携帯電話等の使用に関する暫定指針
平成8年3月29日
不要電波問題対策協議会
医用電気機器への電波の影響を防止するための
「携帯電話等の使用に関する暫定指針」について
携帯電話等の無線機は急速に普及しており、今後、病院等の医療機関内での携
帯電話の使用も増加すると予想されています。一方、携帯電話等から発射される
電波によって医用電気機器の機能に影響を与える事例が報告されています。
このため、携帯電話等の電波による医用電気機器への影響を明らかにするとと
もに、医療機関等における携帯電話の使用の在り方を検討することが緊急の課題
となってきました。
こうした背景から、学識経験者、関係省庁、電気通信事業者、関達工業会等で
構成している不要電波問題対策協議会(会長:郵政省電気通信局長)の中に、上
記の課題について専門に検討を行う医用電気機器作業部会(部会長:鈴木務 電
気通信大学学部長)を平成7年12月に設け、調査・検討を実施してきたところ
です。
今般、別紙のとおり「携帯電話等の使用に関する暫定指針」を取りまとめまし
た。本指針は暫定指針ですが、今後、本協議会会員の関係団体等を通じ、携帯電
話等の使用者及び医用電気機器の使用者に十分周知してゆく予定です。関係各方
面で本指針を活用して頂ければ幸いです。
なお、本協議会では平成8年度に実証実験を実施し、平成9年3月を目途に更
に詳細な指針を検討してゆくことを予定しております。
連絡先:不要電波問題対策協議会事務局
電話:03‐3504‐4895
(別紙)
医用電気機器への電波の影響を防止するための
携帯電話等の使用に関する暫定指針
本年度当協議会が収集した実験データは医用電気機器のー部に限られており、す
べてを網羅したものではない。今回の指針は暫定的なものであり、今後広範な実証
実験等に基づき詳細な指針を取りまとめる予定である。したがって、暫定指針の細
部については変更の可能性がある。
本指針は暫定的なものではあるが、早期に医療関係者、電気通信事業者、医療機
器製造業者等を通じて、携帯電話等の利用者及び医用電気機器の使用者に注意喚起
を促すため十分周知する必要がある。
1 医療盤関の屋内における携帯電話の使用
これまでに収集した国内の実験データ、海外での文献等を検討した結果、詳細
な安全距離が明らかになるまでの間、医療機関の屋内においては、携帯電話から
発射される電波により、医用電気機器が誤動作する可能性があるため、次のとお
り措置することが望ましい。
(1)手術室、舞車治療室(ICU)、冠状動脈疾患監視病室(CCU)等
携帯電話(注1)を持ち込まないこと。
(理由)手術室、集中治療室、冠状動脈疾患監視病室においては、人命
に直接かかわる医用電気機器が多数設備されているため。
(2)病棟内
携帯電話の電源を切ること。(注2)
(理由)病室において医用電気機器が使用されている場合があるほか、
医用電気機器を装着した患者が病棟内部(廊下等)を移動する
(又は移動している)可能性があるため。
(3)ロビー
携帯電話の使用に当たり、周囲の状況に十分に注意を払うこと。
もし、付近で医用電気機器が使用されている場合には、電源を切ること。
(注2)
(理由)携帯電話の所持者の周辺(隣室を含む。)において、医用電気
機器が使用されている可能性があるため。
(注1)本項でいう携帯電話は、@800メガヘルツ帯アナログ携帯機、A800
メガヘルツ帯デジタル携帯機、B1,500メガヘルツ帯デジタル携帯機、
C800メガヘルツ帯ショルダーホン(肩掛け型携帯電話)である。
(注2)携帯電話の電源を入れた状態では、通話中以外でも自動的に電波が発射
される。
2 医療機関の屋内における基地局の設置
医療機関の屋内におけるPHS、構内ページングシステム等の基地局の設置に
ついては、実証実験等に基づく指針が示されるまで、次のとおり措置することが
望ましい。
(1)既に基地局が設置されている場合
基地局の設置者は、電波による医用電気機器への影響を医用電気機器製造業
者等の関係者に確認すること。
(2)新たに基地局を設置する場合
基地局の設置者は、あらかじめ電波による医用電気機器への影響を医用電気
機器製造業者等の関係者に確認すること。
3 医療機関の屋内等における小型無線機の使用
小型無線機(アマチュア無線機、パーソナル無線、トランシーバー等)から発
射される電波も医用電気機器に影響を与える可能性があるので、医療機関の屋内
等及び医用電気機器の周辺では、これらの無線機の使用を控えることが望ましい。
4 植込み型心臓ペースメーカ装着者への注意事項
植込み型心臓ベースメーカは、その近くで携帯電話、自動車電話及びショルダ
ーホンを使用した時に、電波による影響を受ける可能性がある。実験結果によれ
ば、植込み型心臓ベースメーカを装着している人は、次のとおり措置することが
望ましい。
(1)携帯童話(出力は1ワット以下)
携帯電話の使用及び携行に当たっては、携帯電話を植込み型心臓ベースメー
カ装着部位から22cm程度以上離すこと。
また、混雑した場所では付近で携帯電話が使用されている可能性があるので、
十分に注意を払うこと。
(2)自動車雲話及びショルダーホン(出力は2ワットから5ワットまで)
植込み型心臓ベースメーカを自動車電話及びショルダーホンのアンテナから
30cm程度以内に近づけないこと。
5 医療機関外での医用電気機器の使用
植込み型心臓ベースメーカ以外にも医療機関の外で医用電気機器が使用される
場合があるが、これらの機器の使用者は電波による影響について、個別に医用電
気機器製造業者等の関係者に確認を行うことが望ましい。
6 携帯電話の所持者への注意事項
携帯電話の所持者は、第4項で示したような近接した状態となる可能性がある
場所では、携帯電話の電源を切るよう配意することが望ましい。
(理由)近くに植込み型心臓ベースメーカ(携帯電話から発射される電波に
より影響を受ける可能性のある生命維持用の医用電気機器)を装着し
た人がいる可能性があるため。
7 PHS端末
PHS端末から発射される電波(出力は携帯電話の十分のー以下、小電力タイ
ブの医療用テレメータと同程度)による医用電気機器への影響については、携帯
電話と比較して小さく、これまでの実験結果からは植込み型心臓ベースメーカに
は影響を与えなかったことが確認されている。
しかしながら、すべての医用電気機器について確認してはいないため、実証実
験等に基づく指針が示されるまでは、慎重に取り扱うことが望ましい。
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NOV. 14, 1996