・第一のテーマ『転生』
しつこいほどに繰り返した転生モノ。
明成昭……桑富士芳軒の生まれ変わり。
治平和……棟十紋菊太の生まれ変わり。
である。治平の方はシナリオにほとんど関われなかったけれど。
・第二のテーマ『自己愛』
第一と関係あるんだけれど、要するに、
「桑富士は昭が好きだった」
のである。
初めて会ったときに、昭が自分の前世であることに気づいた。これは転生に関すること。で、以来ことあるごとに昭を見ていたら、いつの間にか目が離せなくなった。これは前世来世関係なく、単なる心の動き。
で、そんな風に好きになったはいいものの、不器用な彼はどうしていいものやらその気持ちを持て余していた。ほにょほにょと流されるまま紫苑と仲良くしていながらも、なんとなくすっきりしない日々を過ごしていた、のである。
つまりは桑富士は昭を自分と知りながらも、惹かれていったのである。ナルシストとは違う形の自己愛である。なんだかよくわからないけれど。
それで、桑富士は昭に幸せに成仏して欲しくて、自分が代わりに阿松に入ろうとした。昭が和と一緒に入れると知ったら気持ちも変わったかもしれないが、成仏した方がいいと言いだす可能性も大だった。
世界を救う英雄の物語というのがよくあるけれど、そういう設定はあまり好きじゃない。絵空事とわかっていても、たった一人の人間が、そんなコトできる訳無い、非現実的だ、なんて考えてしまうのである。結果感情移入などもしにくい。
桑富士の話はそういうモノに対する批判を込めた、と言うと言いすぎだけれど、とにかくそういうモノに批判的な僕の気持ちがそこかしこに込められているはず。
例えば、東洋神秘学研の人たちが代々阿松を抑える祭事を行うというようなアクションがあったのだけれど、それはリア中に描写したように(歴史の中で僧侶が特権を持っていたのは、祭事を彼らだけが行える、もしくはそう思い込まされていたから、というくだり)、却下させていただいた。ある特定の人々だけが行えるということは、特権階級を生み出してしまう。本人がそれを望んでいるならいいけれど、東洋神秘学研には「水平線の会」と兼ねている部員が多くいたから、やはり特権を生み出すそれはボツにした。
まあなんだかんだで阿松にはそれこそどこの馬の骨ともわからんモノが入り込み、平穏が訪れた。僕が当初考えていたものとはずいぶん違ってしまったけれど、これがPBMなんだなあ、と思った。