患者給食に関する
医療法施行規則の一部改正の概要


1 改正の経緯

 平成8年3月26日、規制緩和推進計画の一環として、厚生省では、病院における患者等への食事の提供業務(いわゆる患者給食業務)について、病院外の調理加工施設において行うこともできるよう、医療法施行規則の一部改正を行った。
 今回の改正は、平成7年10月31日に医療関連サービス基本問題検討会(健康政策局長の私的検討会、座長大谷藤郎(財)藤楓協会理事長)から出された報告「病院における患者等への食事の提供業務の外部委託について」に基づいて行われたものである。同検討会では、平成5年3月以来、栄養士会等関係団体からのヒアリングや院外調理モデル事業を実施した上で、患者給食業務の外部委託の在り方について検討を重ね、その結果、もはや病院内の施設を用いることを求める必要性は乏しく、病院外の調理加工施設において調理することも認められるとの結論に達していた。

2 改正の趣旨

 これまで患者給食業務については、調理から配膳までのすべてを衛生面での配慮が行き届いた病院内の給食施設で行うこととされてきた。
 しかし、近年の調理技術及び衛生管理技術の進歩によって、冷蔵又は冷凍による安全な運搬及び保管が可能となるとともに、病院外の調理加工施設であっても適切な衛生管理が行われているところが増えており、衛生面での不安から病院内の施設に限定する必要は乏しくなっている。
 また、患者給食においては、治療の一環であるという観点が必要であるが、それに加えて現在においては、アメニティの向上に関する方策や個人ごとの栄養管理、栄養指導等、より良い患者サービスの提供に資することも求められている。
 このため、患者給食の提供方法についても、病院自らが行う場合も含め様々な形態の中からサ−ビスの向上につながるものを病院が自主的に選択することが必要となっている現状を踏まえ、病院が選択し得る一つの手段として、病院外の調理加工施設において患者給食業務を行うことが認められることとなった。

3 改正の内容

 医療法施行規則第9条の10を改め、「病院の外部で調理業務又は食器の洗浄業務を行う場合にあっては」と明記することにより、これまて認められていた食器の洗浄業務に加えて、新たに調理業務も病院外で行うことが認められることとなった。
 ただし、病院外の調理加工施設において患者給食の調理を行うことが認められるようになっても、喫食直前の再加熱等については、依然として病院内において行わねばならないと考えられることから、今後とも病院には給食施設が必要であることには変わりがない。
 院外調理を行う場合には、「運搬手段について衛生上の適切な措置」が求められる。特に常温(10℃以上、60℃未満)による運搬では衛生上の不安が払拭できないことから、調理方式は、@クックチル(調理加工後、3℃以下に冷蔵して保管運搬するための調理方式)Aクックフリーズ(調理加工後、−18℃以下に冷凍して保管運搬するための調理方式)B真空調理(真空パック後に調理加工し、冷蔵又は冷凍して保管運搬するための調理方式)の3方式を原則とし、加熱調理後に冷凍・冷蔵を行わないクイックサーブについては、調理加工施設が病院に近接している場合等のみ、例外的に認められるものとされている。
 さらに、院外調理においては、従来以上に大量の調理を行うことになり、万が一食中毒が発生した場合には、その影響が甚大となる可能性もあることから、HACCP(危害分析重要管理点)方式の導入によって衛生管理の充実を求めたほか、従事者研修などにHACCPに関する教育を取り入れることを求め、衛生管理体制の徹底・強化を喚起することとしている
 なお、今回の医療法施行規則改正により、病院内で食器の洗浄業務を行わない場合には、従来設置が義務づけられていた食器の消毒設備を設けなくても良いこととされるとともに、複数の病院又は老人保健施設等が共同で給食施設を設け、これを共用することも併せて認められるようになった。

4 その他

 医療機関が委託業者を選定する際は、これまで(財)医療関連サービス振興会が交付している医療関連サービスマークを参考にするよう指導していたが、医療関連サービスマークを取得していない業者に対しては、委託ができないという誤解を招いたことから、今回の指導課長通知においては、厚生省令で定める基準に適合していれば、医療関連サービスマークの交付を受けていない業者に委託しても何ら差し支えない、という従来からの原則を改めて確認した。
※HACCP
 HACCPとは、食品の製造(調理)工程で発生するおそれのある危害を業者自らが分析し、管理基準を自主的に定めて、必要な安全対策を重点的に行う衛生管理手法である。

改正後の医療法施行規則(下線部は変更点)

第9条の10
 法第15条の2の規定による病院における患者、妊婦、産婦又はじょく婦の食事の提供の業務を適正に行う能力のある者の基準は、次のとおりとする。

1 調理業務を受託する場合にあっては、受託業務の責任者として、厚生大臣が認定する講習を修了した者又はこれと同等以上の知識を有すると認められる者が受託業務を行う場所に置かれていること。

2 調理業務を受託する場合にあっては、受託業務の指導及び助言を行う者として、次のいずれかの者を有すること。

イ 病院の管理者の経験を有する医師

ロ 病院の給食部門の責任者の経験を有する医師

ハ 臨床栄養に関する学識経験を有する医師

ニ 病院における患者、妊婦、産婦又はじょく婦の食事の提供の業務に5年以上の経験を有する管理栄養士

3 調理業務を受託する場合にあっては、栄養士(献立表の作成業務を受託する場合にあっては、治療食(治療又は健康の回復のための食事をいう。)に関する知識及び技能を有する栄養士とする。)が受託業務を行う場所に置かれていること。

4 従事者として、受託業務を行うために必要な知識及び技能を有する者を有すること。

 調理業務を受託する場合にあっては、前号の従事者(調理業務に従事する者に限る。)が受託業務を行う場所に置かれていること。

 病院の外部で食器の洗浄業務を行う場合にあっては、食器の消毒設備を有すること。

 病院の外部で調理業務又は食器の洗浄業務を行う場合にあっては、運搬手段について衛生上適切な措置がなされていること。

 次に掲げる事項を記載した標準作業書を常備し、従事者に周知していること。

イ 適時適温の給食の実施方法

ロ 食器の処理方法

ハ 受託業務を行う施設内の清潔保持の方法

 次に掲げる事項を記載した業務案内書を常備していること。
イ 人員の配置

ロ 適時適温の給食の実施方法及び患者がメニューを選択できる食事を提供することの可否

ハ 業務の管理体制

10 受託業務を継続的かつ安定的に遂行できる能力を有すること。

11 病院が掲げる給食に係る目標について、具体的な改善計画を策定できること。

12 従事者に対して、適切な健康管理を実施していること。

13 従事者に対して、適切な研修を実施していること。


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NOV. 14, 1996