第五十四回結核予防全国大会決議

 日本の結核対策は、結核制圧への新しい歩みを始めた。

 昭和二十六年に結核予防法の大改正が行われて以来、結核のまん延状況は、世界でも類を見ない速さで改善されてきた。しかし、ここ数年問は多剤耐性菌感染による結核患者の増加、集団感染の多発、高齢者や社会・経済的弱者、住所不定者など特定集団からの患者の増加などに加え、結核患者が年齢的、社会的、地域的に偏在しているという問題はますます顕著になり、現行の結核対策では対応が困難な状況が出現している。

 平成十四年三月に厚生科学審議会感染症分科会結核部会で、今後の結核対策はこれまでの集団的・画一的な対策から、より個別的きめ細かな対策へと転換すべきであるとして、結核対策の大幅な見直しの基本的方向が示された。

 一方、発展途上国においては、人口の増加、都市化、HIV感染、人材・資金不足などにより結核問題は史上最悪の状況にある。こうした危機的状況に立ち向かうために、WHOを中心に各国政府やNGOは一致してDOTS政策の普及などを図り、結核根絶のために努力している。

 我々は、これら国内外の結核状況を重大に受け止め、今大会において検討の結果、次のことを決議する。

一、  年齢的、社会的、地域的に偏在化が著しく進むわが国の結核状況に即し、結核対策の見直しをさらに進め、雁息率、治癒率などの一層の改善を図り、世界に誇れる結核予防行政を確立すること。
 
一、  結核診療技術の向上を図るために、医療従事者に対する研修・教育及び結核の研究並びに保健所等地域への結核対策支援活動を強化し、これら活動の中心となる結核研究所に対する国庫補助金を充実させること。
 
一、  結核診療報酬の改善を図り、適正な結核医療を確保すること。
 
一、  結核予防思想の普及啓発を強化して、国民の結核問題に対する認識を高めるために、全国の結核予防会及び結核予防婦人会の活動支援など必要な措置を講ずること。
 
一、  発展途上国の貧困等に基づく結核問題を重大に受け止め、国際協力を強化していくよう努めること。

 以上五項目の実現を期し、国及び関係当局に要請する。

 右決議する。

平成十五年三月二十六日
第五十四回結核予防全国大会


第五十四回結核予防全国大会宣言

 わが国の結核対策は、結核制圧への新しい歩みを始めた。

 年齢的、社会的、地域的に偏在化が著しく進むわが国の結核状況に即し、結核対策の見直しをさらに進め、世界に誇れる結核予防行政を確立する。

 我々は、結核問題に対する認識を高めるための普及啓発活動をより積極的に実施する。

 さらに、発展途上国の結核問題を解決するため、国際協力の推進に努める。

 右、宣言する。

平成十五年三月二十六日
第五十四回結核予防全国大会


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2003年05月26日