社会保険労務士関連ニュース(2000年/第3四半期:2000/10-12)

2000年(平成12年)度 第3四半期 2000年10月〜12月に新聞等で発表されたニュースです。

【LastUpdate 2001. 1. 3】

【Add 2001. 1. 3】

  入社半年、しぼむ夢 女性で顕著 転職志向も弱まる

2000/12/31 日本経済新聞朝刊

  新入社員意識調査
 今年春に入社した新入社員のうち半年後には、仕事を通じて夢を持つことや、自分の意見を先輩に主張したい考える人の割合が減少したことが30日、社会経済生産性本部のアンケートで分かった。例年に比べて転職や能力主義志向が弱まっていることも判明。リストラを含めた厳しい雇用情勢が続くなかで、若者の微妙な意識変化がうかがえる。
 同本部の新入社員教育プログラム参加者を対象に3月から4月にかけて実施した調査結果と、この中から377人を任意抽出して10-11月に行った調査結果を比較した。秋の有効回答率は67.4%。
 秋の調査で「仕事を通じてかなえたい夢を持つ」は54.8%で春より8.7ポイント減少。特に女性は37.0%にとどまった。「先輩と意見が対立しそうでも自分の意見をはっきり言う」も9.9ポイント減って61.4%。「条件の良い会社があれば、さっさと移る方が得だ」と考える人は春から5.3ポイント増の43.3%だが、過去最高だった昨年(53.0%)より10ポイント近く減った。

【Add 2000.12.30】

  ダイエー 1000人の希望退職提案

2000/12/30 日本経済新聞朝刊

  従業員一律賃金カットも
 経営再建中のダイエーは、希望退職による本体人員1000人の削減や、管理職の年俸と従業員賃金の一律カットなどを柱とした人事・労務関連のリストラ案を固め、29日までに同社の労働組合に提示した。同社が管理職以外の賃金削減に踏み込むのは初めて。来期(2002年2月期)はこれらのリストラ実施で、今期の人件費総額見込みの1割強に当たる170億円を削減、金融機関などへの公約である単体の経常利益200億円確保を目指す。
 ダイエーは11月にまとめた修正再生3ヶ月計画で、グループ全体で従業員4000人の削減を打ち出していた。うち本体で削減するのは2000人とし、1000人は退職に伴う補充をしない自然減で、残る1000人の削減は希望退職で対応する。組合と割増退職金を詰め、2月中にも募集する考え。
 労働条件の見直しでは、3000人弱いる管理職は年俸を10%、10000人強の一般従業員は基本給を5%、それぞれ一律に減らす。従業員では、賞与も現在の基準内賃金の3.5ヶ月分を同3ヶ月とする方向で、役員報酬も1月に就任する新任役員を含め30%減額する。
 ダイエーは今期からの3カ年計画で、30店舗を超す赤字店舗の閉鎖や既存店の改装などを通じて本体の営業力を回復。主要取引銀行が引き受ける1200億円の増資をもとにグループ企業の整理なども進め、2003年2月期には連結ベースの経常利益で380億円を出せるように経営体質も改善を図る。来期には、本体の経常利益で200億円(今期は50億円の見込み)を確保する計画。400億円を超えるコスト削減が不可欠で、人件費の見直しはその中心となる。

【Add 2000.12.29】

  社会保障費 70兆円突破 98年度給付 2/3が高齢者向け

2000/12/29 日本経済新聞朝刊

   年金、医療などの社会保障にかかる費用が、1998年度に初めて70兆円を突破した。厚生省が28日発表した同年度の社会保障給付費は、97年度を3.9%上回る72兆1411億円。13年間で約2倍に膨らんだ。高齢化で公的年金の受給者が急増しているのが背景。一方、景気低迷で健康保険料などの保険料収入は過去最低の伸びにとどまった。給付費増に歯止めがかからないなか、社会保障の財源確保は一段と難しくなっている。
 98年度の国民所得(382兆円)に対する給付費の割合は18.8%と過去最高。国民1人当たりの給付費は前年度より2万100円増えて57万300円だった。給付費に参入されていない医療費の本人負担などを合わせた実際の費用は、これより膨らむ。
 給付費を分野別にみると「年金」が53.2%でもっとも多く、ついで「医療」35.2%、「福祉・その他」11.5%の順。
 98年度は特に年金給付が38兆4105億円と前年度比5.5%も増え、全体を押し上げた。年金を受け取る人が国民年金と厚生年金を中心に約83万人増えたことと、物価に連動して年金支給額を引き上げた影響が大きい。
 医療給付は国の医療費抑制政策の一環で薬の公定価格(薬価)が大幅に引き下げられ、0.4%の伸びにとどまった。年金や医療以外では各種失業手当の給付が2兆6742億円と16.9%の伸びになったのが目立つ。社会保障給付費のうち、高齢者に使われた費用は66.3%を占め、全体のちょうど3分の2になった。対前年度の伸び率は5.9%で全体(3.9%)よりも2ポイント高い。
雇用延長制を京葉銀が導入

2000/12/26 日本経済新聞朝刊

   京葉銀行は2001年4月から雇用延長制度を導入する。厚生年金の基礎年金部分の支給開始年齢が段階的に引き上げられるのに対応し、60歳の定年を迎える行員のうち希望者を1年間、嘱託社員として再雇用する。銀行の雇用延長制度は珍しく、長年の勤務で得た金融知識を年金分を差し引いた賃金で活用できるようになる。
 対象は来年4月以降の定年退職者で、本人が引き続き雇用を希望した人。年収は一部支給される年金収入と合わせ、退職時と同水準とする予定だ。年金の支給開始が3年に一度、1歳ずつ引き上げられるのに合わせ、雇用期間も1年ずつ延長する方針。職種や勤務地などは銀行側が提示するが、希望者全員をできるだけ本人の要望に沿って配置するという。

【Add 2000.12.24】

  出産費用を無利子融資

2000/12/24 日本経済新聞朝刊

  厚生省が来夏にも新制度
 厚生省は2001年7月にも、働く女性やサラリーマンの妻の出産にあたって企業の健康保険組合などが出産費用を無利子で貸し付ける「出産育児費貸付制度」を創設する方針を決めた。出産費用は通常、退院時に医療機関から支払いを求められることが多い。新制度は健保組合などが前もって費用を貸し付けることで、利用者自身が立て替えなくて済むようになる。
 現行制度では働く女性や専業主婦の出産に対して、医療保険から一律30万円(国民健康保険加入者は30万円以上)の出産育児一時金が支給されている。しかし出産を終え一定の手続き期間を経ないと一時金を受け取れないため、退院時には自分で出産費用を立て替える必要がある。
 貸付制度は一時金の8割に相当する24万円以上が上限。原則として出産予定日の1カ月前から貸付を開始し、出産後の一時金支給と同時に返済する。国が運営する中小企業の政府管掌健康保険の加入者なら全国の社会保険協会、健康保険組合と国保の加入者は各組合と市町村が窓口になる。
早期是正100健保が対象

2000/12/23 日本経済新聞朝刊

  厚生省、措置発動へ3基準
 2001年1月から健康保険組合の財政破たんを防ぐための早期是正措置が導入されるのを控え、厚生省は発動の基準を固めた。具体的には(1)赤字解消に必要な健康保険料率が法定上限である月収の9.5%を超える(2)加入者が設立認可基準の約700人を下回る(3)健康保険組合の法定準備金などが医療費支払額の3箇月分を確保できない--の3つが柱。この基準を当てはめると全国1760の健保組合のうち100程度が是正措置の対象となる見通しだ。厚生省は収支改善のメドが立たない組合に対しては債務超過に陥る前に解散を命令する方針で、健保組合の整理、再編が本格化する可能性が大きい。
 
保険料率など健全財政促す
 高齢者医療費の増大を背景に健保組合の収支は悪化しており、2000年度は赤字の健保組合が全体の8割強に達する見通しだ。早期是正措置は健保組合の財政破たんを未然に防ぐ狙いで、来年1月1日に施行される改正健康保険法に盛り込まれた。これを受け、厚生省は是正措置発動の具体的な要件を定めた関連法令を健保組合に通知した。
 それによると発動要件は健康保険料率、加入者数、支払い余力を柱とする。保険料率を法律で定められた上限の9.5%に設定しても赤字を解消できず、加入者数も健保組合の設立認可基準である約700人(単独企業の組合)を下回る状態が続いている場合とする。支払い余力に関しては、組合運営を安定させるための法定準備金と組合が任意で積み立ててきた別途積立金の合計が、医療費支出の3箇月分を割り込めば是正措置の発動要件となる。
 厚生省は「現時点で要件に該当する組合は全国で100程度にのぼる」(保険局)とみている。是正措置の対象組合には向こう3年間の財政健全化計画の提出を義務づける。計画には3年後の収支目標を設定、保険料引き上げや保養所などの保有資産の売却といった目標達成に必要な方策を盛り込む。計画には厚生省が個別に審査し、承認する。
 早期是正措置が発動された健保組合が支出の削減などでも収支改善がたたない場合は、準備金が底をついて支払不能に陥る前に厚生省が解散を指導できる。組合が健全化計画を提出しなかったり、計画に従わない場合は直ちに解散命令することになる。
 健保組合の解散は現在、運営が難しくなった健保組合が自主的に解散を申請した場合に厚生省が個別に承認している。
 これまでも健保法で同省が組合に解散命令を出せると規定されていたが、基準があいまいで発動された例はなかった。
管理職、担当部課で賃金差 松下電工

2000/12/23 日本経済新聞朝刊

  職務の難易度や部課数など配慮
 松下電工は課長職以上の管理職4000人を対象に、担当する部署によって賃金のベースを決める新賃金制度を2001年4月から順次導入する。部課の人数や職務の難易度などで管理職ポスト自体に役割給を設定し、人事考課を加味して賃金を決める。役職や人事考課ポイントが同じでも担当する部署によって賃金が異なるほか、ベテランを上回る年収を得る新任部・課長も出る見通し。いわば管理職ポスト自体を”格付け”して担当する部署本位で管理職の賃金を支払い職務と賃金のギャップ解消を狙う。
 まず、約180人の事業部長級に適用し、来年12月から部長と課長にも広げる。管理職には事実上の年俸制を導入し、毎年4月に担当部・課などと前年の査定を基に、当該年の年収(月給と賞与の合計)が決まる。
 来年の制度導入にあたっては本人が提出する職務内容のリポートに基づき、人事部が各ポストについて8段階の「役割グレード」を決める。担当部署によっては課長が部長を上回るケースもある。グレードは公表しない。管理職の年収は基本給、幹部給、賞与の3部分で構成し、新制度では幹部給はポストだけで決め、基本給と賞与は成果や会社業績も反映させる。
今年の賃上げ率 最低の1.5%増に

2000/12/22 日本経済新聞朝刊

   労働省が21日に発表した2000年の賃上げ実態調査(速報)によると、従業員1人当たりの平均賃上げ額は月額で4177円、平均賃上げ率は前年比1.5%増だった。額、率ともに1969年の調査開始以来、過去最低となった。
労働組合員数 1年で28万人減 過去最大に

2000/12/20 日本経済新聞朝刊

  組織率21.5%、低下止まらず
 全国の労働組合員数は今年6月末時点で、前年同期より28万6000人(2.4%)減り、1153万9000人になったことが19日、労働省のまとめで分かった。減少は6年連続で、1947年に調査を始めて以来最大の減少数。全組合員数を雇用者数(5379万人)で割った労組の組織率も前年より0.7ポイント低下の21.5%と戦後最低を記録した。組織率は最低のピークである75年の34.4%から下がり続け、「労組冬の時代」は一段と冷え込んだ。
 組合員数の落ち込みは産業別では製造業の13万5000人、運輸・通信業の3万5000人、金融・保険・不動産業の3万4000人が大きかった。組合員が増えた業種はなかった。労働省は「製造業や運輸・通信業では逆に雇用者数が増えており、組合員数の減少はリストラや倒産などの影響とばかりは言えない」とみている。
 企業規模別では従業員299人以下の中小企業の減少が目立った。
 これに対しパートタイマーの労組員は26万人と前年比6.6%増えた。組織率は0.1ポイント上昇し2.6%。同省は「介護分野のパート労働者が組合を組織したことなどが寄与したが、全体の組織率はまだ遅れている」と分析している。
 主要労働団体別の組合員数(都道府県単位の地方組織のみの加盟を含む)は、連合が731万4000人(16万8000人減)、全労連103万6000人(2万5000人減)、全労協26万1000人(8000人減)だった。全労連は「(組合員減少は)日本の主要労組が労働者の雇用や賃金破壊、将来生活に対する不安と期待に十分にこたえきれていないことの反映」(坂内三夫事務局長)とみている。
 
従来型活動に限界みせる
 今回の調査で、大手産業別労組の中で唯一、増員になったのはゼンセン同盟だけだった。同組織は、公的介護保険制度開始に合わせ介護クラフトユニオンを結成。介護分野の組合員化に努め、1万人の増員を果たした。
 あらゆる産別が組合員数を大幅に減らす中、パートタイマーの労組員も前年比6.6%と”増員”。既存の組合による従来通りの活動が限界をみせた形だ。
 連合が、ここ数年、力を入れてきたのは、産別労組加盟が難しい企業や個人労働者に対する地域ユニオンへの勧誘だった。だが、組合員数減少には歯止めをかけることはできなかった。
 小規模企業や非正規雇用労働者について、連合の笹森清事務局長は「賃金、労働条件が不安定で、雇用形態を乗り越えた運動と組織化が求められる」と言う。ただ、こうした分野の組織化には昔型のノウハウは通用せず、手間暇も掛かる。
 働き方の多様化や賃金など労働条件の個別化が進み、悩みを抱える労働者も多い現代社会。こうした時代の要請に組合が応じられなかったことが、労組の長期低落傾向を決定づけたともいえる。
健保組合解散 最高確実に

2000/12/19 日本経済新聞朝刊

  今年度すでに11件 老人保健の拠出重荷
 財政悪化などを理由に解散した企業や自治体の健康保険組合が4月以降で11組合に達したことが分かった。解散がもっとも多かった1998年度の11組合と並び、来年3月末までの年度ベースで過去最高を更新するのは確実だ。景気回復の遅れで保険料収入が伸び悩む一方、高齢者医療費が急増していることが背景にある。2001年度には約100組合で医療費の支払いに備えるための法定準備金が底をつく見通し。収支好転が見込めないなか、解散する組合が増えそうだ。
 今年4月以降は倒産に伴う解散はなく、企業などが健保組合の運営を断念するケースが相次いでいる。特に地方の市役所で公務員共済に加入せず職員の福利厚生のため独自に運営してきた健保組合を解散したのが4件と目立つ。ほかの7件は中小企業と市民生協などの民間団体だった。
 解散理由で共通しているのは、原則70歳以上が加入する老人保健制度を支え合うための拠出金で財政が急激に悪化している点。久留米市職員健保組合は4月に解散し、福岡県の市町村で作る職員共済組合へ移管した。赤字ではなかったものの「拠出金負担が膨らみ、将来展望が描けなくなった(人事厚生課)ことが理由だ。
 大阪市でニット販売などを手掛ける企業の健保組合も「拠出金、事務負担が大きくいずれ赤字転落は避けられない」として解散し、国が運営する政府管掌健康保険に加入した。
 財政が悪化している健保組合は政管健保に移管した方が保険料率が下がり、企業、加入者ともに負担が軽くなる可能性が大きい。健保組合は加入者の医療費負担の一部を補助する「付加給付」を廃止するといったリストラに取り組んでいるが「支出削減も限界に来ており、解散に踏み切る組合は増える」(健康保険組合連合会)との見方が強い。
 健保組合は主に大企業の従業員本人やその家族が加入する医療保険。全国に1760ある。解散数は96、97年度とも3件にとどまっていたが、98年度は金融・証券業を中心に母体企業の倒産が増えたため2ケタになった。

【Add 2000.12.15】

  ネット求人情報 部分参加認める

2000/12/14 日本経済新聞朝刊

  労働省、民間と合意
 労働省と民間の職業紹介会社、求人誌の業界団体は14日、インターネット上で求人情報を提供するシステムを、官民共同で作ることで合意した。このシステムは、全国の主要都市の公共職業安定所、民間の職業紹介会社、求人誌、経済団体などの求人情報を一元的に管理するもの。来年度からの実施を目指す。一部の求人誌から「掲載料を取る求人誌と無料で掲載する職安の情報が同時に検索できるようになれば、求人誌への情報掲載が減る」との意見が出ていた。
児童手当を一転拡充 自民、公明との「決裂」回避

2000/12/14 日本経済新聞朝刊

  歳出削減で財源ねん出
 与党3党は13日、調整が難航していた児童手当拡充の財源問題について、来年度は歳出削減によってねん出することに合意した。児童手当拡充を巡っては税制改正による財源確保を求める公明党に、自民党が受け入れられないと反発、公明党はいったん児童手当拡充を断念した。しかし、野中広務前幹事長や古賀誠幹事長らが「自公両党が決裂したとのイメージは連立維持にマイナスとなる」と判断、同日になって再調整を開始して土壇場で何とか合意にこぎつけた。
 児童手当拡充に伴い新たに必要となる費用は平年度ベースで670億円だが、初年度は2001年6月から2002年までの8カ月で446億円。与党3党は同日、国費を313億円(企業負担分73億円を含む)、地方分を133億円とすることで一致した。
 児童手当拡充は公明党の冬柴鉄三幹事長が中心となって実現に動いたが、党内には是が非でも実現させるとの空気は乏しかった。このため12日夜、公明党は幹部が協議した結果、いったんは恒久的財源の確保を前提としない児童手当拡充の実現を断念した。
 ただ連立のかなめである冬柴氏のメンツをつぶせないと判断した古賀氏、亀井静香政調会長は13日になって冬柴氏や公明党の北側一雄政調会長にそれぞれ電話し改めて説得を開始。冬柴氏と太いパイプを持つ野中氏も自民、公明両党と連絡を取り合い「財源について来年度は歳出削減で、それ以降は税制改正で賄う」との双方の主張を取り入れた2段階論を提案、決裂という最悪の事態は免れた。
冬のボーナス0.84%増

2000/12/13 日本経済新聞朝刊

  3年ぶりプラス 本社最終集計
 日本経済新聞社が12日まとめた今年冬のボーナス調査最終集計(12月5日現在)は、1人当たりの支給額(加重平均)が74万2,907円と、前年冬の実績比で0.84%増え、3年ぶりにプラスとなった。機械、電機、自動車・部品が増加に転じ、製造業が同1.5%増と3年ぶりの増加となった。一方、非製造業は同0.85%減と3年連続のマイナスで、明暗が分かれた。
 全産業の支給額は、1975年の調査開始以来最大の落ち込み幅となった昨冬の3.77%減から大幅に改善した。だが、増加率は1%未満とやや低く、個人消費のけん引役としては力強さにやや欠ける。
 製造業では、自動車・部品が昨冬の7.49%減から今冬は1.58%増に改善。機械も同7.38%減から0.54%増に転じた。非製造業は3年連続のマイナスとなり、21業種のうち11業種が昨冬実績比減。百貨店・スーパーが5.9%減(昨冬3.03%減)となったのが響いた。
児童手当 公明、拡充断念へ

2000/12/13 日本経済新聞朝刊

  財源で与党調整つかず
 公明党幹部は12日、来年度予算編成で同党が求めていた児童手当の大幅拡充を断念する意向を明らかにした。新たに必要となる約670億円の財源を巡る与党内調整がつかなかったため。自民党と公明党はいったん児童手当の支給率を現在の未就学児童の72%から85%に引き上げることで合意したものの、公的年金の控除廃止で財源をねん出するよう求める公明党に自民党税制調査会が難色を示し、調整が難航していた。
 自民党は税制面での対応に替わり、厚生労働省予算の人件費削減などの歳出削減を手当拡充の財源に充てる案を示した。公明党幹部は「児童手当拡充は少子化対策の一環として提起しており、恒久的な裏付けが必要だ。財源を赤字国債の発行で賄うのなら、拡充そのものを見送る腹づもりだ」と述べた。2年前に公明党が要求して実現した地域振興券が赤字国債を財源としたことで「バラマキ批判」を受けたことから、今回は明確な財源の確保を最重視していた。
 児童手当は子供2人まで1人当たり月額5,000円、3人目から同10,000円を支給している。夫婦2人と子供2人のサラリーマン世帯の場合は年収670万円、自営業者の場合は同432万5,000円未満の世帯に限るとの所得制限がある。
就職者2.5%増 離職者3.8%増

2000/12/13 日本経済新聞朝刊

  労働省1-6月調べ
 労働省が12日発表した1-6月の雇用動向調査(速報)によると、新規就職と転職を合わせた就職者は前年同期比2.5%増の362万人、離職者は3.8%増の356万人だった。離職の理由ではリストラが減り自己都合が増えた。同省は景気回復を背景に労働移動もやや活発になってきたとみている。
 常用労働者(1月1日時点)に占める就職者の割合は8.7%、離職者の割合は8.6%で、どちらも前年同期よりわずかに上昇した。業種別では卸・小売業・飲食店、サービス業で就職者、離職者の割合が高い。正社員の就職者の割合は7.3%、離職者の割合は7.2%。離職の理由は個人的理由が66.0%、経営上の理由は9.0%で2.1ポイント低下している。

【Add 2000.12.10】

  失業急増時に緊急助成

2000/12/10 日本経済新聞朝刊

  新規雇用に補助金 労働省方針 対象年齢など柔軟に
 労働省は雇用環境が著しく悪化した場合に緊急発動する助成金を新設する方針を固めた。雇用情勢に応じ助成金の対象を柔軟に定め、新たに従業員を雇い入れた企業に対し賃金の一部を支援する。公共職業安定所の紹介者以外を雇い入れた企業にも助成金を支給する。来年10月の実施を目指す。同省は財政悪化から雇用安定助成金の総額を大幅に削減する方針だが、緊急時の雇用の安全網(セーフティーネット)は整備しており必要があると判断した。
 新設する助成金は完全失業率が一定以上の水準に達するなど、雇用情勢が著しく悪化した場合に限り支給する。企業が受け入れやすい環境をつくり、雇用の一段の悪化を防ぐ。賃金助成の対象者は「45歳以上」といったように年齢などで定めるが、その時の雇用情勢に応じ柔軟に変更できるようにする。
 労働省の賃金助成は公共職業安定所を通じ従業員を雇い入れた企業に限っているが、新設する助成金では条件を撤廃する。民間の職業紹介会社、求人誌、知人の紹介などにより雇用した企業も支給対象とする。
 失業率がどの水準まで上がったときに支給するかなど具体的な発動条件については、来年夏までに審議会への諮問、答申を経て省令で定める。条件次第では助成金のばらまきになりかねないとの指摘も出ている。
 労働省は雇用保険を財源とする「雇用保険3事業」の助成金の予算総額を3年以内に25%削減する方針を打ち出している。
 特に賃金助成については利用率が低く、必要でない場合も支給対象になっているとの批判があるため、支給期間の半減や支給対象絞り込みで大幅に縮小する考えだ。
 現在、55歳以上の中高年を雇用した企業に「特定求職者雇用開発助成金」を支給しているが、この支給対象を60歳以上に縮小する方向で調整中。
 労働省が不況業種と定めた業種の従業員を雇い入れた場合にも賃金助成をしているが、これも廃止する予定だ。
 ただ緊急時には雇用助成が必要と判断。労働省は2001年度に雇用保険3事業として約7000億円を予算要求、その一部を緊急助成金に充当する考えだ。

賃金助成(雇い入れ助成)の見直し案

  現在 来年10月以降
支給期間 原則1年 原則6箇月
支給額 原則賃金の3分の1 原則賃金の4分の1
中高年を雇用した場合の助成対象者 55歳以上 60歳以上
不況業種の従業員を雇用した場合の助成 制度あり 制度廃止
雇用情勢が著しく悪化したときの緊急助成 制度なし 新設
年金改革 消費税7-8%に

2000/12/ 7 日本経済新聞朝刊

  民主党が政権構想 基礎年金、全額税方式
 民主党は6日、来年夏の参院選の公約の柱となる年金改革について(1)政権獲得後直ちに基礎年金の国庫負担率を現行の3分の1から2分の1に引き上げる(2)政権獲得から5年後をメドに基礎年金を現行の保険方式から全額税方式に移行し、税源は「年金目的税」として消費税率を現行の5%から7-8%程度に引き上げる--との方向で検討に入ることを決めた。来年1月20日に開く党大会で、こうした方針を財政再建などとともに参院選の重点政策として決定したい考えだ。ただ、党内には景気が本格的な回復軌道に乗らない段階で消費税率引き上げの方針を打ち出すことに慎重な意見もあり、調整が難航する可能性もある。
 基礎年金の全額税法式移行と消費税率引き上げを柱とする年金改革の方針は、6日に開いた同党ネクストキャビネット(次の内閣)の会合で決めた。
 首相の私的諮問機関「社会保障構造のあり方について考える有識者会議」は今年10月に提出した最終報告で、基礎年金の財源について保険料を柱とする社会保険方式の維持を提言している。民主党は「社会保障の最低限の給付である基礎年金は、国庫で確実に負担しなければ国民の不安が増幅する」として全額方式の導入を打ち出す。
 一方、2階部分にあたる厚生年金(報酬比例部分)は現役世代の手取り賃金の6割程度の給付水準を確保することを目指す方針。
男女雇用差別企業名を公表

2000/12/ 7 日本経済新聞朝刊

  基本計画、12日閣議決定
 政府が12日に閣議決定する「男女共同参画基本計画」の内容が6日、明らかになった。社会参加や雇用での男女格差をなくすため(1)採用、配置、昇進など雇用面で差別的な待遇をしている企業の社名を公表する制度を導入する(2)2005年度までのできるだけ早い時期に国の審議会の女性比率(現在、約20%)を30%に引き上げる--などの措置を打ち出した。仕事と子育てを両立できるようにするため、時間外労働の免除を請求できるようにするため、時間外労働の免除を請求できる制度の創設検討も盛り込んだ。
 基本計画は昨年6月施行の男女共同参画社会基本法に基づいて政府が策定したもので、2010年を期限として「政策決定への女性の参画」「雇用での均等な機会と待遇の確保」「職業と家庭の両立」など11項目の達成目標を掲げた。男女のいずれか一方に社会参加などへの機会を積極的に提供する「積極的改善措置」(ポジティブ・アクション)を明記したのが特徴だ。
基礎年金 国庫負担上げ、2002年に

2000/12/ 7 日本経済新聞朝刊

  坂口次期厚生労働相が明言
 坂口力次期厚生労働相は6日、日本経済新聞などとのインタビューで、懸案となっている基礎年金の国庫負担割合の2分の1(現行3分の1)への引き上げ問題について「少なくとも2002年に実現できるように進めなければならないと、私個人は決意している」と明言した。引き上げに必要な財源については来秋をメドに結論を得たいとの考えを明らかにした。
 同相は「一番の問題は年金(財政)。年金を受け取る人が急激に増えれば、若い人の保険料だけで賄うのは難しい」としたうえで、年金改革法の附則で2004年までに実施するとされている国庫割合の引き上げを、大幅に前倒しして取り組み姿勢を打ち出した。急増している高齢者医療費を賄うため、公費(税金)投入額の増加は避けられないとの見通しを強調。その上で「年金、医療、介護をセットとして考えていきたい」と述べ、社会保証制度全体を通じて公費のあり方を見直していく考えを示した。
雇用関連5法を改正

2000/12/ 6 日本経済新聞朝刊

  労働省、産業構造転換に対応
 労働省は雇用対策法など雇用関連の5法を改正する方針を決めた。不況業種の雇用を支援する特定不況業種雇用安定法(業種別)は来年6月末で廃止する。中央職業安定審議会(労相の諮問機関)が5日、経済・産業構造の転換に対応した雇用政策の推進ついての建議をまとめたことを受けたもので、改正法案を次期通常国会に提出する。
 見直すのは雇用対策法、地域雇用開発促進法、雇用保険法、職業安定法、職業能力開発法。

【Add 2000.12. 3】

  リストラで月30人以上削減 再就職支援 企業に義務

2000/12/ 3 日本経済新聞朝刊

  労働省来秋メド 訓練計画など作成
 労働省はリストラなどで1カ月に30人以上の人員削減を予定している企業に対し、離職予定者の再就職支援を義務づける方針を固めた。職業訓練や求人情報の提供などを盛り込んだ支援計画を労使で作成することを求める。企業による従業員の転職支援を推進することで、失業者の増加を抑制すると同時に新産業への人材移動を円滑にするのが狙い。雇用対策法の改正案に盛り込み、次期通常国会に提出、来年10月からの実施を目指す。
 提出を義務づけるのは「労働移動支援計画(仮称)」。企業は退職予定者の意向を聞きながら、求人情報の提供、再就職のための職業訓練の実施、就職活動のための有給休暇の付与など具体的な支援措置を盛り込んだ計画を作成する。作成にあたっては労働組合との協議が必要で、人員削減の実施日の1カ月前までに最寄りの職業安定所に提出する。
 労働省は来年10月をメドに、従業員の転職を支援した企業を助成する「労働移動支援助成金(仮称)」を新設する方針。企業が人員を削減する場合、従業員に有給休暇を与えたり、職業訓練を受けさせたりした費用の一部を助成することにしているが、計画の作成を助成金の支給条件にする。また、人員削減が30人未満の企業でも助成金を受け取るには、同様の計画を提出しなければならない。
 現行の雇用対策法では、リストラによる希望退職者募集などで1カ月に30人以上の人員削減予定のある企業に対し、離職予定者数を職安に届け出ることを義務づけている。1999年度は1274事業所から届け出があり、約87,500人が離職した。離職者数は96年度(約42,000人)の2倍以上になっており、労働省は経済の構造変化から企業の雇用調整が広がる可能性があると判断、届け出だけでなく、再就職の支援計画提出を義務づけることにした。
 計画を提出しなかった場合は雇用対策法違反となるが、その罰則は罰金5,000円以下となっており、労働省は罰則を強化する方向で法務省と調整する考えだ。
 ただ企業の負担が重くなるため、今後議論を呼びそうだ。日経連は「現在でも人員削減をする際に、大半の企業が従業員の転職支援を実施しており、転職支援が企業の責任になることはやむをえない面もある」としながらも「過度な負担増については企業からの反発が予想される」としている。
 同省は今年10月から、定年やリストラなどで45歳以上の離職予定者が1カ月間に5人以上出る予定の企業に対し、再就職支援計画の作成、提出を要請している。提出を義務づけていないこともあり、これまで約1000事業所に要請したが、提出したのは約70事業所にとどまっている。
改正健保法・医療法が成立 病院広告緩和 競争促す

2000/12/ 1 日本経済新聞朝刊

   70歳以上の患者に対し、使った医療費の1割の負担を求めることを柱とした改正健康保険法が30日の参院本会議で可決、成立した。同時に関連法として医療機関の広告規制の緩和や看護婦配置基準を手厚くする改正医療法も成立。患者負担が増える一方で、医療機関の情報開示や質の向上が進む。ただ、高齢者分を中心に増え続ける医療費の抑制や、安全で質の高い医療提供体制の確立には不十分で、政府・与党が目指す2002年度の抜本改革は不可避な情勢だ。
 
カルテ開示アピールも
 改正医療法では患者が病院を選ぶ際に参考となる広告ができるようになる。従来は広告が認められていたのは医師の氏名や診察時間など必要最低限の項目だけ。改正法では、医師の略歴、年齢、特定団体による病院の機能評価結果、カルテを患者の求めに応じて開示する病院の場合は、カルテ開示可能であることなどを広告できる。
 改正法では病院のベッドを慢性病などで長期療養が必要な患者向けベッドと、それ以外の一般ベッドに区分することも決めた。一般ベッドの看護婦の配置基準を従来の入院患者4人に対して1人から、患者3人に対して1人と手厚くする。
 これらの改正は今年度中にも施行される。ただ、看護婦配置基準については、「もっと手厚くすべきだ」との声が強い。広告規制については「原則自由とすべき」との意見もある。
 改正健保法では来年1月から70歳以上の患者にもコスト意識を持ってもらうため、原則的に使った医療費の1割を負担してもらう方式を導入する。70歳未満の医療費負担についても、1カ月の負担上限を見直し、使った医療費や所得に応じて上限が上がる仕組みが導入される。
 
改正健康保険法・医療法の主な内容
(1)70歳以上の患者負担に1割の定率制を導入(2001年1月施行)
・外来の場合は1回の診療につき530円(5回目から無料)から、医療費の1割負担とし、月の負担上限を3,000円に。ただし、200床以上の大病院は月上限5,000円。診療所は1回の診療につき800円、月上限3,200円を選択することも可能
・入院の場合は1日あたり1,200円から、医療費の1割負担とし、月上限37,200円に
 ※低所得者には軽減措置あり
(2)70歳未満の患者負担月額上限の見直し(2001年1月施行)
・月上限63,600円から、医療費が318,000円を超えた場合は超えた分の1%を63,600円に上乗せ。月収56万円以上の高所得者は月上限を121,800円とし、医療費が609,000円を超えた場合は超えた分の1%を上乗せ(この部分は上限なし)
 ※低所得者には軽減措置あり
(3)入院時の食事負担(全世代共通)(2001年1月施行)
・1日あたり760円から780円に
 ※低所得者には軽減措置あり
(4)健康保険料率の上限見直し(2001年1月施行)
・健康保険組合の場合、健康保険料率と介護保険料率を合わせて月収の9.5%以下から、健康保険料率だけで9.5%以下に。政府管掌健康保険は合わせて9.1%以下から健康保険料率だけで9.1%以下に
(5)病院の看護職員配置基準(今年度中施行)
・入院患者4人に対し看護婦1人から、病床を慢性病患者向けと一般向けに分けたうえで一般病床は患者3人に看護婦1人に
(6)医療機関の広告規制の緩和(今年度中施行)
・医師名や診療時間などの基礎項目だけから、カルテの開示ができるかどうか、医師の略歴なども広告可能に
(7)医師の臨床研修を義務化(2004年4月施行)
・現行の研修は努力義務
職業紹介 ネット利用促進

2000/12/ 1 日本経済新聞朝刊

  経済構造改革計画 事務所面積規制を撤廃
 政府は1日、企業の事業再編や労働者の移動を後押しする経済構造改革計画を閣議決定する。具体策として、インターネットを使った効率的な職業紹介事業を拡大するため、事務所の面積規制を撤廃するなどの規制緩和を示す。成長分野での事業拡大や新規創業を促すのが狙い。
 求職者と企業を登録して結びつける職業紹介事業者には、面積20平方メートル以上の事務所を設置する義務がある。今回の計画はネットを使った紹介事業に限って面積規制を撤廃し、新規事業者の参入を促す方針を盛り込む。求職者に労働条件を示す場合に書面での明示を義務づけている規制も改め、電子メールを利用できるようにする。
 企業の迅速な意思決定や事業再編を支援する対策としては、(1)株主総会の議決権行使でネット利用を容認(2)ストックオプション(自社株購入権)の上限規制見直し(3)トラッキング・ストック(事業部門株)の解禁--などを示す。
 通産省などによると、こうした構造改革は国内総生産(GDP)の成長率を年2.4ポイント程度押し上げる効果があるという。改革は2010年のGDPの規模を140兆円拡大し、300万人の新規雇用を生み出すという。
契約社員 雇用 最長5年に

2000/11/30 日本経済新聞朝刊

  労働省、技術者採用を支援
 労働省は一定期間だけ勤務する契約社員について、原則1年以内に限定している雇用期間を5年まで延長できるようにする。産業新生会議(首相の諮問機関)が12月1日まとめる経済構造改革行動計画に契約社員の雇用期間延長を盛り込み、年内にも全国の労働局を通じて企業に伝える。複数年の勤務希望が多い情報技術(IT)分野などの専門技術者を採用しやすくするのが狙い。契約社員の増加につながり、雇用の多様化が一段と進みそうだ。
 労働省の調査(1999年10月)によると、契約社員の48%が3-10年の継続勤務を望んでおり、とりわけシステム部門の技術者は開発に1年以上かかるだけにその間の雇用保証を求めているという。同省では雇用期間延長によって、企業がこうした技術者を採用しやすくなるとみている。また、60歳で定年退職した人が勤務していた企業と5年間の雇用契約を結ぶこともでき、65歳までの雇用を確保しやすくなる。
 企業の多くはパートやアルバイトのほか、システム開発などの事業で、専門技術者を契約社員として雇用している。総務庁によると、9月末時点で勤務期間1カ月以上の契約社員(農林業除く)は575万人。雇用者の10.7%を占めており、年々増加している。
 契約社員の雇用期間について、労働基準法は原則1年以内と定めており、60歳以上の高齢者や研究者らに限って3年以内としている。同時に、企業に契約期間の雇用義務を、契約社員にも勤務義務を課している。労働相は契約社員が契約期間でも退職できるようにすれば、同法に抵触しないため改正しなくても期間延長できると判断した。
患者負担 1月から重く 改正健保法 きょう成立

2000/11/30 日本経済新聞朝刊

  国民全体で2000億円増
 高齢患者の負担増などを柱とする健康保険法など改革案が30日の参院本会議で可決、成立する。来年1月から70歳以上の高齢患者は医療費の窓口負担が原則1割の定率制に切り替わり、70歳未満の患者も自己負担の月額上限が引き上げられる。この結果、国民が窓口で支払う治療費や薬代など医療費は年間2,170億円膨らむ。このほか健保組合の保険料率の上限もアップし、約4割の組合で加入者の負担が増えそうだ。ただ高齢者の医療費が年率8%と急ピッチで拡大しているだけに今回の法改正で医療保険財政の悪化に歯止めをかけるのは困難。医療制度の抜本改革が急務になっている。
 
70歳以上は1割 高所得者の上限も倍額
 【70歳以上の患者負担】70歳以上の外来患者は現在、かかった医療費に関係なく通院のたびに530円を払うだけで済んでいる。しかも通院先ごとに毎月5回目以降は無料。負担の上限は月2,120円だ。しかし患者のコスト意識を促すため、来年1月からは原則として医療費の1割を負担することになる。
 新しい負担上限は医療機関の規模で異なる。200床以上の規模で異なる。200床以上の大病院なら月5,000円で現在の2.4倍だ。開業医(診療所)に限り、定率制だけでなく1回800円の新定額制を採用する道も残すが、採用方式を待合室などに明示、患者に周知徹底しなければならない。
 厚生省の試算によると、定率制導入で高齢者本人の患者負担は1人当たり月830円増、年約10,000円増となる。ただし同じ外来でも風邪など比較的短期の通院で済む急性の病気なら現在より負担が減り、逆に薬代や検査料がかさむ慢性の病気は負担が増えそうだ。
 たとえば表の事例(2)の高血圧症の患者は現行なら通院2日分の1,060円だけだが、改正後は医療費の1割にあたる1,440円へと380円アップする。所が事例(1)の風邪の患者の負担は520円と現在のおよそ半額になる。
 入院費用も1割の定率制になる。負担上限は原則月37,200円(低所得者は軽減)。長期入院なら1日1,200円を定額で払う現行とあまり変わらない。
 【69歳以下の患者負担】69歳以下の患者のうち高所得者は、医療費が高額になった場合の負担上限額が引き上げられる。今は一律に月63,600円(住民税の非課税世帯は軽減)が負担の上限で、医療機関の窓口で1カ月に払った自己負担額がこれを超えた場合に超過分が後で患者に払い戻される。来年1月からは月収56万円以上の人に限り、上限が月121,800円になる。
 さらに所得水準に関係なく、医療費が一定額を超えた部分の1%を追加負担する仕組みも導入する。現在の上限まで負担している人が使っている医療費は平均で月66万円。改正後も同じ額の医療費を使えば、現在に比べ高所得者で月59,000円、一般患者で月3,400円の負担増になる。
 これとは別に高齢者、現役世代とも入院時の食費負担も1日20円増える。
 こうした改正による患者負担増は年間680億円と見込まれている。
 
健保組合 4割が保険料上げ
 健康保険料の上限も実質的に引き上げられる。4月に介護保険が導入されてから、40-64歳のサラリーマンは健康保険料に介護保険料を上乗せして天引きされている。現行法は医療、介護を合わせた保険料の上限を月収の9.5%(これを労使折半)と定めている。介護保険料は組合ごとに異なるが平均0.88%で、これを加えると約1,800ある健保組合の約4割で法定上限を超える。このため本来徴収すべき分を徴収できない状態だ。
 主に中小企業の会社員が加入する政府管掌健康保険(政管健保)は健康、介護の保険料がそれぞれ8.5%、0.95%だが、法定上限が9.1%ののため、0.35%分の介護保険料が徴収不足になっている。
 そこで1月から法定上限を健康保険法だけに適用、介護保険料は別枠徴収できるようにする。これにより約4割の健保組合と政管健保が保険料上げに動くのは確実。政管健保は徴収不足も含め1月から合計保険料を9.58%に上げる。
 

70歳以上の高齢患者の1カ月当たり負担変化シミュレーション

   

現行制度

改正後

事例(1) 風邪の場合
 2日通院、初診料、検査料、投薬料で合計医療費5,210円と仮定
  1回当たり530円×2回=1,060円 医療費の1割=520円(10円未満四捨五入)
事例(2) 高血圧症の場合
 前月からの継続受診で2日通院、合計医療費14,370円と仮定
  1回当たり530円×2回=1,060円 医療費の1割=1,440円
事例(3) 肺炎の場合
 大病院に即入院、入院期間2週間、合計医療費249,150円と仮定
  1日当たり1,200円×14日=16,800円 医療費の1割=24,920円

健康保険法改正案成立でこう変わる医療制度(2001年1月実施)

現 行

改正後

70歳以上の患者負担

・外来の場合
 1回の診療につき530円
 月5回目から無料=月上限2,120円

200床以上の大病院
 医療費の1割、月上限5,000円
200床未満の中小病院
 医療費の1割、月上限3,000円
診療所は次のいずれか
 医療費の1割、月上限3,000円
 1回の診療につき800円、月上限3,200円
・入院の場合
 1日当たり1,200円
 ※低所得者には軽減措置あり

医療費の1割、月上限37,200円
 ※低所得者には軽減措置あり

70歳未満の患者負担

患者負担の月上限63,600円
 ※低所得者は35,400円
63,600円+(医療費−318,000円)×1%
 ※低所得者は35,400円
 ※月収56万円以上の高所得者は
    121,800円+(医療費−609,000円)×1%

入院時の食事負担(全世代共通)

1日当たり760円
 ※低所得者には軽減措置あり
1日当たり780円
 ※低所得者には軽減措置あり

健康保険料率の上限見直し

・健康保険組合の場合
 健康保険料率と介護保険料率を合わせて月収9.5%以下

 健康保険料率だけで9.5%以下
・政府管掌健康保険の場合
 両方を合わせて9.1%以下

 健康保険料だけで9.1%
「NTT雇用調整を」 与党チーム報告案

2000/11/30 日本経済新聞朝刊

   日本電信電話(NTT)の改革案を検討している第2次NTT改革与党プロジェクトチーム(座長、亀井久興自民党衆院議員)は29日、NTT東西地域会社の過剰雇用を早急に解消するよう求める報告案をまとめた。雇用調整の原資としてNTTが保有するNTTドコモ株の売却益を充てるべきだとしている。NTTグループの各社の独立を促すとともに、地域通信網を独占するNTT東西の高コスト構造を解消するのが狙い。高速インターネットを安く提供できる環境づくりを目指す。
 報告案では高速ネット普及が日本の国際競争力を維持するため急務になっていることを踏まえ、公正競争ルールを確立するよう郵政省や公正取引委員会、NTTに要請している。NTTや電力会社が保有する光ファイバー網の通信事業者への開放などを求めているほか、ネット時代に対応したNTTの経営構造改革が欠かせないとしている。
 特にNTT東西に関しては、40歳以上の社員が3分の1を占めている高コスト構造を問題視。ドコモ株の売却益を割増退職金などの原資に充て、人員削減を進めるよう求めている。
 現在禁じられているネット接続事業への進出なども認めるとしている。
中高年の試行採用支援

2000/11/30 日本経済新聞朝刊

   労働省は29日、中高年の再就職支援策を発表した。45歳以上の中高年を試行的に雇用した企業に対して、雇用者1人当たり月100,000円(最高3カ月間)を助成する。高齢者が働きやすいように職場のバリアフリーかを実施した企業に、3000万円を上限として、費用の3分の2(中小企業は4分の3)を助成する。
スト向け積立金組合員に返却 6割の41億円

2000/11/29 日本経済新聞朝刊

  松下電工労組 1人平均26万円に
 松下電工の労働組合(組合員約15,000人)は、ストライキの際の賃金補てんを目的とした積立金の約6割(41億円)を12月18日付で組合員に返却する。返却額は1人当たり平均26万円程度。ストライキを決行するような深刻な労使対立がかげをひそめて巨額の積立金は不要になったための措置。大手企業の労組は長年使わないままスト対策資金の積み立てを続けているが、返却するのは珍しい。
 松下電工労組は返却金の中から1,000円ずつ拠出してもらい、松下電工の株式を労組名義で購入する。株式取得で経営への組合の意見反映を期待している。
 同労組はスト決行時に組合員に賃金を補てんするための資金である「闘争積立金」約25億円、「特別積立金」約41億円を蓄えてきた。このうち特別積立金を廃止する。
 闘争積立金だけでも他社を上回る11日間分の賃金を賄えるほか、特別積立金の利息で運営してきた組合施設を縮小するため、同積立金の必要性が薄れていた。
全年金を一本化 政府懇確認 共済には財政支援

2000/11/29 日本経済新聞朝刊

   政府の「公的年金制度の一元化に関する懇談会」は28日、職種によって5つの制度に分かれているサラリーマンの公的年金を将来的には財政面で一本化していく方向を確認した。他の制度に比べて財政状態の良い私立学校教職員の共済年金が難色を示していたこともあり、全制度の一本化方向が確認されるのは初めて。ただ、実現までには相当な時間がかかりそうだ。
 一元化懇談会は農業協同組合職員などの農林共済年金の財政が悪化していることから、一般企業のサラリーマンの厚生年金との統合を検討している。将来の公的年金の全体像を示す必要もあると判断し、議論していた。
 国家公務員と地方公務員の両共済年金制度は一方が財政悪化した場合にもう一方が財政支援する仕組みを2004年度にも構築すると表明済み。28日の会合で両制度は財政支援制度をつくった上で、さらに厚生年金との財政一本化も検討すると発表した。私学共済年金も厚生年金などとの一本化を検討していくことを打ち出した。
 一元化懇談会では今後、農林共済年金と厚生年金の統合について条件面での詰めの議論に入る。年内にも結論を出す考えだ。
「確定拠出法案」衆院で審議入り

2000/11/29 日本経済新聞朝刊

   衆院は28日午後の本会議で、掛け金が一定で運用結果に応じて将来の年金額が変わる確定拠出年金(日本版401k)法案の趣旨説明をし、審議に入った。今の国会は会期末が迫っているため、法案は継続審議扱いとなり、成立は来年の通常国会にずれ込む見通し。来年3月としている法律の施行期日も大幅に遅れそうだ。
児童手当9割に拡大 公明が独自案

2000/11/29 日本経済新聞朝刊

   公明党は28日の与党児童手当に関するワーキングチーム(柳沢伯夫座長)会合で、児童手当の拡充問題について、現行は小学校入学前の全児童の7割となっている支給率を「9割程度」に拡充する独自案を提示した。
 所得制限の緩和により受給者を増やす内容だが、新たに国や地方が負担する約1000億円の財源確保のメドは立っていない。2001年度予算編成へ向け与党内でぎりぎりの調整が続く見通しだ。
 公明党案は、手当の金額は変えず支給率を90%に高めるに所得制限をサラリーマン夫婦の場合で現在の「670万円未満」から「八百数十万円未満」に引き上げる。これにより受給者は約130万人増える見通しだ。
 会合後、記者会見した自民党の柳沢座長は拡充に必要な財源に関して、医療など社会保障制度の効率化や各種控除の見直しにより捻出することも考える、との見方を示した。
 ただ財源事情が厳しいなか大蔵、厚生両省とも大幅な拡充に強い難色を示しており、調整難航は避けられない。
 ワーキングチームは来週、公明案を改めて協議する。児童手当の受給者は現在約570万人。支給額は第2子まで月5,000円、第3子からは月10,000円。
健保の9割赤字に 来年度 2割が解散も視野

2000/11/28 日本経済新聞朝刊

   大企業を中心とする健保組合の全国組織である健康保険組合連合会は27日、全国約1800の健保組合のうち9割弱が2001年度予算で赤字になるとの見通しを明らかにした。高齢者医療費の急増が背景。赤字額は4109億円と過去最悪となる見通し。政府・与党が目指している2002年度の高齢者医療保険の制度改革が実現しない場合、2割強の組合が解散も視野に入れているという。
 健保連は来年度予算編成などに関し緊急アンケートを実施、全組合の9割の回答を得た。健保組合はこれまで余剰資金が出れば別途積立金として積み上げてきた。毎月の医療費支出額などに基づき一定の法定準備金を用意しておくことも義務づけられている。
 2001年度は赤字基調の長期化に伴い、積立金を保有していないか、あっても金額が足りないため法定準備金を取り崩さざるを得ないと見ている組合が合わせて345に達した。取り崩しの予定額は総計845億円に上る。
 財政基盤がぜいじゃくで同年度に準備金が底をつくとした組合も102(2000年度予算は13)あった。
介護・育児休業の差別禁止 取得・申請者 解雇以外も保護

2000/11/27 日本経済新聞朝刊

  労働省部会案
 仕事と家庭の両立支援策を検討してきた労働省の女性少年問題審議会女性部会(部会長・渥美雅子弁護士)の公益委員案が26日、明らかになった。育児、介護休業を申請、取得した人に対する不利益な取り扱いを禁じ、企業は解雇を含むすべての差別的行為を行ってはならないことを明示。また、小学校に就学するまでの子供が病気などになった場合、看護のため休暇制度の創設を提言した。同審議会(会長・若菜允子弁護士)は12月下旬にも公益員案に沿った形で建議する見通し。
 
子供看護休暇も提言
同法は育児・介護休業を申請、取得した人を解雇することを禁じている。しかし、実際には正規従業員が復帰後、パートタイマーに命じられたり、同期入社の同僚より昇格や昇進が遅れたケース、退職金の算定期間が1年以上短縮される例が報告されている。
 政府の少子化対策推進関係閣僚介護は1999年、安心して休業が取れるよう「復帰後の職務や処遇の在り方など制度面も含めて検討する」こととしていた。
 今回明らかになった公益委案は「休業の申し出や取得を理由とする不利益な取り扱いがあってはならず、これを禁止する」と明言、解雇以外の差別的措置を全面的に禁止するよう打ち出した。これを受け労働省は、不利益な取り扱いについて基準作りを急ぐ。
 公益委案はまた、子供の病気やけがのときに休みを取りやすくし、年休を使い切って休めないという不安も解消するため、「小学校就学の始期に達するまでの子の看護のための休暇制度を法律に盛り込むのが適当」とした。これまでの議論で労働側は「子供とそれ以外の家族を対象として年10日の看護休暇が必要」と主張。経営側は「新たな休暇を義務化することによる負担は耐え難い」と反対していた。
 一方、残業時間は98年の労働基準方改正で女子保護規定が解消、緩和措置として2002年3月までの期限付きで、小学校入学までの子供の養育や介護が必要な家族の世話をしている女性は年間150時間の範囲となった。公益委案ではこれを引き継ぎ、男女とも年間150時間を上限に残業免除を請求できる制度を育児・介護に盛り込むよう求めている。
 このほか、公益委案は(1)1歳未満の子育てのために義務づけられている短時間勤務制度やフレックスタイム制などについて、子供の年齢を引き上げる(2)企業が仕事と家庭の両立のための取り組みをしやすいよう法律で実施体制を明確にする--などを盛り込んだ。

【Add 2000.11.26】

  介護保険 認定システム改良へ

2000/11/26 日本経済新聞朝刊

  厚生省、年度内に実態調査
 厚生省は介護保険で高齢者の介護必要度合いを判定するシステムを改良するため、高齢者の状態によってどのような介護が実施されているかについて本格的な調査を年度内に実施する。現行システムでは痴ほうの高齢者の介護必要度合いが低めに出るなどの問題があるため。調査結果をもとにさらに検討を加え、早ければ2002年度にもシステムを改良する考えだ。
 現在の判定システムでは調査員が高齢者を訪ね、「自力で歩行できるか」など85項目について調査。結果をコンピューターにかけると判定結果が出る。この際、痴ほうの高齢者は実態に比べ軽く判定される傾向があり、専門家による2次判定で結果が変更されることも多い。わずかな訪問調査結果の違いで判定結果が大きく変わるなどの批判もある。
 今回の調査は来年2-3月に実施する。12月中には本調査のための予備調査を施設と在宅で受ける高齢者、合計400-500人を対象に実施。この予備調査で本調査の対象者、調査項目などを詰める。

【Add 2000.11.25】

  雇用調整金 支給企業個別に判断

2000/11/25 日本経済新聞朝刊

  業績悪化など条件 労働省「不況業種」廃止に対応
 労働省は来年10月をメドに、企業の雇用維持を支援する雇用調整助成金(雇調金)の支給条件を見直す方針だ。不況業種を指定したうえで経営不振企業に支給する方式を廃止する一方、業種にかかわらず個別企業の業績をみて支給できるようにする。新しい産業への労働力移動を促すため業種単位での支援を打ち切るが、景気変動などで業種が悪化した企業の雇用を支援することで、失業者の増加を抑制できるとみている。
 雇用調整助成金は、企業が従業員を解雇せずに休業や職業訓練させた場合に、その費用の一部を補助するもので、(1)長崎屋、そごうなど大型倒産企業の取引先(2)北海道・有珠山周辺など大規模な災害を受けた地域の企業(3)雇用情勢が厳しい地域の企業(4)不況業種の企業--を対象に支給している。
 今回見直すのは不況業種の企業に対する助成。石炭鉱業、べっ甲製品製造業など構造的不況業種47業種と、景気変動などで一時的に事業の縮小を余儀なくされている99業種が雇用調整助成金の支給対象になっているが、労働省は不況業種の企業への雇用調整助成金の支給を廃止する方向で調整している。
 ただ、一時的な景気変動などで業績が悪化した企業がすぐに雇用調整して、雇用不安を招く恐れもある。このため、業界として好況か不況かを問わず、生産量または販売量が著しく低下した企業を雇用調整助成金の対象とし、業績回復までの間の雇用維持を支援する考えだ。
 支給基準は来年夏までに中央職業安定審議会(労相の諮問機関)で審議する。現在、過去3ヶ月の平均生産量または販売量が前年同期を5%以上下回った業種を不況業種として雇用調整助成金の対象としているが、業績悪化企業への支給基準はこれより厳しくなる見通しだ。
 
 

現在

来年10月以降

不況業種の企業
 ・構造的不況業種(現在47業種)
 ・一時的な不況業種(現在99業種)

×(廃止)

雇用情勢の厳しい地域(現在15地域)の企業

大型倒産企業の取引先

大規模災害地の企業

一時的に業績が著しく悪化した企業

×

○(新設)

雇用ミスマッチ広がる

2000/11/24 日本経済新聞朝刊

  みずほ証券分析 企業、専門性を重視
 職を求めている人の希望と企業側の要求が食い違う「雇用のミスマッチ」が拡大している。みずほ証券エクイティ調査部の分析によると、求人のうち就職に結び付かなかった数が雇用者数などに占める比率を示す「ミスマッチ率」は7-9月期に2.5%となり、4・四半期連続で前期を上回った。企業が採用にあたって専門性を一段と重視しているためで、ミスマッチ比率の上昇は企業業績の改善に伴い上昇が一服している失業率の高止まりにつながると見られる。
 みずほ証券は総務庁や労働省の統計に基づき、求人件数から就職件数を引いた値を、雇用者と求人件数の合計から就職件数を引いた件数で割って「ミスマッチ比率」を算出した。同比率は1999年半ばに1%台まで低下したが、同年後半から上昇に転じ1年で0.6ポイント上昇した。
 有効求人倍率が99年後半から上昇するなど企業の求人意欲は高まっているが、ミスマッチの拡大と並行して雇用者数は伸び悩み失業率も4%台後半で推移している。同証券は一般事務員や営業・販売関連事務員の雇用環境が厳しくなっていると指摘している。
トヨタ、定年後の雇用延長 ホワイトカラーに拡大

2000/11/24 日本経済新聞朝刊

  初年度枠は計200人
 トヨタ自動車は2001年度から本格導入する60歳定年後の雇用延長制度について、対象者を生産現場の作業員だけでなくホワイトカラー(いずれも管理職は除く)にも広げるとともに、初年度の雇用枠を計200人とすることを決めた。2001年春闘を前にトヨタが雇用延長の枠組みを固めたことで、自動車業界の春闘でも同制度を巡る労使協議が一段と活発化しそうだ。
 雇用延長制度は本人の選択と会社による選別が前提。その上で(1)63歳まで1年ごとの契約で、トヨタが直接雇用するスキルドパートナー制度(2)人材派遣会社からアウトソーシングの受託会社に登録し、工場設備の保全や寮の管理などトヨタが用意した仕事に従事する派遣・請け負いコース(3)海外子会社や関連メーカーへの再就職をトヨタがあっせんする制度--の3本立てで運用する。
 スキルドパートナーは現場作業員にあたる「技能員」だけが対象だが、それ以外は「事務員」や「技術員」と呼ぶホワイトカラーも対象に含める。幅広い職層の社員に定年後の就労の選択肢を用意する。
 2001年度中に60歳定年を迎える社員のうち雇用延長の応募資格を持つのは現場作業員が約1,000人、ホワイトカラーが約70人。これに対し、2001年度の雇用延長枠はスキルドパートナーで約100人、派遣・請け負いコースが約100人の計約200人とする。子会社などへの再就職あっせん制度は2002年度以降に導入する。
正規採用にらみ派遣拡大 規制緩和第2弾 来月から

2000/11/23 日本経済新聞朝刊

  登録人員確保急ぐ 受け入れ企業に慎重論も
 労働者派遣法の改正による人材派遣規制緩和の第2弾が12月1日から実施される。短期間の雇用後に派遣先での正規採用の道を開く「紹介予定の派遣」(テンプ・ツー・パーム)を解禁するのが目玉。派遣市場の規模は100万人に迫る勢いで、高度な専門技能・知識が求められる情報技術(IT)や金融関連を中心に成長が加速すると期待され、派遣各社は新卒者などの取り込みに躍起だ。ただ昨年12月の職種規制撤廃で認められた営業など新職種の派遣実績は低調。産業界からはもう一段の規制緩和を求める声が高まっている。
 「紹介予定の派遣」は派遣期間終了後、派遣先に正社員候補として職業紹介することを前提にしている。受け入れ側は人材の能力を派遣期間中に見極められ、派遣会社も紹介手数料を受け取ることができる。
 人材派遣業界は紹介予定の派遣解禁で市場が一気に拡大するとみて準備を急いでいる。アデコキャリアスタッフ(東京・港)は全国51事業所で解禁初日に職業紹介の認可を取得する。33万人の登録スタッフの「約3割は正社員志向」(営業統括本部)。特に需要が多いインターネット構築などに携わる技術者やシステムエンジニア(SE)、金融機関事務職などの売り込みを急ぐ。リクルートスタッフィング(東京・千代田)も27日に顧客企業向け説明会を開く。
 人材サービスのフルキャスト(東京・渋谷)はアルバイトとして企業に人材を紹介し、正社員としての採用が決まると手数料を受け取る新サービスを10月から始めている。紹介予定派遣に似た形態で、このほど2人を受け入れた繊維商社、ミノウラ(東京・墨田)の箕浦一雄常務は「互いの相性を見極められるので便利な制度」と評価。紹介予定の派遣の潜在需要の大きさをうかがわせる。
 「新卒や第2新卒(入社後わずかな期間での転職者)といった若年層での需要が拡大する」(マンパワー・ジャパン=東京・千代田)との声もある。「新卒の戦力は未知数なので、いきなり正規採用するにはリスクが伴う」(三菱総合研究所の武藤泰明・主席研究員)からだ。
 人材派遣への新規参入も増えている。松坂屋の子会社、松坂サービス(名古屋市)は派遣業に参入した。関連企業や取引企業に販売員を派遣する。居酒屋チェーンの養老乃瀧も派遣事業に進出した。
 ただ、派遣社員を受け入れる側は「中核的な人材は通常の採用で採りたい」(松下電器産業)「正社員になる資格が入社4年目以降である現在の客室乗務員の方が利点は大きい」(全日本空輸)とする企業がまだ圧倒的に多い。
 社員に専門性を求める企業では、派遣社員活用を検討するところも増えている。ニチメンは「派遣期間を試用期間と位置付け語学力や専門スキルなどを見極められる」と派遣社員登用に前向き。日本ヒューレット・パッカードも「中途採用なら検討したい」という。
 インターネット関連の企業でも派遣社員の活用意欲はおう盛。ネットオークションなどを手がける楽天の派遣社員は現在20人。6月の4、5人から急速に増えた。正社員採用までのつなぎとして主にアシスタント業務で派遣社員を活用。エンジニアも数人、派遣社員で賄っている。
 
  人材派遣を巡る規制緩和の流れ
改正労働者派遣法の施行(1999年12月)
  ・派遣対象職種を原則自由化。ただし港湾運送や建設、警備、医師、看護婦などの業務と製造業務(当分の間)を除く
  ・新職種の派遣期間は同じ職場・同じ業務について1年。期間限定のプロジェクト業務は3年。産前産後や育児休業の代替要員は2年。
紹介予定の派遣解禁(2000年12月)
  ・12月1日以降に派遣スタッフ・派遣先の同意の下で派遣契約を結んだものについて有効
昨年末解禁の「営業」「販売」 需要は伸び悩み

2000/11/23 日本経済新聞朝刊

  期間限定が壁
 職業紹介を前提としない通常の人材派遣でも、OA機器操作、財務処理、秘書など26に限られていた職種が昨年12月施行の改正労働者派遣法によって原則自由化された。だが営業、販売などの新職種は需要が伸び悩んでいる。派遣期間が原則1年に限定されており、メリットが少ないと考える受け入れ先企業が多いためだ。
 日本経済新聞社のアンケート調査では新たに解禁された職種の総派遣者数に占める割合はもっとも需要の多い営業や販売でも最高7.4%にとどまった。「派遣期間経過後は派遣先に直接雇用の努力義務が発生するため受け入れ側にとって魅力がない」との意見が大勢だ。営業や販売業務は期間の制限のないアウトソーシングの形で受ける派遣会社も多い。
 大手派遣会社、パソナ(東京・千代田)の担当者は、期限切れが迫っている派遣社員と受け入れ企業への対応に追われている。同社では11月末からの1箇月に満期を迎える派遣社員が500人以上おり、派遣先は約100社にのぼる。「今の人に働き続けてほしいという顧客企業が多いが、納得してもらうしかない」と上田宗央社長は語る。
 派遣社員の多くは期間延長を望んでいる。大阪府が派遣社員に実施した調査では、同じ派遣先で働きたい期間が「1年以下」は21%にすぎず、35%が「3年超」と答えている。
 産業界からも派遣期間の延長を望む意見が出ている。高原慶一朗ユニ・チャーム社長は10月、産業新生会議(首相の諮問機関)で派遣期間を全業務で3年に延長するよう求めた。日本人材派遣協会の尾野博会長(マンパワー・ジャパン社長)は「期間制限は派遣スタッフだけでなく派遣先にも大きな負担」と話す。
 ただ労働省は「新制度は昨年導入したばかりなので影響を見極めたい」(職業安定局)として、早期見直しには慎重だ。
派遣者数12%増 4-9月、本社調査

2000/11/23 日本経済新聞朝刊

  金融関連伸びる
 派遣需要は急速に高まっている。日本経済新聞社が全国の人材派遣会社330社を対象に10月に実施したアンケート調査(有効回答率38.8%)によると、回答企業の73.4%で2000年度上半期(4-9月)の派遣者数が増加した。伸び率は平均で12.8%と2ケタ成長となった。20-49%増という派遣会社も21.9%あった。通信、インターネットなどIT関連や新商品の投入が相次いでいる金融関連職種がけん引役となっていることが背景にある。
 回答企業の48.4%が男性の派遣労働者の採用が伸びたとしており、女性中心だった派遣市場が様変わりしつつある。
 紹介予定の派遣解禁で、売上高が増えるとの回答が62.5%に達し、期待は大きい。解禁で見込まれる派遣市場の変化(複数回答)では「新卒・第2新卒の登録が増える」が62.5%、「男性の登録が増える」が50.0%あった。
 派遣先企業が派遣会社に支払う派遣料金を見ても、専門性の高いSEなどが1時間当たり(首都圏)3,000円以上、金融専門職でも同2,500円以上と、一般事務の2倍以上の水準にある。

【Add 2000.11.19】

  転職向け職業訓練に助成 来年10月メド

2000/11/18 日本経済新聞朝刊

  労働省 賃金助成は6割削減
 労働省は雇用に関する助成金の見直しに伴い、企業が離職予定の従業員に転職のための職業訓練を実施した場合に費用の一部を助成する方針を決めた。在職中から再就職の準備を促すことで「失業なき労働移動」を進めるのが狙いで、2001年10月からの実施を目指す。同時に、従業員を新規に雇い入れたときの賃金助成(雇い入れ助成)の支給総額を6割以上削減する方向で調整している。同省は雇用政策の中心を雇用維持から新産業への労働移動に転換する計画で、その柱を賃金助成から能力開発の支援に改める。
 創設を検討している職業訓練助成策では、企業が離職予定の従業員に有給休暇を与えたうえで職業訓練費を負担した場合に、費用の一部を助成する。助成額は1日当たり数千円程度になる見通し。離職予定者が在職中から再就職のために必要な能力を身に付けられる環境を整備することで、人材が成長産業へ円滑に移動するよう促す。
 雇い入れ助成は、中高年や障害者を企業が新規に雇い入れた場合や、新産業の企業が新たに従業員を雇用した場合などに、その企業に賃金の一部を一定期間助成する制度。
 雇用保険を財源とする「雇用保険3事業」の助成金の予算額(2000年度当初予算では6927億円)の約3割を占め、雇用政策の柱の1つになっている。
 ただ実際に支給されている額は1999年度で予算の6割弱にとどまっており、雇用創出効果を疑問視する意見もある。
 このため支給期間を短くし、支給額も減らす。現在は原則として賃金の3分の1(中小企業は除く)を1年間助成している。これを支給額を賃金の4分の1(同)とし、支給期間を6箇月に短縮する。
 雇用保険3事業は雇用保険の保険料(本人が賃金の0.4%、企業が0.75%負担)のうち、0.35%分(企業負担分から充当)が財源で、59種類の助成金がある。労働省はこのままでは、数年で積立金が底をつくと予想。財政健全化などの理由から、助成金を整理統合する方針を打ち出している。3年以内に支出を2割程度削減する考えだ。
冬のボーナス3年ぶり増 IT業種けん引

2000/11/17 日本経済新聞朝刊

  伸び小幅0.83% 本社中間集計
 日本経済新聞社が16日まとめた今年冬のボーナス調査中間集計(9日時点)によると、1人当たりの支給額(加重平均)は724,942円で、前年冬の実績比0.83%増え、3年ぶりのプラスとなった。電機、精密機械といった情報技術(IT)関連の業種や自動車関連が好調だ。ただ内需が主体の建設、百貨店・スーパーなどマイナスが続く業種も多い。低迷する個人消費のけん引役にはやや力不足との見方が出ている。
 全産業の支給額では、1975年の調査開始以来最大の落ち込みとなった昨冬(4.90%減)からは回復したものの、プラス幅は小さい。業種別にみると、昨冬が5.46%減だった製造業は1.06%増と3年ぶりのプラス。一方、非製造業は0.25%減と3年連続でマイナスだった。製造業は19業種のうち9業種が昨冬実績を上回った。電機の支給額は昨冬の3.99%減から今冬は4.40%増に転じた。一方、非製造業は19業種のうち8業種がプラス。
 ボーナス支給額が小幅増にとどまったのに加え、業種格差、個人格差が広がっており「消費のすそ野が急に広がる環境ではない」(朝日ライフアセットマネイジメントの高尾義一常務)という声が出ている。
2025年まで1.57%成長可能

2000/11/17 日本経済新聞朝刊

  高齢化進むが生産性は向上 大蔵省研レポート
 大蔵省の財務総合政策研究所は16日、「少子高齢化の進展と今後のわが国経済社会の展望」と題するリポートを発表した。今後労働力人口が減っても、2025年まで国内総生産(GDP)の平均伸び率で1.57%を達成できると試算している。
 日本の労働力人口は1998年度から2025年度までで平均0.43%減る見込み。このままでは経済はマイナス成長となるが、同研究所は労働生産性について米国で1990年代に平均1.9%伸びていることから、まだ伸びていない日本で2%程度の伸びが実現できると見ている。
 経済成長率は労働力人口と労働生産性のそれぞれの伸びの合計なので、差し引き1.57%の成長率が実現できると試算した。
 また、それ以上に経済成長を押し上げるには女性を積極的に雇用することが有効と説明。保育所を増設するなど女性が働きやすい環境を整えることで、米国やドイツ並みの女性の就業率を実現できれば、2025年には200万人の労働力を創出できるとしている。
 高齢者を支えるための勤労世代の負担については今後増えることが確実としつつも、労働生産性が上がれば所得も伸びるため、負担増を賄ってもなお現在より可処分所得が増えると主張している。
 リポートは社会保障制度の将来に対する悲観論を打ち消したい大蔵省の意向がにじみ出たと言えそうだ。
不況業種の雇用支援 廃止

2000/11/16 日本経済新聞朝刊

  労働省方針 ITへの移動促す
 労働省は雇用に関する助成金の見直しに伴い、構造的な不況業種で働く従業員の雇用を支援する特定不況業種雇用安定法(業種法)を来年6月末に廃止する方向で最終調整に入った。構造的不況業種の雇用維持などをしてきたが、衰退産業を延命させ、経済の構造転換に合わせた労働力の移動を遅らせるとの指摘に対応する。1978年から実施してきた政策を廃止し、情報技術(IT)など新産業への人材移動を促すのが狙いだ。
 労働省は、15日開いた中央職業安定審議会(労相の諮問機関)の小委員会で業種法廃止を提示した。労働側から「解雇を制限するルールを明確にするなどリストラを促進しないような措置を講じるべきだ」との意見が出たため、これらの課題を調整したうえで、22日に最終的な結論を出す。12月上旬に開く同審議会が最終報告としてまとめ、来年の通常国会に廃止法案を提出する予定。
 業種法では、労働省が構造的不況業種を「特定不況業種」と指定し、その業種で働く従業員の雇用維持、転職を支援している。(1)指定業種の企業が従業員を解雇せずに休業、出向させた場合の助成(2)指定業種の企業が従業員に転職のため職業訓練をした場合の助成(3)指定業種の労働者を雇い入れた企業への賃金助成--が柱。現在は石炭鉱業、綿・化学繊維紡績業など9業種を指定している。
 ただ転職支援については利用が少なく、不況業種の雇用を維持するだけで、新産業への労働移動を遅らせるともいわれていた。また今後の転職支援は不況業種に限らず全産業で実施すべきだとの意見もある。
職探しの動き加速 労働参加率上向く 第一生命経済研調べ

2000/11/16 日本経済新聞朝刊

   職探しをあきらめていた失業者が求職活動を再開する動きが目立ち始めた。仕事をしている人と求職中の人が15歳以上の人口に占める割合を表す「労働参加率」は、6月を底に上昇に転じた。景気回復に伴って職に就く機会が増えているとの意識が広がったとみられる。
 第一生命経済研究所の調べによると、労働参加率(季節調節済み)は、7月以降3ヶ月連続で前月比プラスとなった。生産活動の活発化や業況感の改善に伴う企業の求人意欲の回復で、これまで求職をあきらめていた人々が本格的に仕事を探し始めたようだ。
 もっとも労働参加率の上昇は失業者の低下を阻む要因となる。同研究所は今後1年程度、失業率が4%台後半で推移すると予想している。
冬のボーナス0.7%増

2000/11/16 日本経済新聞朝刊

   みずほ証券は15日、2000年冬のボーナス(賞与)予測を発表した。民間企業の1人当たり平均支給額は前年比0.7%増の481,000円で、4年ぶりに前年を上回る見通しだ。企業収益の改善が背景。一方、公務員の1人当たり平均支給額は約85万円で、3.0%減。
日本の労働生産性7位 

2000/11/16 日本経済新聞朝刊

   社会経済性本部(亀井正夫会長)は15日、日本の労働生産性が主要先進7ヶ国の中で7位、経済協力開発機構(OECD)加盟29ヶ国では20位との国際比較を発表した。1998年の国内総生産(GDP)を購買力平価で評価し日本の就業者1人当たりの付加価値(労働生産性)を計算すると760万円だった。

【Add 2000.11.12】

  施設介護 民間に解禁へ

2000/11/12 日本経済新聞朝刊

  厚生省検討 特養ホーム不足解消
 厚生省は介護保険の対象となっている特別養護老人ホーム運用をはじめとする施設養護サービス事業について、企業など民間事業者の参入を事実上、解禁する方向で検討に入った。2003年にも民間企業が成立しやすい「介護法人」(仮称)を作り、参入への道を開く案を軸に調整する考え。民間参入によって現在介護施設サービスを手がけている社会福祉法人との競争を促し施設サービスの質を高めるとともに、特に都市部で深刻な特養ホーム不足の解消をめざす。施設への企業の関与を厳しく制限してきた介護政策を転換することになる。
 
2003年にも新制度
 関係団体などとの調整がつけば、厚生省は2003年の通常国会に社会福祉事業法改正案を提出する見通しだ。
 厚生省が参入規制緩和の検討を始めたのは、介護保険の対象で寝たきりや痴ほうの高齢者が入居する特養ホームと、家庭復帰を目指してリハビリなどを行う老人保健施設の2つ。現在、老健施設は社福法人と医療法人、農協など一部民間団体や公的な機関にしか運営が認められておらず、特養老人ホームの運営は社福法人と自治体に限定されている。
 しかし、現在の社福法人などによる施設サービスに対しては画一的で魅力に乏しいとの批判が出ている。また、特養ホームの不足から入所を待たされている高齢者は1998年時点で47,000人に上り、都市中心部では入居に何年も待たされることも珍しくない。
 民間参入は新設する介護法人を通して実施する考え。介護法人は病院や診療所を運営している医療法人をモデルとし、企業が出資して設立できるようにする。社福法人は採算悪化で法人経営から撤退する場合、整理損を差し引いた残余財産を国に納めなければならないが、介護法人には残余財産納付を義務づけず、出資者側が投資を一定部分回収できるよう改める方向だ。
 民間参入は介護事業を手がける企業に有利に働く可能性が強い。現在、コムスン、ニチイ学館、ジャパンケアサービスなどの企業は主にホームヘルパー派遣などの在宅介護事業に参入しているが、当初予定の売り上げを達成できず苦戦している。施設事業に参入できれば、在宅サービスの利用者が短期間施設に入居するなど介護、施設の両事業を一体的に運営でき、経営効率を上げられる。
 ただ、医療法人との運営条件をそろえるため、介護法人には社福法人が免除されている法人税を課す方針。内部留保は認めるが、過度に利益を追求しないように出資者への配当は認めない。施設運営にあたって制約が残る可能性もあり、企業の参入意欲がどの程度高まるか不透明な面もある。
自営業者の減少顕著に 前年比30万人減 5箇月連続 5-9月

2000/11/12 日本経済新聞朝刊

  倒産増や競争激化
 自営業の減少が顕著になっている。総務庁の労働力調査によると、5月から9月まで5箇月連続で前年同月比30万人以上減少した。自営業の倒産が大幅に増えているためだ。一時増えていたとみられる創業者が減少している可能性もある。労働省は自営業者の減少が雇用情勢に与える影響が大きいとみて、年内に自営業者の動向について調査する。
 
労働省 年内に実態調査
 労働力調査によると、9月の自営業者は前年同月比43万人減の726万人。8月と比べても19万人減っている。総務庁は「これまで一時的に大きく減少することはあったが、前年同月比で30万人以上の減少が何ヶ月も続いたことは過去になかった」という。
 業種別では、卸売・小売業・飲食店、サービス業、製造業で大幅に減少している。特に卸売・小売業・飲食店では減少幅が大きく、9月は前年同月比15万人減った。
 大幅減の理由は倒産の増加にある。民間の調査会社、東京商工リサーチは「信用保証協会の特別保証制度の効果で昨年秋まで個人企業の倒産は抑制傾向にあったが、制度の効果が一巡し、企業の経営破たんが相次いでいる」と説明する。
 小売業の自営業者の減少の背景には、着実に店舗数を増やしている大型小売店との競争激化がある。通産省の商業販売統計によると、今年1-3月の全国の百貨店、スーパーの合計店舗数は前年同期比4.3%増。6月の大規模小売店舗法(大店法)廃止をにらんだ駆け込み出店の影響を自営業者が受けた格好だ。
 一方、総務庁の調査だけからでは把握しきれないが、創業者が減っているとの見方も出ている。昨年11月から今年1月まで3箇月連続で自営業者は前年同月比で10万人以上増えていた。通産省は「企業の雇用調整が激しくなる中、一時、サラリーマンを辞め創業する人が増えていたと考えられるが、最近の自営業者の減少をみると創業者が減っているのかもしれない」と指摘している。
 労働省は自営業者の倒産が増えている背景、廃業した自営業者や家族従業者の雇用動向などを聞き取り調査する。「分析の結果、必要ならば自営業者用の雇用対策を検討したい」(伊藤庄平事務次官)としている。
中高年の再就職支援 採用の年齢制限禁止を

2000/11/12 日本経済新聞朝刊

  さくら総研提言
 さくら総合研究所は働く意欲がある中高年層の人々の再就職を後押しするため、採用時の年齢制限の禁止を法制化するよう求める提言をまとめた。「少子高齢化が進み、企業の若年者優先の採用はいずれ限界となる」と強調、企業が年齢にこだわらず転職者を受け入れるよう政府などに環境づくりを求めている。
 若年層は転職が容易な半面、中高年層の再就職では企業が年齢制限で「門前払い」したり、収入が大幅に減るなど不利な条件が多い。さくら総研は9割以上の企業が求人で年齢上限を設けているとの日本労働研究機構の調査結果をもとに「45歳以上ではごく一部の業務しか就職の申し込みができない」と指摘。
 提言では、募集や採用で女性差別を禁じた男女雇用機会均等法にならい、中高年層を若年層と差別しないことを法律で定めるよう求めている。
 自己都合の離職者に対しては3箇月は失業保険を支給しない現行制度も、中高年層については経済事情により1箇月程度に短縮すべきだと主張。家族を養ったり、住宅ローンの返済に追われたりしている中高年層の立場への配慮を促している。
単身寮へ移動中の事故 「通勤災害に該当」

2000/11/12 日本経済新聞朝刊

  秋田地裁、遺族給付認める判決
 自宅から単身赴任先の寮に戻る際に交通事故で死亡したのは通勤災害だったとして、死亡した3人の会社員の妻が能代労働基準監督署署長に労災保険法に基づく遺族給付(遺族年金)の不支給処分取消を求めた訴訟で、秋田地裁は11日までに、同労基署長に処分の取り消しを命じた。
 杉本正樹裁判長は判決で「寮へ向かうのは工事現場に行くのと同時で、通勤災害に該当する」とした。
 判決によると、死亡した建設会社社員3人は、工事現場から約9キロ離れた秋田県能代市の寮に住み込み発電設備の工事をしていた。
 1993年3月、一時帰省で新潟県内のそれぞれの自宅で戻った後、会社のワゴン車で寮に戻る途中、秋田県男鹿市の橋から車が水路に転落し死亡した。
 原告の妻3人は同年4月、同労基署に通勤災害に基づく遺族給付を請求したが「寮は就業の場ではなく住居で、そこへ向かう途中の事故」などとして認められなかった。原告側は「会社の車で寮へ向かう途中に起きた事故で、通勤災害に当たる」などと主張していた。
大卒内定率 3年ぶり微増

2000/11/11 日本経済新聞朝刊

  63.7% 男子、最低を更新 来春卒業予定者
 来春卒業予定の大学、短大生の就職内定率は、依然低水準ながらもそれぞれ3年ぶりに微増に転じたことが10日、文部、労働両省の調査で分かった。10月1日時点の内定率は大学生が前年同期比0.1ポイント増の63.7%、短大生は同0.1ポイント増の36.6%。内定を得ていない大学、短大生は同11,000人減の22万1000人と推計される。男子の内定率が過去最低になるなど、新卒者の雇用はなお厳しい状況だが、文部省は「内定率の悪化に歯止めがかかる兆しが出てきた」(学生課)とみている。
 
女子・理系 やや回復
 大学、短大の調査は文部、労働両省が共同で実施。国公私立大学、短大、高等専門学校計88校の卒業予定者5300人を抽出し、就職希望者に対する内定者の比率を調べた。
 大学生の10月1日時点の内定率は、1998年、99年の2年間で10.0ポイントも低下したが、今年はわずかながら増加。企業は中途、通年採用などで即戦力の人材を求める傾向にあり、新卒の雇用は依然厳しい情勢だが、文部省が大学の就職担当者から求人状況などを聞いたところ「改善傾向がみられる」とする見方も出ているという。
 男女別では、男子が前年同期比0.4ポイント減の66.0%となり、調査を開始した94年以来過去最低となった半面、女子は同2.0ポイント増の59.7%に。女子が3年ぶりにプラスに転じ、全体をわずかながら押し上げた。
 文系・理系別では、文系は前年同期と変わらず62.6%。昨年、同7.6ポイント減と落ち込んだ理系は、同0.4ポイント増の68.4%と持ち直した。
 地域別では、関東が同3.9ポイント増の75.2%だったのに対し、近畿は59.2%と9.0ポイントの大幅減。九州が50.4%、北海道・東北は51.0%と低かった。
 10月1日時点で、就職が内定していない大学生は14万2000人(男子77,000人、女子65,000人)、短大生は79,000人。前年同期より合計で11,000人減少したと推計される。
 
高卒42.5%、北海道で低迷
 労働省は10日、来春卒業予定の高校・中学生の就職内定状況をまとめた。9月末の高校生の内定率は42.5%で、最悪だった昨年同期の41.2%を1.3ポイント上回った。男子は46.6%で、2.4ポイント上昇したが、女子は38.2%と0.1ポイントアップしただけだった。地域別では京阪神が前年同期を3.7ポイント上がったのをはじめ軒並み前年水準を超えたが、北海道、南九州はそれぞれ1.8ポイント、0.1ポイント下回った。
 高校生に対する求人数は206,000人で、前年同期を1.5%上回った。今年7月末と比べても42,000人増えている。求職者数は232,000人と前年同期比2.2%減少。この結果、求人倍率は0.89バイト同0.04ポイント上がった。
 中学新卒者の求人者は2,000人、求職者数は7,000人。求人倍率は0.34倍と7月末より0.12ポイント改善したが、前年同期と比べると0.09ポイント下回った。
児童手当拡充で一致

2000/11/11 日本経済新聞朝刊

  与党チーム 来年度、増額含め検討
 自民、公明、保守の与党3党の児童手当に関するワーキングチーム(柳沢伯夫座長)は10日の会合で、児童を養育している家庭を支援する目的の児童手当制度について、2001年度に支給額の上乗せも含め拡充を目指すことで一致した。今月内にもチームとして見解をまとめて来年度予算案に盛り込むが、金額や財源を巡って調整が難航するのは必至だ。
 児童手当に変わる少子化対策として与党内に浮上している児童年金構想に関しては「公的年金全体の改革議論が進むなか、児童年金の採否だけ決めるわけにいかない」との声が強まり、当面、結論を先送りすることにした。児童手当は所得制限を設け、小学校に入る前の児童を対象に第1子と第2子には月5,000円ずつ、第3子からは同10,000円を支給している。
雇用所得、2年半ぶり増加 今夏0.6%プラスに

2000/11/10 日本経済新聞朝刊

  残業代・ボーナスアップ
 1人当たり賃金に雇用者数を掛けた雇用者所得が今年夏には2年半ぶりに増加したことが日銀の分析で分かった。労働省の毎月勤労統計をもとにした試算で今夏の雇用者所得は前年同期比0.6%増となり、1997年冬(0.9%増)以来のプラスだった。残業代などに加えボーナスが増加基調に転じたことを反映した。ただ雇用者の減少は続いており、雇用者所得全体の回復は緩慢なものにとどまる公算が大きい。
 日銀は毎月勤労統計の指数のうち賃金と常用雇用の指数を掛けた数値を雇用者所得の指数として活用している。国内総生産(GDP)統計の雇用者所得よりも結果が早く分かり、金融政策を運営するうえで日銀が重視する指標の1つと言える。ボーナスの支給時期と一致させるため、1年を春(3-5月)、夏(6-8月)、秋(9-11月)、冬(12月-翌年2月)に分けて算出する。
 雇用者所得は97年冬まで増加が続いたが、金融システム不安が強まった98年春以降は横ばいや減少だった。その後は生産活動の活発化に伴い残業代など所定外給与がまず増加に転じ、99年末からは所定内給与も増加基調となった。
 雇用者所得を構成する要素のうち給与は増加基調が定着しつつあるものの、常用雇用者については0.2%前後の減少が続いている。パート労働者は増えているが、一般労働者の減少が続いているためだ。「企業は経営体力強化を目指して正社員の削減を続け、常用雇用の減少は続く」(モルガン・スタンレー・ディーン・ウィッター証券東京支店エコノミストの佐藤健裕氏)見通し。景気浮揚のカギを握る個人消費は当面、回復感の乏しい状態が続くとみられる。

【Add 2000.11. 5】

  在宅サービスの利用43%どまり 厚生省が介護保険調査

2000/11/ 5 日本経済新聞朝刊

   厚生省が介護保険の在宅サービス利用者について、利用可能な上限額に対し実際にどの程度サービスを利用しているかを調べたところ、平均利用率は43.2%だったことが明らかになった。同省では「当初から見込んでいた程度の利用率」としているが、利用したサービス相当額の1割を負担しなければならない仕組みのため利用が進まないといった批判も出ている。
 調査は今年7月分の介護サービスを対象に、全国の8323人について実施した。利用率を介護が必要な度合い別に見ると、必要度が最も少なく利用限度額も小さい「要支援」と認定された人の利用率が平均54.2%と最も高かった。
「保険外負担」範囲を明示 入院中のTV・クリーニング代など

2000/11/ 4 日本経済新聞朝刊

  不透明な徴収 排除 厚生省指針 患者の同意求める
 厚生省は、医療機関が保険適用外のサービスにかかった実費を患者から徴収する際の範囲や手続きについての運用指針をまとめた。指針は徴収が認められる実費として、クリーニング代やおむつ代などを列挙。料金などが記載された文書に患者の署名を求め、支払に同意していることを確認する。医療機関が利用料を自由に設定できる差額ベッドの数を全病床の5割以上に引き上げる場合の承認基準では、差額ベッドはすべて個室化2人部屋とし、3-4人部屋では認めない。同省では年内にも指針を医療機関に通知する。
 
 保険適用外のサービスにかかる実費を巡っては、厚生省が「あいまいな名目での費用徴収」をしないよう医療機関を指導している。しかし、患者は「お世話料」「レクリエーション代」といった不透明な費用の負担を求められることがあり、同省はサービスの範囲を具体的に定めることにした。
 指針は医療機関が徴収できる実費として(1)テレビ代、理髪代など日常生活に欠かせない費用(2)診療録(カルテ)の写しにかかる開示手数料や文書の発行代金--を例示している。「お世話料」などは事実上徴収できなくなる。
 また、徴収の手続きも厳格化する。受付窓口や待合室に実費徴収の対象となるサービスを掲示し、その内容を患者に「懇切に説明し、同意を確認する」ことを促す。入院保証金などの形をとることが多い「預かり金」を求める場合、精算方法について患者側の同意を得る必要がある。
 一方、全病床の原則5割までに限定していた差額ベッドを5割以上に拡大することを認める。ただ、医療機関が少ない地域で差額ベッドが過度に増えないよう、一般ベッドも、一定割合確保する。5割以上にする場合でも、増設部分はもちろん、既存の3-4人部屋も個室か2人部屋に転換しない限り、差額ベッド代を徴収できない。
 
    保険外費用の徴収などに関する指針
(1) 医療機関が実費徴収できるサービス例
  日常生活に必要なサービスの費用
    おむつ、入院で使う病院着(手術時などを除く)、テレビ、理髪、クリーニングの各代金
  保険と関係ない文書手数料など
    証明書、カルテの閲覧・写しなど開示手数料
  医療機関が本来保険に請求できない費用
    在宅医療に要する交通費、薬代の容器など
(2) 差額ベッドを5割以上にする際の承認基準
  差額を徴収できるのは個室か2人部屋
  入院状況などを総合的に勘案し、一般病床も一定割合残す
医療費 高齢者も1割負担

2000/11/ 2 日本経済新聞朝刊

  健保法改正案衆院委で可決 今国会で成立へ
 衆院厚生委員会は1日、原則70歳以上の高齢者も医療費の1割を支払う定率制へ変更することを柱とした健康保険法等改正案を自民、公明、保守の与党3党などの賛成多数で可決した。改正は患者のコスト意識を高め悪化の一途をたどる医療保険財政を立て直すのがねらいで、70歳未満の患者の自己負担限度額、サラリーマンの健康保険料の上限を引き上げることも盛り込んでいる。2日に衆院通過、参院に送付される運びで、今国会での成立が確実になった。成立すれば一連の改正は2001年1月から実施する。
 現在、70歳以上の患者は医療費がいくらかかったかに関係なく定額(外来は通院1回で530円、入院は1日1,200円)を病院窓口で支払っている。改正後は医療費の1割を支払う制度に改める。
 患者負担が過重にならないよう上限を設ける。外来の場合、200床以上の大病院は月5,000円、中小病院と診療所は月3,000円が上限。診療所は事務負担軽減などのため定率制と1日800円の定額制を選択できる。入院の上限は原則37,200円だが、低所得者向けの軽減措置を設けた。
 
現役世代も負担増に 健保法改正案 今国会成立へ
 衆院厚生委員会で1日可決された健康保険法等改正案は、医療サービスを受けた度合いや所得に応じた負担を患者に求める内容になっている。高所得者を中心に現役世代も負担が増えるとみられ、患者の負担増で医療費増加の財源を賄う”つじつま合わせ”の色彩も濃い。高齢者の医療費を賄う仕組みや医師に支払う診療報酬の見直しなど抜本改革は2002年に先送りされた。
 
抜本改革は先送り 医療費増加分 財源確保など不透明
 今回の改革案の柱は70歳以上の高齢患者に、かかった医療費の1割という定率負担を求めた点。ただ、1箇月の負担上限を外来で3000-5000円と定めているほか、診療所の場合は従来の定額負担も選択できる道を残しており、医療サービスを受けたい度合いに応じて負担するという面では中途半端な感は否めない。診療所や病院でそれぞれ負担方式が違えば、患者が混乱する恐れもある。
 現役世代の患者の自己負担月額上限は所得と医療サービスを受けた度合いの両方に応じて定める。従来は一般と低所得者の2つの区分しかなかったが、改正案では新たに月収56万円以上という高所得者区分を設定。この区分では上限が従来の約2倍の12万1800円になるほか、月に6万9000円を超える医療費がかかれば、さらに上限が引き上げられる。一般患者の場合でも31万8000円を超える医療費を使うと上限が上がる。
 このほか、従来は健康保険と介護保険の両方の保険料を合わせて保険料上限を決めていた仕組みを改め、上限は健康保険料だけにかかるようにする。これにより、上限があるために介護保険料を規定通り徴収できなかった健康保険組合が規定通り徴収できるようになり、実質的な保険料引き上げとなる。該当するのは全国に約1800ある健保組合のうち約4割。政府管掌健康保険でも合計保険料率が現行の月収の9.1%(労使折半)から9.58%になる。
 政府・与党は今回の改正を2002年の抜本改革の第一歩と位置付けている。しかし、現時点で抜本改革への本格的な議論は始まっておらず、必要な財源をどのように賄うかも不透明なまま。予定通り2年後に抜本改革が実施できるかどうか疑問視する声もすでに出ている。
 

現行

改正後

70歳以上の患者負担

外来
 通院1回当たり530円(月5回目から無料)
+薬剤費の一部負担(99年7月から徴収停止中)

診療所=診療所が次のいずれかを選択
 ・かかった医療費の1割(月に3,000円が上限)
 ・1回当たり800円(月5回目から無料)
病院=かかった医療費の1割
 ・200床以上の大病院は月の上限5,000円
 ・200床未満の中小病院は月の上限3,000円
薬剤費の一部負担は廃止
入院
 1日当たり1,200円(低所得者は軽減)

 かかった医療費の1割
 (月の上限37,200円、低所得者は軽減)

70歳未満の患者負担の月額上限

一般患者
 63,600円

 63,600円+(かかった医療費-318,000円)*1%
月収56万円以上の患者
 63,600円

 121,800円+(かかった医療費-609,000円)*1%
低所得の患者(市町村民税非課税所帯)
 35,400円

 35,400円

全世代の入院時の食費負担

1日当たり760円(低所得者には軽減) 1日当たり780円(低所得者には軽減)

その他

健康保険料の上限見直し
 健康保険料率と介護保険料率を合わせて月収の9.1%(政管健保の場合、組合健保は9.5%)以下

健康保険料率だけで月収の9.1%(組合健保は9.5%)以下
転職者比率最高に 総務庁調査

2000/11/ 1 日本経済新聞朝刊

  1年間に5% 若年層では1割超す
 総務庁が31日にまとめた労働力特別調査(8月調査)によると、昨年9月から今年8月までの1年間で、転職した人の就業者に占める割合(転職者比率)は5.0%と、1984年の調査開始以来最高となった。とりわけ15-24歳の若年層では10%を超える。短期間に転職することの多いパートやアルバイトの増加などが原因とみられる。非正社員の雇用労働者(役員除く)に占める比率も26.2%と調査開始以来最高となった。
 1年以内に転職した人は8月末時点で321万人。前年より9.5%増えた。転職者比率は0.2ポイント高まった。特に15-24歳の転職者比率は12.5%となり、1.4ポイントも上昇。労働省は「フリーターなど転職を繰り返す若者が増えているため」(労働経済課)と分析している。
確定拠出年金法案の成立 今国会は見送り 政府・与党

2000/11/ 1 日本経済新聞朝刊

   政府・与党は31日、掛け金が一定で運用次第で年金額が変わる確定拠出年金(日本版401k)制度を導入する法案の今国会での成立を見送る方針を固めた。法案の成立が来年1月召集の通常国会にずれ込んだ場合、同制度の導入は予定していた2001年3月より大幅に遅れる公算が大きい。同年3月の導入を見込んで準備を進めてきた金融機関などに影響が出そうだ。
 自民党の古賀誠国会対策委員長は31日の記者団との懇談で、確定拠出年金法案の今国会での取り扱いについて「率直に言って日程的にきついなという気がしている」と述べ、12月1日の会期末までに成立させるのは困難との見通しを明らかにした。
 同法案は厚生省が当初、2001年1月からの施行を目指して先の通常国会に提出したが、審議されないまま6月の衆院解散で廃案になった経緯がある。
短期入所サービス滞在最長連続30日に 医福審が答申

2000/11/ 1 日本経済新聞朝刊

   医療保険福祉審議会(厚相の諮問機関)は31日、介護保険で高齢者を一時的に施設で預かる短期入所サービスについて、利用限度日数を大幅に拡大するための改善措置を厚生省に答申した。最も重い介護を必要とする高齢者の場合、最長で30日間施設を連続利用できるようになる。
精神・知的障害者 職場定着へコーチ役奮闘

2000/10/31 日本経済新聞朝刊

  技術習得を支援 労働省も試験事業
 精神障害者や知的障害者の就労を後押しするため、障害者と一緒に職場に入り、1人で仕事ができるまで付き添う「ジョブコーチ」が広がり始めている。作業から同僚との付き合い方まで幅広く手助けし、職場に定着できる環境作りをするのが役割。先行してコーチの派遣に取り組む団体などは「職場の理解が進んで1人ひとりの能力を引き出せるようになる」と強調する。労働省も人材育成を目指して今秋から試験事業を始めており、今後、制度面の整備に弾みがつきそうだ。
企業とのトラブル防止
 和歌山県上富田町のプラスチック製造業「キイテック」。分裂病などを患った4人が使用済のプリンター用トナーを分解する作業に黙々と取り組む。そばで見守るのはジョブコーチ歴約3年の横矢弥生さん(24)。「右利きの人は工具を右に置いてください」。作業効率を上げるために具体的なアドバイスをする。
 ジョブコーチを派遣しているのは社会福祉法人が運営する和歌山県田辺市の「紀南障害者雇用支援センター」。5人がコーチとして所属し、精神障害者らが働く事業所を交代で訪問している。現在、授産施設などで訓練を積んだ16人の就労の手助けをしている。
 関東でも神奈川県は、障害者団体の要望を受け、昨春、同県が管轄する就労支援センター4ヶ所で、計22人のジョブコーチを非常勤で採用。各センターに3人ずつ配置された計12人の常勤職員と協力し、障害者の就労の指導、援助などにあたっている。
 「ひらつか就労援助センター」(神奈川県平塚市)で活動する常勤のジョブコーチ、湯川智子さん(35)は「知的障害の内容には、かなりの個人差があり、対応はマニュアル化できない。1人1人の状況をいかに的確に企業側に伝えるかもジョブコーチの重要な仕事」と指摘する。
 今年1月から湯川さんが支援にあたった知的障害を持つ女性(26)の場合、最初は「いらっしゃいませ」という声が出せなかったが、スーパー側に「彼女は世間慣れしていないけど働く意欲は強い」などと根気良く説明。次第にパートの店員らが女性を気にかけ、自然にフォローしてくれるようになったという。
 福祉現場の動きに呼応して、労働省も独自に、今年度からジョブコーチの制度化を目指して滋賀、神奈川両県で2年間の試験事業を始めた。今後、有職者の意見も参考に実施計画をつくり、2002年度にも全国で展開する方針だ。
 主食が”終点”だった従来の日本の雇用促進策では、ジョブコーチの役割を担う人材育成が遅れている。労働省の外郭団体、日本障害者雇用促進協会は「福祉の知識だけでなく、豊かな社会経験のある質の高いジョブコーチの養成に向けて知恵を絞りたい」と話す。

ジョブコーチ 重度障害者を支援するため、継続的に職場に派遣される指導員。就職後の通勤や仕事、同僚ら周囲との関係づくりなどを援助し、障害者と企業との間のトラブルを防ぐ役割を担う。1980年代に米国で生まれ、同国では公的な「援助付き雇用制度」として普及している。
 日本では主に精神、知的障害者の就労支援役として注目され、労働者の外郭団体「日本障害者雇用促進協会」の設置する障害者職業センターが「生活支援パートナー」などの名称で派遣しているが、いまのところ本格的な就労の支援というより、「援助付きの職業訓練」という性格が強い。

【Add 2000.10.29】

  派遣期間後に社員採用 求人時の年齢制限禁止

2000/10/29 日本経済新聞朝刊

  中高年の雇用拡大 労働省 契約時に採用予定明記
 派遣社員として働き、能力が認められれば社員として雇用される「紹介予定派遣」が12月1日から解禁されるのを前に、労働省は求人企業が求人企業がこの制度を利用して人材を募るさいに年齢制限を設けるのを禁止することを決めた。中途採用では多くの企業が年齢制限を設けており、中高年の再就職が厳しくなっている。新たな採用形態である紹介予定派遣で年齢制限を禁止すれば、中高年の雇用機会の拡大にもつながるとみられる。
 紹介予定は派遣期間後に社員として採用されることを前提に、派遣会社が求人企業に労働者を派遣すること。米国では一般的な制度で、派遣期間が事実上の試行期間となり、求人企業は労働者の能力を見極めることができる。労働者もその会社が自分に適しているか判断しやすいため、雇用のミスマッチ解消策としても期待されている。
 労働省はこのほど紹介予定派遣に関し派遣会社や求人企業に義務づけるルールを決め、地方出先機関の労働局に通達した。その中に、求人企業が派遣会社に人材を求めるさい、労働者の年齢や出身校などの条件をつけないように義務づけることを盛り込んだ。人材派遣では職業能力以外の条件を設けることを禁止しており、これを紹介予定派遣にも適用する。
 このほか、派遣会社と求人企業、派遣会社と労働者の間で、事前に派遣期間終了後に社員として採用する予定のあることを記した契約を結ぶことを義務づけた。現在、派遣社員として働いている人が紹介予定派遣で働くためには改めてその労働者と派遣会社、派遣会社と求人企業が契約を結び直さなければならない。
 派遣会社の営業活動については解禁される12月以前からできるとした。ただ、契約は12月以降しかできない。
 求人企業はその労働者の適正を見極めた上で、派遣期間後の採用を拒否できるが、その場合は拒否する理由を派遣会社に通知しなければならない。また、社員として採用する場合には、派遣期間終了後に求人企業が派遣会社を通じて労働者に労働条件を提示し、求人企業と労働者の間で雇用契約を結ぶ必要がある。
 派遣会社が紹介予定派遣をするためには、労働者派遣業の許可に加え、職業紹介業の許可も取得しなければならない。派遣業務と紹介業務の組織を分け、責任者をそれぞれに配置することを義務づける。
冬のボーナス 減少歯止め傾向

2000/10/29 日本経済新聞朝刊

  民間調査 上場348社で0.5%減
 今冬のボーナスの妥結状況は全産業平均で68万132円と、前年同期比0.5%減となっていることが28日、民間調査機関の労務行政研究所の調査で分かった。昨年冬は前年に比べ6.6%減と1970年の調査開始以来最大の落ち込みだったが、企業業績の回復を反映して減少に歯止めがかかった。
 同研究所は「これから交渉する繊維の業績も改善に向かっていることから、最終的には3年ぶりのプラスに転じるのではないか。一方で業種による格差が広がっている」としている。
 東証一部上場企業のうち労組が主要産別に加盟している520社を対象に調査。既に妥結した348社をまとめた。
 それによると、対象の8割を占める製造業(278社)の平均は67万1321円で、前年同期より0.3%とわずかながらアップした。非製造業(70社)は71万5122円と3.6%減り、全体は0.5%減となった。
 業種別では、造船が16.4%の大幅減。建設(5.2%)、商業(同)、機械(3.4%)などが軒並みマイナスだった。逆に増加したのは精密機械(4.5%)、医薬品(3.1%)、石油(2.7%)等だった。
高成長企業ほど社風は自由

2000/10/29 日本経済新聞朝刊

  フレックスタイム 女性管理職も導入
 高度成長企業は労働時間が長い一方で、勤務時間帯を一部選択できるフレックスタイムや完全週休2日制の実施など個人の自由度を重視する傾向も強いことが28日、自由時間デザイン協会の「企業の自由時間に関する調査」で分かった。
 調査は今年6月、企業規模別に無作為抽出した3600社を対象に実施し、回収率は16.4%。回答に基づき、過去3年間に売上高が20%以上増えた企業を「高成長企業」、ゼロ-20%増を「成長企業」、減ったのは「停滞企業」と定義した。
 その結果、年間の総労働時間(平均2032時間)は高度成長企業が2111時間、成長企業2023時間、停滞企業2030時間だった。
 フレックスタイムを導入している企業は平均16.4%、うち高成長は22.8%、成長16.3%、停滞15.4%。完全週休2日制(平均42.2%)は高成長47.4%、成長46.9%、停滞37.6%という結果だった。
 女性管理職がいるのは平均32.3%に対し、高成長企業43.9%、成長36.2%、停滞26.8%の順
65歳以上の介護保険料 273市区町村に減免規定

2000/10/28 日本経済新聞朝刊

  本社調査 全国格差2.9倍 月平均は2813円
 10月から徴収が始まった65歳以上の介護保険料について、全国の市区町村(東京23区を含む)の8.4%に当たる273市区町村が条例などで独自の減額・免除規定を設けていることが日本経済新聞社の調査で分かった。介護サービスを利用したときの1割の利用負担についても387市区町村が減免する規定を持っている。65歳以上の月額介護保険料(基準額)の全国平均は2813円。但し、来年9月までは、国の特別対策で半額徴収となっている。
 調査は10月中旬、47都道府県に対し文書で実施。すべてから回答を得た。
 介護保険料の減免規定を条例に盛り込んだのは横浜市、大阪市など243市区町村。要項や規則などで定めたところは30市区町村あった。対象者は高齢者の所得水準などで決めた自治体が多い。最高で全額免除の規定があるのは31市区町村あった。減免規定があっても「市長が特に認めた場合」などの項目を入れただけで、実際の適用例は少ない自治体もある。
 北海道と西日本で高い自治体が目立ち、最高と最低の市区町村の差は2.9倍に達した。月額保険料が最も高かったのは北海道厚田村で4491円。「費用がかかる施設の入所者が多い」ため。最も低かった茨城県大子町は1533円。
 
月額介護保険料の単純平均額(基準額、円)

<高い県>

沖縄県

3,448

2 高知県

3,257

3 北海道

3,218

4 青森県

3,206

5 徳島県

3,193

<低い県>

43 栃木県

2,417

44 長野県

2,275

45 茨城県

2,269

46 山梨県

2,213

47 福島県

2,147

有識者会議が報告書 社会保障大綱策定へ

2000/10/28 日本経済新聞朝刊

  政府
 首相の私的諮問機関である「社会保障構造のあり方について考える有識者会議」の貝塚啓明座長(中央大学教授)は27日、首相官邸を訪れ、社会保障改革に関する報告書を森善朗首相に提出した。報告書は高齢者にも税や医療費などで「経済的な能力に応じた負担」を求め、社会保障の財源について保険料を柱とする社会保険方式の維持を打ち出した。政府は報告書に沿って改革の方向性を示した大綱をまとめる方針。年内にも内閣を中心とする協議機関を設ける。
賃金不払い、年1万7000件

2000/10/28 日本経済新聞朝刊

  昨年の労基署 過去最高20年で最多に
 1999年に全国の労働基準監督署に持ち込まれた賃金不払い事件の件数が過去20年間で最多になったことが27日、労働省のまとめでわかった。長引く不況で経営不振に陥り、給料などが払えなくなった企業が増加したのが原因とみられる。同省では不払いの相談には迅速に対応する考えで、倒産や経営者が行方不明などのケースでは、賃金が支払えないまま退職を余儀なくされた人を対象に未払い賃金の一部を支払う「未払い賃金立て替え払い制度」の活用により早めの救済を図る方針だ。
 
建設業、23%占める

 99年に新たに労基署で相談を受けた不払いの件数は、前年より5.1%増の1万7125件。対象になる労働者数も5万6676人と前年より4.8%増えた。
 一方、不払いの総額は約217億1600万円(前年比9.0%減)と3年ぶりに減った。1件当たりの金額は126万8000円(同13.4%減)、1人当たりの金額は38万3000円(同13.2%減)。
 件数を業種別にみると、建設業全体の23.9%と最も多く、ついで商業(19.5%)、接客娯楽業(14.3%)の順。定期給与と退職金の両方が未払いの人が多く定期給与だけが支払われなかった人も目立つ。
 不払い件数はバブルのピークである90年の6345件を底に増えており、94年から6年連続で1万台に乗っている。
 労働省が活用を目指す「未払い賃金立て替え払い制度」は、倒産で賃金が支払われずに退職した労働者に対し、未払い賃金の一定範囲を労働福祉事業団が企業に代わって支払う制度。申請は同事業団に行う。定期賃金と退職手当が対象でボーナスは含まれない。立て替え払いの額は未払い賃金の80%だが、年齢によって56万-136万円が上限となっている。
社内預金の下限金利 年2回変更可能に

2000/10/26 日本経済新聞朝刊

  労働省 来年から
 労働省は年1回しか改定できなかった社内預金の下限金利を、市中金利の変動が大きい場合は年2回見直せるようにする方針を決めた。年内に省令を交付、来年度から実施する予定。
 企業の社内預金は労働省令の定める下限金利(現在は年0.5%)を下回ってはならないことになっている。現在は10月時点での1-5年物の定期預金の平均金利と下限金利の差が0.5ポイント以上開いた場合に下限金利を見直し、翌年4月1日から1年間適用している。これに対し規制改革委員会から市中金利の動きを反映したものにすべきだとの指摘が出ていた。
 労働省の省令案では下限金利の見直しを10月だけでなく、4月の市中金利の動向に合わせてできるようにする。4月の見直しは1-5年物の定期預金の平均金利と下限金利の差が1ポイント以上開いた場合、平均金利をもとに下限金利を改定できる。改定した下限金利は10月1日から適用する。

【Add 2000.10.25】

  社会保障の大枠維持 「高齢者も応分負担」提言

2000/10/25 日本経済新聞朝刊

  有識者会議最終報告 具体策は触れず
 森善朗首相の私的諮問機関である「社会保障構造の在り方にについて考える有識者会議」(座長・貝塚啓明き中央大教授)は24日、社会保障改革の方向性を示した報告書をまとめた。急速な高齢化に伴い社会保障の負担が長期的に膨らむ見通しを踏まえ、高齢者にも経済的な能力に応じた負担を求める方針を打ち出した。現在は大半の人に所得税などがかからない公的年金収入への課税強化を課題に挙げ、住宅など高齢者が保有している資産を現金化しやすくする環境整備も促した。ただ、税制をいつまでにどう改めるかなど具体策には踏み込んでおらず、将来の不安解消に向け力不足の内容となった。
 貝塚座長は24日の会合後の記者会見で、報告書を近く首相に手渡すとしたうえで、改革を実行する推進機関を政府内に設けるべきだとの認識を示した。
 「21世紀に向けての社会保障」と題した報告書は、高齢化や経済成長の鈍化などを背景に「社会保障制度が前提としてきた様々な条件が失われつつある」と分析。高齢者の就労促進や少子化対策を通じて制度の「支え手」を増やす必要があると指摘した。高齢者を一律に弱者とみる考え方の転換も求めた。
 高齢者に関する税負担については所得税の公的年金等控除などで、公的年金の支払額のうち源泉徴収の課税対象は7%にとどまり大半が非課税。医療費の自己負担も実際の高齢者医療費の8%にとどまることなどを紹介し、負担増の余力があるという現状をにじませたものの、具体的な方策は明示していない。
 報告書は住宅など高齢者が保有する資産を担保に金融機関から生活費などの融資を受ける「リバース・モーゲージ」について「利用が限られている」とし、普及に必要な法制面の検討などを促した。
 財源の調達をめぐっては現在の保険料を柱とする「社会保険方式を主としていくのがふさわしい」とした。強制加入が前提の保険方式の枠組みを維持するため、未納・未加入の問題解決を迫った。将来の負担増をめぐり焦点となる消費税の取り扱いでは「どのように活用すべきか検討する必要があるとの意見がある」と言及するのにとどめた。
 財源論を中心とする報告書の踏み込み不足に関しては文案づくりを厚生、大蔵両省をはじめとする省庁間の調整にゆだねた結果、「税制改革は税制調査会で扱うべきだ」(大蔵省幹部)といった霞が関の原則論に押され、あたりさわりのない表現に落ち着いた面が大きい。
 年金問題が専門の高山憲之一橋大教授は「事実上、官僚の作文で”有識者”と呼ばれる組織の存在理由が問われる内容。これでは制度の不安解消や信頼回復にはほど遠い」と批判。有識者会議の委員からも「徐々に厚生省ペースで議題が設定されてきた」との不満が漏れている。
 今年1月に会議を発足させた小渕恵三前首相は年金、医療、福祉などを総合した社会保障制度について、国民に明快な将来像を示すという目的意識を持っていた。しかし森首相への交代で、首相官邸の関心は情報技術(IT)や教育改革に移り、議論は低調となった。24日の最終会合でも出席したのは津島雄二厚相らで、首相は公邸に戻り出席しなかった。
改革の基本理念
・将来に向けある程度の負担増は避けられないが、できる限り現役世代の負担増は抑制
・急速な高齢化に伴う負担増は保険料と公費でカバー。公費負担は税、財政全体の見直しの中で検討。
具体的方策(主な検討課題)
@高齢者世代の支え手を増やす
・公的年金を世帯単位から個人単位に(専業主婦からの保険料徴収など) =女性の自立支援
・子供を産み育てやすい環境の整備。出産、教育費等の負担軽減。保育サービスなど子育て支援策
A高齢者も負担を分かち合う
・負担能力のある人は適切な負担。実質非課税の公的年金収入への課税適正化
・健康保険料や一部負担の一律優遇見直し
B給付見直しと効率化
・新たな高齢者医療制度の構築
・入院期間短縮など医療費のムダ排除
・介護市場の参入規制緩和
社会保障給付費 25年後は2.7倍に

2000/10/25 日本経済新聞朝刊

  厚生省が推計
 厚生省は24日、社会保障有識者会議の報告書に合わせて、社会保障給付費の将来推計を発表した。社会保障制度を通して国民に支給される年金、医療、介護などの費用は2000年度の78兆円(予算ベース)に対し、2025年度には2.7倍の207兆円に達すると予測。基礎(国民)年金、高齢者医療、介護にかかる費用をすべて消費税で賄えば2025年度の税率は25-41%まで上昇すると試算した。
 将来設計は、医療費がここ10年間の伸びと同程度で将来も伸びるなどの前提を置いて計算した。
 社会保障給付費のうち最も大きな比率を占める年金は2000年度の41兆円から25年後には99兆円になる。医療費は24兆円から71兆円に増える。

【Add 2000.10.24】

  大卒内定 3年ぶりプラス

2000/10/24 日本経済新聞朝刊

  本社調査 来春採用3.5%増 主要製造業が回復
 民間主要企業の2001年春の大学新卒採用数が3年ぶりに前年比プラスに転じる。日本経済新聞社がまとめた2000年度大卒採用状況1000社調査(有効回答882社)によると、定期採用による来春入社予定者(内定者)数は今春実績を3.5%上回る。企業業績を3.5%上回る。企業業績の回復を背景に、情報技術(IT)関連中心に製造業の主要業種で回復した。また、時期を特定しない不定期の「通年・中途採用」の2000年度計画が前年度実績比54.7%と大幅に増える。成長分野の人材確保の方法を多様化する企業の姿勢が鮮明になった。
 定期採用による内定者数は理工系が8.0%増、文化系が4.3%増といずれも前年度調査の2ケタ減から一転プラスとなる。
 業種別では製造業が10.5%と2ケタの伸びで3年ぶりにプラス。IT分野を強化する電機のほか化学、機械、自動車・同部品など主要業種で増加する。このところリストラを最優先課題として取り組んできたが、景気が回復軌道をたどり業績に明るさが広がってきたことから採用増に動き出した。
 一方、非製造業は1.2%減と3年連続のマイナス。日本電信電話(NTT)の東西地域会社の採用ゼロなどが響いた。
 定期採用計画に対する内定者の比率を示す充足率は97.8%で、企業はバブル期のように計画を上回る大量採用には慎重だ。むしろ新卒の通年採用と既卒者の中途採用を活用した機動的な人材確保に意欲を示している。
 通年。中途採用は239社が2000年度中に実施する。採用総数(実績を含む)は11,692人。IT技術者を確保するため電機や半導体メーカーなどが増やすのが目立つ。
 携帯電話の基盤実装に使う積層チップコンデンサーなどの電子部品が好調な村田製作所が昨年の約4倍の180人に増やすほか、京セラも3倍弱の165人を計画している。

2001年4月大卒採用状況(▲は減)
 

社数

採用内定者数 今春実績数 今春比伸び率
大卒合計

882

65,362

63,181

3.5%

 文化系

719

22,072

21,171

4.3%

 理工系

719

23,564

21,822

8.0%

製造業

452

27,811

25,173

10.5%

非製造業

430

37,551

38,008

▲1.2%

【Add 2000.10.22】

  雇用助成金25%が未消化 賃金補助、低い利用

2000/10/22 日本経済新聞朝刊

  雇用保険3事業 99年度実績 制度見直しに影響
 雇用保険を財政とする「雇用保険3事業」の助成金が十分に使われておらず、1999年度は予算の25%が未消化だったことが労働省の実績まとめで明らかになった。特に従業員を雇った企業への賃金助成の利用度が低く、助成金が雇用に結び付きにくい実態が浮き彫りになった。この結果、大幅な赤字見通しだった雇用保険3事業の決算は一転して黒字となった。労働省は助成金の整理統合方針を打ち出しているが、今後の議論にも影響しそうだ。
 雇用保険3事業は(1)失業を防ぐ雇用安定事業(2)労働者の職業能力を高める能力開発事業(3)中小企業の福利厚生を支援する雇用福祉事業--から成る。99年度の補正後予算では、3事業の保険料収入が5672億円、雇用助成金の支出が7147億円で1475億円の赤字見通しだった。実際の決算では収入の5399億円に対し、支出は5392億円にとどまり、差し引き7億円の黒字だった。当初は赤字分を積立金から取り崩す予定だったが、逆に黒字分を積み増した。
 3事業のなかでも、雇用安定事業の助成金は予算の4割以上が未消化だった。障害者や高齢者を雇い入れた場合に賃金の一部を助成するという「特定求職者雇用開発助成金」、中小企業が新規分野進出に伴い従業員を雇った際に賃金の一部を助成する「中小企業雇用創出人材確保助成金」など、労働者を新規雇用した企業への助成金の利用度が低い。
 労働省は2000年度予算でも3事業で7107億円の支出を計上しており、1546億円の赤字を見込んでいる。ただ4-8月の支給実績が年間予算の2割に満たない助成金もあり、今年度も大幅な未消化が出る可能性もある。
 労働省では「新規の助成金を相次いでつくったが、認知度が低く利用されていないものがある」(職業安定局)と説明している。八代尚宏・日本経済研究センター理事長(上智大教授)は「新規雇用への助成金よりも個人の職業能力を高めるための助成金に重点を置くべきだ」と指摘する。
 3事業は雇用保険の保険料(本人が賃金の0.4%、企業が0.75%負担)のうち0.35%分が財源となる。同省では支出増から数年で積立金が底をつくと予想している。産業構造の変化に対応、新産業で雇用を創出し人材移動を促すことも急務となっている。同省はこうした課題に対応するため雇用に関する助成金の見直し作業に着手しており、年内に具体的な内容をまとめる予定だ。

【Add 2000.10.19】

  医療費値引き 健保組合と病院 交渉

2000/10/19 日本経済新聞朝刊

  有識者フォーラム 保険制度改革へ提言
 経済、財政学者ら有識者で作る「政策構想フォーラム」(代表世話人・大塚啓二郎東京都立大学教授)は18日、医療保険制度の抜本改革案をまとめた。保険から医療機関に支払われる診療報酬に一定の上限価格を設けた上で、サラリーマンが加入する個々の健保組合が医療機関と直接、医療費の値引き交渉ができるようにするのが柱。高齢者医療改革では「70歳以上の自己負担を将来的に(かかった医療費の)20%程度まで高めざるを得ない」と主張している。
 健保組合と医療機関の直接交渉制は、現在、主にレセプト(診療報酬明細書)のチェックにとどまっている健保組合に強い権限を認め、伸び続ける医療費に歯止めをかけるのが狙い。当面の対策として健保組合がまず医療機関を選別、加入者に推薦に医療機関での受診を促すよう求めている。
 70歳以上が加入する現行の老人保健制度を見直し、加入者を65歳以上に広げた新たな医療保険制度を創設することも提言した。

【Add 2000.10.16】

  公的年金モノ言う株主に

2000/10/16 日本経済新聞朝刊

  議決権行使 ルール策定 厚生省 来年度から
 厚生省は公的年金の自主運用で株式投資をする際に、株主として企業経営に間接的に注文できる体制を整備する方針を固めた。運用を委託する金融機関に「株主の利益を最優先に考えて、株主議決権を行使すべきである」といった基本原則を示し、金融機関の行動を監視する方向。これにより、株主総会で企業価値を損なうおそれがある議案に対し、反対票が投じられる例が増えるとみられる。同省は年内に具体的なルールを決め、来年度から実施する。公的年金は運用資産が約140兆円にのぼり、今後株式運用の拡大が見込まれている。その”モノ言う株主”への転換は、株主による企業統治(コーポレートガバナンス)の強化に弾みをつけそうだ。
増える就労断念組 労働力人口減少 連続9ヶ月

2000/10/16 日本経済新聞朝刊

  高齢者・若者で顕著
 就業者と失業者を合わせた労働力人口の減少が続いている。総務庁の労働力調査によると、昨年12月から9ヶ月連続で前年同月を下回っており、8月は前年同月比40万人も減少した。再就職をあきらめて早めに引退する高齢者の増加や、求職意欲が乏しく経済的に親に依存する若者たちが増えていることなどが原因とみられる。失業率の悪化が止まったとはいえ、こうした「潜在的失業者」の増加は、雇用環境が引き続き厳しいことを浮き彫りにしている。
 
失業者 潜在化進む
 労働力人口は完全失業者数と就業者数の合計で、8月は6791万人と、1年前に比べて40万人減った。一方、仕事をしておらず職探しもしていない「非労働力人口」は大幅な増加が続いている。8月の非労働力人口は4032万人と前年同月比87万人増加した。その結果、15歳以上の人口に占める労働力人口の割合である労働力率は62.7%と、1年前に比べて0.6ポイント低下した。
 非労働力人口の増加が最も目立つのが60歳以上。1-8月の平均で84万人増えた。労働省では、このうち29万人程度は、従来より早めに仕事をやめて引退する人が増えているためだと分析している。「経営環境の厳しい自営業者の廃業が増えており、中高年では再就職が難しいためにそのまま引退する人が増えている」(労働経済課)とみている。
 また、20-24歳の場合、人口そのものが1年前に比べて30万人以上減っているのに、非労働力人口の減り方が鈍く、職探しをあきらめる層が多いことをうかがわせる。日本総研の山田久主任研究員は「フリーターなど、親の経済力に頼って働かない若者が増えており、若者の仕事への意識の変化が影響している」と指摘する。
 非労働力人口の増加について、経済企画庁は「雇用環境が厳しいため、就職をあきらめている人が増えている」と分析する。総務庁の別の調査によると、今年2月時点で、「適当な仕事がありそうにない」ため仕事を探していない人は445万人にのぼる。こうした潜在的失業者は8月の完全失業者(310万人)を大幅に上回る。

【Add 2000.10.15】

  中堅・中小企業 人件費負担 依然重く

2000/10/15 日本経済新聞朝刊

  労働分配率低下幅 大企業と格差
 中堅・中小企業(資本金10億円未満)の人件費負担が依然重いことがバークレイズ・キャピタル証券の調べで分かった。営業利益に対する人件費の割合を示す「労働分配率」を4-6月期の法人企業統計を基に試算したところ、中堅・中小企業の労働分配率は86.9%。前期に比べ0.6ポイントの低下にとどまった。大企業(資本金10億円以上)では前期比1.8ポイント低下しており、企業規模による格差が鮮明になっている。
 企業がリストラ(事業の再構築)に本格的に取り組み始めた1998年度後半から、労働分配率は低下傾向にある。中堅・中小企業でも労働分配率は低下しているものの、ピークだった99年1-3月期より2.8ポイントの下落と改善幅は小さい。一方、大企業では今年4-6月期の労働分配率は72.8%と約8年ぶりの低水準。過去最高だった98年10-12月期に比べると5.7ポイント下落している。
 企業規模によって格差が生じているのは、中堅・中小企業では小売り・卸売業といった人件費比率の高い非製造業の割合が大きいため。
 同証券の山崎衛チーフエコノミストは「中堅・中小企業の構造調整は遅れており、労働分配率が企業規模で2極化する傾向は今後も続きそうだ」と予測している。

【Add 2000.10. 9】

  高齢者への社会保証給付 2010年度には55兆円に

2000/10/ 9 日本経済新聞朝刊

  厚生省試算 現在の2倍
 厚生省は急速な少子高齢化を背景に基礎年金(国民年金)、医療、介護の3本柱からなる高齢者への社会保障給付費が、2010年度には現行のほぼ2倍の約55兆円に達する見通しであるとの試算が明らかにした。2025年度には4倍の約107兆円に膨らむ。社会保障の保険財政の厳しさを強調して、給付費抑制に向けた構造改革を訴えるのが狙い。
 試算は「2001年度以降の名目国民所得の伸び率は2.0%」と仮定、制度ごとに給付の伸びを計算した。ただ、医療分野ならば1991-96年の6年間の制度別1人当たり医療費の伸び(4%)に将来人口推計を単純に加味してはじき出したもので、制度改革や医療技術高度化といったコスト増減要因は必ずしも勘案されていない。
 2000年度(予算ベース)の給付費は基礎年金14兆円(うち国庫負担は4兆5000億円)、高齢者医療9兆円(同3兆3000億円)、介護4兆円(同1兆3000億円)の計27兆円(同9兆円)。このままの保険財政を前提とすれば給付費、国庫負担とも2010年度には2倍、2025年度にはおよそ4倍に達する。
 基礎年金の国庫負担割合を現在の3分の1から「2分の1」へ引き上げた場合、2010年度に4兆円、2025年度は6兆円ずつさらに国庫負担が積み上がる計算だ。
 これらの見通しとあわせ、試算は「消費税率1%当たりの税収見込み」(地方交付税分は除く)を示している。2010年度の税収見込みは2兆2000億円。高齢者に対する給付費すべてを消費税で賄おうとすれば単純計算で25%の税率が必要だ。基礎年金の国庫負担を2分の1に引き上げるものの、医療と介護の国庫負担を今の割合に据え置いた場合は消費税の税率は11%ですむ。
 高齢者の社会保障を巡っては、自民、自由、公明の与党3党(当時)が昨年10月「2005年度をメドに年金、介護、後期高齢者医療を包括した制度を創設し、財源のおおむね2分の1を公費負担」とすることで合意。
 しかし、財源の裏付けとなる消費税の福祉目的税化などを巡って、与野党や専門家の間でも意見がまとまっていない。
労働生産性最高に 8月の製造業

2000/10/ 9 日本経済新聞朝刊

  リストラで常用雇用者減り続け・・・ 企画庁試算 ITも寄与し始める
 同じ労働力の投入量でどれだけ生産高を上げられるかを示す「労働生産性」が急上昇している。経済企画庁の試算によると、8月の製造業の労働生産性は1995年平均を100として117.0と過去最高を記録した。企業がリストラで雇用を抑えるとともに、半導体などあまり人手のいらない情報技術(IT)関連の産業の生産が伸びているためだ。
 労働生産性は臨時雇用などを除く「常用雇用指数」に残業を含む「総実労働時間」を掛け合わせて「労働投入量」を算出。さらに、鉱工業生産指数を労働投入量で割って求めた。
 労働投入量は企業のリストラにより減っている。人材派遣大手23社の今年上半期の派遣実績が前年同期比18.6%増えるなど常用雇用の抑制が効いている。ただ建設、不動産、流通などの非製造業や臨時雇用を含めれば、日本の労働生産性は見かけほど高くないとの指摘も多い。
 一方、生産は不況期に落としていた生産設備の稼働率の上昇に加え、半導体や液晶などIT関連の製造業がけん引役となって増えている。人手の要る家電の組み立てなどはアジアに生産ラインを移し、国内の製造業は少ない労働投入量で付加価値を生む体質に変化している。
 今年4月に米労働省がまとめた1998年の1時間当たり生産高でみた製造業の労働生産性の各国比較によると、日本は前年よりも0.8%低下し、IT革命で先行する米国の前年比4.7%増に水をあけられた。92年から98年の生産性の伸びも米国の27.9%増に対し日本は20.4%増と低く、企画庁は「製造業でも米国との生産性格差は依然として大きい」と指摘している。
来年度新卒 採用150人増 日立

2000/10/ 8 日本経済新聞朝刊

   日立製作所は2001年度の大学・高専卒の新規採用予定者数を2000年度採用予定者数より150人多い900人とする。技術系、事務系ともに当初計画よりも50人ずつ増やし、システムエンジニア(SE)を中心に増強する。コンピューターなど中核事業として成長を見込む情報技術(IT)関連分野を強化する。
 当初計画では、技術系で2000年度実績比50人増の700人、事務系で同横ばいの100人となる予定だった。IT関連部門での採用意欲が強いため、採用枠を拡大することにした。業績の回復・拡大に伴って人員の採用意欲が一段と強まった格好だ。新卒とともに、中途採用も拡充していく。
会社分割 その時あなたは-- 労働省指針案ケーススタディー

2000/10/ 7 日本経済新聞朝刊

   来年春に導入する会社分割について、労働省は労働者保護について指針案をまとめ6日、経営者団体、労働界の代表、学識経験者で構成する同省の研究会に示した。会社分割に際して従業員が転籍を拒否できるかどうか、分割部門の業務内容によるが、それを判断する際に労働時間だけでなく本人の果たしている役割も勘案することにした。全従業員との労使協議では、企業年金の引き継ぎ問題が焦点になりそうだ。

 「転籍拒否権の有無」:時間・役割で判断
 「総務・人事部門」:人数の多い部門へ
 【役割も判断材料に】一部の事業部門を切り離し別会社にする会社分割では、転籍を拒否できるかどうかは、本人のしている仕事が基本になる。たとえば銀行で個人向け部門を分割する場合、個人向け部門だけを仕事にしている人は、転籍を拒否できない。逆に企業向け分割部門だけをしている人が転籍対象になった場合は拒否できる。
 問題は個人部門と企業部門の両方を兼務している人だ。この時はどちらが主な業務であるかで判断し、個人部門がその人の主な業務なら転籍を拒否できないということになる。
 主か従かは、まず労働時間で判断する。週40時間のうち、個人部門が25時間、企業部門で15時間働いていたならば、通常は主な業務は個人向けと見なすことができる。
 ただそれだけでは必ずしも十分ではないこともある。労働時間は短くても企業部門で責任ある立場にあれば、主な業務は企業向けと考えられる。そのため、時間だけでなく本人の「果たしている役割などを総合的に判断」する。
 資金運用部で働いている人は、その銀行の個人部門とそれ以外の部門の資金運用額を比べ、個人部門の方が多ければ、個人部門の労働時間が多いと判断し、主な業務は個人部門と見なすことができる。
 【総務、人事など課題】総務、人事、経理のように分割する部門に従事しているのかどうか、はっきりと判断できない部署もある。研究会ではこうした従業員の扱いを課題としている。指針案では、分割部門と分割部門以外の従業員の数を比べ、従業員数の多い部門を、総務、人事、経理担当者は主な業務とするとしている。ただこれには研究会内から異論も出ている。
 会社が嫌がらせで、直前に分割部門に配置転換し、転籍させることも考えられる。その際は現在の仕事ではなく、過去の勤務から判断するとしているが、基準は明確ではない。
 【労使で拒否権の有無協議】指針案では会社分割で2段階の労使の事前協議を義務づけた。まず全従業員を対象の協議をし、分割部門の従業員を対象の協議をする。
 全従業員との協議では転籍基準、労働条件の変更などを話し合う。特に労働条件については、労働契約承継法では会社と従業員の間の労働契約、就業規則は、分割後もそのまま引き継がれる。ただ厚生年金基金は従業員と基金の間の契約のため、そのままでは引き継がれない。引き継ぐには基金の新設、分割などをしなければならず、手続きが必要だ。
 また厚生年金基金については就業規則などに盛り込まれていないことも多く、分割後の新会社では廃止される可能性もあるといわれている。
 分割部門の従業員を対象とする協議では、本人が分割部門が主な業務であるかどうか、つまり転籍拒否権があるかどうかも話し合う。会社の見方と違う時は、異議を唱えることができる。そのうえで会社はその本人が転籍対象となるかどうかとその理由を伝え、意思確認をする。協議はまた労働組合に委託することも可能だ。
連合、職業紹介や派遣事業

2000/10/ 5 日本経済新聞朝刊

  まず関東 非組合員も利用可能
 連合(鷲尾悦也会長)は4日の中央委員会で、職業紹介や人材派遣などを手掛ける「連合版ハローワーク」を創設することを決めた。連合加盟の組合員だけでなく一般の人の利用も可能で、まず関東圏を対象に実施、2年後をメドに近畿圏や北海道に広げる方針。すでに職業紹介事業を行っている傘下のゼンセン同盟などとも連携、求人情報を相互に交換する。将来的には連合ハローワークに統合する可能性もある。

運営会社を来月設立
 連合が「自ら雇用対策に乗り出す」(笹森清事務局長)のは、雇用の流動化・多様化に対応するとともに、企業のリストラや倒産の多発などから離職を余儀なくされた働く人の再就職を支援、雇用を確保するため。とりあえず職業紹介から始め、人材派遣、職業訓練にまで発展させる計画。
 運営母体として、11月に株式会社「連合ハローワーク」(仮称、資本金1億円)を設立、外部から専門スタッフを募る。資本金は連合が全額出資するが、PRも兼ねて組合員から退職テレホンカードなどの提供を求め、「連合ハローワーク基金」も作る。
 職業紹介は11-12月に首都圏で単組が連合に加盟する5000社から求人情報の提供を受け、来年1月15日以降、職を求めている登録会員の募集、希望職種などの個人情報の収集・管理を開始。求職者との面接やカウンセリング、求人企業への働きかけも始める。将来的にはインターネットでも求人情報を提供する。紹介料は今後も詰めるが、他の民間紹介会社より低く設定する考え。
 学卒未就職者に対しては職業の現場を体験するインターンシップなどを活用した支援活動をする。
 人材派遣や職業訓練事業の開始時期は未定だが、人材派遣では26の専門職種を対象とし、収益をより多く還元するため派遣社員への支払比率を高める計画だ。職業訓練では独自の施設は持たず、閉鎖した企業内の施設を利用する。既にいくつかの業界団体や企業から協力を取り付けている、という。
派遣社員100万人へ

2000/10/ 4 日本経済新聞朝刊

  今年の首都圏延べ人数予測 雇用の流動化 加速
 人材派遣の需要が急速に上向き、パソナ(東京・千代田)など派遣大手23社の今年上半期の派遣実績は前年同期に比べ18.6%増えたことが明らかになった。年間を通じても3年ぶりに前年比2ケタ増となるのはほぼ確実で、首都圏だけでも述べ100万人に迫り勢い。企業の設備投資が回復しているにもかかわらず、常用雇用者数は減り続けているが、雇用環境が構造変化を起こし、短期雇用の比率が高まる労働市場の流動化が進んでいることを物語っている。
 日本人材派遣協会のまとめでは、大手23社による首都圏の1-6月の派遣実績(延べ人数)は50万4750人で上期ペースで過去最高。昨年のマイナス成長が一変した。首都圏の派遣需要は全国のほぼ6割を占めるが、大阪など他の大都市圏も同様に伸び、派遣労働者は全勤労者の2%近くに達している模様。7月以降も派遣需要は好調で「上期に引き続き実績は前年比で25-30%増」(パソナ)。
 企業のIT投資拡大を映し、インターネット構築などの技術を持つネットワークエンジニアなどの引き合いが強いほか「投資信託アドバイザーなど金融・証券界からの要請が目立つ」(パソナソフトバンク)。銀行も「商品内容の紹介を請け負うコールセンターなどで重点的に人材派遣を利用している」(三和銀行)。
 派遣会社によると、技術職を中心に35歳以下の登録者が増えている。大企業に就職した理工系大卒者が営業・事務部門に配置されたため。専門性の高い職種の派遣料金上昇を追い風に派遣スタッフとして転職する事例も多い。営業職でもケーブルテレビの加入促進など「1社から1000人規模の依頼が来ている。」(アデコキャリアスタッフ)。人材派遣は企業が欲しい人材を確保する手段となり、働く側も専門知識を生かせる職場を選ぶ有力手段と見る傾向が強まっている。
トヨタ、63歳まで再雇用 来年4月導入

2000/10/ 4 日本経済新聞朝刊

  技能系社員の希望者を面接
 トヨタ自動車は3日、60歳定年後の新たな雇用制度の導入で労使が基本合意したことを明らかにした。新制度は管理職を除く技能系社員全員(約4万3000人)を応募対象とし、再雇用を希望すれば、会社が面接の上、63歳まで1年ごとの契約社員として再雇用を認める。来年4月から導入、厚生年金の段階的な支給開始年齢の引き上げに対応する。すでに本田技研工業や電機大手が再雇用制度導入を決めており、トヨタの導入で産業界の新制度導入に拍車がかかると見られる。
 トヨタの労働組合は、10月30日に開く評議会で会社提案の受け入れを正式決定する予定。
 新制度では、毎年秋に次年度の年間採用枠を会社が決め、各職場に提示。会社は選考基準を明示したうえで、職場の空き具合なども参考に本人と面接の上、年末までに再雇用するかどうかを伝える仕組みとする。再雇用期間の年収はフルタイム稼働で約300万円となる見込み。
 再雇用期間は当面63歳までとするが、今後の実施状況などを踏まえ、65歳までの段階的な引き上げを検討する。事務系社員の再雇用についても今回の制度とは別に、派遣社員などの形態での新たな枠組みを労使で話し合う。
 自動車業界では本田技研工業が昨年秋、組合員を対象に2003年から再雇用制度を導入することで労使が合意している。当初は62歳までの再雇用とし、徐々に65歳まで延長する方針。
再雇用社員に職能賃金 高島屋5コース設定

2000/10/ 4 日本経済新聞朝刊

   高島屋は2001年3月に60歳定年後の再雇用社員を対象に、5つの職能別コースに分け、賃金に格差をつける人事制度を導入する。再雇用を希望する社員は能力に見合ったコースを選べ、最大で定年時の70%程度の給与水準が保証される。年金支給年齢の段階的な引き上げに伴い65歳まで再雇用する動きは増えているが、能力別に複数のコースを導入するケースは珍しい。
 今回設定した再雇用のコースには、営業能力の高い社員向けの「スーパーセールスコース」、衣料製作など技術・技能の高い社員向けの「技術・技能キャリアコード」、法務や財務など専門性の高い「専門嘱託員コース」、グループ企業に再就職する「グループ内再就職支援コース」、労働時間で勤務形態を決める「ワークシェアコース」がある。
 ワークシェアコースは健康であれば選択できるが、給与は新人社員並みに抑えられる。一方、その他のコースは定年時に一定の資格と会社側の認定が必要。但し、スーパーセールスコースの場合、定年時の年収の70%が保証される。
介護保険料減免発言 厚生省は困惑

2000/10/ 3 日本経済新聞朝刊

  利用者混乱のおそれ
 自民党の亀井静香政調会長は2日、低所得者から介護保険料を徴収しない法改正を検討していることを明らかにした。これに対し厚生省は「原則としてすべての高齢者に応分の負担を求めながら制度を運営するという介護保険の理念に反する可能性がある」(老人保健福祉局)と心配している。介護保険料を巡っては昨年秋、65歳以上の人の保険料の半年凍結を決めるなどの特別対策が与党主導で決まった。制度のかなめでもある保険料の徴収方法を相次ぐ変更で、利用者が混乱するおそれもある。
 今月から徴収が始まる65歳以上の高齢者の介護保険料については、一部の市町村が低所得者を対象に独自の減免措置に踏み切っている。一方で、自治体の中には「財政に余裕がなければ減免は難しい」などと、国による減免措置の一本化を求める声もある。
 亀井氏の構想は国がある所得基準を設定し、それ以下なら一律に保険料を免除するというもの。保険料の軽減措置への取り組みの遅れで、住民の突き上げを心配する市町村長に配慮したとの見方がもっぱらだ。
 介護保険では高齢者本人や世帯の所得に応じて保険料を5段階に分けている。厚生省は各自治体に(1)保険料の全額免除(2)一律の減免措置(3)減免分の一般会計からの補てん--の3つを「不適当」と通知しており、自然災害などの特殊な事情がない限り保険料ゼロの人を出さない仕組みにしている。
 これは、地域で受けられる介護サービスの質や量と負担能力との見合いから、住民の合意に基づいて市町村が保険料を設定すべきだとの考え方に基づいている。
 同省は国が「一律減免措置」を導入すればこうした制度の根幹が崩れかねないとみている。
「ITカード」第2幕

2000/10/ 3 日本経済新聞朝刊

  400ヶ所で無料体験 <企画庁
 経済企画庁は国民がパソコン操作など情報技術(IT)技能に習熟するための支援策を固めた。全国に約400ある消費生活センターにパソコンを設置し希望者が操作を体験できるようにする。無料講習会も開いてインターネットの接続方法などの学習機会を提供する。今年度補正予算案で事業費として約11億円を計上するとともに、経済対策に盛り込みたい考えだ。
 消費生活センターは都道府県や市町村が運営する消費者相談機関。1つのセンターに平均3台のパソコンを置く計画で、全国で1200台前後に達する見込みだ。主な講師は全国に約2400人いる消費生活センターの相談員を想定している。専門講師やボランティアも活用する。
 堺屋太一企画庁長官が提唱した「IT受講カード」構想が見送られたため、消費生活センターを活用した普及策を代替案の1つと位置付ける。
 
40万人に技能習得支援 <労働省
 労働省は2000年度中に40万人に情報技術(IT)技能の習得を支援する方針を決めた。IT分野の公共職業訓練を増やすほか、訓練所の施設を自習用に開放する。今年度補正予算で約200億円を要求する。IT化に対応できる人材を育成し円滑な就職を支援するねらいだ。
 技能習得支援では、23万人に最低30時間程度の公共職業訓練を実施する。失業者は無料、在職者も低料金で受講できるようにする。内容は(1)電子メールの送信から表計算ソフト活用までの実践訓練(2)ホームページ作成などの応用訓練(3)ソフト開発など専門訓練--の3段階。公共職業訓練所にパソコンを設置し、施設を夜間や土曜・日曜に開放する。
 同省は2001年度当初予算の概算要求でも100万人のIT技能取得支援を盛り込んでおり、その一部を前倒しする。
差額ベッド 5割以上容認

2000/10/ 1 日本経済新聞朝刊

  承認基準を明確化 厚生省 通常病室確保など条件
 厚生省が病院が医療保険とは別に利用料を徴収できる差額ベッドを全体の5割以上に高める承認基準を明確にし、差額ベッド中心の病院経営を事実上認める。患者のプライバシー志向を背景に差額ベッドを備える病院が増えてきたため。承認基準には、通常の病室を一定割合残すことや、地域内で通常ベッドが確保されていることなどを盛り込む方針だ。ただ、差額ベッドへの切替が過度に進めば、利用料を負担できない患者の入院を妨げられる恐れもある。
 差額ベッドを5割超に高める承認基準は中央社会保健医療審議会(厚相の諮問機関)での検討を経て月内にもまとめ、年内に医療機関に通知する見通し。
 差額ベッドは1人当たり面積が6.4平方メートル以上、ベッド数4床以下と通常よりプライバシーを確保した病室。病院は医療保険から受け取る医療費とは別に独自に設定した利用料(差額ベッド代)を患者から徴収できるため個室や2人部屋など差額ベッドを備える病院が増えており、差額ベッドは全国のベッド総数の1割強を占めている。
 厚生省は1つの病院ベッド総数に占める差額ベッドの割合を原則として5割以下に抑えてきた。5割以上に高めたい病院は個別に同省の承認を受けなければならなくなったが、明確な承認基準がなく、これまで5割以上に増やす病室は皆無だった。今年に入って都内の病室が要望したため、客観的な承認基準を設けて5割以上を容認することにした。
 承認基準の詳細は今後詰めるが、患者が選択できるよう差額ベッド以外の通常の病室を一定割合残すことを義務づける。地域内の他の病室でも差額ベッド以外の病室が十分確保されているかどうかも勘案する。安易な増収策で通常の病室を差額ベッドに切り替えるのを防ぐため、食堂、談話室、面会室、浴室など設備が一定水準を満たすことなども条件に課す方向だ。
 あわせて厚生省は差額ベッドの利用増加を踏まえて、病院が患者から差額ベッド利用料を徴収できる範囲も明示する。救急患者、手術直後の患者、苦痛の激しい末期患者など治療上の必要から差額ベッドを使った場合や他の患者への院内感染を防ぐ目的で差額ベッドを使った場合は利用料の請求を認めない。
 差額ベッドが増えれば患者が病室を選びやすくなる利点がある。半面、利用料を負担できない患者が入院しにくくなる懸念もある。
海外大卒者に的に日産が秋の採用

2000/10/ 1 日本経済新聞朝刊

  まず今年度4人 国際感覚持つ人材を確保
 日産自動車は今年度から、主に海外大学の卒業生を対象に秋の新卒採用を始める。同社は経営のグローバル化を再建の柱に据えており、留学経験を通じて国際感覚を身につけた人材を確保する。来年度は全新卒者の2割程度を秋に採用したい考え。インターネットによる採用活動や通年での中途採用に加え、新卒採用を春秋の2回にすることで、柔軟な人事戦略を可能にする。
 今年度は米や英、カナダの大学を卒業した計4人を10月1日付で採用する。全員を技術開発部門に配属する。海外への留学生は夏に卒業しても翌春の採用時期まで就職できない場合が多い。日産は秋採用で他社に先駆け人材確保を有利に進める。秋採用の制度化は国内自動車業界で初めてという。来年4月には約200人の新卒者を採用する。
 来年度の新卒採用計画は策定中だが、全体の2割前後を秋採用とする方針だ。同社は多彩な人材を確保するため、採用情報の発信だけでなく応募の受け付けにもネットを活用。即戦力となる中途採用は今年度に282人を予定する。学生が企業で就業体験するインターンシップ導入も検討している。