社会保険労務士関連ニュース(2000年/第2四半期:2000/7-9)

2000年(平成12年)度 第2四半期 2000年7月〜9月に新聞等で発表されたニュースです。

【LastUpdate 2000.10. 1】

【Add 2000.10. 1】

  政管健保保険料「1.1%上げ必要」

2000/ 9/28 日本経済新聞朝刊

  2002年度財政、積立金底をつく 厚生省試算
 厚生省は27日、主に中小企業のサラリーマンが加入している政府管掌健康保険の収支見通しを発表した。現行制度では高齢者中心に医療費が増え続けるため2002年度には赤字が5800億円に膨らみ、支払に備える積立金が底をついて財政が破綻すると試算。避けるには2002年度に保険料を月収の8.5%(労使折半)から9.6%に引き上げる必要があると指摘している。試算通りになると、平均的加入者の保険料は労使折半で月3200円増えることになる。
 試算は医療保険福祉審議会(厚相の諮問機関)に示した。医療費の伸び率は年4%、加入者の月収の伸び率は1%という最近の傾向が続くという前提で計算している。
 財政が悪化するのは70歳以上の医療費が急増し、政管健保が負担する老人保健拠出金が急増するため。現行保険料を維持すれば、単年度赤字は2002年度には5800億円と99年度の1.8倍に拡大。赤字を穴埋めしてきた積立金は2002年度中に底をつき、同年度末には少なくとも2300億円、2003年度には9900億円の資金不足になる。
介護保険与党見直し案 家事援助現状を追認

2000/ 9/28 日本経済新聞朝刊

  短期入所、使いやすく
 自民、公明、保守の与党3党は27日、介護保険制度の改善案で最終合意した。65歳以上の高齢者からの介護保険料徴収が10月から始まるのを前に、制度の問題点を是正するのが狙いだったが、焦点となっていた保険給付の対象となる「家事援助」の範囲については、不適切な利用の例示にとどまった。ホームヘルパーと家政婦の業務の線引きを明示できず、現状を事実上追認した格好。一方で、単価の低い家事援助を扱わない「身体介護専門」の訪問介護サービス事業者を容認するなど民間事業者に配慮した内容となった。
 【家事援助】犬の散歩、自家用車の洗車など保険対象として不適切な事例を列挙した。ただ、これは厚生省が7月末にまとめた不適切事例集と同一の内容にとどまっている。
 このため同省は例えば「同居家族がいる高齢者は原則、家事を自助努力で行うことが望ましい」といったガイドライン(指針)をつくったうえ、介護支援専門員(ケアマネージャー)が介護サービス計画(ケアプラン)を作成する際に、家事援助を必要とする理由を書き込むようにし、チェックを強化する。
 だが、これが適切かどうかを判断するのは最終的に自治体の裁量とした。与党は利用者やケアマネージャーの自覚を促す考えだが、指針には強制力がなく、現行と実態は大きく変わらない可能性が高い。
 与党は当初、保険の範囲を逸脱する行為への支給制限も視野に検討したが、「身体介護と家事援助は一体不可分だ」とする自治体の強い反発で、結局制限を見送った。
 【短期入所の利用弾劾化】高齢者が介護施設に短期入所するショートステイの運用で、厚生省は2002年1月から支給限度内で利用可能日数の制限をなくす方針を決めているが、これをさらに前倒しで実施する。
 現行制度では高齢者は「要介護度」に応じて訪問介護などの支給限度額が決まっている。短期入所は日数の制限もあるため、訪問介護などのサービスで限度額の使い残しがあっても短期入所の費用に振り向けられないケースがある。
 そこで、原則として支給限度額の枠内なら自由に短期入所へ振り替えられるようにする。但し、施設のベッド数を勘案し、連続利用は30日間までとする方針だ。例えば、最重度の「要介護度5」の高齢者は半年間で6週間まで短期入所に振り替えられる。ただ月2週間までという制限もある。今回の改善策が実施されれば、月35万8300円の支給限度額をすべて短期入所に振り替え、30日間連続で施設に滞在することも可能になる。
「身体専門」を容認 規制緩和、事業者に配慮
 与党3党は介護保険改善策の中に、訪問介護サービスを提供する事業者についての規制緩和も盛り込んだ。これまで事業者は食事や入浴などの世話をする身体介護と、掃除や洗濯を手助けする家事援助の両方のサービスを手掛ける必要があったが、「身体介護専門」などどちらかに特化した事業展開を認める。単価の低い家事援助サービスの比率が多いと経営が悪化するとの事業者の声にこたえた措置。厚生省はこれを受け年内にも特化型運営を認める方向だ。
 特化型の事業運営を認めるに当たっては、例えば身体介護専門事業者なら、家事援助を提供する事業者との提携を義務付けるなどの条件をつける方針。利用者から要望があれば、即座に家事援助サービスも提供できるようにする。
 4月の介護保険導入から半年間で単価が低い家事援助の利用が予想よりも膨らみ、採算難に苦しむ事業者は多い。このような事業者にとって今回の措置は歓迎されそうだ。ニチイ学館の寺田明彦社長は「家事援助に偏っているのは介護保険本来の姿ではない。訪問介護の中核である身体介護の利用が促進されるのは望ましい」と評価する。半面、「家事援助を手掛けない事業者が続出し、利用者のニーズを満たせなくなる」(世田谷区社会福祉事業団)と懸念する声もある。
介護保険改善策のポイント
▽家事援助の是正
 ・国が保険対象となる家事援助の範囲を冊子などにまとめ、利用者らに配布
 ・ケアプランに家事援助の必要な理由を記入
▽低所得者対策
 ・社会福祉法人のサービスを使う低所得者を対象とした「利用料減免制度」の普及
▽「身体介護」の利用促進
 ・事業者に家事援助か身体介護への「特化型」を解禁
▽ショートステイの利用弾力化
 ・利用可能日数の早急な見直し。政府の「2002年1月」の実施目標を前倒し
▽介護基盤整備
 ・特別養護老人ホームなどの介護施設や介護予防事業の拠点を整備
▽ケアマネージャーの素質向上
 ・マネジャーの支援体制整備と研修強化など
厚生年金昨年度給付 20兆円を突破

2000/ 9/27 日本経済新聞朝刊

   厚生年金の給付総額が1999年度は20兆4634億円(速報ベース)となり、20兆円台に達したことが社会保険庁のまとめで明らかになった。人口の高齢化に伴い年金受給者が増加していることが原因。保険料を負担する現役加入者数は減少傾向にあることから厚生年金の財政状況は一段と厳しさを増している。
 99年度1年間の厚生年金の給付総額は前年度に比べて3.3%、額にして6509億円増加した。平均年金月額は17万7046円。受給者数は73万人(4.4%)増えて1723万人となった。
 一方、保険料を負担する加入者数は99年度末に3248万人で、前年度末に比べて48万人、1.4%減少した。退職者の増加などが背景になっている。厚生年金に事業所数自体は前年度末に比べ1万事業所減り、168万事業所となった。
医療費の5割大病院に 厚生省調査

2000/ 9/27 日本経済新聞朝刊

  月に1人45万円、診療所の2.5倍
 医療費の約5割がベッド数200以上の大病院に集中していることが厚生省の今年3月の調査で明らかになった。大病院が手掛ける高度医療の費用が膨らんでいる上、高齢者中心に患者の大病院志向が強いためだ。
 医療機関の規模別に見た医療費調査は高齢化で膨らんでいる医療費の実態を把握するため厚生省が今年3月に初めて実施した。3月に医療保険から払った医療費(医科)総額2兆1473億円のうちベッド数20未満の診療所は3割で、残る7割はベッド数20以上の病院が占めた。特にベッド数200以上の大病院は数では病院の3割に過ぎないが、病院医療費の約7割、診療所を含めた医療費総額の約5割を占めた。
 大病院の医療費が大きいのは、治療が難しい重い病気の患者が集まることが一因だ。中小医療機関にはない高価な高度医療機器を使うこともあり、入院患者1人の平均医療費は月45万円と診療所の約2.5倍だった。また、外来患者も高齢者は病気を選ぶ割合が高く、人口の高齢化で病院の医療費は拡大しやすくなると厚生省はみている。

【Add 2000. 9.26】

  混合型年金導入へ 一定の給付保証、運用次第で上積み

2000/ 9/26 日本経済新聞朝刊

  厚生省方針 まず厚年基金に
 厚生省は企業年金制度に、一定の年金給付を保証したうえで、毎年の運用成績次第で年金額を上積みする仕組みを2001年度にも認める方向で検討に入った。将来の年金額をあらかじめ決めておく確定給付年金と、運用成績に応じて年金額が変動する確定拠出年金の特徴を併せ持った混合型の年金制度になる。現在の企業年金は確定給付型しか認められておらず、確定拠出型は法案成立の遅れから導入時期のメドが立っていない。混合型は認可基準を変更すれば法改正なしで導入できるため、同省では確定拠出年金の早期導入を予定する企業などが利用するとみている。
 確定給付年金は従業員にあらかじめ年金額を約束できるが、運用成績が悪化した場合に企業の追加負担が重い。確定拠出年金は企業の追加負担がない代わりに、年金額が運用成績に左右されるので従業員が不安を持ちかねない。混合型では確定給付型に比べると額は少なくなるが一定の保証が得られ、企業負担も確定給付に比べ軽くできる。
 厚生省はまず、代表的な企業年金の1つである厚生年金基金で混合型の導入を検討する。関係団体と調整をしたうえで、同省の通知である厚年基金の設立認可基準を変更し、混合型導入を可能にする考えだ。
 厚年基金は従業員の月収の一定割合を掛け金として主に企業から徴収、全従業員分を一緒に積み立てて運用している。混合型では各従業員に計算上の想定口座を設け、その口座に掛け金を積み立てる。運用は一括して基金が実施。企業は積立金に対し毎年の利回りを保証、将来の一定の年金額を確保できるようにする。保証利率より高い利回りが得られた場合は各従業員の積立金を増やしていく。
 厚年基金は現在、年5.5%程度の予定利回りを設定、将来の年金額を決めている場合が多い。混合型では保証利回りを現在の予定利率より低く設定することで、実際の運用が保証利回りに届かなかった場合の企業の穴埋め負担を軽減できる。同省では極端に低い保証利回りが設定されることがないよう一定の制限を設けることも検討する。
 厚生基金には年金を国に代わって支給する代行部分があるため、混合型を導入できるのは代行部分を除く上乗せ部分になる。厚年基金で導入が始まれば、厚年基金と並ぶ確定給付年金の税制適格年金でも導入が可能になると見られる。
 厚生省は確定拠出年金法の成立のメドが立たないことに加え、成立したとしても掛け金の非課税限度額が小さいなどで「導入しにくい」という企業の意見があることを踏まえ、混合型導入の検討を始めた。

【Add 2000. 9.24】

  リストラで有給取りづらく

2000/ 9/24 日本経済新聞朝刊

  休暇取得率50% 4割連続で減少 労働省99年調べ
 労働省がまとめた1999年の賃金労働時間制度総合調査によると、常用労働者30人以上の企業での年次有給休暇の平均取得率は前年に比べ1.3ポイント低い50.0%と、4年連続で低下した。有給休暇の平均付与日数は増えているのに対し、取得日数が減少したことが影響した。同省では休暇制度が拡充しても、リストラで職場の人員が減っていることなどから、有給休暇が取りづらい雰囲気があるためと見ている。
 年次有給休暇の平均付与日数は前年比0.3日増の17.8日と2年連続で増加した。一方、平均取得日数は0.1日減の9.0日で2年連続で減少した。昨年12月末時点で完全週休2日制を導入している企業の割合は33.4%と、前年同期比1.8ポイント低下した。特に常用労働者30-99人の小規模の企業で減少が目立つ。同省によると、1日の所定労働時間を減らす代わりに完全週休2日制を廃止する企業があるという。
 調査は昨年12月末に、常用労働者30人以上の企業5,297社に実施した。有効回答率は92.9%。

【Add 2000. 9.23】

  健保の4割、保険料上げ

2000/ 9/22 日本経済新聞朝刊

  1月から 70歳以上1割負担 改正法案きょう国会提出
 政府は22日の閣議で健康保険法等改正案を決定し、国会に提出する。70歳以上の患者が医療費の1割を窓口で支払う定率負担制の導入など患者の負担増や、約4割の健保組合で加入者の負担増につながる保険料上限の引き上げなどにより、医療保険の財政悪化に歯止めをかけるのが狙い。政府・与党は来年1月施行を目指しているが、民主党など野党は医療制度の抜本改革を先送りして患者の負担増を先行させる案だとして反発しており、国会審議は難航が予想される。
 【70歳以上は原則1割負担】70歳以上の患者の自己負担は現在の定額制から原則として1割の定率制に変わる。かかった医療費と自己負担が、ある程度連動する仕組みにして患者のコスト意識を促す。但し負担が過重にならないよう病院の規模別に月間の負担総額に上限を設ける。外来の場合、複数の診療科にかかることの多い大病院の上限額が中小病院に比べ高くなる。診療所は定額制と定率制1割制のいずれかを選び、患者が治療前にわかるように掲示する。
 診療費とは別に薬の種類数に応じて患者が窓口で支払う「薬剤別途負担制」は廃止する。高齢者の別途負担は99年7月から国費で肩代わりして免除しているので、患者への影響は実質的にない。
 【69歳以下は負担上限上げ】69歳以下の患者は医療費が高額になった場合の負担上限額などが上がる。現在は月間63,600円が上限だが、来年1月分から医療費が一定額を超えると超過額の1%分を追加負担する。一般患者で月間医療費が100万円なら自己負担額は現行より6,820円多い70,420円、月収56万円以上の人は62,110円多い12万5,710円になる。このほか入院時の食事負担も増える。
 【政管健保など介護保険料引き上げ】会社員の健康保険料の法定上限を来年1月から実質的に上げる。
 40-64歳の人は4月から医療保険料に上乗せして介護保険料を労使折半で納めている。政管健保と健保組合の約4割にあたる741組合では医療と介護の合計保険料が法定上限を超えるため、超過分を徴収できない状態が続いている。そこで法定上限を医療分に限定、介護分は上限のを設けず、徴収不足を解消できる仕組みにする。
 政管健保では、今年度の本来の保険料は医療分8.5%、介護分0.95%。しかし法定上限が9.1%なので実際には介護分を0.6%しか納めていない。来年1月からは上限の制約がなくなるため、本来の介護分0.95%に今年4-12月の徴収不足分の一部も上乗せし、介護保険料全体で1.08%とする。合計保険料負担は9.58%(労使折半)に増える。徴収不足分は2002年度末までに穴埋めする。
審議は難航は必至 野党反発
 健康保険法等改正案を巡り、野党各党は「抜本改革の先送りだ」として対決姿勢を鮮明にしており、審議の難航は避けられない情勢だ。与党側は今国会で成立を期す重要法案と位置付け、10月第1週から衆院厚生委員会で審議入りする方針だが「成立までに1ヶ月以上の審議時間が必要になるかもしれない」との見方が多い。その場合、経済界が早期成立を強く求めている確定拠出型年金(日本版401k)法案の審議に影響が及ぶ可能性がある。
 先の通常国会では、与党側が6月の衆院選をにらんで高齢者の負担増につながる健保法改正案の処理を早々と見送った。このあおりで膨らんだ医療費は国費で補てんしており、与党側は「更なる財政負担を防ぐためにも来年1月の施行に間に合うように今国会で処理しなければならない」としている。
 一方、野党側は徹底抗戦の構えだ。背景には来年夏の参院選に向け、国民負担の増大に反対する姿勢を有権者にアピールしたいとの思惑がある。ただ、民主党内には「財政再建を訴えているのに国民負担の増大に反対ばかりはしていられない」との声もあり、与党との修正協議に応じるかどうかが今後の焦点になる。
 11月初旬には2000年度補正予算案の審議入りが予定されており、与党側はその前に健保法改正案の衆院通過を目指す方針だ。

健保法改正の影響(2001年1月施行)
(現行)   (改正後)
(1)70歳以上の患者の負担
・外来の場合
 1回当たり530円
 (月5回目から無料)

=>

診療所=次のいずれかを選択
 ・1回当たり800円(月5回目から無料)
 ・医療費の1割(月3,000円が上限)
病院=医療費の1割
 (200床以上の大病院は月の上限が5,000円、それ以外は上限3,000円)
・入院の場合
 1日当たり1,200円
 (低所得者は軽減)

=>

医療費の1割(月の上限37,200円、低所得者は軽減)
(2)70歳未満の患者の自己負担月額上限
・一般患者 63,600円

=>

63,600円(月の医療費が318,000円を超えた場合は超過額の1%を追加負担)
・月収56万円以上の患者 63,600円

=>

121,800円(月の医療費が609,000円を超えた場合は超過額の1%を追加負担)
・低所得者の軽減措置は継続
(3)入院時の食事負担(現役も高齢者も共通)
・1日当たり760円

=>

1日当たり780円
・低所得者への軽減措置は継続
(4)政管健保の保険料(40〜64歳)
・月収の9.1%

=>

月収の9.58%(2001年3月以降はさらに引き上げ)
※健康保険組合や国民健康保険は各組合や市町村ごとに異なる
(5)その他の主な改正
・70歳以上の患者の薬剤費別途負担は2002年度までに廃止
・従業員の育児休業中の事業主の保険料負担免除
・財政悪化の健保組合に早期是正措置導入
家事援助の対象 リスト作成一致

2000/ 9/22 日本経済新聞朝刊

  与党・介護保険チーム
 自民、公明、保守の3党は21日、介護保険制度の運用面での改善策を検討するプロジェクトチーム(熊代昭彦座長)で、要介護高齢者の日常生活を手助けする「家事援助」の対象となるサービスの統一リストを作成することで一致した。リスト外のサービスを保険の対象とするかどうかは、各自治体の裁量で自由に決められることとする。
介護保険 「仕組み分かりにくい」3割

2000/ 9/19 日本経済新聞朝刊

  本社世論調査 認定に不満 目立つ
 日本経済新聞社の全国世論調査で、今年4月に始まった介護保険制度について有権者の意識を探ったところ「仕組みが分かりにくい」とする声が30.4%にのぼることが分かった。介護が必要かどうかを市町村が決める要介護認定については「適切でない」とする回答が19.4%にのぼり、近親者が介護保険サービスを受けている有権者に限ると4人に1人にあたる24.2%が認定に不満を持っている。10月から始まる65歳以上の高齢者の保険料徴収を前に、制度の周知徹底や改善に向けた取り組みが課題となりそうだ。
 「仕組みが分かりにくい」という指摘の背景には(1)要介護認定には6段階ありどれだけサービスが受けられるかが段階ごとに異なる(2)要介護認定を受けた本人か家族が介護業者を選んで直接契約する必要がある(3)保険料とその払い方が年齢や所得水準によって違う--などの理由があるとみられる。
 要介護認定は全国一律に客観的に決めるのが原則で、コンピューターによる1次判定の後、市町村の介護認定審査会で決定する。内容に不満がある人には再審査の道も開けているが、1次判定では痴ほうの場合に要介護度が低めに判定されがちだとの指摘が多く、申請する側に疑念が生じやすい実態を示している。
 昨年秋に与党主導で決定した65歳以上の高齢者の保険料の徴収凍結措置は9月で終わり、10月から本来の半額分の保険料徴収が始まる。ただ、保険料徴収開始を知っている有権者は63.6%にとどまり、35.1%は知らなかった。近親者に介護サービスを受けている高齢者がいる有権者に限っても、23.9%が保険料徴収開始を知らないままだ。

【Add 2000. 9.17】

  65歳以上の介護保険料 27市が減免措置

2000/ 9/17 日本経済新聞朝刊

  本社調査 「徴収不安」9割超す
 介護保険で10月から徴収が始まる65歳以上の高齢者(第1号被保険者)の保険料について、全国市の7%余りの50市が減免をするか検討中であることが日本経済新聞社の調査で分かった。9割を超える市が低所得者層からの保険料の徴収に何らかの不安を抱いており、低所得者層の負担軽減が軸になっている。厚生省は、自治体が制度の主旨を超えて保険料を免除する動きに「慎重な対応」を求めており、今後あつれきも予想される。
 第1号被保険者の介護保険料(全国平均で月額3000円弱)は、10月から1年間は半額、来年10月から全額を徴収することになっている。調査は全国671市と東京23区の計694市区を対象に、8月下旬から9月上旬にかけてアンケート方式で実施。669市区が回答した(回答率96.4%)。
 保険料は減免すると回答したのは横浜、神戸など27市。
 このうち一部低所得者について全額免除を打ち出しているのは北海道稚内市、岐阜県美濃加茂市、愛知県碧南市など。稚内市は住民税非課税世帯の老齢福祉年金受給者で、介護保険料を支払うと生活保護を受けることになる人が対象。免除による保険料の不足分は特別会計などから繰り入れる考えで、市議会に条例改正案を提出する。
 「検討中」としているのは大阪市をはじめ、東京都小金井市、千葉県船橋市など23市だった。

【Add 2000. 9.15】

  「65歳以上」2190万人 総務庁推計過去最高に

2000/ 9/15 日本経済新聞朝刊

   総務庁が発表した「敬老の日」の15日現在の高齢者推計人口によると、65歳以上の高齢者は2,190万人で昨年より74万人増加し、過去最高となった。総人口に占める割合も0.6ポイント上昇し、17.3%と過去最高を更新した。国民の5.8人に1人が高齢者の計算で、少子高齢化がさらに進んでいることが浮き彫りになった。
 65歳以上の人口を男女別で見ると、女性が1277万人で、男性の913万人の1.4倍。高齢者のうち女性の割合は65歳以上で58%、75歳以上で65%、85歳以上で71%と、高齢になるに従って増えている。
 65歳以上の労働力人口(就業者と求職中の完全失業者の合計)は493万人で、男性の36%、女性の15%が仕事に就いているか、仕事に就く意欲を持っている。特に65-69歳の男性ではこの比率は53%に達し、2人に1人が働いているか、働きたいと考えている。
 諸外国との比較では総人口に占める65歳以上の高齢者の割合で、スウェーデン、イタリアに次ぐ水準になっている。
 国立社会保障・人口問題研究所によると、65歳以上の人口は今後も増加傾向を続け、2025年には3312万人と今年の1.5倍となる見込み。全人口に占める割合は27.4%に達する見通しだ。
健康保険料収入、初の減少

2000/ 9/15 日本経済新聞朝刊

  赤字最高2033億円 昨年度 リストラ・解散増響く
 健康保険組合連合会(千葉一男会長)が14日発表した全国約1800の健保組合の1999年度決算は、企業のリストラに伴う被保険者(加入者本人)の減少などの影響で保険料収入が前年度比1.33%減り、比較可能な1943年度以来、初めて前年を下回った。一方で高齢者の医療費を賄う拠出金などの支出が増えたため、経常収支は2033億円と、過去最大の赤字になった。財政難から健保を解散する動きも出ており、健保関係者の間では医療費を抑制するため医療制度抜本改革の早期実施を求める声が高まっている。
 健保組合は主に大企業が社員とその家族のために設立している。被保険者である社員の月収の一定割合の保険料(99年度平均8.51%)を労使で分担し、ここから加入者の医療費のほかに加入者以外の高齢者医療費を賄う拠出金などを支払っている。
 99年度の保険料収入は、5兆7157億円と前年度より767億円減った。母体企業が人員削減を進めた結果、被保険者が約25万7000人減と過去最大幅で減少したことが影響した。これにより、積立金からの繰り入れなどを含めた経常収入も5兆8743億円と1.40%減少した。
 一方で、経常支出は6兆776億円と前年度比2.71%増えた。支出の約半分を占める加入者の医療費は減ったものの、70歳以上の高齢者や60代の定年退職者らの医療費を賄うために割り当てられる拠出金が1割増の約2兆3000億円に膨らんだ。拠出金が保険料収入に占める割合は40.30%と初めて4割を突破した。
 この結果、経常収支は405億円の赤字だった前年度から大幅に悪化し、赤字額は過去最大だった96年度(1976億円)を上回った。全健保のうち7割近くが赤字になっている。
 これまで健保組合は赤字を穴埋めするために保険料率を引き上げてきたが、99年度は約3割の健保で保険料率が9%以上と法定上限の9.5%に迫っている。このため母体企業が自社健保の保険料引き上げを断念して健保を解散、政管健保に移る動きも出ており、99年度は企業倒産なども含めて9組合が解散した。2000年度に入ってからも解散の動きは止まらず、年度前半だけで10組合と、最も多かった98年度を上回るペースとなっている。
介護保険の導入効果でなければ 財政、一段の悪化必至

2000/ 9/15 日本経済新聞朝刊

  カギを握る老人医療費
 健康保険組合の財政状況は、介護保険の導入による老人医療費の削減効果が予想通りに出なければ、今年度以降にさらに悪化する恐れがある。すでに4、5月は厚生省の予想よりも老人医療費の削減幅が小さいという結果が出ており、健康保険組合連合会の幹部は「年間を通しても想定していたほどの医療費削減効果はなく、後の負担増につながるのではないか」との危機感を募らせている。
 4月の介護保険導入によって、従来は医療保険で賄ってきた訪問看護や老人保健施設での療養費用などが介護保険から支払われる形になった。これにより、老人医療費が減り、健保組合などが老人医療費を負担するために支払っている拠出金も減る見込みだ。全健保組合の2000年度予算では拠出金は前年度より9%減り1兆7200億円にとどまると見ていた。
 ただ、厚生省の推計によると、4、5月は予想通りの医療費削減効果が出なかった。依然として病院に入院し続ける高齢者などが多いためと見られる。
 拠出金の過不足は2年後に精算する仕組みになっており、2000年度分の拠出金は2002年度に精算される。健保連では「このままでは例年よりも拠出金の増加が400億-500億円大きくなる恐れもある」という。負担増に耐えきれず解散する健保組合がさらに増えかねない。高齢者部分を中心に医療費自体を効率化する改革の実現が求められている。
国民負担増 及び腰の政治

2000/ 9/15 日本経済新聞朝刊

  社会保障会議座長メモ提示 給付効率化など8項目 検討を継続
 森善朗首相の私的諮問機関である「社会保障構造のあり方について考える有職者会議」は14日、首相官邸で会合を開き、貝塚啓明座長(中央大教授)が主要な論点をまとめた「座長メモ」を提示し、委員の了承を得た。座長メモは10月末につくる最終報告書の原案となるもので、高齢者にも医療費や課税の面で応分の負担を求めることを提案した。社会保障の財源については保険料を柱とする社会保険方式の維持を打ち出した。会議では給付の効率化や積み立て方式の是非など「さらに検討していく事項」として8項目を確認した。
 有識者会議は社会保障改革の青写真を描くため、小渕恵三前首相の下で1月に発足。この日の会議では、給付と負担の関係で新たな将来推計を示すべきだとの声や高齢者を一律に弱者ととらえる見方を問題視する意見が出た。
 座長メモは年金関連の税制による優遇が過剰との認識から、所得税の公的年金等控除などを再検討するよう促した。高齢者が不動産を担保に生活資金を借り入れ、死亡後に不動産の売却で返済する「リバースモーゲージ」の制度整備も指摘した。診療報酬や薬価制度の見直しも盛り込んだ。
 議論を深める事項としては、高齢化を踏まえ積み立て方式を導入すべきかや、制度間の重複を避けるなど給付の無駄をなくすことも挙げた。強制加入を前提とする「皆年金・皆保険」のあり方も課題とした。
 財源の税制方式については、自由党が強く主張し、与党内では保守党が前向きだ。自民党にも賛同する声があり、今後税制調査会で検討する。ただ、医療や介護なども含む社会保障の全体像を話し合う機関は与野党の中で見当たらない。選挙が近づくにつれ、国民受けしない増税などの議論も避けられることになりそうだ。
 

社会保障有識者会議が今後さらに詰める検討項目

年金の財源方式
  ・自分の年金は自分で積み立てる方式か、現役世代が高齢世代を支える仕組みか
社会保障制度がカバーする範囲・水準
社会保障制度の財源
  ・保険料を中心とする社会保険方式か、税で賄う税方式か
国民皆年金・皆保険の是非
医療制度の改革
年金、医療、介護など制度間の重複の排除
個人単位化
  ・世帯単位で設計されている社会保障を個人単位に変えるべきかどうか
有効な少子化対策
社会保障 高齢者も応分の負担

2000/ 9/14 日本経済新聞朝刊

  有職者会議報告書原案 年金控除見直し
 21世紀の安定した社会保障制度を検討している「社会保障構造のあり方について考える有職者会議」(首相の私的諮問機関)が10月末にもまとめる最終報告書の原案が13日、明らかになった。これまで一律に優遇されてきた面がある高齢者に対し、低所得者に配慮しながら社会保障費用の「応分の負担」を求めるべきだとしている。具体的には公的年金の控除見直しや高額所得者への年金給付の制限、医療サービスを受けた際の自己負担拡大などを検討課題としている。社会保障の財源については保険料を柱とする現行の社会保険方式を維持すべきだとした。

財源は保険方式
 原案は今年1月からの論議を有識者会議座長の貝塚啓明中央大教授が集約したもので、14日に「座長メモ」として提示する。同会議は起草委員会を設置、座長メモを元に報告書をまとめる。報告書は今後の社会保障改革の指針となる。
 原案では改革の前提となる高齢者対策について「一律に弱者ととらえ、支援の対象と見る考え方を転換すべきだ」と強調した。世代間の公平性を確保、制度を安定させる狙いがある。
 そのうえで、年金制度では高額所得者に対する年金給付の制限を検討課題としている。現行制度では企業の役員や自営業で高収入があり、社会保障に頼る必要がない高齢者にも規定通り年金を給付している。このため所得に一定の上限を設け、これを超える所得がある高齢者への年金を制限する案などが考えられる。
 公的年金等控除の見直しも盛り込んだ。現行は65歳以上の夫婦世帯で年間の年金受給額が340万円程度を下回れば、所得税は非課税。これに対し、現役世代の給与所得者では夫婦世帯で200万円強あれば課税される。高齢者への優遇措置の見直しを求める声は経済界などからも出ている。政府内では年金掛け金の拠出や掛け金の運用段階では非課税にする一方、給付時に課税する仕組みへの転換が検討されている。
 自助努力で公的年金に頼る比重を抑える考えも打ち出した。高齢者が所有する不動産を担保に老後の生活資金を借り入れ、死亡後に不動産を売却することで返済する「リバースモーゲージ」制度などの本格導入の必要性を指摘した。
 医療保険では高齢者が医療サービスを受けた場合の自己負担の拡充を検討課題とした。改正健保法の早期成立により、高齢者がかかった医療費の一割を負担する仕組みへの移行を促していると見られる。
 年間30兆円に上る医療費の抑制も焦点。原案では医療保険から医師に支払われる診療報酬と、国が1つ1つの薬に公定価格を定めている薬価制度について効率化を進める改革を実施する必要性を訴えた。
 年金、医療、介護の各制度間のさまざまなサービスの重複を放置したままでは、改革が十分実効を上げない恐れがある。このため原案は各制度を相互に連携させ、ムダをなくすことも求めている。
 

報告書原案の骨子

接続可能な社会保障制度構築へ向け、高齢者に「応分の負担」を求める
高齢者の負担能力に応じた適切な課税と医療費の自己負担の引き上げを検討
公的年金等控除の見直し、高額所得者への年金給付の制限などが検討課題
高齢者の資産を有効活用する「リバースモーゲージ制度」の本格導入
診療報酬、薬価制度のあり方の見直し
年金の財源は現行の社会保険方式を維持
高齢者医療費 介護保険後も減少小幅

2000/ 9/12 日本経済新聞朝刊

  療養型施設、申請進まず
 今年4月の介護保険導入で大幅に減ると予想されていた高齢者医療費が当初見込みほど減少しなかったことが明らかになった。4、5月の高齢者医療費合計の前年同期比は4.6%減。2000年度予算で見込んでいた11.8%減(年度平均)より小幅にとどまった。医療保険で長期療養している高齢者が依然多いとみられる。6月以降も高齢者医療費が見込みほど減らなければ、健康保険組合などの負担が大きくなり、現役世代の保険料の引き上げにつながる可能性がある。
 70歳以上の高齢者の医療費は高齢人口の増加などで増加していたが、4月は前年同月比7.7%減の8,885億円、5月は同1.5%減の9,159億円になった。介護保険の導入に伴い訪問看護や老人保健施設での療養など、医療保険で賄ってきた費用の一部が介護保険適用に変わったためだ。
 高齢者では介護が必要なのに様々な事情で入院している「社会的入院」が多く、医療費が膨らむ一因と言われる。こうした高齢者が介護保険を利用して介護施設か在宅介護の生活に移れば費用は抑えられるとみられていた。厚生省は今年度の医療費は前年度比11.8%減ると見込んでいる。
 同省は4-5月の減少率がこの見込みを下回った理由は今のところ不明としているが、医療保険関係者の間では「社会的入院の解消が進んでいない」との指摘が多い。例えば医療と介護のどちらの保険を適用するか施設側が選ぶ長期療養型施設(療養型病床群)のうち介護保険を申請したところは4月時点で約11万5,000床と予算の計画の6割強にとどまった。

【Add 2000. 9. 9】

  ネットで就職あっせん

2000/ 9/ 9 日本経済新聞朝刊

  労働省が規制緩和 求職登録に電子メール
 労働省は民間による就職あっせんをインターネットの活用で拡大するための規制緩和策などを固めた。紹介事業者が、就職先を探す求職者の申し込みを受け付ける際に、面談なしの電子メールのやり取りだけでできるようにする。年内に職業安定局長通達を出す。求職者への労働条件も電子メールで提示できるように省令改正を検討中だ。職業紹介業の許可がない場合でも、求人企業の検索ができるホームページの開設などは認める。ネット上で職業を探す人が増えるなか、民間事業者の参入をしやすくし、雇用ミスマッチ解消を狙う。
 これまで労働省は職業紹介事業者が求職者を登録する際に、直接面談するように行政指導していた。職業安定法に「雇用条件に適合する求職者を紹介するように努めなければならない」との規定があり、面談が必要と判断したためだ。電子メールでの登録が認められれば、面談の手間が省け、遠距離の求職者を集めることも簡単になる。
 また求職者に賃金などの労働条件を通知する場合についても、労働省令で書面での提示を義務づけてきた。「電子メールでは証明力がないため、労働者が保護されない恐れがある」(職業安定局)ためだったが、これも、来年4月に電子認証法が施行されるのに合わせ、電子認証付きの電子メールでの代替を認める方向で検討している。
 このほか職業紹介業者は(1)20平方メートル以上の事務所の設置(2)求職者500人に1人の割合で職業紹介責任者の配置--を義務づけられている。同省は「苦情を受け付けるために事務所は必要」としながらも、面積基準については緩和方向で検討する。紹介責任者の定数については、求人情報を提供するだけなら求職者に含めないことを明確にし、事実上条件を緩和する。同省では「ネット上の求職者の大半が情報提供だけなので負担が大幅に軽減される」と見ている。
 職業紹介業には労相の許可が必要。ただ許可事業者に限らずネットの活用を後押しするため、どのような活動ならば紹介業の許可がなくてもできるかの基準も作成した。まず休職者や求人企業が条件を入力して、自動検索できるようなホームページの作成は許可事業者でなくてもできるという判断。ホームページ上に求職者、求人企業のアドレスを掲載し、両者が直接連絡できるようにすることも自由。求職者本人が希望すれば企業に個人情報を提供することも、許可事業者でなくても可能という。
 ネットを使った職業紹介や求人情報提供を計画する企業は相次いでいるが、ルールが不明確でサービス多様化の障壁になっていた。

【Add 2000. 9. 8】

  高校生の求人倍率0.64倍

2000/ 9/ 8 日本経済新聞朝刊

  来春卒業予定者7月末時点
 労働省は7日、来春卒業予定の高校生の求人・求職状況をまとめた。7月末の求人倍率は0.64倍と3年連続1倍を下回ったが、調査を始めた1984年以来最低だった昨年同期より0.02ポイント改善した。求人数は昨年より1.4%減ったが、求職者数も3.6%減少しており、同省は「企業はすぐに使える人材を求めており高校生の就職環境は依然として厳しい」(伊藤庄平事務次官)と見ている。
 卒業予定者のうち就職を希望する高校生は256,466人。求人数は163,235人。3年連続減ったが、減少数は昨年の40.4%、1昨年の33.0%から大幅に縮小した。
 求人倍率は北海道(0.22倍)、南九州(0.24倍)をはじめ京浜の1.41倍を除き軒並み1倍を割り込んだ。
介護保険料 徴収繰り延べ容認

2000/ 9/ 7 日本経済新聞朝刊

  厚生省方針 負担急増を回避
 厚生省は健康保険法改正の遅れによって介護保険料を全額徴収できない政府管掌健康保険と企業の健康保険組合に、不足分を追加徴収する期間を2001年度以降に繰り延べることを認める。2000年度中の穴埋めすることを義務づける考えだったが、法改正の国会審議が大幅に遅れていることで2000年度末までに全額を徴収すると企業と従業員の保険料負担が急増する状況となったためだ。時間をかけて少しずつ穴埋めできるようにする。政府はこの方針を盛り込んだ改正健保法案を臨時国会に提出し、2001年1月の施行をめざす。

法改正遅れによる不足分 健保組合・政管健保に

 同省の方針を踏まえ、国が主に中小企業の従業員を対象に運営している政管健保は2002年度までに段階的に介護保険料を引き上げ、不足額を穴埋めする検討を始めた。主に大手企業が従業員向けに設立している健保組合もそれぞれの財政状態に応じて追加徴収の計画をつくる見通しだ。
 現在の健保法は政管健保や健保組合の保険料に上限を定めている。上限は政管健保が月収の9.1%、健保組合は同9.5%で、これを超えて徴収できない。4月から40-64歳の会社員は医療保険に上乗せして介護保険料を労使で折半して納めているが、政管健保は40-64歳の97万人程度について医療保険料8.5%に介護保険料0.95%を加えると9.45%となり上限を超す。全国1780の健保組合も全体の約4割は合計保険料率が法定上限を超えるため、介護保険料のうち上限を超えた部分は徴収できない。
 政府は先の通常国会で健保法を改正して法定上限を医療保険だけに適用し、介護保険料は別枠で徴収する制度を7月に始める計画だった。合計の保険料が上限を超える政管健保と健保組合は6月までの保険料は上限を抑え、7月から年度末までに本来の保険料率に4-6月の未徴収分を上乗せして徴収して年度内に穴埋めするよう義務づける方針にしていた。
 だが、衆院解散で健保法改正案が廃案となったため、7月以降も政管健保と約4割の健保組合は介護保険料の一部を徴収できない状態が続いている。政府は9月上旬に召集予定の臨時国会に健保法改正案を再提出し、早期成立をめざす。
 政管健保の場合、4-12月分の未徴収額を介護保険の年度末となる2月までに穴埋めするには1月に介護保険料を一気に2.52%と本来の2.6倍に引き上げなければならない。月収40万円の社員なら労使合計の負担は月1万円強になる。
90年代の規制緩和 雇用110万人創出

2000/ 9/ 6 日本経済新聞朝刊

  離職も90-140万人 企画庁推計流動化促進裏付け
 経済企画庁は5日、1990年代の規制緩和が雇用に与えた影響について分析したリポートを発表した。運輸や通信、サービスなど規制緩和が進展した業種では、92-99年までに110万人の雇用が創出された半面、同じ時期に90万-140万人が職を失ったと推計している。規制の緩和や撤廃が雇用市場の流動化を促したことが裏付けられた格好だ。企画庁は「新規就職者数と離職者数はおおむね均衡している」と指摘、規制改革を進めて成長分野への雇用の再配置を促進するべきだと提言している。
 移動体通信料金の届出制への移行や大規模小売店舗の出店規制の緩和など、90年代には各種の規制が見直された。規制緩和は企業に新たな事業機械をもたらす一方で、競争激化で事業所の閉鎖や倒産なども引き起こす。このため、企画庁は規制緩和による雇用へのプラス、マイナスの両面を分析。事業所の開業、廃業の比率から入職者(新規就職者)と離職者の数を推計した。
 それによると、全産業の開業率、廃業率は90年代後半にそれぞれ4.1%、5.9%上昇したのに対し、規制緩和が進んだ通信業は37.3%、13.3%といずれも大きく伸びている。雇用市場の流動化は規制緩和業種でいち早く進んでいる姿がうかがえる。
 開業率の上昇をもとに算出した規制緩和業種の入職者数は、卸し・小売り・飲食店で58万人になったほか、運輸・通信業は33万人、サービス業は19万人となった。廃業率から分析した離職者数は景気循環の影響を含めると合計140万人、影響を除くと90万人だった。いずれのケースも卸・小売・飲食店の増加分が最も大きくなった。
 国内の開業や廃業による就業者数の増減は就業者数全体の変動の8割程度を占め、米国などとほぼ同水準に達している。樋口美雄・慶応大教授は「規制緩和で企業の優勝劣敗は一段とはっきりしてくる。労働移動を円滑に進めるためにも、労働者の技能形成をどう支援するかが重要になる」と指摘している。
国民年金未納対策 懲罰課税案に自民から異論 私的年金小委

2000/ 9/ 6 日本経済新聞朝刊

   自民党年金制度調査会の私的年金等小委員会(太田誠一委員長)は5日会合を開き、国民年金保険料を納めない人に民間保険会社の個人年金保険料控除を認めないようにするという厚生省の税制改正要望などについて話し合った。保険料控除については年金保険料の未納問題に税制で懲罰を科すべきでないとの異論が多く出た。
 厚生省は納めるべき国民年金の保険料を納めずに民間の個人年金に加入した人には所得税で年5万円、住民税で年3万5000円まで個人年金保険料を所得から控除できる優遇税制を認めないよう要望している。これに対し、小委では税制でペナルティーを科すよりも(資産差し押さえによる)保険料の強制徴収や未納者の氏名公表等の措置を検討すべきだという意見が相次いだ。
 また、先の通常国会で廃案になった確定拠出年金(日本版401k)法案は今月下旬に召集予定の臨時国会での成立を目指す方針を確認した。同法案が廃案になったことで制度の発足が当初予定した来年1月より遅れることが確実になった。小委は大幅な遅れを回避するため臨時国会で早期成立を目指すよう働きかける方針を決めた。

【Add 2000. 9. 5】

  医師会、制度改革に一石 医療費、2015年に60兆円

2000/ 9/ 4 日本経済新聞朝刊

  高齢者向け抑制見込む 厚生省推計より20兆円少なく
 2015年時点の国民医療費が現在のほぼ2倍の約60兆円になるとの日本医師会の推計が波紋を広げている。厚生省の推計より約20兆円も少なく見積もっているからだ。医師会は死に際の人への医療行為や診療報酬体系を見直すことで、高齢者1人当たり医療費の伸びを抑えられると提案しており、実現すれば現役世代の医療保険料の負担も緩和されるという。厚生省内にはその実現可能性を疑問視する声もあるが、医師会の提案は政府・与党の医療制度の改革論議に影響しそうだ。
 医師会の推計が厚生省と異なる要因は、高齢者の医療費単価の伸びを年率0.5%と厚生省の同4%より大幅に低く見積もったことだ。直近の実績をそのまま当てはめた厚生省に対し、医師会は制度改革で単価の伸びを抑えるという目標を掲げた。具体的には糖尿病など慢性的には病気の種類ごとに医療機関の診療報酬が決まる「定額支払い方式」を幅広くする一方、医療費が高騰しやすい死に際にある人への医療行為を抑制するというものだ。
 治療や検査の代金として医療機関が受け取る診療報酬の引き上げを求めてきた医師会が抑制案を打ち出したことに、厚生省は戸惑い気味。政府・与党は高齢者の医療制度改革を2002年度までにまとめるが、医師会の提案が議論の焦点に浮上するのが確実だ。
 今回の推計は医師会の坪井栄孝会長が、政府の社会保障有識者会議に示した。高齢者医療について医師会は75歳以上の人を対象に、医療費の9割を公費で賄うという独立医療保険制度の創設を提言している。
 
高齢者医療制度改革の論点
診療報酬
 1つ1つの診療行為ごとに報酬を加算する「出来高払い」から「定額払い」への移行
現役世代から支援の仕組み
 健康保険組合など現役世代が加入する医療保険が拠出金を支払い、高齢者医療費を賄う現行制度の見直し
制度運営者
 高齢者が主に市町村の国民健康保険に加入している制度の見直し
自己負担
 若年世代より医療費がかかる高齢者の保険料負担、患者負担のあり方
2025年度の厚生年金 保険料0.2ポイント上昇

2000/ 9/ 4 日本経済新聞朝刊

  基礎年金 前倒し受給増額で
 すべての国民に共通する基礎年金(国民年金)を通常より前倒しして受け取る場合に、厚生省が年金受給額を従来より増額するのに伴い、2025年度時点の厚生年金の保険料は0.2ポイント上昇し、国民年金の保険料も400円増えることが同省の推計でわかった。減額幅の縮小で受給時の年金が増えるため、保険料に跳ね返る結果となった。同省は3月に成立した年金改革法をもとに将来の保険料をすでに計算していたが、前倒し受給の減額率は4月に決めたので、計算し直した。
 3月成立の年金改革法をもとにした保険料計算によると、現在はサラリーマンの月収の17.35%(これを労使で折半)である厚生年金の保険料率は、2025年度に27.6%に上昇する。前倒し受給の減額率見直しを踏まえて計算すると27.8%となる。
 現在、月13,300円の国民年金保険法は従来計算では、2020年度に24,800円に達するが、減額率見直しによる再計算で25,200円となる見通しだ。いずれも、基礎年金に占める国庫負担の割合が現行と同様3分の1のままと仮定した場合で、国庫負担が増えれば保険料(率)はこれより低くなる。
 繰り上げ減額率は65歳からの受給を5年前倒しで60歳から受け取った場合で従来42%だったが、今回の見直しで30%に縮小した。2001年度以降に60歳に達する人から適用する。

【Add 2000. 9. 2】

  雇用保険 パートなど加入促進

2000/ 9/ 2 日本経済新聞朝刊

  収入基準を撤廃 「1年以上、週20時間」に 中職審決定
 労相の諮問機関、中央職業安定審議会(会長・西川秀作秀明大学教授)は1日、雇用保険にパート労働者や派遣社員の加入を促進するための基準を決めた。年収90万円以上という加入制限を撤廃し、1年以上にわたり週20時間以上働くすべてのパートと派遣社員が加入するよう雇用者に義務づける。正社員以外の働き手の急増を背景に、派遣社員などが失業した場合の安全網を拡充するのが狙いだ。労働者は来年1月をめどに省令にまとめ、4月から実施する。
 同審議会はまた、失業手当をどういう場合に上乗せ支給するかを定めた14項目の基準も決めた。
 雇用保険の対象拡大では、派遣社員の加入条件も明確にした。派遣先企業が変わっても、同一の派遣会社と1年以上の雇用契約を結ぶ見込みがあれば保険の対象とする。派遣会社に登録して、仕事がある時だけ働く登録型の派遣社員の場合、派遣先企業で1年以上働く見込みがなければ対象ではないと誤解され、雇用保険に加入しないことがあるためだ。
 労働者は対象拡大で、パートの加入対象者は現在の130万人から200万人に増えると試算。東京商工会議所は「保険料の負担増を避けるために、パートの労働時間を週20時間以内に抑える企業も出てくる」とみている。派遣社員は一般にパートより時間給が高いため、週20時間以上働けば年収90万円以上となることが多く、現行の20万人程度から大きく増えないとみている。
 正社員の場合、6ヶ月以上にわたって月14日以上就業することが失業手当を受ける要件になっている。一方、パートなどは1年以上にわたり月に最低11日働いていないと、職を失ったときに手当を受け取ることができない。このため雇用保険への加入対象を広げても、パートや派遣社員が失業手当を目的に安易に離職することは防げると労働省はみている。
 2001年4月からは、失業手当の支給日数に離職の理由によって差をつけることを決めているが、どのような場合に支給日数を上乗せするかという14項目の基準も定めている。どのような場合に支給日数を上乗せするかという14項目の基準も定めた。企業の経営破たんや解雇で離職した場合に加え、残業手当を除く賃金が従来の85%未満に下がって退職した場合も上乗せする。
 上司や同僚から故意の嫌がらせを受けて退職した場合も盛り込んだ。(1)特定の働き手に離職を強要したとみられるような配置転換、給与体系の変更があった--(2)性的な嫌がらせを受けた--などがこれにあたる。
 雇用保険の保険料はサラリーマンの月収の1.15%で、本人が賃金の0.4%、雇っている企業が0.75%を負担している。このうち0.8%分と国庫負担が失業手当などの財源になる。雇用情勢の悪化から失業手当の受給者が増え、同給付の赤字は1999年度に1兆円を超え、2000年度は1兆4000億円以上の赤字が見込まれている。
 来年4月施行の改正雇用保険法では、保険料率をサラリーマン0.6%、企業0.95%に高めるとともに、国庫負担を増やして失業手当の給付日数を原則として減らす。同省は今回の見直しで年間収入が7000億-8000億円増える一方、支出が5000億円程度減り収支均衡すると見込んでいる。
 
失業手当、こういう場合に上乗せ
・経営破たんや事務所の廃止・縮小
・事務所移転で通勤時間が往復4時間以上に
・採用条件と実際の労働条件が異なる場合
・2ヶ月連続で賃金の3分の1以上が不払い
・残業手当を除く賃金が従来の85%未満に
・特定職種で採用されたが、別の職務となり賃金が低下した場合
・10年以上同じ職務でありながら、十分な職業訓練をせずに違う職種に配転
・上司、同僚から故意の嫌がらせを受けた場合
・希望退職に応じた場合(離職前1年以内に導入され募集期間が3ヶ月以内に限る)
「家事援助は欠かせぬサービス」

2000/ 9/ 2 日本経済新聞朝刊

  介護保険給付見直し 自治体から慎重論 厚相と意見交換
 津島雄二厚相は1日、介護保険制度の運営主体である自治体の担当者を厚生省に呼び、介護サービスの柱の1つである訪問介護の実態などを巡って意見交換した。自民、公明、保守の与党3党内ではお年寄りの日常生活を手助けする「家事援助」への保険からの給付を制限するよう求める声があがっているが、自治体側からは「家事援助は独り暮らしのお年寄りらにとって欠くことのできないサービスだ」などと見直しに慎重な意見が相次いだ。
 意見交換には自治体担当者のほかサービス事業会社の経営者らも出席。厚生省によると家事援助の給付の是非について「現場の判断に任せて欲しい」との声が大勢を占めた。厚相は「現場の声には説得力がある」と述べたという。
 家事援助を巡っては要介護高齢者の掃除や洗濯など本来の身の回りの世話にとどまらず、給付対象に該当しないと考えられるペットの世話などを求める声が多発。こうした実情を踏まえ、与党内では「家事援助を保険から支給するのは介護保険の概念にそぐわない」として10月の保険料半額徴収開始を前に制度見直しの焦点に浮上している。
 意見交換の中では「家事援助がないと、高齢者は施設介護に回らざるを得ない」との指摘が出たほか、「家事援助でなく『基本生活支援サービス』と名称変更をしたらどうか」などの意見も出た。
要介護認定 2次判定で変更2割

2000/ 9/ 1 日本経済新聞朝刊

  厚生省調査 「痴ほう」で多い事例
 厚生省は31日、介護保険制度でどの程度の介護サービスが必要かを判定する仕組みについて、1次判定結果が2次判定で変更になった事例集を作成し、全国の市町村に配布した。コンピューターによる1次判定は、痴ほうの症状がある高齢者に対して、介護が必要な度合いが低く出る傾向があるなどの問題が指摘されており、専門家などで審査する2次判定の重要性が増している。ただ2次判定については明確な基準がないため、これまで変更があった事例を全国から集め、市町村に情報提供して、各自治体での2次判定の参考にしてもらうことにした。

市町村に情報提供
 介護保険で介護サービスの提供を受けるにはまず、市町村の訪問調査員による調査を受けなければならない。調査員は「自力で歩けるかどうか」など85項目を調べ、この結果をコンピューターにかける。すると介護の必要がない「自立」から最も重い「要介護5」まで7段階の認定結果が出る。この段階が1次判定だ。
 次に医療や福祉の専門家で構成する審査会が、1次判定結果と主治医の意見書、調査員の特記事項などを総合的に勘案して2次判定結果を出すという仕組みになっている。
 これまでに全国で実施された要介護認定の約20%が2次判定で1次判定結果を変更している。厚生省は3-5月に全国から約300の変更事例を収集、このうちの40例を無作為に抜き出して変更事例集として整理した。40例のうち7例は2次判定で要介護度が下がった事例も紹介している。また、痴ほうのケースは40例のうちの26例を占める。
 事例を見ると、日常生活ではほぼ介護が必要のない状態だが、「金銭の管理に対し思いこみや妄想が見られ、近隣住民とトラブルを起こしている。独り暮らしのために定期的な訪問が必要ではないか」という主治医の意見などをもとに、2次判定で総合的に判断して要介護度が1段階上がった例を紹介。同省も「コンピューターだけではとらえきれないものもある」と指摘している。
国民年金の国庫負担上げなら 生涯保険料500万円減

2000/ 9/ 1 日本経済新聞朝刊

  自営業世帯標準ケース
 厚生省は31日、国民年金の国庫負担率を3分の2から2分の1に引き上げた場合の自営業世帯の保険料負担の試算を示した。1999年度に20歳以下の人で将来は自営業になる標準的な夫婦2人の保険料は、合わせて約500万円減るという。租税負担がどの程度上がるかは明らかにしていない。
 試算は与党の有志議員で構成する「社会保障に関する検討会」に提示した。99年度に20歳の男性会社員が28歳で2歳年下の女性と結婚、32歳で自営業に転じ、女性は結婚退社として専業主婦となった場合を想定した。夫婦ともに65歳から年金を受け取ると生涯の受取総額は夫婦で約2900万円。2人が払う保険料総額は国庫負担割合が3分の1の場合は約2500万円。2004年までに国庫割合が2分の1に高まれば約2000万円になる。
 99年度に生まれた男性を同じ生涯設計で試算すると、生涯に2900万円の年金を受け取るために支払う保険料は国庫負担率3分の1の場合で2800万円と受取額とほぼ同水準。国庫割合が2分の1に高まれば保険料負担は2300万円に軽減される。

標準的な夫婦2人世帯の公的年金の負担と給付
 

保険料総額

年金受取総額

国庫1/3

国庫1/2

(1) 1999年度に20歳の会社員男性

2500万円

2000万円

2900万円

28歳の時に2歳年下の会社員女性と結婚。妻は結婚退社。男性は32歳で自営業に転じる。
(2) 99年度に0歳の男性で(1)と同じライフスタイル

2300万円

2300万円

2900万円

(3) 1999年度に20歳の会社員男性

3000万円

2800万円

4900万円

28歳の時に2歳年下の会社員女性と結婚。妻は結婚退社。男性は定年まで会社員を続ける。
(4) 99年度に0歳の男性で(3)と同じライフスタイル

3300万円

3100万円

4900万円


(注)保険料負担は社会保険料控除を考慮した実質負担。会社員の厚生年金保険料は本人負担分のみ。65歳時点の平均余命を基準に計算
失業給付赤字、1兆円超 昨年度 雇用情勢の悪化映す

2000/ 8/31 日本経済新聞朝刊

   失業手当の財源となる「失業等給付」の1999年度の赤字が初めて1兆円を超えたことが明らかになった。雇用情勢の悪化から、保険料収入の減少、失業手当の受給者増による支出増が影響した。同給付は94年度から赤字が続いている。2000年度も1兆4000億円以上の赤字が見込まれており、かつて4兆円以上あった積立金は、2000年度末には4000億円程度にまで減る見通しだ。
 失業等給付は失業手当のほか、育児休業給付、介護休業給付などに充当され、雇用保険の保険料の一部と国庫負担金が財源となる。99年度の雇用保険の被保険者は前年度比0.8%減り、失業手当の受給者は1.5%増えた。この結果、収入は0.5%減の1兆7317億円で、支出は2.9%増の2兆7806億円となり、赤字は1兆489億円となった。赤字幅は98年度に比べて868億円増えた。
 2001年4月に施行の改正雇用保険法で、雇用保険の保険料引き上げ、失業手当の原則削減が決まっており、2001年度には収入、支出とも2兆5000億円前後と均衡する見通し。
年金積立金検討会 140兆円運用へ知恵拝借

2000/ 8/30 日本経済新聞朝刊

  日銀・大蔵省のOBらを起用
 厚生省は公的年金積立金について、2001年4月から国の資金運用部を通さずに同省が自主運用するのに備え、運用方針を作るための検討会を9月上旬に発足させる。約140兆円に及ぶ巨額資金の運用となることもあって、委員には奥田碩日経連会長、鷲尾悦也連合会長をはじめ日本銀行の幹部出身ら経済界の有力者をそろえるなど経済官庁の審議会並みの布陣を敷く。座長は若杉敬明東京大学教授が就く予定だ。
 公的年金の積立金は現在、全額を資金運用部に預けて運用している。この一部を年金福祉事業団が借り入れて、資産を増やすべく、さまざまな金融商品に投資しているが、運用収益よりも借入金利が高い期間が続き資産を減らす状態にもなっていた。
 この反省も踏まえ来年度から厚生省が直接運用するが、同省にとって金融は専門外の分野だ。
 そこで、運用に際して株や債券にどの程度を投資するのか、ほかの投資対象は何が適当かなど、基本的な方針を検討会に議論してもらうことにした。年内をめどに結果をまとめる。
 委員には労使代表のほか、元日銀副総裁の福井俊彦富士通総研経済研究所理事長、元大蔵相財務官の内海孚慶応大学客員教授、元経済企画庁調整局長の吉富勝アジア開発銀行研究所長、杉田亮毅日本経済新聞社副社長らが確定した。
厚年基金 運用利回り最高13%

2000/ 8/29 日本経済新聞朝刊

  99年度 株高、積み立て不足解消
 厚生年金基金連合会は28日、代表的な企業年金である厚生年金基金の1999年度資産運用実態をまとめた。株価の上昇が寄与し、1830基金の時価ベースの運用利回りは平均13.09%と前年度の2.56%から大幅に改善。統計を取り始めた87年度以降最高となった。利回り改善で年金制度上の積み立て不足は解消したと推計される。ただ、企業会計上の積み立て不足が残っていることなどから、基調としては厳しい運営が続きそうだ。
 調査対象基金の平均資産構成は、国内株の割合が最も高く36.5%。次いで国内債券の21.5%。国内株の構成比は前年度比に比べ8.2ポイント増加。これに対し生命保険会社の一般勘定が占める比率は保証利回りの低下を背景に6.6ポイント減の11.1%となった。
 99年度は国内の株価が大幅に上昇、基金の高利回りにつながった。外国債券などは円高の影響で低迷した。運用期間の利回りを見ると、信託銀行12.80%、投資顧問14.21%、生保の一般勘定2.50%、第一特約14.45%などだった。
 基金の平均的な予定利率を5.5%とすると、99年度はこれを超える利回りがあったため、全体で約4兆円の差益が発生したと見られる。厚生省によると98年度末の基金の積み立て不足は約1兆円で、99年度末にはこの不足を穴埋めできた模様。しかし、「楽観はできない」(同連合会)状態だ。
SOHO仲介業者データベース化 労働省方針、ネットで公開

2000/ 8/29 日本経済新聞朝刊

  受注活動を支援
 労働省はインターネットなどを使い自宅や小規模な事業所で個人が事業をするSOHO(スモールオフィス・ホームオフィス)が仕事を見つけやすくするため、SOHOに仕事を紹介する仲介業者をデータベース化し、ネット上で公開する方針を決めた。同省はSOHOとして働く人が約60万人にのぼると推計、今後の有力な就業形態と見て活動を支援することにした。来年度予算の概算要求に3300万円を要求する。
 データベースでは仲介業者に登録してもらい、SOHOが自分の求める仕事の職種、報酬などを入力すると、条件に合う仕事を紹介できる仲介業者を検索できるようにする。さらに仲介業者のホームページにもリンクできるようにし、ネット上で仲介業者と連絡が取れるようにする。
 企業がSOHOに仕事を外注する場合、仲介業者に依頼、仲介業者がSOHOに発注することが多い。SOHOが希望する仕事を得るためには、希望にあった仕事を仲介できる業者を見つける必要がある。同省によると仲介業者は380以上あるが、SOHOが仲介業者を見つける場合、知人からの紹介などによることが多く、効率的に仲介業者の情報を収集できる仕組みが課題となっていた。

【Add 2000. 8.26】

  国民年金保険料の未納対策 強硬策、政府内にも波紋

2000/ 8/26 日本経済新聞朝刊

  「まず制度安定」の声
 国民年金保険料を納めなければ、民間保険会社の個人年金保険料控除を認めないようにするとした厚生省の来年度税制改正要望が波紋を広げている。国民年金の未加入者、保険料未納者が急増、国民年金制度が揺らいでいることに対応した措置だが、年金制度の見直しが先決だとの声がある。政府内にも年金制度の問題を税制で解決しようとするのは筋違いという指摘があり、来年度税制改正の焦点の一つになりそうだ。
 国民(基礎)年金は全国民共通の年金制度。自営業者や学生などが役所の窓口で毎月13,300円の保険料を納めると、40年加入した場合で月約67,000円の年金を受け取ることができる。自営業者など約2000万人が加入している。サラリーマンの場合は、毎月給与から天引きされる厚生年金保険料の中に国民年金部分の保険料も含まれている。
 今回厚生省が打ち出した対策の対象者は、自営業者などで国民年金の保険料を納めていないにもかかわらず、民間保険会社の個人年金保険に加入している人。個人年金保険料を払うと、所得税の場合で月50,000円まで、住民税の場合で月35,000円まで所得から控除できる税制優遇措置が認められているが、これを認めないようにするとの案だ。
 厚生省によると、対象者はおよそ50万人。国民年金の未加入・保険料未納者は約270万人いるとみられ、その2割に相当する。
 国民年金保険料を払わない人は年々増加している。1998年度社会保険事業概況によると、保険料の未納率は23.4%と前年度比で3ポイント上昇、過去最悪を記録した。
 公的年金制度は高齢者の年金財源を現役世代の保険料で賄う方式なので、保険料を払う人が少なくなればなるほど財政が悪化する。
 厚生省は「国民で助け合う制度に参加せず、個人年金に加入するのはおかしい」として今回の税制優遇見直しを打ち出した。
 ただ、「払った保険料に見合う年金がもらえるか不安」といった不信感から保険料を払わない人も多いとみられる。学識者からは「国民年金制度自体を将来に向けて安定した制度にすることこそが未加入・未納対策」という声が出ている。
 厚生省からの要望を検討することになる大蔵省でも「年金制度のほころびを税制で解消するのはおかしい」(主税局)との慎重論が出ている。税制優遇の見直しは個人年金保険の販売に打撃を与えることから、保険業界も猛反発している。
農業者年金削減9.8%で最終合意 政府・与党

2000/ 8/26 日本経済新聞朝刊

   政府・与党は25日、農業者年金制度の再建策で最終合意し、2001年度から年金の給付額を平均で9.8%削減することになった。
 30%削減の当初政府案が大幅に圧縮されたため、年金の支払い財源などに必要な追加的な国庫負担は約1000億円に上る。
 農水省は次の臨時国会に農業者年金基金の改正案を提出する予定だが、財政負担拡大の是非が問われそうだ。
確定拠出年金 1月導入は困難

2000/ 8/25 日本経済新聞朝刊

  厚生省判断 法案成立メド立たず
 厚生省は掛け金が一定で運用次第で年金額が変動する確定拠出年金(日本版401k)制度を来年1月から導入する当初計画の実施は困難との判断を示した。確定拠出年金法案を秋の臨時国会に提出する方針だが、成立時期の見通しが立たないことから、同法の1月施行は無理と見ている。できる限り早い時期の成立で、3月末までの施行を目指す方針に転換する。大幅にずれ込む恐れも出ており、1月導入を見込んで導入準備を進めていた金融機関などに影響が出そうだ。
 確定拠出年金制度は企業の従業員を対象とする「企業型」と自営業者らを対象とする「個人型」からなる。法案ではまず「企業型」を来年1月に導入、続いて3月に「個人型」を導入する計画だった。年度内施行方針に転換したことで、「企業型」の導入のメドが3月ごろとなり、「個人型」はそれよりも2、3箇月遅れることになりそうだ。
 厚生省は確定拠出型年金法案を先の通常国会に提出していたが、審議されないまま解散・総選挙になだれ込んだ為、廃案となっていた。同省は同じ法案を臨時国会に提出し直す。しかし、臨時国会では患者の医療費自己負担増などを盛り込んだ健康保険法改正案が先に審議される可能性が強く、確定拠出型年金法案の成立めどが立たない。

【Add 2000. 8.24】

  若年の就職支援強化 フリーターに相談窓口

2000/ 8/24 日本経済新聞朝刊

  労働省来年度から IT訓練を拡充
 労働省は学校を卒業しても定職に就かなかったり、就職できずにいる若年層向けの雇用対策に本格的に取り組む。定職に就かずにアルバイトなどで暮らす「フリーター」向けに、来年度から専用の就職相談窓口を東京、大阪など4カ所に設ける。高卒者約8000人を対象に情報技術(IT)の技能訓練を実施し、就職できなかった新卒者の職業訓練を強化する。大卒者の23%が卒業しても定職についておらず、15-24歳の完全失業率は9%台と高水準が続いている。このために若年層が円滑に就職できる支援体制を整備する。
 フリーター専用の相談窓口は東京都、大阪府、神奈川、兵庫県の公共職業安定所(ハローワーク)に設置する計画だ。2001年度予算の概算要求で、5億円を要求する。各相談窓口には12人程度を配置する。このうち数人はカウンセラーとし、正規社員になりたいと考えるフリーターを対象にきめ細かい職業相談に応じる。
 相談窓口では、簡単なパソコンなどの研修も実施する。アルバイトをしながらでも受けられるように、週2回程度の研修を2-3週間開く。本格的な職業訓練を希望する人に対しては、公共職業訓練機関を紹介する。
 IT関連の能力向上を希望する若年層向けの教育訓練も拡充する。高卒者約8000人を対象にしたIT訓練制度を創設、約2年間かけてシステム設計など実践的な能力を習得させる。訓練は有料とするが、民間の専門学校などよりは低料金とする計画だ。
 また大学や高校を卒業しても就職できない就職浪人に対する無料職業訓練を来年度も継続する。同訓練は職業安定所などに求職登録した高卒者3000人、大卒者3000人を対象に3-6箇月受けられる仕組みで、就職浪人が引き続き増加傾向にあるため継続することにした。
 入社後、数年で退職する若者が増えているため、若者の転職支援も強化する。同省は来年度、転職希望などに能力開発を助言する「キャリア形成支援コーナー」を全国に設置する方針で、同コーナーを活用して若年者の転職希望者、離職者の相談に集中的に応じる。
 2000年度版の労働白書によると、1997年時点でフリーターは151万人となり、5年間で50万人も増えた。このうち3分の2はいずれは定職に就きたいと考えているものの、正社員に円滑に移行できずにいるという。また99年春に、高校を卒業して進学もせず、就職もしなかった人は32%にのぼっている。
農業者年金 給付削減10%に圧縮

2000/ 8/24 日本経済新聞朝刊

  きょうにも農水省決定 国庫負担800億円増
 農水省は24日にも、専業農家が加入する農業者年金の再建策を決定する。年金給付額の削減幅を当初政府案の30%から平均10%に圧縮するのが柱。これに伴い年金財政を穴埋めする国庫負担額は現在より約800億円積み増しされる。農水省は給付削減に踏み切る見返りに「財政支援の拡大はやむを得ない」と見ている。ただ基礎年金に上乗せする「二階部分」の制度への支援は異例なだけに、ほかの年金制度加入者からは農家保護に対する批判が強まる可能性もある。
 政府・自民党と農業団体は23日、農業者年金制度の再建策を協議した。農家が給付削減幅を10%以内にとどめるよう強く求めたのを受け、農水省は「重く受け止める」(首脳)と前向きな姿勢を示した。同省は24日にも関係者と再協議のうえ、給付額の10%削減と賦課方式から積み立て方式への移行を骨格とする再建策を決める。
 給付額の削減率を10%にとどめると、年金の支払額を穴埋めするのに必要な国庫負担の上積み額は、30%削減した場合の約400億円から760億円に膨張する。農水省は加入者をつなぎ止めるため、保険料補助などの拡充も検討しているため、国庫負担の増加分は800億円前後に拡大する可能性が大きい。

【Add 2000. 8.23】

  農業者年金 給付を削減

2000/ 8/23 日本経済新聞朝刊

  8-14%、月内決着へ調整 政府・自民
 政府・自民党は2001年度予算の概算要求に向け、専業農家が加入する農業者年金の給付額を8-14%程度削減する方向で最終調整に入った。破たん状態の年金財政を立て直すための措置。ただ、農水省が昨年末に示した30%の給付削減案に比べると農家の負担が大幅に緩和される内容のうえ、700億-800億円の国庫負担積み増しも必要になる。このため、農家保護に対する批判が強まり、調整が難航する可能性もある。
 政府・自民党は23日午前に党本部で総合農政調査会を開き、同年金制度の改革案を協議する。
 約29万人が加入する農業者年金は、基礎の国民年金に上乗せして支給される「2階部分」の制度。農家の現象で収支が悪化した結果、慢性的な赤字に陥っている。現役世代1人が受給者2.5人を支える構造で、現役4人が1人を支える厚生年金に比べても厳しい財政状況に直面している。
 同年金の立て直しに向け農水省は昨年末、月額平均で2万円の給付額を平均で3割削減する原案を示した。しかし、農家が猛反発したため、決着が先送りされた経緯がある。
 最大の焦点となる給付額の削減幅については、昨年案の30%を8-14%程度に抑える方向で調整する。また、年金の給付の方法も、現役世代の負担が前提の賦課方式から、将来受け取る年金原資を自分で積み立てる方式に移行する方針だ。
 農水省は給付金削減率を抑えると年金財政を穴埋めする国庫負担の拡大が避けられないとしている。農業者年金にはすでに年間767億円の助成金がつぎ込まれている。削減幅が抑えられれば、最大で800億円程度の積み増しを迫られるという。
 農業関連の年金では農林漁協職員の農林共済年金も財政が悪化、厚生年金と統合する案が出ている。
 農水省は新たな農業者年金制度を2001年度から施行するため、今月中の決着を目指している。9月にも召集される臨時国会に農業者年金基金法の改正案を提出する方針だが、内容次第では臨時国会の争点に浮上する可能性もある。

【Add 2000. 8.22】

  日本の雇用慣行 もう古い

2000/ 8/22 日本経済新聞朝刊

  大企業の社員 肯定派 終身雇用22% 年功賃金7%
 大企業の社員で、日本的雇用慣行とされる年功序列の賃金制度をこれからも維持すべきだと考えている人は約7%で、終身雇用制維持派も約22%と、いずれも少数にとどまっていることが21日、労働省の調査で分かった。同省は「大企業は日本的雇用慣行の見直しを進めているが、社員もそれを受け入れていることが分かった」としている。
 調査は昨年11月と12月、従業員1000人以上の大企業577社の社員約7800人に実施。3365人から回答を得た。
 それによると、年功賃金を維持すべきだと答えた人は7.3%。「部分的な修正はやむを得ない」が49.4%、「基本的な見直しが必要」が35.6%。
 終身雇用制について維持派は21.6%。「部分的な修正はやむを得ない」が56.4%、「基本的な見直しが必要」が18.5%だった。今後の賃金制度の在り方についても「自分の業績が悪ければ降格、降給もやむを得ない」が76.6%、「同期の社員でも業績次第で年収格差があっていい」が74.0%で、4人に3人が賃金格差に理解を示した。

【Add 2000. 8.21】

  新型企業年金 一時金支給も可能に

2000/ 8/21 日本経済新聞朝刊

  4省原案 税制優遇「厚年」並み
 厚生、労働、大蔵、通産の4省が検討しているサラリーマンを対象とした新しい企業年金制度の原案が明らかになった。現行の厚生年金基金より給付方法などの規制を緩め、終身年金だけでなく退職時の一時金や期間の決まった有期年金での支給も認めるのが柱。税制上は厚年基金に準じた優遇措置を設ける方向で調整する。サラリーマンの老後の所得保障の選択肢を広げるとともに、企業が年金制度を廃止する動きに歯止めをかけ企業年金財政の健全化をめざす。4省は2001年度中にも新型企業年金の導入を目指す。
 4省は企業年金制度を再編する。現在、規制が多いかわりに優遇税制の手厚い厚年基金と、規制は少ないが優遇税制の薄い税制適格退職年金の2種類の年金があるが、これを厚年基金と新型基金に改編する。現行の適格年金は新型年金への移行を促し、5-7年後に廃止する方向だ。
 新型年金は給付水準や方法、受給資格などの規制は厚年基金より緩め、現在の適格年金並みに自由にする。例えば厚年基金は原則年金での支給で、その一定割合は終身年金にしなくてはならないが、新型年金は労使が合意すれば退職時に一時金で支給することや全額を有期年金で支給することもできる。厚年基金には公的年金である厚生年金の一部を国に代わって給付する給付代行義務があるが、新型年金は代行給付制度をなくす。
 税制面は年金運用資産にかかる特別法人税(税率1%、来年4月まで2年間は一時凍結中)の非課税枠を厚年基金並みにして適格年金より拡大する方向で検討する。厚年基金では1800強の基金のうち年金資産が非課税枠を超え課税対象になるのは60前後にとどまり、大半は課税されない。
 新型年金は税制上の優遇措置を適格年金より厚くするのに伴い、加入者が将来年金を受け取る権利である受給権保護の仕組みは厚年基金並みに整えることを義務付ける。具体的には、年金資産の積み立て不足を防ぐため財政を点検する仕組みを厚年基金並みに整えるよう求める。サラリーマンが確実に年金を受け取れるようにするのが狙い。
 厚年基金は形としてはそのまま残る。ただ、企業は代行給付分の運用益を確保できなければ財政が一段と悪化し解散に追い込まれる場合もある。このため、代行給付をやめたい厚年基金が新型年金に移行することも認める。
 現在ある適格年金は5-7年の経過期間中は存続を認めるが、経過期間後は財政を点検する仕組みを整え新型年金に移行するように促す。

【Add 2000. 8.19】

  平均寿命ともに縮まる 昨年 男77.10歳 女83.99歳

2000/ 8/19 日本経済新聞朝刊

  インフルエンザ流行影響 男女格差は最大に
 日本人の平均寿命は、男性が77.10歳、女性が83.99歳で、ともに前年を下回ったことが18日、厚生省がまとめた1999年の簡易生命表で分かった。同年1-3月にインフルエンザが流行したことに伴い、肺炎で死亡した人が前年より約14,000人増えたことが主な要因という。同省は「男女とも長寿世界一は保っている」とみている。平均寿命の差は過去最大の6.89歳に広がった。
 簡易生命表は、同省の人口動態統計(概数)などをもとに、死亡状況が将来も変わらないと仮定して、年齢別にあと何年生きられるかを示す平均余命を算出したもの。零歳児の平均余命が平均寿命にあたる。
 平均寿命は男性が前年を0.06歳、女性が0.02歳下回った。男性の平均寿命が縮まるのは2年連続で、男女ともに縮まったのは阪神大震災があった95年以来になる。同省では、日本人の平均寿命の上昇傾向は変わっていないとしている。99年生まれで80歳まで生きると予想される人の割合は男性が50.6%、女性が73.1%。
在宅介護 ヘルパーに実習

2000/ 8/19 日本経済新聞朝刊

  労働省方針 受け入れ事業者に助成
 労働省は在宅の高齢者を訪問して介護するホームヘルパーの質を向上させるため、介護事業者が経験の浅い人材を雇ってプロのヘルパーに育成する実習制度を2001年度から導入する方針だ。国は実習生を受け入れた事業者に、6箇月を上限に1人当たり月5万円程度の助成金を支給する。厚生省のヘルパ−養成研修では必ずしも十分な実習を受け入れないという問題があり、実務経験が不足したまま仕事を始めて利用者の苦情を受けるヘルパーが目立つため。事業者にとっても、実習を受けたヘルパーを即戦力として活用できる利点がある。
 労働省は数千人規模の実習生を確保したい考えで、10月に大蔵省へ提出する来年度予算の日本新生特別枠の要求案に助成費を盛り込む。来年1月に統合する厚生省との連携事業にすることも検討している。
 助成の対象となるのは、実習生を受け入れた特別養護老人ホームなどの介護施設や在宅サービスの提供事業者。介護の実務を体験してもらい、介護の技能を高める。
 実習生は厚生省が所管するホームヘルパーの養成研修で、中級の2級課程を修了した人に限定する。ヘルパー養成研修の2級課程の修了者は全国で約24万人にのぼる。
 ヘルパー養成研修に2級課程は、合計で130時間の研修のうち30時間を実習に充てることが原則になっている。実習の内容は特別養護老人ホームなどでの介護実習のほか、日帰り介護施設などの見学、高齢者宅への経験豊富なヘルパーとの動向訪問だ。
 しかし厚生省はヘルパーの人材確保を急ぐため、昨年9月に規制を改正し、実習の半分を教室内の模擬実習に代えることを可能にした。
 このため実際の介護をほとんど経験しないまま研修を修了し、仕事に就くヘルパーは少なくない。
企業年金の解散加速

2000/ 8/18 日本経済新聞朝刊

  昨年度最大の4.1% 老後保障細る 倒産増加や運用難響く
 企業年金(厚生年金基金と税制適格退職年金)を解散する動きが加速している。1999年度に解散した企業年金は3,603件。前年度比4.1%減と過去最大の減少幅になった。年金積立金の運用悪化や企業倒産の増加などが主因だが、企業が給与体系を実績連動型に移行するのに合わせて長期勤続者に有利な企業年金を廃止する動きも出ている。企業年金がなくなると、サラリーマンの老後の所得保障が手薄になる。運用次第で年金額が変わる確定拠出年金(日本版401k)など新しい年金制度導入が課題になりそうだ。
 企業年金は主に企業が毎月の掛け金を積み立て、加入者の社員は退職後にサラリーマンの公的年金である厚生年金に上乗せして受け取る仕組み。福利厚生の一環で導入する企業が増えていたが、94年度以降減少に転じた。
 倒産や合併に伴う解散のほか、企業が自主解散するケースも増えている。厚年基金は99年度に22件減って1835件。適格年金も3581件減少して81466件になった。今年度に入ってからも7月末までに、太平工業など5件の厚年基金が解散している。
 解散が急増している背景には、低金利の長期化で将来の年金給付に備える積立金の運用収益が予定を下回り、企業が積み立て不足を穴埋めする負担に耐えられなくなったことがある。また企業が長期勤続者ほど年金額が多くなる企業年金を見直していることも解散に拍車をかけている。コナミが幹部社員を対象に適格年金を廃止して掛け金分を月給に上乗せする制度を切り替えたのをはじめ、実績連動型の給与体系を導入した大和証券も適格年金を廃止した。
 企業が企業年金を廃止すると、加入者は原則として勤続年数に応じた一時金しか受け取れず、老後の上乗せ年金はなくなる。年金なら65歳の夫婦2人で年間約334万円まで公的年金等控除などで課税されないが、企業年金の解散で受け取る一時金は一時所得として課税される。
 公的年金の厚生年金も3月に成立した年金改革法で段階的に給付を削減することが決まっている。サラリーマンは老後の所得保障で一段と自助努力を求められている。
介護必要な高齢者向け 入院ベッド20万突破

2000/ 8/17 日本経済新聞朝刊

  昨年度末 介護保険適用は半数
 企業が必要な高齢者向けの入院施設「療養型病床群」のベッド数が1999年度末で20万床を突破したことが厚生省の調査で明らかになった。前年度末に比べ65%、8万床以上の増加。高齢者の増加で一般病床からの転換が進んだ。ただ、このうち介護保険の適用を受けた病床数は約半分にとどまり、残りは従来通り医療保険の適用を受けている。
 厚生省は、健保組合などの医療保険財政悪化の主因となっている老人医療費の抑制に向けて、医療保険から介護保険への転換を誘導しているが、あまり進んでいない実態も浮き彫りになった。
 「療養型病床群」は一般病床よりも1人当たりのスペースを広くとり、介護しやすくした病棟などのこと。医師や看護婦の人数は一般病床より少ないが、介護職員を置く必要がある。病院は療養型病床群の中で健康保険などの医療保険の適用を受ける患者のベッドと介護保険適用の患者ベッドを分けている。
 2000年3月末時点での療養型病床群は2,797病院の213,140床だった。このうち介護保険の適用を受けたのは11万5000床。厚生省では介護保険適用として20万床近くが必要とみていたが、半数程度にとどまっている。
高齢者訪問指導は医療費抑制に効果 国保中央会調べ

2000/ 8/17 日本経済新聞朝刊

   保健婦が在宅の高齢者を訪問し、転倒の予防や適切な食事・運動を指導することで、高齢者の医療費を抑制できることが国民年健康保険中央会の調べで明らかになった。訪問指導前と訪問指導後を比較すると、1箇月当たりの医療費は約3%減少。病院への1箇月間の通院日数も、訪問指導前の2.93日から2.83日に低下した。
 調査の結果について国保中央会は「適切な訪問指導は高齢者医療費の適正化だけでなく、介護保険の安定的な運営にも大きく寄与する」と分析している。
 医療費抑制の効果が最も大きかったのは、痴ほう症の高齢者やその家族に対する相談だった。病状の説明が困難な痴ほう症の高齢者が必要以上に医療機関に通院したり、受診の遅れで病状が悪化するのを防ぐ効果がみられたという。
厚年基金積み立て不足穴埋め 企業、最高の1兆円超拠出

2000/ 8/15 日本経済新聞朝刊

  大手中心25%増 会計基準変更で処理急ぐ 昨年度
 厚生年金基金の積み立て不足を穴埋めするため年金の母体になっている企業が支払った掛け金は、1999年度に過去最高の1兆151億円に達したことが厚生省のまとめで明らかになった。厚年基金はバブル崩壊後の運用利回りの低下で、積立金が将来の年金給付に必要な水準を下回る状態になっている。2001年3月期からの会計基準変更で年金の積み立て不足も開示対象になるため、株価や格付けへの影響を懸念する企業が積み立て不足を前倒しで処理している。
 年金の積み立て不足解消を進めているのは財務面で余裕のある大企業が多い。富士通は99年度に217億円の掛け金を拠出。三井物産は107億円、旭化成工業は218億円、丸紅も79億円を基金に拠出した。積み立て不足の穴埋めのために99年度中に全国の約1800基金に支払われた掛け金は、98年度に比べて25%増えた。
 積み立て不足を穴埋めするために企業が支払う掛け金には、運用利回りの低迷によって発生が見込まれる不足金を事前に手当する「特例掛け金」と、すでに発生している不足金を事後に補てんする「特別掛け金」の2種類がある。99年度は特別掛け金が8060億円、特例掛け金は2091億円だった。
 企業は最長20年間かけて厚年基金の積み立て不足を処理することができる。こうした制度があるにもかかわらず積み立て不足の処理を急いでいるのは、2001年3月期からの退職給付会計の本格導入で企業年金の積み立て不足の開示が義務付けられるためだ。多額の積み立て不足を放置したままでは企業の格付けや株価に影響し、資金調達の足かせになりかねない。
 厚年基金の積み立て不足の解消には、掛け金の拠出のほかに母体企業が信託設定して保有株式を拠出する方法もある。99年度は富士通が掛け金の拠出に加えて株式の拠出も実施するなど、持ち合い株を多く抱える大企業を中心に株式の拠出も活発になっている。
 母体企業の掛け金拠出などにより、99年度末の厚年基金の積み立て不足は大幅に減少している模様だ。しかし、今後も運用利回りの低下によって積み立て不足が膨らむ懸念はある。
要介護認定精度改善狙い検討会 厚生省が発足

2000/ 8/15 日本経済新聞朝刊

   厚生省は介護保険で高齢者の介護の必要度合いを判定する「要介護認定」の精度を改善するため、医療や福祉の専門家で構成する検討会を発足させた。現行のシステムは、痴ほう症の高齢者の要介護度が実態よりも低く評価されるなどの問題点が指摘されている。厚生省は検討会の作業を踏まえ、早ければ2002年度にシステムの見直しを実施したい考えだ。要介護認定は高齢者の心身の状況調査に基づくコンピューター判定と、医療や福祉の専門家による2次判定の2段階で実施しているが、コンピューター判定は痴ほう症や在宅高齢者の要介護度を的確に把握できていないという問題がある。

【Add 2000. 8.13】

  長期休暇制度化に助成

2000/ 8/13 日本経済新聞朝刊

  2週間以上の中小企業向け 労働省、概算要求へ
 労働省はサラリーマンの長期休暇の取得を促すため、連続2週間以上の休暇を制度化した中小企業に対し、休暇を取った従業員の代替要員の人件費などを助成する方針を決めた。中小企業では従業員に長期休暇を取らせることが難しいため、支援する必要があると判断した。来年度予算の概算要求に盛り込む。
 助成の対象は従業員が300人以上で、就業規則に、土日を含めて14日以上の休暇を就業規則に盛り込んだ企業。従業員に長期休暇を取らせるために(1)ローテーションの見直しなどを専門家に相談をした費用(2)省力化投資(3)代替要員として雇った派遣社員の人件費--などの合計額の2分の1を労働保険特別会計から補助する。上限は500万円。
 同省は当初、長期無給休暇中の従業員の社会保険料負担を企業が肩代わりした場合、その費用の一部を助成することも検討していた。しかし費用が膨大になるため、助成の対象からははずすことにした。
 労相の私的懇談会である「長期休暇制度と家庭生活の在り方に関する国民会議」は7月、労働者が連続2週間程度の休暇が取れるようにすることを提言する報告書をまとめた。報告は我が国の年間労働時間がドイツやフランスと比べ、300-450時間程度長く、年次有給休暇の消化も半分程度にとどまっていることを指摘。長期休暇の取得は、余暇の増加による消費の拡大、省力化投資など経済的な効果も見込めると強調している。

【Add 2000. 8.12】

  介護保険料の納付 健保の4割猶予申請

2000/ 8/11 日本経済新聞朝刊

  来年度分に上乗せ 健保法改正 廃案
 介護保険料の納付猶予を厚生省に申請した健保組合が670組合と全健保組合の4割弱に達したことが10日、明らかになった。改正健保法案の廃案により保険料率の上限枠が改定されず、上限に触れる恐れのある健保組合が7月から予定していた介護保険料を徴収できなくなったためだ。厚生省は法案が成立するまでの間、介護保険料の納入期限を1年間延期することを認める。猶予を受けた健保組合は当面の負担増を回避できるが、その分だけ来年度の保険料に上乗せされることになり、企業や従業員の負担感が募る一因になりそうだ。
 主に大企業が従業員のために設立した全国1780の健保組合のうち、改正健保法案の廃案により必要な介護保険料を徴収できなくなった健保組合は746。このうち9割が7月分から納付猶予を申請した。猶予分の保険料は1年後に本来の保険料に上乗せして労使から徴収し、国に支払う。残る1割の組合は猶予を求めず、積立金などを取り崩して保険料の支払いに充てる。
 現行の健保法では健保組合は月収の9.5%の法定上限を超えて保険料を徴収できない。今年4月から始まった介護保険で40-64歳のサラリーマンの介護保険料は医療保険料(健康保険料)に上乗せして徴収することになっているが、全体の42%の健保組合では介護保険料を上乗せすると法定上限を超えてしまう状態だ。
 このため、政府は健保法を改正して法定上限を医療保険料のみに適用し、介護保険料は別枠で徴収できるようにする新制度を7月から導入する予定だった。しかし、改正健保法案には高齢者や現役世代の医療費自己負担を引き上げる内容が含まれていたことから、与党は総選挙前の成立を見送っていた。
 今回の措置による猶予総額は毎月50億円程度になる見通し。猶予分は社会保険診療報酬支払基金が借り入れで市町村に立て替えて支払い、借入金利は国費で補てんする。
 厚生省は今秋の臨時国会に同法案を改めて提出し、早期の成立を目指す。
未消化の失業手当3分の1を支給

2000/ 8/10 日本経済新聞朝刊

  労働省、早期再就職を促す
 労働省は失業者の早期再就職を促すため、失業手当の支給期間内に再就職した労働者に、同手当の使い残し分の3分の1を支給する方針を決めた。9日開いた中央職業安定審議会(労相の諮問機関)に原案を提示した。派遣労働者、パートとも1年以上にわたり週20時間以上働くことが見込まれれば、雇用保険の適用を対象とする。来春をめどにまとめる厚生労働省令に盛り込む考えだ。
 失業者に早期再就職を促すための「再就職手当」については、現在、失業手当を使い残した期間によって支給額が原則3段階に分けられている。そのため期間いっぱいまで失業手当を受け取ろうとする失業者もおり、再就職を遅らせているとの批判もあった。そこで、来春からは使い残した失業手当の3分の1を支給する方式に変える。
 原案では、雇用保険の適用対象となるパート、派遣労働者の基準も改めた。派遣については「月間労働日数が11日以上」という基準を撤廃したうえで、派遣会社に1年以上雇用される見込みの労働者を対象とする。また派遣、パートとも「年収90万円以上」という適用基準を撤廃する。
裁量労働制採用相次ぐ 企画など職種拡大で

2000/ 8/10 日本経済新聞朝刊

   勤務時間や仕事の進め方を企業が管理せず、社員が自分で決める「裁量労働制」を企画部門に採用する企業が相次いでいる。労働省のまとめによると、4月に対象職種が企画部門などに拡大されてから6月までの3カ月間で、68事業所が導入した。ホワイトカラーの生産性を高めるために、働き方の裁量を与えるのが狙いで、サラリーマンの働き方も変わりそうだ。
 同制度は企業がタイムカードなどで勤務時間を管理するのではなく、社員が自分で働く時間を決める制度。フレックスタイムと違い、超過勤務手当は出ない。これまでは研究開発や弁護士など専門性の高い11職種に限られていたが、4月から企画、立案、調査、分析部門にも導入できるようになった。
増える離職者、623万人に

2000/ 8/ 9 日本経済新聞朝刊

  3年連続で就職上回る 昨年、労働省調査
 労働省が8日発表した1999年の雇用動向調査によると、昨年1年間に仕事を辞めた離職者は623万人となり、前年より30万人増えた。一方、仕事に就いた就職者は40万人増え583万人となったが、3年連続で離職者が就職者を上回った。
 常用労働者に占める離職者の割合は15.0%、就職者の割合は14.0%で、その差は1.0ポイントと、前年よりは0.3ポイント縮小している。ただ離職者のうちリストラなど「経営上の都合」で辞めた人の割合は11.1%と、64年の調査開始以来最高となり、雇用調整が厳しかったことを示した。
 就職者、離職者に占めるパートの割合はともに3割以上で、常用労働者に占めるパートの比率(17.4%)を大きく上回った。企業がパートの削減で合理化を進めているだけでなく、生産活動が拡大傾向に転じた場合にも、コストの低いパートの増加で対応しているためとみられる。
 調査は従業員5人以上の企業約14000社を対象に実施し、約11000社から回答を得た。その結果から、昨年1年間の雇用動向を推計した。
離職理由、「会社都合」が11% 労働省調査

2000/ 8/ 9 朝日新聞朝刊

   労働省が8日発表した1999年の雇用動向調査速報によると、退職や解雇など何れかの理由で離職した人が常用労働者に占める割合(離職率)は15.0%で、前年(15.1%)をわずかながら下回ったものの、高止まり傾向がなお続いていることがわかった。希望退職の募集や解雇といった企業側の「経営上の都合」で辞めた人は11.1%にのぼり、64年の調査開始以来、過去最高を記録した。
 一方、常用労働者数に対して職に就いた人の割合を示す「入職率」は14.0%だった。3年連続で、離職が入職を上回ったが、離職超過幅はわずかながら改善した。新たに職に就いた人の賃金の変動をみると、前の勤め先に比べ「増えた」「変わらない」とした人の割合はそれぞれ30.1%と36.7%で、前年に比べやや低下。逆に、「減った」人は33.2%と3.8ポイント上昇した。
 調査は従業員5人以上の約11000の事業所から、入・離職した約176,000人の回答を得て集計した。
高齢者の試用雇用に月10万円

2000/ 8/ 9 朝日新聞朝刊

   労働省は8日、就職が難しい高齢者の雇用機会を増やすため、試用的に雇った企業に対して1人当たり月額10万円を助成する「トライアル雇用」を来年度から始める方針を明らかにした。助成期間は3ヶ月だが、同省はそのまま雇用が続くことを期待している。
 助成の対象者は60-64歳。高齢者の雇用が少ない業種や雇用が拡大するとみられる成長産業に絞ることを検討している。
 6月の有効求人倍率は0.51倍(季節調整前)だが、60-64歳は0.07倍に過ぎず、年代別では最も低い。企業が高齢者を食わず嫌いの格好で、事実上門前払いする傾向が強いためだ。同省は「職業能力が高く、経験も豊富な高齢者は少なくない。企業との出会いの場を多くするのがねらいだ」という。
退職金 年功加味せず 日立、成果重視へ改革

2000/ 8/ 8 日本経済新聞朝刊

   日立製作所は退職年金制度を抜本的に見直す。退職金額の算出方式を社員個人の成果や貢献度を重視したポイント制に切り替え、勤続年数など年功を換算しないのが特徴。労使間で大筋合意しており、9月21日から実施する。日立は現行の退職金制度を1960年代後半に確立しており、抜本改革はほぼ30年ぶり。賃金や人事制度で始まった年功序列体系の見直しが退職金にまで広がってきた格好で、企業の退職金制度改革を後押しする可能性が高い。
 新制度は日立の全社員約6万人が対象。具体的には、入社時から退職時までの累積ポイント数に一定の係数を掛けて退職金額を算出する。ポイントは総合職では9種類ある資格(等級)ごとに算出し、入社時から退職時まで累積するが、ポイントには勤続年数は一切反映しない。
 また、資格ごとのポイントには年2回の賞与の査定を反映し、ポイント数を増減させる。あらかじめ設定した目標に対する達成度などで格差をつける。理論的には、主任クラスの半年のポイント数で最大約3倍の差がつく。
 日立は現在、月額賃金の一項目で年功を反映している「基準基本能力給」の退職時の水準に、係数を掛け合わせて退職金額を算出。勤続年数が20年を超えると退職金が急増していた。新制度が勤続年数では金額が機械的には累増しないため、中途採用の拡大や社員の士気向上にもつながると期待している。
 日立の退職給付は退職金と加算年金相当分の合計で2000万円(技能職、勤続40年モデル)。退職金は退職給付の4割に相当する。
 総合電機では、東芝が10月に成果主義を反映したポイント制の新しい退職金制度を導入する。年功型の「基礎部分」に、資格ごとのポイントなどによる「上乗せ部分」を考慮した二階層で算出する方式。日立のように年功をポイントに加味しないのは珍しい。
厚生年金の支給年齢上げ 企業、雇用延長進まず

2000/ 8/ 8 日本経済新聞朝刊

  来春「61歳まで」24% 日本労働研究機構調査
 厚生年金の定額部分の支給開始年齢が来年4月から引き上げられるのに対応した、企業の雇用延長の動きが遅れている。日本労働研究機構が7日発表した調査によると、支給開始が61歳になる来年4月に、61歳まで雇用を延長する企業は検討中も含めて24.8%にとどまった。大手電機メーカーなどは労使で雇用延長の合意に達しているものの、全体では依然少数だ。2013年の65歳支給をにらんだ雇用延長の計画の遅れも際だっており、年金が一部受け取れないまま、働けない高齢者が相次ぐ恐れがある。
 調査によると、「来年4月時点で61歳まで雇用延長する」と答えた企業は14.8%、「実施する方向で検討している」が10.0%だった。一方、「実施する予定がない」というのは20.0%。また現時点になっても「未定」の企業が55.2%にのぼった。
 厚生年金の支給開始年齢は来年4月以降、3年ごとに1歳ずつ引き上げられる。「支給開始が62歳になる2004年に、同年齢まで雇用延長する」または「検討中」という企業は26.3%。来年4月時点よりは、支給開始年齢引き上げに対応する企業の割合が高まる見通しだ。これは鉄鋼、造船重機など来春には対応できない企業が数年以内の雇用延長を検討しているためとみられる。
 支給開始年齢が65歳になる2013年に65歳まで雇用延長を実施または検討中という企業は24.1%だった。
 雇用延長は今春闘でも大きなテーマとなった。松下電器産業、日立製作所、東芝など大手電機メーカーでは来年4月から61歳まで雇用を延長することで労使が合意している。東洋紡、東レなど大手繊維メーカーも来春の雇用延長が大筋決まっている。
 一方、新日本製鉄、川崎製鉄など大手鉄鋼メーカーや、三菱重工業、川崎重工業など大手造船重機では、2003年度を目標に、62歳までの雇用延長を検討している。
 雇用延長を実施または検討中の企業のうち、定年の年齢を引き上げる企業は5.0%に過ぎない。83.8%の企業は定年に達した者を一度退職させた後、再び雇用する再雇用制度などを導入する。再雇用などで対応する企業のうち、希望者全員を対象とする制度があるのは26.3%しかない。
 単純な定年延長とはせずに、雇用者の能力などに沿って柔軟に再雇用することで、若年層の雇用確保と両立させる企業の狙いを反映している。
 調査は6月末から7月にかけて、全国の上場・店頭公開企業3343社に対し、インターネットを使って実施、270社から回答を得た。
介護保険のサービス点検 160市区町村に相談員

2000/ 8/ 8 日本経済新聞朝刊

   厚生省は介護保険のサービスが適正に提供されているかチェックする介護相談員(介護オンブズマン)の派遣事業を、今秋から全国160の地区町村で実施する。
 介護相談員は市区町村に登録し、一定の研修を受けたボランティアなどが高齢者の自宅や介護施設を1-2週間に1回程度訪ねて高齢者から相談を受けたりサービスへの不満を聞いたりする。これをサービス事業者に伝えてサービスの質改善を促す役割を担っている。
 介護保険では市区町村や都道府県の国民健康保険団体連合会が苦情処理の窓口になっているが、これらはいずれも問題が生じてから対応する事後処理型。介護相談員は日ごろから高齢者の相談に乗ることで、トラブルを未然に防ぐ狙いがある。
 ただ介護相談員の派遣先は、市区町村に申し出があった事業者に限られる。
年金支給開始遅くなっても 雇用延長、4社に1社だけ

2000/ 8/ 8 朝日新聞朝刊

  労働省の外郭団体調査 20%「予定なし」
 年金の支給開始年齢の引き上げに応じて、60歳以降の雇用を延長する方針の企業は4社に1社にとどまるとの調査結果を労働省の外郭団体・日本労働研究機構が7日、発表した。6月末から約1ヶ月間、インターネットのホームページ上に調査票を設け、270社から回答を得た。
 厚生年金の定額部分の支給開始年齢は2001年4月から、現行の60歳が61歳に引き上げられる。これに伴って61歳まで雇用を継続し、収入の「空白」をなくすとした企業は14.8%で、「今後その方向で検討する」が10%だった。
 反対に、20%は「予定がない」と答えた。
 年金の支給開始年齢は3年ごとに1歳ずつ引き上げられ、2013年に65歳になる。この動きに沿って、雇用延長の年齢を引き上げていく見込みだとしている企業は、いずれの時点でも25%前後で、「予定がない」とする企業も約10%にのぼっている。

【Add 2000. 8. 6】

  全国に転職相談窓口

2000/ 8/ 6 日本経済新聞朝刊

  能力開発など助言 労働省方針 来春から300人配置
 労働省は2001年春から、転職を希望するサラリーマン向けに能力開発の具体策を助言する「キャリア形成支援コーナー」を47の全都道府県に新設する方針だ。民間企業の人事部門経験者を相談員として採用し、転職希望者の適性や能力を踏まえて今後どのような職業訓練を受け、どういった職務経験を積むべきかについて無料で相談に乗る。転職希望者の能力と企業が求めている人材像とのずれ(ミスマッチ)を解消するのが狙いだ。2001年度予算の概算要求に盛り込む。

【Add 2000. 8. 5】

  年金 安定受給へ再編 「適格」に財政検証制度 厚生など4省案

2000/ 8/ 5 日本経済新聞朝刊

   厚生、労働、大蔵、通産の4省は企業年金に加入しているサラリーマンが退職後に確実に年金を受け取れるように企業年金制度を再編する「企業年金法」(仮称)の素案をまとめた。保険財政の悪化で解散が多発している税制適格退職年金については、財政検証制度を取り入れ安易な解散に歯止めをかけることを盛り込んでいる。厚生年金基金が厚生年金の一部を国に代わって給付している代行制度では、厚生年金部分の積立金の不足を企業が負担しなくて済むように、代行部分を国に返上することを認める。4省は2001年の通常国会への法案提出をめざしている。

厚年基金 代行返上認める
 素案は厚生省がまとめた。4省はこの素案をもとに8月末に企業年金の再編に必要な税制改正要望もまとめる。
 現行の企業年金制度は、加入者が将来受け取る年金の額をあらかじめ決めておく確定給付型が中心。年金財政の監視制度が整備されている厚生年金基金と、制度設計の自由度は高いが財政検証の仕組みが弱く、年間3000-4000件の規模で解散が続いている税制適格退職年金に大別される。それぞれ約1200万人、1000万人のサラリーマンが加入している。適格年金、厚年基金はそれぞれ1962、66年に制度が始まり、日本の企業年金制度の核となってきた。今回の見直しは初の大型再編になる。
 企業年金法では両制度を再編し、財政検証にも統一ルールを適用する。どの制度に加入していても財政悪化を未然に防ぎ、老後の年金がある程度まで保証できるようにする。
 適格年金は1年に1回、財政状況を検証し、積み立て不足が一定規模以上になれば掛け金を引き上げて、積み立て不足を解消するように義務づけた新型の企業年金に移行を促す。素案では新型年金を「企業型企業年金」と呼んでいる。適格年金はこれ以上新設を認めないが、経過措置として存続も可能とする案があがっている。
 厚生年金基金は国に代わって厚生年金を支給する代行給付があるために、経済界では「運用利回りが低迷したときは、本来は国が負担すべき積み立て不足まで企業負担になっている」との批判が強く、代行部分の返上を求めていた。
 運用が好調なときは代行給付分の運用益を余分に稼ぐことが出来るという利点もあり、「いまさら代行部分を返上したいというのは身勝手」との意見もある。だが4省は企業年金にも様々な選択肢を用意するため、代行部分を国に返上し、基金独自の上乗せ給付部分だけからなる「基金型企業年金」と呼ぶ新型の企業年金を認める。
大卒就職率 最低の55% 今春、文部省調査

2000/ 8/ 5 日本経済新聞朝刊

  12万人が進路未定
 今春の4年生大学の卒業者の就職率は55.8%で、前年より4.3ポイント落ち込み、過去最低となったことが4日、文部省の学校基本調査(速報)で分かった。就職もせず、大学院への進学もしなかった人は22.5%と初めて2割を超え、不況による就職難の影響が改めて浮き彫りになった。
 調査によると、今春、全国の国公私立大学を卒業した53万9000人のうち就職したのは30万1000人。就職率は55.8%と、調査を始めた1950年以降、過去最低を記録した。大学院へ進学したのは約5万8000人。就職も進学もしない人は約12万1000人で、前年より1万5000人増えた。
 今春の短大の卒業者(約17万8000人)の就職率は56.0%で、前年より3.1ポイントダウン。就職や進学先が決まらないまま卒業したのは4万2000人で、前年を1.6ポイント上回った。
 文部省は、就職も進学もしないケースが増えていることについて「希望した職種につけないため、卒業後に改めて将来の進路を探そうという考え方が広がっているのでは」と話している。
厚生年金 「農林離脱、甘かった」

2000/ 8/ 4 日本経済新聞朝刊

  農水省 再統合理解求める
 「農林年金が厚生年金から分離離脱したのは見通しが甘かった」--。3日に開かれた政府の「公的年金制度の一元化に関する懇談会」で、農林漁協職員の農林年金を所管する農水省は1959年の厚生年金からの離脱は誤りだったとの認識を示した。農林年金は財政悪化を理由に厚生年金との再統合を求めている。農水省は誤りを認めることで、厚生年金側の反発を和らげたい考えのようだ。
 会議で農水省は、農林年金が厚生年金から離脱したのは市町村職員並みの充実した年金制度を構築することで、農協が人材を集めやすくするのが狙いだったと説明した。そのうえで「農協の職員が年金制度の将来について安心感を得られるようにするのが重要」と指摘し、2001年度を目標にしている統合に厚生年金側の理解を求めた。
積立金の不足 昨年度1880億円 厚年基金連合会

2000/ 8/ 3 日本経済新聞朝刊

   転職などで厚生年金基金を脱退したサラリーマンの年金資産を集めて運用している厚生年金基金連合会の積立金が、将来の年金給付に必要な額より1880億円不足していることが、連合会の1999年度決算で明らかになった。積立金の運用利回りが予定していた年5.5%を下回る状態が続いたためだ。2000年度に入ってからは株価が低迷しており、不足金が拡大するおそれもある。
 連合会が基金の脱退者に年金を支払うために99年度末時点で保有すべき積立金の額は4兆8177億円。実際の積立金は4兆6296億円だった。積立金の運用利回りが91年度に0.33%、94年度マイナス1.07%になるなど、予定を下回る時期があったためだ。
企業の56%初任給据え置き

2000/ 8/ 2 日本経済新聞朝刊

   日経連(奥田硯会長)が1日まとめた2000年3月新卒の初任給調査によると、前年の初任給を据え置いた企業数が56%で昨年(62%)に続き2年連続で半数を上回った。上昇率も大卒、高卒のいずれでも0.2%増と過去最低水準の伸びにとどまった。日経連では「経済情勢が不透明なうえ既存従業員のベースアップを見送った企業が多かったのが背景」(労政部)としている。
離職理由への異議来春から受け付け 失業手当上乗せで

2000/ 8/ 1 日本経済新聞朝刊

   労働省は来年4月から退職理由で失業手当の給付日数に差をつけることを受け、企業から提出される離職理由に対し、従業員が異議を申し立てできるようにする方針だ。異議は公共職業安定所が受け付け、原則、4週間以内に判定する。
 来年4月施行の改正雇用保険法では、定年や自己都合による離職と、倒産や解雇などによる離職では失業手当の給付日数に差をつける。倒産や解雇などでは、支給日数を最大150日上乗せする。同省は嫌がらせやセクハラ被害で離職した場合も上乗せする方針だが、これらの場合、企業と従業員の間で意見が異なる恐れがあるため、対応が課題となっていた。
不適切な家事援助を通知

2000/ 8/ 1 日本経済新聞朝刊

   厚生省は31日、全国介護保険担当課長会議を開き、介護保険でホームヘルパーが洗濯や掃除を手助けする家事援助について、庭の草むしりやペットの世話など保険給付の対象として不適切な行為を各都道府県に通知した。ホームヘルパーが家政婦代わりに利用されるのを防ぐのが狙い。都道府県を通じてサービス事業者や高齢者のサービス利用計画を作成する介護支援専門員、利用者などに周知徹底する。
 同省が不適切な行為として通知したのは(1)家族分の洗濯や調理など利用者本人の援助に該当しない行為(2)草むしりなど日常生活の援助に該当しない行為(3)家具の移動など日常的な家事の範囲を超える行為。

【Add 2000. 7.30】

  厚生年金 加入事業所、初の減少

2000/ 7/30 日本経済新聞朝刊

  98年度0.7%減 保険料負担を敬遠
 強制加入が原則である厚生年金制度に入っている事業所数が、1998年度末に前年度末比0.7%減の169万1000となり、戦後初めて前年水準を下回った。厚生年金に上乗せして支給する厚生年金基金を運営している事業所数も3年連続して減少した。労使が負担している保険料を減らそうとしている経営者が増えていることが背景にある。こうした動きが広がれば未加入問題が深刻になっている国民年金だけでなく、厚生年金も制度の空洞化が進む懸念がある。
 厚生年金の加入事業所数は第2次大戦後に一貫して増え続け、97年度末に170万3000と最多を記録した。政府が加入促進策を押し進め、88年度以降は従業員1人の事業所にも加入を義務づけたためだ。しかし98年度は企業の経営破たんが増えたことに加え、保険料負担を逃れようと企業が制度から脱退する動きが広がり、約1万減った。企業が厚生年金から抜けると、そこに勤めている人が受け取る年金はその期間に応じて減額される。
 従業員の年金を手厚くするために厚生年金基金を運営している事業所は18万6000となり前年度末比2.4%減った。保険料負担を軽くしようと基金を解散させた企業が増えた。95年度末に19万5000のピークに達した後は減少が続いている。厚生年金の加入事業所全体に占める比率は11%となり、95年度末と比べて約1ポイント低下した。
 厚生年金の加入事業所は、従業員の月収の17.35%の保険料を労使折半で国に払っている。この保険料は高齢者への年金給付の原資になっている。少子・高齢化の加速に伴い、政府・与党は保険料を段階的に引き上げる計画で、高齢化が当面のピークに達すると見られている2025年頃には約27%に高まる。2004年に予定している次の年金制度改革では、厚生年金の空洞化に歯止めをかけるため、労使の保険料負担をどう抑えるかが焦点になる見通しだ。

【Add 2000. 7.29】

  厚年基金解散で貸し付け制度

2000/ 7/29 日本経済新聞朝刊

  連合会改革案 母体企業が返済
 代表的な企業年金制度である厚生年金基金が財政悪化で解散した場合に支援する「支払い保証事業」の改革案が固まった。事業を運営する厚生年金基金連合会がまとめた。基金が年金資産が不足したまま解散した場合、現在は支払い保証事業から基金へ資金を支給する仕組みしかないが、新たに基金へ資金を貸し付ける方式を導入する。新方式は基金を設立した母体企業が存続している場合に適用、母体企業が返済する。解散基金が増えて同事業の財源が厳しくなるなか、各企業や厚年基金の自己責任原則を強化し、安易な解散を防ぐのが狙い。
雇用対策効果は限定的

2000/ 7/29 日本経済新聞朝刊

  6月の失業率やや上昇 求人・求職なおズレ
 6月の完全失業率は4.7%と、4箇月ぶりに上昇した。求人が大幅に増えているにもかかわらず、求人企業と求職者の条件のズレ(ミスマッチ)の解消が進んでいないことを改めて示した。労働省は5月に35万人の雇用創出を目指した「ミスマッチ解消を重点とする緊急雇用対策」をまとめたが、効果はまだ限定的といえそうだ。
 同対策の目玉は情報通信、福祉など成長企業に支給している「新規・成長分野雇用創出特別奨励金」の拡充。もともとこの奨励金は昨年6月の緊急雇用対策で創設されたが、利用度が低く支給実績が目標の1%程度にとどまっていた。このため5月の雇用対策で支給対象を拡大しリストラなどで離職した失業者を採用した企業だけでなく、公共職業訓練受講者や新卒の未就職者を雇った企業にも支給するよう改めた。
 労働省はこの奨励金の拡充で、年間7万人の雇用創出を見込んでいる。単純に1箇月当たりで計算すれば約5800人の雇用創出を目標としているが、同対策が本格的に始まった6月の支給申請は728人分にとどまった。
 確かに支給申請自体は従来より増加傾向にあるが、6月中旬から7月中旬の4週間の相談件数は1400件。7万人の目標達成は難しいとの見方も強い。
最低賃金0.8%上げ答申

2000/ 7/28 日本経済新聞朝刊

   中央最低賃金審議会は27日、2000年度の最低賃金を0.8%を目安に引き上げるべきだと吉川芳男労相に答申した。引き上げ幅は昨年度の0.9%を下回り、3年連続で過去最低を更新した。答申を踏まえ、全国の労働局ごとに地域別の最低賃金を決定、10月をメドに適用する。
3社に1社株式拠出 本社調査

2000/ 7/27 日本経済新聞朝刊

  年金積み立て不足圧縮 76社の合計で2兆7500億円
 企業年金・退職金の積み立て不足を穴埋めするため保有株式を拠出する「退職給付信託」の利用企業が、主要企業の3社に1社に広がっていることが、日本経済新聞社の調べで明らかになった。調査対象の250社のうち86社が信託設定を予定しており、実際にいくら分の株式を拠出するかを明らかにした76社の合計拠出額は2兆7500億円弱に達した。250社の積み立て不足額は合計10兆円強にのぼっているが、退職給付信託の導入によってその4分の1が穴埋めできることになった。
雇用助成金統廃合 労働省が基準素案

2000/ 7/27 日本経済新聞朝刊

   労働省は26日、雇用保険を財源とする助成金の統廃合に向けた基準の素案をまとめ、中央職業安定審議会の雇用安定等事業部会に提示した。支給実績が低かったり、政策目的が類似している助成金を整理するほか、個々の助成金に廃止期限、見直し期限を設定するとしている。
雇用の助成 統廃合 労働省方針

2000/ 7/26 日本経済新聞朝刊

  支給総額2割削減 人材流動化手厚く
 労働省は雇用保険を財源とする助成金を統廃合し、年間支給総額(2000年度予算で約6900億円)を約2割、1500億円程度減らす方針だ。「雇用保険3事業」で導入されている59種類の助成金を見直し、赤字が続いている3事業の収支を改善するのが狙い。特に雇用調整助成金など企業の雇用維持を支援する助成金を大幅に削減する方向で検討する。ただ、新規雇用の創出や人材の流動化を促す助成金については拡充し、新規産業へ労働力を誘導する。年内に具体的な計画を決め、一部は来年度から実施する。
 雇用保険3事業は雇用安定事業、能力開発事業、雇用福祉事業からなり、それぞれの事業に多くの助成金制度がある。なかでも、支給総額の半分以上を占める雇用安定事業の助成金を中心に見直す。産業構造の変化、景気変動で経営状態が悪化した企業が従業員の雇用を維持するための雇用調整助成金などについては、新産業への労働移動を妨げる面もあるため縮小、統合する。
 さらに、中小企業の福利厚生を支援する雇用福祉事業の助成金についても、企業が福利厚生を見直しているのに合わせて縮小する。
 全体としては支給額を減らすものの、雇用創出を促す助成金や新たに従業員を雇い入れた企業に対する助成金については増やす方針。中小企業が新分野に進出した際に労働者の雇い入れを助成する「中小企業雇用創出人材確保助成金」や、構造変化などで生産を縮小する企業の労働者を雇い入れた場合に助成する「人材移動特別助成金」などがある。また、求人企業と求職者の技能のズレが失業率の高止まりにつながっているため、能力開発事業の助成金についても拡充する。
 雇用保険3事業では助成金の新設が相次ぎ、赤字状態が続いている。2000年度も1000億円以上の赤字が出る見通し。赤字を補填する積立金も2001年度には底をつくため、財政立て直しが急務になっている。
連続2週間の休暇取得提案へ

2000/ 7/26 日本経済新聞朝刊

  労相の懇談会
 吉川芳男労相の私的懇談会である「長期休暇制度と家庭生活の在り方に関する国民会議」(座長・河合隼雄国際日本文化研究センター所長)は25日、労働者が連続2週間程度の休暇が取れるようにすることを提案した最終報告をまとめることを決めた。月内にも吉川労相に提出する。
 報告案では、家族の団らん、職業能力の向上、省力化投資などによる経済の活性化など、長期休暇の効用を示している。そのうえで(1)土日などを合わせ2週間程度の連続休暇が労使の負担なく取れるようにする。(2)それに至るステップとして1週間程度の休暇を2回に分けて取る(3)長期休暇が特定の時期への集中が避けられるようにする(4)だれもが公平に取れるようにする--などを提案している。
健保料徴収、年収基準で

2000/ 7/25 日本経済新聞朝刊

  ボーナスも月給と同率 実績給拡大に対応 厚生省方針
 厚生省は、現在は主にサラリーマンの月収を基準に徴収している健康保険料率を、ボーナスを含めた年収の一定割合に変更する検討を始めた。年収に占めるボーナスの比率が高い人ほど、相対的に保険料負担が軽くなる不公平を是正し、年俸制の広がりなど企業の報酬体系の変化に対応するのが狙いだ。ボーナス比率の低い低所得層の負担はいまより軽くなる半面、ボーナス比率の高い層の負担は重くなる。各医療保険ごとの収入の総額は移行時に変わらないようにするため、加入者にとっては月々の保険料率が下がる公算が大きく、将来の保険料引き上げに道を開く可能性もある。医療制度改革の一環として2003年度の実施をめざしている。

料率下げ、総負担は変えず
 同省は制度変更によって、それぞれの医療保険制度ごとに保険料収入が変わらないように調整する。主に中小企業の社員が加入している政府管掌健康保険の場合、現在は保険料は社員の月収の8.5%(労使で4.25%ずつ折半)で、ボーナスは1%(企業0.5%、社員0.3%、国庫0.2%)の特別保険料がかかっている。約1780ある大企業の健康保険組合も保険料は原則として月収が基準で、料率は平均約8.5%。それぞれの組合はボーナスから最大1%まで徴収できるが、実際に徴収しているのは全組合の約16%にとどまっている。
 現行制度ではボーナスにかかる保険料が少ないため、年収が同じ社員でもボーナス比率が高ければ保険料負担は軽くなる。一般にボーナス比率は低所得者より高所得者が高い傾向がある。保険料負担を軽くする狙いで労使が意図的にボーナス比率を高める動きもある。年収基準に改めるとこうした不公平は解消する。
 最近は社員への報酬として、毎月の給料より企業収益や個人の能力に連動させやすいボーナスに手厚く配分する企業が増えている。現行制度では、年収が増えても毎月の給料に連動する保険料収入は伸び悩み、健保の財政基盤が弱まるという懸念もある。
 年入基準に移行する具体策は、2002年度をめどに実施する医療制度改革に併せて検討する。移行時には各医療保険の保険料総額に増減が生じないようボーナスから保険料を追加徴収する代わりに、毎月かかる保険料率を下げる見通しだ。健保組合では高齢者医療費を賄う負担金の増加などで保険料が重くなっており、料率が法定上限(健保組合で9.5%)に迫っている組合も多い。年収基準だと月々の保険料は下がり、引き上げ余地が生まれる。
 政管健保の毎月の保険料率は現在の8.5%から7.6%程度に下がる計算になる。月収30万円、ボーナス100万円の加入者ならボーナスにかかる追加保険料が月収分の保険料の減少額より大きく、労使の負担は年間約3万円増える。同じ月収30万円でもボーナスがゼロの人は月収分の保険料が減るだけなので、年3万円程度の負担減になる。
 厚生年金は2003年度から保険料の徴収基準を月収から年収に改めることが決まっている。健康保険料の見直しによって、サラリーマンの社会保険料の保険料基準はすべて年収にそろう。40-64歳のサラリーマンにかかる介護保険料(平均料率は月収の0.88%、労使折半)の徴収基準も年収に変える。
介護保険 短期入居の利用弾力化

2000/ 7/25 日本経済新聞朝刊

  厚生省案 2002年から日数枠撤廃
 厚生省は24日、介護保険制度の改善案を医療保険福祉審議会(厚相の諮問機関)に示した。高齢者が介護施設に短期入居するショートステイについては、現行の利用可能日数の上限を2002年1月から撤廃。訪問介護などの1箇月当たりの利用限度額のうち使い残した分を、短期入居の1日当たりの利用費用で割って算出した日数までは自由に利用できるよう弾力化する。また家政婦代わりの利用が問題視されていた家事援助については、保険料の対象として不適切な事例を示した。
 現在、介護保険施設への短期入居には要介護度ごとに半年間に利用できる日数が決められている。高齢者の家族から「介護保険の導入前に比べて利用が制約される」との声が上がっていたため、厚生省は訪問看護などの利用限度額のうち、使い残した分を短期入居の費用として利用することも認めているが、この利用も月2週間に制限している。
 このため家族の不満が依然強く、2002年1月から短期入居の利用可能日数の上限を撤廃する。同時に訪問介護などの利用限度額の枠内で自由に短期入居を利用できるようにする。ただベッド数に限りがあることを考慮し、連続して利用できる日数は30日間までとする。同じ人が繰り返し短期入居を利用するのを避けるため、半年間の利用日数に一定の制限を設けることも検討し、多くの高齢者が利用できるようにする。
 洗濯や掃除を手助けする家事援助については、保険給付の対象として不適切な行為を例示した。具体的には(1)高齢者の同居家族のための調理や買い物(2)ホームヘルパーが行わなくても高齢者の日常生活に支障が生じない庭の草むしりやペットの世話(3)日常的な家事の範囲を超える家屋の修理やお節料理の調理--などを挙げた。厚生省は詳細を詰め、サービス事業者や介護支援専門員(ケアマネージャー)に通知する。
 厚生省のサービス利用計画(ケアプラン)を作る介護支援専門員については、26日に会議を設け、専門員のサービス向上策を検討する。介護支援専門員は業務に不慣れな人が多いため、各市町村に専門員の相談窓口を設け、ケアプランの作成などを指導することを検討する。
介護施設への短期入居の利用可能日数
  訪問介護などの利用限度額(1ヶ月当たり、円) 短期入居の1日当たり費用(円) 現行の利用可能日数(6ヶ月当たり) 弾力化後の最大利用可能日数(案、1ヶ月当たり)
要支援

61,500

9,140

7

7

要介護1

165,800

9,420

14

18

要介護2

194,800

9,870

14

20

要介護3

267,500

10,310

21

26

要介護4

306,000

10,760

21

29

要介護5

358,300

11,200

42

30

(注)1日当たりの費用は代表例で、施設の種類によって異なる。弾力化後の短期入居の連続使用は30日間まで。1日未満の端数は1日に切り上げて計算

【Add 2000. 7.22】

  繰り上げ受給 3割に低下

2000/ 7/22 日本経済新聞朝刊

  98年度国民年金 10年前の半分以下に 「不利」の広報が浸透
 自営業者や専業主婦が加入している国民年金制度で、本来の受給開始年齢である65歳より前に年金を受け取る「繰り上げ受給」を選ぶ人の割合が下がっている。1998年度に初めて年金を受給した人に占める繰り上げ受給者の割合は前年度比0.7ポイント低い32.3%となり、約7割だった88年度の半分を下回る水準となった。繰り上げ受給では年金額が大幅に減るため不利という政府・自治体の広報活動が背景にある。ただ2001年度からは、減額幅が縮小されるため繰り上げ受給が再び増えるとみられる。
 国民年金は65歳から受け取るのが原則だが、60歳以降なら繰り上げて受け取ることができる。年金額は受給開始時に60歳なら65歳で受け取る年金額の42%減、61歳なら35%減に減額され、生涯この減額年金を受け取ることになる。
 減額率は55年時点の65歳以上の平均余命(男性約12年、女性約14年)に基づいて算出しており、余命が延びた現在(16年、21年)では生涯の年金額は本来の65歳から受け取る場合より少なくなる可能性が大きい。こうした情報を市町村などが高齢者に伝えるようになったため、繰り上げ受給者の割合はほぼ一貫して低下、98年度は本来の65歳での新規受給者が65.9%と約3分の2を占めた。
 ただ、繰り上げ受給の年金が少なすぎるとの批判を受けて政府は新しい平均余命に合わせて減額率を最大30%に縮小、来年度以降に60歳になる人から新しい減額率を適用する。このため来年度以降は再び繰り上げ受給が増えるとみられている。
介護保険 短期入所の利用低迷

2000/ 7/21 日本経済新聞朝刊

  緊急時に備え手控え
 介護保険サービスの1つで、施設が高齢者を短期間預かる短期入所(ショートステイ)の利用が低迷している。全国老人福祉施設協議会が120の施設から得た回答によると、介護保険制度が始まった今年4月から3カ月間の短期入所ベッドの平均利用率は44.3%で、前年同期の70.1%を大きく下回った。家族が緊急時に利用するために日常の使用を手控えていることが原因。協議会はこうした結果を踏まえ、弾力的な利用ができるよう、厚生省に働きかけを強める。
 短期入所サービスは介護する家族の負担を軽くすることで、高齢者の在宅介護を支援するのが狙い。介護保険の導入以前は利用できる日数に制約は少なかったが、介護保険では高齢者の介護の必要度合いで利用日数が決められている。
 同企業会は「家族が冠婚葬祭など緊急時に備えて利用を控える傾向がある」と指摘。20日までに厚生省に提出した要望書で、短期入所の利用限度枠と訪問介護など訪問・通所サービスの利用限度枠を一本化し、その範囲内で短期入所を自由に利用できるよう制度改善を求めた。
女性の年金見直し着手 厚生省

2000/ 7/20 日本経済新聞朝刊

  専業主婦の保険料免除 焦点 パート加入基準も
 厚生省は19日、女性の生き方の変化に合わせて公的年金制度を見直す検討会を設置、議論を開始した。現行制度は男性が働き、女性は家にいる世帯を念頭に設計している面が強く、女性の社会進出などに対応できていないとの批判があるため。サラリーマンの妻で専業主婦の場合は保険料を払わなくても基礎(国民)年金を受給できる仕組みを改めることなどが主な検討課題となる。ただ「現行制度に合理性はある」とする意見も根強く、来年末に向けた検討会の意見集約は難航が予想される。
 【専業主婦の扱い】有職者16人で構成する検討会(座長・袖井孝子お茶の水女子大教授)はうち9人が女性。専業主婦も含まれる。この検討会で最大の争点になりそうなのが、サラリーマンの妻の専業主婦の扱い。
 現行制度ではサラリーマンと結婚し、その後夫が40年間厚生年金保険料を払い続けていれば、専業主婦である妻は保険料を負担しなくても月額67,000円の基礎(国民)年金を受給できる。
 これに対し、正社員などとして働く女性は厚生年金保険料を負担しており、自営業者の妻も国民年金保険料(月額13,300円)を負担しているため、不公平との声があがっている。専業主婦からも国民年金を徴収する方式などが考えられるが、「所得のない人は保険料を払えず、将来無年金者になる」などの反論は根強く、簡単に改革の結論は出そうにない。
 【パート労働者の年金加入基準】女性に多いパートタイム労働者の年金加入基準も見直しの対象だ。現行制度では年収が130万円未満であれば、国民年金にも厚生年金にも加入せずに済み、保険料負担は発生しない。サラリーマンの妻の主婦はパート収入があっても130万円未満に抑えておけば、専業主婦扱いになる。
 これに対しても「不公平」として、収入基準を引き下げる案などがある。しかし130万円の基準を引き下げれば「その低い水準までしか働かないという、問題が発生し、パート労働が抑制される」などの反論がある。
 【世帯単位の年金制度】現行制度は夫婦世帯を1つの単位として設計している。このため、長い期間夫婦として過ごしても離婚すれば、老後に夫の厚生年金の一部を受け取る方法はなく、夫が死亡した際の遺族年金も受給できない。このような点も見直し、年金を夫婦それぞれに分割することも課題となる。ただ「婚姻期間中の年金などを含めた財産について、半分は妻のものであるという社会通念は完全には定着していない」などと現行制度の維持を主張する声もある。
今春闘賃上げ、最低の2.06%

2000/ 7/19 日本経済新聞朝刊

   労働省が18日発表した民間主要企業の春闘賃上げ妥結状況によると、今春闘の平均賃上げ額は6,499円、賃上げ率は2.06%で、賃上げ額は集計を開始した1965年以来の最低水準。企業収益が回復傾向を見せているが、人件費抑制の姿勢が依然厳しいことを浮き彫りにした。

【Add 2000. 7.18】

  国民医療費 30兆円突破確実

2000/ 7/18 日本経済新聞朝刊

  昨年度 高齢者分 4割超す
 医療保険から支払われる医療費のうち70歳以上の高齢者分の割合が1999年度に41.3%と初めて4割を突破したことが厚生省の調査で明らかになった。薬剤費の一部負担が高齢者だけ7月から免除になった影響で高齢者の通院が増えたためだ。高齢者医療費が医療費全体を押し上げた結果、「公費医療なども含めた国民医療費が30兆円を突破するのは確実」と厚生省は見ている。
 99年度の医療保健医療費総額は前年度比3.7%増の28兆5000億円。このうち原則70歳以上が対象の老人保健分(高齢者医療費)は8.4%増の11兆8000億円で、全体に占める比率は前年度より1.8ポイント高まった。医療費増加額の9割は高齢者分と医療費支出拡大の最大の要因になっていることから、高齢者医療費制度の改革を求める声が強まりそうだ。
 高齢者医療費が急増したのは、高齢人口の増加に加え、外来患者が病院窓口で支払う薬剤費の一部負担が高齢者だけ7月から免除になった影響が大きい。免除後の7月から多くの高齢者が通院を増やしたため、外来医療費の前年度比伸び率は4-6月の8.8%から7月以降は10.7%に高まり、年度全体でも10.3%と2桁になった。
 1人当たり医療費の伸び率も高齢者は4.0%と69歳以下(1.1%)を上回った。

【Add 2000. 7.16】

  年金保険料 来年度、凍結解除を目指す

2000/ 7/16 日本経済新聞朝刊

  厚生省、国庫負担引き上げと同時に 将来の負担増抑制 与党と調整
 厚生省は2001年度を目標にしている基礎年金の国庫負担率の引き上げと同時に、年金保険の凍結を解除する方向で与党と調整に入る。現在、サラリーマンの厚生年金や自営業者らの国民年金の保険料は景気への影響に配慮して凍結されている。しかし凍結期間が長くなるほど将来の保険料負担が重くなるため、早期の解除が欠かせないと判断した。ただ凍結解除で厚生年金の保険料率は現状よりも1%程度上がる見通しで、与党の反発も予想される。
 現在、厚生年金の保険料率は月収の17.35%(労使で折半)、国民年金の保険料は月13,300円。当初、厚生省は1999年度に厚生年金の保険料率を2%、国民年金の保険料は700円引き上げる予定だった。しかし自民党が「消費に悪影響を与える」と強く主張したため、引き上げを見送った。
 しかし保険料の据え置きに伴う保険料収入の不足分は、将来の保険料引き上げによって穴埋めする必要がある。保険料の凍結期間が長くなるほど不足額が膨らみ、高齢化がピークを迎える2025年度前後の保険料は高くなる恐れがある。厚生省は、保険料凍結による負担の先送りは年金制度に対する若年世代の不信感を助長しかねないと懸念しており、来年度の凍結解除を目指す。
 来年度に保険料の凍結解除と国庫負担率の引き上げを同時に実施した場合、厚生年金の保険料率は1%程度上昇するが、国民年金の保険料は2000円程度下がる見通しだ。厚生年金は給付に占める基礎年金の部分が小さく、国庫負担率の引き上げによる保険料の引き下げ効果よりも、凍結解除による保険料の引き上げ効果の方が大きくなるためだ。
 これに対して保険料の凍結解除を見送り、国庫負担率の引き上げを単独で実施すると、厚生年金の保険料率は1%下がり、国民年金の保険料も3000円下がる見込みだ。
 ただ参院選を来年に控え、与党が来年度の厚生年金の保険料引き上げに反発することが予想される。与党内からは、保険料の凍結は継続し基礎年金の国庫負担率の引き上げを先行実施、厚生年金と国民年金の保険料をいずれも一時的に下げることを求める声が出てくる可能性もある。
訓練延長給付大幅に増える 失業手当

2000/ 7/16 日本経済新聞朝刊

   労働省の失業手当の訓練延長給付の利用が大幅に増えている。失業者が再就職のために教育訓練を受けた場合、訓練期間中の失業手当の給付日数が延長される制度で、5月は前年同月より89%増えた。大半の企業がパソコン操作ができることを求人の条件としており「雇用情勢が厳しいなか、パソコン訓練に参加する中高年の失業者が増えているため」という。
 訓練延長給付の支給対象者は昨年の春頃から増え始め、9月以降は前年同月比で7割以上増え続けている。今年に入ってからも3月は102%増、4月は76%増を記録した。月間7000-10000人に支給している。
 労働省は5月の緊急雇用対策で失業者向けのパソコンの訓練を強化する計画を打ち出しており、今後、さらに中高年の受講者が増える見通しだ。

【Add 2000. 7.15】

  農林中金3年後に赤字 社会保障制度審部会が検証

2000/ 7/15 日本経済新聞朝刊

  「保険料上げ必至」 「厚生」との統合難航も
 社会保障制度審議会の数理部会は14日、民間会社員の厚生年金をはじめ給与所得者の5つの公的年金制度の財政計画について検証結果を公表した。財政が最も厳しい農林漁協職員の農林共済年金は2003年度に赤字に転落、2020年までの約半分の期間で赤字になる見通し。農林年金は厚生年金との統合を希望しており、政府は8月から統合問題の検討に入る。同審議会が農林年金の財政計画の甘さを指摘、統合が厚生年金側の財政負担になる可能性を示唆したことから統合条件をめぐる両制度間の調整は難航が予想される。
 同審議会が財政検証したのは厚生年金の他に国と地方の公務員、農林漁協職員、私立学校教職員がそれぞれ職域単位で加入する4共済。公的年金は高齢者への年金を現役加入者が賄う仕組みで将来の加入者数により財政状況が変動するため、各制度は加入者数について複数の見通しを提示。同審議会はこのうち加入者数が厚生年金に連動するケースを主に検証した。
 農林年金の場合、年金受給者の増加に伴い2003年度に年金支給額が保険料などの収入を上回る赤字に陥り、その後も2008年から2018年まではほぼ毎年赤字になる。将来の年金給付に備える積立金も必要額の2割未満と手薄で、厚生年金や他の共済と比べて財政は悪化していると分析している。
 さらに、今後10年間は厚生年金並みに現役加入者数が一定で推移するという農林年金の予測は、農協再編に伴い加入者数が毎年1-2%減少している最近の動向を反映していないと指摘。農林年金の予測以上に加入者が減少すれば財政が一段と悪化、ピーク時の保険料は農林年金の財政計画(月収の29.69%)以上の引き上げを迫られると警鐘を鳴らした。
 農協は5万人の職員削減計画を進めている。農林年金はこの削減計画を完全実施したうえで加入者数が厚生年金に連動する見通しなども用意した。
 しかし、同審議会では削減計画を織り込んだ見通しは積立金の予測が不適切とし、1998年度末の加入者数から厚生年金加入者に連動する見通しを主に検証した。
失業手当上乗せ 労働省素案

2000/ 7/15 日本経済新聞朝刊

  希望退職・セクハラ被害も対象
 労働省は来月4月から退職の理由で失業手当の給付日数に差をつけることを控え、どのような場合に支給日数を上乗せするかの基準の素案をまとめ、14日の中央職業安定審議会の雇用保険部会に提示した。希望退職に応じ離職した場合やセクシュアル・ハラスメント(性的嫌がらせ)を受け退社した場合も上乗せ対象とする。今秋までに同審議会に諮問、来春をメドに厚生労働省令を出す予定。
 来年4月施行の改正雇用保険法では、定年や自己都合による離職と、倒産や解雇などによる離職では失業手当の給付日数に差をつける。倒産や解雇などでは支給日数を30-150日上乗せするが、どのような場合に上乗せするかの明確な基準がなかった。
 今回まとめた基準素案は15項目。倒産については破産や民事再生法、会社更生法の厚生手続き開始だけでなく、会社整理、銀行取引停止も対象としている。事務所の移転で往復時間が4時間以上となり、通勤困難なため退職した者も支給日数を上乗せする。
 上司や同僚などから故意の排斥、著しい冷遇、嫌がらせを受けて退職した場合も上乗せ対象に盛り込んだ。特定の労働者に対して、離職の働きかけと見られる配置転換、給与体系の変更があった場合や、セクハラを受けた場合などがこれに該当するという。
 希望退職では、恒久的な早期退職優遇制度などに応じて退社した労働者は上乗せ対象とはならない。
失業手当上限1%下げ

2000/ 7/15 日本経済新聞朝刊

   労働省は14日、雇用保険から支給する失業手当の給付上限額などを8月1日から1%程度引き下げると発表した。同省の毎月勤労統計によると、1999年度の平均賃金が前年度より1.4%下がったためで、2年連続の支給額の引き下げとなる。1日当たりの最低支給額は3380円(50円減)、45-59歳の最高支給額は10650円(144円減)となる。
健保99年度 赤字最大2100億円

2000/ 7/14 日本経済新聞朝刊

  高齢者医療支出膨らむ
 企業が社員のために設立している健康保険組合の全国組織、健康保険組合連合会が13日発表した全国1780組合の1999年度決算見通しによると、経常収支は合計2100億円の赤字となった。赤字額は96年度の1976億円を上回り過去最大。高齢者医療費を賄うための負担金支出が増加したことが主因だ。健保組合の財政悪化を踏まえ、健保連は「(先の国会で廃案になった)健保法改正案の早期成立など財政悪化に歯止めをかける対策を講じるように近く政府・与党に要望する」(下村健副会長)と表明した。
 健保連は全組合の約3分の2にあたる1145組合の決算を集計し、これをもとに全組合の収支を推計した。経常収支は98年度の405億円の黒字から一転して大幅な赤字になった。企業の人員削減などで保険料収入が伸び悩む一方、老人医療費の増加で負担金(老健拠出金)の支出が膨らんだためだ。
 老健拠出金が保険料収入に占める割合は前年度の29.36%から32.67%に上昇。退職者への拠出金も含めるとこの割合は39.97%に達し、企業と会社員が負担する保険料の4割は高齢者や退職者の医療費財源に回っている。
 赤字組合の割合は前年度の2分の1から3分の2に高まった。赤字を穴埋めしようと一部の組合は保険料を引き上げたため、平均保険料率は月収の8.42%(これを労使で分担)と前年度比0.02ポイント上昇した。保険料率が9.0%を上回り法定上限(9.5%)に迫っている組合の割合も全体の14%に達した。
雇用問題連絡本部を設置

2000/ 7/14 日本経済新聞朝刊

  労働省 大型倒産指定も検討
 労働省は13日、大手百貨店のそごうが民事再生法の適用を申請したことを受け、省内に「そごう雇用問題連絡本部」を設置した。そごうグループと取引先企業の雇用状況について情報を収集し、同グループを「大型倒産等事業主」に指定する方向で検討する。指定事業主の取引先企業は2年間にわたり、従業員を休業、教育訓練、出向させた場合に経費の2分の1(中小企業の場合は3分の2)の助成を受けることができる。
 連絡本部では、全国の労働局を通じて、そごうグループやその取引先企業の離職者の状況を把握し、大量の離職者の発生が見込まれている場合は、再就職のための相談体制の整備など対応策を検討する。同省は、最近では3月に中堅スーパーの長崎屋を大型倒産等事業主に指定している。
夏のボーナス0.74%増

2000/ 7/13 日本経済新聞朝刊

  本社最終集計2年ぶりプラス 製造業が高い伸び
 日本経済新聞社が12日にまとめた今夏のボーナス調査の最終集計によると、1人当たりの支給額は720,223円で前年夏比0.74%増と、2年ぶりにプラスに転じた。非製造業は3年連続のマイナスとなったが、製造業の支給額が大幅に増え、けん引役になった。電気や自動車など製造業の主要業種で、企業収益が回復傾向にあることを裏付けている。
 製造業は19業種のうち11業種で前年夏比を上回った。情報技術(IT)ブームでパソコンや携帯電話、カーナビの販売が拡大、半導体市況も好転し、電気や自動車がそれぞれ4.47%増、0.21%増とプラスに転じた。ただ、造船や鉄鋼など重厚長大産業は、前年割れとなっている。
 非製造業でも情報・ソフトや通信などIT関連業種は支給額がプラスに転じたが、雇用の多い建設や百貨店・スーパーでは「バブル経済崩壊の生産が遅れている」(業界関係者)ため、前年割れとなっている。ただ、大都市圏中心にマンション販売の好調な不動産・住宅は2年ぶりにプラスに転じた。
 全業種で見ると、支給額は調査対象40業種の5割強の21業種で前年夏比を上回った。1999年夏の前回調査では、前年を上回ったのは5業種にとどまっていた。
国民年金保険料 免除、最多の400万人

2000/ 7/12 日本経済新聞朝刊

  98年度末 「申請」急増8割に
 自営業者ら会社員以外の20歳以上の全国民を対象にした国民年金で、保険料の支払い免除者が急増している。1998年度末は前年度比11.5%増の400万人となり、過去最多を更新した。加入者の申請を受けて都道府県が個々に認定する「申請免除」が急増した。客観基準で決まる「法定免除」の増加は小幅にとどまっており、自治体の裁量で保険料の免除者が増える構造となっている。
 国民年金の保険料免除者は90年度末を底に増加に転じ、98年度末までの8年間で約8割増加した。91年度から学生にも国民年金への加入が義務付けられたため、所得のない学生など若年層で免除を受ける人が増えた。
 特に減収などを理由に加入者本人が保険料の免除を求めた申請免除は前年度比14.2%増の310万人と急増。免除者全体に占める割合は90年度の6割から98年度は8割弱まで高まり、所得水準などが法定免除の基準を上回っても、自ら申請して免除を受ける動きが広がっている。
 保険料が月収に連動する厚生年金と異なり、国民年金保険料は所得と関係ない定額制(現在は月13,300円)。このため低所得層で負担感が強く、未納者の増加が問題になっている。厚生省は認定基準があいまいで自治体の裁量に左右される申請免除の増加に歯止めをかけることを目指し、2002年度から申請免除の基準を原則として前年度所得に一本化する方針だ。
中途採用41.1歳が上限 制限撤廃に慎重 労働省外郭団体調査

2000/ 7/12 日本経済新聞朝刊

   労働省の外郭団体、日本労働研究機構の調査によると、中途採用を実施している企業の9割が求人に年齢制限を設けており、その平均上限年齢は41.1歳であることがわかった。特に「企画、広報、編集」では32.4歳と低く、中高年の再就職の難しさが鮮明。労働省は緊急雇用対策に年齢制限の緩和の指導を盛り込んだが、調査では4割以上の企業が制限の撤廃に慎重の姿勢を示している。若年層が減る中で、労働力を確保し中高年の再就職を支援するために、年齢制限の緩和や撤廃を促す動きが強まりそうだ。
 調査は昨年11月、9073社に対して実施、39.7%に当たる3598社から回答を得た。
 平均上限年齢が低いのは、「企画」のほか「一般事務、秘書」「ソフト技術者」などで、いずれも35歳以下。50歳以上は「警備、守衛」「清掃、雑務」「運転手」だけだった。同じ管理職でも技術系は44.5歳だが、営業販売では39.6歳と差が出た。
 求人に年齢制限をする理由は「年配者は体力的に対応できない」「賃金が高い」が多い。特にホワイトカラーでは賃金を理由に年齢制限している企業が多く、年功型賃金体系が障害になっていることがわかる。
 米国は40歳以上にの労働者について、採用、解雇、労働条件などを年齢で差別することを禁止している。
主な職種の求人の平均上限年齢(単位:歳)
企画、広報、編集

32.4

一般事務、受付、秘書

34.2

SEなどソフト技術者

35.0

財務・経理担当者

37.2

研究開発などの技術者

38.6

営業職

38.8

総務、人事労務、教育

39.3

保険、医療、介護サービス

42.5

生産現場の技能職、製造職

42.8

接客サービス

43.5

建設、土木職

44.7

運転手

52.4

清掃、雑務職

58.2

整備、保全、守衛職

58.6

介護保険の「自立」「要支援」認定者特養退去の受け皿整備

2000/ 7/11 日本経済新聞朝刊

  生活施設6倍、1800カ所 厚生省5年で
 厚生省は介護保険の要介護認定で「自立」又は軽度の「要支援」と認定され、特別養護老人ホームから退去を迫られている高齢者の受け皿となる生活施設を大幅に増やす方針だ。高齢者が定額の負担で入居できる「高齢者生活福祉センター」を今の約300カ所から5年間で6倍の1800カ所に増やす計画。現在は特別養護老人ホームとの併設型しか認めていないが、来年度からは条件を緩和し、症状の安定した人を対象にした老人保健施設との併設型や民家、民間アパートの転用も可能にする。

高齢者生活福祉センターの概要

目的 ・高齢者に対して介護支援、居住、交流の各機能を総合的に提供
利用対象者 ・60歳以上の独り暮らしの人
・独立して生活することに不安がある老夫婦
利用定員 ・最大で20人
職員配置 ・日常生活の相談に応じる
・生活援助員は必ず1人
設備 ・居室は個室で18平方メートル以上
・集会室、浴室など
・食事は原則として自炊

【Add 2000. 7. 9】

  労働者個人のキャリア形成 国・企業が支援を

2000/ 7/ 8 日本経済新聞朝刊

  労働省研究会報告
 労働省の「今後の職業能力開発の在り方研究会」(職業能力開発局長の私的懇談会)は7日、労働市場の変化に対応するため、国と企業が労働者個人のキャリア形成を支援すべきだとの報告をまとめた。12日に発表する。企業の需要に合わせた公共職業訓練から、個々の労働者が目標に向けて能力開発できるよう転換するとともに、職業能力を評価する制度の整備を提唱している。
 報告では、情報技術(IT)の発展や経済のグローバル化を背景に、企業内での人材流動化が広がっているうえ、企業間での労働移動が増えると指摘。労働者の就業能力(エンプロイアビリティー)を高めることが重要と強調している。
公務員年金を一元化

2000/ 7/ 4 日本経済新聞朝刊

  国と地方、相互に資金援助 大蔵・自治省検討
 大蔵、自治両省は国と地方の公務員がそれぞれ加入している共済年金のうち、どちらかが財政難に陥った場合に相互に資金援助する仕組み作りの検討に入った。国と地方の公務員の共済年金を実質的に一元化することで、財政が悪化した共済年金が加入者の保険料率を引き上げたり、負担穴埋めのため公費に頼ったりするのを避ける狙い。国と地方の公務員の年金格差が縮小するので、公務員の年金面では、中央から地方への権限委譲や業務移管などに対応できるようになる。
 大蔵、自治両省は公務員共済の年金財政を実質的に一元化する枠組みを2004年度の次回の公的年金制度までにまとめ、関連法改正を目指す。国家公務員共済と89の地方公務員共済の中で、加入者の急減などにより年金財源が足りない共済が出た場合に、他の共済が協調して不足分を援助する仕組みとする。
 本来、財政難の一共済が抱える負担を国と地方の共済全体で薄く広く分担するので、財政難の共済は保険料率を大幅に引き上げずに済み、加入者や国、地方の公費負担の急増を避けられる。
 支援に回る個々の公務員共済の分担ルールは今後詰める。旧国鉄を民営化した際に旧国鉄の共済年金のために厚生年金や各共済が負担能力に応じて拠出額を案分した仕組みが軸になる見通しだ。
 国と地方の公務員共済の財政状況を比べると、当面は国家公務員共済の方が厳しく、現行保険料率は国が月収の18.39%(半分は国庫負担)であるのに対し地方は16.56%(半分は自治体負担)だ。
 ただ、国家公務員共済の財政難が一服する2010年以降は逆に地方公務員共済で年金受給者が急増し財政が悪化。一部の自治体共済で支援が必要になると見られる。こうした事態に備え、国と地方公務員年金の財政を一元化する必要があると判断した。

【Add 2000. 7. 2】

  中高年の再就職援助 企業に計画作成要請

2000/ 7/ 2 日本経済新聞朝刊

  職歴や保有資格証明 労働省、10月から 助成金支給の要件に
 労働省は10月から、リストラや定年で離職が決まった中高年1人ひとりの「再就職援助計画」の作成を企業に要請する。援助計画は求職活動のための有給休暇など具体的な支援策に加え、その従業員の職歴などを企業が記入し、本人に手渡す。求職する従業員にとって、どのようなキャリアがあるかの証明書にもなる。10月に新設する中高年の再就職支援の助成金についても、企業が申請する場合は計画作成を支給要件にする方針。中高年の再就職を後押しすることで、失業なき労働移動を目指す。