健発第0430003号
平成15年4月30日





都道府県知事
政令市長
特別区長




殿
厚生労働省健康局長

受動喫煙防止対策について

 健康増進法(平成14年法律第103号)等の趣旨等については、「健康増進法等の施行について」(平成15年4月30日健発第0430001号、食発第0430001号)により既に通知しているところであるが、同法第25条に規定された受動喫煙防止に係る措置の具体的な内容及び留意点は、下記のとおりであるので、御了知の上、関係方面への周知及び円滑な運用に御配慮をお願いしたい。

1.  健康増進法第25条の制定の趣旨

 健康増進法第25条において、「学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店その他多数の者が利用する施設を管理する者は、これらを利用する者について、受動喫煙を防止するために必要な措置を講ずるよう努めなければならない」こととされた。また、本条において受動喫煙とは「室内又はこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされること」と定義された。
 受動喫煙による健康への悪影響については、流涙、鼻閉、頭痛等の諸症状や呼吸抑制、心拍増加、血管収縮等生理学的反応等に関する知見が示されるとともに、慢性影響として、肺がんや循環器疾患等のリスクの上昇を示す疫学的研究があり、IARC(国際がん研究機関)は、証拠の強さによる発がん性分類において、たばこを、グループ1(グループ1〜4のうち、グループ1は最も強い分類。)と分類している。さらに、受動喫煙により非喫煙妊婦であっても低出生体重児の出産の発生率が上昇するという研究報告がある。
 本条は、受動喫煙による健康への悪影響を排除するために、多数の者が利用する施設を管理する者に対し、受動喫煙を防止する措置をとる努力義務を課すこととし、これにより、国民の健康増進の観点からの受動喫煙防止の取組を積極的に推進することとしたものである。

2.  健康増進法第25条の対象となる施設

 健康増進法第25条においてその対象となる施設として、学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店が明示されているが、同条における「その他の施設」は、鉄軌道駅、バスターミナル、航空旅客ターミナル、旅客船ターミナル、金融機関、美術館、博物館、社会福祉施設、商店、ホテル、旅館等の宿泊施設、屋外競技場、遊技場、娯楽施設等多数の者が利用する施設を含むものであり、同条の趣旨に鑑み、鉄軌道車両、バス及びタクシー車両、航空機、旅客船などについても「その他の施設」に含むものである。

3.  受動喫煙防止措置の具体的方法

 受動喫煙防止の措置には、当該施設内を全面禁煙とする方法と施設内の喫煙場所と非喫煙場所を喫煙場所から非喫煙場所にたばこの煙が流れ出ないように分割(分煙)する方法がある。全面禁煙は、受動喫煙防止対策として極めて有効であるが、施設の規模・構造、利用状況等は、各施設により様々であるため、施設の態様や利用者のニーズに応じた適切な受動喫煙防止対策を進める必要がある。その際には、公共性等の当該施設の社会的な役割も十分に考慮に入れて、「分煙効果判定基準策定検討会報告書」(平成14年6月。概要は別添のとおり。本文は厚生労働省ホームページ参照のこと。)などを参考にしながら、喫煙場所から非喫煙場所にたばこの煙が流れ出ないよう、適切な受動喫煙防止措置の方法を採用する必要がある。
 なお、完全禁煙を行っている場所では、その旨を表示し、また、分煙を行っている場所では、禁煙場所と喫煙場所の表示を明確に行い、周知を図るとともに、来客者等にその旨を知らせて理解と協力を求める等の措置を取ることも受動喫煙防止対策として効果的と考えられる。さらに、労働者のための受動喫煙防止措置は、「職場における喫煙対策のためのガイドライン」(平成8年2月21日付け労働省労働基準局長通達。見直し作業中。)に即して対策が講じられることが望ましい。

4.  受動喫煙防止対策の進め方

 (1)  都道府県労働局においても職場における受動喫煙防止対策を推進していることから、健康増進法第25条に基づく施策の実施に当たっては、管内労働局との連携を図る。

 (2)  健康増進法第25条の対象となる施設の管理者は多岐にわたるが、これら管理者を集めて受動喫煙の健康への悪影響や各地の好事例の紹介等を内容とした講習会を開催するなど、本条の趣旨等の周知徹底を図る。この際、職場における喫煙対策推進のための教育については、「職場における喫煙対策推進のための教育の実施について」(平成12年3月31日付け労働基準局長通達)により都道府県労働局が推進していることに留意する。

 (3)  平成15年度より、国民生活金融公庫の生活衛生資金貸付の対象として、受動喫煙防止施設が追加されていることから、飲食店、旅館等の生活衛生関係営業者に対して、これを周知する。また、都道府県や市町村において、禁煙支援の保健指導、分煙方法の情報提供等を実施している場合、事業者や個人の参加をより一層促すよう努力する。


(別添)

分煙効果判定基準策定検討会報告書の概要


1.  屋内に設置された現有の空気清浄機は、環境たばこ煙中の粒子状物質の除去については有効な機器があるが、ガス状成分の除去については不十分であるため、その使用にあたっては、喫煙場所の換気に特段の配慮が必要である。

2.  受動喫煙防止の観点からは、屋内に設置された喫煙場所の空気は屋外に排気する方法を推進することが最も有効である。

 新しい分煙効果判定の基準

 (1) 屋内における有効な分煙条件

判定場所その1〔喫煙所と非喫煙所との境界〕

(1)  デジタル粉じん計を用いて、経時的に浮遊粉じんの濃度の変化を測定し漏れ状態を確認する(非喫煙場所の粉じん濃度が喫煙によって増加しないこと)
(2)  非喫煙場所から喫煙場所方向に一定の空気の流れ(0.2m/s以上)

判定場所その2〔喫煙所〕

(1)  デジタル粉じん計を用いて時間平均浮遊粉じん濃度が0.15mg/m3以下
(2)  検知管を用いて測定した一酸化炭素濃度が10ppm以下

 (2) 大気環境全体を視野に入れた場合の条件は(1)に以下の基準を追加。

(1)  大気の環境基準が設定されている浮遊粒子状物質濃度の1時間値が0.2mg/m3を超えないこと
(2)  大気の環境基準が設定されているガス状物質のうち、1時間値があるもの(二酸化硫黄が0.1ppm、オキシダントが0.06ppm)は、その濃度を超えないこと

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2003年05月26日