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そのじゅうさん:ペルソナウェアの

 うちでも以前から公開しているデスクトップマスコット「ペルソナウェア」を巡るややこしい状況について少々。

●佳世 \2500、ウェア \0

 佳世を使おうとする人が他のペルソナをどれくらい使うか、これが不確定要素ですが、佳世だけみて「使いたい!」と思って下さった方がいらしたとしたら、その方はまず関門として\2500を支払わねばなりません。

 支払先はうちじゃないわけですが、要するに佳世と戯れるには\2500かかるということでして、手軽に楽しめるフリーウェアに比べると、佳世に触れて下さる方の数は減少すると予想できます。

 逆に佳世の紹介を見てウェアを買ってしまったひとは大変です。佳世はせいぜいコピー同人誌\200程度の商品価値しかありません。
 だって、うちは佳世の完成度に関して道楽レベル以上のヤル気と責任感を持ち合わせておらず、Nassieさんと「佳世つくるからね」と契約したわけでもありません。
 (もう少し作品をよくする気持ちはないのか?とかいう作家根性の問題はまた別の問題です。大体義務関係があるわけでもないし。)

 余程のOLフェチでもない限りは\2500払って失敗したと思うでしょう。その差額は一体どこに求められるべきなのでしょうか?
 不足分は他のベンダーのペルソナに、とか言うと責任転嫁の連鎖が生じてしまいます。

 PWS1.00は、高機能を備えた魅力的プラットフォームです。しかし、それをとりまく環境にはプラエセンス?とユーザー、ペルソナ作家の相互にあさってを向いた立場の食い違いがあり、素直に参戦することをためらわれる状況があります。

 私にためらいを感じさせるものは、ペルソナウェアの収益構造と購買者-提供者の権利義務関係のグレーなところ、あるいはどこかに誤った論理を仕掛けられているという不安感です。

●ウェア \2500、春菜 \0

 こうNassieさんは主張します。つまりプラットフォームが有料なのであり春菜嬢は他のペルソナ同様に無料である。というわけです。

 まずはこの論法を検証してみましょう。

単体で起動できないペルソナウェア

 ペルソナウェアは、ウェア部分のpersona.exeだけでは起動できない商品です。この商品が価値を発揮するためには、誰かの用意したデータ「ペルソナ」を必要とします。

 すなわちウェアは、誰かの成果に寄生しない限り動作形態にならないわけですから、春菜とペルソナウェアは不可分の商品であると考えることができます。

 自主ベンダー製のペルソナしか使っていない場合は?その場合、例えば、佳世とペルソナウェアが不可分の商品になっていると考えることにします。佳世はお値段のわからない商品であり、Nassieさんが販売権を持っているわけです。

 佳世のダウンロードページだけを見ると、無料のダウンロードに見えますが、実はすでにあのページからVectorプロレジへの道がはじまっているのです。

●春菜\2500

プラットフォームを拡大せよ?

 ペルソナウェアが\2500の価値をペルソナデータ側に依存しているとしたら、ペルソナデータの流通量とウェアの流通量は相互依存するわけで、ベンダーの参入を促進する必要が出てきます。そして、その促進のエサはユーザー数となります。すると、ここで鶏と卵の問題が生じます。

 セガvsソニーの激烈な争いを振り返るに、この二社も、まだ1本も遊べるソフトがない世界に単体では役に立たないゲーム機を出したあたり、プラエセンスと似ています。これら2社がゲーム機を完全な商品とするために何を行ったか?というと、ゲーム機を買う意欲を起こすに十分なキラーソフト「バーチャファイター」と「リッジレーサー」を最初に投入しています。前者はセガの自前で、後者はソニーがナムコと買い上げ契約して移植させたものです。

 振り返るにプラエセンスは、キラーソフトのはずの春菜を価格不明瞭な抱き合わせで販売しているわけで、他の推進力となるペルソナを自前で用意しておらす、また春菜の性能不足により\2500に値する娯楽を提供できていないと見ることができます。

  であるからして、プラエセンスは「春菜\2500」に値する大強化または異なる個性のペルソナを複数同梱して、プラエセンスの自力でプラットフォームを拡大・・なんて全部ウソです。実はプラエセンスにそんなものは要りません。マーケットは最初から十分な規模が用意されているのですから。

●ペルソナつかみどり \2500

 ペルソナウェア市場の特異性は、キラーソフトによる市場拡大活動を用いずに、いきなりフリーソフト時代のコミュニティを市場に転換してしまったところにあります。

 この動きは、0.93の配布を禁止した戦略からも理解することができます。(曲解?)Nassieさんが0.93の配布を禁止した理由は、理由として説明された「2バージョンの同時サポートは不可能であるから」ではなく、既存のペルソナを全て収入源に転化することにあるとすれば、すんなり話が通ると思うのです。

 これで、もし仮定として1.00コンバータが正常に動作して、かつZMemoが存在していなければ、過去の大量のペルソナウェア資産がキラーソフトとなったはず、なのですが、互換性チェックの不十分な商用ペルソナウェアを投入して退路を断ちきったために、ベンダーに「放置」を許さず、突入か撤退か(あるいはZMemoかそれ以外の何かか)のふるいにかけてしまう結果を招いてしまっているわけです。

 もし1.03のような旧版互換エンジンを外付けしたウェアを最初から投入していたとしたら、様相はもっと異なり、そしてもっとグレーになっていたと思われます。

 現在、0.93系はそのまま配布、1.00対応はプラエセンスとの利益供与関係が気に入らないからノータッチという立場をとるひともいますが、これは0.93ペルソナが1.00で動作しない場合の台詞です。1.03の登場は、このような立場だろうとなんであろうと、みんな収益源に組み込むという構造を生みます。

 ここで、Nassieさんは、従来にない新しい商業モデルを確立しようとしている、という仮説を私は提唱します。

遊園地モデル

 ペルソナウェア市場は、ひとつの遊園地としてみることができます。その\2500の柵のなかには、春菜をはじめ、様々なペルソナが待っています。購入者は、\2500を無制限チケットとして用い、追加料金なしで手当たり次第にペルソナを収集することができるわけで、これはたくさん集めるほどお買い得になります。

 ユーザーは、この世界が面白いかどうか見るために30日の体験を許可され、いろんなペルソナと戯れてみるわけですが、さて、ここでよりどりみどりのペルソナウェアが果たして\2500と認められるのか?このデータはNassieさんにしかわかりません。

 仮に認められているとしたら・・・私が申し上げることなど何もありません。Nassieさんは非商用のベンダーの創作欲をウェアによって刺激し、彼らの活動成果によって食べていくという、新たなビジネスモデルに成功したとてもえらい人です。

 認められていないとしたら・・・?それは、遊園地のエンターテイメントの不足です。Nassieさんは、もっと遊園地を盛り上げるために、

このような戦略を要することになります。

●新しいGive&Takeへ

 このように論理を展開させた場合、プラエセンスはベンダーを収入源にしているという前提のもとに、新たなギブ&テイクモデルを構築することになります。

 ユーザー対プラエセンスは、プラエセンスがペルソナ界の活気維持の努力を約束する限りは現行の販売形態で続行できます。ペルソナ界がさびれたら倒産です。

 ベンダー対プラエセンスは、利害関係の整理を必要とします。

建前はともかくとして

 要するに、プラエセンスはベンダーをその気にさせてマスコットを作成させて、それにより購買者を増やして採算を取る事業形態を取っています。

 ここでベンダーが生む収益に対してプラエセンスが与えられるものを考えてみましょう。

迅速かつ簡易な開発環境

 これはVBやVCよりも綾織スクリプトが簡単で、手軽に高性能が引き出せるなら十分に価値があります。充実したライブラリ、用途別サンプルコード集、簡便なデバッグ環境などがウェア市場の基盤となります。

高性能ペルソナの投入による、ウェアの可能性の誇示。

 貧弱ペルソナで背比べになってしまっては、購入者の意欲を冷ますだけでなく、開発者にもポテンシャルの低いプラットフォームとして失望されてしまう危険性があります。

 逆に、多様な機能を引き出してみせる高性能な春菜を標準添付し、さらに努力次第ではこれに並ぶことができると紹介すれば、作家の創作欲を強烈に刺激することができるでしょう。テライユキを見てShadeを買いたくなるのと同じ理屈です。

「ペルソナウェア」ブランドの維持とプロモーション

 ペルソナウェアの土俵に上がれば注目度満点、ホームページもアクセスカウンタ三倍確実、とかいうブランド力を武器にすればベンダーの増加を期待できます。実際、現在でもペルソナウェアの知名度はかなり高いものですが、問題は、そのプロモーション活動を道楽のペルソナWatchに依存しているところでしょうか。新規登録やファン投票システムの停止により受けたダメージは小さくないはずです。

 企業の道義として、同等の検索・紹介システムを保有する必要があるでしょう。また、すでにユーザーメーリングリストで出たネタですが、標準装備の春菜が新着ペルソナを紹介するようなシステムを用意すれば、ベンダーにとって刺激となるでしょう。

まとめ

 最初に挙げた「佳世\2500」に立ち戻りますと、「そいういうものです」と言うしかありません。

 しかし、「買わせるのが申し訳ない」と思いながら「ウェアは必要です」と言うか、それとも「面白いよ、損はさせないから」と言って購入をすすめるか?かなり心情的には違うものがあります。

 結局のところ「ペルソナありったけ詰め合わせて\2500」。そして販売するのはプラエセンスです。売り物になるように市場を育てるのも商売のうち、ということでおわりにします。

おしまい

Give&Take(01/01)
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