国立高度専門医療センター

 国立高度専門医療センター(いわゆるナショナルセンター)は、我が国における死亡数、患者数、医療費のいずれをとっても最も大きな割合を占める、がん、脳卒中、心臓病など、その制圧が国民的願望となっている疾病について、高度先駆的医療の実施、病因・病態の解明、診断、治療法の開発・研究、医療従事者の研修などを一体的に行うための中核的機関として設置したものである。

(1) 国立がんセンター

 我が国のがん対策の中核的機関として、がんその他の悪性新生物についての診断、治療、調査研究及び医療従事者の研修を行うために、昭和37年2月に設置した。また、平成4年7月に国立柏病院と国立療養所松戸病院とを統合し、国立がんセンター東病院として国立がんセンターの組織に組み込み、国立がんセンター中央病院と一体的に運営しており、診療機能についても、それぞれ機能分担を行い、連携を因っているところである。

 さらに平成11年1月に中央病院新棟を開棟し、臓器別診療体制の導入等を図り、診療機能の強化を図ったところである。

 平成13年度において、メディカルフロンティア戦略に基づき、がん予防研究センター(仮称)の具体的な内容の検討を行うところである。

(2) 国立循環器病センター

 我が国の脳卒中、心臓病等の循環器病対策の中核的機関として、循環器病についての診断、治療、調査研究及び医療従事者の研修を行うために昭和52年6月に設置した。

 平成9年10月の「臓器移植に関する法律」の施行に伴い、心臓移植実施施設(全国で3施設)に選定されるとともに、平成10年6月に臓器提供施設としても選定された。今後、心臓移植医療についても中心的な役割を担っていくこととし、平成11年5月の心臓移植の実施から、既に6例の実績があり、平成13年5月には、心臓移植にかかる医療費について、高度先進医療が適用されたところである。

(3) 国立精神・神経センター

 我が国の精神・神経疾患対策の中核的機関として、精神疾患、神経疾患、筋疾患、発達障害等に関する診断、治療、調査研究及び技術者の研修を総合的に行う我が国の中枢機関として昭和61年10月に国立武蔵療養所(神経センターを含む)及び国立精神衛生研究所を統合して設置し、さらに昭和62年4月に国立国府台病院を統合した。

 武蔵病院においては、極めて高いレベルの精神・神経疾患の診断、治療法の選択、治療の効果判定を行っているところであり、また、臨床検査部に設置した生検筋、DNA等の研究資源バンクにより、国内だけでなく海外の病院、研究機関とネットワークを作っている。

 国府台病院においては、大きな精神科部門を有する総合病院として、精神疾患患者の内科・外科的合併症の総合的診療、精神分裂病、うつ病、睡眠障害、児童思春期精神疾患についての高度先駆的精神医療を実施しているところである。

 現在、神経研究所については分子生物学的側面からの研究を行い、精神保健研究所は社会医学的な側面からの研究を行ってきたが、2群の研究系(疾病研究系、基盤研究系)を統合することにより、飛躍的な研究の進捗が期待されていることから、平成13年度においては、精神保健研究所の移転整備に係る基本設計を行うこととしている。

(4) 国立国際医療センター

 我が国の医療分野における国際貢献の中核的機関として、感染症等国際的な調査研究が必要な疾病についての診断、治療、調査研究及び医療従事者の研修を行うために、平成5年10月に国立病院医療センターと国立療養所中野病院を統合し、国立国際医療センターを設置した。特にエイズに関しては、エイズ治療・研究開発センターを設置し、最先端医療の提供、最新情報の提供、新しい治療法の開発研究などを行っている。

 また、海外派遣については、開発途上国における保健医療プロジェクト(母子保健、地域保健、感染症対策等)に積極的に参加し、これまでに29の長期プロジェクトで中心的な役割を果たし、協力や調査を行っており、延べ977名が派遣され、さらに、開発途上国の医療関係者の日本での研修についても、延べ479名の受入れを行っているところである。

(5) 国立成育医療センター

 急速な少子高齢化が進む中で、将来を担う世代の健全な育成を図る体制の確立が求められている。このため、小児医療、母性医療、父性医療及び関連・境界領域を包括する医療(成育医療)の向上が必要である。

 この成育医療の先導的役割を担う施設として、国立小児病院と国立大蔵病院を統合し、国立高度専門医療センターとして整備を進めている。

 なお、国立成育医療センターの開設は、平成14年3月1日を予定している。

(6) 国立長寿医療センター(仮称) (設置予定)

 人口の高齢化の進展に伴い、痴呆性老人や寝たきり老人等加齢に伴い発症する疾病への医療の在り方が問題となっている。

 このため、従来の診療科別による対応を越え、高齢者の健康や疾病に着目した概念として長寿医療を位置づけ、国立病院・療養所の再編成計画に基づき、長寿医療に関する高度先駆的医療の実施体制を進めていくため、国立療養所中部病院を国立高度専門医療センターとして整備し、@老化機構の解明、A高齢化に特有の疾病の原因解明と予防・診断・治療法の確立、B高齢者の社会的・心理的諸問題の研究等の幅広い分野の総合的研究と包括的な医療の推進を行うこととしている。


2001年09月09日

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