戸籍の氏名に文字番号を振る

2013.3.27  

戸籍の氏名の記載に使用できる文字は制限されてはいるが、実際に稼働している戸籍システム上では、私用領域などに割り振られ、外字として処理されている文字が発生している。

文字に一意の「文字番号」を付けて識別する方法は、外字に限らず、文字を管理するうえで大変有効な手段である。戸籍には「戸籍統一文字番号」が、住民票も含めれば文字情報基盤の「MJ文字図形名」が、この「文字番号」にあたるだろう。

「文字番号」は外字の管理に有効なのだから、一歩進めて、戸籍に、氏名の文字に対応する「文字番号」を記載する欄を設けて、「文字番号」を記載するようにしたらどうだろう。戸籍の請求があった際にも、請求者の希望があれば、戸籍の謄抄本に「文字番号」を記載して交付できるようにするのである。さらに、戸籍の氏名の文字と一致しなければならない住民票の氏名にも「文字番号」を振って、住民票の写しの交付の際に「文字番号」を記載できるようにする。つまり、氏名の「文字番号」を公にして活用できるようにしようという考えである。

現在、外字の管理に「文字番号」を利用している自治体は少ないだろうし、「文字番号」の存在すら知らない自治体も多いと聞く。このような状況にあって、自治体では、合併の際のシステムの統合、新システムの導入で外字の移行作業が必要になる機会が出てくる。新システムに移行すれば、一見すべてが解決したシステムになるような気がする。

だが、外字に関しては、担当者の解釈の違いなども加わり、新旧システム間での文字の同定の際、デザイン上の微妙な「ゆれ」が必ず生ずる。例えば、住基システムで住民票の氏名の移行を例にすると、住民票の氏名と戸籍の氏名はデータとしてリンクしていないのだから、戸籍が他市町村の場合などには、照会を出して照合すべきなのだが、完全には行われていない。このため、合併、新システムの導入を繰り返すことで、少しずつの「ゆれ」が重なり、ますます戸籍の氏名の文字から遠ざかって、あたかも熱力学でいう「エントロピーの増大」の法則のような現象が起きてしまう。元の状態に戻す、つまり修正するのには膨大な時間と労力が必要になるのである。

戸籍、住民票の「文字番号」記載が、もし実現できたらどうなるか。

まず、自治体では、住民票の氏名の入力の際に、文字の書体の違い、デザイン差などの解釈に悩むことなく、本籍地に照会をすれば、「文字番号」でどの文字かが直ぐにわかる。さらに、戸籍との照合が徹底していけば、住基の統一文字コ-ドだけが振られている文字に該当する文字数も少なくなるに違いない。自治体の住民票と連動したシステムでは、常に正しい氏名の文字が反映されるようになるし、連動していないシステムでも、「文字番号」とシステムの文字との対応テーブルを作成しておけば解決できる。この結果、氏名の文字の入力処理に費やしていた労力が「文字番号」で大幅に削減するだろう。

このほか、裁判所、法務局、警察などでも、氏名の文字の取扱いは今までとは違い、戸籍、住民票の「文字番号」で文字の特定ができることになり重宝しそうだ。

一方、民間に対する影響を考えてみると、銀行、司法書士、行政書士などでは、氏名を入力する機会があるだろうが、「文字番号」あれば迷うことなく文字を選択できるようになる。

ここまで、「文字番号」のメリットの方ばかりをあげてみたが、「文字番号」も個人情報の一部には違いないので、その取り扱いには十分注意しなければならないことは、氏名、生年月日、住所の取り扱いと同様であることにはかわりはない。

データの交換や共有のことを考えたとき、外字は「文字番号」に対応付けしておき、他のシステムとのデータ交換の際には、外字を「文字番号」に変換したテキストデータで行うのがベストであると、最近になってやっと確信できるようになった。

外字は、時が経過すればするほど「ゆれ」が増大していく。これを食い止めるためにも、戸籍に「文字番号」を導入し、公のものにすることで対処することを考えてみる価値があるように思われるのだが…。


参照

  • IVS検索 2.00
  • 「MJ図形名」、「戸籍番号」「住基コード」などをキーに検索し、コピー&ペーストで文字入力することができるようになっています。(詳しくは、Readme.txtをお読みください。)
  • IVS検索 2.00