社会保険労務士関連ニュース(2000年/第1四半期:2000/4-6)

2000年(平成12年)度 第1四半期 2000年4月〜6月に新聞等で発表されたニュースです。

【LastUpdate 2000. 6.30】

【Add 2000. 6.30】

 
出生率最低1.34 少子化加速

2000/ 6/30 日本経済新聞朝刊

99年 人口動態統計 年金や医療費負担増さらに
 少子化に歯止めがかからない。厚生省が29日まとめた1999年の人口動態調査によると、99年中に産まれた子供の数は117万7000人、1人の女性が生涯に産む子供の数を示す合計特殊出生率は1.34となり、共に統計を取り始めた1899年以降の最低を更新した。女性の晩婚・非婚傾向や出産年齢の高まりなどが背景にある。少子化が続けば、働く世代の人口減につながり日本経済の成長力を弱める要因になる。社会保障制度では、若い世代が高齢者を支える公的年金や医療保険の財政悪化につながりかねず、現役世代の税・社会保険料の負担を計画より引き上げなければ制度が行き詰まるおそれもある。年金や医療制度の改革が急務といえる。
 
高齢者医療費 初の10兆円台

2000/ 6/30 日本経済新聞朝刊

98年度、全体で29兆円
 70歳以上の高齢者への医療給付費が前年度比5.1%増の10兆1,737億円となり、初めて10兆円を超えたことが、厚生省が29日発表した1998年度の国民医療費統計で明らかになった。国民医療費全体でも2.6%増の29兆8,251億円と過去最高となった。1人当たり医療費や国民所得に対する国民医療費の割合も過去最高を更新しており、高齢化に伴う医療費の増大には歯止めがかかっていない。
 国民医療費は国民が病気などの治療で医療機関に支払った費用で、市販薬の購入費、老人保健施設の食費などは含まない。
 高齢者の医療費を賄う老人保険制度の支払が急増したのは人口の高齢化で給付対象者が5%近く増えたことが主因。高齢者の1人当たり医療費は814,900円と69歳以下(165,700円)の4.9倍に達した。
 医療費を保険制度別に見ると、健康保険組合など給与所得者とその家族が加入する被用者保険は4.3%減の7兆8,474億円に落ちた。一方、自営業者らの国民健康保険は2.3%増の5兆6,101億円となった。
 
年金運用9年ぶり黒字

2000/ 6/29 日本経済新聞朝刊

昨年度年福事業団 4474億円、株式上昇 累積赤字は1兆4000億円
 年金福祉事業団が28日発表した1999年度の公的年金積立金の自主運用結果によると、同年度の収支は4474億円の黒字となり、前年度の4052億円の赤字から大幅に改善した。株式相場の上昇で賃金運用部からの借入金利を上回る運用利回りを確保したためで、単年度の黒字は9年ぶり。ただ、同事業団は依然として1兆4000億円の累積赤字を抱えたまま。同事業団は財政投融資改革に合わせて来年4月に廃止され、新設の年金資金運用基金が業務を引き継ぐが、安定した収益を得られる運用体制の構築が急務となっている。
 
家事援助の報酬上げを

2000/ 6/29 日本経済新聞朝刊

介護事業者相次ぎ希望 厚生省は慎重
 厚生省が28日開いた介護保険のサービス提供事業者との意見交換会で、事業者から「訪問介護のうち家事援助の報酬を引き上げてほしい」との意見が相次いだ。掃除や洗濯の手助けなどの「家事援助」は保険から事業者に支払う報酬が「身体介護」に比べ低く、この業務の多い事業者は収益が伸びない原因となっている。ただ、厚生省は報酬の引き上げが保険財政の悪化につながることを懸念、「3年後の制度見直しの際の検討課題だ」と慎重な姿勢を示した。
 この日の会合に参加したのは介護サービスを提供している生協や農協、NPO(非営利組織)などの事業者。家事援助について「従来から力を入れており、もっと評価してほしい」「家事援助サービスは寝たきりの予防的側面もある」などの意見が出された。
 訪問介護サービスには身体介護、家事援助の他、両者の中間である複合型という区分がある。報酬単価は身体介護(30分以上1時間未満のサービスで4,020円)が最も高く、家事援助(同1,530円)が最も高い。
 会合では「身体介護、複合型、家事援助の線引きが不透明」「介護とは関係ない草取りなども要求される」などの声もあがった。
 
労働者の27%非社員

2000/ 6/27 日本経済新聞朝刊

昨年9月時点 労働省調査 雇用の多様化進む
 労働省が26日発表した「就業形態の多様化調査」によると、全労働者に占めるパートや契約社員など非正社員の割合は、1999年9月時点で27.5%となり、前回調査(94年10月時点)に比べて4.7ポイント上昇した。企業は人件費の削減や雇用調整のしやすさを理由に非正社員を増やしている。今後についてもパートを中心に非正社員の比率が高まると予想する企業が50.2%に達しており、雇用の多様化が一段と進みそうだ。
 調査は昨年10月に従業員5人以上の15,092社を対象に実施、11,284社(74.8%)から回答を得た。
 同調査によると、全労働者のうちパートの割合は20.3%、契約社員の割合は2.3%、派遣労働者が1.1%だった。男女別の非正社員の割合は男性が14.9%、女性が47.0%。業種別では卸売・小売業・飲食店が最も多くて43.0%。鉱業、電気・ガス熱供給・水道業では9.2%と少ない。
 非正社員の平均月額賃金は約14万円。契約社員は237,000円で最も多く、派遣社員は209,000円。正社員と労働時間が変わらないパートは152,000円で、労働時間が短いパートは89,000円。 
 
短期入所への振替制度自治体の67%導入

2000/ 6/26 日本経済新聞朝刊

介護保険
 介護保険制度で在宅介護を受ける高齢者がホームヘルパーの訪問サービスなどの利用枠を使い残した場合に施設への短期入所(ショートステイ)に振り替えられる制度を導入している市町村が全体の3分の2にのぼることが厚生省の調査で分かった。振り替え分の利用料は利用者がいったん全額を負担した後で介護保険制度で支払われる分を返金してもらうのが原則だが、多くの自治体は当初から利用料の1割にあたる利用者負担分のみを払えば済む特例措置を設けている。枠の振り替え希望が多いことを踏まえ、厚生省は来年度から短期入所と他サービスの利用枠を一本化する。
 調査は5月末に全国3252市町村を対象に実施した。全体の67%に当たる2175市町村が振替制度を導入済みで、導入予定のある744市町村を加えると実施割合は9割弱に高まる。
 介護保険では介護の必要度に応じて利用限度枠が決まっており、この枠内でサービスを選べる仕組み。ただ短期入所については、他の在宅サービスとは別枠で上限が決められている。このため他サービスを利用しない代わりに短期入所の日数延長を求める声が高齢者の同居家族らから強まり、月2週間を上限に利用枠を短期入所に振り替えられる制度を市町村の判断で導入できることになった。
 利用枠の振替制度では費用の支払いは利用者が全額をいったん支払い、自己負担分を除く9割を市町村に払い戻し請求する「償還払い」が原則。しかし振替制度を導入した市町村の42%は、利用者負担を当初から1割にとどめるため市町村への払い戻し請求を利用者ではなく施設が代行する特例を設けている。導入を予定している市町村なども含めると、年度内に63%が特例を設ける見通しだ。

【Add 2000. 6.24】

 
中途採用は5人に1人

2000/ 6/24 日本経済新聞朝刊

ホワイトカラーの正社員 上場・店頭企業、労働省調べ
 ホワイトカラーの正社員の5人に1人は中途採用組−−。労働省が23日公表した上場・店頭公開企業の実態調査でこんな実像が明らかになった。全国的な中途採用者の調査は今回が初めてで、製造業では15.9%にとどまる半面、サービス業では39.1%に達している。雇用の流動化が着実に浸透していることを裏付ける格好で、同省は「即戦力を外部に求める傾向は強く、今後も比率は高まる」という。終身雇用を前提とした年金、退職金などの制度の見直しは一段と急務になりそうだ。
 調査は昨年12月、全国の上場・店頭公開企業2100社を対象とし、448社から回答を得た。
 中途採用の比率は全産業平均で20.3%。業種別ではサービス業に次ぎ、金融・保険・不動産では27.0%と高水準。中途採用者が過半数を占める企業は全体の1割を占めた。
 
年金統合、財政格差の壁

2000/ 6/22 日本経済新聞朝刊

「農林」保険料、ピーク時7ポイント高 「厚生」の負担重く 議論スタート
 政府は21日開いた「公的年金制度の一元化に関する懇談会」で、民間サラリーマンが加入する厚生年金や農協職員らの農林年金など5つの公的年金の統合に向けた議論をスタートさせた。懇談会では農林、国家公務員など4つの共済年金の将来の保険料推計が公表され、今後財政悪化が予想される農林年金は2025年度に保険料を厚生年金より約7ポイント高い水準まで引き上げなければならないことが明らかになった。財政悪化を回避するため農林年金は2001年度に厚生年金と統合するように要望しているが、厚生年金側は安易な「救済」統合を認めれば保険料負担が重くなると警戒しており、今後、政界をも巻き込んだ綱引きが展開されそうだ。
 給与所得者の公的年金は厚生年金のほか国と地方の公務員、農林年金、私立学校教職員の私学共済の4つの職域単位の共済制度に分かれている。一元化懇談会はこれを民間年金と公務員共済の2つに分けて統合を検討、将来は全体の一元化も目指す。その第一弾となる厚生、農林両年金の統合は早ければ年内に結論を出し、関係閣僚会議を経て実施に移す考えだ。
 公的年金は高齢者への給付をその時点の現役加入者の保険料で賄う仕組みのため現役加入者数が減少すると、保険料負担は重くなる。高齢化がピークを迎える2025年度の保険料を比べると農協再編で職員削減を進める農林年金が最も高く、月収の34.39%(雇用主と折半するので加入者個人はこの半分)。現在より14.9ポイント引き上げなければならない。次いで国家公務員が高く、29.8%に達する。
 5つの年金の中で圧倒的に規模が大きい厚生年金は、ピーク時の保険料が27.6%。現在より約10ポイントの引き上げになる。
 対照的に私学年金の2025年度の保険料は21.8%と厚生年金を5.8ポイントも下回り、現役加入者の負担は最も軽い。他制度より積立金も潤沢で財政に余裕があるため保険料の引き上げは緩やかに進める計画で、ピーク保険料(27.8%)に達するのは2045年度と他制度より20年遅くなる。地方公務員共済の将来の保険料負担も厚生年金と比べると軽い。
 こうした保険料の将来推計から、農林年金は「制度を単独で維持するのは困難」と判断、同じ民間の年金で規模が大きい厚生年金との統合を求めている。しかし、財政難の農林年金を単純に吸収すると厚生年金の保険料負担が将来重くなるため、厚生年金側は統合の際に農林年金側が将来の年金支払いに備え十分な資金を”持参金”として拠出するよう求める見通しだ。
 また、厚生年金は財政状態が比較的良好な私学共済と統合すれば将来の財政負担が軽減されるため、農林年金を統合する場合は同時に私学共済にも統合を求める構えだ。
 国と地方の公務員共済については、民間とは別に公務員制度として一体的な運営を目指すため、どちらかの財政が一定基準を超えて悪化した場合に相互に財政支援する仕組みを検討する。当面は相対的に財政が悪化している国家公務員を地方公務員共済が財政支援する必要があるとみられる。
 
厚生・農林年金統合 「持参金」規模が争点 政界巻き込み綱引きへ
 公的年金の一元化で真っ先に議論される厚生年金と農林年金の統合では、加入者への年金給付の原資としては農林年金から厚生年金に移す積立金(”持参金”)をいくらにするかが最大の争点になる。農林年金側は独自の上乗せ年金を設立する資金を残すため持参金を少なくしたい考えだが、経済界や労組は「厚生年金への付け回しは認められない」と反発している。農林年金が目指す2001年度の統合へ向けて農林族議員を巻き込んだ綱引きになるのは確実で調整は難航が予想される。
 現在、農林年金には将来の年金給付に備えて約2兆円の積立金があり、持参金はここから拠出される。農林年金側が持参金の抑制を狙うのは、持参金を除く積立金の残りの部分で独自の年金基金を設立し、厚生年金よりも高い給付水準を将来も維持したいからだ。
 衆院総選挙を控えた農林族議員の関心も高く、政界からは早くも「農林年金に不利な統合は認められない」(幹部)との声があがっている。一方、経済界や労組は「農林年金は財政が悪化して救済を求めているのだから、高い給付水準を維持するのは認められない」(村上忠行・連合総合政策局長)と反発。農林年金側が21日の一元化懇談会で示した農林年金の財政推計についても「前提条件が甘えすぎないか検証が必要」と警戒している。
 現在の推計で想定している以上に農協、漁業職員の減少や高齢化が進めば、厚生年金側の負担が持参金以上に膨らむ恐れがある。持参金はそのような自体も想定し、「統合によって厚生年金の加入者に追加負担が生じないような適正な規模にすべきだ」というのが厚生年金側の主張だ。
 1997年に実施した旧3公社の年金と厚生年金の統合では、日本電信電話(NTT)が持参金を除いた積立金の残りで上乗せの年金基金を設立したが、厚生年金側は「農林年金に余裕はないはず」と指摘する。
 農林年金は59年に自らの判断で厚生年金から脱退した。97年には統合を断った経緯もあり、厚生年金側には農林年金に対する心情的な反発も根強い。
 
介護付き賃貸住宅を供給 各地の住宅公社

2000/ 6/22 日本経済新聞朝刊

分譲から撤退 高齢者向け10年で10万戸
 都道府県や政令指定都市の住宅供給公社が分譲住宅事業から事実上撤退し、中核業務を高齢者が亡くなるまで住み続けられるケア付き賃貸住宅の供給に転換する方向が固まった。60歳上の健康な高齢者が生涯の家賃として3000万円前後を前払いし、介護が必要になればホームヘルパーによる24時間のサービスを受けられる住宅で、2010年までに全公社で約10万戸を建設する計画。急速な高齢化で不足する在宅介護の基盤を整えるのが狙いだ。建設省は来年の通常国会に地方住宅供給公社法改正案を提出、2001年度予算で初の国費による支援を目指す。都市基盤整備公団に次ぐ公共住宅改革の総仕上げとなる。
 
定年後の継続雇用 足踏み

2000/ 6/22 日本経済新聞朝刊

0.8ポイント低下67% 「経営厳しい」 年初時点、労働省調査
 労働省は21日、一律定年制を採用している企業のうち、今年初の時点で67.0%が定年後も従業員を継続して雇用する制度を導入しているという調査結果を発表した。導入率は1年前より0.8ポイント低下した。公的年金の給付年齢の引き下げと高齢化による将来の労働力不足を背景に、65歳までの雇用の継続が大きな課題となっているが、同省は「経営環境が厳しく、継続雇用の導入は足踏み状態」とみている。
 調査は常用労働者30人以上の企業5,830社を対象に実施、81.4%にあたる4,743社から回答を得た。
 調査結果によると、職種などに関係なく一律の定年制を導入している企業のうち、定年が61歳以上の企業は7.6%。61歳以上による予定がある企業まで含める12.2%となった。
 定年後の雇用継続制度のうち、定年に達した労働者を退職させずに雇用し続ける「雇用延長」のみを採用している企業は13.8%だった。定年退職者を再び雇用する「再雇用」のみは46.0%で、両制度を併用している企業は7.2%だった。
 雇用延長制度を導入している企業の中で希望者全員を対象にしているのは26.3%に過ぎず、「会社が特に必要と認めるものに限る」が44.1%を占めた。その結果、雇用延長が認められた人が希望者の30%に満たない企業は38.6%にのぼった。「再雇用」もほぼ同様の結果だった。
 
夏のボーナス 2年ぶり増

2000/ 6/21 日本経済新聞朝刊

電機大幅、5% 非製造業も回復 645社 1.16%(本社中間集計)
 日本経済新聞社が20日まとめた今夏のボーナス調査中間集計(12日時点)によると、1人当たりの支給額は732,180円で、1999年夏実績を1.16%上回った。支給額が前年比プラスになるのは2年ぶり。電機、情報・ソフトなど情報技術(IT)関連業種のほか、化学など収益が好転してきた重厚長大が他産業でも回復が目立つ。夏ボーナスの支給額が決まる時期は前年の冬から夏まで企業ごとに異なるが、今夏の場合は決定時期が遅いほど支給水準が上がる傾向にあり、企業の景況感が次第に改善してきたことを裏付けている。

2000年夏のボーナス回答・妥協状況 (6月12日現在、加重平均、▲は減)

  社数 税込み支給額(円) 99年夏比増減率(%) 99年冬比増減率(%) 99年夏の前年比(%) 平均年齢(歳)
全体

645

732,180

1.16

▲1.39

▲6.58

36.5

製造業

515

717,533

1.20

▲0.37

▲7.55

36.7

非製造業

130

787,909

0.87

▲4.95

▲3.09

35.5

組合員平均

503

742,109

1.28

▲0.24

▲6.11

36.8

従業員平均

69

761,379

3.24

▲6.67

▲9.79

35.3

モデル

73

650,002

▲1.56

▲4.71

▲7.47

35.4

 
業種別健保、赤字6倍 中小企業

2000/ 6/21 日本経済新聞朝刊

昨年度976億円 高齢者医療費膨らむ
 中小企業が業種ごとに作っている総合健保組合(308組合)の1999年度決算は976億円の赤字になった。赤字額は前年度の6倍以上で過去最悪を更新、赤字組合も264組合と全体の86%に達している。企業のリストラの影響で保険料収入が低迷する一方、高齢者医療費への負担金支出が増加したためだ。医療費の支払いに備える法定準備金を取り崩す組合も続出しており、財政難から保険料引き上げや解散を迫られる組合が増える見通し。政府・与党に医療制度の抜本改革の早期実施を求める声が高まりそうだ。
 企業が設立する健保組合には個別企業ごとの単一健保と業種別の総合健保があり、総合健保の加入者数は約1,022万人と全体の約3分の1を占める。全国総合健康保険組合協議会によると、総合健保全体の99年度の経常収入は1兆8186億円と前年度比1.1%減少した。加入企業の人員削減で被保険者が減り、保険料収入が減少した。対称的に経常支出は1兆1063億円と同3.4%増加。赤字額は前年度の156億円の6.2倍に膨らみ、これまで最大だった96年度(826億円)を上回った。
 収支悪化の主因は加入者の医療費とは別に70歳以上の医療費を賄うために健保が支払う負担金(老人保健拠出金)が11.3%増と膨らんだことだ。60代の退職者の医療費支払い(退職者拠出金)を加えた合計負担金が保険料に占める割合は、前年度の36.1%から40.6%に上昇し、初めて4割を突破した。収支悪化に歯止めをかけようと保険料を引き上げる健保が相次いだ。
 
賃金下がっても仕事満足 60歳定年後の継続雇用者

2000/ 6/21 日本経済新聞朝刊

労働省外郭団体まとめ 「自分の能力生かせる」
 60歳の定年以降、継続雇用されている人の65%が「賃金が下がった」ものの、8割は今の仕事に満足していることが20日、労働省の外郭団体、日本労働研究機構がまとめた「高年齢者活用実態調査」で分かった。
 調査は昨年12月-今年2月、従業員50人以上の企業10,000社、50歳代と60歳以上の従業員10,000人を対象に実施。2,466社、4,620人から回答があった。
 それによると、継続雇用制度がある企業は61.5%。定年後に「対象となる85%以上の人」を雇用している企業は39.0%ある一方、「30%未満」も32.6%あり、ばらつきがあった。
 定年後、継続雇用されている人で、賃金が「下がった」と回答したのは65.7%。「変わらない」のは19.8%、「上がった」の7.9%を大きく上回った。下がった人のうち年金と合わせても減少したのは54.5%と半数を超えた。暮らし向きについては、55.4%が「変わらない」と回答。「苦しくなった」も34.9%いた。
 一方で、今の仕事の満足度は「どちらかといえば満足」(67.0%)、「とても満足」(16.5%)を合わせて8割を満足派。理由は「自分の能力を生かせる」(30.5%)、「自分のペースで仕事ができる」(29.5%)、「組織の中で頼りにされる」(18.9%)の順だった。上司が年下であることにも89.8%が「抵抗ない」と答えた。
 また、50歳代の人が描く定年後の望ましい姿は、「今の会社でフルタイム出勤」が34.1%でトップ。働き方は「収入は少なくてもゆとりのある働き方をしたい」が53.6%と半数を超えた。
 
訪問介護、家事援助を抑制

2000/ 6/20 日本経済新聞朝刊

厚生省「家政婦代わり」禁止 不適切な行為明示へ
 厚生省は介護保険の訪問介護サービスで、要介護の同居家族が健康であるにもかかわらず、家族向けの食事の準備などをホームヘルパーに頼む行為を原則として禁止する。こうした「家政婦代わり」のサービスは、公費が財源の半分を占める介護保険の給付対象としてふさわしくないと判断した。7月にも給付対象として不適切な行為を明示し、事業者や要介護者のサービス利用計画を作成する介護支援専門員(ケアマネージャー)にこの種のサービスを提供しないように指導する。
 訪問介護には掃除や洗濯の手助けをする「家事援助」、食事や入浴の世話をする「身体介護」、両者の組み合わせである「複合型」の3種類がある。このうち家事援助では、要介護者と同居している健康な家族のためにホームヘルパーが料理、洗濯、庭の草むしりなどを頼まれるケースが増えている。19日に開いた厚生省と自治体の意見交換会でも、市町村の担当者から「ホームヘルパーが家政婦代わりに使われている」との指摘が出た。
 介護保険では要介護者がサービス事業者を自由に選べる仕組みになっているため、ホームヘルパーは契約が解除されるのを恐れて家政婦代わりのサービスの提供を断れきれなかった。
 介護保険で介護サービスが必要と認定された高齢者は、費用の1割を自己負担すればサービスを利用でき、残りの9割は市町村の介護保険会計からサービス事業者に給付される。給付費の財源の半分は公費だ。厚生省は同居家族がやるべき行為まで給付の対象にするのは納税者の理解を得られないと判断、問題の是正に乗り出す。
 要介護者の同居家族が働きに出ている場合に家事援助の利用を認めるかどうかでも、「現場の良識ある判断にゆだねる」との現行のあいまいな基準の修正を検討する。
 一方、家事援助の利用が予想以上に増え、サービス事業者の採算が悪化している問題では、家事援助の利用基準を明確にする。
 家事援助は利用者の費用負担が軽く、利用者はヘルパーに着替えや食事の手助けなど身体介護を頼むことがあっても家事援助で契約することを求めるためだ。厚生省が2月に示した家事援助の利用基準では家事援助と複合型の区別が不透明で、利用者の要求に配慮して家事援助の利用を認めるケアマネージャーも目立つ。

訪問介護の3類型 (介護報酬の単価は30分以上1時間未満)

  内容 単価
▽身体介護 ・寝たきり高齢者の体位変換、移動解除、排泄や着替えの手助け、食事や入浴の解除などをもっぱら行う場合 4,020円
・食事や着替えの世話が中心だが、若干の家事援助も行う場合
▽家事援助 ・掃除や洗濯などをもっぱら行う場合 1,530円
・家事援助が中心だが、若干の体位変換や移動介助も行う場合
▽複合型 ・身体介護や家事援助のいずれもが中心とは言い難い場合 2,780円
 
短期入所と訪問通所 利用枠を一本化

2000/ 6/19 日本経済新聞朝刊

介護保険 来年度から
 厚生省は来年度から、在宅介護を受ける高齢者が施設に短期入所(ショートステイ)できる日数に利用限度枠と、ホームヘルパーによる訪問介護など他の在宅サービスの利用枠を一本化する。現在も訪問介護などの未利用枠を短期入所に振り返ることを認めているが、日数制限があるうえ手続きが煩雑なのを是正する。枠を一本化することで高齢者は介護サービス計画(ケアプラン)の作成段階からそれぞれの事情に応じて、サービスを組み合わせられるようになる。
 現在の在宅サービスは訪問介護などの訪問通所と特別養護老人ホームなどへの短期入所に分け、それぞれ介護の必要度(要介護度)ごとに利用限度枠を設けている。短期入所の施設整備が十分な市町村では訪問通所の枠を使い残した場合に、残った枠を短期入所の利用に充てる「振り替え」を認めているが、月に2週間が限度。しかも利用者は原則として費用全額をいったん支払った後に、自己負担分を除いた9割分について払い戻すよう市町村に請求する手続きが必要になる。
 来年度からはこれを改め、訪問通所と短期入所で共通の利用枠を設け、この枠内で高齢者が自由にサービスを組み合わせられるようにする。訪問通所を利用しなければ現在より短期入所の日数を増やせるうえ、いったん全額を支払う「振り替え」と異なり、当初から費用総額の1割の自己負担分を支払うだけで済む。
 短期入所については「自宅で介護している高齢者を家業の繁忙期などに一定期間、施設に預けたい」という家族から利用枠の拡大・弾力化を望む声が多い。枠を一体化すると、例えば「要介護3」の高齢者の短期入所の日数は半年で3週間という現行の枠に上乗せして、毎月最長で25日追加できる。ただ、施設が不足している地域で恒常的な短期入所を認めると、利用者が一部に偏ってしまうとの指摘もあるため、一定の利用制限を残すべきかどうかも検討する。
 
労働生産性 サービス業、低下続く

2000/ 6/19 日本経済新聞朝刊

リストラ遅れ5ヶ月連続
 サービス業で企業の収益力の目安となる「労働生産性」が低下している。第三次産業活動指数などをもとに算出した3月のサービス業の労働生産性は前年同月比で1.0%低下し、5ヶ月連続のマイナス。雇用面のリストラの遅れが生産性を押し下げる要因となっており、サービス業の競争力の低下を反映している。一方、製造業や運輸・通信業では急速に向上しており、業種間で生産性の格差が広がる傾向にある。
 労働生産性は雇用者や労働時間など投入した労働量に対し、企業が生み出した生産量や付加価値を示す指標。生産性が高いほど企業の収益は上がり、経済成長率も高まる要因となる。労働生産性は第三次産業活動指数や鉱工業生産指数を、労働時間に常用雇用者数をかけた労働投入量で割って算出する。今回、国際証券の水野和夫チーフエコノミストは「人権費率に高いサービス業はインターネットを利用して低賃金の海外へ仕事を発注するなど、情報技術(IT)化を進めることが不可欠だ」と指摘している。
 サービス業で生産性が低下しているのは、消費の低迷などで1-3月期の第三次産業活動指数が前年同月比で1.5%の上昇にとどまる一方で、雇用者数は2.0%増と指数を上回る増加を続けているため。法人企業統計でもサービス業の1999年度の売上高は前年比2.7%減少したのに対し、人件費は同1.5%減にとどまっている。

【Add 2000. 6.18】

 
厚年基金加入1200万人割る 99年度

2000/ 6/18 日本経済新聞朝刊

 厚生省のまとめによると、厚生年金にさらに年金を上乗せするために企業が設立する厚生年金基金の1999年度未加入者数が前年より31万人減り、1200万人を割り込んだ。資産運用の低迷による財政悪化などで基金の解散が相次いだことに加え、リストラで企業の従業員数が減ったことなどが影響したとみられる。
 99年度末時点(速報値)の基金の加入者数は10,692,000人。基金加入者数は1969年の制度発足以来、順調に増え続け94年度には1200万人を突破。しかし、97年度の12,254,000人をピークに減少に転じていた。
 前年比の減少数を基金の設立形態別を見ると、複数の中小企業が集まり業界単位などで設立している総合型基金が特に多く175,000人。大企業が設立する単独型の2倍に減っている。
 加入者減少の最大の要因は基金数の減少。96年度には1883あった基金数が現在は1835基金にまで減少。さらに新卒採用の抑制、早期退職制度の導入などで従業員数を減らしていることが加入者の減少につながった。

【Add 2000. 6.17】

 
退職給付債務 積み立て不足10兆円

2000/ 6/17 日本経済新聞朝刊

主要250社 「5年内に一掃」7割
 日本経済新聞社が主要250社について、年金・退職金など将来、従業員に支払う必要がある退職給付債務を調査したところ、支払に備えて積み立ててある資産が必要額に対して約10兆円不足していることが明らかになった。株式相場の回復などで一時に比べ縮小している模様だが、なお250社の連結ベースの経常利益(2000年3月期で合計約12兆円)の約8割に相当する。退職給付会計が導入されたことで今年度から積み立て不足の処理を迫られるが、短期間で処理する計画の企業が多く、当面は利益を大きく圧迫する要因になりそうだ。
 
国民年金の保険料半額免除 年収440万円以下

2000/ 6/17 日本経済新聞朝刊

標準世帯で厚生省が基準
 厚生省は16日、2002年度から始まる国民年金保険料の半額免除制度を選べる世帯の基準について、夫婦子供2人の標準世帯で年収約440万円以下を対象にすると発表した。この制度は保険料負担が半額で済む代わりに、将来の給付が標準額の3分の2になる制度。現在は一定基準を満たす低所得者向けに全額免除制度があるが、この基準を超えると保険料を全額払わなければならず、保険料未払い、制度未加入の原因となっている。この方針は丹羽雄哉厚相が同日、明らかにした。
 厚生省は3月に成立した年金改革法で全額免除の対象にならない世帯向けに半額免除制度を設けた。自営業者らが加入する国民年金の保険料は現在、月額13,300円。全額免除は市町村民税の課税最低限(夫婦と子供2人で年収250万円程度)を下回る人などを対象にしている。全額免除の場合、受給額は満額の3分の1。半額免除制度を受けると、将来の受給額は3分の2となる。国民年金の加入対象者は現在約2000万人。このうち400万人程度が保険料を全額免除されている。半額免除制度の基準とした標準家庭で年収約440万円以下の人は約600万人と推定される。
 厚相はサラリーマン世帯の専業主婦が保険料を負担せず老後に基礎年金を受け取る制度の是非など女性の年金問題を話し合う有職者検討会(座長・袖井孝子お茶の水女子大学教授)を7月に発足させることも表明した。
 
要介護認定に再検討組織厚生省

2000/ 6/17 日本経済新聞朝刊

システムや項目 3年メド見直し
 厚生省は7月にも、介護保険制度で高齢者がどの程度の介護サービスを必要としているかを判定する要介護認定システムを見直すため、専門家で構成する検討会を新設する。85の調査項目をコンピューターで処理し要介護度を出す今のシステムは、痴ほうの高齢者の要介護度を出す今のシステムは、痴ほうの高齢者の要介護度を軽めに判定する傾向があるなど問題点が指摘されている。検討会では現行制度の分析などを通して、システムや調査項目などを見直す。同省では3年後をめどに見直しを実施に移す方針だ。
 介護保険の中での介護が必要な度合いは「要支援」から「要介護1-5」に分かれている。要介護度が高いほど保険から給付するサービスが手厚くなる。
 コンピューターシステムによる判定は、痴ほうの高齢者の要介護度を低めに出すほか、調査結果のわずかな違いが要介護の大きな違いになるなど問題があり、専門家による2次判定で要介護度が修正される場合も多い。
 現状システムは介護施設での介護時間の調査などをもとに構築されているので、検討会では在宅での介護時間調査なども実施し、見直しに役立てる。来年度には一部見直したシステムの試行も実施する考えだ。

【Add 2000. 6.15】

 
介護報酬 概算払い要請

2000/ 6/13 日本経済新聞朝刊

4月分請求書記入ミス続出 厚生省、都道府県に
 厚生省は介護サービス事業者からの介護報酬の請求について、4月分の請求書類に若干の不備があっても、概算で支払いに応じるよう都道府県に検討を要請した。書類の不備を理由に報酬の支払いが遅れると、事業者の資金繰りが悪化する恐れがあるため。概算払いをした場合、6月分の報酬から過不足を調整するように対応を促している。
 介護報酬はサービス提供の対価として事業者に支払われる代金。4月分は5月10日に請求を締め切り、6月23日に支払う予定。しかし記入事項が多いうえ事業者が不慣れなため、日付の記入漏れといったミスが続出している。
 事業者が書類を差し戻すと、4月分の報酬の支払いは7月末に先送りされる。厚生相は不備の見付かった書類の件数が少なければ都道府県はつなぎ融資などで事業者の資金需要に対応できると見ているが、件数が多い都道府県については特例として概算払いもやむを得ないと判断した。
 
雇用過剰感和らぐ

2000/ 6/14 日本経済新聞朝刊

4-6月期大蔵省調査 景況感の改善映す
 企業の雇用過剰感が和らいできた。大蔵省がまとめた4-6月の景気予測調査によると、従業員数が「不足気味」と答えた企業の割合から「過剰気味」と答えた企業の割合を引いた従業員数判断指数(全産業ベース)は大企業、中堅企業、中小企業のいずれも前の期より改善した。景況感が上向いてきたことで、雇用に対する企業の姿勢にも変化が出始めている。
 大企業(資本金10億円以上)の従業員数判断指数はマイナス8.9。雇用の過剰感はなお残っているが、1-3月期に比べ3.2ポイント改善し、指数のマイナス幅は1998年1-3月期以来、9・四半期ぶりに1桁に縮小した。中堅企業(同1億-10億円未満)はマイナス1.6、中小企業(同1億円未満)はマイナス0.2と、それぞれの前の期より4.1ポイント、2,1ポイント改善した。中小企業は不足感と過剰感がほぼ同水準まで回復している。
 今年10-12月期の予想についても、大企業でマイナス6.6と引き続き改善が見込まれるほか、中小企業も横ばいの0.2となる見通しだ。
 調査は金融機関を除く資本金1000万円以上の企業10,441社を対象に5月に実施した。

【Add 2000. 6.13】

 
「非正社員」4分の1超す

2000/ 6/13 日本経済新聞朝刊

パート・派遣 活用加速 総務庁勤労者調査
 勤労者全体に占めるパート、嘱託、派遣社員や契約社員など正社員以外の比率が26%と、全体の4分の1を超えたことが総務庁の調査で明らかになった。企業はリストラの一環で正社員を削減する一方、低コストで雇用調整も比較的容易なパートなどを積極的に活用する意向で、今後さらに比重が高まる公算が大きい。政府は賃金や社会保障など正社員との格差是正に向け、法制度の運用強化など具体策の検討に入るが、国際的に高い賃金コストの見直しを急ぐ産業界からは反発も見込まれる。
 
 総務庁が2000年2月時点で一部サンプルから試算した労働力特別調査によると、役員を除く雇用者数は4903万人。このうち「非正社員」は1273万人で26%を占め、1984年の調査開始以来最高。パート・アルバイトは1078万人と全体の22%で、嘱託・契約社員、派遣社員などは計195万人でシェアは4%だった。
 正社員はバブル崩壊後の93年頃から横ばいとなり、その後の景気後退を背景に企業が雇用調整を進めたため、98年から減少傾向にある。これを代替する形でパート・アルバイトは一貫して増え続け、今年2月には調査開始以来、最高となった。
 業種別のパート・アルバイトの比率は卸売・小売業・飲食店で42%、サービス業で21%と高く、次いで製造業(16%)、運輸・通信業(14%)の順。
 ヤマト運輸は99年度中にパートを7700人増員。3月末のパート比率は46.7%と、前年同月比4.5ポイント上昇した。人件費の増加を抑え、2000年3月期は10期連続の増益。ダイエーは前期中に転籍などで約2000人の社員を減らしパートを配置した。2月末のパート比率は71.3%で同1.4ポイント上昇した。
 従来パートや契約社員は補助的な業務を担当していたが、最近では正社員並みの業務をこなすケースも多い。このため、非正社員が増えたことで正社員中心に考えられてきた社会保障制度や労働法制の運用などについて、見直し機運も出ている。
 労働時間が正社員の所定労働時間の4分の3未満の場合は、厚生年金や健康保険に加入できないなどの問題があり、厚生省では基準の変更などを検討している。

【Add 2000. 6.11】

 
国民年金 保険料免除 適用厳格に

2000/ 6/11 日本経済新聞朝刊

市町村の裁量廃止 所得基準で一本化
 厚生省は国民年金の保険料免除制度を見直す。2002年度から市町村の裁量が入りやすい特例免除を原則として廃止し、免除の基準を前年度所得に一本化する。保険料を支払う加入者の保険料負担に対する不公平感や制度への不信感を和らげるのが狙い。制度の公平性を高め未加入者を減らすことで、国民年金の空洞化に歯止めをかける考えだ。
 国民年金は低所得層に配慮して保険料の免除制度を設けている。前年度所得が市町村民税課税最低額(夫婦と子2人で158万円程度)を下回る人のほか、これを上回る所得でも家族状況などで加味した地域ごとの「判別指数」で免除が認められる場合がある。市町村の裁量で大幅減収などを理由に認められる特例免除も多い。
 保険料免除者は保険料負担の増加とともに年々増え、現在は約400万人。現役加入者に占める比率(免除率)は20%に迫っている。
 あいまいな認定で免除者が増え続けると、その分、ほかの加入者に保険料負担がしわ寄せされる。免除基準が不透明なため地域間で不公平が生じるとの指摘も多い。このため厚生省は2002年度から保険料の免除制度を改めることにした。
 具体的には行政の裁量で不透明な免除認定が行われないよう2002年4月から風水害被害を受けた場合を除いて特例免除を廃止する。判別指数もなくして免除基準は前年度所得に一本化する。新基準は市町村民税課税最低限と所得税課税最低限(標準世帯で年190万円)の間に設定する方向だ。
 これによって、申請者は免除の可否が事前にわかりやすくなる。半面、現在、特例免除を受けている約115万人の大半は免除の対象から外れるとみられる。
 免除制度の改定と同時に低所得層向けに保険料の半額免除制度を新設する。保険料負担を軽減するため、負担を半分だけ求める。
 今年4月には学生の保険料支払いを10年間猶予する「出生払い」制度も導入した。
 現在の国民年金制度は所得に関係なく同額の保険料のために低所得者の負担感が強く、免除に頼ったり未加入・滞納に陥ったりしやすい。厚生省は低所得者も負担できる保険料の軽減措置を講じることで国民年金への加入を促し、制度の空洞化に歯止めをかけたい考えだ。
 保険料の免除者は制度への未加入者や滞納者と異なり保険料を支払わない期間も加入期間と認められ、年金受給権に反映できる。免除期間分については規定の3分の1(半額免除では3分の2)の年金額を老後に受け取ることができる。
 
介護保険 国の健保向け支援基金

2000/ 6/11 日本経済新聞朝刊

今年度、100億円未消化
 国が介護保険の円滑な導入を目指し、主に大企業社員の加入する健康保険組合支援用に用意した600億円の基金(2年分)の活用が遅れている。中小企業の従業員を対象に国が運営する政府管掌健康保険により、財政状況が厳しい健保と交付基準を厳しく設定したためだ。今年度分の交付額は約200億円にとどまり、約100億円が未消化。厚生省は「年度途中の追加申請する健保も出てくるので交付金が余ることはない」としているが、健保側には要件の緩和を求める声もある。
 600億円の基金は介護保険導入に伴い健保組合の財政負担が膨らむのを緩和するのがねらいで、1999年度補正予算に計上。2000年度から2年間交付する計画だ。
 申請できるのは収支や積立金残高などの基準で政管健保よりも財政が困窮してる健保組合。5月末時点で健保全体の約14%に当たる255組合が合計203億円を申請した。現時点では1年分300億円のうち約3分の1が未消化となった格好だ。
 
日本版401k冷める導入熱

2000/ 6/ 8 日本経済新聞朝刊

 掛け金が変わらず運用次第で年金の受取額が変動する確定拠出年金(日本版401k)の導入を先送りする企業が相次いでいる。同年金法案が衆院解散で廃案になり、2001年1月の施行が微妙になったためで、日本製紙は来年4月に予定していた導入時期を延期する。掛け金の非課税枠が小さいなど法案の中身への失望も大きく、ウェルファイド(旧吉富製薬)は導入自体を当面見送る。終身雇用見直しなどの有力な手段とされる同年金の導入が遅れることで、企業の構造改革が水を差される恐れも出てきた。
 
確定拠出年金法

2000/ 6/ 8 日本経済新聞朝刊

1月施行は微妙 構造改革遅れも
 政府は総選挙後の秋の臨時国会に改めて確定拠出年金法案を提出、当初予定通り来年1月の施行を目指す構えだが、民主党の反対などもあり、政府の思惑通り進む保証はない。衆院選の結果次第では法案が白紙になる可能性もある。確定拠出年金は企業の年金債務の抑制や雇用の流動化を進めるのに不可欠とされているだけに、法案成立がこれ以上遅れると企業財務や人事・賃金制度などの構造改革に水を差す恐れもある。
 秋の臨時国会では、高齢者の医療費自己負担増などを盛り込んだ健康保険法改正案などが先に審議されるとの見方が政府内に出ている。その場合、法案は後回しになり、成立は年明けの1月から開く通常国会までずれこむ可能性が強い。
 法案成立の遅れで同年金導入のメドが立たない状態が続けば、企業は年金債務が発生しない確定拠出年金を取り入れて身軽な経営に転換しようにも、それができなくなる。労働省も、積立金をそのまま転職先に移せる同年金がなければ転職しにくい。日本の労働市場を流動化するためにも、確定拠出年金法の早期成立が必要との指摘は多い。
 
要介護認定 ばらつき是正へ自治体苦心

2000/ 6/ 8 日本経済新聞朝刊

鹿児島7町 施設が相互に調査
神戸市 1ヶ月の症状点検

 高齢者の介護保険サービスの必要度合いを測る要介護認定で、地方自治体が認定結果のばらつきを少なくするため独自の工夫をこらしはじめた。鹿児島県内の7町は施設が認定調査員を相互に派遣し合う方式を導入した。神戸市は要介護度のより正確な把握を目指し、高齢者の行動を1箇月にわたって調べている。同じ地域のなかで似た症状を持つ高齢者に異なる認定結果が出ると、制度への不満・不信につながりかねないためだ。

【Add 2000. 6. 7】

 
ネットで新卒求人情報

2000/ 6/ 7 日本経済新聞朝刊

「地方」「中小」に重点 労働省、企業名も表示
 労働省はインターネットを使い、大学、短大、専修学校の学生が自宅のパソコンから新卒者の求人情報を検索できるシステムを構築する方針だ。来春をメドに全国の公共の「学生職業センター」などに寄せられている85000人分の求人情報をネット上で提供する。学生が情報を得にくい地方企業や中小企業の情報が充実しているのが特徴。来春に向け一部企業が新卒者の採用予定を増やすなど、新卒採用は「氷河期」から脱却の兆しが出ているが、情報提供を拡充することでこの動きを確実なものとすることが狙う。
 
介護納付金 支払1年猶予

2000/ 6/ 7 日本経済新聞朝刊

厚相表明、一部健保対象に
 丹羽雄哉厚相は6日の閣議後の記者会見で、健康保険法の改正断念によって予定していた介護保険料を徴収でいなくなる健康保険組合や政府管掌健康保険の介護負担金の支払いを7月から改正健保法が成立するまで一部猶予方針を表明した。約700の健保組合と政管健保、船員保険を対象に月額で合計約200億円の納付金の支払いを1年間猶予する。猶予期間中の金利は免除し、国費で補てんする。
 4月から政管健保や健保組合は40-64歳の社員の介護保険料を医療保険料に上乗せ徴収しているが、現行健保法では法定上限(健保組合で月収の9.5%、政管健保9.1%)を超えて徴収できない。政府は健保法改正で7月から法定上限と別に介護保険料を徴収できるようにする制度を導入する予定だった。
 だが廃案で徴収時期のめどがたたなくなったため、医療、介護の合計保険料が上限を超す組合に徴収できない部分の介護納付金の支払いを猶予する。健保組合は猶予分を2001年度の納付金に上乗せして支払う。このため、来年度の加入者の保険料負担は2000年度分も加算されることになる。
 
介護保険料月額 県別格差1240円

2000/ 6/ 7 日本経済新聞朝刊

65歳以上、平均は2866円 最高が沖縄、最低は長野
 全国市長会が6日まとめた調査によると、4月からスタートした介護保険制度で65歳以上の高齢者(第1号被保険者)が負担する月額保険料の平均額は単純平均で2868円になった。県別で単純平均額をみると最高が沖縄の3601円、最低は長野県の2361円で、1240円の格差が生じている。
 調査は全国671市を対象に実施し、592市から回答を得た。人口別にみると、10万人以上の都市が2934円と都市全体の平均を上回り、5万人未満の市が2837円、5万人以上10万人未満の市が2819円となった。
 保険料については10月から徴収を始め、半年間は半額に抑える特別措置がとられている。
 
訪問看護 地域格差やや広がる

2000/ 6/ 6 日本経済新聞朝刊

厚生省調査 事業所数は1.3倍に
 在宅看護が必要な寝たきりの高齢者らに看護職員を派遣する「訪問看護ステーション」は、昨年7月の時点で前年の約1.3倍に増えた一方で、都道府県間のサービス充実度の格差はわずかに広がったことが5日、厚生省の訪問看護統計調査で分かった。同ステーションは今年4月にスタートした介護保険制度の在宅サービスで重要な役割を担っていることから、同省は「同程度のサービスがどこでも受けられるよう、広域的な連携を進めてほしい」と話している。
 
基礎年金前倒し受給 減額率、最大30%に

2000/ 6/ 6 日本経済新聞朝刊

政令改正案 来年4月から下げ
 政府は5日の事務次官会議で、国民が基礎(国民)年金を65歳より前倒しで受け取る場合の年金減額率を緩和する関係政令改正案を内定した。すでに前倒しで受給している人は適用外で、2001年4月から受け取りを始める人から適用する。60歳から受給する場合の減額率は42%から30%に下がる。前倒し受給者の生涯年金額が65歳から受け取る人に比べて不利にならないようにするのが狙い。逆に受給開始を66歳以降に遅らせる人の増額率は圧縮する。6日の閣議で正式決定する。
 40年間保険料を支払った場合の基礎年金(月額)は、65歳から支給する場合で約67000円。60歳から前倒し受給した場合は約39000円しか受け取れないが、改正後は約47000円に増える。年単位だった減額率の適用についても月単位に改め、受給開始時期を自由に選べるようにする。
 基礎年金の受給開始を66歳以降に遅らせる見返りに受給額を増やす「増額率」も見直す。66歳から基礎年金を受け取る人の増額率は12%から8.4%、70歳の場合は88%から42%に引き下げられる。
 1998年度の基礎年金の新規受給者のうち前倒し受給者は約32%、66歳以降に遅らせた受給者は1.5%だった。

基礎年金の減額率と増額率(%、▲はマイナス)

受給開始年齢

2001年度以降

現 行

60歳

▲30(約47,000円)

▲42(約39,000円)

61歳

▲24(約51,000円)

▲35(約44,000円)

62歳

▲18(約55,000円)

▲28(約48,000円)

63歳

▲12(約59,000円)

▲20(約54,000円)

64歳

▲6(約63,000円)

▲11(約60,000円)

65歳

0(約67,000円)

0(約67,000円)

66歳

8.4(約73,000円)

12(約75,000円)

67歳

16.8(約78,000円)

26(約84,000円)

68歳

25.2(約84,000円)

43(約96,000円)

69歳

33.6(約90,000円)

64(約110,000円)

70歳

42.0(約95,000円)

88(約126,000円)

(注)65歳から受給する場合、40年加入の満額で月67,017円、カッコ内は受給額
 
高卒・大卒の来春採用 3年ぶり増加へ

2000/ 6/ 6 日本経済新聞朝刊

労働省の企業調査
 労働省が5日発表した労働経済動向調査によると、大卒者の採用予定数について、今春実績より「増加する」と答えた企業が「減少する」と答えた企業を3年ぶりに上回った。同省は「減少が増加を大幅に上回った昨年より大きく改善しており、新卒採用の超氷河期は脱した」とみている。
 来春の高卒の採用計画では、増加予定の企業の割合が減少予定の企業の割合を1ポイント上回った。文系大卒では2ポイント、理系大卒でも4ポイントそれぞれ増加が上回った。高専・短大卒、専修学校卒では引き続き減少が増加を上回っているが、減少予定の企業の割合は大幅に減っている。
 採用を増やす理由としては、高卒では「年齢等人員構成の適正化」、文系大卒では「販売・営業部門の強化」、理系大卒では「技術革新への対応、研究開発体制の充実」が最も多い。
 ただ、全体の常用労働者の過不足判断DI(「不足」と答えた企業の割合から「過剰」と答えた企業の割合を差し引いた値)はマイナス10。2月調査に比べ、2ポイント改善したものの、過剰感は依然強い。
 調査は従業員30人以上の企業5342事業所に実施し、2691事業所から回答を得た。
 
日本 74.5歳で世界一

2000/ 6/ 5 日本経済新聞朝刊

健康に過ごせる「平均寿命」
 1999年生まれの新生児が健康な状態で送れる平均寿命は、日本人が74.5歳(女性77.2歳、男性71.9歳)でトップ--。世界保健機構(WHO)が、加盟191ヶ国について、平均寿命から病気や事故などで健康を損ねた年月を差し引いた「健康平均寿命」を試算した結果を4日、発表した。内戦が続き最下位のアフリカ・シエラレオネ(25.9歳)と日本との差は約3倍になるなど、日本の長寿ぶりが改めて裏付けられた。

【Add 2000. 6. 4】

 
破たん企業の年金支払い保証 制度創設見送り

2000/ 6/ 4 日本経済新聞朝刊

 厚生省は来年の通常国会に提出する予定の企業年金法案に、破たん企業の加入者に一定の年金給付を保障する支払い保障制度の創設を盛り込まない方針を固めた。企業などから「負担増になる」との反対が強いうえ、年金の積み立て義務を厳しくすることで加入者の保護を強化できると判断した。
 企業年金法案は厚生年金基金や適格退職年金など企業年金の運営ルールなどを決める基本法。厚生省は大蔵、労働、通算の関係三省と調整している。
 支払い保障制度の創設問題は同法案の焦点の一つで、積立金が不足している状態で企業が破たんした場合、加入者に一定の年金給付を約束する仕組みを導入するかどうかが検討課題になっていた。
 同制度を導入すると、企業から強制的に保険料を集めることになり、企業の反対が強い。厚生省は理解を得るのは困難とみて、導入を断念する。
 厚生省は支払い保障制度の創設を見送る代わりに、年金の積み立て義務を厳しくする。主に中小企業が導入し、積み立て基準があいまいな適格退職年金の積み立て義務をより厳しくする方針だ。
 企業年金の財政状況についての情報開示も強化し、加入者の年金受給権の保護を図るとしている。

【Add 2000. 6. 2】

 
改正健保法廃案 医療費増 歯止めなし

2000/ 6/ 1 日本経済新聞朝刊

国庫負担、月140億円増加
 70歳以上の高齢者の薬剤費負担を国が肩代わりする措置を延長する法案が31日に成立、7月に施行を予定していた健康保険法等改正案の廃案が確定した。医療費の患者負担の引き上げを柱とする健保法改正案に対し、選挙を控えた与党が負担増への反発をおそれ難色を示したためだ。改正健保法の先送りで膨らむ医療費は国費で補てんし、介護保険法の徴収に支障をきたす政府管掌健康保険と一部健保組合には介護負担金の納付猶予を認める。負担増の先送り状態が長期化すれば、医療費の増加に歯止めがかからなくなる可能性もある。
 健保法改正案は7月から70歳以上の患者の自己負担を定額制から1割定率制に切り替え、高齢者以外の患者の負担上限額を引き上げるのが主な内容。患者負担の増加分は医療機関に支払う診療報酬のほか、国が高齢者の薬剤費を肩代わりする措置を廃止し、その代替財源に充てる予定だった。政管健保や健保組合が介護保険料を医療保険料の法定上限と別に徴収できるようにする新制度も7月に導入する予定だった。
 廃案に伴い高齢者の薬剤費肩代わり措置を継続するため、国庫負担は毎月140億円増える。肩代わり措置を延長した影響で高齢者の医療費が膨らめば、その分は来年度に国が追加支出するため、この影響も含めた国費の負担増は月間で180億円前後になると厚生省は推計している。
 政管健保と財政難の一部健保は40-64歳の社員の介護保険料を医療保険料に上乗せすると保険料率が法定上限(政管健保9.1%、健保組合9.5%)を超えるため、介護サービス費を賄うための負担金の納付を1年間猶予し、社会保険診療報酬支払基金が立て替える。4-6月の介護保険料の不足分を7月から上乗せ徴収する予定だったが、廃案で上乗せ徴収のメドがたたなくなり、納付猶予で負担増を来年度に先送りする。
 高齢者の1割定率制の導入が遅れることで自己負担1割の介護保険のサービス利用に水を差す可能性もある。医療保険の自己負担が軽い状態が続くと、介護サービスが必要な高齢者が負担増を避けようと介護施設ではなく医療保険適用の医療機関に入院する「社会的入院」を招くためだ。
  現行制度 改正案 廃案の影響
高齢者(70歳以上)の患者の医療費自己負担 ・外来は1日530円
 (5回目からは無料)
入院は1日1200円の定額負担
・薬代の一部負担は免除、国が肩代わり
・原則かかった医療費の1割負担に
 (入院、外来それぞれに月間の自己負担上限を設定)
・薬代の一部負担制度は廃止し、国の肩代わりもなくなる
現行制度が継続され、医療保険財政、国の財政にしわ寄せ
70歳未満の患者の医療費自己負担増減額 月6万3600円 ・月収56万円以上の人は12万1800円に
・上記以外の人も上限が引き上げられる場合あり
介護保険料の徴収 健保組合、政管健保などは一定の枠内で医療保険料と一体徴収 医療保険料と介護保険料を別建てで徴収 現行制度のままなので、枠を超えてしまうため介護保険料徴収できない場合も

【Add 2000. 5.31】

 
基礎年金の国庫負担増前倒し 年金積立金、一時財源に

2000/ 5/31 日本経済新聞朝刊

抜本策は景気回復後 丹羽厚相会見
 丹羽雄哉厚相は30日、日本経済新聞記者に対し、来年度の前倒し実施を目指す意向を表明した基礎(国民)年金の国庫負担引き上げについて、「実現に向け年末の来年度予算編成時に結論を出す」との考えを明らかにした。具体的な財源として、「約140兆円ある年金保険料の積立金から一時的に立て替える」と積立金の取り崩しを示唆した。国庫負担増により、「厚生年金で月収の1%の保険料抑制効果がある」と強調、国民の負担増となる方策を探る考えだが、大蔵省との調整や国会審議など実現にはハードルも多く残っている。
 
雇用・所得下げ止まり感

2000/ 5/31 日本経済新聞朝刊

指標改善 ミスマッチ解消課題
 回復に遅れの目立っていた雇用と所得に徐々に下げ止まり感が出てきた。30日に総務庁、労働省が発表した経済指標によると、新規求人数、有効求人倍率、完全失業率はいずれも前月に比べ改善。サラリーマン世帯の世帯主の定期収入も15ヶ月ぶりに前年を上回った。ただ求人が回復基調となっても世帯主の失業数は過去最多と依然厳しい。求人者の職種や年齢と求人のミスマッチ解消が課題となっている。
 30日発表の雇用指標は景気に対して先行、一致、遅行の3種類に分類できる。企業の採用意欲を示す新規求人数は景気の動きを先取りする先行指標だ。パートを除く4月の新規求人数は電気機器製造業が前年同月比32.4%増、医療・社会福祉などが同18.4%増となり、産業構造の転換を映して情報技術(IT)や介護などの分野で求人が活発化している。
 求人数を求職数で割った有効求人倍率は景気にほぼ一致して動く。すでに1999年5月に底入れし回復が鮮明だ。新規求人数は山一証券や北海道拓殖銀行が破綻した97年11月前の水準に戻り、有効求人倍率も98年4月と同水準まで持ち直している。
 所得の面では鉱工業生産の回復を背景に残業代が増えている。雇用不安の軽減と合わせ「消費にも好影響」(総務庁)との見方が多い。労務行政研究所によると、企業収益の改善で夏のボーナスは前年比0.1%減にとどまり、企画庁は「今後、大きく落ち込む可能性は低い」と分析している。

【Add 2000. 5.29】

 
裁量労働制 博報堂など導入相次ぐ

2000/ 5/29 日本経済新聞朝刊

適用職種拡大受け効率化
 勤務時間や仕事の進め方を企業が管理せず、社員が自分で決める「裁量労働制」を企画部門に導入する企業が相次いでいる。従来は専門性の高い11職種に限られていたが、4月から適用職種が広がったためだ。博報堂、万有製薬、ソニー損害保険などが採用、これまでに大企業の本社が集まる東京、大阪、愛知の3都道府県で23件の導入の届出があった。ホワイトカラーの生産性向上を狙って、社員に働き方の裁量を与える同制度の採用が増えそうだ。

【Add 2000. 5.25】

 
農林年金 厚生年金 統合へ具体策詰め

2000/ 5/25 朝日新聞朝刊

来年度めど 懇談会再会へ
 政府は、農協職員らが加入する農林年金(農林漁業団体職員共済組合)と、私立学校教職員の私学共済(私立学校教職員共済組合)を民間企業のサラリーマンの厚生年金に統合する方向で、具体的な検討に入ることを決めた。各種の年金制度の代表者や学識経験者らによる「公的年金一元化懇談会」を開き、条件などを審議していくことを26日の公的年金制度関係閣僚会議で決める。政府は2001年度からの統合をめざすが、農林側が持参する移管金の額など条件をめぐる厚生年金側との調整は簡単ではなさそうだ。
 懇談会の開催は、1997年度にJR、JT(日本たばこ産業)、NTTの旧三公社の共済組合が厚生年金に統合される前に報告書をまとめて以来だ。
 農林年金と私学共済を厚生年金に統合する方向性は96年に閣議決定されている。今回は、年金制度改正関連法が成立したのを受けて、要望の強い農林年金の統合の具体策を懇談会で詰めることになった。
 農林年金が統合を望むのは、農協や漁協の再編で加入者が減る一方で、高齢化で受給者が増え、財政難に陥っているからだ。ただ、59年に「公務員なみの高い年金にする」との理由で厚生年金から分離独立し、かつて統合拒否した経緯がある。厚生年金側には「ご都合主義だ」との反発も強く、約2兆円の積立金の移管方法や、将来の給付見通しの開示などが問題になりそうだ。
 私学共済は加入者の年齢層が比較的若いため財政に余裕があり、統合には消極的だ。それでも、財政状況が悪化してから統合することになれば、厚生年金側から強く批判が予想され、農林年金と合わせて統合に踏み切る可能性がある。
 また、国家公務員と地方公務員の両共済組合については、公務員制度の改革を踏まえて両制度の財政安定化の検討を先行する見通しだ。

【Add 2000. 5.23】

 
就職訓練 就職先探す場に

2000/ 5/23 日本経済新聞朝刊

労働省、企業へ委託 「浪人」増に対応 数ヶ月の実務>技能あれば採用
 労働省はこの春に大学や高校を卒業しながら就職できなかった「就職浪人」が32万人と過去最多となったことに対応し、緊急対策を実施する。(1)就職前に必要な技能を身につけてもらう職業訓練の対象を高卒などに広げ実際の訓練は民間企業に委託する。(2)就職浪人の入社後の研修費用の一部を助成する--が柱だ。若年層の失業が一段と深刻になる中で、企業と求職者の出会いの機会を増やすのがねらいだ。
 就職浪人向けの職業訓練は各種学校など民間の職業訓練機関に委託していたが、委託先を民間企業中心に切り替える。国が1人当たり月6万円程度の研修費を支給する。求職者は原則として無料で訓練を受けられる。期間は3-6箇月。受講予定者は前年度の6倍の6千人に増やす。大卒、短大卒だけでなく、高卒や専修学校卒業者にも広げる。
 民間企業への訓練委託は、公共安定所(ハローワーク)に登録した就職浪人が対象で、訓練をする企業は求職者が求人企業から選べる。求人企業は求職者が必要な技能を身につけているかどうかがわからず、採用をためらうことも多い。訓練では企業が営業、生産など実際の業務を試行。一定期間、求職者を訓練することで採用しやすくする。企業側の受け入れ態勢が整い次第、訓練を実施する。
 就職浪人を採用した企業への研修費助成は26日から始める。9月末までに6箇月以内の研修を始めた場合、30万円を上限に研修費用の3分の2(中小企業は4分の3)を支給する。中高年齢層の配置転換や技術革新訓練の費用を助成していた「生涯能力開発給付金」の支給対象を広げることで対応する。1万人分の支給を予定している。職業訓練、採用後研修とも国の負担は2000年度予算を活用するため新たな予算措置は必要ない。
 これまで同省の職業訓練は中高年齢層の離職者に再就職を促す目的が中心だった。しかし3月は24歳以下の完全失業率が11.3%と過去最悪を記録するなど、若年層の失業率悪化が深刻。労働省は昨年から大卒、短大卒の未就職者の訓練を始めたが、その内容を抜本的に見直す必要があると判断した。

【Add 2000. 5.22】

 
健保組合に納付猶予へ

2000/ 5/22 朝日新聞朝刊

介護保険料 法定上限超える部分 厚生省方針
 厚生省は、大企業の健康保険組合が医療保険料に上乗せして集める介護保険料(40歳-64歳)について、国に介護納付金として支払うのを一定の条件で猶予する方針を固めた。今国会で医療保険制度改正関連法の成立が見送られ、従来の保険料率の上限(月収の9.5%)が介護保険にも適用されるためだ。
 上限を超える分は法改正まで、組合が立て替えねばならず、組合財政の悪化が懸念されていた。同省は7月分から1年間猶予する方向で最終調整している。納付が遅れた場合の延滞金利(年14.5%)は免除する方針だ。
 医療保険改正法案では、健保組合が介護保険料を医療保険料とは別建てで組合員から徴収できるようになり、7月から実施される予定だった。医療と介護の保険料率は健保組合が独自に設定する。健康保険組合連合会(健保連)によると、法改正の遅れで介護、医療保険料の合計が上限を超える健保組合は、全体の約4割の約700組合にのぼる。厚生省はこうした組合を対象に支払いを猶予する。
 各健保組合はこれまで法改正を前提に、4-6月分の介護保険料を医療保険料率の上限との「すき間」の範囲内で徴収、不足分があれば7月以降に上乗せして徴収することを前提に予算を編成し、6月までの3箇月分の介護納付金は積立金を取り崩すなどして支払うことにしていた。
 しかし、自民、公明、保守の与党3党が今国会での法改正を断念し、7月以降も上限を超える分の保険料を徴収できないのに介護納付金を支払わねばならず、積立金が底をつく組合が出てくる可能性が生じた。健保連によると、7月以降、毎月計50億円が徴収できない計算だ。

【Add 2000. 5.20】

 
基礎年金財源全額所得税で

2000/ 5/20 日本経済新聞朝刊

企画庁経済研が提言
 経済企画庁経済研究所は19日、公的年金制度の抜本改革への提言をまとめた。基礎(国民)年金について、未加入や保険料未納問題を解決するために、保険料ではなく税ですべての財源を賄う方式に切り替えることを提唱。その際、低所得者への配慮が可能な所得税で対応すべきだとした。基礎年金財源については丹羽雄哉厚相が来年度から国の負担を増やし、保険料の負担割合を下げる意向を表明していることもあり、今後議論が高まりそうだ。
 基礎年金は現在、給付費用のうちの3分の2を加入者の保険料で賄い、残りを国が租税で負担する形を取っている。全国民が加入する建前だが、実際には保険料負担を嫌がって、保険料の未納、制度への未加入が増えている。未納・未加入が増えると年金財政が悪化するほか、将来年金を受給できない高齢者が増えることにもなる。
 提言では、このような問題を解決するために、財源をすべて国が税で負担、すべての高齢者に一律給付するよう求めた。財源は、消費税率の引き上げで賄うと「低所得者の負担も同時に増やしてしまう」ため、所得税増税で対応する方が「優れている」とした。

【Add 2000. 5.17】

 
緊急雇用対策 ミスマッチ解消を狙う

2000/ 5/17 日本経済新聞朝刊

成長分野に人材誘導 助成・職業訓練柱に
 政府が16日決定した緊急雇用対策は「従業員を雇いたいが、求める人材がいない」といった求人企業と求職者の能力、条件の不一致(ミスマッチ)解消を目指している。求人の増えている情報技術(IT)など成長分野に人材を誘導、産業構造の変化に伴う失業率の悪化に歯止めをかけるのが狙いだ。失業者に対するIT分野などの職業訓練を拡充して求職を支援する一方、成長企業に助成金を給付して一段の雇用拡大を促す。今後1年間で35万人の雇用創出という目標を掲げているが、ミスマッチ解消には時間がかかると見られ、即効性などで問題もある。
緊急雇用対策の主な内容
企業の求める人材の育成
・情報技術(IT)関連で3万5000人強予定、パソコンの1-2箇月コース開設。介護分野(主にホームヘルパー研修)で1万人強予定。そのほか、機械加工や建築設計など。
雇用を増やす企業への支援
・新規成長15分野の企業への助成金拡大
 (1)医療・福祉 (2)生活文化 (3)情報通信 (4)新製造技術 (5)流通・物流 (6)環境 (7)ビジネス支援
 (8)海洋 (9)バイオテクノロジー (10)都市環境整備 (11)航行・宇宙 (12)新エネルギー・省エネルギー
 (13)人材派遣 (14)翻訳 (15)住宅
 分野の企業が新卒の未就職者、職業訓練受講者を雇用した場合、1人あたり一律70万円(一時金)支給
雇用のセーフティーネット拡充
・全国の完全失業率が5%以上になった場合、45歳以上60歳未満の失業者を雇用した企業に30万円(1人あたり、一時金)助成。期間は半年(これまでは雇用が著しく厳しい地域のみ対象で期間は3ヶ月)

【Add 2000. 5.16】

 
1年で35万人雇用創出

2000/ 5/16 日本経済新聞朝刊

労働省緊急対策きょう発表 IT職業訓練 柱に
 労働省は16日、今後1年間で35万人の雇用創出をめざす緊急雇用対策を発表する。求人が増えている新規成長分野に人材を誘導するため、約3万5000人に情報技術(IT)分野の職業訓練を実施するのが柱だ。訓練受講者や新規学卒の未就職者を雇用した新規分野の企業には助成金を出す。1999年6月の緊急対策では2年半で72万人の雇用創出をめざしていたが、効果は思ったほど上がっていない。そこで同省は計画を見直し、1年間で集中実施して実効性を高める考えだ。
 新規分野への雇用促進では情報通信、福祉など15分野の成長企業に支給している新規成長分野雇用創出特別奨励金を活用する。これまではリストラや倒産などで離職した30歳以上60歳未満の失業者を雇用した企業が対象だったが、公共職業訓練受講者、新卒未就職者を雇った場合にも広げる。1年間で7万人の支給を見込んでいる。

【Add 2000. 5.15】

 
基礎年金国庫負担金 来年度から5割に

2000/ 5/15 日本経済新聞朝刊

厚相、引き上げに意欲
 丹羽雄哉厚相は14日、四日市市内で記者会見し、全国民共通の基礎(国民)年金の給付費に占める国庫負担の割合について「遅くとも2001年4月には現在の3分の1から2分の1に引き上げたい」と意欲を示した。引き上げに必要な財源の2兆4000億円は扶養控除の見直しを含む税制改革、歳出の見直しなどによる捻出を目指すが、必要額を確保できない場合は約140兆円にのぼる年金保険料の積立金で暫定的に立て替えることも検討しべきだと述べた。
 保険料の未払い問題が深刻化する中、基礎年金財源に占める国庫負担の割合引き上げを早めることで、国民の年金制度に対する不信感を解消するのが狙い。ただ政府・与党内の調整はこれからで、来年度の実現には曲折が予想される。
 基礎年金の国庫負担割合を2分の1に引き上げることは、昨年7月に当時の自民党、自由党の連立与党が合意。年金制度改革法には附則に2004年度までの実現目標が盛り込まれた。
 厚相は「いつまでも放置できない」と述べ、実現の目標時期を来年度に早める方針を表明した。財源の確保策としては消費税率の引き上げが有力視されていたが、「現在の経済情勢の中では現実的に困難であるうえ、社会保障制度全体の中で議論すべき問題」と否定的な見解を示した。
 国庫負担割合の引き上げにより、2020年度には月2万4800円に上昇する見込みの自営業者らの国民年金保険料(現在は月13,300円)は月18,200円になると指摘。同年度に月収の27.6%(労使折半)への上昇が見込まれるサラリーマンの厚生年金保険料(現在は月収の17.35%)も25.2%に収まるとしている。

【Add 2000. 5.14】

 
厚生年金「空洞化」の兆し

2000/ 5/14 日本経済新聞朝刊

加入企業16ヶ月連続減 保険料負担が重荷
 企業単位で会社員が加入する公的年金、厚生年金の加入事務所が減り続けている。1999年12月の事業所数は前年同月比0.1%減り約169万3000となった。16ヶ月連続で前年水準を下回った。倒産により脱退する企業や、起業しても保険料負担を避けようと制度に加入しない零細企業が増えているためだ。高齢者への年金給付を全企業で支えるという厚生年金制度の土台に「空洞化」の兆しが出てきた格好だ。
 
雇用調整 50代に的

2000/ 5/14 日本経済新聞朝刊

上場企業6割 企画庁調査
 2002年度までに雇用調整する企業のうち、63.5%が50代を対象にしていることが経済企画庁の調査でわかった。20代から40代までの働き盛りの世代では、それぞれ全体の1割程度にとどまっており、50代サラリーマンの雇用環境は厳しさを増しそうだ。
 調査は昨年末に実施。金融・保険業を除く上場企業1348社が回答した。
 1997年度から99年度の過去3年間に雇用調整の対象になった世代は、50代が53.0%と最も多く、新規採用が抑制された20代も21.4%を占めている。30代、40代は約13%だった。
 2000年度から2002年度の雇用調整の見通しでは、30代、40代は10%代で過去3年間とほとんど変わらないが、20代は10.3%に低下。一方、50代は跳ね上がっている。特に業績の厳しい鉄工業や紙・パルプでは、80%以上が50代を削減対象に挙げている。
 今後3年間に企業が実施する雇用調整の方法を見ると「解雇」は25.8%にとどまっている。配置換えや子会社への出向など「社内異動」が大半だ。企画庁は「企業は理想的には年齢給の高い50代を減らしたいと考えているが、実際には米国のように急激な削減策を採るのは難しいのではないか」(調査局)と分析している。

【Add 2000. 5.13】

 
職業訓練 10万人分を民間委託

2000/ 5/13 日本経済新聞朝刊

労働省が雇用対策 受講者雇用に助成金
 労働省は完全失業率が5%に迫っている状況に対応するための緊急雇用対策をまとめた。16日に牧野隆守労相が発表し、直ちに実施する。求人が増えている情報技術(IT)分野を中心に、専門学校、各種学校など民間の職業訓練機関に今後1年間で10万人の職業訓練を委託するとともに、その受講者を雇用した新規成長分野の企業に助成金を支給する。更に失業率が5%を突破した場合は、企業のリストラ、倒産などで失業した中高年齢者を雇い入れた企業を助成する。緊急対策を打ち出すことで、雇用不安の緩和と併せ、IT分野へ人材を誘導するのが狙いだ。
 
大卒就職率 最低91.1%

2000/ 5/13 日本経済新聞朝刊

今春 短大含め5万人未定 文部・労働省調べ
 今春大学を卒業した就職希望者の就職率(4月1日現在)は前年を0.9ポイント下回る91.1%で、統計を取り始めた1996年以降最低だったことが12日、文部、労働両省の調査で分かった。男子は過去最低を更新、女子は微増に転じたが2年続けて90%を割り込んだ。短大卒の就職率も最低となり、就職が決まっていない大学・短大卒業者は、全体で前年より5000人多い約5万人と推計される。
 
春闘賃上げ最低1.94%

2000/ 5/11 日本経済新聞朝刊

本社最終集計 33業種で前年割れ
 日本経済新聞社は10日、2000年春闘の賃上げ調査最終集計結果(対象企業944社、4月27日現在)をまとめた。平均賃上げ率は1.94%と前年実績の2.08%を下回り、初めて2%を割り込んだ。景気の回復感が広がっているものの、製造、非製造業種を問わず主要企業が収益構造を改善するため、人件費抑制に動いている。平均賃上げ額は5866円。賃上げ率、額とも調査を開始した1977年以来の最低水準となった。
 
要介護者増加抑制計画を発表

2000/ 5/11 日本経済新聞朝刊

 自民党は10日、5年後の要介護者を厚生省推計より70万人少ない250万人程度に減らすことを柱とする新計画「メディカル・フロンティア戦略」を発表した。寝たきりや痴ほうの予防強化などで介護保険の給付対象者の増加を抑制し、介護保険の費用を年間1兆円削減することを目指す。
 計画では、痴ほう症の発生メカニズムの究明や、症状の進行を食い止める新薬や介護技術の開発などにより、痴ほうが原因で要介護となる高齢者の増加を抑制する。更に脳卒中の緊急治療体制の整備やリハビリテーションの充実で、寝たきりになる高齢者の増加を抑える。
 森善朗首相はこの計画を2001年度予算編成の目玉の一つと位置付けており、厚生省は概算要求に向けた具体策の詰めを急ぐ。
 
介護保険負担金 健保に延納認める

2000/ 5/11 日本経済新聞朝刊

財政難の組合対象 厚生省検討1年間が有力
 厚生省は企業の健康保険組合が国に拠出する介護保険の負担金について、支払いを猶予できる仕組みを7月から導入する検討に入った。健保法改正案の今国会の成立が絶望的になり、保険料率の法定上限が維持されることから、一部健保で負担金納付に必要な保険料を徴収できない事態が生じるためだ。資金繰りが厳しい一部の健保の対象に、今年度分の介護負担金の納付を来年度まで延ばすことを認める方向。財政難の健保組合は負担増が先送りされることになる。
 
高卒就職率最悪に

2000/ 5/11 日本経済新聞朝刊

今春88% 3万2000人が”浪人” 文部省調べ
 今春高校を卒業した就職希望者の就職率は前年度より1.7ポイント低下した88.2%と、調査を開始した1976年度以降最低となったことが10日、文部省の調査で分かった。”就職浪人”は約3万2000人にのぼる。同省は「一般事務職の雇用情勢が厳しく、かつての高卒の労働市場に大卒も集まっている」と分析。経済団体に対し、既卒者にも採用の機会を与えるよう要請する。
 
要介護者増加、70万人抑制

2000/ 5/10 日本経済新聞朝刊

介護費年1兆円削減 5年後も現状並みに 厚生省・自民計画
 厚生省・自民党は9日、介護保険で介護が必要と認定される高齢者の増加を迎えるための新たな計画を固めた。介護保険料など国民の費用負担が過重になるのを防ぐため、5年後の要介護認定者を厚生省推計より70万人少ない250万人程度に減らすのが計画の柱だ。寝たきりや痴ほう症の予防強化や症状進行を食い止めるための取り組みで、介護保険の費用を年間1兆円以上削減し、2004年度時点で5兆円程度に抑制することを目指す。2000年度に4兆3000億円の介護費用が5年後に6兆円程度に膨らむという厚生省の予測が過大だとの批判に配慮して面もある。
 
減額最高、1070億円 高齢者医療費請求

2000/ 5/10 日本経済新聞朝刊

98年度 市町村点検ばらつき
 市町村が70歳以上の高齢者について病院からの医療費の請求書(レセプト)を点検した結果、1998年度は請求金額の誤りを理由にした減額が過去最高の1070億円にのぼったことが厚生省の調べで明らかになった。前年度に比べると17.7%の増加で、請求金額の伸び率を大きく上回った。ただレセプト点検の実施状況は市町村のばらつきが大きく、なお強化の余地が残されている。
 98年度に病院から全国の市町村に送付されたレセプトの枚数は97年度比11.3%増の2億9398万枚、請求金額は同4.0%増の9兆9826億円。
 このうち市町村の点検によって請求金額が減額されたレセプトは、同25.2%増の549万8000枚だった。
 98年度の高齢者医療制度の受給対象者は1367万8805人。受給者1人当たりの請求金額の削減額は97年度に比べて12.5%増え、7822円となった。
 市町村は病院から送られてきたレセプトについて、(1)高齢者医療制度の受給対象でない人の医療費まで請求していないか(2)それぞれのレセプトが請求ルールを守っているか(3)初診料を重ねて請求するようなルール違反はないか--を点検している。
 このうち受給者資格の審査は全てのレセプトを対象に実施、請求金額の点検も99.4%のレセプトが対象になっているが、過去にさかのぼっているが、過去にさかのぼって初診料などを点検したのはレセプト総数の94.8%にとどまっている。
 地域間の格差が大きく、過去にさかのぼる点検の実施率は山形、埼玉、千葉、愛知、広島の5件で9割を下回っている。実施率が最も低いのは広島県の68.1%、千葉県も73.4%に過ぎない。
 
専業主婦率、最低の33% 公的年金の保険料免除

2000/ 5/ 9 日本経済新聞朝刊

昨年3月末長期就労映す 負担論議に影響
 現役世代の女性で公的年金の保険料負担を免除されている専業主婦の比率が急低下している。1999年3月末時点で33.79%と、専業主婦の保険料免除制度が発足した86年度以来の最低を記録した。晩婚化などを背景に長期間働き、自ら保険料を支払う女性が増えたうえ、夫の失業や独立で妻の年金制度上の資格が専業主婦から自営業に切り替わるケースが増えていることによる。厚生省は月内に女性の年金制度を見直す検討会を発足させる予定で、働く女性との均衡から、「専業主婦にも保険料負担を求めるべきだ」との論議にも影響を及ぼしそうだ。
 
サンリオ健保、一部拒否 老人保健拠出金支払い

2000/ 5/ 9 日本経済新聞朝刊

 サンリオの健康保険組合は8日、高齢者の医療費を賄うために企業の健保に義務付けられている老人保健法拠出金の2000年度支払いの一部拒否を決めた。「負担増の根拠は納得できない」(同健保)という。不払いは昨年に続き2度目で産業界で不払いに踏み切ったのはサンリオ健保だけ。全国の健保は8割強が経常赤字という深刻な財政難に陥っている。
 同健保は8日が納付期限だった今年度分の1回目の拠出金について、半額しか支払わなかった。請求額が約1億9600万円と前年度より1割強増えたことに対し、「高齢者医療費を減らす目的で介護保険が創設されたのに、自社と直接関係のない高齢者の医療費負担が増えたのは理不尽」などと説明している。

【Add 2000. 5. 3】

 
人材派遣、料金上げ決着

2000/ 5/ 3 日本経済新聞朝刊

金融・証券など 専門職は3-6%
 人材派遣の春の料金交渉がほぼまとまり、人材需要がおう盛な情報技術(IT)や金融・証券関連の専門性が高い職種ではおおむね要請通り3-6%の高値決着となった。料金交渉は一律の値上げ提示から派遣スタッフの能力を考慮した個別交渉に移行しつつあり、ITでは2ケタの引き上げとなったケースもある。一方、主力の一般事務職は春闘相場の低迷などを映しほぼ据え置きで終了した。
 
未払い賃金 立て替え最多に

2000/ 5/ 3 日本経済新聞朝刊

昨年度15%増 零細企業の倒産深刻
 労働省所管の特殊法人、労働福祉事業団による1999年度の未払い賃金立て替え件数は2773件(前年同期比15.2%増)と、76年の制度開始以来、過去最高となった。同事業団は中小・零細企業などが倒産して賃金が支払われない場合に、未払い分の8割を立て替えている。昨年度は中堅以上の企業で倒産が沈静化していたと言われるが零細企業の倒産が依然深刻な実態にあったことを示している。
 99年度に支給した従業員数は9.6%増の4万6402人。1社あたりの平均従業員数は16.7人と前年度(17.5人)より少なく、零細企業への支給が増えていることを裏付けた。立て替え払いの総額は16.2%増の201億4900万円と、初めて200億円を上回った。
 未払い賃金の立て替え払いは、労働省の労災保険(賃金の平均0.91%、事業主負担)が原資となる。従業員の申請に基づき、同事業団が倒産した企業に代わり、従業員に未払い賃金(退職金を含む)の8割を支払う。
 
介護保険 認定精度に課題

2000/ 5/ 2 朝日新聞朝刊

導入1箇月でくっきり
 介護保険精度が始まって1日で1箇月が経過した。政府は「サービスが途切れるような事態を懸念していたが、大きな混乱はなかった」(丹羽雄哉厚相)と安堵の表情を見せている。しかし、介護が必要な度合いを判定する要介護認定の精度の向上や、高齢者が負担する利用料対策など、以前から指摘されていた課題がより明確になってきた。
 要介護認定は、信頼性を確保するうえで重要な手続きだ。だが、「痴ほうの症状がある人の要介護度が低く出てしまう」との意見が相次いでいる。
 サービスを利用した高齢者の費用1割負担についても、「利用を控えようとする例が目立つ」として、政府に対策を講じるよう求める声が市町村側にある。
 介護保険法は施行から5年後に見直すと定めているが、政府は痴ほうの人への要介護認定に関しては、見直し時期を待たずに検討に着手する予定だ。
 在宅サービスの利用限度が、ホームヘルプなどの訪問通所サービスとショートステイの2本立てになっている点について、厚相はすでに1年後の1元化に向けて検討を始める方針を表明している。「走りながら考える」(厚相)という状況は、今後も続きそうだ。
 
年金・退職金積み立て不足
処理総額3兆円超す

2000/ 5/ 2 日本経済新聞朝刊

上場企業前3期 税引き利益24%減
 上場企業が本業の収益力の回復を背景に、年金の積み立て不足の穴埋めや価値の低下した不動産の評価見直しを前倒しで実施している。日本経済新聞社による2000年3月期の業績予想集計で、年金・退職金の積み立て不足の処理が総額3兆円超と、全経常利益の3割に達したことは明らかになった。会計基準の時価主義への変更を先取りする形で財務内容を透明にし、株価や格付けに反映させるのが企業側の狙い。前期は上場企業のおよそ5社に1社が処理に伴う特別損失の計上で最終赤字となっており、2001年3月期にかけて不足処理額はピークを迎える見通し。
 
ケアマネージャー重い負担

2000/ 5/ 1 日本経済新聞朝刊

 介護保険制度がスタートして1箇月を迎え、利用者ごとに介護サービス(ケアプラン)を作成するケアマネージャーが多忙を極めている。介護報酬はサービス事業者がひと月分を翌月10日までに請求するが、プラン通りにサービスが提供されたかどうかの確認はケアマネージャーの仕事。特に在宅介護では通所介護や短期入所など種類が多く、「チェックが膨大」と嘆く声が多い。プランは施設や利用者側の都合で毎月調整も必要で、制度発足直前の3月末に続き、2度目の混乱のピークをケアマネージャーたちを襲っている。
 
労災死者、2000人を割る

2000/ 5/ 1 日本経済新聞朝刊

労働省まとめ 2年連続、昨年1992人
 昨年1年間で労働災害による死者は1992人で、2年連続で2000人を下回っていたことが、30日までの労働省のまとめでわかった。
 同省によると、労災による死者は、1996年以降3年連続して前年を下回り、98年には統計を取り始めた48年以降、初めて2000人の大台を割った。99年は前年より8.0%、148人増えたものの、2年連続で2000人を下回った。
 業種別で最も多かったのは建設業の794人で、98年より69人増えて全体の39.9%を占めた。
 製造業は同比39人増の344人で、陸上貨物輸送は同比45人増の270人。
 死者が起きた事故原因で目立つのが、建設業などの「墜落・転落」(492人)や、陸上貨物輸送などの「交通事故」(608人)で、両者を合わせ全体の55.2%に上る。
 労働省は第9次労災防止計画をスタートさせ、総合安全衛生管理対策の強化などに取り組んでいる。
 
中小に「社会保険倒産」

2000/ 4/30 朝日新聞朝刊

滞納で差し押さえ 3割増1100億円
 厚生年金や政府管掌健康保険の社会保険料徴収する社会保険事務所が、滞納した事業所の預金や売掛金を差し押さえる−そんな強制処分が1998年度には約17000事業所、額で前年より3割以上多い約1100億円にのぼったことが厚生省社会保険庁の集計でわかった。労使で折半する社会保険料の負担が不況で重荷になり、滞納する中小・零細企業が増えているうえに、社会保険庁が徴収方針を強化していることが背景にある。差し押さえを引き金にした倒産も出ている。
 
運用規制を緩和 国家公務員共済年金

2000/ 4/29 日本経済新聞朝刊

大蔵省 株組み入れ増 可能に
 大蔵省は2000年度中にも国家公務員が加入する共済年金の資産運用規制を緩和する方針を固めた。株式や外貨建て資産での運用を制限している規制を廃止し、市場動向に応じた機動的な運用を可能にする。低迷する運用利回りの向上が狙いで、他の共済年金制度も追随する可能性がある。
 公務員が加入する共済年金は、民間企業のサラリーマン向けの厚生年金と並ぶ公的年金。このうち国家公務員共済組合の加入者は約112万人。将来の給付に備えて運用している積立金は約8兆円ある。
 同共済は積立金の一定割合を国の資金運用部に預託。残った資産のうち、民間金融機関に運用を委託する資産については国内債券など元本保証商品に5割以上を配分し、株式や外貨建て資産はそれぞれ3割以内に抑える「5・3・3規制」を適用している。
 大蔵省は年度内にも5・3・3規制を廃止。資金運用を担当する国家公務員共済組合連合会が自らの判断で株式の組み入れ比率を増やすなど、弾力的に運用できるようにする。同連合会では運用配分に関する自主ルールを策定するほか、金融機関OBの中途採用を進めるなど、運用管理体制の充実を急ぐ方針だ。
 国家公務員共済の積立金の運用利回りは98年度で年3.44%と、当時の予定利率(年5.5%)を大きく下回った。大蔵省は規制緩和で運用利回りを向上させ、将来の給付削減や保険料率の引き上げを抑えたい考えだ。
 厚生年金でも2001年度から、積立金の全額を国の資金運用部に預託する義務がなくなり、新設する年金資金運用基金が自主運用する体制に移行する。
 
離職理由で給付に格差
改正雇用保険法が成立

2000/ 4/29 日本経済新聞朝刊

 雇用保険料の引き上げを定めた雇用保険法改正案が28日の参院本会議で可決、成立した。離職の理由により失業手当の給付日数に差をつけたのが特徴。倒産、解雇による失業者への給付日数を増やす半面、60歳以上の高齢者や自発的な失業では給付日数を減らす。2001年4月から実施する。
 改正雇用保険法は、保険料率を賃金(ボーナス含む)の0.8%(労使折半)から1.2%に引き上げる。年収470万円の平均的なサラリーマンの場合、保険料の本人負担は年間9,400円増え、28,200円となる。パート、派遣社員の加入を促すため、年収90万円以上という加入制限を廃止。給付額に占める国庫負担率を現行の14%から25%に引き上げる。
 給付日数について、現行制度では離職の理由にかかわらず、90-300日間分の失業手当(離職前の賃金の原則6割、ボーナス分は除く)を受け取ることができる。改正後は、定年や自発的な離職など事前に失業が予想できる場合、給付日数を90-180日に短縮する。半面、倒産や解雇などで失業した場合は、自発的に退職した人より給付日数を30-150日上乗せする。
 ただ問題も指摘されている。改正雇用保険法では、離職理由の判別の問題がある。不本意な配置転換などでやむをえず退職に追い込まれた場合など、自発的な失業か解雇かの見極めが難しいとされている。
 
失業 過去最多の349万人

2000/ 4/28 朝日新聞夕刊

先月分男性は5.2%に 率は4.9%横這い
 総務庁が28日発表した労働力調査によると、3月の完全失業率は4.9%(季節調整値)で、現行調査を始めた1953年以降で最も高かった前月と同率だった。男性の完全失業率は5.2%(同)で前月に比べ0.1ポイント上昇し、最悪を更新した。完全失業者数は349万人で、最多だった昨年4月を7万人上回った。うち、学卒末就職者(就職浪人)は32万人で、前年同月を2万人上回って最多となった。労働省が同日発表した3月の有効求人倍率は0.53倍(同)で、前月に比べ0.01ポイント改善した。
 今後の情勢については「4月がピークを迎えるかもしれない」(労働省首脳)と、5%の大台に乗る事態も予想される。
 総務庁によると、女性の完全失業率は4.6%で、前月に比べ0.1ポイント悪化した。年齢別にみると、男性の15-24歳が12.5%、25-34歳が5.8%で、いずれも前年同月比0.8ポイント上昇し、最悪となり、若年層の悪化が目立っている。いい条件の仕事を探すなど自発的理由による離職が主な悪化の理由だ。
 完全失業者のうち自発的離職による失業者は118万人で前年同月に比べ11万人増えたが、倒産、リストラなど非自発的な離職の失業者は104万人で2万人減った。3月の学卒未就職者は2月に比べると20万人増え、全失業者の増加分22万人の9割を占め、新たな就職浪人の増加が失業者数を押し上げた格好になった。
 就業者は前年同月比39万人減の6345万人で、雇用者は21万人減の5270万人で、それぞれ4箇月、6箇月連続の減少となった。
 産業別の就業者は、製造業は21万人減で、34箇月連続して減ったが、建設業は14万人増と4箇月ぶりにプラスとなった。卸売・小売業・飲食店は30万人減で、5箇月ぶりにマイナスになった。
 また、総務庁が同日発表した1-3月の地域別の完全失業率によると、北海道が6.5%(前年同期比1.4ポイント減)、九州が5.7%(同0.5ポイント上昇)で、いすれも過去最悪となった。このほか東北、北関東・甲信、東海、近畿は上昇したが、南関東、中国は低下した。

1年以上失業 最多の82万人
 総務庁が28日発表した2月の労働力特別調査によると、完全失業者327万人のうち、失業期間が1年以上の長期失業者は昨年同月より12万人増の82万人と過去最多となり、全体の25.1%を占めた。うち、男性は62万人、女性は20万人で、完全失業者に占める割合は比率はそれぞれ30.4%、16.3%だった。
 雇用者数(役員を除く)は4903万人で、昨年同月に比べ10万人減った。そのうち、正規職員・従業員の比率は74.0%で、1.1ポイント低下し、これまでの最悪となった。一方、パート・アルバイトの比率は1.2ポイント上昇し、22.0%だった。
 
所定外労働が3年ぶり増加

2000/ 4/28 朝日新聞夕刊

昨年度、労働省調べ
 労働省が28日発表した1999年度の毎月勤労統計調査速報によると、99年度の所定外労働時間は前年度比0.4%増の月9.6時間となり、3年ぶりに増加に転じた。製造業が6.1%増と、高い伸びとなったのが主な要因。一方、従業員5人以上の事業所の平均賃金は、物価変動の影響を除いた実質指数(95年=100)で、前年度比0.2%減の98.5となり、2年連続で減少した。現金支給総額は月35万4094円で、前年度を0.8%下回った。
 
勤務変更は可能

2000/ 4/28 日本経済新聞朝刊

1箇月単位の変形時間労働 東京地裁判決
 日勤や夜勤などを組み合わせた「変形労働時間制」を巡り、JR東日本の社員2人が「直前の変更命令は無効で、変更後の勤務は所定外労働にあたる」として、JR東日本側に割増賃金の支払いを求めていた訴訟の判決が27日、東京地裁であった。福岡右武裁判長は「就業規則に基づく勤務時間の変更は可能」との判断を示したが、当時のJR東日本の就業規則は無効として、JR東日本側に計約65,000円の支払いを命じた。原告側によると、変形労働時間制の勤務変更に関する司法判断は初めて。
 問題となったのは1箇月単位の変形労働時間制。95年2月に決められた3月分の勤務が、3月に入り変更され、争点となった。
JR東日本の話 提訴後、就業規則を改正して変形労働時間制の趣旨を徹底しており、判決もこの措置を妥当としている。判決の趣旨を踏まえ、制度の適正な運用を図っていく。
 
介護保険支援へ情報網

2000/ 4/26 日本経済新聞朝刊

高齢者宅・病院など結ぶ 業者選び容易に 通産省が整備に着手
 通産省は今月から始まった介護保険制度が円滑に運営されるように情報化を促す。運営主体の市町村単位でサービス事業者、高齢者を情報ネットワークで結び、高齢者が簡単に事業者を比較、選択したり、サービスを予約したりできるように支援する事業に着手した。双方向の情報ネットワークを通じ、介護保険の対象でない日用品の宅配などの高齢者向けビジネスや、一人暮らしの高齢者の安否確認など、高齢者の日常生活全般に必要な情報も提供する体制を築く考えだ。
 
介護サービス 病院広告の規制緩和

2000/ 4/26 日本経済新聞朝刊

厚生省10日から メニューなど幅広く
 厚生省は10月から介護保険サービスについて病院や診療所など医療機関の広告規制を緩和する。介護保険では企業や社会福祉法人など多様な事業者がサービスの担い手となるため医療機関も他業態並みに詳細な情報を広告に盛り込めるようにし、利用者への情報提供の体制を整える。医療機関は訪問リハビリ、高齢者が施設に短期入所するショートステイなど介護保険の対象サービスの内容や紹介できる介護施設名などを広告で表示できるようになる。
 医療機関の広告は患者を惑わせる恐れがあるという理由で現在は原則禁止に近く、診療科目、病院名など限られた情報しか示せない。しかし介護保険の対象となるサービスでは医療機関は企業、社会福祉法人など広告規制のない他業態と同じ土俵で競争し、利用者から選別を受ける場合が多い。このため介護サービスについては医療機関が他業態と同じ条件で競争できるよう広告できる範囲を広げる。
 現在は医療法で医療機関が手掛ける介護サービスのうち広告できるのは訪問看護、ホームヘルパー派遣など1部に限定しているが、日帰り介護やショートステイ、通所リハビリなど他のサービス内容の広告も認める方向だ。
 
介護代金 数日遅れの請求容認

2000/ 4/25 日本経済新聞朝刊

厚生省方針 ソフト開発遅れで
 厚生省は24日、介護保険サービスを提供した事業者による都道府県への代金請求について、電子媒体で請求する場合は4月分の締め切り日である5月10日から数日遅れても容認する方針を明らかにした。代金請求に必要なコンピューターソフトの開発、納入が遅れ、事業者の間で5月10日までに事務が間に合わないとの声が出ていることに配慮した。
 この方針は、24日に開いた医療保険福祉審議会で表明した。事業者は4月分の介護代金を各都道府県の国民健康保険団体連合会事務所に5月10日までに請求し、6月25日に受け取る。請求が期日に間に合わないと事業者への支払いも1箇月遅れ、中小事業者では資金繰りが悪化する恐れがあった。
 事業者は介護代金を原則としてフロッピーディスクやパソコン通信など電子媒体を通じて請求し、システム対応が間に合わない場合のみ手書き書類で請求する。電子媒体による請求なら手書き書類と比べて国保連での処理時間が短くて済むため、数日程度なら国保連での処理期間を圧縮することで遅れを取り戻し、事業者への支払いを1箇月遅れせる事態は回避できると厚生省は見ている。
 
介護保険適用ベッド 計画の6割強に
療養型施設 サービスに影響

2000/ 4/24 日本経済新聞朝刊

 介護に重点をおく病院や診療所(療養型施設)で介護保険の適用を受けるベッド数が約11万5000床と計画(約17万5000床)の6割強にとどまっていることが厚生省の調査で明らかになった。報酬を介護保険ではなく医療保険から受け取る道を選んだ医療機関が多いためだ。介護ベッド数が少ないと介護保険料は抑えられる反面、利用者は希望サービスを受けられなくなる。医療保険から介護保険に移るサービスが減るため医療保険の財政負担が重くなる可能性がある。
 厚生省が全都道府県を対象に実施した調査によると、療養型施設で介護保険適用を申請したベッド数は4月1日時点で11万5088床。計画数を確保したのは岩手、茨城、長野、愛知、香川、鹿児島、沖縄の7県だけだった。確保率が最も低かったのは山形県の17.1%。宮城、栃木、東京など9都県も3割台にとどまった。
 療養型施設はこれまで医療保険から診療報酬を受け取っていたが、今年度から施設側の判断で医療保険と介護保険のどちらかを選択する仕組みになった。今年度の診療報酬の単価決定が3月にずれ込み申請期日まで期間が短かったため、多くの施設が介護保険への申請を見合わせたようだ。
 介護ベッドは介護保険から提供される施設サービスのなかで最も費用がかかる。整備不足の地域では利用者が予定していたサービスを受けられなくなる反面、65歳以上の住民の介護保険料負担は抑えられる。
 介護保険の指定を受けない療養型施設はこれまで通り医療保険から診療報酬を受け取るため、医療保険では高齢者医療費を賄う支出が予定以上に膨らむ。
 各都道府県は今後も医療機関に介護保険適用を申請するよう働きかける。

【Add 2000. 4.22】

 
裁量労働「心に負担」 7人が鬱病・不眠

2000/ 4/22 朝日新聞朝刊

管理はずれ仕事に没頭 東邦大助手ら 4年間221人調査
 働く時間の管理を本人に任せる「裁量労働制」を採り入れると、長時間働いて、精神面の健康に障害を起こす人が増える可能性が高い。東邦大医学部助手の立道昌幸医師らのグループが、裁量労働で働く電機メーカーの研究開発職221人を対象に4年間、調査を続けたところ、そんな結果が出た。24日、北九州市で開かれる日本産業衛生学会で報告される。労働基準法の改定で、今月から裁量労働制の適用範囲が企画部門などにも拡大されたが、健康への影響についての具体的な研究例はほとんどなかった。
 
厚生年金新加入 消極的が過半数

2000/ 4/21 朝日新聞朝刊

「説得」にも積極的は15% 社会保険事務局 新設企業調査
 サラリーマンの老後を支える厚生年金に入るように求められた新設企業の半分以上が加入に消極的な姿勢を示し、積極的なのは約15%にとどまる。各地の社会保険事務所が新設企業を説得した結果について、朝日新聞社が各都道府県の社会保険事務局から聞き取り、集計したところ、そんな傾向がわかった。厚生年金はすべての法人企業に加入が義務づけられているのに、未加入だったり脱退したりする企業が目立つ実態の一端が明らかになった。

不況と不信感 進まぬ加入 「将来の受給不安」代わりに生保加入も
 強制的に加入させられるはずのサラリーマンの厚生年金に、新しくできた企業はほとんど入ろうとしない。社会保険事務所が新設法人に加入を説得した結果を集計すると、そんな実態が裏付けられた。不況で保険料負担がのしかかるほか、世代によっては払った分だけもらえないとの不信感が背景にある。厚生年金の代わりに生命保険に入る企業も出てきた。厚生省社会保険庁も事実上、保険料を払える企業だけを加入させる姿勢のようだ。重い負担を労使で分け合う厚生年金制度は、強制加入という土台がむしばまれている。
 
介護「1号」保険料 市町村の格差3倍

2000/ 4/20 朝日新聞朝刊

家族ヘルパー容認7.5%
 1日から始まった介護保険で、65歳以上の人から集める保険料(1号保険料)に、自治体間で最大3倍の開があることが19日、朝日新聞社が全国の市町村と東京23区を対象に実施したアンケートで明らかになった。回答を寄せたのは約8割の自治体で、平均2797円。介護保険を利用するための要介護認定の申請をした人は、65歳以上の11%にあたる約228万人だった。また、ヘルパー資格を持つ人が同居の家族を介護する「家族ヘルパー」を認めることにしたのは、7.5%の約180市町村にとどまった。
 
基礎年金財源 消費税の全額を

2000/ 4/20 朝日新聞朝刊

民主が経済政策 外形課税も明記
 民主党は19日、すべての国民が加入する基礎年金(国民年金)の全額を負担とし、その財源に消費税収の全額を充てる「消費税の基礎年金目的税化」を柱とする「中期経済政策」をまとめた。消費税率の引き上げが必要となる場合には「(食料品など)平均的な基礎消費支出についての消費税相当額の税額還付制度を創設する」との構想も打ち出した。
 民主党は基礎年金の国庫負担を現行の3分の1から全額を税で賄うようにすべきだとしてきたが、財源として消費税収の税額を充当する考えを明確にしたのは初めて。同党は年金制度改革関連法が給付水準の抑制を盛り込んでいることを批判しており、十分な支給水準を維持する代わりに国民にも負担増を求めることで、総選挙に向けて政権担当能力をアピールする狙いがある。
 このほか、事業規模などに応じて赤字企業にも法人事業税を課す外形標準化税方式の導入を提起。鳩山由起夫代表が提唱した所得税の課税最低限の引き下げについては「税率の中立・簡素化のための重要課題」と位置づけている。
 
新卒採用 来春4.6%増

2000/ 4/20 日本経済新聞朝刊

3年ぶりプラス 大卒は7.1%の伸び 本社調査
 民間企業の2001年度の新卒採用総数は2000年度実績比4.6%増加する。日本経済新聞社が19日まとめた採用計画調査によると、電機など情報技術関連を中心に大半の製造業種で採用予定人数が増える。このうち大学卒の新卒採用者数は2000年度実績比7.1%増。採用が前年を上回るのは3年ぶり。高卒採用は依然として厳しいが、冷え込んでいた就職戦線にも大卒中心に変化の兆しが見えてきた。
 
厚年基金3年連続減少

2000/ 4/20 日本経済新聞朝刊

解散16基金 高水準 99年度積み立て不足解消困難
 厚生年金基金の数が1999年度に3年連続で減少したことが厚生省の調べで明らかになった。年金資産の運用環境の先行き不透明を背景に、積み立て不足の穴埋めは困難と判断した企業が相次いで基金の解散に踏み切ったためだ。99年度は16基金が解散、基金の合併もあり今年3月末の基金数は1835と前年同月に比べ23減った。基金の解散で加入者の老後の所得保障が薄くなっており、加入者が自分で掛け金を運用する確定拠出年金(日本版401k)の早期導入を求める声が一段と強まりそうだ。
 
パート・正社員 格差是正を

2000/ 4/19 日本経済新聞朝刊

同一職務「条件合わせて」 労働省研究会報告
 パートタイマーと正社員との間の賃金、処遇など労働条件の格差が問題になっているが、労働省の「パートタイム労働に係る雇用管理研究会」(座長・佐藤博樹東大教授)は18日、「同一職務の場合、パートの労働条件の決定方法を正社員と合わせていく必要がある」などとした報告をまとめた。同研究会は、少子高齢化や働き方の多様化などによって、パート労働の比率が高まっていることからパートタイマーが能力を発揮できる雇用管理が欠かせないと判断、正社員との「均衡」を求めている。

【Add 2000. 4.16】

 
「辞めた理由」差つく不安

2000/ 4/14 朝日新聞朝刊

雇用保険法改正案 きょう衆院通過
 会社を辞めた理由によって、失業手当がもらえる期間に格差がつく。こんな制度を新たに導入する雇用保険法改正案が14日、衆院を通過、週明けから参院の審議に移る見通しだ。倒産や解雇など「会社の都合」で離職した人に手厚くする一方、定年退職も含めて「自分の都合」で辞めた人は最大で6割強カットする。だが、会社を辞めるにあたってはいくつかの理由が重なっている場合が多く、明確な線引きは難しい。現在、失業手当は100万人以上が受け取っている。勤め人にとっては「セーフティーネット(安全網)」となっているだけに、トラブルが増えてくる可能性もある。
【現行】
 

1年未満

1年以上
5年未満

5年以上
10年未満

10年以上
20年未満

20年以上
30歳未満

90日

90日

90日

180日

30歳以上
45歳未満

90日

180日

210日

210日

45歳以上
60歳未満

180日

210日

240日

300日

60歳以上
65歳未満

240日

300日

300日

300日


【改正後】
 (普通退職)
 

1年未満

1年以上
5年未満

5年以上
10年未満

10年以上
20年未満

20年以上
年齢区分
なし

90日

120日

150日

180日

  ※30歳未満・20年以上の区分はなし

 (倒産・解雇等での退職)
 

1年未満

1年以上
5年未満

5年以上
10年未満

10年以上
20年未満

20年以上
30歳未満

90日

90日

120日

180日

-

30歳以上
45歳未満

90日

180日

210日

240日

45歳以上
60歳未満

180日

240日

270日

330日

60歳以上
65歳未満

150日

180日

210日

240日

  現行より増額のケース   現行より減額のケース
 
社会保障改革 足踏み

2000/ 4/14 日本経済新聞朝刊

健保法改正見送り・「401k」も微妙 健保財政悪化進む 介護保険料にもシワ寄せ
 衆院6月解散・総選挙が濃厚になるなかで、社会保障改革が足踏み状態になりそうだ。政府・与党は医療費の患者負担の引き上げや介護保険制度導入に伴う保険料の徴収を柱とする健康保険法等改正案の今国会中の成立を見送る方針を固めた。改革先送りで保険料収入が増えず、健康保険組合などの財政悪化は必至だ。自己責任で老後に備えるための確定拠出年金(日本版401k)法案も成立が微妙な情勢で、制度の導入時期が遅れる懸念がある。
 改正健保法案の成立が遅れると、健康保険組合や政府管掌健康保険など会社員が入る医療保険の財政悪化に拍車がかかる。

確定拠出年金 導入、再び遅れも 個人の加入意欲に水
 運用の成果次第で年金額が変動する確定拠出年金(日本版401k)を導入するための法案も今国会での成立が微妙になってきた。法案の審議・成立が総選挙以降の国会に先送りされると、個人の加入を受け付ける国民年金基金連合会のシステム開発が遅れ、制度の導入時期が2001年1月からずれ込む可能性もある。当初は今年秋にも導入される予定だっただけに、導入の遅れは加入意欲に水を差すことになりかねない。
 
今年度赤字 3290億円に

2000/ 4/14 日本経済新聞朝刊

健保組合の8割強 予算推計値
 健康保険組合は13日、全国の健保組合の今年度予算の推計値をまとめた。全体の8割強の健保が経常赤字となり、赤字総額は3,295億円になる見通し。前年度比べると約700億円縮小したが、高齢者医療費を賄う負担金などで構造的な赤字が続いている。健保法改正案の施行が遅れると財政負担がさらに重くなる可能性があるため、千葉会長ら健保連幹部は同日、自民党幹部や丹羽雄哉厚相を訪ね、健保改正案の今国会での成立を要望した。
 健保連は全国1766健保の94%にあたる1657健保の収支を集計し、これを基に全組合分の経常収支などを推計した。
 年度平均の介護保険料率は月収の0.98%(労使折半)で、厚生省推計(0.88%)を上回った。介護保険料率は社員の月収が低かったり、40-64歳の扶養家族が多かったりする健保組合ほど高くなるため、最高1.78%、最低は0.56%と健保間の格差が大きくなる。
 
要介護度 認定ソフト見直し

2000/ 4/12 日本経済新聞朝刊

厚生省低め判定批判に対応
 厚生省は介護保険で高齢者の介護の必要度合いをはかる「要介護認定」のコンピュータソフトの見直しに乗り出す。現在のソフトでは、痴ほうの高齢者や在宅で介護を受けている高齢者の要介護度が低めに出てしまうとの批判が強いためだ。今年度中に介護や医療の専門家で構成する検討会を設け、実態をより正確に把握できるソフトの開発を目指す。
 要介護認定は高齢者の心身の状況について、まず「歩行ができるか」「はいかいするか」など85項目を訪問調査。コンピューターの分析結果をもとに高齢者の要介護度を1次判定する。さらに専門家で構成する認定審査会が、主治医などの意見を踏まえて最終判定する。認定結果に不服がある場合は都道府県に申し立てができる。
 しかしコンピュータ分析は施設入居者のデータを基準にしていることから、自宅で家族の介護を受けている高齢者や独り暮らしの高齢者の要介護度を正確に把握できないと指摘されている。このため厚生省は在宅高齢者についてのデータを集め、住宅の構造や家族の有無など高齢者の介護環境をコンピュータ分析の判断材料にすることを検討する。
 また心身の状況が頻繁に変化する痴ほう高齢者の要介護度をよろ正確にはかる方法を研究するほか、認定審査会の最終判定についても自治体間のばらつき解消を目指す。高齢者が介護保険で利用できるサービスの額は要介護度に応じて変わるため、認定の客観性と精度の向上が大きな課題になっている。

【Add 2000. 4.11】

 
中小企業の業種別健保 9割弱が赤字に

2000/ 4/11 日本経済新聞朝刊

1割強保険料上げ 「介護」加え9.63%
 健康保険組合の財政難でサラリーマンと企業の負担が一段と重くなっている。中小企業が業種別に設立している総合健保306組合の2000年度予算では9割弱の組合が赤字となる。収支改善のため1割強の健保が保険料を上げるため、平均保険料率は前年度比0.04%高い8.59%(労使で分担)になる。介護保険料を加えた合計料率は9.63%(年度平均)に達し、現在の健康保険法での保険料率上限を超える。介護保険の導入後も労使の負担増に歯止めがかかっていない。

【Add 2000. 4. 9】

 
健康保険証をカード化

2000/ 4/ 9 日本経済新聞朝刊

1人1枚、来年度にも 診療報酬の請求 点検コスト削減
 厚生省は健康保険証に磁気カードやIC(集積回路)カードを導入し、一世帯に1枚ではなく1人1枚配布するための検討に入った。常時携行できるようにすることで通院などの利便性を高める。ICカードを活用すれば過去の検診記録を保存でき、診断が効率的になる効果も見込める。今年度中に具体策をまとめて2001年度から、大企業の健康保険組合や中小企業の従業員らの政府管掌健康保険など各医療保険に順次導入するように促す。カード化は手作業に頼る診療報酬の請求ミスの削減にもつながり、同省は総医療費の抑制も狙っている。
前倒し支給 増額へ
国民年金 60歳なら減額率42%を30%

2000/ 4/ 7 朝日新聞夕刊

厚相 財源調整が課題
 丹羽雄哉厚相は7日の閣議後の記者会見で、国民年金を65歳よりも早く前倒しで受給する場合に年金額を減らす「減額率」を大幅に縮小する方針を表明した。最も早く60歳から受け取る場合で現行の42%を30%にする。受給額でみれば58%から70%に増える。40年間加入で65歳から受け取る「満額」の年金額は1人月に約67,000円。それを60歳から受け取る場合、現行は約39,000円なのが、見直し後は約47,000円に増える計算だ。また、これまで1年単位で定めていた減額率を月単位で0.5%ずつ、きめ細かく適用する方式に改める。近く政令を改正し、2001年度から実施する方針だ。ただ、財源問題もからみ、大蔵省などとの調整が残されている。
 自営業者や専業主婦らが加入する国民年金は、65歳から受け取るのが原則だが、60歳以降なら前倒しで受け取れ、その場合は受給を受け始めた年齢ごとに一定率を減らされる。いったん適用された減額率は65歳を超えてもずっと適用される。現行では、60歳開始なら65歳受給の42%減、61歳なら35%減などだ。
 しかし、現行の減額率は1955年の平均余命をもとに算出していることなどから「現状に合わない」といった声が強まり、厚生省は先月末の年金制度改正関連法の成立を機に見直すことにした。
 同省では、平均余命を95年のデータに改め、資金運用の予定利回りを従来の5.5%から4%に修正するなどして計算。60歳になると同時に申請した場合で最大30%とし、申請が1月遅くなるごとに0.5%ずつ受取額が増えるようにした。サラリーマンが加入する厚生年金で国民年金にあたる基礎年金部分の受給開始年齢が、2001年度から段階的に60歳から65歳に引き上げられるのに合わせて実施する方針だ。
 ただ、国民年金(基礎年金)の財源の3分の1は国庫負担で、減額率を縮小すれば財源がふくらむ。実際にどれだけ前倒し申請があるかわからず、財源の手当てが今後の課題になる。
 厚生省によると、98年度に国民年金を受け始めた約44万2,000人のうち、60歳は約59,000人、前倒し受給者全体では約14万3,000人。同年度末現在で国民年金を受給している自営業者や専業主婦ら計約500万人が前倒しを選んでいる。
国民年金の前倒し受給の減額率
受給開始 現行 見直し後
60歳 42% 30%
61歳 35% 24%
62歳 28% 18%
63歳 20% 12%
64歳 11% 6%
人材派遣料引き上げ交渉
情報・金融関連3%の攻防

2000/ 4/ 7 日本経済新聞朝刊

一般事務は据え置き濃厚
 全国で100万人を超えたとみられる人材派遣の料金引き上げ交渉がヤマ場を迎えた。派遣各社は情報技術(IT)や金融関連など人気職種で、強気に平均約3%の上積みを要請、派遣先企業と交渉を始めた。一方、一般事務職は春闘相場低迷を背景に2年連続の据え置きが濃厚になっている。

【Add 2000. 4. 2】

 
介護保険制度スタート

2000/ 4/ 1 日本経済新聞朝刊

260万人が利用へ 65歳以上対象、市町村が運営
 高齢者の介護を社会全体で支え合う介護保険制度が4月1日、全国で一斉に始まる。高齢者が家族頼みでなく十分な介護サービスを利用できるようにするのが狙い。介護保険制度の導入で、行政が対象者や内容を決めていた高齢者福祉は、利用者が権利として自らサービスを選ぶ仕組みに転換する。厚生省はスタート時点の対象者が約260万人、初年度の費用総額が4兆3,000億円になると見込んでいる。ただ介護サービス計画(ケアプラン)の作成やサービス基盤の整備に遅れが出ており、課題を抱えての始動となる。
 保険料を負担するのは40歳以上の全国民。65歳以上は平均で月3,000円弱だが、今年9月までの半年間は不要で、10月からの1年間は半額を払う。40-64歳は4月から医療保険料に上乗せされ、サラリーマンは企業負担を含めて月3000-4000円払う。
 介護保険のサービスを利用できるのは原則65歳以上の高齢者。介護の必要度をはかる「要介護認定」を受け、必要度に応じて決まる利用限度額の範囲でサービスを選ぶ。
 厚生省は介護保険課を新設して相談窓口を設ける。ケアプラン作成が遅れているため、簡易なプランの作成を認め、提出期限を4月3日まで延ばす。現場に混乱が生じる場合には、制度を弾力的に運用する。