(宿霧:この初期情報では、主に鉄管委内部での対立の構図を書きたかった。あと、波乱の予兆をプレイヤー諸氏に提示して、プレイヤーの取り込みを図ろうともした。で、その結果は……春期リアを参照のこと。)
<春期>「お花見メレンゲ」
“尊学攘委運動の志士”を自称する3人が鉄道管理委員会の幹部委員3名の襲撃を企てたが、メンバーの中の一人が己の中の美学に固執するあまりに襲撃の機会を逃し、結局計画は潰れた。
年初から『たそペン』を自称する、悪質な列車妨害が頻発。鉄道公安部が調査を進めていたところ、首謀者である取石黄人(とりいし・こうじん)が反委員長派の筆頭格である鉄道管理委員会の宇津井重信(うつい・しげのぶ)施設局長を訪ねところを逮捕される。野々宮委員長に地下鉄計画を中止させるのが、テロの動機であったという。
鉄管委の上半期の活動方針を決定する期頭幹部会議が行われ、ロープウェイ管理局の施設局への統合と地下鉄管理局の廃止、三日月ヶ丘〜旧校舎前の廃線区間の図書委員会への売却等の案件が議決された。
会議終了後、地下鉄管理局長・狩野時能(かのう・ときよし)は地下管局廃止決定で落ち込んでいるところを政務副委員長・副島兆二(そえじま・ちょうじ)に励まされ、地下管局が生き残るための活動を開始した。だが、そんな時能の姿を見て副島副委員長は、「狩野はもう使えんな……」と、こぼした。
布袋通りにある小さな美術ギャラリーを訪ねた野々宮委員長に対し、御子神冬真(みこがみ・とうま)は公安委員会をアテにせずに鉄道管理委員会独自で警察権力を持つべきであると提案したが、鉄道公安の存在を知らなかった冬真を一笑に付した野々宮委員長は「好きにしなさい」の一言を残してその場を去った。
それから何日か後、「鉄管委セキュリティサービス」の看板が掲げられた建物が公安に急襲され、冬真が首謀者として連行された他、居合わせた者は全員SS残党容疑で逮捕された。
教職員寮近傍のすき焼き屋で密会する、下水道管理委員長・南雲恵子(なぐも・けいこ)と宇津井施設局長。二人の間で、下管委が地下鉄試掘坑を引き取る旨の密約が交わされる。
その後、二人は徹夜マージャンに興じ、南雲下管委員長はハコテン2回という大タコを曝してしまった。
(宿霧:1回目です。とりあえず、盛況でした。全員のアクション内容を拾い上げて所定枚数内に収めるのが大変だった事を憶えています。その一方で、初期情報でのネタ振りの効果が薄く、私が想像した以上に、鉄管委の存在がプレイヤー諸氏の感心の外になってしまっている事も痛感しました)
<夏期>「真夏の昼の夢〜あつさのせい」
ロープウェイ管理局の統合が実施され、最後のロープウェイ管理局長・木全貴道(きまた・たかみち)は施設局索道部専門局長に異動した。
その木全専門局長を訪ねて、突撃報道班の中川美月(なかがわ・みつき)が彼の職場の阿松岳ロープウェイへとやってきた。インタビューが終わって一段落したところで、
「あなたが上がって来るのに乗った便の折返しが実は今日の最終便だったんですけど」
木全専門局長のこの台詞に美月は慌てたが、特別の取り計らいでロープウェイの臨時便を出してもらう事で、美月は無事阿松岳から降りる事ができた。
続いて美月は、狩野地下鉄管理局長にインタビューすべく委員会センター前を張った。首尾よく狩野地下鉄管理局長を捕捉できた美月は、彼の口から「副島副委員長の行動が怪しい」との台詞を聞く。
美月がその事について更に追求しようとしたところに背後から副島副委員長が現れ、そこでインタビューは終わってしまった。
下管委が地下鉄試掘坑の購入を正式発表した。この報を聞いた狩野地下鉄管理局長は血相を変えて南雲下管委員長の元を訪ねたが、
「今までのいきさつをお忘れ? あれだけ色々あったのに、そちらの都合のいい話をこっちがあっさりと飲む訳ないでしょ。政治的根回しの一つもまともにできないの?」
という辛辣な台詞に、狩野地下鉄管理局長は肩を落として部屋を後にした。
バス管理局の綾野美霧(あやの・みきり)は、局長の三浦光則(みうら・みつのり)にバス管理局を通学輸送に参入させるための直談判をしていた。だが、改めて数値データを見せつけられると、美霧の勢いもあっさりしぼんでしまった。
「……90年動乱以前の活気にあふれていた時代が懐かしいよ」
かつての黄金時代に思いを馳せる三浦バス管理局長の姿が、そこにはあった。
(宿霧:前回テロを企てた尊学攘委運動グループが1回限りで姿を消したせいで、この回の参加プレイヤー数は激減した。しかも、他ブランチと抱き合わせで配布するため1枚に収めるように、とのお達しまできて、前回以上に所定サイズ内に収めるのに苦労した。周辺余白と印字ポイント数を調整してなんとか収めたのだが、この時点でもう既に、春に撒いたネタの『敗戦処理』が始まっていたのである)
<秋期>「名月・委員会センター」
下水道管理委員会と鉄道管理委員会の間で地下鉄試掘坑譲渡契約の調印が行われた。この調印式は「下管と鉄管が和解する歴史的瞬間」としてアピールするため、大々的なセレモニーとして行われた。そして、地下鉄管理局最初で最後の局長・狩野時能は、式を妨害する要因の一つになりうるとして委員長命令で参列者から外され、委員会センターの執務室のCATVで一部始終を見させられた。
そして、地下鉄管理局の短くも波乱に満ちた歴史にピリオドを打つ日、狩野地下管局長には設計局施設部付き専門局長に異動の辞令が発令された。また同時に、『設計局施設部設計資料課分室地下鉄別室々長』という長ったらしくてあからさまな程に超閑職な肩書きを与える旨の辞令も発令された。
2枚の辞令を手にした彼は、忌々しげに野々宮委員長を見つめた後、一礼して委員長室を去って行った。
試掘坑水没事件が発生した時に現場に居合わせた数少ない人物の一人、宮丸桃源(みやまる・とうげん)は、所有権が下水道管理委員会に移ったばかりの旧・地下鉄試掘坑を訪ね、まだ水が満々と湛えられている坑道の底部を目指してアクアラングを敢行した。
そこで彼は、明らかに発破によって開けられたと思われる穴とガレキを発見した。その様子を写真に撮ると、彼は地上へと上がって行った。
珈琲研のスターシィ=フォン=シュドルフスキーは、珈琲研の知名度を上げるために環状線の主要駅に珈琲研直営のコーヒースタンドを出店するべく鉄管委の書記局を訪ねたが門前払いを喰らい、何気なく飛び込んだ施設局の紹介で設計局の設計棟で喫茶室をオープンできる事となった。
開店すると、設計業務中の眠気覚ましの利用者で大いに繁盛した。
新町のとあるショットバーで、中川美月(なかがわ・みつき)は宇津井施設局長の捕捉に成功した。
独占インタビューを試みる美月を、宇津井施設局長は2人きりになれる個室へと招くと、語った内容の一切オフレコにする事を前提にして、「地下管局は地下鉄計画に対する批判が野々宮委員長自身へ集中しないようにするために、スケープゴートとして作られたものであって、地下管局は作られた時点で早晩潰れる事が決まっていたのかもしれない。そして注目されやすいように、鉄管委内部では白眼視されている鉄道研部員を局長に抜てきしたのだ。結局自分も、委員長の思惑通りに踊らされただけだったのかもしれない」との自説を披露した。
新米女性鉄管委員・秋野律子(あきの・りつこ)は、学電管理局長・吉備遼太郎(きびの・りょうたろう)に路面電車の輸送力増強案で直談判をしていた。
提案は全面採用とは行かなかったが、鉄管委が後日発表した路面電車の輸送力増強長期計画の下敷きとして、彼女の提案は活用された。
台風襲来の豪雨の中、恵比寿寮のガケ下で土砂崩落による路面電車の埋没事故が発生した。死者3人、重軽傷11人という近年の鉄道事故では最大級の惨事に発展したこの事故について、鉄管委では、老朽化し無秩序な増改築が繰り返された恵比寿寮に原因があり、責任は管理する生活委員会にある、とのコメントを発表した。
三浦バス管理局長が、家庭の事情により家業を継ぐために退学し、実家へと戻った。
後任の委員長に、運転課長の小早川あやめ(こばやかわ・−)が就任し、そしてあやめの後任には綾野美霧(あやの・みきり)が就任した。
就任の辞令を受け取るため委員会センターへ出向く途上、2人は、生徒の波に行く手を阻まれ身動きできなくなった自動車部バス班の路線バス(通称『蓬莱バス』)の群を、路面電車の車中より目にした。蓬莱バスでは、この日から通学時間帯の2分間隔運転を開始したばかりなのである。
その帰路、あやめが美霧を諭すように、こんな話を始めた。
「あなた、蓬莱バスの水上さんとお友達だったわね。だったら言ってあげて。ああいうあからさまに鉄管委を敵に回すような行為は止めた方がいいわよ。こっちは行政側だから、競争相手を潰す方法はいくらでもあって、野々宮委員長はそういう事が平気でできる人だから用心した方がいいわよ、って」
翌日、公安委員会学園警察局交通部から蓬莱バスに対して、「道路交通の障害となり、混乱を招いた」として、蓬莱バスに出されていた登校時間帯の通行規制道路への乗り入れ許可適用の一時停止が通達されたが、それを解除するには公安委へ対策案を提出し受け入れられなければならない。また同時に、2分間隔運転の中止勧告も出された。
(宿霧:なんとかプレイヤー数が増え、リアも単独で発行される形に戻ったのがこの回。蓬莱バス対鉄管委の構図、かなり楽しませて貰いました。あと、『設計局施設部設計資料課分室地下鉄別室々長』という肩書きは、『ワッハマン』が元ネタだったりします)