規制改革の推進に関する第1次答申
(平成13年12月11日)

第1章 重点6分野について

1 医療

【問題意識】

 これまでの我が国の医療制度は、国民皆保険体制と医療機関へのフリーアクセスの下、「すべての国民がいつでもどこでも安心して医療を受けられること」を基本的理念として運営されてきた。それによって社会保障としての医療は患者のニーズにこたえ、国民の健康増進に寄与してきた。

 一方、近年の少子高齢化の進展、IT化の進展等、経済社会環境の大きな変化の中で、国民の生活スタイルや価値観、ニーズは多様化している。それに伴って医療サービスに対してもより良いもの、より快適なものを求める意識は高まっている。「自らが医療に関する情報を集め、自ら治療の方法について選択したい」という声も多く聞かれる。このような状況に照らし合わせてみた場合、現在の医療制度は国民意識の変化に十分に対応できないものとなっている。

【改革の方向】

 医療の規制改革の目的は、患者本位の医療サービスを実現することである。そのためには、医療の質の向上、安全の確保を図りつつ、医療サービス提供上の無駄を徹底的に排除し、効率的な医療サービスを実現することが必要である。また、患者にとっては、医療の透明性が確保され自らの選択が尊重されるようになることが必要である。このような基本的考え方に基づいて、医療に関する徹底的な情報開示・公開の促進、医療分野のIT化の推進、診療報酬体系の見直し、医療機関相互の競争の促進等を積極的に実施するべきである。

 また、患者本位の医療サービスの実現に向けては、保険者の果たすべき役割も大きい。患者本位の医療サービスの提供を実現するためには、保険者には被保険者(患者)のエージェント(善意の代理人)としての役割が求められている。これからは被保険者(患者)により近く、機動的な立場にある保険者が主体的に本来のエージェント機能を発揮することが重要であり、それが可能となるような環境を整備することが必要である。また保険者も意識を高め、その能力を強化することが重要である。

 一方、国民一人一人の意識を改革することも不可欠である。「給付はなるべく多い方がよいが、負担はしたくない」、「医療サービスは国の責任でしっかり行うべき」という受動的な意識ではなく、国民一人一人が制度全体の運営を支える主人公であるという意識が求められる。国民は、健康な生活を送る権利を有するとともに、効率的で満足度の高い医療サービスを受けることを求めており、納得の上でそれに見合う負担をする義務があるということを改めて認識するべきである。

 このような基本的考え方に基づき、当会議として以下の事項を求める。

【具体的施策】

(1) 医療に関する徹底的な情報開示・公開

 患者本位の医療サービスを実現するためには、患者への医療に関する徹底的な情報開示・公開が大前提である。情報開示・公開の仕組みが整備され、提供される情報の患者による適正な評価が行われれば、現状の「情報の非対象性」を理由とする「患者保護」を目的とした規制の多くは不要となるとともに、患者の選択が尊重される患者本位の医療の実現により近づくものと考える。このためには以下の点が特に重要である。

ア 患者情報の開示【平成14年度中に措置】

 現在、レセプトの開示についてはルール化されているが(平成9年厚生省通達)、それだけでは患者情報の開示の点で不十分との指摘がある。カルテについて、患者プライバシーの保護を図りつつ、患者の開示請求に基づく医師のカルテ開示を普及、定着させるため、診療情報開示に関するルールの確立やガイドラインの整備を行うべきである。

イ 医療提供者に関する情報公開【平成13年度中に措置(逐次実施)】

 医療提供者(医師、医療機関など)の適切な情報が公開されることにより、患者は客観的な情報を活用して医療機関を選択しやすくなる。医療提供者にとっては、より良いサービスの提供に向けたインセンティブが生まれ、結果として医療サービスの向上につながる。そのような観点から、医療機関の医療機能、業務内容、医師の専門分野、診療実績などに関する客観的に比較可能な情報公開を促進するべきである。

 そのため、医療に関する各種情報のデータベース化、ネットワーク化を行い、国民が容易に情報にアクセスできる環境の整備を実施するべきである。

ウ 広告規制の緩和【平成13年度中に措置】

 医療機関の広告については、誇大広告など不適切な広告から患者を守るという観点から規制が行われているが、国民にとっては客観的事実に基づいた診療実績など真に知りたい情報の入手まで制限されている。患者の選択が尊重される患者本位の医療サービスの実現のためには、現在の広告規制を見直し、将来のネガティブリスト化を視野に入れつつ、当面は、現在広告が許されている内容・範囲の大幅な拡大を図るとともに(ポジティブリストの積極的拡大)、関係者の要望にもかかわらずポジティブリストへの掲載が困難な場合の説明責任を明確にするべきである。

エ 医療機関に対する評価の充実【平成14年度中に措置】

 現在、財団法人日本医療機能評価機構が評価を行っているが、評価の内容は医療機関の施設・構造や人員配置、組織体としての活動状況などの「構造評価」が中心であり、真に患者が知りたい評価、情報の提供という点では不十分である。患者本位の医療サービスを目指すためには、技術水準や治療方法にかかわる「プロセス評価」や、更には真に患者が知りたいと思う治療成果など「結果評価」にまで踏み込んだ評価が行われ、それが広く公開されることが望まれる。また、財団法人日本医療機能評価機構のみならず多様な第三者評価主体の出現により、評価面でも競争メカニズムが働き、評価の向上が図られることが望ましい。

 なお、現在、評価を受けている病院は全体の6%程度と少なく、まずは国公立病院、特定機能病院、臨床研修病院等について積極的な受審を促進するとともに、これらの医療機関に対しては、評価結果、評価内容の公開をするように措置するべきである。

(2) IT化の推進による医療事務の効率化と医療の標準化・質の向上

 現在、医療分野においては、IT化が十分に進んでいるとは言い難い状況にある。例えば、レセプトやカルテは紙中心のものとなっており、このため、一連の医療事務の効率化が妨げられ、時間的にもコスト的にも多大な負担となっているだけでなく、医療の近代化、効率化が妨げられている。このような状況はIT化の推進により速やかに改善する必要がある。また、それにより多様、多量の医療情報のデータベース化が可能となり、医学研究が推進され、医療の質の向上が図られる。このためには以下の点が特に重要である。

ア レセプトのオンライン請求を中心とする電子的請求の原則化

 平成13年10月1日付で、電子的請求を限定している「磁気テープ等(フロッピー等)を用いた費用請求の特例」(厚生省令:個別指定制度)は廃止された。しかしながらIT化のメリットを最大限享受し医療事務の効率化を図るためには、レセプトの電子処理方法を確立するべきであり、磁気テープなどによる請求に加え、オンラインによる請求をできるようにするべきである。このため、明確な目標期限、実現のための推進方策、安全対策などを明らかにした計画を平成13年度中に策定し、速やかに電子的請求の原則化を図るべきである。さらに、オンライン化による請求を中心のものとするため、一定期間を定め、それ以降オンライン請求をしないものに対しては、それに伴うコストを負担させる仕組みなどを導入し、オンライン請求を中心とする電子的請求の原則化を図るべきである。

 また、オンライン請求を確実かつ安全なものにするためには、プライバシーの保護、セキュリティーの確保などが重要であるが、今日のIT化の進展及び他分野での運用の状況を勘案すれば、短期間でそれら安全面の対策がなされるべきである。

 なお、実態を重視し、安全性が十分確保されているとするものについては即時にオンライン請求を可能とするべきである。【平成13年度中に措置(速やかに実施)】

イ 電子レセプトの規格の充実・強化及び使用の普及促進

 現在、厚生労働省がレセプト電子化のための規格「レセプト電算処理システム」を定めているが、レセプト電子化の普及率は0.4%と低い。レセプトの電子請求を促進し、医療事務の効率化やレセプト情報の有効活用により医療の質的向上を図ることが重要である。

 また、病名・手術名・処置名等やそのコードについてのレセプト、カルテの統一化や、それに適したレセプトフォームの規格化を実施し、その普及を促進するべきである。【平成14年度中に措置】

 なお、診療報酬点数算定ルールは複雑かつあいまいなものになっているので、その明確化、簡素化を図り、コンピューターで利用可能な算定ルールの確立と周知徹底を行うべきである。  

ウ レセプトの記載事項の見直し(主傷病名の記載など)【平成13年度中に見直し、平成14年度中目途に実施】

 現在のレセプトには複数の傷病名が並列的に記載されており、傷病とそれに対する医療内容の対応関係や、医療サービスが提供された日付、転帰が不明であり、患者が受けた医療内容が明確に分かるものとなっていない。

 このため、レセプト記載内容の明確化が必要である。例えば、入院治療に関しては、一定の基準に基づき主傷病、併存症、後発症を区別し、主傷病に応じて医療費を明確にするなど、レセプトの記載事項を見直し、それに基づき具体的に実施するべきである。

 これらの情報は医療の標準化の基礎となるものであり、医療機関にとっては自己の医療水準の検証と改善に資することができる。また、保険者における被保険者に対するより良い保健サービス、情報の提供や包括払い・定額払い制度拡大に資するなど、その効果は大きい。また、医療機関、保険者、審査支払機関との間での共通理解が得られ、審査点検効率の向上につながる。

エ カルテの電子化及び用語・コード・様式の標準化

 現在、医師、医療機関ごとに病名の表記が統一されていないなど、医療行為に関する情報が蓄積されにくい状況にある。カルテが電子化されることにより、情報の蓄積・分析が容易になり医療の質の向上が図られ、結果として患者に対する医療サービスを大きく向上させる可能性がある。

 このため、電子カルテの導入・普及を積極的に促進するべきである。その際、用語・コード・様式の標準化を進め、医師、医療機関が同一のものを使用することが不可欠であり、現在標準化がなされている病名、医薬品名等の普及を促進するとともに、その他の用語の標準化を完成させるべきである。【平成15年度中に措置】

 また、カルテにおける用語・コードなどはレセプトにおけるそれと統一したものとするべきであり、将来的にはカルテから機械的にレセプトが作成される仕組みとするべきである。

オ 複数の医療機関による患者情報の共有【平成13年度中に措置(逐次実施)】

 現在、カルテ等の患者情報は診療を行ったそれぞれの医療機関が管理している。安全で質の高い患者本位の医療サービスを実現するためには、個人情報の保護など一定の条件を備えた上で、患者情報を複数の医療機関で共有し有効活用ができるよう措置するべきである。これにより医療の効率化、医療機関の機能分担・連携の促進が図られる。

カ EBM(Evidence-based Medicine:根拠に基づく医療)の推進【逐次実施、平成15年度を目途にEBMの樹立】

 現在、診療内容については医療機関や医師ごとにばらつきがあり、患者が安心・信頼できる医療機関の選択が難しい状況である。患者本位の医療サービスを実現するために、診療ガイドラインの作成やデータベースの整備が必要であり、平成15年度中にEBMの提供体制を整備し、速やかにEBMが広く一般的に行われるようにするべきである。

 また、患者が自ら診療内容等を理解し選択しやすくするためには、国民用の診療ガイドラインを整備することが必要である。これらは公正で中立な第三者機関が行うべきであり、政府はそのための環境整備を行うべきである。

(3) 保険者の本来機能の発揮

 我が国の医療制度は社会保険を制度の基本としており、患者本位の医療サービスの提供に当たっては、患者のエージェントとしての保険者の役割は極めて重要である。国民の生活レベルが向上し、それに伴う多様なニーズと要求されるスピードにこたえるためには、保険者が被保険者に対してより良い保健サービス・情報を提供し、本来の機能を発揮することが必要である。

 そのためには、これまで国が行ってきた運営をなるべく各保険者の自主性にゆだねるとともに、その受皿となる各保険者が被保険者のエージェントとしての付託に応じ、自主自立の意識の下、責任を持ってその機能を十分果たしていくよう、保険者の体質強化が望まれる。また、保険者機能の強化のために、保険者による医療機関、被保険者に対する情報収集が円滑に行えることが必要である。このためには以下の点が特に重要である。

ア 保険者によるレセプトの審査・支払【平成13年度中に措置(速やかに実施)】

 レセプトの審査・支払は本来保険者の役割であり、保険者の自由な意思に基づき、(1)保険者自らが行う、(2)従来の審査・支払機関へ委託する、(3)第三者(民間)へ委託するなど、多様な選択が認められるべきである。このために、健康保険組合などに対して社会保険診療報酬支払基金に審査・支払を委託することを事実上強制している通達(昭和23年厚生省保険局長通達)や医療機関に対して費用請求を審査支払機関へ提出することを義務付けている省令(昭和51年厚生省令)の規定を廃止する場合には、公的保険にふさわしい公正な審査体制と、患者情報保護のための守秘義務を担保した上で、保険者自らがレセプトの審査・支払を行うことを可能とするべきである。

イ 保険者と医療機関の協力関係の構築【平成13年度中に結論を得、平成14年度から実施】

 保険者と医療機関は協力して被保険者の健康を守り、傷病からの回復の手助けをするという共通の目的を有しており、効率よく医療制度を運用して被保険者の利益を確保するために、協力していく関係にある。そのためには、保健事業の推進等を通じてより密接な関係を構築するとともに、フリーアクセスの確保に十分配慮した上で、保険者と医療機関がサービスや診療報酬に関する個別契約も締結できるようにするべきである。

ウ 保険者による被保険者・医療機関に対する情報収集【平成13年度中に措置】

 保険者が患者のエージェントとしての役割を十分に果たすためには、医療機関や被保険者から必要な情報を入手できる仕組みが整っていなければならない。保険者が審査・支払について責任を負うという体制をとるからには、保険者がこれに必要な情報収集ができることが必要である。これを保険者の強制力をもった権限として構成するかどうかは、なお考慮を要するとしても、保険者が信頼関係に基づき、被保険者の協力を得て被保険者のためにする質問・調査等は現在でも可能であり、これを行政が周知徹底するべきである。被保険者のプライバシーの保護、保険者の守秘義務の確保等は伴って当然の問題である。

エ 保険者の自主的運営のための規制緩和等の措置【逐次実施】

 保険者は、昨今の厳しい保険財政においては業務のより一層の合理化・効率化が求められる。また一方で、被保険者のニーズに対応するためには疾病予防などの意欲的な保健事業活動が求められる。現在、保険者の運営に関し、多くの認可制、又は届出制が設けられており、機動的な活動が制限されている面がある。財産処分に関する手続など各種許認可手続に係る規制緩和や、保険者間で共同事業が円滑に実施できるようにするなど、保険者の自立的な運営のため、一層の規制緩和等の措置を講ずるべきである。

(4) 診療報酬体系の見直し

ア 包括払い・定額払い制度の拡大【段階的に実施】

 現在、我が国の診療報酬体系は出来高払いが中心となっているが、コストインセンティブが働きにくく過剰診療を招きやすいといった弊害が指摘されている。一方、包括払い・定額払い方式については粗診粗療を招きやすいといった弊害が指摘されるものの、医療内容が標準化され、在院日数の短縮やコストの削減など、効率的な医療サービスを提供するインセンティブが働くとともに、医療機関ごとの医療費の格差の縮小が期待される。また、診断群ごとの診療が標準化され、質のばらつきを少なくすることを通じてコストを削減することは、医療費の画一的な削減と大きく異なる点である。こうした点に留意し、医療の標準化、情報公開を推進しつつ、傷病の分類方式、対象分野、対象施設要件など、具体的内容、時期を定め検討し、包括払い・定額払い方式(診断群別定額報酬支払い方式など)の対象医療機関などの拡大を平成13年度より計画を明示して、段階的に進めるべきである。

イ 公的保険診療と保険外診療の併用による医療サービスの提供など公的医療保険の対象範囲の見直し【平成13年度中に措置(逐次実施)】

 国民の生活水準の向上や価値観・ニーズの多様化により、医療に関する国民の要求水準も上昇し、「自ら情報を集め、自己責任で治療方法を選択したい」、「保険のカバーする範囲を超える分は、自費や民間保険を利用しても納得のいく治療を受けたい」というニーズも強くなっている。国民が負担能力に関係なく適切な医療を受けられる「社会保障として必要十分な医療」はこれまでどおり確保した上で、「サービスとしての医療」という視点から、公的保険診療と保険外診療との併用を行えるようにすることは、患者自らの医療サービスの選択肢を増やすという観点から合理的である。

 一方、「特定療養費制度」が導入され、主に「高度先進医療」や「選定療養(差額ベッド、歯科材料の一部、200床以上の病院の初診料など)」が認められているものの、その適用範囲は公的保険カバー範囲全体から見ると厳しく限定されている。

 患者本位の医療サービスのためには、「特定療養費制度」の対象範囲の拡大を行うべきである。その際、医療技術の進歩や患者ニーズの多様化等に応じて、患者に対する十分な情報提供を前提とした上で、患者の選択により公的保険診療と保険外診療を併用することができるようにするべきである。

ウ 価格決定方法の見直し【平成13年度中に措置】

 診療報酬、薬価、医療材料価格は、中央社会保険医療協議会で決定されているが、価格の根拠、決定プロセスなど、決定方法について問題点が指摘されている。

 薬価については先発品と後発品の算定価格、画期的新薬の算定価格などに関して、開発のインセンティブが働くような適正な算定を行うなど、算定ルールの抜本的な改革が必要であり、また、既存薬の効能について、一定の基準に基づいた再評価を実施し、効能が認められなくなったものの承認を取消すなどの措置を講ずるべきである。また、現在、薬価205円以下(内服1日分、頓服1回分など)の薬剤に関しては、薬剤名などの内訳を省略して薬剤費請求ができる「205円ルール」が存在するが、これを廃止し、内訳を明示した請求とし、医療の透明性を図るべきである。

 医療材料については、薬価算定の場合と同様に外国価格参照制度を導入するなど、価格の適正化や流通全体を通じた抜本的な改革による競争政策の徹底など、内外価格差を是正するための所要の措置を講じるべきである。

 なお、医療が広く国民にかかわる事柄であることから、価格決定や保険導入の過程の透明化・中立化・公正化を図る観点から、中央社会保険医療協議会等の在り方を見直すべきである。

(5) 医療分野における経営の近代化・効率化

ア 医療機関経営に関する規制の見直し【平成13年度中に措置(速やかに実施)】

 医療機関の経営形態に関する規制の根拠は、公益性が強い医療サービスについて、営利主体の参入を抑制することにより医療サービスの質を維持するためと考えられてきた。

 しかし、持分のある医療法人の財産は、社会福祉法人と異なり、出資者に帰属しており、その資金調達方法は銀行などからの借入れに事実上限定されている。直接金融市場からの調達などによる医療機関の資金調達の多様化や企業経営ノウハウの導入などを含め経営の近代化、効率化を図るため、利用者本位の医療サービスの向上を図っていくことが必要である。このため、今後、株式会社方式などを含めた医療機関経営の在り方を検討するべきである。

イ 理事長要件の見直し【平成14年度中に措置】

 医療法人の理事長は医師であるか又はそれ以外の者の場合は都道府県知事の認可を受けなければならないという規制が行われている。病院経営と医療管理とを分離して医療機関運営のマネジメントを行い、その運営の効率化を促進する道を開くため、平成14年度のできるだけ早い時期に、合理的な欠格事由のある場合を除き、理事長要件を廃止するべきである。

(6) その他

ア 医療従事者の質の確保【速やかに検討開始、平成15年度中に結論】

 医療の技術の著しい進歩の中、安全で質の高い医療を確保するためには、医療従事者の質の確保、能力の向上が不可欠であり、医療従事者個々の専門性に応じて必要な最新の知識及び技能を修得できるような環境の整備が必要である。その方策の一つとして、平成16年度からの医師の臨床研修化に向けた臨床研修制度の改革や生涯教育の充実、研究の促進とその成果の普及などにより、資格取得後の医療従事者の質の確保を図るべきである。

イ 医師等の教育改革

 現在、我が国では、出身大学による閉鎖的なネットワーク(医局制度)により、医師の自由な競争と正当な評価がなされていないと言われる。このような状況は早急に改革し、研修期間中は特定の医局(出身大学の医局)に入局せずに研修を行う方策、医師の客観的な評価が可能となる方策、広域で研修にかかる医師と病院をマッチングさせる方策などを可能とするべきである。【速やかに検討開始、平成15年度中に結論】

 また、近年、医療事故の遠因として、一部研修医の過酷な勤務の問題が指摘されているが、安全で質の高い医療サービスの確保及び医師の保護の観点から、研修医の働く環境や安全管理の問題について早急に検討し対策を講ずるべきである。

ウ 医療分野従事者の派遣【平成13年度中に措置】

 医療分野に従事する専門的な人材の効率的な配置による良質で効率的な医療供給体制の構築が求められる。このため、医療関連業務の従事者の派遣に関する規制の見直しを検討し、結論を得るべきである。

エ 医薬品販売に関する規制緩和【平成14年度中に措置(逐次実施)】

 医薬品について、平成11年3月31日に行った15製品群の医薬部外品への移行の実施状況を踏まえ、一定の基準(例えば、発売後、長期間経過しその間に副作用などの事故がほとんど認められないもの、など)に合致し、かつ保健衛生上比較的危険が少ないと専門家等の評価を得たものについて、一般小売店で販売できるよう、見直しを引き続き行うべきである。


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2003年02月28日