平成13年11月12日

与党政策責任者会議

心神喪失者等の触法及び精神医療に関するプロジェクトチーム報告書

 

第1 触法心神喪失者等の処遇の改革について

1 新たな処遇決定手続の創設

ア 検察官は、殺人、放火等の重大な犯罪に当たる行為を行った者について、心神喪失者又は心神耗弱者と認め、不起訴処分をしたときは、地方裁判所(全国50か所)に対し、処遇の決定を申し立てる。

イ 地方裁判所の判定機関は、裁判官、精神科医、精神保健福祉士等により構成し、処遇を決定する。

ウ 処遇は、より確実な治療効果・病状の判断の下で入退院や通院の要否が決定されるべきであるという視点から精神科治療を受けさせるものとする。

エ 処遇は、専門治療施設への入院又は観察下の通院とする。

オ 処遇の決定に当たっては、精神科医による対象者の適切な鑑定を行う。

カ 処遇の期間については、不当に長期にわたることがない制度とする。

キ 判定機関の決定に対する不服申立手続を定める。

ク 処遇を申し立てられた者については、弁護士による援助を受けることができることとする。

ケ 被害者及びその遺族については、一定の範囲で審判の傍聴を許すこととする。

コ 判定機関は、処遇を申し立てられた者が責任能力を有すると認めたときは、その旨を検察官に通知するものとする。

サ 刑事訴訟において、裁判所が被告人を心神喪失者又は心神耗弱者と認めて無罪等としたときは、検察官はアの手続を取るものとする。

2 対象者の処遇施設の整備

ア 対象者を適切に治療するため、医療従事者や設備を充実した専門治療施設を整備する。

イ 専門治療施設は、国公立病院の中に設ける。

ウ 専門治療施設は、入院治療、社会適応訓練等を提供する。

エ 専門治療施設の長は、退院を許可すべきと考えるときは、地方裁判所に対し、退院許可の申立てをし、判定機関がこれを決定する。

3 退院後の体制の確立

ア 判定機関が退院を許可したとき及び観察下の通院措置を決定したときは、その旨を保護観察所(全国50か所)に通知する。

イ 保護観察所は、対象者の観察、生活環境の整備、継続的な治療を確保するための指導監督等を行う。

ウ 保護観察所は、専門治療施設、保健所、精神保健福祉センター、社会復帰施設等と連絡調整を図るなどして連携を確保する。

エ 専門治療施設は、通院治療、社会適応訓練等を提供する。

オ 保健所、精神保健福祉センター、社会復帰施設等は、精神保健福祉サービスを提供する。

カ 退院許可の取消し、通院措置の終了については、判定機関が決定する。

4 司法精神医学研究・研修体制の充実強化

 触法心神喪失者等に対する治療及び社会適応プログラム、社会復帰のための訓練、精神鑑定等に関する研究及び人材の育成を進めるため、その体制を充実強化する。

第2 精神障害者医療及び福祉の充実強化について

1 精神障害者の保健・医療・福祉充実のための計画の策定、実施

 精神障害者の保健・医療・福祉の充実強化のため、次の点を踏まえた計画を策定し、着実な推進を図る。

(1) 患者の病態に応じた適切な入院医療の充実

ア 急性期の医療、早期の社会復帰を目指した医療、また、思春期精神医療、薬物依存の治療等の専門的医療等、患者の病態に応じた適切な医療を行えるよう、精神病床の機能分化について早急に検討を深め、これを推進する。

イ 病院の情報公開と外部評価を促進する。

(2) 在宅生活を支える、医療及び福祉対策の充実

ア 施設中心の精神医療から、地域医療への転換を図る。

イ 患者が地域で安心して生活できるよう、精神科救急体制の整備を急ぐとともに、精神科診療所等も活用した地域医療体制の充実を図る。

ウ ホームヘルプ、ショートステイ、グループホーム等、在宅生活を支援する福祉対策の充実を図る。

エ 当事者どうしが相互支援活動を行う、自助グループ活動(ピアサポート)の支援を図る。

(3) 社会復帰施設の充実

 入院患者が、円滑に社会復帰できるよう、生活訓練、授産、生活の場の提供等を行う社会復帰施設の充実を図る。

(4) 心の健康対策の充実

 PTSD対策、自殺予防等、幅広い心の健康問題に対する研究や相談の充実を図る。

(5) 精神疾患の予防、診断、治療に関する研究の推進

 精神疾患の予防、診断、治療に関する研究を推進する。

(6) 精神保健、医療、福祉を担う専門スタッフの養成、確保

 医師、看護職員、精神保健福祉士等の専門職種の確保及び資質の向上を図る。

(7) 精神障害者に対する差別・偏見の解消への取組

 精神障害者への偏見・差別を解消するためのアクション・プランを策定する。

2 診療報酬のあり方の改善

 精神障害の特性に応じ、効果的、効率的な医療が提供されるよう、診療報酬体系の見直しを行う。


与 党 政 策 責 任 者 会 議

心神喪失者等の触法及び精神医療に関するプロジェクトチーム

自由民主党 佐 藤 剛 男(座長)
 
持 永 和 見
 
山 本 幸 三
 
公 明 党 福 島   豊
 
漆 原 良 夫
 
山 下 栄 一
 
保 守 党 小 池 百合子
 
松 浪 健四郎
 

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2003年02月28日