平成7年12月

国立病院等の広域災害医療活動要綱

第1 目的

 本要綱は、厚生省防災業務計画第一編第三章第九節に基づき、広域災害が発生したとき又は大規模地震対策特別措置法に基づく警戒宣言が発令されたときに国立病院、国立療養所及び国立高度専門医療センター(以下「国立病院等」という。)が展開すべき災害医療活動に関する基本的事項を定め、災害時における国立病院等の迅速かつ適切な対応を図ることを目的とする。

第2 基本的考え方

1 本要網に定める災害医療活動の実施に当たっては、国立病院等における日常の業務の遂行に著しい支障を生じさせないよう配慮されなければならない。

2 本要綱に定める災害医療活動の実施に当たっては、日本赤十字社が行う災害救護等他の施策と十分調整を図り、円滑かつ適切に対応しなければならない。

3 各国立病院等の長は、災害により自らの施投が被災する場合をも想定しつつ、災害時における迅速かつ適切な対応を図るためにあらかじめ病院災害マニュアル(以下「病院マニュアル」という。)を作成するとともに、職員に対してその内容の周知徹底を図らなければならない。

第3 広域災害に対する備え

1 防災拠点国立病院の指定

 防災拠点国立病院として、国立札幌病院、国立仙台病院、国立病院東京災害医療センター、国立名古屋病院、国立金沢病院、国立大阪病院、国立呉病院、国立善通寺病院、国立病院九州医療センター及び国立国際医療センターの10か所を指定する。

2 連絡体制の確立

(1) 各国立病院等の長はあらかじめ院内関係者及び地方医務(支)局との連絡体制を定め、病院マニュアルに明記すること。

(2) 各地方医務(支)局長はあらかじめ地方医務(支)局内関係者及び本省国立病院部との連絡体制を定めておくこと。

(3) 連絡体制については、毎年9月1日に、各国立病院等の長は地方医務(支)局に、各地方医務(支)局長は本省国立病院部にそれぞれ登録するとともに、必要に応じこれを見直し、登録済みの連絡体制に変更を生じたときは速やかにその旨を登録すること。

3 災害医療班の編成

(1)国立病院東京災害医療センターにおける医療班の編成

 ア 国立病院東京災害医療センターの長は、被災状況を早期に把握するとともに、初期災害医療を実施するため、特に災害医療に関する高度な専門知識を有する者により構成される医療班(以下「初期災害医療班」という。)をあらかじめ編成すること。その際、携行すべき器材の種類及び数量等については充分検討の上、あらかじめ確保しておくこと。

 イ 初期災害医療班は、医師1名、看護婦(士)2名、事務官1名の合計4名で1班を構成し、常時3班を確保すること(必要に応じ薬剤師1名を班の構成員として加えること。)。

 ウ 国立病院東京災害医療センターの長は、上記イにより編成した初期災害医療班の編成等について、毎年9月1日に関東信越地方医務局を経由して本省国立病院部へ登録すること。なお、編成した初期災害医療班の構成に変更を生じたときはその都度速やかに登録の変更を行うこと。

 エ 国立病院東京災害医療センターの長は、関係機関と打ち合わせの上、あらかじめ初期災害医療班の輸送方法(初期災害医療班構成員の集合場所、輸送手段等)を定めておくこと。

(2)国立病院東京災害医療センター以外の防災拠点国立病院における医療班の編成

  国立病院東京災害医療センター以外の防災拠点国立病院(以下「拠点病院」という。)の長は、原則として同一地方医務(支)局管内における被災状況を早期に把握するとともに初期災害医療を実施するため、各施設ごとに特に災害医療に関する専門知識を有する 者により構成される医療班(以下「拠点病院医療班」という。)をあらかじめ編成するとともに、下記(3)に定める国立病院等医療班をあらかじめ編成すること。その際、携行すべき器材の種類及び数量等については充分検討の上、あらかじめ確保しておくこと。

  拠点病院医療班は、同一施設に所属する医師1名、看護婦(士)2名、事務官1名の合計4名で構成すること(必要に応じ薬剤師1名を班の構成員として加えること。)。

  拠点病院の長は、上記イにより編成した拠点病院医療班の編成等について、毎年9月1日に地方医務(支)局を経由して本省国立病院部へ登録すること。なお、編成した拠点病院医療班の構成に変更を生じたときはその都度速やかに登録の変更を行うこと。

  拠点病院の長は、関係機関と打ち合わせの上あらかじめ拠点病院医療班の輸送方法(拠点病院医療班構成員の集合場所、輸送手段等)を定めておくこと。

(3)その他の国立病院等における医療班の編成

  防災拠点国立病院以外の国立病院等の長は、各施設ごとに広域災害に対応するための医療班(以下「国立病院等医療班」という。)を、各施設の機能及び地域性等を勘案しつつ、あらかじめ編成すること。その際、携行すべき器材の種類及び数量等については充分検討の上、あらかじめ確保しておくこと。

 イ 国立病院等医療班は、原則として同一施設に所属する医師1名、薬剤師1名、看護婦(士)等2名、事務官1名の合計5名で構成すること。

  防災拠点国立病院以外の国立病院等の長は、上記イにより編成した国立病院等医療班の編成等について、毎年9月1日に地方医務(支)局を経由して本省国立病院部へ登録すること。なお、編成した国立病院等医療班の構成に変更を生じたときはその都度速やかに登録の変更を行うこと。

 防災拠点国立病院以外の国立病院等の長は、各施設周辺の地域の実情に応じ、関係機関と打ち合わせの上、あらかじめ国立病院等医療班の輸送方法(国立病院等医療班構成員の集合場所、輸送手段等)を定めておくこと。

(4)近隣の国立病院等間の派遺体制

 地方医務(支)局長は、国立病院等が披災した場合における近隣の国立病院等の国立病院等医療班の派遣体制をあらかじめ定め、本省国立病院部へ登録すること。なお、これに変更を生じたときはその都度速やかに登録の変更を行うこと。

4 医薬品、食塩及び水等の備蓄

(1) 災害発生後の数日間の医療救助活動に必要な医薬品等は、原則として被災都道府県等が確保することとなっているが、防災拠点国立病院においては、医薬品、食料及び水等の供給路が断たれる場合をあらかじめ想定し、それが回復するまでの間に病院内で行われる医療活動に必要となる最低限(少なくとも1週間程度)の備蓄を行うこと。

(2) 防災拠点国立病院以外の国立病院等においても、緊急及び不測の事態の発生を想定し、必要最低限の医薬品、食料及び水等の備蓄を行うこと。

第4 災害時の応急対策

1 災害に関する情報の収集及び連絡

 国立病院等の長は、厚生大臣の指令を受けたときは、国立病院等の被害状況、周辺の被害状況等を地方医務(支)局に連絡すること。連絡を受けた地方医務(支)局は、被害状況等について本省国立病院部に連絡すること。

2 被災地域への災害医療班の派達準備

(1) 国立病院東京災害医療センターの長は、厚生大臣の派遣準備指令を受けたとき又は初期災害医療を早急に実施する必要があるにもかかわらず、通信の途絶等により厚生大臣の指令を待つ時間的猶予がないと認めたとき又は警戒宣言の発令を知ったときは、初期災害医療班の派遣準備を行うこと。

(2) 拠点病院の長は、厚生大臣の派遣準備指令を受けたとき又は原則として同一地方医務(支)局管内において初期災害医療を早急に実施する必要があるにもかかわらず、通信の途絶等により厚生大臣の指令を待つ時間的猶予がないと認めたとき又は警戒宣言の発令を知ったときは、拠点病院医療班の派遣準備を行うこと。

(3) 国立病院等の長は、厚生大臣の派遣準備指令を受けたとき又は施設の近辺において初期災害医療を早急に実施する必要があるにもかかわらず、通信の途絶等により厚生大臣の指令を待つ時間的猶予がないと認めたとき又は警戒宣言の発令を知ったときは、国立病院等医療班の派遣準備を行うこと。

3 被災地域への災害医療班の派遺

(1)初期災害医療班の派遣

 国立病院東京災害医療センターの長は、厚生大臣の派遣指令を受けたとき又は初期災害医療を早急に実施する必要があるにもかかわらず、通信の途絶等により厚生大臣の指令を待つ時間的猶予がないと認めたときには初期災害医療班を被災地域へ派遣すること。その際派遺する班の数は、状況に応じて適宜調節すること。なお、初期災害医療班を派遺した際には速やかにその旨を関東信越地方医務局を経由して本省国立病院部に報告すること。

(2)拠点病院医療班の派遣

 拠点病院の長は、厚生大臣の派遣指令を受けたとき又は原則として同一地方医務(支)局管内において初期災害医寮を早急に実施する必要があるにもかかわらず、通信の途絶等により厚生大臣の指令を待つ時間的猶予がないと認めたときには拠点病院医療班を被災地域へ派遣すること。なお、拠点病院医療班を派遣した際には速やかにその旨を地方医務(支)局を経由して本省国立病院部に報告すること。

(3)国立病院等医療班の派遺

 ア 厚生大臣は原則として都道府県知事の要請に基づき地方医務(支)局長を通じて国立病院等の長に対し国立病院等医療班の派遣指令を行うものとすること。

 イ 国立病院等の長は、厚生大臣の派遣指令を受けたときは、地方医務(支)局長と連携をとりつつ、速やかにあらかじめ定められている国立病院等医療班の輸送手段等の確保に努めるとともに、所要の調整を行い次第速やかに国立病院等医療班を派遺すること。

 ウ 国立病院等医療班ほ3班を1単位として派遣することを原則とすること。地方医務(支)局長は派遺する単位の班編成等について国立病院等医療班を派遺する各国立病院等の長と速やかに必要な調整を行うこと。また、1単位の派遺日数は3泊4日を原則とし、単位間の引継ぎは原則として正午に行うこと。

 エ 地方医務(文)局長及び国立病院等の長は、派遺した国立病院等医療班との密接な連絡を保ち、常に必要な情報の伝達を確保すること。

 オ 国立病院等の長は、当該施設の近辺において初期災害医療を早急に実施する必要があるにもかかわらず、通信の途絶等により厚生大臣の指令を待つ時間的猶予がないと認めたときには国立病院等医療班を派遺することができる。なお、国立病院等医療班を派遣した際にほ速やかにその旨を地方医務(支)局を経由して本省国立病院部に報告すること。

(4)厚生省現地対策本部への職員の派遺

 被災地域に厚生省現地対策本部が設置された場合には、被災地域を管轄する地方医務(支)局長は職員を派遺し、厚生省現地対策本部の業務を支援すること。

4 国立病院等相互間における後方支援

(1)国立病院東京災害医療センター周辺の国立病院等による後方支援

 国立病院東京災害医療センターへ多数の患者が搬送される場合には、同センター周辺の国立病院等の長は、関東信越地方医務局長の指令を受け同センターへ職員を派遺すること。職員を派遣した際には速やかにその旨を関東信越地方医務局を経由して本省国立病院部に報告すること。なお、同センター周辺の国立病院等は同センターに派遣することとなる職員について毎年9月1日に関東信越地方医務局に登録すること。

(2)被災地域周辺の国立病院等による後方支援

 被災地域周辺の国立病院等の長は、地方医務(支)局長の指令を受けたときは被災地域の国立病院等へ職員を派遺するとともに、患者の収容が可能な場合には、消防署、保健所等関係機関にその旨を連絡し、必要に応じ被災地域の国立病院等及び救護所等からの被災患者の搬送及び受入れに努めるものとすること。被災地域の国立病院等へ職員を派遣した際には速やかにその旨を地方医務(支)局を経由して本省国立病院部に報告すること。

5 都道府県知事等からの職員の派遣要請に対する対応

 都道府県等が作成する地域防災計画による職員の派遺要請及び災害対策基本法第2章第4節に規定する職員の派遣要請等があった場合には、速やかにその旨を地方医務(支)局を経由して本省国立病院部に報告するとともに本省及び地方医務(支)局の指示に従うこと。

第5 平時における国立病院等以外の医療機関等との連絡・協力体制

 国立病院等の長は、災害によって多数の重症患者が発生した場合及び自らの施投が被害を受けた場合に備え、平時における防災訓練等を通じ、国立病院等以外の近隣の医療機関等との間においてあらかじめ重症患者の輸送方法等を定めておくこと。

第6 厚生省本省が被災した場合の対応

 厚生省が被災し、厚生省災害対策本部が立川広域防災基地内の国立病院東京災害医療センターに設置される場合に備え、国立病院東京災害医療センター及び本省関係者はあらかじめ必要な体制を整備しておくこと。


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2002年09月27日