平成15年5月9日

新たな職場における喫煙対策のためのガイドラインの策定について

 職場における喫煙対策については、平成8年2月21日付け基発第75号「職場における喫煙対策のためのガイドライン」(以下「旧ガイドライン」という。)により、その推進に努めてきたところであり、その結果、労働環境調査によると、事業場における喫煙対策の取組みが平成8年には37.3%であったものが、平成13年には67.6%と増加する等一定の成果が得られております。
 今般、本年5月1日から施行された健康増進法(平成14年法律第103号)において、事務所その他多数の者が利用する施設を管理する者に対し、受動喫煙防止対策を講ずることが努力義務化され、また、平成14年6月に、健康局において設置された分煙効果判定基準策定検討会において、分煙のための新たな判定の基準が提示されたところです。
 また、受動喫煙による健康への悪影響については、流涙、鼻閉、頭痛等の諸症状や呼吸抑制、心拍増加、血管収縮等生理学的反応等に関する知見等が得られており、より適切な受動喫煙防止対策が必要とされております。
 これらを背景として、厚生労働省においては、労働者の健康確保と快適な職場環境の形成を図る観点から、一層の受動喫煙防止対策の充実を図るため、旧ガイドラインを見直し、新たに「職場における喫煙対策のためのガイドライン」(以下「新ガイドライン」という。)を策定しました。

〔新ガイドラインにおいて充実を図った主要な事項〕

 設備対策としては、旧ガイドラインでは、喫煙室又は喫煙コーナー(以下「喫煙室等」という。)の設置等を行うこととされていたが、新ガイドラインでは、受動喫煙を確実に防止する観点から、可能な限り、非喫煙場所にたばこの煙が漏れない喫煙室の設置を推奨する。

 喫煙室等に設置する「有効な喫煙対策機器」としては、旧ガイドラインでは、たばこの煙が拡散する前に吸引して屋外に排出する方式又はたばこの煙を除去して屋内に排気する方式(空気清浄装置)のいずれかの方式によることとされているが、新ガイドラインでは、空気清浄装置はガス状成分を除去できないという問題点があることから、たばこの煙が拡散する前に吸引して屋外に排出する方式の喫煙対策を推奨する。
 やむを得ない措置として、空気清浄装置を設置する場合には、換気に特段の配慮をすることが必要である旨を明記する。

 新ガイドラインでは、職場の空気環境の基準に、喫煙室等から非喫煙場所へのたばこの煙やにおいの流入を防止するため、喫煙室等と非喫煙場所との境界において、喫煙室等に向かう風速を0.2m/s以上とするように必要な措置を講ずることを追加する。

〔新ガイドラインの概要〕

<基本的考え方>
 喫煙対策は、労働衛生管理の一環として職場で組織的に取り組み、全員参加の下に確実に推進すること。
 本ガイドラインは、事業場において関係者が講ずべき原則的な措置を示したものであり、事業者は、本ガイドラインに沿いつつ、事業場の実態に即して職場における喫煙対策に積極的に取り組むことが望ましいこと。
 適切な喫煙対策の方法としては、全面禁煙と空間分煙があり、本ガイドラインは、空間分煙を中心に対策を講ずる場合を想定したものであること。

<経営首脳者、管理者、労働者の果たすべき役割>
 経営首脳者、管理者、労働者は、協力して喫煙対策に取り組むとともに、それぞれ次の役割を果たすよう努めること。
 経営首脳者は、喫煙対策の円滑な推進のために率先して行動すること。
 管理者は経営首脳者の基本方針の下に対策の円滑な推進のために積極的に取り組み、喫煙者等が守るべき喫煙行動基準に従っていない者に対して適切な指導を行うこと。
 労働者は自ら喫煙対策を推進することが特に重要であることを認識し、喫煙対策について積極的に意見を述べること。

<喫煙対策の推進計画>
 喫煙対策の推進計画は、衛生委員会等で検討し、当面の計画及び中長期的な計画を策定すること。

<喫煙対策の推進体制>
 喫煙問題を喫煙者と非喫煙者の個人間の問題として、当事者にその解決を委ねることは、喫煙者と非喫煙者の人間関係の悪化を招くなど、問題の解決を困難にする可能性がある。
 そのため、事業者の責任の下に次の措置を講じること。
 衛生委員会等の下に喫煙対策委員会を設置し、喫煙対策を具体的に推進するための合意形成の方法の検討、喫煙対策の具体的な進め方、喫煙行動基準等を検討すること。
 喫煙対策の担当部課やその担当者を定め、喫煙対策委員会の運営、喫煙対策に関する相談、苦情処理等の喫煙対策全般についての事務を所掌させること。

<施設・設備の対策>
 喫煙室又は喫煙コーナー(以下、「喫煙室等」という。)の設置に当たっては、可能な限り、喫煙室を設置することとし、喫煙室の設置が困難である場合には、喫煙コーナーを設置すること。
 喫煙室等には、たばこの煙が拡散する前に吸引して屋外に排出する方式である喫煙対策機器を設置すること。
 やむを得ない措置として、たばこの煙を除去して屋内に排気する方式である空気清浄装置を設置する場合には、喫煙室等の換気に特段の配慮を行うこと。

<職場の空気環境>
 浮遊粉じんの濃度を0.15mg/m3以下及び一酸化炭素の濃度を10ppm以下とするように必要な措置を講ずること。
 非喫煙場所と喫煙室等との境界において喫煙室等へ向かう気流の風速を0.2m/s以上とするように必要な措置を講ずること。
 なお、職場の空気環境の測定は、喫煙対策実施の効果を把握するために喫煙対策の実施の前後に行う他、その効果を維持管理するために定期的に行うこと。

<喫煙に関する教育等>
 受動喫煙による健康への影響、喫煙対策の内容、喫煙行動基準等に関する教育や相談を行うこと。

<喫煙対策の評価>
 定期的に喫煙対策の推進状況及び効果の評価を行い、その結果に基づいて必要に応じて喫煙対策の改善を進めること。

<その他の留意事項>
 喫煙者と非喫煙者が相互の立場を十分に理解すること。
 妊娠及び呼吸器・循環器等に疾患を持つ労働者については、格別の配慮を行うこと。
 喫煙対策の周知を図るため、禁煙場所の表示、ポスターの掲示等を行うこと。
 喫煙対策の事例等の情報を収集し、関係者に提供すること。

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2003年05月26日