規制改革の推進に関する第1次答申
(平成13年12月11日)

第1章 重点6分野について

2 福祉・保育等

【問題意識】

 介護・保育等の分野の共通課題は、高齢化の進展や働く女性の増加という社会環境の変化の中で、今後、急速に増大する利用者のニーズに対応した制度改革が求められていることである。また、介護や保育サービスの利用者が低所得者層以外にも一層広がり、ニーズの多様化が進むとともに、施設における居住環境の改善を含め、サービスの質の向上も大きな課題となっている。

 これに対して、平成12年からの介護保険の開始や同年の社会福祉法(昭和26年法律第45号)の成立により、行政が必要なサービスを国民に「措置」として与えていた公的福祉は、事業者と利用者との間の「契約」を基本として、利用者の自由な選択に基づくものへと制度上は改革された。この結果、介護サービス利用者数は大幅に増加している。一方、新エンゼルプランに基づき保育サービスの供給量も全国的に増加している。他方、地域間の介護・保育需要の格差に見合った供給側の対応が遅れているという大きな問題が生じている。また、地域によっては介護や保育サービスの不足は深刻となっており、介護施設や認可保育所への待機者が多く存在している。

 これは、新しい契約の制度と古い措置時代の制度の間に、様々な問題が生じていることによる面も大きい。政府は、介護保険法(平成9年法律第123号)及び社会福祉法の成立・施行後でも、介護等のサービスを含む福祉が「慈善・博愛」事業に含まれるとの憲法解釈を堅持しており、サービスの安定的・継続的な提供のために必要な規制・監督を課せない民間企業に対して、公費による支援を社会福祉法人と同等に行うことはできないとしている。この考え方に基づき、社会福祉法人立の介護等の福祉施設については、民間企業と異なる厳しい規制を受けることから、ストック面の公的助成が行われている。

 現行の福祉制度については、情報公開、第三者評価を推進することにより、対等な競争条件を確保する方向へ改革することが必要である。また、NPOや民間企業を含む多様な経営主体の市場参入により、供給の大幅増大や質的向上なされることが、介護・保育政策の大きな目標である。

【改革の方向】

 介護保険制度では、在宅介護分野について、民間企業を含む多様な事業主体の参入が広く認められた結果、事業者間の競争も促進され、消費者にとってはサービスの選択肢が広がった。他方、特別養護老人ホーム等の施設介護分野では、依然民間企業の参入は認められていない。日常生活の支援機能を有する施設において、特別養護老人ホーム等の介護施設と比べ、それと同様のサービスを提供する民間施設やケアハウス、グループホームについては、在宅サービスの延長として、介護保険の給付対象となる途が開かれているものの、介護報酬面で大きな格差が存在している。

 これは、施設介護サービスに位置付けられる特別養護老人ホーム等は、居住・食事費等(いわゆるホテルコスト)は介護報酬の対象となっているが、民間有料老人ホームやケアハウスにおいて提供される介護サービスは、「高齢者が自ら選択した住居」を基盤とした在宅サービスとして位置付けられており、その入居者のホテルコストは介護給付の対象とされていないためである。

 また、長期的には、医療保険診療報酬と同様に、介護報酬で施設整備費用を賄うこととし、これを社会福祉法人への施設整備費補助に代替する考え方もある。なお、既に、現行法でも、特別養護老人ホームを整備する社会福祉法人については、その施設整備の際に必要な資金(全体の4分の1)の一部を融資により調達し、それを介護報酬から返済することが可能とされている。

 契約という利用者の選択にゆだねられる介護保険制度では、特別養護老人ホーム等と民間有料老人ホーム、ケアハウス等のうち、どのようなサービスを受けるかは利用者自らが選択できる。このため、資格制度の整備、事業形態の違いに基づく規制、介護サービスの標準化ばかりではなく、情報公開の徹底、契約の監視及び第三者評価等の事後的規制の整備を図っていくことが重要である。

 保育の問題に関しては、何が子どもの幸せかを第一に考えなければならないが、特に低年齢児を中心に、認可保育所を利用できない「待機児童」や、休日保育などを必要とする児童を含め、認可外保育施設を利用せざるを得ないという児童も多数存在する。こうした状況は、子どもの幸せという観点から見て十分な状況とは言い難い。保育行政に関しては、法令上、認可保育所に対する児童福祉施設最低基準と、認可外保育施設に対する指導監督基準という2つの性格の異なる基準があり、それぞれの目的に従って運用されている。

 いずれにせよ、提供されるサービスの質を考慮すれば、認可・認可外保育所利用者間の負担格差が生じている。

 このような状況を改善するため、認可外保育施設から認可保育所への転換を促す規制緩和が進められているが、都市部における土地の取得が困難であることなどから、その効果はまだわずかなものにとどまっている。

 他方、現在、「営業の自由」の原則の下で認可外保育施設における乳幼児など社会的弱者の安全や人権を守るためには、指導監督を徹底する必要がある。また、公設民営の積極的な活用などを通じ、質の高い保育所の量的拡大を図ることが必要とされる。

 介護・保育サービスの主要な担い手としての社会福祉法人は、質の高い福祉サービスを継続的・安定的に供給することに大きく貢献しており、今後もその果たす役割は重要である。しかし、経営主体の差にかかわらず、事業者間の同一条件での競争を前提とした公的介護保険が開始された今日、公設民営方式を含む多様な民間企業の活用を図ることが必要である。これまでにも社会福祉法人に対する規制の緩和が行われてきているところであるが、更なる取組を進め、既存の社会福祉法人を含めた多様な経営主体の間で、できる限り同一条件での競争を促していくことが必要である。

【具体的施策】

(1) 施設介護における多様な経営主体の対等な競争

ア 特別養護老人ホームのホテルコストの利用者負担【平成14年度中に措置】

 特別養護老人ホーム等の介護施設では、入所者の居住性に配慮した個室化を推進することが求められている。この場合においては、特別養護老人ホームの入居者は、居住環境が抜本的に改善されることから、従来の介護・食事に係る利用者負担のほか、ホテルコストを原則として利用者負担として徴収するよう見直しを行うべきである。また、そうした負担に耐えられない低所得者層については、一定の配慮を検討すべきである。

イ PFI法を活用した公設民営方式の推進【一部措置済み、逐次実施】

 「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(PFI法)」(平成11年法律第117号)を活用した公設民営方式は、官民の契約に基づいて、PFI事業者が施設を建設し、地方公共団体がそれを取得した上で、これを当該PFI事業者に運営させるものである。その取得費用については、新たに国庫補助の対象とされたところであり、このほか、「公有財産を無償又は時価より低い対価で選定事業者に使用させることができる」とされているPFI法第12条第2項を活用していくべきである。また、地方自治法(昭和22年法律第67号)第238条の4第1項では、行政財産の貸付けは禁止されていたが、先の臨時国会においてPFI法が改正され、特例措置が講じられたところである。これらにより、PFIを活用した公設民営を促進するべきである。

ウ ケアハウス等への株式会社等の参入促進【措置済み】

 社会福祉法第62条第2項では、公的部門や社会福祉法人以外の者がケアハウス等の社会福祉事業を行おうとする場合、都道府県知事の許可が必要とされている。これまでは、設置・経営主体として株式会社等の民間事業者が挙げられていなかったため、民間事業者の参入が事実上阻害されていたが、先般、関係通知の改正により、法人類型を問わず、都道府県知事の許可によって設置・経営主体となり得ることが明記されたところである。

エ グループホームに関する情報公開の推進【平成13年度中に措置】

 痴呆性高齢者グループホームについては、平成13年度よりNPO法人等が施設整備を行う際の財政支援について予算化されたところであるが、併せて、同一敷地内では3ユニット以内に抑制されること、認可の際には市町村の意見書が必要とされることなど、新たな規制が加わっている。密室性が高く、利用者保護の体制整備が特に求められるグループホームにおけるケアの質を確保するためには、今後とも情報公開等を推進していくべきである。

オ 介護事業者の情報公開、利用者や第三者による評価の推進等【平成13年度中に措置】

 公的部門、社会福祉法人、民間企業等といった経営主体にかかわらず、利用者やその家族が事業者を選択する際に活用できるチェックリストの作成などにより、介護事業者の情報公開義務を適切に果たさせるとともに、第三者評価を推進するべきである。また、消費者利益の観点から、その運営に関する監視体制の強化を図るべきである。

カ 介護職の資質の向上【平成14年度中に措置】

 要介護者の様々なケースに対応可能とするために、介護職の養成研修を一層充実させるなど、介護福祉士やホームヘルパー等の介護職の資質向上を図る措置を講じ、要介護者のニーズに的確にこたえることの可能な介護職の育成を図るべきである。

キ 介護と医療との連携のための諸規制の改革

 現行の高齢者介護を行う代表的な施設には、特別養護老人ホームのほかに、在宅復帰に重点を置いた介護老人保健施設がある。特別養護老人ホームの全室個室・ユニットケア化といった居住条件の改善が進められる中で、介護老人保健施設についても、入所者にとっての生活の場である特別養護老人ホームとは性格が異なることにも留意しながら、療養環境の改善を図っていくべきである。【平成14年度中に措置】

 また、医療保険と介護保険が重複して適用されうるサービスについては、介護保険が適用されると医療保険からの給付は受けられない仕組みとなっている。しかし、一部の医療サービスについては、主治医の「特別指示書」があれば、2週間は医療保険からの給付が受けられるため、本制度が濫用されているとの指摘もある。したがって、こうしたサービスに関する医療保険給付の適用範囲については、一層の周知徹底が必要である。【平成13年度中に措置】

ク 障害者福祉制度の改革【平成15年度からの支援費制度の施行状況を踏まえつつ、直ちに検討を開始し、結論を得る】

 社会福祉法の成立とあいまって、障害者福祉サービスについては、平成15年度より障害者に対する支援費制度へ移行することになった。これは従来の障害者施設や在宅サービスの内容が行政処分として定められた措置制度とは異なり、障害者自身がサービス内容と事業者を選択し、事業者との直接契約によりサービスを利用する仕組みである。

 市町村は障害者の受けたサービスに対して支援費を支払うとともに、利用者は事業者に対して、本人及び扶養義務者の負担能力に応じた自己負担額を支払うことになっている。

 こうした支援費制度により、利用者の選択肢が広げられることは評価されるものの、高齢者を対象とした介護保険制度との関連では、40歳以上65歳未満の障害者は介護保険の被保険者とされているにもかかわらず、加齢に伴う疾病によって介護を要する状態とならなければ、介護保険の給付は行われず、給付面は支援費制度となっている。この意味では、支援費制度について、介護保険制度の見直しと合わせて、両制度の関係についての抜本的な検討が必要である。

(2) 保育サービスの拡充と質的向上

 現在の保育はニーズの急速な増大とその多様化に、特に都市部等で供給が追いつかないことが大きな問題となっている。最近では、認可保育所では、定員数の増加や保育内容の多様化への努力が図られているものの、それが現実の需要増加のスピードに対応できない事態となっている。さらに、働く母親が増えている一方で、その就労条件も変化しており、保育時間の延長や休日保育などの新しい保育ニーズを増大させている。そのため、早朝や深夜からの長時間労働の親を持つ子どもたちが、認可保育所で十分対応できないため、ベビーホテルなどに預けられ、命にかかわる事故が起こるような事態となっている。

 このような中で、一人でも多くの就学前の子どもたち及び小学校に通う児童に対して質の高い保育を増やすことが急務となっているが、保育に関する規制改革の目的は、子どもたちの発達を保証する質の高い保育の供給を迅速に増やすために、子どもたちを守るための必要な規制を残した上で、不必要な規制を廃止することにある。

ア 認可保育所基準の見直しの検討及びその周知徹底

 保育サービスの不足に早急に対応できる措置として、認可保育所における受入れ児童数の増がある。特に公立保育所を中心に、待機児童の多い地域においては、定員基準の弾力化等を一層推進する必要がある。また、一定の設備にかかわる設置基準等については、その見直しを検討する。さらに、分園の積極的促進を図ることにより、サービスの質を確保しつつ供給量の拡大を図るべきである。【直ちに検討に着手、逐次実施】

 保育サービスの増加を抑制している要因として、地方公共団体が財政状況の制約の中で、新たな認可保育所の運営費を捻出しにくいことが挙げられる。他方、地方公共団体によっては、国の設置基準以上の基準を導入し、補助のかさ上げを行っているため、その財政負担が重くなり過ぎているという側面もある。限られた財源を有効に活用し、一人でも多くの子どもを認可保育所に入所させるためにも、保育環境の質を下げることがあってはならないが、地方公共団体が合理的でない基準の上乗せや補助のかさ上げをすることのないことが望まれる。

 さらに、待機児童の多い地域における定員基準の弾力化、認可基準等に適合した保育所についての迅速・的確な認可などにより、保育需要があるにもかかわらず認可保育所の供給を抑制しないことが必要である。このため、既に実施された規制緩和措置については、地方公共団体に対し、早期かつ逐次、周知徹底を図るべきである。【平成13年度中に措置(直ちに実施)】

イ 公立保育所の民間への運営委託等の促進【一部措置済み、逐次実施】

 公立保育所に関しては、社会福祉法人等が運営する認可保育所に比べ、運営コストがかかるだけでなく、利用者のニーズへの迅速かつ的確に対応できないとの問題を抱えている。このため限られた財源を有効に活用し、かつ社会のニーズに応じた保育を実施するという観点から、公立保育所の運営については、社会福祉法人やNPO、民間企業等へ民間委託することも有効な処方箋と考えられる。

 また、先の臨時国会においてPFI法が改正され、行政財産に関する規制の緩和が行われたところである。介護施設と同様、PFI方式を活用することなどにより、学校の余裕教室等、活用されていない公的施設・土地を積極的に活用して保育所にするなど、潜在的資源に着目して公設民営を促進するべきである。

ウ 保育所への株式会社等の参入の促進【平成13年度中に措置(直ちに実施)】

 民間企業が効率的な経営の結果として得た剰余金が、さらに保育の事業拡大のインセンティブを阻害しないよう、関係通達の見直しを図り、会計処理の柔軟化を進めるべきである。

エ 認可外保育施設に対する指導監督の徹底【児童福祉法改正について措置済み。平成13年度から逐次実施】

 認可外保育施設には、実際に20万人以上の子どもが通っている。基本的には都市部に多いが、沖縄は歴史的経緯もあり、認可外保育施設に通う子どもの数が、認可保育所に通う子どもの数を上回っている。認可外保育施設の中には認可保育所に匹敵する質の高さを誇るものもあれば、いつ事故が起こってもおかしくない低レベルのものまで混在している。こうした施設における乳幼児など社会的弱者の安全や人権を守ることは、保育行政の重点事項となっている。

 このため、先の臨時国会において、児童福祉法(昭和22年法律第164号)の改正が行われ、認可外保育施設に対する地方公共団体への届出、毎年の運営状況の報告、設備運営に係る掲示・利用者への書面交付が義務付けられた。また、地方公共団体は、毎年認可外保育施設に係る運営状況や立入調査結果を公表することとされ、悪質な施設に対する勧告・公表を行うことができることとなった。さらに、都道府県と市町村との連携も強化されることとなった。こうした法改正の趣旨を周知徹底するとともに、認可外保育施設に対する指導監督の徹底を図るべきである。

 こうしたことに加え、保育所、保育ママ、地方公共団体における様々な単独施策(例えば、東京都の認証保育所や横浜保育室等)等を活用し、待機児童の多い都市を中心に受入れ児童数の増大を図ることになっている。

オ 保育所に関する情報公開、第三者評価の推進【ガイドライン作成については平成13年度中に措置、その他については平成14年度中に措置】

 認可保育所においてもその保育の質・内容は多様であり、利用者が安心して保育所を選ぶことが可能になるだけでなく、運営側もそれを参考に更なるサービスの質の向上が図れるよう、現行法令を適切に運用し、経営主体にかかわらず、保育所の情報公開を進めるべきである。また、第三者評価については、ガイドラインを作成し、その取組を促進する仕組みを整備するべきである。

カ 保育所と幼稚園の施設共用化等による連携強化【平成13年度中に措置(直ちに実施)】

 就学前児童の保育と教育の多様なニーズに的確に対応できるよう、保育所と幼稚園等の教育施設との施設の共用化(文部省・厚生省による平成10年の指針)を促進し、運営や施設利用の面で一層連携を深める必要がある。ただし、運営においては現在の親の就労や子育ての実態に即し、社会のニーズにこたえるものにしなくてはならない。

 また、多様な保育ニーズにこたえる観点から、幼稚園における預かり保育の拡充を図るべきである。

キ 保育士に関する諸規制の改革【平成14年度中に措置】

 平成9年の児童福祉法の改正や平成11年の保育所保育指針の改訂等を踏まえ、地域の子育て支援など時代の要請に沿った資質を持つ保育士を養成することができるよう、保育士養成所(短大、大学、養成施設)における養成課程等について見直しが行われた。

 しかし、養成課程の見直しと併せて、保育士の卒後研修についても、保育士の質を維持・向上するといった視点から、研修内容をインターネットで提供すること等により、現場の保育士が学びやすい仕組みを検討すべきである。

 また、保育所に配置すべき保育士定数について、平成10年から一定範囲で短時間勤務の保育士を充てることが認められたところであるが、その後も、延長保育、休日保育、年度途中入所など、保育需要が多様化かつ増加しており、これらに保育所が柔軟に対応できるようにする必要がある。これは、いったん離職した保育士が再び保育現場で活躍できる環境を作ることにも資するものであり、現在、短時間勤務保育士は2割以内としている規制の一層の緩和について検討すべきである。

 なお、先の臨時国会において、児童福祉法の改正が行われ、認可外保育施設を含めた保育の質の向上のため、保育士の資格を国家資格とし、業務の定義、知事による試験・登録の実施等に関する規定を整備し、保育士でない者が保育士を称することを禁止する(保育士の名称独占等)等の措置が講じられたところである。

ク 保育サービスの利用者に対する直接補助方式の導入

 児童福祉法の改正により、平成10年4月から、保護者が保育所を選択して利用できる仕組みに改められるとともに、保育所も保護者の依頼を受けて、申込書の提出を代行できることとされた。しかしながら、市町村が審査事務を行い最終調整の上、保育所への入所決定を行う仕組みは、改正前の制度と変わっていない。

 こうした新しい入所方式の実施状況、待機児童の状況、介護保険や障害者支援費方式の実施状況等を踏まえ、長期的には、保護者が直接保育を希望する保育所に申し込み、当該保育所が審査・決定を行うことができないか、その可否について検討すべきである。

 また、利用者と施設との直接契約を検討する際には、保育の質の確保に留意しつつ、保育所に対する補助ではなく、利用者への直接補助方式の導入ができないか、その可否についても長期的に検討すべきである。

ケ 放課後児童の受入れ体制の充実【平成14年度から逐次実施】

 大都市周辺部を中心に、小学校低学年を中心とする子どもたちの放課後の受入れ体制が不足している。このため、放課後児童クラブや地域のすべての児童に居場所を確保する事業など、放課後児童の受入れ体制を計画的に整備すべきである。その際には、学校の余裕教室等も活用し、また、小規模な放課後児童クラブ(10人以上20人未満)への支援、長時間の開設や学校週5日制に対応した土日祝日の開設の促進を図るべきである。

(3) 社会福祉法人に関する規制の見直し

 社会福祉法人は、憲法第89条において、慈善・博愛事業について公の支配に属するもの以外への公金の支出が禁止されているとの解釈に基づき、公的助成が可能となるよう社会福祉法に基づき設置される特別な法人である。社会福祉法人は、様々な規制・監督を受けるとともに、施設整備費の4分の3の補助や税制上の優遇措置などが講じられている。

 また、社会福祉事業を安定かつ継続して行っていくために、設立者がその社会福祉法人への寄付財産を回収することは禁止されており、法人解散の場合には、その財産は他の社会福祉法人か国庫に帰属することとされている。近年、社会福祉法人の多様化が進む中、利用者の立場に立って、社会福祉法人に関する規制改革を一層推進していく必要がある。

ア 社会福祉法人に関する制度の運用に関する見直し【平成13年度中に措置(直ちに実施)】

 これまでに、社会福祉法人に関する規制緩和が進められてきた結果、社会福祉施設の整備に当たっては、都市部等の用地取得が困難な地域では、借地も認められるものとなっている。また、限られた範囲内ではあるが、介護報酬に基づいて運営される社会福祉法人については、施設整備に伴う融資の返済に充てることも容認されている。こうした既に行われた規制緩和措置について、地方公共団体に対し一層の周知徹底等を図るべきである。

 さらに、今後とも、担当行政部門間の円滑な調整を図り、行政の不整合をなくし、社会福祉法人のより効率的な運営や、そのサービスの供給拡大を図っていくことが必要である。

イ 社会福祉法人の在り方の見直し

 社会福祉法人の在り方について、現行の方式だけでなく、多様な形態の社会福祉法人の在り方について検討を開始するべきである。【直ちに検討を開始し、平成13年度中に結論】

 また、社会福祉施設の運営費の剰余金については、依然として厳格な使途制限が存在しており、業務の性格に応じて、社会福祉法人の在り方を踏まえつつ、検討する必要がある。

 現在、社会福祉施設の運営費については、施設利用者の生活費と施設職員の人件費及び施設管理費から構成され、原則として公費により賄われてきたが、この剰余金の使途については、一定の範囲内で、引当金等として積み立てることが認められている。また、保育所については、これが特例的に土地建物の賃貸料等にまで拡大されている。さらに、特別養護老人ホームの介護報酬収入について言えば、サービスの対価としての報酬の性格にかんがみ、その使途の制限を基本的に撤廃している。

 しかし、運営費の剰余金の使途については、依然として制約が大きいため、厚生省の関係通知(平成5年)を、例えば、以下の点について早急に検討すべきである。

  1. 本部会計への繰入れの対象範囲、人件費・修繕費・備品等購入引当金等の上限

  2. 社会福祉事業と公益事業との資金移動や、同一の法人が経営する複数の施設・事業間での運営費の繰入れ

  3. 社会福祉法人が本来の施設に加え、公的補助の対象とならない追加的な施設を整備する場合、それを担保に借入れを行うこと

【平成15年度中に結論】

ウ 社会福祉法人に関するインターネット上の情報公開の促進【平成13年度中に措置(直ちに実施)】

 消費者の選択の幅を拡大するとの観点から、社会福祉法人について株式会社並みの公認会計士等による会計監査等の一層の普及を図るなど、情報公開のための基準の強化を図るべきである。また、社会福祉法人の公益性にかんがみ、収支決算書、事業報告書、監事の意見書等は、インターネット上での公開を促進するべきである。

エ 社会福祉協議会の役割の見直し【平成13年度中に措置】

 市区町村社会福祉協議会は、社会福祉施設、民生委員、ボランティア等の参加を得て、地域福祉の実施主体としての役割を果たしてきた。また、介護サービスが未整備な公的福祉の時代から、自らサービスを実施する事業型社会福祉協議会の取組が進められてきた。

 また、社会福祉協議会においては、サービス利用者を支援する地域福祉権利擁護事業や利用者保護のための苦情解決について、第三者から構成される運営適正化委員会を設置して行っており、高齢者等の権利擁護の役割を果たすこととされている。

 平成12年に改正された社会福祉法において、市区町村社会福祉協議会は、地域福祉の推進のための中心的な役割を担うことが明確にされた。このため、社会福祉協議会については、他の民間事業者、社会福祉法人では行いにくいサービスについて、重点的に取り組んでいく役割を担うべきである。

 なお、在宅福祉サービスの実施に当たっては、公的助成のみに依存することなく、当該地域におけるサービスの実態を踏まえて、ほかの事業主体の参入による競争を妨げることのないよう、適切な運営に努めることが必要である。


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2003年02月28日