予防接種法の一部を改正する法律案制定要綱について(諮問と答申)

平成12年2月9日 公衆衛生審議会会長答申
平成12年2月9日 厚生大臣諮問

公衛審第四号
平成十二年二月九日

厚生大臣 丹羽雄哉 殿

公衆衛生審議会会長 久道茂

予防接種法の一部を改正する法律案制定要綱について(答申)

 平成十二年二月九日厚生省発健医第二七号で諮問のあった標記の件について、本審議会の意見は、下記のとおりである。

 今回の諮問案については、了承する。


厚生省発健医第二七号
平成十二年二月九日

公衆衛生審議会会長 久道茂殿

厚生大臣 丹羽雄哉

諮問書

 予防接種法(昭和二十三年法律第六人号)の一部を別添要綱により改正することについて、貴会の意見を求めます。


(別添)

予防接種法の一部を改正する法律案制定要綱

第一 改正の趣旨

 予防接種法及び結核予防法の一部を改正する法律(平成六年法律第五十一号)附則第二条の規定及び近年の高齢者におけるインフルエンザの発生状況を踏まえ、インフルエンザを予防接種の対象疾病とし、あわせて、予防接種の対象疾病を類型化する等所要の措置を講ずること。

第二 改正の要点

  一 対象疾病に関する事項

1 予防接種法(昭和二十三年法律六十八号)の定めるところにより予防接種を行う疾病は、一類疾病及び二類疾病とすること。

2 現行の予防接種の対象疾病を一類疾病とし、インフルエンザを二類疾病とすること。

  ニ 被接種者の責務に関する事項

 現行の予防接種の対象者に課されている予防接種を受けるよう努める義務を、二類疾病に係る定期の予防接種の対象者については課さないものとし、二類疾病に係る臨時の予防接種の対象者については課すものとすること。

  三 予防接種による健康被害の救済措置に関する事項

1 一類疾病に係る予防接種及び二類疾病に係る臨時の予防接種による健康被害の救済のための給付は、現行の給付とすること。

2 二類疾病に係る定期の予防接種による健康被害に対する給付は、次のとおりとし、それぞれ次に定める者に対して行うこと。

ア 医療費及び医療手当
 予防接種を受けたことによる疾病について政令で定める医療を受ける者

イ 障害児養育年金
 予防接種を受けたことにより政令で定める程度の障害の状態にある十八歳未満の者を養育する者

ウ 障害年金
 予防接種を受けたことにより政令で定める程度の障害の状態にある十八歳以上の者

エ 遺族年金又は遺族一時金
 予防接種を受けたことにより死亡した者の政令で定める遺族

オ 葬祭料
 予防接種を受けたことにより死亡した者の葬祭を行う者

3 二類疾病に係る定期の予防接種による健康被害救済のための給付の額、支給方法等については、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構法(昭和五十四年法律第五十五号)第二十八条第一項及び第三項の規定に基づく政令の定めを参酌して定めるものとすること。 

  四 予防接種の推進を図るための指針に関する事項

1 厚生労働大臣は、一類疾病及び二類疾病のうち、特に総合的に予防接種を堆進する必要があると厚生労働省令で定めるものについて、当該疾病に応じた予防接種の推進を図るための指針を定めなければならないものとすること。

2 当該疾病について感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成十年法律第百十四号)第十一条第一項の規定により同項に規定する特定感染症予防指針が作成されるときは、指針は、当該特定感染症予防指針と一体のものとして定められなければならないものとすること。

第三 施行期日等

 この法律は、平成十三年四月一日から施行するものとすること。

 関係法律について所要の規定の整備を行うものとすること。


(参考)

公衛審第二号
平成十二年一月二十六日

厚生大臣 丹羽雄哉 殿

公衆衛生審議会会長 久道茂

予防接種制度の見直しについて(意見)

 当審議会は、予防接種法の平成六年改正法附則第二条の規定に基づき、平成六年改正の後の予防接種制度を取り巻く諸問題を総合的に検討して、今後の予防接種制度のあり方を提言するため、当審議会感染症部会の下に予防接種問題検討小委員会(委員長 神谷齊 国立療養所三重病院院長)を設置して所要の検討を行ってきた。同小委員会においては、平成十年六月から計十八回にわたる審議を重ね、同年十二月二十一日の中間報告の公表を経て、平成十一年七月五日に報告書を取りまとめ、同日、感染症部会がその報告を受けたところである。

 当審議会は小委員会において取りまとめられた報告書が、今後の予防接種制度のあり方を提示する提言として基本的に適当であると考える。なお、当審議会は、小委員会から感染症部会に検討を委ねられていた事項、同報告書の中で特に重点的な対応を図る必要がある事項、その他同報告書に明示的な記載はないものの対応を図る必要がある事項について、追加意見として以下に取りまとめたので、今後、厚生省においては、小委員会の報告書及び当審議会の追加意見を踏まえて、更に検討を進め、所要の施策の推進に努められたい。

 予防接種法の対象疾病の中で、特に予防接種を推進していく必要がある疾病について、当該予防接種を推進していくための総合的な指針を策定し、この指針に予防接種の意義、実施体制その他の予防接種の推進に関する重要事項を定めるべきである。

 高齢者に対するインフルエンザの予防接種の実施に先立ち、接種に対する同意の取り方の検討、禁忌の者を的確に把握するための問診票の作成等の実務的な作業を進めることが必要である。

 小児等に対するインフルエンザワクチンの取扱いについては、その有効性等に関する調査を行い、その結果に基づいて対応に関して早急に検討していくべきである。

 水痘、流行性耳下腺炎及び肺炎球菌性肺炎に対する予防接種の予防接種法上の取扱いについては、今後の調査研究等を踏まえながら更に引き続いて検討していくべきである。

 平成六年の予防接種法の改正において、被接種者の接種に向けての対応が従来の「義務接種」から「努力義務接種」に変更されたところであるが、平成六年以降の状況を考慮すると、再び「義務接種」に戻すべき積極的な理由はなく、今後とも国民の理解を前提として予防接種を行う現行の体系を基本として予防接種対策の推進を図るべきである。

 風疹の予防接種については、中学生における個別接種の推進の観点から、保護者の同伴の取扱いを柔軟に考えることと合わせて、平成六年改正の経過措置としての中学生の風疹の予防接種対象者であって、未だ接種を受けていない者を対象として、予防接種法に基づく風疹の予防接種を勧奨する制度的対応を図るべきである。

 本意見に基づく予防接種制度見直し後の新たな制度の施行については、市町村における体制整備、ワクチン供給体制の整備、禁忌の者を的確に把握するための基準を作成するために要する期間等を勘案し、必要十分な準備期間をもって行うことが必要である。

(追加意見)

 高齢者を対象としてインフルエンザの予防接種を行うため、予防接種法の対象疾病にインフルエンザを追加するべきである。

 インフルエンザを予防接種法の対象疾病に位置づけるに当たっては、高齢者に係るインフルエンザの予防接種が現行法の七つの対象疾病の予防接種と接種目的等が異なることから、現行法の七つの対象疾病を第一類型、インフルエンザを第二類型として、対象疾病を類型化するべきである。

 第一類型及び第二類型の対象疾病に対する予防接種については、予防接種法に基づいて予防接種を実施するものであることから、市町村が実施しやすく、被接種者が接種医が、安心して、接種を受けやすく、また、接種することができるように、定期の予防接種としての体制を活用していくべきである。

 第一類型の対象病については、集団予防目的に比重を置いた予防接種を行うことから、被接種者の接種に向けての努力義務、健康被害救済の内容等について、現行法と同様の取扱いを継続するべきである。

 第二類型の対象疾病については、個人予防目的に比重を置いた予防接種を行うことから、以下の点で第一類型の対象疾病と異なる制度的対応を図るべきである。

・ 被接種者に対し接種に向けての努力義務は課さないこととし、接種を受けるか否かについては被接種者の判断を尊重するべきである。

・ 接種費用については、被接種者に対して応分の費用徴収(負担)を求めることが適当と考えられる。

・ 健康被害救済については、第二類型の予防接種に起因する健康被害を救済する場合にも公費で救済給付をすることとするが、給付水準は接種目的や努力義務が課されていないこと等を勘案して、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構法の給付水準を参酌したものとするべきである。


 最初の Page へ戻る 

2000年10月24日