平成8年9月30日

水道におけるクリプトスポリジウム暫定対策指針について
1.趣旨
 本年8月に厚生省水道環境部に「クリプトスポリジウム緊急対策検討会」を設置して検討を進めてきたところであるが、今般、同検討会によって暫定対策指針(案)がとりまとめられた。
2.暫定対策指針(案)の要点
 水道水の濁度が0.1度以下で維持されていれば、特段の問題はないと考えられる。これ以外について、水道水源の汚染のおそれがある場合の予防対策や、万一感染症が発生した場合の応急対応について定めたものである。
1.クリプトスポリジウムによる水道原水の汚染のおそれの判断
 水道の水源の近傍上流域に、人間又は哺乳動物の糞便を処理する施設等の排出源がある場合には、水道原水の糞便による汚染の有無を把握し、クリプトスポリジウムによる水道水の汚染のおそれがあるかどうかを判断する。
 汚染の指標例;糞便性大腸菌群、糞便性連鎖球菌 他
2.予防対策
 クリプトスポリジウムによって水道原水が汚染されるおそれのある浄水場では、浄水処理の徹底(例;膜ろ過法や急速ろ過法等により、水道水の濁度を0.1度以下に維持。)、取水口の移設、あるいは汚水処理施設等の排水口の移設等の実施を図ること。
3.クリプトスポリジウム症が発生した場合の応急対応
 クリプトスポリジウムによる感染症が発生し、水道水がその原因であるおそれがある場合には、水道事業者等をはじめ、都道府県等の関係部局は連携して、水道利用者への広報・飲用指導、水道施設における必要な措置(給水の停止、浄水処理の強化、配水管等の洗浄、クリプトスポリジウムの有無に関する水質検査等)を講ずること。
2.厚生省の対応
1.検討会の報告を受けて厚生省として暫定対策指針を定めたうえ、都道府県、水道事業者等に周知徹底を図る。
2.本指針に基づき、水道事業者等が講ずる措置についてフォローアップする。
3.今後さらに、クリプトスポリジウムに関する知見を集積し、暫定対策指針の見直しを含め検討していく。

水道におけるクリプトスポリジウム暫定対策指針(案)
1.目的
 我が国の水道原水におけるクリプトスポリジウムの存在状況や、浄水場における除去又は不活化などの方法については、今後の本格的な調査研究に待つべき部分も多いが、水道におけるクリプトスポリジウム対策の緊要性に鑑み、水道事業者、水道用水供給事業者及び専用水道の設置者(以下、「水道事業者等」という。)並びに都道府県が当面講ずべき予防的措置や応急措置等について、暫定対策指針を定める。
2.水道水源に係るクリプトスポリジウム汚染のおそれの判断
 水道の水源となる表流水若しくは伏流水の取水施設又は浅井戸の近傍上流域に、人間又は哺乳動物の糞便を処理する施設等の排出源がある場合には、人間又は哺乳動物の糞便による水道原水の汚染の有無を把握することにより、水道水のクリプトスポリジウムによる汚染のおそれを判断すること。
 ※糞便による汚染の指標‥‥糞便性大腸菌群、糞便性連鎖球菌
3.予防対策
 クリプトスポリジウムによる汚染のおそれがある水道水源から取水している水道事業者等は次の対応措置を講ずること。
(1)浄水場での対応
 クリプトスポリジウムによって水道原水が汚染されるおそれのある浄水場では、クリプトスポリジウムを除去することができる浄水処理等を行うこと。
 ※浄水処理方法‥‥膜ろ過法、急速ろ過法、緩速ろ過法
(2)浄水処理の徹底
 ろ過池出口の水の濁度を常時把握し、ろ過池出口の濁度を0.1度以下に維持すること。
(3)水源対策
 表流水若しくは伏流水の取水施設又は浅井戸の近傍上流域にクリプトスポリジウムを排出する可能性のある汚水処理施設等の排水口がある場合には、当該排水口を取水口等より下流に移設し、又は、当該排水口より上流へ取水口等を移設することが恒久対策として重要であるので、関係機関と協議のうえ、その実施を図ること。
4.クリプトスポリジウム症が発生した場合の応急対応
 クリプトスポリジウムによる感染症が発生し、水道水がその原因であるおそれがある場合には、関係者は次の対応措置を講ずること。
(1)応急対応の実施
 水道事業者等をはじめ、都道府県の関係部局は連携して応急対応を実施すること。
 ※関係部局‥‥水道行政担当部局、感染症担当部局、食中毒担当部局保健所等
(2)水道事業者等における応急対応
1.水道利用者への広報・飲用指導等
 下痢患者等の便からクリプトスポリジウムが検出され、水道が感染源であるおそれが否定できない場合には、直ちに、水道利用者への広報・飲用指導等を行うこと。
※広 報 例クリプトスポリジウムには食べ物や水を介して感染します。
クリプトスポリジウムに感染した場合の症状は下痢や腹痛です。
※飲用指導水は1分以上煮沸して飲用してください。
2.水道施設における応急対応
 水道水がクリプトスポリジウムに汚染された可能性のある場合には、給水停止の措置を講じた上で、浄水処理の強化を行うか、または、汚染されているおそれのある原水の取水停止・水源の切り替え等を実施すること。
 その後、配水管等の洗浄を十分に行った上で、クリプトスポリジウムの有無の検査により、飲用水としての利用に支障がないと判断された場合に給水を再開すること。
(3)都道府県等の水道行政担当部局における対応
 関係の水道事業者等、都道府県の感染症担当部局、試験研究機関等と連携を密にして、水道事業者等における対応の円滑な実施を支援するほか、関係都府県にも連絡を密にし、自らも住民への広報に努める等、対策の早期実施に努めること。

最初の Page へ戻る 
DEC. 30, 1996