平成8年6月17日
厚生省においては、平成8年6月10日の老人保健福祉審議会の答申を踏まえ、公的 介護保険の制度化に向けて法案作成作業を進めているところですが、去る6月17日、 介護保険制度の創設に向け、政府・与党一致して積極的に取り組み、介護保険法案要綱 案を基本として次期国会に法案を提出する旨の与党合意事項が発表されました。また、 翌日の閣議においても、この与党合意事項を尊重し、次期国会への法案提出を目指す旨 の厚生大臣の発言がありました。 今後、厚生省においては、国民及び関係者の方々の幅広い理解と合意を求めつつ、与 党合意事項に掲げられた懸案事項について解決を図りながら、法案作成作業をさらに進 めていくこととしています。 与党合意事項 一 介護保険制度の創設に向け、政府・与党一致して積極的に取り組んでいく。 二 同制度の創設に当たっては、関係者の意見を踏まえつつ、要綱案(別紙1)を基本と して、懸案事項(別紙2)についての解決を図りながら、必要な法案作成作業を行い、 次期国会に法案を提出する。 与党責任者会議座長 自由民主党 加藤 紘一 社会民主党 佐藤 観樹 新党さきがけ 鳩山由紀夫 与党政策調整会議座長 自由民主党 山崎 拓 社会民主党 伊藤 茂 新党さきがげ 渡海紀三朗
(別紙1) 介護保険法案要綱案 第一 総則 一 目的等 1 加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により介護を要する者等がそ の有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう必要な保健医療サ ービス及び福祉サービスに係る給付を行い、国民の保健医療の向上及び福祉の増 進を図ることを目的とすること。 2 保険給付は、要介護状態の軽減若しくは悪化の防止又は要介護状態の予防に資 するよう行われるとともに、医療との連携に十分配慮して行われなければならな いこと。 3 保険給付は、被保険者の選択に基づき、適切な保健医療サービス及び福祉サー ビスが、多様な事業者又は施設から、総合的かつ効率的に提供されるよう配慮し て行われなければならないこと。 4 保険給付の内容及び水準は、被保険者が要介護状態となった場合においても、 可能な限り、その居宅において、その有する能力に応じ自立した日常生活を営 むことができるように配慮されなければならないこと。 二 保険者 市町村及び特別区は、介護保険を行うものとすること。 三 国民の努力及び義務 1 国民は常に健康の保持増進に努めるとともに、要介護状態となった場合におい ても、進んでリハビリテーションその他の適切な保健医療サービス及び福祉サー ビスを利用することにより、その有する能力の維持向上に努めるものとすること。 2 国民は、共同連帯の理念に基づき、介護保険事業に要する費用を公平に負担す るものとすること。 四 国及び都道府県の責務並びに医療保険者の協力 国及び都道府県は、介護保険事業の運営が健全かつ円滑に行われるよう必要な措 置を講じなければならないこと。医療保険者は、介護保険事業が健全かつ円滑に実 施されるよう協力しなければならないこと。 五 用語の定義 1 要介護状態 「要介護状態」とは、身体上又は精神上の障害があるために、入浴、排せつ、 食事等の日常生活における基本的な動作の全部又は一部について、厚生省令で定 める期間にわたり維続して、常時介護を要すると見込まれる状態であって、その 介護の必要の程度に応じて厚生省令で定める要介護状態の区分のいずれかに該当 するものをいうこと。 2 要介護状態となるおそれがある状態 「要介護状態となるおそれがある状態」とは、身体上又は精神上の障害がある ために、厚生省令で定める期間にわたり維続して、日常生活を営むのに支障があ ると見込まれる状態であつて、要介護状態以外の状態をいうこと。 3 要介護者 「要介護者」とは、次のいずれかに該当する者をいうこと。 (1) 要介護状態にある65歳以上の者 (2) 要介護状態にある40歳以上65歳未満の者であって、その要介護状態の 原因である身体上又は精神上の障害が加齢に伴つて生ずる心身の変化に起因 する疾病であって政令で定めるもの(以下「特定疾病」という。)によって生 じたものであるもの 4 要支援者 「要支援者」とは、次のいずれかに該当する者をいうこと。 (1) 要介護状態となるおそれがある状態にある65歳以上の者 (2) 要介護状態となるおそれがある状態にある40歳以上65歳未満の者であ って、その要介護状態となるおそれがある状態の原因である身体上又は精神 上の障害が特定疾病によって生じたものであるもの 5 居宅サービス等 「居宅サービス」とは、訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテ ーション、居宅療養管理指導、通所介護、通所リハビリテーション、短期入所生 活介護、短期入所療養介護、痴呆対応型共同生活介護、特定施設入所者生活介護 及び福祉用具貸与をいい、「居宅サービス計画」とは、要介護者等が居宅サービ スの適切な利用ができるよう、その依頼を受けて、利用するサービスの種類、内 容、担当者等について居宅介護支援事業者が作成する計画をいうこと。 6 介護施設サービス 「介護施設サービス」とは、生活介護施設サービス、保健介護施設サービス及 び療養介護施設サービスをいい、「介護施設サービス計画」とは、介護施設に入 所している要介護者について、当該介護施設が提供するサービスの内容、担当者 等を定めた計画をいうこと。 7 生活介護施設 特別養護老人ホームであって、当該特別養護老人ホームに入所する要介護者に 対し、介護施設サービス計画に基づいて、入浴、排せつ、食事等の介護その他の 日常生活上の世話、機能訓練、健康管理及び療養上の世話を行うことを目的とす る施設をいうこと。 8 保健介護施設 要介護者に対し、介護施設サービス計画に基づいて、看護、医学的管理の下に おける介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことを 目的とする施設として、都道府県知事の許可を受けたものをいうこと。 9 療養介護施設 医療法に規定する療養型病床群(その全部又は一部が専ら要介護者を入院させ るものに限る。)又は都道府県知事の許可を受けた病院その他のこれに準ずる病 院であって政令で定めるものの病床のうち痴呆の状態にある要介護者の心身の特 性に応じた適切な看護が行われるものとして政令で定めるもの(以下「療養型病 床群等」という。)を有する病院であって、当該療養型病床群等に入院する要介 護者に対し、介護施設サービス計両に基づいて、療養上の管理、看護、医学的管 理の下における介護その他の世話及び機能訓練その他必要な医療を行うことを目 的とする施設をいうこと。 六 審議会に関する規定 第二 被保険者 一 被保険者 1 市町村の区域内に住所を有する65歳以上の者(第一号被保険者) 2 市町村の区域内に住所を有する40歳以上65歳未満の医療保険加入者(第二 号被保険者) 二 介護施設に入所中の被保険者の特例 介護施設に入所することにより当該介護施設が所在する市町村の区域内に住所を 有するに至つた被保険者であって、当該介護施設に入所した際他の市町村の区域内 に住所を有していたと認められるものは、当該他の市町村が行う介護保険の被保険 者とする等、特例を定めること。 第三 介護認定審査会 一 介護認定審査会 被保険者が要介護状態に該当することの審査及び判定等(審査判定業務)を行わせ るため、市町村に介護認定審査会を置くこと。 二 委員 介護認定審査会の委員は、要介護者等の保健、医療又は福祉に関する学識経験を 有する者のうちから、市町村長が任命すること。 第四 保険給付 一 通則 1 この法律による保険給付は、次に掲げる保険給付とすること。 (1) 被保険者の要介護状態に関する保険給付(介護給付) (2) 被保険者の要介護状態となるおそれがある状態に関する保険給付(予防給付) (3) その他、要介護状態の軽減若しくは悪化の防止又は要介護状態の予防に資す る保険給付として条例で定めるもの(市町村特別給付) 2 市町村の認定 (1) 介護給付を受けようとする被保険者は、要介護者に該当することについて、 市町村の認定(要介護認定)を受けなければならないこと。 (2) 予防給付を受けようとする被保険者は、要支援者に該当することについて、 市町村の認定(要支援認定)を受けなければならないこと。 二 介護給付 1 居宅介護サービス費の支給 (1) 市町村は、要介護認定を受けた被保険者(要介護被保険者)のうち居宅におい て介護を受けるものが、自己の選定する指定居宅サービス事業者が提供する居 宅サービス(指定居宅サービス)を受けたときは、居宅介護サービス費を支給す ること。 (2) 居宅介護サービス費の額 ア 訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養 管理指導、通所介護、通所リハビリテーション及び福祉用具貸与居宅サービ スの種類ごとに、内容、地域等を勘案して算定される平均的な費用の額を勘 案して厚生大臣が定める基準により算定した費用の額の100分の90に相 当する額 イ 短期入所生活介護、短期入所療養介護、痴呆対応型共同生活介護及び特定 施設入所者生活介護居宅サービスの種類ごとに、要介護状態区分、地域等を 勘案して算定される平均的な費用の額を勘案して厚生大臣が定める基準によ り算定した費用の額の100分の90に相当する額 2 特例居宅介護サービス費の支給 市町村は、要介護被保険者が、要介護認定の効力が生じた日前に緊急その他や むを得ない理由により指定居宅サービスを受けた場合、基準該当居宅サービスを 受けた場合及び離島その他の地域で指定居宅サービス及び基準該当居宅サービス 以外の居宅サービス又はこれに相当するサービスを受けた場合において、必要が あると認めるときは、特例居宅介護サービス費を支給すること。 3 居宅介護サービス費等に係る支給限度額 1月(3月)当たりの居宅介護サービス費の額の総額及び特例居宅サービス費の 額の総額の合計額は、厚生大臣の定める居宅介護サービス費区分支給限度基準額 の100分の90に相当する額を超えることができないこと。 4 居宅介護福祉用具購入費及び居宅介護住宅改修費の支給 (1) 市町村は、要介護被保険者が入浴又は排せつ等の用に供する福祉用具を購入 したときは、居宅介護福祉用具購入費を支給すること。 (2) 市町村は、要介護被保険者が手すりの取付け等の住宅改修を行ったときは、 居宅介護住宅改修費を支給すること。 5 居宅介護サービス計画費の支給 市町村は、要介護被保険者が、指定居宅介護支援事業者から居宅サービス計画 の作成等の居宅介護支援を受けたときは、居宅介護サービス計画費を支給するこ と。 6 施設介護サービス費の支給 (1) 市町村は、要介護被保険者が、指定又は許可を受けた介護施設から介護施設 サービスを受けたときは、当該指定介護施設サービス等に要した費用(日常生 活に要する費用として厚生省令で定める費用を除く。)について、施設介護サー ビス費を支給すること。 (2) 施設介護サービス費の額は、介護施設サービスの種類ごとに要介護状態の区 分、地域等を勘案して算定される平均的な費用(日常生活費を除く。)の額を勘 案して厚生大臣が定める基準により算定した額の100分の90に相当する額 と施設における食事提供費から食費の標準負担額(低所得者に対する必要な配 慮を行う。)を控除した額の合計額とすること。 7 特例施設介護サービス費の支給 要介護認定の効力が生じた日前に、緊急その他やむを得ない理由により指定介 護施設サービス等を受けた場合において、必要があると認めるときは、要介護 被保険者に対し、特例施設介護サービス費を支給すること。 8 高額介護サービス費の支給 要介護被保険者が受けた居宅サービス又は指定介護施設サービス等に要した費 用の合計額から、当該費用につき支給された居宅介護サービス費、特例居宅介 護サービス費、施設介護サービス費及び特例施設介護サービス費の合計額を控 除して得た額が、著しく高額であるときは、当該要介護被保険者に対し、高額 介護サービス費を支給すること。 三 予防給付 予防給付は、居宅支援サービス費の支給、特例居宅支援サービス費の支給、居宅 支援福祉用具購入費の支給、居宅支援住宅改修費の支給、居宅支援サービス計画費 の支給、特例居宅支援サービス計画費の支給及び高額居宅支援サービス費の支給と し、それぞれ介護給付と同様に所要の事項を定めること。 四 保険給付の制限等 保険給付の制限、保険料滞納者に係る支払方法の変更、保険給付の支払の一時差 止、医療保険各法の規定による保険料等に未納がある者に対する保険給付の一時差 止等に関し、所要の規定を設けること。 第五 事業者及び施設 一 指定居宅サービス事業者及び指定居宅介護支援事業者 1 指定居宅サービス事業者及び指定居宅介護支援事業者の指定は、居宅サービス 事業又は居宅介護支援事業を行う者の申請により、居宅サービス事業又は居宅介 護支援事業を行う事業所ごとに都道府県知事が行うこと。 2 指定居宅サービスの事業及び指定居宅支援の事業の人員、設備及び運営に関す る基準は、厚生大臣が定めること。 二 介護施設 1 生活介護施設の指定は、老人福祉法に規定する特別養護老人ホームであって、 その開設者の申請があったものについて、都道府県知事が行うこと。 2 保健介護施設を開設しようとする者は、都道府県知事の許可を受けなければな らないこと。 3 療養介護施設の指定は、療養型病床群等を有する病院であって、その開設者の 申請があったものについて、都道府県知事が行うこと。 4 介護施設の人員、設備及び運営に関する基準は厚生大臣が定めること。 第六 介護保険事業計画 一 厚生大臣は、介護保険事業に係る保険給付の円滑な実施を確保するための基本指 針を定めるものとすること。 二 市町村は、基本指針に即して、当該市町村が行う介護保険事業に係る保険給付の 円滑な実施に関する計画を定めるものとすること。 三 都道府県は、基本指針に即して、介護保険事業に係る保険給付の円滑な実施の支 援に関する計画を定めるものとすること。 第七 費用等 一 費用の負担 1 国は、市町村に対し、介護給付及び予防給付に要する費用の額の100分の2 0に相当する額を負担すること。 2 国は、介護保険の財政を調整するため、市町村に対して、介護給付及び予防給 付に要する費用の額の見込額の総額の百分の五に相当する額の調整交付金を交付 すること。 3 都道府県は、市町村に対し、介護給付及び予防給付に要する費用の額の100 分の12.5に相当する額を負担すること。 4 市町村は、その一般会計において、介護給付及び予防給付に要する費用の10 0分の12.5に相当する額を負担すること。 5 市町村の介護給付及び予防給付に要する費用の額に3年ごとに定める第二号被 保険者負担率(すべての市町村に係る被保険者の見込数の総数に対するすべての 市町村に係る第二号被保険者の見込数の総数の割合に2分の1を乗じて得た率を 基準として設定するものとし、3年ごとに、当該割合の推移を勘案して政令で定 めるものをいう。)を乗じて得た医療保険納付対象額については、社会保険診療 報酬支払基金(以下「基金」という。)が市町村に対して交付する介護給付費交付 金をもって充てること。 6 国及び都道府県は、介護保険事業に要する費用の一部を補助することができる こと。 7 保険料 (1) 市町村は、介護保険事業に要する費用に充てるため、第一号被保険者から政 令で定める基準に従い市町村が条例で定めるところにより算定された保険料率 に基づき、保険料を徴収しなければならないこと。 (2) 1の保険料率は、概ね三年を通じ財政の均衡を保つことができるものでなけ ればならないこと。 8 保険料の徴収方法 (1) 保険料の徴収については、年金保険者による特別徴収の方法による場合を除 くほか、市町村が第一号被保険者等から保険料を徴収する普通徴収の方法によ らなければならないこと。 (2) 第一号被保険者が属する世帯の世帯主及び第一号被保険者の配偶者は、保険 料の連帯納付義務を負うこと。 二 医療保険者の納付金 1 基金は、年度ごとに、医療保険者から、介護給付費納付金(以下「納付金」と いう。)を徴収すること。 2 医療保険者は、納付金の納付に充てるため医療保険各法の規定により保険料又 は掛金を徴収し、納付金を納付する義務を負うこと。 3 各医療保険者から徴収する納付金の額は、当該年度におけるすべての市町村の 医療保険納付対象額の見込額の総額をすべての医療保険者に係る第二号被保険者 の見込数の総数で除して得た額に、当該医療保険者に係る第二号被保険者の見込 数を乗じて得た額を前々年度分の当該確定額で調整した額とすること。 第八 社会保険診療報酬支払基金の介護保険関係業務 基金は、医療保険者から納付金を徴収し、市町村に対し介護給付費交付金を交付 すること。 第九 保健福祉事業 市町村は、要介護被保険者を現に介護する者等の支援事業、被保険者が要介護状 態となることを予防するための事業等を行うことができること。 第十 国民健康保険団体連合会の介護保険関係業務 一 国民健康保険団体連合会(以下「連合会」という。)は、介護保険事業を行う市町 村が共同して目的を達成するため、次に掲げる業務を行うこと。 1 市町村から委託を受けて行う要介護認定等に関する審査判定業務 2 市町村から委託を受けて行う居宅介護サービス費等の請求に関する審査及び支 払 3 1又は共同した2以上の市町村の求めに応じて行う保険料率の算定に関する基 準の提示 4 指定居宅サービス事業者、介護施設等に対する必要な指導及び助言等 二 連合会は、介護保険の財政の安定化に資するため、市町村からの拠出金等を財源 として、市町村に対する必要な交付金の交付その他の援助を行うものとすること。 第十一 介護認定審査委員会 市町村から委託を受けて審査判定業務を行うため、連合会に、介護認定審査委員会 を置くこと。 第十二 介護給付費審査委員会 市町村から委託を受けて介護給付費請求書の審査を行うため、連合会に、介護給付 費審査委員会を置くこと。 第十三 審査請求 一 保険給付に関する処分(要介護認定等に関する処分を含む。)又は保険料、徴収 金(納付金を除く。)に関する処分に不服がある者は、各都道府県に置かれた介護 保険審査会に審査請求をすることができること。 二 介護保険審査会は、被保険者を代表する委員、市町村を代表する委員及び公益を 代表する委員で組織すること。 第十四 施行期日 この法律は、公布の日から3年を超え6年を超えない範囲内で政令で定める日から 施行すること。ただし、次に掲げる事項は、それぞれの定める日から施行すること。 一 第一の六 公布の日から3月を超えない範囲内で政令で定める日 二 第八 平成11年1月1日 三 第一 (五の6から9までを除く。)、第二の一、第三、第四(二の6及び7を除 く。)、第五の一並びに第六から第十四まで 平成11年4月1日 第十五 検討 一 介護保険制度については、この法律の施行後における介護を要する者等に係る保 健医療サービス及び福祉サービスを提供する体制の状況、保険給付に要する費用の 状況、国民負担の推移、社会経済の情勢等を勘案し、並びに障害者の福祉に係る施 策、医療保険制度等との整合性及び市町村が行う介護保険事業の円滑な実施に配慮 し、被保険者及び保険給付を受けられる者の範囲、保険給付の内容及び水準並びに 保険料及び納付金(その納付に充てるため医療保険各法の規定により徴収する保険 料又は掛金を含む。)の負担の在り方を含め、その全般について検討が加えられ、 その結果に基づき、必要な見直し等の措置が講ぜられるべきものとすること。 二 政府は、この法律の施行後、保険給付に要する費用の動向、保険料負担の状況等 を勘案し、必要があると認めるときは、居宅サービス、介護施設サービス等に要す る費用に占める介護給付等の割合について、検討を加え、その結果に基づいて所要 の措置を講ずるものとすること。 介護保険法施行法案要綱案 第一 経過措置に関する事項 一 居宅介護サービス費等支給限度基準額等に関する経過措置 1 居宅介護サービス費等支給限度基準額等に関する経過措置 (1) 市町村及び特別区(以下単に「市町村」という。)は、当該市町村が行う介護 保険の保険給付に係る居宅サービス等の必要量の見込み、当該居宅サービス等 を提供する体制の確保の状況等を考慮して特に必要と認める場合においては、 政令で定める日までの間は、介護保険法に規定する法定居宅紹付支給限度基準 額に代えて、それぞれの額を下回る額を、当該市町村における経過的居宅給付 支給限度基準額とすることができること。 (2) (1)の政令で定める日を指定するに当たっては、介護保険法の居宅給付に係 る規定の施行の日(以下「居宅給付施行日」という。)から起算して五年を経過 した日以後の日で、経過的居宅給付支給限度基準額を定める市町村の市町村介 護保険事業計画及びその特定市町村を区域内に含む都道府県が定める都道府県 介護保険事業支援計画の達成状況等を考慮して、法定居宅給付支給限度基準額 に基づく介護給付等を円滑に行うことができると認められる日を選定するもの とすること。 2 市町村、都道府県及ぴ国の措置 (1) 1の(1)の市町村は、市町村介護保険事業計画に定められた介護給付等対象 サービスを提供する体制の確保に必要な措置を講ずるよう努めるものとするこ と。 (2) 都道府県は、1の(1)の市町村に対して都道府県介護保険事業支援計画に基づ きその支援に必要な施策を実施するよう努めるものとすること。 (3) 国は、市町村及び都道府県に対して、(1)及び(2)に規定する措置等に関し必 要な助言、指導その他の措置を講ずるよう努めるものとすること。 二 指定居宅サーピス事業者等に関する経過措置 介護保険法の居宅紹付に係る規定(以下「居宅給付規定」という。)の施行の際現 に改正前の老人保健法に規定する指定老人訪問看護事業者であるものについて、介 護保険法の居宅サービス事業に係る指定があったものとみなす等所要の経過措置を 設けること。 三 介護施設に関する経過措置 1 生活介護施設及び保健介護施設に関する経過措置 介護保険法の施行の際現に存する特別養護老人ホーム、老人保健施設について 、介護保険法の生活介護施設の指定、保健介護施設の許可があったものとみなす こと。 2 療養介護施設に関する経過措置 療養介護施設については、介護保険法の施行日から起算して3年を超えない範 囲において政令で定める日までの間においては、要介護者の心身の特性に応じた 適切な看護が行われるものとして政令で定める病院をも対象とすること。 四 適用除外に関する経過措置 当分の間、身体障害者福祉法の規定により身体障害者療護施設に入所しているも のその他特別の理由がある者で厚生省令で定めるものは、介護保険の被保険者とし ないこと。 五 生活介護施設入所者に関する経過措置 施行日において生活介護施設に入所している改正前の老人福祉法の措置に係る者 については、施行日以後引き続き当該生活介護施設に入所している間は、施設介護 サービス費を支給すること。 六 施行のために必要な準備 1 厚生大臣は、介護保険法に基づく制度に関する重要事項等を定めようとすると きは、施行日前において介護保険法に規定する政令で定める審議会に諮問等を行 うことができること。 2 居宅給付規定の施行の年度における特別徴収について、所要の事前準備規定を 設けること。 3 1及び2に規定するもののほか、介護保険法及びこの法律を施行するために必 要な条例の制定又は改正及び要介護認定の手続等の行為は、施行日前においても 、行うことができること。 七 その他 1 介護保険法及びこの法律の施行前にした行為等に対する罰則の適用については 、なお従前の例によること。 2 この法律に規定するもののほか、介護保険法の施行に伴い必要な経過措置は、 政令で定めること。 第二 関係法律の一部改正に関する事項 一 老人福祉法の一部改正 1 事業及び施設に関する事項 (1) 老人居宅生活支援事業及び特別養護老人ホームに係る規定を整理すること。 (2) 痴呆対応型老人共同生活援助事業(痴呆性老人向けグループホーム)を老人 居宅生活支援事業に位置づけること。 2 福祉の措置に関する事項 (1) 市町村は、介護保険の対象となるサービス等の連携、調整を図るなど、地域 の実情に応じた支援体制の整備に努めること。 (2) 要援護老人がやむを得ない事由により介護保険法に規定するサービスを利用 することが著しく困難であると認めるときは、市町村は、居宅における介護、 特別養護老人ホームへの入所の措置を採ること。 3 老人福祉計画に関する事項 市町村及び都道府県の老人福祉計画に関する規定を介護保険法の内容に沿って 整理すること。 4 費用に関する事項 2の(2)の措置に係る者が、介護保険法の規定により当該措置に相当する保険 給付を受けることができる者であるときは、市町村は、その限度において費用を 支弁することを要しないこと。 二 老人保健法の一部改正 1 指定老人訪問看護事業者、老人保健施設及び老人保健施設療養費に関する規定 を整理すること。 2 介護保険の給付と老人保健法に基づく医療給付の調整に関する規定を置くこと 。 3 市町村及び都道府県の老人保健計画に関する規定を介護保険法の内容に沿って 整理すること。 三 健康保険法の一部改正 1 健康保険の保険料額は、次の区分に従い、次に規定する額とすること。 (1) 介護保険法の第二号被保険者てある被保険者 一般保険料額(被保険者の標 準報酬月額に一般保険料率を乗じて得た額)と介護保険料額(被保険者の標準報 酬月額に介護保険料率を乗じて得た額)との合算額 (2) (1)以外の被保険者 一般保険料額 2 政府の管掌する健康保険に係る介護納付金の納付に要する費用について、国庫 補助の対象とすること。 3 二の2と同様に、介護保険の給付と健康保険の給付の調整に関する規定を置く こと。 四 船員保険法の一部の改正 健康保険法の改正に準じた改正を行うこと。 五 国民健康保険法の一部改正 1 保険料等に関する事項 (1) 保険料の徴収目的として介護納付金の納付に要する費用を加え、介護納付金 の納付に要する費用に充てるための保険料は、介護保険の第二号被保険者であ る被保険者について賦課すること。 (2) 介護納付金の納付に要する費用について、国庫負担等の対象とすること。 (3) 保険料を滞納している世帯主等に対する措置を強化すること。 2 二の2と同様に、介護保険の給付と国民健康保険の給付の調整に関する規定を 置くこと。 六 生活保護法の一部改正 保護の種類として介護扶助を創設し、困窮のため最低限度の生活を維持すること のできない要介護者及び要支援者に対し、介護扶助を行うこと。 七 その他 ーから六までに掲げる事項のほか、関係法律について所要の改正を行うこと。 第三 施行期日 この法津は、介護保険法の施行の日から施行すること。ただし、次に掲げる事項は 、それぞれの定める日から施行すること。 一 第一の六の3及び七の2 公布の日 二 第一の六の1 公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定め る日 三 第一の六の2 平成10年10月1日 四 第二の七(社会保険診療報酬支払基金の介護保険関係業務に係る規定に限る。) 平成11年1月1日 五 第一の一、二、四及び七の1並びに第二(居宅給付に係る規定に限る。) 平成 11年4月1日 医療法の一部を改正する法律案要綱案 第一 改正の趣旨 要介護者の増大に対応し、及び地域に必要な医療を確保するなど国民に良質かつ適 切な医療を効率的に提供する体制の整備を図るため、療養型病床群制度の診療所への 拡大、地域医療支援病院の創設及び医療計画制度の充実を行うとともに、医療法人の 業務範囲の拡大等に関する規定の整備を行うこと。 第二 改正の要点 一 医療提供に当たっての説明に関する事項 医療の担い手は、医療を提供するに当たり、適切な説明を行い、医療を受ける者 の理解を得るよう努めるものとすること。 二 診療所の療養型病床群に関する事項 1 療養型病床群は、病院の病床のみならず、診療所の病床のうち一群のものであ って、主として長期にわたり療養を必要とする患者(以下「長期療養患者」とい う。)を収容するためのものをいうものとすること。 2 診療所に療養型病床群を設けようとする等のときは、都道府県知事の許可を受 けるものとすること。 3 診療所の療養型病床群に係る病床については、病院の一般病床と合わせて医療 計画の必要病床数を算定し、これにより公的性格を有する診療所の療養型病床群 の設置等に関し規制を行うこと。 4 療養型病床群に収容された患者については、診療所の管理者は患者の収容時間 制限の努力義務を負わないものとすること。 5 療養型病床群を設ける診療所は、長期療養患者に適した厚生省令で定める員数 の医師、看護婦、看護の補助の業務に従事する者等及び機能訓練室等の施設を有 するものとすること。 6 医療計画達成のための勧告の対象に、診療所の療養型病床群の設置等を加える こと。 三 地域医療支援病院に関する事項等 1 国、都道府県、市町村、五の1の(二)の特別医療法人等が開設する病院であ って、地域医療の確保のために必要な支援に関する次に掲げる要件に該当するも のは、都道府県知事の承認を得て地域医療支援病院と称することができるものと すること。 (一) 他の病院又は診療所から紹介された患者に対し医療を提供し、かつ、病院の 建物等を当該病院に勤務しない医師等の診療等に利用させるための体制が整備 されていること。 (二) 救急医療を提供する能力を有すること。 (三) 地域の医療従事者の資質の向上を図るための研修を行わせる能力を有するこ と。 (四) 厚生省令で定める病床数以上の収容施設を有すること。 (五) 6に掲げる施設を有すること。 ′ 2 都道府県知事は、地域医療支援病院を承認しようとするときは、あらかじめ、都 道府県医療審議会の意見を聴かなければならないこと。 3 地域医療支援病院でないものは、これに地域医療支援病院又はこれに紛らわしい 名称を付けてはならないこと。 4 地域医療支援病院の開設者は、業務に関する報告書を都道府県知事に提出しなけ ればならないこと。 5 地域医療支援病院の管理者は、厚生省令の定めるところにより、次に掲げる事項 を行わなければならないこと。 (一) 病院の建物等を当該病院に勤務しない医師等の診療等に利用させること。 (二) 救急医療を提供すること。 (三) 地域の医療従事者の資質の向上を図るための研修を行わせること。 (四) 診療等に関する記録を体系的に備え、かつ、当該病院に患者を紹介しようと する医師等の求めに応じ、診療に関する諸記録等のうち患者の秘密を害するお それがないものを閲覧させること。 (五) 他の病院又は診療所から紹介された患者のために医療を提供すること。 6 地域医療支援病院は、集中治療室、病理等の検査施設、病理解剖室、研究室、図 書室、諸記録等を有すること。 7 都道府県知事は、地域医療支援病院が1に掲げる地域医療支援病院の承認要件を 欠くに至ったとき、4若しくは5に違反するとき、又は構造設備の修繕命令等に違 反したときは、その承認を取り消すことができること。 8 総合病院に関する規定を廃止すること。 四 医療計画に関する事項 1 都道府県が定める医療計画においては、病床の整備を図るべき地域的単位として 区分する区域の設定及び必要病床数に関する事項のほか、次に掲げる事項を定める ものとすること。 (一) 地域医療支援病院の整備の目標、療養型病床群に係る病床の整備の目標その 他機能を考慮した医療提供施設の整備の目標に関する事項 (二) 医療提供施設の設備、器械又は器具の共同利用等病院、診療所、薬局その他 医療に関する施設の相互の機能の分担及び業務の連係に関する事項 (三) 休日診療、夜間診療等の救急医療の確保に関する事項 (四) へき地の医療の確保が必要な場合にあっては、当該医療の確保に関する事項 (五) 医師及び歯科医師並びに薬剤師、看護婦その他の医療従事者の確保に関する 事項 (六) その他医療を提供する体制の確保に関し必要な事項 2 1に掲げる事項は、二次医療圏ごとの医療提供体制が明らかになるように定める ものとすること。 3 1の(1)の療養型病床群に係る病床の整備の目標に関して標準を厚生省令で定め るものとすること。 五 医療法人に関する事項 1 医療法人の業務の範囲を拡大すること。 (一) 医療法人は、老人居宅介護等事業等の第二種社会福祉事業のうち厚生大臣の定 めるものを行うことができるものとすること。 (二) 医療法人のうち、次に掲げる要件に該当するもの(以下「特別医療法人」とい う。)は、その開設する病院、診療所又は老人保健施設の業務に支障のない限り 、定款又は寄附行為に定めるところにより、その収益を病院、診療所又は老人保 健施設の経営に充てることを目的として、厚生大臣の定める業務を行うことがで きるものとすること。 (1) その役員について、その親族が役員の総数の2分の1を超えないことその他 公的な運営に関して厚生省令で定める要件に適台するものであること。 (2) 定款又は寄附行為に解散時の残余財産を国、地方公共団体等に帰属させる旨 定めていること。 (三) 都道府県知事は、(二)の業務を行う特別医療法人が定款又は寄附行為に定めら れた業務以外の業務を行った等の場合は、その業務の停止を命ずることができる ものとすること。 2 都道府県知事は、医療法人がその開設したすべての病院、診療所又は老人保健施 設を休止又は廃止後一年以内に正当な理由がないのに再開しないときは設立の認可 を取り消すことができること。 六 医業等に関する広告に関する事項 医業等に関して広告できる事項として、療養型病床群の有無及び紹介先の病院又は 診療所の名称を追加すること。 七 その他 罰則の規定その他所要の規定の整備を行うこと。 第三 施行期日等 一 施行期日 この法律は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める 日から施行すること。ただし、第二の一、第二の五の1の(一)に関する事項につ いては、公布の日から施行すること。 二 この法律の施行に際し必要な経過措置を定めるとともに、関係法律について所要 の規定の整備を行うこと。
(別紙2) 〈解決すべき懸案事項〉 一 市町村等の関係者の意見を踏まえ、安定した財政運営と市町村における円滑な事 務が遂行できる制度となるよう努める。 二 円滑な施行の観点から、在宅・施設両面にわたる介護サービス基盤の一層の整備 を計画的に進め、総合的かつ適切なサービス提供が行われるよう、検討を行う。 三 民間活力の積極的な活用を図るため、規制緩和を積極的に推進するとともに、民 間保険・民間非営利サービスとの適切な連携がとれる柔軟な制度の仕組みを検討す る。 四 社会保障制度構造改革のビジョンを示すとともにその一環として行われる医療制 度改革の内容を明らかにする。 五 国民に対する周知の徹底を図り、十分な理解を求める。 (参考) 〈介護保険制度案の骨子〉 一 保険者は市町村とし、国及び都道府県並びに国民の共同により運営する重層的な 制度とする。 二 被保険者は、制度発足に当たっては40歳以上の者とする。 三 保険給付は、要介護者の自立支援を基本に、適切な要介護認定を行った上で、在 宅・施設両面にわたる介護サービスを計画的に提供する利用者本位の制度とする。 四 公費負担は給付費の2分の1とする。 五 利用者負担は保険給付の対象費用の1割とし、施設においては食費は利用者負担 とする。 六 保険料については、65歳以上の被保険者(第一号被保険者)については、年金 保険者による特別徴収を行うほか、市町村が徴収を行う。 また、40歳以上の被保険者(第二号被保険者)については、医療保険各法の定 めるところに従い医療保険者が徴収の上一括して納付し、高齢化率の調整を図りつ つ市町村に配分する。 七 市町村における事務・財政両面にわたる円滑な保険者運営に資するため、市町村 の連合組織において、財政支援事業をはじめとする市町村支援事業を実施する。 八 施行に当たっては十分な準備期間を置き、新ゴールドプランの達成状況、基盤整 備の進展等を見極めつつ施行日を定める。 九 介護保険制度全体について、法律施行後の推移及び状況変化を踏まえて検討を加 え、必要な見直し等の所要の措置を講じる。 十 介護保険制度の創設に合わせ、医療法をはじめとする関係法律の改正を行う。