基発第
759号平成
12年12月20日
労働福祉事業団理事長殿
労働省労働基準局長
労災病院の再編整備等計画の実施について
平成
9年12月26日の閣議決定(「特殊法人等の整理合理化について」)及び昨年12月21日の総務庁勧告(「労働者災害補償保険事業に関する行政監察結果に基づく勧告」)を踏まえ、今般、労働省において、別紙のとおり、「労災病院の再編整備等計画」を策定したので、貴職におかれては、当該計画に則って、労災病院の再編整備等の実施を図られたい。
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別紙)労災病院の再編整備等計画
目次
労災病院は、業務災害に係る負傷等に対する治療からリハビリテーションに至る一貫した高度かつ専門的な医療を推進し、被災労働者が1日も早く労働能力を回復し、速やかな社会復帰を図ることを主目的として設置され、業務災害や職業性疾病などの医療について、豊富な医学的知識と専門的な技術を有する人材及び最新の設備を備えた労災医療の中核病院として大きな役割を担ってきたところである。
しかしながら、近年の産業構造や就業形態の変化等に伴い、労働者のメンタルヘルス問題、「過労死」等の問題、働く女性の健康問題等、広く勤労者全体に関わる健康問題が新たにクローズアップされるなど、労災病院を取り巻く環境は、大幅に変化をしている。
このため、労災病院は、これら勤労者を巡る健康問題についても、的確かつ積極的に対応することが求められている。
このような中で、平成9年12月26日には、勤労者医療の再構築、労災病院の運営の在り方を検討することを旨とした閣議決定(「特殊法人等の整理合理化について」)がなされ、平成11年12月21日には、労災病院の機能の再構築を進めるとともに、病院の配置状況、損益ベースにおける経営状況、労災患者の利用実態等を総合的に勘案し、早急に労災病院の再編整備計画を策定し、速やかに当該計画の実現を図ることを旨とした総務庁による勧告(「労働者災害補償保険事業に関する行政監察結果に基づく勧告」)がなされたところである。
これらを踏まえ、労災病院は、引き続き業務災害等による負傷・疾病に対する専門的な医療を推進するとともに、勤労者を巡る健康問題に積極的に対応するなど、経済社会情勢の変化に応じて新たな役割を果たしていくことが必要である。
また、その運営についても、経営め抜本的改善を積極的に進める必要があることから、以下の方針に基づき、平成17年度末を目途に、労災病院等の再編整備・合理化を積極的に実施するものとする。
労災病院においては、労災患者を中心とした治療及びリハビリテーションを提供しているが、今後、更に労災患者に対する医療の提供の充実を図るため、次のとおり機能の整備を図る。
イ 救急医療活動への対応強化
労働災害の発生に即座に対応できるよう、急性期医療への取組みを強化するなど、救急医療体制の整備を図る。
ロ 予防医療への積極的な取組
労働者の高齢化により増加が予測される脳・心臓疾患や、職場の労働環境の複雑化等により増加が懸念される精神疾患の発症の予防に積極的に取組む。具体的には、脳・心臓疾患の予防のための保健指導の充実、メンタルヘルス対策の一環としての心理テストの導入やカウンセリングのための窓口の設置等、疾病に応じた予防活動を効果的に展開する。
ハ 地域医療機関との連携
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イ) 病診(病)連携登録医制度の確立(以下「地域医療機関等」という。 )では、対応困難な労災患者を中心とした重症患者等の治療を労災病院が積極的に引き受け、高度かつ専門的な診断や治療を実施し、再び紹介元の医療機関に患者を戻す労災病院を中核とした病診(病)連携登録医制度を確立し、労災患者等に対する救急医療や専門性の高い医療を積極的に実施する。労災指定医療機関や産業医等
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ロ) 地域医療機関等に対する病院の開放等地域医療機関等の医師が、入院している労災患者等を治療するために、労災病院の病棟や高度医療痩器を利用できる体制を整備する。また、地域医療機関等では実施できない高度専門検査の受託等を行う。
ニ 産業保健活動への積極的な支援
各企業の産業医が行っている産業保健活動の支援のための拠点である産業保健推進センター及び小規模事業場の勤労者の健康保持増進のための相談等を実施している地域産業保健センター等、勤労者の健康確保に係る活動に対して積極的に支援するため、産業保健推進センター等と症例検討会や研修会を開催するとともに、労災病院の医師を専門相談員や講師として派遣するなどの活動を積極的に行う。
ホ 産業医の臨床支援等に対する取組
産業医の臨床支援等を促進するため、各企業所属の産業医等に対する臨床医学面での研修を実施するなど諸環境を整備する。
ヘ 長期療養を必要とする労災患者への対応
長期療養を必要とする労災患者に対して適切な療養環境を提供していくため、機能訓練室等施設面での必要な整備を図るとともに、地域医療機関等では対処できない労災に係る長期療養者を積極的に受け入れる。
ト 災害医療活動への対応強化
労災病院は、墜落・衝突・はさまれ・巻き込まれ等の労働災害に対する外科的治療を数多く手がけており、このような労災病院の特色と経験を生かし、大規模な産業災害や地域災害において、積極的な対応を行っているところである。
労災病院は、これまでの医療や臨床研究の活動を通じて、職業又は職場に関連する疾病や負傷に関する専門的知見を有しており、次のような措置を講じることにより、こうした専門的知見に基づく高度専門医療の充実を図る。
イ 専門センターの整備
高度専門医療を効果的かつ効率的に推進するため、主要な作業関連疾患等(職業性疾病や負傷を含む。)ごとに担当病院を指定し、人的・物的両面にわたり専門的機能を集約するセクションとして、各々の労災病院に「呼吸器センター」、「脊椎・腰痛センター」、「振動障害センター」、「脳・循環器センター」、「産業中毒センター」、「メンタルヘルスセンター」、「リハビリテーションセンター」、「働く女性メディカルセンター」等の専門センターを整備する。
ロ 高度専門医療に係る情報ネットワークの構築
地域産業保健センターや医療機関との高度専門医療に係る情報の共有化を進めることを目的として、病診(病)連携登録医制度等を活用した情報ネットワークを構築し、労災病院において蓄積された職業と疾病に関する臨床的研究成果、その他の勤労者医療に関する専門的知見及び健診結果に関する知見のデータベース化を図り、これらの機関に対し、高度専門医療に係る情報をインターネットや症例検討会等により提供するとともに、医療機関から症例情報等の収集を行うなど、その円滑な推進に努めるものとする。
3)国際化への貢献経済の国際化に伴い、海外で勤務する我が国の勤労者が増加しており、これらの勤労者の健康管理や健康増進に資するため、開発途上国に労災病院の医師等を派遣する海外巡回健康相談事業を今後とも積極的に実施していくとともに、健康相談内容や検査項目等の充実を図っていく。また、開発途上国の医師等の研修生の受入れの拡大や研修内容の充実を図り、勤労者医療に係る国際協力を一層推進していく。
労災病院の経営改善
労災病院の経営の効率化と改善については、病院の実情を十分踏まえ、経営基盤の安定化が図られるよう、診療科目及び病床数等の診療体制の見直しなどによる医療資源の有効配分を実施しつつ、抜本的な経営の改善を目指す。
2)収入増加対策の推進経営収支が常態的に赤字となっている病院等については、労災病院としての在り方の抜本的な見直しを含む徹底した経営改善等を図るため、当該病院と本部との協議の上、以下に掲げるような各年度ごとの具体的な取組事項を明記した中期経営改善計画を策定し、当該計画を実施する。
@ 診療科及び診療科別病床数の再編等の診療体制の見直しを行い、当該病院を巡る勤労者医療や地域医療等のニーズに対応した効率的な診療体制を構築する。
A 経営改善の観点に立って、病床数の削減等について検討し、その結果を踏まえ、職員数の見直し等により人件費をはじめとする各種経費支出の縮減を図るなど、徹底した支出削減対策を推進する。
30%を目途とした患者の紹介率(他の保険医療機関からの初診患者紹介等の割合)の向上を図る取組を展開し、紹介外来加算等の算定による増収を図る。各労災病院は、収入増加のため以下の内容も含め様々な対策を講じるものとする。
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A 病床の稼働率を高めるため開放型病床を設置するなど、病診(病)連携を積極的に推進し、患者の確保を図る。
B 病院のイメージアップを図り患者から選ばれる病院となるため、必要な措置を講じた上で、順次、(財)日本医療機能評価機構が実施している「一般病院・精神病院・長期療養病院を対象にした第三者評価」を受審し、認定を受けられるようにする。
C 早期の社会復帰を目指し、平均在院日数の短縮に向けた取組を展開することにより、より高い入院基本料等の算定による増収を図る。
3)支出の削減対策の推進各労災病院における各種購入手続き等の見直しをするとともに、購入価格等の情報交換を充実することにより、物品購入費用の削減をする。
再編整備・経営合理化の具体的内容
労災病院の配置状況及び経営の実態、当該地域の医療供給体制への影響等を十分勘案し、「同一の二次医療圏内に近接して設置されており、統合することにより一層の機能の充実を図ることが出来る病院」を再編整備の対象として選定するものとし、具体的には美唄及び岩見沢労災病院(南空知医療圏)並びに九州及び門司労災病院(北九州医療圏)をその対象とする。
776床から700床程度に減少するものとする。イ 美唄労災病院及び岩見沢労災病院
美唄労災病院については、腰痛・脊損を中心とした外科系の診療機能に、また、岩見沢労災病院については、じん肺を含む呼吸器疾患を中心とした内科系の診療機能に重点を置きつつ、それぞれの診療科目及び病床数等の診療体制を見直し、機能の明確化等を図るとともに、両病院の病床規模についても、両病院併せて現在の
ロ 九州労災病院及び門司労災病院
九州労災病院については、急性期医療を主体的に担う病院として、診療科目等診療体制の見直しを行い、骨・関節の疾患、リハビリテーション、メンタルヘルスに係る勤労者医療を更に充実させるとともに、勤労者の「過労死」等の予防対策のセンターとしての機能についても充実を図ることとする。
1)以外の労災病院については、各々多数の勤労者を擁する地域であることから、それぞれの特徴や地域の実情を踏まえ、経営の改善、効率化を推進するとともに、各病院の機能の明確化、役割の分担等を行うことにより、勤労者医療の中核として高度専門医療の提供等を図っていくこととする。同一の二次医療圏等に複数設置されている上記(
イ 東京労災病院、関東労災病院及び横浜労災病院
東京、関東及び横浜の各労災病院の所在する地域は、二次医療圏がそれぞれ異なっていることなどから、首都圏に位置する労災病院として勤労者医療の更なる機能の充実・強化を図るものとする。
ロ 中部労災病院及び旭労災病院
中部及び旭労災病院(以下、「両病院」という。)については、愛知県地域保健医療計画の見直しにより、平成
13年度から両病院はそれぞれ異なる二次医療圏に属することが予定されていることなどから、中部・東海地方に位置する労災病院として勤労者医療の更なる機能の充実・強化を図るものとする。13年度入学生が卒業する平成15年度末をもって廃止する。労災病院以外の施設についても、各々施設の特徴や実情を踏まえ、在り方の見直しを行うことにより経営の合理化、効率化を図っていくこととする。
イ リハビリテーション学院の廃止
リハビリテーション学院については、その運営実態に鑑み、平成
ロ 労災看護専門学校の再編整備
労災看護専門学校については、看護婦(士)養成学校を取り巻く環境の変化に対応し、質の向上と教育体制の充実を図り、優秀な看護婦(士)の供給を図ることを目的として、再編整備を行うものとする。
※注 二次医療圏(平成
12年8月末の全国の二次医療圏数は360圏)各都道府県が医療を提供する体制の確保について定める医療計画(医療法第
30条の3から7)において、病院の病床の整備を図るべき地域単位として区分する地域をいい、自然的条件(地理的なもの等)及び社会的条件(日常生活の需要の充足状況、交通事情等)を考慮して、一体の区域として病院の入院医療を提供する体制の確保を図ることが相当であると認められるものを単位として設定することとされている。2002年09月27日