遂げてさた。そして、一九七〇年代後半には低蔓延の水準に達し、その後も時代に即した対策が進められている。その中で昨年七月、結核予防法が一部改正され、また今年一月には活動性分類が抜本的に、四月からは結核医療の基準の一部がそれぞれ改正された。
 一方、最近の科学技術の進歩、中でも遺伝子工学の進歩には目覚しいものがあり、結核の診断・治療にもそれらの技術が導入されている。これらと並んで、国民の保健・医療についての考え方も、大きく変わってきた。
 しかしながら、結核罹患率の減少傾向は一九七〇年代後半から純化し始め、十五年以上を経過した今日も依然回復していない。そればかりではなく、感染性の高い、塗抹陽性罹患率は、一向に低下の傾向を見せていない。年間の患者発生は少なくなってきたとはいえ、いまだに四万五千人を数えている。今のままで推移すれば、西暦二〇〇〇年までに結核罹患率を人口十万対二十以下にし、小児結核を根絶するという目標の達成は、極めて困難になったと言わざるを得ない。
 さらに質的にみると、患者の高齢化や合併症の増加、感染の世代間格差の増大、地域格差の拡大、患者発見の遅れ、在日外国人患者の増加等々、数多くの、対応の困難な、新しい問題が浮かび上がってきた。
 世界に目を向ければ、昨年一年間に結核によって死亡した患者数は、過去最大の三百万人に達した。WHO(世界保健機関)は、DOTS(直接監視下治療)による治療を中心とし、全地球的な結核対策に取り組んでいる。また米国をはじめ先進諸国では新たた戦略のもとに、再び強力な結核対策を展開し始めた。日米首脳会談で合意したコモン・アジェンダ(地球規模の共通課題)にも結核問題が盛り込まれた。
 我々もいまここで、大きく変貌している結核情勢を認識し、新たなる結核撲滅への道を歩み出さなくてはならない。そのために油断やマンネリズムを排しつつ、国民への結核予防思想の普及を推進し、研究の活性化、行政支援の強化を進めるべきである。
 今大会の支部長会議においては、これらの問題を踏まえて討議を行った。第一分科会では、多様化する結核問題を浮き彫りにし、今後の対策のあり方について検討した。また第二分科会では、これまでの結核対策を振り返り、これから何をすべきか考えた。
 このような討議・考察の結果に基づいて、我々は本会の当初の目標を貫徹し、制圧難病結核を克服するため、次のことを決議する。

一、結核サ−ベイランスの体制を強化・向上させ、地域の特性に合った結核対策を実施するよう、保健所・関係機関を指導すること

一、先進国の一員として、世界の結核対策、とりわけ途上国の結核事情の改善に貢献できるよう努めること

一、新時代の結核対策をより効果的に実施するため、結核に関する研究の推進を支援すること

一、国民への広報活動をより積極的に展開し、特に結核予防婦人会の活動をはじめ、草の娘からの結核対策の推進を支援すること

 以上四項目の実現を期するとともに、国およぴ関係当局に要請する。
 右決議する。


第四十七回結核予防全国大会宣言

 我が国の結核対策は、新たな時代に入った。我々は、新しい時代に適応した結核対策の推進に努めるとともに、研究の発展にも努力しなければならない。
 我々は、結核問題を、再び国民の関心事とするため、広報活動を積極的に行う。
 さらに、世界の結核状況は一層深刻さを増してきたので、その改善に向け、より活発な国際協力を行う。
 右宣言する。


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AUG. 24, 1997