(波島:96年に引き続き聖剣一郎関連。が、内容は一風変わって戦闘&因縁話、と思ったらやっぱり恋愛モノでした。
すでに設定のあるところを使うのは僕にとっては珍しいことで、いつもは勝手にあれこれでっち上げていたのに、ここではそれができずに、結構辛かったりなんかしたり。でも、聖隊長にはそれなりに愛着もあったし、ベントラのあたりは高橋マスターがだいたい設定作ってくれていたので、楽ではありましたね。これがまた。
<夏〜秋期>
ベントラ公国側が提示してきた戦闘方法は、まるで何かのアトラクションのごときものだった。挑戦者が次々と脱落していく中、最後に残ったのはシルヴィと、変装していた聖剣一郎であった。最後の勝負方法は、甲冑騎士アーサー・M・ロインとの一騎打ちであった。その戦闘の最中、ロインと聖の過去が明らかになる。結局勝負は引き分け、聖とシルヴィは城から退いた。
秋には、突如ベントラ城が崩壊した。もっともそれは外見的なもので、いまだ三日月ヶ丘には数多くの貧窮生徒(とお祭り好きな生徒)が残っていたし、着々と再生していた。
今度の勝負は単純明快、砦を越えればよいというものであった。それを少々イレギュラーな方法で一番に通り抜けた黒ロゼのメンバーたちはロインに問うた。が、ロインは、ベントラ公爵夫人はアンネリ嬢ではないし、自分は困窮生徒たちを扇動した覚えもない、と答えるだけだった。そこに聖が現れるも、一言二言かわすのみで、すぐに帰ってしまった。
その間にも次々と聖とロインの確執が明らかにされていく。
(波島:このブランチはかなりNPC主導のシナリオになっている。「聖剣一郎」というキャラが強すぎるし、何よりプレイヤーさん達もそれを望んでいるだろうと勝手な思いこみだったけれど、実際はどんなもんだろ?
聖の過去はここで初めて明かされている、はずです。だって高橋マスターが次々作ってくれたんですもの。それに僕の実体験を交えた脚色が加わって……まあこんな風になっているのですよ。
<冬期>
ベントラ城にて行われたトーナメント大会。それを勝ち抜いた響奈留との決闘で、ロインは喉を突かれ絶命した、と、報じられた。信じたくない、とはいいつつも、度重なる報道と、何よりその場に居合わせた者の証言で、いつしかそれは真実となりつつあった。
そんなある日の夜、土砂降りの中、近之墨絵留が銃士隊の詰め所で番をしていると、ずぶぬれの女性が駆け込んできた。女性は銀髪……ベントラ公爵夫人であった。絵留は夫人をシルヴィの部屋で介抱した。夫人が気がついたところで、絵留が言うところの「運命の鎖」が反応する。三人は三日月ヶ丘へ急いだ。
今度こそ本当の瓦礫の山となった三日月ヶ丘で、聖とロインの最後の決闘が行われた。かつて二人の間にいた女性も、ベントラも、学園も全て二人の視界から消えた。聖は甲冑騎士のソードを構え、ロインは夫人に手渡されたソードを、銃士のレイピア風に構える。十キロを超える重量のソードを片手で持って突き合う。およそ正気の沙汰とは思えないが、二人がそれをする分には、まったく遜色のない戦いぶりだった。最後は勝負を賭けた聖の牙突で、ロインの右腕が切り飛ばされた。ロインはそのままよろよろと後じさり、大雨で増水したベントラ城の堀に、夫人と共に落ちていった。全ては、終わったのだ。
その場に駆けつけた香田忍率いる公安委員に聖は逮捕されたが、数日後、極秘裏に釈放された。聖はそれについて何も語ろうとはしなかったし、しばらくは自室にこもりきりであった。だが、銃士隊のクリスマスパーティーに登場し、その健在ぶりをアピールした。この男いる限り、銃士隊もまた存在し続けるだろう。
(波島:結構難産だった今回。96から数えて唯一遅刻してしまいました、ごめんなさい。
NPC主導ってことで、設定やら描写やらにかなりこだわってみました。PC数も少なかったし、書いていてすごく楽しかったです。そんなこって、この原稿も、ほとんど聖の行動しかまとめていません。
聖と「初恋の君」との話はたぶんに実体験が混ざっておりまして、うききーと身悶えしながら書いてました。恋愛譚はこれくらいしか持ってないんですけどね。