氏名に文字番号を!

戸籍の氏名の記載に使用できる文字は制限されてはいるが、実際に稼働している戸籍システム上では、 外字として処理されている文字が発生している。

文字に一意の「文字番号」を付けて識別する方法は、外字に限らず、文字を管理するうえで大変有効な手段である。 文字情報基盤の「MJ文字図形名」も、この「文字番号」の候補のひとつだろう。

「文字番号」は外字の管理に有効なのだから、戸籍に、氏名の文字に対応する「文字番号」を記載する欄を設けて、 「文字番号」を記載するようにしたらどうだろう。戸籍の請求があった際にも、請求者の希望があれば、戸籍の謄抄本に「文字番号」を 記載して交付できるようにするのである。さらに、住民票の氏名にも「文字番号」を振って、住民票の写しの交付の際に「文字番号」を 記載できるようにする。つまり、氏名の「文字番号」を公にして活用できるようにしようという考えである。

現在、自治体では、合併の際のシステムの統合、新システムの導入で外字の移行作業が必要になる機会が出てくる。 新システムに移行すれば、一見すべてが解決したシステムになるような気がする。

だが、外字に関しては、新旧システム間での文字の同定の際、デザイン上の微妙な「ゆれ」が必ず生ずる。 例えば、住基システムで住民票の氏名の移行を例にすると、住民票の氏名と戸籍の氏名はデータとしてリンクしていないのだから、 戸籍が他市町村の場合などには、照会を出して照合すべきなのだが、完全には行われていない。このため、合併、新システムの導入を 繰り返すことで、少しずつの「ゆれ」が重なり、ますます戸籍の氏名の文字から遠ざかって、あたかも熱力学でいう「エントロピーの増大」 の法則のような現象が起きてしまう。元の状態に戻す、つまり修正するのには膨大な時間と労力が必要になるのである。

戸籍、住民票の「文字番号」記載が、もし実現できたらどうなるか。

まず、自治体では、住民票の氏名の入力の際に、文字の書体の違い、デザイン差などの解釈に悩むことなく、 本籍地に照会をすれば、「文字番号」でどの文字かが直ぐにわかる。さらに、住民票と連動したシステムでは、 常に正しい氏名の文字が反映されるようになるし、連動していないシステムでも、「文字番号」とシステムの文字との 対応テーブルを作成しておけば解決できる。

このほか、法務局、警察などでも、「文字番号」は重宝しそうだ。

一方、民間に対する影響を考えてみると、銀行、司法書士などでは、氏名を入力する機会があるだろうが、 「文字番号」あれば迷うことなく文字を選択できるようになる。

外字は、時が経過すればするほど「ゆれ」が増大していく。これを食い止めるためにも、 戸籍に「文字番号」を導入し、公のものにすることで対処することを考えてみる価値があるように思われるのだが…。

2013.5.17