感染症対策の見直しについて(提言)(案)

平成15年8月1日
厚生科学審議会感染症分科会
 

 我が国の感染症対策については、患者の人権への配慮や保健所を拠点とした感染症対策の推進、予防に重点を置いた国民への普及啓発など、新しい時代に対応した所要の措置が講じられてきたところである。
 近年、ウエストナイル熱やトリ型インフルエンザなどの動物由来感染症や重症急性呼吸器症候群(病原体がSARSコロナウイルスであるものに限る。以下「SARS」という。)など重篤な新興感染症が発生し、人類に脅威を与えている。また、一昨年の同時多発テロ以降、自然発生の感染症だけでなく、犯罪集団が意図的に重篤な感染症の病原体をまん延させることを想定した対応も課題となっている。
 特に、SARSは、航空機等の移動手段が発達した現代社会において、人の移動を介して瞬く間に世界各地に感染が拡がったことから、検疫体制と感染症発生時の迅速かつ機動的な対応の重要性を再認識させられたところである。
 本分科会では、以上のような問題認識を踏まえ、今後取り組むべき感染症対策の課題について、以下のとおり提言を取りまとめたところである。
 厚生労働省においては、本提言を踏まえ、所要の施策の推進に努められたい。

1.新感染症等の重篤な感染症に対する対策の強化(国と自治体の役割等)

(1)積極的疫学調査の機動的な実施
 本年5月にSARS可能性例の外国人が国内を旅行して出国した事例があり、国においても緊急に海外の関係機関等から情報収集するとともに、地方厚生局に職員及び専門家を派遣し、疫学調査等について必要な指示・助言等を行ったが、国と自治体の役割分担が不明確である等の課題が明らかになったところである。
 積極的疫学調査は、感染症のまん延防止のための初動の要であり、今後とも、都道府県等が、現地の実情に応じて迅速に判断して行うことを基本としつつ、公衆衛生上重大な危険が生ずるおそれがあるような場合には国自ら対応することとすべきである。
 通常、感染症の発生情報は、自治体から国に報告され、国(国立感染症研究所)においてまん延防止のための分析を行うことになっている。この結果、国内で感染症の広域的な発生が予想されたり、ある自治体から他の自治体にまん延が拡大するおそれがあるような場合には、国は速やかに関係自治体に対し積極的疫学調査の実施を指示することにより、迅速な情報収集を行うとともに、感染症のまん延の拡大防止に努めることが必要である。
 また、国内で重篤な感染症が発生し、公衆衛生上重大な危険が生ずるおそれがあるような場合には、国は、迅速に情報収集を行い、収集した情報に基づいて機動的な対応をとる必要があることから、自ら職員や専門家を速やかに現地に派遣し、自治体と共同で積極的疫学調査を行い、情報収集に当たることが求められる。
 なお、積極的疫学調査は、国外で感染症が流行した時などでも、国内の感染症の発生やまん延の防止のため必要な場合、調査できることを明確化すべきである。

(2)予防計画に関する緊急時の対応
 現在、都道府県においては、国が策定した基本指針に則して、予防計画を策定しているが、これについては平時から見直しを行うことにより、感染症対策についての危機管理能力の維持向上を図ることがまず重要である。
 新感染症や一類感染症など重篤な感染症については、患者等が発生した場合、発生の報告や移送等の対応について、自治体間や医療機関等において、迅速かつ機動的に連携し、まん延防止を図ることが求められる。しかし、新感染症等の重篤な感染症は、患者の発生例がなかったり稀であることから、いざ患者等が発生した場合、具体的な対応について十分な連携が図られなかったり、混乱が生じるおそれがあり、平時から見直しを行っていたとしてもあらかじめ策定している予防計画だけでは対応しきれない場合も想定される。
 今般のSARSにおいては、海外で感染が拡大している段階において、患者が発生した場合の具体的な行動計画の策定を国から都道府県に対し緊急に要請したところである。各自治体においては、行動計画の策定及び公表を通じて、地域の実情に応じた具体的な対応のシミュレーションを行うとともに、SARSの発生の予防及びまん延の防止のための基盤整備に取り組むことなどを通じて緊急時の対応について関係機関や関係者の間での共通理解が深まるなどの効果があった。
 したがって、新感染症や一類感染症など重篤な感染症については、発生等の危機のおそれが顕在化した場合など公衆衛生を確保する観点から緊急に必要と認める場合には、国が指示等を行い、患者の収容先や移送方法などの緊急時に即したより具体的な対応策を策定し、公表することにより、適切な措置が講じられるようにすることが必要である。

(3)広域的な対応が必要な場合の調整
 感染症のまん延防止のための措置は、感染症の発生状況に即してきめ細かく対応することが必要であるため、現地の実情に応じて迅速に判断できる都道府県等が行うことになっている。
 本年5月の外国人旅行者の事例では、当該外国人の行動が広範囲であったことや既に出国していたため接触者の特定が困難であったことなどから、患者の行動に関する情報の公表や疫学調査の実施方法等について、国が緊急に自治体間の事務を調整しつつ対応したものの、国、関係府県及び保健所設置市の連携が必ずしも十分ではなかったとの指摘がある。
 また、同時多発テロ以降、天然痘ウイルスや炭疽菌などの病原体を使ったテロに対する広域的な対応も求められている。
 緊急時においては、まず国(地方厚生局を含む。この項において同じ。)が主体となって、国と関係自治体間で緊密な連携を図ることが重要であるが、自治体間や国との間で方針等に食い違いが生じた場合には速やかに調整を行う必要がある。
 例えば、都道府県の区域内において市町村間の調整が必要な場合には、域内の予防計画を策定している都道府県で調整を行い、さらに自治体間で調整が必要な場合には国において調整を行うこととするなど、広域調整についてのルールづくりが必要である。
 また、建物封鎖など一部の措置については、重篤な感染症のまん延を防止する観点から必要とされるときに迅速に措置を講じる必要があることから、緊急時においては、国が自治体に対して措置を講ずるよう指示できるようにする必要がある。

(4)重篤な感染症に対する医療提供体制
 我が国の医療提供体制は、2次医療圏ごとに必要な病床等を整備することを基本とし、さらに先進技術を要する医療や発生頻度が低い疾病に関する医療等は、都道府県の区域を単位として対応することとしている。他の都道府県に患者を移送するような対応は、特定感染症指定医療機関への入院が必要な場合のみを想定しており、原則として患者に対する医療の提供は都道府県において対応することとされている。
 このような考え方に基づき、感染症の予防に関する基本指針では、各都道府県ごとに第一種感染症指定医療機関を1ヶ所づつ指定することとしているが、現状では指定は13カ所にとどまっており、重篤な感染症に対する医療提供体制の整備は不十分であると言わざるを得ない状況にある。
 「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(以下「感染症法」という。)の施行以降、国内で一類感染症が発生した例はないが、一類感染症は既知の感染症であることから、各都道府県においては、海外から侵入することも想定し、住民の医療へのアクセスを怠りなく確保するため、各都道府県においては第一種感染症指定医療機関の確保のため、一層の努力が求められる。
 あわせて、厚生労働省においては、第一種感染症指定医療機関の指定が進まない原因について把握・分析を行い、所要の措置を講ずることが必要である。なお、指定の基準について適正かつ現実的なものに見直すことも必要である。
 一方、SARSの事例に照らせば、新感染症の患者が発生した場合の患者のアクセスの確保も重要である。感染症の予防に関する基本指針では、国は特定感染症指定医療機関を数ヶ所指定することとしているが、現在は全国で2ヶ所にとどまっている。厚生労働省においては、新感染症の発生に備え、特定感染症指定医療機関の整備を推進することが求められる。
 なお、こうした指定医療機関の確保と併せて、都道府県等においては、患者の移送体制についてもその強化を図るよう努めるべきである。
 また、新感染症を含めた重篤な感染症が発生する危険性が生じた場合、初期においては、自ら感染の疑いがあると考える者が、指定医療機関以外の医療機関で外来受診することも考えられる。このため、保健所等が住民に対して適切に情報提供を行い、外来患者を対応可能な医療機関(協力医療機関)へときちんと誘導することがまず重要であるが、外来患者が受診する際に適切な感染防止対策を講ずることにより混乱を招かないようにするための措置やこれを促進するための支援策について検討する必要がある。
 さらに、感染の疑いを持つ外来患者が多数に上った場合には、対応する協力医療機関を絞り、感染症の専門医などの人材もそこに集中させるといった措置も必要である。

2.検疫対策の強化

(1)検疫所における医師の診察
 今回のSARSの事例のように海外で発生した感染症については、国際機関・国際協力等を通じた海外からの情報収集とともに、発生の予防という観点から検疫は非常に重要な対策となる。したがって、必要なときに適切な措置を講ずることを可能にしておくための見直しが必要である。
 SARSについては、検疫法に基づく政令指定により、医師の診察等の措置ができることとなったが、政令指定までの間、流行地域からの入国者であって発熱等の症状がある者に対しては、本人の同意の下に医師による診察を実施したところである。検疫所における診察の実施については、現場で拒否等の問題は生じていなかったものの、検疫法では、検疫所長は、必要な質問はすべての入国者に対して行えるが、医師による診察が可能なのは、原則として検疫感染症(一類感染症、コレラ、黄熱)に限定されている。新感染症は、検疫感染症と同様、国民の生命及び健康に重大な影響があることから、今回のSARSのように病原体が明らかでない等の段階でも、海外で発生した新感染症の症例等から、検疫所長が必要と判断した場合は、医師による診察が実施できるようにすべきである。
 また、検疫感染症ではないマラリア、デング熱などについても、これらの感染症が国内でまん延することを防止する観点から、同様に、医師による診察を実施できるようにする必要がある。

(2)感染が疑われる者に対する対応
 SARSの流行地域からの入国者であって発熱等の症状はないがSARSの感染が疑われる者については、検疫法に基づき入国後の国内の連絡先を確認するとともに、入国者の同意の下に、国において、10日間体温を含めた健康状態の報告を求める措置を実施したところである。
 感染症は、通常、発症までに潜伏期間があることから、検疫所において感染症に罹患した可能性がある入国者を全て把握することには限界がある。このため、特に、SARSのように感染経路等が明らかになっていないものについては、質問票においてある程度広めにスクリーニングする必要がある。
 一方、検疫所においては、感染症の感染が疑われる入国者を確認しても、新感染症の所見のない者又は感染症法で入院の措置が必要でない者については、隔離又は停留の措置を行うことにはなっていない。
 今後は、海外からの病原体の進入に対して万全の対策を講ずるため、検疫所で行ったスクリーニングの結果、重篤な感染症に感染している疑いがある入国者については、入国後、潜伏期間を考慮した一定期間、検疫所に対し、体温などの健康状態を報告することを義務付けることが必要である。
 なお、感染症の国内への侵入の危険性が顕在化し、これを防止するために平時よりも手厚い検疫業務を行う必要がある場合には、各検疫所において統一的な業務の遂行や人権への配慮から対応する期間をあらかじめ決めておくといった運用が求められる。

(3)重篤な感染症に関する出国時の健康状態の確認
 SARSなどの重篤な感染症については、国際的な封じ込めが求められている。 我が国が重篤な感染症の流行地域になった場合、国際的封じ込めについて万全を期す観点からは、出国時の対応として、出国者に対する健康状態の確認や感染の疑いがある者に対して出国の制限を行うこと等の対策が考えられる。しかし、こうした措置を法律上に位置付けた場合には人権上大きな制約を課すこととなるおそれがあることから、今後、十分な検討を行う必要がある。

3.動物由来感染症に対する対策の強化

(1)動物に対する輸入届出制度の創設
 現在、我が国は、世界各地から多種・膨大な野生動物等を家庭用のペット等として輸入しているが、感染症法の施行以降、海外においては、ウエストナイル熱やトリ型インフルエンザ、サル痘など動物由来の感染症が次々に発生している。
 現在、感染症法及び狂犬病予防法において、サル(エボラ出血熱)、プレーリードッグ(ペスト)、イタチアナグマ・タヌキ・ハクビシン(SARS)、イヌ・ネコ・キツネ・スカンク・アライグマ(狂犬病)については、輸入禁止又は検疫の措置を実施しているが、これら以外の動物は、公衆衛生上の安全性が不明な状態で輸入されている。
 海外からの病原体の侵入を防止するため、感染症法に基づき輸入禁止又は検疫を実施することは可能だが、(1)輸入量が膨大(哺乳類と鳥類だけで約100万匹)であり、かつ動物の種類も多く、全ての動物に対し検疫を行うことは物理的に不可能であること、(2)ペットの流通ルートが複雑多岐であり、問題が発生してから感染経路を把握するのは非常に困難であること、(3)大部分の動物が航空機により1〜2日で輸入されている実態があること、等を踏まえると、海外で感染症の発生があってから輸入禁止又は検疫を実施する方法だけでは、対応が遅れるおそれがある。
 また、国際獣疫事務局(OIE)が定める国際動物衛生規約(OIE規約)でも、感染症のまん延を国際的に防止する観点から、輸入国は動物由来感染症の原因となる動物について国際獣医証明書の提出を要求すべきである、としている。
 このため、動物(哺乳類及び鳥類。家畜を除く。)の輸入について、現行の輸入禁止及び検疫の措置に加え、輸出国で衛生管理を行い感染症の臨床症状がなかった旨の衛生証明書の添付や数量等の届出を義務付ける輸入届出制度を創設すべきである。
 なお、我が国では、ペットの餌用などにねずみ等の動物の死体を輸入しているが、動物の死体についても、感染症を媒介するおそれがあることから、新たに設ける輸入届出制度等の対象とすべきである。

(2)四類感染症に分類されている動物由来感染症に関する措置
 感染症法では、四類感染症は、感染症の発生動向調査を行い、必要な情報を国民や医療関係者に提供していくことによりまん延を防止する感染症であり、健康診断や消毒等のまん延防止のための義務的措置を講ずることにはなっていない。
 しかし、動物由来感染症対策を強化するためには、ウエストナイル熱やオウム病など動物由来感染症であって、現在、四類感染症に分類されているものについて、感染の原因となる動物に対する輸入規制、獣医師の届出、消毒、蚊の駆除や物件に係る措置がとれるようにする必要がある。
 また、国外における動物由来感染症の発生状況等を踏まえ、感染症の対象疾患として、サル痘、高病原性トリ型インフルエンザ、野兎病などの新たな動物由来感染症を規制の対象に追加することが適当である(4.(1)参照)。

(3)ねずみ・昆虫等の調査
 動物由来感染症の発生及びまん延を防止するためには、原因動物に対する輸入規制等の措置に加え、蚊やねずみ等の病原体を媒介する動物や自然宿主の生息状況を調査することにより、感染症の流行をあらかじめ予測することが、早期かつ的確な感染症対策を講ずる上で重要である。
 現在、検疫所では、海外からの動物を媒介した病原体の侵入を監視する等の観点から、海港及び飛行場の一定区域において、ねずみ・昆虫等の調査が行われている。また、一部の自治体でも、病原体を媒介する動物の生息状況の定期的調査が行われているところであるが、早期に有効な感染症対策を講じる観点から、自治体における調査をより強化する必要がある。
 このため、積極的疫学調査として、都道府県等が行う病原体を媒介する動物に関する生息状況の調査やその死体の管理者に対する調査を位置付けることが必要である。

(4)獣医師及び動物を取り扱う者の責務
 動物由来感染症の発生を早期に発見しまん延を防止するためには、獣医師からの届出が迅速かつ的確に行われることが大変重要である。このため、獣医師について、動物に由来する感染症のまん延防止の責務を明確化する必要がある。
 また、動物に由来する感染症対策には、動物輸入者、動物販売店、動物展示施設等をはじめとする動物を取り扱う者(畜産農業、試験研究等は除く。)の衛生管理が不可欠である。このため、動物(家畜、実験動物を除く。)を取り扱う者について、動物から人に感染する感染症が発生し、又はまん延しないように必要な措置を講じるよう努めなければならない旨の責務を明確化する必要がある。

(5)動物由来感染症に関する国民への情報提供の推進
 我が国がペットの輸入大国であること等にかんがみ、国、自治体においては、動物由来感染症について、国民への正しい知識の普及啓発に積極的に努めることが必要である。
 また、人と動物に共通する感染症のまん延を防止するためには、医学と獣医学の分野が協力して対応することが重要であり、都道府県等では動物由来感染症対策の推進において、医師と獣医師の連携や獣医師の活用を図ることが期待される。

4.感染症法の対象疾患の追加等

(1)感染症法の対象疾患の追加等
 感染症法施行後の国内外における感染症の発生状況等を踏まえ、動物由来感染症、海外で発生が見られ国内での発生が危惧される新興感染症、集団感染等に対応する観点から、以下の疾患を感染症法の対象疾患に追加することが適当である。





天然痘、SARS、急性A型ウイルス肝炎、急性E型ウイルス肝炎、サル痘、ボツリヌス症、高病原性トリ型インフルエンザ、野兎病、レプトスピラ病、ニパウイルス感染症、リッサウイルス感染症、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌感染症、ビブリオ・バルニフィカス感染症、RSウイルス感染症




 これらの疾患については、天然痘、SARS、急性A型ウイルス肝炎及び急性E型ウイルス肝炎を除き、健康診断等の三類感染症以上の措置は必要ないと考えられるので、現行の四類感染症に追加することが適当と考えられるが、一部の疾患については、原因となる動物に対する届出等の規制や消毒等の対物措置ができるようにする必要がある。
 天然痘は、感染力及び罹患した場合の重篤性に基づく総合的な観点から見た危険性が極めて高い感染症であり、患者、擬似症患者及び無症状病原体保有者について入院等の措置が必要であるので、現行の一類感染症に相当する措置を講じることが適当である。
 SARSについては、本年7月に指定感染症として指定を行ったところであるが、患者が発生した場合には原則入院が必要となること、海外において建物への立入り禁止措置が講じられていること、日本にはまだ病原体が侵入していないこと等を勘案すれば、現時点では天然痘と同じく一類感染症としての措置をとれるようにしておく必要がある。しかしながら、SARSについては、患者が入院する場合の医療機関は必ずしも第一種指定医療機関でなくてもよいなど、一類感染症でとりうる措置の全てを行使する必要はないことから、仮に患者が発生した場合には感染症法の趣旨に沿って必要最小限の措置を取り、冷静な対応を取ることを国・自治体に求めたい。
 急性A型ウイルス肝炎及び急性E型ウイルス肝炎は、就業制限の措置が必要であるので、現行の三類感染症に追加するのが適当である。
 また、次に掲げる動物由来の感染症については、国内での発生、まん延を防止するためには、国民等に対する情報提供だけではなく、媒介動物の輸入規制、消毒、ねずみ等の駆除、物件に係る措置を講ずることができるようにする必要がある。





ウエストナイル熱、エキノコックス症、黄熱、オウム病、回帰熱、日本脳炎、Q熱、狂犬病、クリプトスポリジウム症、高病原性トリ型インフルエンザ、コクシジオイデス症、サル痘、ジアルジア症、腎症候性出血熱、炭疽、ツツガムシ病、デング熱、日本紅斑熱、ハンタウイルス肺症候群、Bウイルス病、ブルセラ症、発疹チフス、ボツリヌス症、マラリア、野兎病、ライム病、レジオネラ症、レプトスピラ病、ニパウイルス感染症、リッサウイルス感染症




(2)院内感染対策との関係
 現在、四類感染症の一部には、院内感染を想定しているものも含まれている。
 こうした感染症については、医療機関等から情報収集は行われているものの、収集した情報がどのように院内感染対策に活用されているのかが不明確であるとの指摘や、院内感染症を感染症法の体系で措置するべきなのかといった意見もある。
 院内感染症対策については、サーベイランス事業など、種々の施策について検討が行われているところであるが、未だ院内感染対策そのものの体系や位置付けがはっきりしている段階に到達しているとは言い難い状況にある。
 このような段階で院内感染を想定した感染症を感染症法の対象から除外すれば、積極的疫学調査を実施する上で問題が生じることも考えられることから、現時点では現行の四類感染症として位置付けておくことが適当であるが、感染症法と院内感染対策との役割分担についても十分な検討を行うことが必要である。

(3)サーベイランスの充実
 感染症対策においては、感染症の発生動向を早期に把握し、有効な対策を講じる観点から、的確なサーベイランスの実施が重要である。
 現在のサーベイランスの実施方法においては、届出後に診断が変更になった場合の取扱いが明確でない、予後に関する情報が十分に把握されていない、病原体サーベイランスのための検査検体の提供や管理が不十分である等の問題点が指摘されている。
 これらについては、サーベイランスの実施方法に関する技術的ガイドラインの策定等により、的確なサーベイランスの実施が図られるようにする必要がある。その際、自治体においては、症候群サーベイランスや病原体サーベイランスの実施について、地方衛生研究所を活用したサーベイランスの体制整備が図られることが重要である。
 また、情報収集の精度を高める観点から、新感染症を含めた診断基準(報告基準)の周知を行うことも重要である。
 なお、院内感染サーベイランスについては、院内感染の定義や届出の基準等について技術的な課題があり、引き続き検討が必要である。

(4)エイズ・性感染症の発生動向調査
 エイズ・性感染症については、患者のプライバシー保護の観点から、感染症が発生した場合の届出事項は現行どおりとし、さらに把握が必要な項目については、調査研究事業により感染者の理解を得て行うことが適当である。
 また、一部の疾患については、感染性の有無の観点から、報告基準の見直しを行うことが適当である。

(5)感染症に係る人材育成
 新感染症等の重篤な感染症に係る対策を強化するため、積極的疫学調査に携わる感染症に関する情報収集・分析についての専門家、感染症指定医療機関等において患者の治療を行う医療スタッフなど、様々なレベルの専門性を備えた感染症に関する幅広い人材の育成が必要である。
 また、医師、看護師などの養成課程においても、感染症に対する教育の充実を図る必要がある。


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2003年08月04日