(波島:原作は古畑慎太郎マスター。諸般の都合でマスタリングできないとなって、僕が名乗りを上げた。もちろんだれもやらなくても問題はなかったのだけれど、今ではやって良かったと思う。いろいろ勉強になったし、結果的に他のブランチをおろそかにすることもなかったし。
オズの魔法使いやら星の王子様をやろうと思ったけれど、終わってみればただのサイコホラー。面白かったけど。
で、このブランチのリアのタイトルは、全部歌の歌詞やタイトルから。『夢の中へ』『夢で会えたら』『夢をあきらめないで』は、特に原典を出す必要もないでしょう。が、あとで聞いた話ですけど、JASRAC的にやばいらしいですね、歌詞を引用するのは。今後気をつけにゃー。
<夏期>
生徒たちは『夢』を理解し始めた。
相田咲(あいだ・さき)は憧れのたそペン将軍ロボとほのぼのし、松枝琴美(まつがえ・ことみ)は夢の中に城を創り出し、高森時雨(たかもり・しぐれ)は夢の少女ドロシーと戯れようとする。それでいて、いやにはっきりした悪夢を見たり、見ようと思ってもまったく夢を見ることのできない者もいた。
夢の中でドロシーと旅をする水無瀬綾香(みなせ・あやか)は道中で件の高森を吹っ飛ばし、ライオンを名乗るバニート=ショアフィールドと合流し、ドロシーの指差した城を目指した。その城は琴美が創り出したもので、琴美の悪夢の舞台となった。琴美はそこで泣き続ける幼い自分を見つけるが、いつの間にか今の自分がその泣き続ける自分と入れ替わっていた。綾香たちが城に着いたときも、琴美は泣き続けていたが、水無瀬の言葉で、少女は悪夢から解放される。その隙に高森はドロシーを口説こうとするが、ドロシーのあまりに完成した『少女的な』美しさに閉口し、その場は引き下がった。
一方中年男―王子様に関わる生徒たちも、夢をはっきりと認識し始めた。王子様から『夢の消しゴム』なるアイテムをもらった二本杉みずち(にほんすぎ・―)は空想に任せて銀河鉄道を創り出す。この鉄道には王子様と、王子様に誘われた藤枝蘭子(ふじえだ・らんこ)も乗り込む。鉄道は夢の世界の上空を飛んでいたが、外を見ようと窓を開けたとき、みずちは誤って『夢の消しゴム』を落としてしまう。消しゴムの力はあらたかで、地面を転がると同時に、その場所を真白に消し去っていった。そして後日、藤枝は王子様に『夢のオカリナ』というアイテムを授けられる。
乙津雪村(おづ・ゆきむら)は夢の中で粟原愛(あわはら・あい)と名乗る少女に出会う。その後現実でも粟原愛を探し当てるが、その粟原は夢の中で見た少女とは、外見はそのままでも、性格はまったく違っていた。むげに追い出された雪村は首をかしげながらも、まったくあきらめる様子はなかった。
(波島:わかっていただけたのかどうなのか、好き勝手やってくれて嬉しかった。特にみずちさんの読みは原作の古畑マスターをして「見つけるの早すぎ」と言わしめるほどのホールインワン賞。このストーリーの元ネタは「オズの魔法使い」「星の王子様」と「銀河鉄道の夜」だったのでござるよ。
ドロシーは僕の少女に対する幻想(アブない意味でなくて、『女の子はこんな子だったらいいなぁ。でも実際いたらやだなぁ』という願望……やっぱり異常か)の具現であるので、はっきり言って最強です。夢の中でドロシーにかなうものはいませんが、ドロシーの考えることは人間のそれとはかけ離れすぎていて、やはり理解に苦しむでしょう。
今回のタイトル。『夢でKISS…』は電気グルーヴの『シャングリラ』から。『夢見れば夢も夢じゃない』は『魔法少女プリティーサミー』のオープニングから。
<秋期>
琴美の願いにより、夢の世界に夜が訪れた。琴美の城の尖塔が、灯台となって世界を照らす。
バニートはドロシーに手を引かれるまま、琴美の城を目指す。同時に増田大輔や、銀河鉄道に乗った二本杉みづちに藤枝蘭子も引かれるように集まっていく。そして、銀河鉄道にはもう一人「ドロシー」を名乗る女性が乗っていた。もう一方のドロシーよりはずっと大人びていて、つれているのも犬でなく猫であったが。
琴美の城の大広間に入ると、そこには『王子様』が待っていた。『王子様』はしきりにネジを探すように言う。
「空を飛ぶときに必要なもの。あるいは誰もが心に持っている」
謎かけのように問う。みづちが憶測を述べようとしたところで、大人のドロシーがつれていた猫が子供のドロシーにじゃれついた。子供のドロシーはひどく脅え、やがて逃げるように消えた。一同はさらに『王子様』の口から衝撃的な事実を知らされる。今広がっている夢はドロシーの願う、悪意なき罠であった。夢の住人であるドロシーは遊ぶ友達欲しさに、生徒たちを永遠に夢の世界へ引き込もうとしている。このまま夢を見続けると、いつか永遠に覚めない夢に引き込まれてしまう。
今もっとも引き込まれつつある者が、高森時雨。彼はもう夢の世界のずいぶんと奥深くまでつれてこられていた。
一方懲りない雪村は、愛を「木霊」に会わせるべく連れ出したが、信じてもらえず、森の中に一人残された。
もっと懲りないたそペンの二人は、たそペン幹部東方不敗の指示の下、GR【ゴールデン・ロボ】計画を起動させ、島中の不要な(あるいは不要にした)電気機器を集めていた。
(波島:ちょっぴり後悔しているのが、大人ドロシーを「どろしー」という名前にしてしまったこと。わかりにくいったらありゃしない。大人ドロシーの子供ドロシーとの関係は気に入っているんですが……。その辺は別項にて。
プレイヤーを次回の行動に導く手法ってのを教わって、おぼつかないまでも実践してみた回。それがどんな結果を導くかは冬の項にて。
今回のタイトル。『夢はひとりみるものじゃない』は國府田マリ子のシングル。My Best Friendでシングルバージョン収録してくれて嬉しかったのら。『夢見るロボット』は……ハマってしまったその筋で超有名メイドロボのテーマの曲名。ついでにどえろしーの歌の『夢に私が二人いる』は当時やってた(っけかな?)アニメ「HAUNTEDじゃんくしょん」のオープニング「私が二人いる」から。これもマリ姉目当てで見てたっけ。
<冬期>
『王子様』の言うネジとは、星のこと。空に輝く、夜間飛行を導いてくれる道しるべ。あるいは比喩としての希望の星。
夢の中で生徒たちは自分の夢を叶えていた。だが現実とかけ離れた夢―世界の王だとか、金銀財宝だとか―はすぐに飽きられ、現実に近い、ささやかな夢を見始める。そしてそれは、夢が現実に近付くということは、より夢に引き込まれやすくなるということ。『王子様』は夢の世界の扉が閉じてしまうまでに時間がないこと、自分もそれまでに帰らなければならないことを告げる。
たそペンテロリストのバニート=ショアフィールドが蘭子のオカリナを地面に叩きつけようとしたところで、地面は消え、世界は闇になった。バニートは直後に空鷹駆の乗った飛行機に跳ね飛ばされた。真っ暗闇の中に琴美が花火を打ち上げる。花火はそのまま星になり、そのうちの一つが、高森とドロシーの居場所を示す。
その高森はドロシーと一緒にいたいといいながらも、学園にいるはずの知人を思い、踏みとどまる。そのことをドロシーに告げると、ドロシーは少し寂しそうにしながらも、高森が現実に帰る手伝いをしようとする。だが、何をどうやっても戻れそうな気配がない。そうこうしているうちに琴美と蘭子、それに『王子様』が追いつく。ドロシーが決して現実と相容れない存在であることを、うすうす感じながらも否定する高森。琴美がいつの間にかどこかへ行ってしまったアルバートを探しに行くと、彼もその後を追う。
アルバートは少年とお付きのメイドの夢を見ていた。彼にとってそれは、『王子様』とドロシーであった。アルバートは二人の夢が叶うことを願う。ドロシーはその願い事に反応し、アルバートを夢の中に引き入れようとする。
アルバートも含め、ほとんどの生徒が蘭子のオカリナによって危ういところで現実世界に戻ることができたが、まだ数人の生徒が夢の中に残っていた。
カボチャに耳を塞がれてオカリナの音色が届かなかった増田大輔は、ドロシーに、自分達に夢を見せるのをやめるように言う。
「夢は人に見せてもらうものでなく、自分で見るものなのです」
まだ自分達は夢を見ることができる。夢を見ることもできないほどに疲れ果てたとき、その時はあなたの力で夢を見せて欲しい。そう言って大輔は現実へ帰っていった。しかしながら高森はまだ迷っていた。
粟原愛の心を取り戻すために奮闘した乙津雪村によって、怪犬トトが退治されると、ドロシーの言動がわずかに変わる。もう一人の残った生徒空鷹駆も『王子様』からの届け物を二人に投下すると、現実に帰っていく。高森も、その届け物の『ガラガラ』を使い、ドロシーを夢の世界へ送り、ついには自分も現実へ帰った。
全てが、少しの変化と共に、元へ戻った。
(波島:ということで、おしまい。
なんでもアリアリで面白かったけれど、蓬莱じゃないなぁ(というか蓬莱じゃなくてもできるなぁ)、と思った。どうせだったら、もっと「蓬莱らしさ」を出してみたかったんだけど……まあ、その辺は銃士隊に任せるとして。
調子に乗って書きすぎて、気がつけば16ページ。もっとも、神刺マスターや宮原マスターにはかなわないんだけれど。気が済むまで書けたから、僕的に満足。ドロシーについてはもっと触れたかったけれど、それはここ(HG97)じゃなくてもできるし。
タイトル。『夢が夢ならそれでもかまわない』は曲名がわからないのだけれど、小沢健二の歌の歌詞から。『Dream Dream』は岩男潤子の歌の曲名。岩男好きーです、わし。