基本合意書

 熊本地方裁判所、東京地方裁判所及び岡山地方裁判所に係属するハンセン病違憲国賠訴訟の司法上の解決(裁判上の和解)に閲し、同訴訟全国原告団協議会と国(厚生労働大臣)は、次のとおり基本事項を合意した。  

一 謝罪 

1 国は、本件に関する熊本地方裁判所平成13年5月11日判決(以下、「熊本地裁判決」という。)において認められた国の法的責任(以下、「法的責任」という。)を深く自覚し、長年にわたるハンセン病隔腰政策とらい予防法により患者の人権を著しく侵害し、八ンセン病に対する偏見差別を助長し、原告らを含むハンセン病政策の被害者に多大な苦痛と苦難を与えてきたことたついて真摯に反省し、衷心より謝罪する。  

2 国は、原告らを含む患者・元患者に対し、謝罪広告をはじめ、可能な限りの名誉の回復の措置を講ずる。 
 国は自治体やマスメディアに対しても同旨の要請を行う。 

3 前項の国の行う謝罪広告等の具体的内容、方法については、ハンセン病問題対策協議会において協議する。 

二 一時金の支払 

1 国は、原告らに対し、損害の賠償等として、「ハンセン病療養所入所者等に対する補償金の支給等に関する法律」(以下、「補償法」という。)の補償金支給基準に従って算定された金額と同額の和解一時金を支払う。  

2 ハンセン病患者であった者が提訴後に死亡している場合の当該死亡者の相続人である原告についても、被相続人が生存していた場合に準じて補償法の補償金支給基準に従って算定された金額と同額の一時金を支払う。但し、当該死亡者に係る補償金が支給されていない場合に限る。  

3 ハンセン病患者であった者が提訴時に死亡している場合の当該死亡者の相続人である原告及び入所歴なき原告に対する一時金については、なお協議する。  

4 患者・元患者らが、訴訟手続に基づく一時金の支払と補償法に基づく補償金の支払のどちらの手続を選択するかについては、患者・元患者らの意思を国は尊重するものとする。  

5 国は原告らに対し、同一時金に加算して、以下の金員を支払う。 

(1) 遅延損害金
 熊本地裁判決の認容額相当分に対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで、年5%の割合による金員。

(2) 訴訟費用
 各原告負担の収入印紙代全額。但し、原告らにおいて請求減縮手続をとるなど、できるだけ減額の努力を行う。

(3) 弁護士費用
 熊本地裁判決(5月11日)までに提訴した原告らについては同一時金の8%の割合による金員。
 熊本地裁判決後確定(5月25日)までに提訴した原告らについては同一時金の5%の割合による金員。
 熊本地裁判決確定後補償法施行日(6月22日)までに提訴した原告らについては同一時金の一1%の割合による金員。 

6 国は、早期解決のために可能な限り協力し、本基本合意に基づく和解に基づく一時金の支払を求める原告らに対し、その支給手続が遅れることのないように配慮する。  

三 恒久対策等 

  国は、法的責任を踏まえて、入所者に対する在園保障、社会復帰支援、退所者に対する年金支給等の支援措置、入所者及び退所者に対する医療並びに福祉の整備・拡充などの恒久対策、差別・偏見の除去・解消事業、被害者全員の名誉その他の被害回復事業、真相究明事業、再発防止対策等を実施するよう最大限の努力をする。
 これら対策の具体化については、ハンセン病問題対策協議会において協議する。 

 

平成13年7月23日

ハンセン病違憲国賠訴訟全国原告団協議会 会長

曽我野 一美

厚生労働大臣

坂口 力


2001年09月09日

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