渚カヲル第弐拾四話
コーヒーメーカーの置いてあるミサトの家のキッチンで言い合う2人。
「いいかげんな事言わないでよ、バカシンジのくせに。」
「だから何度言ったらわかるんだよ。加持さんはもういないんだよ。」
「うそ。。。」
バスタブで廃人同然のアスカ、情報部の人間により発見される。
赤木リツコ、ダミーシステム破壊の罪により幽閉される。
シンジは話し相手がいなくなり、一人呆然とする。どうしていいかもわからない。
零号機自爆の跡地でたたずむシンジに渚カヲルが話しかける。
「カヲルでいいよ。碇君。」
「僕もシンジでいいよ。」
委員会から直接送り込まれたカヲル。コアの変換なしにエヴァへのシンクロを果たす。
カヲル、レイと接触。
「君は僕と同じだね。」
「お互いにこの星に生きて、体はリリンと同じ体へと行き着いたか。」
カヲルと一緒にシャワーを浴びるシンジ。
「一時的接触を極端に嫌うね君は。こわいのかい?人とふれあうのが。
他人を知らなければ裏切られることも互いに傷つくこともない。でも寂しさを忘れる事もない
よ。人間は寂しさを永久になくすことは出来ない。
人は一人だからね。
ただ忘れることができるから人間は生きていけるのさ。」
電源が突如落ち、暗くなる。
「時間だ。」
「もう終わりなのかい?」
「うん、もう寝なきゃ。」
「君と?」
赤くなるシンジ。「あ、いや、カヲル君には部屋が用意されていると思うよ。別の。」
「常に人間は心に痛みを感じている。
心が痛がりだから生きるのも辛いと感じる。
ガラスの様に繊細だね。特に君の心は。」
「僕が」
「そう。好意に値するよ。」
「こうい?」
「好きって事さ。」
ゼーレのモノリス。
「ネルフは我らゼーレの実行機関として結成された組織。」
「我らのシナリオを実践するために用意されたもの。」
「だが今は一個人の専有機関となり果てている。」
「さよう。我らの手に取り戻さねばならん。」
「約束の日の前に」
「ネルフとエヴァシリーズを本来の姿にしておかねばならん。」
「碇、ゼーレへの背任。その責任を取ってもらうぞ。」
初号機が係留されたケージにいるゲンドウ。
「我々に与えられた時間は残り少ない。
だが我らの願いを妨げるロンギヌスの槍は既にないのだ。
まもなく最後の使徒が現れる。それを消せば願いが叶う。もうすぐだよ、ユイ。」
ゲンドウの手にはアダムサンプルが既に寄生している。
綾波レイ、自宅。
「私、何故ここにいるの? 私、何故又生きてるの?」
「何の為に? 誰の為に? フィフスチルドレン、あの人。私と同じ感じがする。どうして?」
ミサト、自宅。ペンペンを抱きながら。
「しばらくお別れね、ペンペン。」
カヲルとシンジ、カヲル自室で。
「僕は君に会うために生まれてきたのかもしれない。」
早朝、湖の岸辺にいるカヲル。
「人は無からなにも作れない。人はなにかにすがらなきゃ何もできない。
人は神ではありませんからね。」
ゼーレ1「だが神と等しき力を手に入れようとしている男がいる。」
ゼーレ12「我らの手に再びパンドラの箱を開けようとしている男がいる。」
ゼーレ4「そこにある希望が現れる前に箱を閉じようとしている男がいる。」
ゼーレモノリスに囲まれるカヲル。
カヲル「希望?あれがリリンの希望ですか?」
ゼーレ「希望の形は人の数ほど存在する。」
ゼーレ「希望は人の中にしか存在しないから。」
ゼーレ「だが我らの希望は具現化されている。」
ゼーレ「それは偽りの継承者である黒き月よりの我らの人類、その始祖たるリリス。」
ゼーレ「そして正当な継承者たる失われた白き月よりの使徒、その始祖たるアダム。」
ゼーレ「そのサルベージされた魂は君の中にしかいない。」
ゼーレ「だが再生された肉体は既に碇の中にある。」
カヲル「シンジ君の父親、彼も僕と同じか。」
ゼーレ「だからこそお前に託す。我らの願いを。」
消えるモノリス。
「わかってますよ。その為に僕は今ここにいるわけですから。」
双眼鏡でカヲルを見つめているミサト。
「だめだわ。ここからじゃ唇の動きが読めない。それにしても朝っぱらから独り言を言うため
に散歩とは。危ない奴ね。」
突然ミサトの方を振り返るカヲル。すぐに双眼鏡をはずすミサト。
「気づかれた?まさかね。」
カヲル「全てはリリンの流れのままに。。」
ミサト、リツコに面会。
「あの少年の、フィフスの正体はなに?」
「おそらく、最後のシシャ」
弐号機係留のケイジ。
「さあ行くよ。おいで、アダムの分身。そしてリリンのしもべ。」
エヴァンゲリオン弐号機起動。カヲルとセントラルドグマを共に降下。
冬月「まさかゼーレが直接送り込んで来るとはな。」
碇「老人は一つ予定を繰り上げるつもりだ。我々の手で。」
キール「碇、君は良き友人であり、志を共にする仲間であり、理解ある協力者だった。これが
最後の仕事だ。初号機による遂行を願うぞ。」
カヲルが使徒であることを認めたくないシンジ。
初号機でカヲルを追撃に出るシンジ。
「裏切ったな。僕の気持ちを裏切ったな。父さんと同じで裏切ったんだ。」
初号機と弐号機、プログナイフによる格闘。
「カヲル君、やめてよ、どうしてだよ。」
「エヴァは僕と同じ体で出来ている。僕もアダムより生まれしものだからね。魂さえなければ
同化できるさ。この弐号機の魂は今自ら閉じこもっているから。」
プログナイフをA.T.フィールドで防ぐカヲル。
「A.T.フィールド?」
「そう。君たちリリンはそう呼んでるね。何人にも侵されざる聖なる領域。心の光。リリンも
判ってるんだろ。A.T.フィールドは誰もが持っている心の壁だということを。」
ミサト、万が一の場合の自爆を決心。しかし、カヲルはA.T.フィールドによる結界構築。
ヘブンズドアが開かれる。その一切を見つめるレイ。
「アダム、我らの母たる存在。アダムに生まれし者はアダムに還らねばならないのか。人を滅
ぼしてまで。。。違う!これは、リリス!そうか、そういう事かリリン!」
弐号機を沈黙させた初号機、カヲルを掴む。
「ありがとう、シンジ君。弐号機は君に止めておいてもらいたかったんだ。そうしなけば彼女
と生き続けたかもしれなかったからね。」
「カヲル君。どうして?」
「僕が生き続ける事が僕の運命だからだよ。結果、人が滅びてもね。」
「だが、このまま死ぬこともできる。生と死は等価値なんだ、僕にとってね。自らの死、それ
が唯一の絶対的自由なんだよ。」
「何を、カヲル君、君が何を言っているのかわからないよ。カヲル君。」
「遺言だよ。さぁ僕を消してくれ。そうしなければ、君らが消えることになる。滅びの時を免
れ、未来を与えられる生命体は一つしか選ばれないんだ。そして君は死すべき存在ではない。」
レイを見つめるカヲル。
「君たちには未来が必要だ。ありがとう。君に会えてうれしかったよ。」
カヲルの首、LCLの海へ落下。
湖畔にたたずむシンジとミサト。
「カヲル君が生き残るべきだったんだ。」
「違うわ。生き残るは生き残る意志を持った者だけよ。彼は死を望んだ。生きる意志を放棄し
て、見せかけの希望にすがったのよ。シンジ君は悪くないわ。」
「冷たいね、ミサトさん。」
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