よく「格調高い伝統的なイギリス英語」とか「下品で今様のアメリカ英語」のような戯言(たわごと)を耳にします。古い伝統を守って古典的な方が「格調高い」という基準でこの2つを比較するならば、なんとアメリカ英語の方が「格調高い」んですね、これが。
へそ曲がりのことを言うようですが、世間一般の常識とは逆に、現在のイギリス英語よりもアメリカ英語の方が、シェークスピアの時代に話されていた英語に近いんです。シェークスピア劇を忠実に再現しよう、と真剣に企画するならば、イギリス人俳優ではなくて全員アメリカ人俳優を起用するべきなんでしょうが、ま、一般受けはしないでしょうね、これは。
「アメリカ英語の方が古い」というのは、「ある国語が遠隔地に移植されると、その当時の語彙、発音、語法などが温存される傾向がある。それに比べて、本家で話されている母語の変化は速い。」という言語学で確認されている現象の一例です。
下記の比較表で明白なように、アメリカ英語は現在のイギリス英語よりも古い英語の要素を保持しています、綴りを除いては。ただし、地域差、個人差があるのでこの2つは厳然と区別されるものではなく、混在します。ことばに「絶対」はありません。
アメリカ英語に残っている古典的な単語 |
現在のイギリス英語で良く使われる新しい語 |
fall(秋) |
autumn(秋) |
trash(ごみ) |
rubbish(ごみ) |
guess(思う) |
suppose(思う) |
gotten(getの過去分詞) |
got(getの過去分詞) |
アメリカ英語に残っている古典的な発音 |
現在のイギリス英語で良く使われる新しい発音 |
fast [ae:] |
fast [a:] |
ask [ae:] |
ask [a:] |
path [ae:] |
path [a:] |
class [ae:] |
class [a:] |
half [ae:] |
half [a:] |
bar [ba:r] |
bar [r音なし] |
neither [i:] |
neither [ai] |
either [i:] |
either [ai] |
schedule [ske] |
schedule [シェ] |
尚、「a」と「e」が背中合わせになっているような発音記号、ブラウザでうまく表示されないことがあるので、横着して「a」と「e」を並べて表記しました。例の「ア」と「エ」の中間みたいな音ね。
|