ユーミン・イン・ビッグバンドその2(04.12.19)

 

 ユーミン・ビッグバンドの話を書いたら、急に色々な方から反応のメイルをいただいたので、続きを書いてみたいと思います。というか、ユーミンの話題に関しては突然饒舌になります。
 音楽には“メロディー”、“ハーモニー”、“リズム”の3要素がありますよね。今回10曲も一挙にアレンジしながら考えたんですが、アレンジする、というのは、すなわちその中の、“ハーモニー”、“リズム”をいじる、ということではないかと思ったのです。
   ユーミンの曲がいかに素晴らしいとはいえ、“ハーモニー”、“リズム”は相当ドラスティックに変えないとジャズにはなりません。しかし、“メロディー”という要素を変えてしまったら、もはやその曲として成立し得ないのです。つまり、3要素の中で、もっとも大切な、最後まで残るのは、“メロディー”なのではないかと思うのです。
 

 そうして考えてみると、やはり、彼女の曲は“メロディー”がとても強力である、ということに改めて気付きます。自分が作曲するにあたっても、まず、“メロディー”がしっかりしているかどうか、ということを基準の第一に考えないといけないですね。
 

 しかし、以上の要素はあくまでインストルメンタルの場合で、ユーミンの場合は、もうひとつ、“歌詞”が強力に良い、ということも大きな魅力のひとつです。ある年代(わたしの年代)の女性にとっては、絶対に共感できる普遍性がある、というのが彼女の歌詞の凄いところです。
 

 わたしが初めて聴いたユーミンは、“あの日に帰りたい”でした。中1の時、ラジオで聴いてすぐ“何だこれは?”とびっくりしました。ボサノバというリズムを聴いたのも初めてだったし、あの独特のコード進行も・・・。
 今になって分析できるのですが、冒頭“泣きながらちぎった写真を手の平でつなげて”の“げ”の部分は(ってわからない人には全然わからない話しになってると思いますが)、わたしがほぼ初めて出会ったオルタードテンション(Dominant 7th flat 9th)だったのではないかと思うのです。最近はともかく、あの時代、日本語の歌詞にそういう音を取り入れていた人はあまり多くはなかったと思います。
 この曲、今聴いても名曲だと思うのですが、この中に“青春の後ろ姿を人は皆忘れてしまう”という歌詞が出て来ますよね。まあ、今言われてみればそのとおりなんですが、これは荒井由実の頃の曲ですから、彼女が二十歳そこそこで書いたもの。どうしてそんな若い時にこういうことが言えるのでしょう。
 

 わたしも青春の後ろ姿はとっくに忘れてしまいましたが、中学生の時に聴いたこの曲に対する衝撃は今だに忘れていないのです。その人の曲を今、ジャズという形でトリビュートできるなんて、本当に幸せなことです。トリビュートのついでに、実際にお会いしてサインとかしてもらいたいなあ。(また本音)
 


 

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財布をなくした!(05.4.3)

 

 わたしはものをよくなくす。“大事なものだけは絶対なくさない”という人も多いと思いますが、わたしの場合、大事なものもどうでもよいものも等しくよくなくします。
 

 多くの方にとって、持ち歩く物の中で大事なものといえば、まあ財布なのではないかと思いますが、わたしは財布をなくしたことが何回かあって、今年に入ってからも、デパートの地下食品売り場でなくしてしまったのです。
 こういうところは、一度にひとつのことしにしか集中できないわたしにとっては、とても危険な場所で、右にも左にもおいしそうなものが並んでるな−−とキョロキョロしているうちに、いつの間にか、財布がなくなっていました。ボーっと歩いていてる姿がスリの格好のターゲットとなってすられてしまったのかもしれせんが、盗まれたのか落としたのかさえわからないというのが、とっても情けないところ。まあ、わたしが優秀なスリだったら、あの時のわたしの状態に間違いなく目をつけると思いますし、盗まれた可能性が大です。
 最近、カードの不正使用などが深刻な問題になっていますから、なくしたことを気づいた時点ですぐ、最寄りの警察に届けて、カード類は止めました。また、今回は幸いなことに、財布の中に現金は少ししか入っていなかったし、あまりにもよくなくしものをする自分の性格から、証明書類は持ち歩かない、高い財布は買わないことにしているので、実害は最小限で済んだのですが......。
 

 財布をなくした時、現金は“自分が悪かった”と案外簡単にあきらめがつくのですが、意外にいつも気になるのが、“ポイントカード”類です。最近はCD屋、薬屋、洋服屋、電気店、美容院、コーヒー店...などどこでも、“ポイントカード”制になっていて、カードに買い上げ金額の数パーセントがたまっていって、ある程度の点数になるとポイントを現金還元するようになっていますよね。
 

 ああいうのを、最寄りの店に通って、チマチマため続けて500円程度でも割引になると、なんだかとっても嬉しいもの。(そしてわたしのような単純な顧客が多いからポイントカードが流行るのだと思いますが。)それが、財布に全部入っていたわけですから...。あれを盗んだ人が今頃わたしのビックカメラのポイントで家電製品なんか買っているところを想像すると、ちょっと悔しい気がします。
 

(写真は本文とは関係なく、2/3CD録音スタジオでのひとこま。左から木幡、奥村、エリック、ドン、岡崎の各氏。今回ドン・シックラー氏はプロデューサーとして来日したのですが、本来彼はトランペッター。トランペッターという人種は、2人以上集まると、必ずお互いの楽器を交換して試奏しあうもので、これは世界共通のルールのようです)
 

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  プリンターを壊しちゃった。(05.4.9)

 

 わたしはものをよく壊す。お皿やグラスをよく割る、なんていうのは言うに及ばず、わたしの周囲では布団乾燥機とか掃除機とか電子レンジとか、どうやって壊したら良いのかわからないようなものまで、壊れてしまう。
 普通10年もつものは5年、5年もつものは2年しかもたないので、家族からは“ザ・デストロイヤー”と言われてます。本当に自分でも不思議なのですが、ものの扱いが乱暴だからじゃないんですよ。どうもわたしの指先からはものを壊す特別な電流が流れているみたいなのです。
 

 わたしは昨年12月27日に新しくA3対応のキャノンのレーザープリンターを買いました。こんな時期に買うのは年賀状用と思われがちですが、わたしの場合は、2月のレコーディングに向けて、大量に出るビッグバンドの楽譜用。A3対応だと、A4のものに比べて楽譜のテープ貼りが半分で済むので、かねてから欲しかったのです。
 さて、わたしは1月9日にNHKFMのセッションに出演することになっていたので、その前日、大量の譜面をプリントしていました。最新プリンターはさぞかし速いのだろうと思っていたのですが、意外にそうでもなく、前のものとスピードは変わらないのです。まあ、冷静に考えれば、A3分がいっぺんにでてくるのだから、同じスピードなら、前の倍の速度といえるんですけどね。でも、わたしは明日までに出さなければ間に合わない譜面がいっぱいあって冷静とはほど遠い状態でした。
 明日の本番の譜面を今頃出している自分の態度は棚に上げ、<わーん、最新のタイプの癖に遅いよー>と八つ当たりして、プリンターをちょっと触ったら(殴ったら?)、なんと重要なネジが外れてしまい、プリンターが全く動かなくなってしまったのです。明日までに印刷しなければいけない譜面がまだ大量にあるのに、さあ、どうする。
 

 その時、わたしは前のA4プリンターを数日前に粗大ゴミに出していたことを思い出し、大慌てで粗大ゴミ置き場に飛んでいきました。幸いなことに、プリンターはだれかに持っていかれることもなく、その場にありましたので、わたしは“粗大ゴミシール”付きのA4プリンターでどうにか譜面を全て間に合わせることができたのです。
 

 もちろん、A3プリンターは保証期間中ですから、無料で修理してもらえますが、こういう時の説明は主語が重要。あくまで“(プリンターが)壊れた”のであり、“(わたしが)壊した”わけじゃないことを強調しなければなりません。キャノンの方は即日で取りに来てくれました。
 数日後、同じ方が修理した製品を持って来てくれたのですが、彼が言うには“お客様がおっしゃていたネジは確かにとれていましたが、他にも2カ所ほど不具合がありました”。営業マンですから、口には出しませんが、12/27付けの保証書を見ながら、“どうやったら買って10日たらずで3カ所壊せるのかな。”と考えているのがありありです。
 

 わたしがお愛想のつもりで、“わたし、今まで歴代のプリンター、全部キャノンなんですよー。”と言ったら、彼は黙っていましたが、顔には“次からはぜひエプソンを買ってね。”と書いてありました。
 帰りがけ、“じゅあ、お預かりした保証書、お返ししておきますので。(あなたの場合、また必要でしょうし。)”と言っていた営業マン。括弧の部分は、実際口に出された言葉ではなく、やはり彼の顔に書いてありました。
 

(写真はまたまた本文とは関係なく、2/4CD録音日のひとこま。左から大坂、納、緑川の各氏。当日はスタジオにこもるのが勿体ないくらい良い天気でした。録音の合間のわずかな休み時間に一瞬外に出て撮ったものですが、譜面だらけのシビアな録音の最中にこのリラックスした笑顔。さすがです!)
 

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  審査員はつらいよ(05.9.2)

 

 今年も山野ビッグバンドコンテストの審査員をやらせていただきました。全体の音楽的講評は今年も、次号のスイング・ジャーナルに掲載いたしますので、そちらをご参照ください。
 

 今年は特に“審査と順番”ということについて、考えました。
 ヤマノには40バンドが2日間に渡って出場します。学生の皆さんにとって、くじ引きで決められる出演順は意外に気になるところで、出演順が演奏に何の影響もないかというと、やはりそうは言い切れないと思います。別に出演順が早い方が良いとか、後の方が良いとか、そういった単純なことではなく、前後のバンドがどこかとか、例年色々な要素でやりやすさ、やりにくさがあると思います。
 

 でも!それは審査員にもあるとわたしは声を大にして言いたい。審査員の講評は、昔は司会者が“ではこのバンドの講評は○○先生にお願いします。”と適当に振っていましたが、それでは、あまりに審査員側の心臓に良くない、ということから、最近は、もっぱら、“審査員のアイウエオ順に講評係を回していく”ことになっています。
 

 今年、わたしは、結果的に1位と2位だった、国立音大ニュー・タイドと慶応ライトの講評が両方ともまわってくるという不運(!)に見舞われました。なぜ不運かといえば、“完璧すぎて言う事がないんですけど。”
 講評ですから、褒めてばかりでなく、“でもここは良くないから気をつけよう”とチクリと言いたいところですが、本当に指摘するところがないんですよ。当日彼らの演奏を聴いた方なら同意して下さると思いますが。
 また、今年その他にあたった日大リズムは審査員賞受賞。甲南大ニューポートは最優秀ソリストを出したバンド、日本医科大ミッドナイトは、今年このバンドのリサイタルのゲストとして出演したばかりのバンド。どの学校に対しても、感心する一方でした。
 

 まあ、例年だったら、“わたしなんて、本気出したらあんたらの3倍(中途半端な数字に自信のなさがミエミエ)はうまいんだもんねー。”といった謎のはったりオーラを出し、自分のことは30階分くらい棚にあげて、偉そうなことを言うこともできるのですが、今年はわたしのオケがゲストバンドというか弱い立場で、それもできなかったし。
 

 わたしが現役だった頃は、高橋○也先生や前田○男先生が、“お前ら、楽器やめろ”“こういう演奏はジャズとは言わない”といった、こわーいけれども、存在感バリバリの講評をなさっていたものですが....。それに比べて、今年のわたしの講評など、“守屋さんて、チョローーい”と思われたかもしれませんが、年々学生バンドのレベルは上がる一方で、こちらにもそれなりに事情があるんですよ。
 

(写真はまたまた本文とは関係なく、2/4CD録音日のひとこま。TSのふたり、アンディーと小池さん。シビアな録音の最中なんですが。)
 

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