社会保険労務士関連ニュース(2000年/第4四半期:2001/ 1- 3)

2000年(平成12年)度 第4四半期 2001年 1月〜 3月に新聞等で発表されたニュースです。

【LastUpdate 2001. 3.31】

【Add 2001. 3.31】

  女性の雇用者初めて4割に 「2000年版白書」

2001/ 3/30 日本経済新聞朝刊

   全雇用者に占める女性の比率が初めて4割台に乗ったことが29日、厚生労働省の「2000年版女性労働白書」でわかった。
 まとめによると、正社員やパートを合わせた全雇用者は約5,350万人。このうち女性は約2,140万人で、全体の40.0%を占めた。
 また、1999年中にパートとして就職した女性は約145万人で、正社員の数を4万人近く上回った。1997-2000年の4年間で、女性の正社員が1.9%減っているのに対し、パートは1.9%増えている。2000年版白書では初めて「どの産業が女性にとって働きやすいのか」を調査。5段階で評価した結果、「5」はサービス業で、最低となる「1」は建設業だった。
退職金 平均額が減少 60歳大卒2563万円

2001/ 3/29 日本経済新聞朝刊

  日経連調べ98年比1.3%減 「賃上げ連動せず」4割に
 日経連が28日まとめた2000年の退職金・年金に関する実態調査(速報)によると、大卒の男性正社員が60歳で定年退職した場合の退職した場合の退職金は平均で2,563万円だった。前回調査(1998年)に比べ1.3%減。景気低迷に加え、実績反映型の賃金制度への移行が進む環境で、退職金の伸び悩みが鮮明になっている。
 調査は昨年9月、1758社に実施、214社から回答を得た。高卒の場合は2,289万円で、前回調査より3%減だった。
 毎年の賃上げがそのまま退職金に反映される企業は全体の54%で、前回より10%ポイント減った。賃上げとは関係なく決める企業は41.2%に達しており、日経連は「退職金に実績や能力を反映させる企業が増えている」とみている。
 退職金の支給方法では一時金と退職年金の併用が82.4%。一時金だけの企業は10%で、退職年金制度の身は7.6%だった。
男性賃金横ばい 55歳以上は減少 昨年6月時点

2001/ 3/29 日本経済新聞朝刊

   厚生労働省が28日発表した2000年の賃金構造基本統計調査によると、昨年6月時点の男性の平均賃金(ボーナス、時間外を含まない所定内給与、除くパート)は月336,000円で、前年とほぼ同額にとどまり、伸び率は前年(0.1%増)よりさらに縮小した。
 内訳をみると、前年にプラスだった55歳以上の賃金の伸び率がマイナスに転じ、20-24歳を除き、全年齢層の賃金が減った。リストラを進める企業が賃金を抑制している実態を裏付けた格好。女性の平均賃金は月220,600円と前年比1.4%増えた。
 調査は昨年6月、従業員10人以上の約44,000社、約113万人を対象に実施。全体の平均賃金は前年比0.5%増の月302,200円(平均39.8歳)。平均勤続年数は男性が13.3年、女性が8.8年で前年よりそれぞれ0.1年、0.3年長くなった。

【Add 2001. 3.25】

  高齢者医療費 伸び、経済成長率の範囲に

2001/ 3/25 日本経済新聞朝刊

  社会保障大綱原案 年金保険料上げも
 政府・与党の社会保障改革協議会(議長・森善朗首相)が30日にまとめる社会保障改革大綱の原案が明らかになった。財政構造改革の一環で、少子高齢化により財政が急速に悪化している社会保障制度の立て直しを急ぎ、世代間の負担格差の是正を中心に、給付と負担のあり方を抜本的に見直すのが柱。高齢者にも資産や所得に応じた負担を求めるほか、公的年金保険料を早期に引き上げる方針を盛り込んだ。給付面では高齢者医療費について、年4%程度の伸びを経済成長率と同程度に押さえる方針を明記、当面は1-2%程度とすることを軸に検討を進める。
世代間の負担格差 是正
 大綱は「経済や財政と均衡のとれた持続可能な社会保障制度の再構築」を掲げており、社会保障制度改革や税制改革の基本に据える。政府・与党は作業部会を設置、具体策の検討に入る。特に財政悪化の深刻な医療保険制度は2002年度の改革の実現を目指す。
 大綱では財政悪化が続くなかで年金、医療、介護など社会保障費用が膨らみ、「若い世代に社会保障制度の持続可能性や将来の負担増への懸念が強くなっている」と指摘。年金や医療費などについて現役世代の過重な負担を軽減し、高齢者にも経済力に応じた負担を求める方針を政府・与党として明確に打ち出した。
 具体策として、大半の高齢者の公的年金収入に所得税などがかからない現状を見直し、課税を強化する方針を明記。税制改革を「社会共通の費用を広く分かち合う視点から検討」するとし、将来の消費税率の引き上げなどに含みを残した。
 景気への配慮から2004年度まで凍結している公的年金保険料も、早期引き上げに取り組む方針を示した。引き上げを先送りすれば年金財政の悪化が一段と進み、将来の世代の保険料引き上げ幅が大きくなる事態を防ぐ狙いがある。
 給付面では、高齢者医療費を中心に、医療費の伸び率が経済成長率を大きく上回らないように抑える枠組みを作る方針を示した。具体的な数値目標の水準や、診療報酬や薬価制度の見直しなど医療費抑制策が今後の課題になりそうだ。
 高額所得者や資産家層の年金支給額や医療・介護保険の利用額の制限など給付の抑制も示唆した。介護施設の入居者などは年金支給額を削るといった年金・医療・介護の各制度間の重視を避ける試みも検討する。
 財源では保守党などが消費税の福祉目的税化を主張しているのに配慮、「利用者負担・保険料負担・公費負担の適切な組み合わせで確実かつ安定的にまかなう」とするにとどめた。

【Add 2001. 3.24】

  大卒採用 2002年度18%増

2001/ 3/22 日本経済新聞朝刊

  松下4割増、ホンダは3割 本社第1次集計
 主要企業の2002年度の新卒採用数が今年春の採用実績に比べ大幅に拡大する。日本経済新聞社が21日まとめた2002年度採用計画調査(3月13日現在、1次集計)によると、大学卒の新卒採用予定は2001年春の実績見込みに比べ18.4%増加、高卒などを含む全体でも12.1%となり、ともに1998年度以来年ぶりの2ケタ増となる。松下電器産業が4割増の850人、ホンダが3割増の490人の大卒採用を計画するなど電機や自動車業界を軸に製造業が採用を急拡大する。景気の先行きは不透明感を増しているが、産業界はデフレ下で成長事業を育成するため、必要な人材は積極的に確保する姿勢を強めている。
 全体の採用計画を確定している1044社の2002年度採用予定は、2001年度比12.1%増の計71,420人。大卒採用は18.4%増の58,733人で、理工系が23.0%増と大幅に増加、文化系は11.8%増となる。
 短大・専門学校・高専卒の採用も11.9%増と拡大するが、高卒採用は前年の4.4%増から一転、8.2%のマイナスに落ち込む。国内製造拠点の合理化や海外への生産シフトが響いているとみられる。
 大卒理工系の採用が増えるのは、成長事業を育成・強化するため研究開発要員を拡充する動きが広がっていることに加え、情報技術(IT)分野で深刻になっているソフトウェア技術者の不足を補うため。松下電器は2002年度の大卒理工系の採用を今春の5割増の750人に拡大、ホンダも大卒理工系を今春より100人増やして420人とする。
 企業の新卒採用総数と大卒採用数はともに、バブル崩壊後の1992年度から5年連続で前年実績を下回った。97、98年度は2ケタ増となったが、99、2000年度は逆に2ケタのマイナスが続き、2001年度は再び増加に転じていた。2002年度はいずれも2ケタ増で、大卒採用が15%を超す伸びとなるのは1990年度以来12年ぶり。
 産業界ではリストラクチャリング(事業の再構築)の動きが依然広がっているが、過去の採用抑制による若年層不足を補うため、新事業創出につながる人材は積極的に採用する企業が増えてきた。
 
2002年度の新卒採用計画(伸び率%、▼は減)
 

採用確定社数

採用予定人数

2002年度前年度比伸び率 2001年度前年度比伸び率
<総合計>

1,044

71,420

12.1

9.2

大卒計

1,102

58,733

18.4

9.9

 文科系

648

9,497

11.8

11.0

 理工系

650

16,523

23.0

11.8

短大・専門学校・高専卒計

926

7,701

11.9

6.3

 文科系

806

1,501

1.6

▼0.1

 理工系

802

930

▼1.3

1.7

高卒計

1,160

5,984

▼8.2

4.4

【Add 2001. 3.20】

  成果主義賃金 富士通見直し 先駆導入から8年「弊害」

2001/ 3/19 朝日新聞朝刊

  失敗恐れ「挑戦」不足
 仕事の目標を決め、その達成度に応じて処遇と賃金を決める成果主義に基づく賃金・人事制度を先駆的に導入した富士通(秋草直之社長)が、4月から制度の見直しを行うことになった。「短期的な目標ばかりでヒット商品が生まれない」などの弊害が表れたためで、今後はプロセスや潜在力を重視して評価するよう改めるという。先頭を切って推進し、他社のモデルとなった富士通の方針転換は企業の賃金制度全体にも大きな影響を及ぼしそうだ。
 富士通が「社員のやる気を引き出し、競争力を強化する」とうたって、管理職に成果主義を導入したのは1993年。その後、全社員にまで制度を広げ、年功序列の要素を全廃した。
 半年ごとに社員1人1人が目標を決め、その達成度を上司が5段階評価し、賞与や給与、昇給に反映させるようにした。
 成果主義を導入する企業は増加の一途をたどり、日経連の2001年春闘方針でも成果主義の徹底を求めている。
 しかしここ数年、富士通社内から、賃金制度の弊害を問う声が出てきた。
 失敗を恐れるあまり長期間にわたる高い目標に挑戦しなくなったため、ヒット商品が生まれなくなった*納入した商品のアフターケアなどの地味な通常業務がおろそかになり、トラブルが頻発して顧客に逃げられる*自分の目標達成で手一杯になり、問題が起きても他人に押しつけようとする-。
 また、業績のいい都市部の事業所や大型プロジェクトに所属している方が有利で、個人の努力や働きぶりは実際には考慮されず、不公平との声も出ていた。
 今回の見直しでは、短期的な成果だけを評価することをやめる。長期的なプロジェクトや、結果的に失敗に終わった業務でも、どれだけ熱意を持って取り組んだかも考慮に入れるなどプロセスを重視する。
 また、目標を達成した社員だから昇格させるのではなく、そのポストに適任かどうかも昇格の判断材料にするよう改める。
年功制戻らぬ
 秋草直之・富士通社長の話 日本社会で根付かせるのは難しかった。現場では運用がうまくいかない面もあった。評価の仕組みをそれぞれの部署の実情に合わせ、日本型成果主義を定着させたい。年功制に逆戻りすることはあり得ない。
労災保険 治療費 健保回し23億円

2001/ 3/18 朝日新聞朝刊

  昨年度政府管掌分 6万7000件見つかる
 仕事によるケガや病気などで労災保険が支払うべき治療費が、健康保険に回されている。社会保険庁が中小企業の従業員の政府管掌健康保険について骨折などの疾患を点検したところ、昨年度は67,000件、23億円分の労災が見つかり、本人に対して申請し直すよう求めた。
 朝日新聞の調査では建設関係の大手10社の国民健康保険組合のうち集計可能な8組合分でも昨年度で約1,700件、約9,000万円分が労災に申請し直されていた。
 いずれも、医療機関から請求書として送られてくる診療報酬明細書(レセプト)から骨折や打撲などを選び出して本人に照会することでわかった。心臓疾患など過労死につながる疾病は点検すらされていない。大企業の組合健保や市町村国保に紛れ込んでいる労災も相当あると見られる。
 政管健保からの照会に対して「仕事中あるいは通勤中」と本人が答えた場合だけ、本人に労災申請を促し、健保が支払った分の返還を求めている。労災は健保に比べて、早く社会復帰できるようにリハビリや付き添い看護、差額ベッド、高額な薬剤の一部など手厚い内容もある。
 政管健保は昨年度決算で3,000億円、7年連続の赤字を抱え、「払わなくていいものまで払うことはない。労災制度がもっと知られれば」としている。建設関係の国保組合の間では「元請けの労災保険を使えばいいと行政は言うが、下請けは干されてしまう」「申請書類が複雑で手続きが面倒」などの意見があった。
 大阪府医師会が府内の労災指定医療機関を対象に6年前にまとめたアンケートでは、回答のあった811の病院や診療所のうち約4割が「事業主が労災扱いをさせないためのトラブル」を経験していた。
 事業主や患者に労災扱いするように指導しても必要な書類を出さない場合、「やむなく健康保険で請求した」が230機関、「自費扱いとし患者か事業主に請求した」が200機関あった(複数回答)。
緊急雇用対策を延長

2001/ 3/15 日本経済新聞朝刊

  厚生労働省方針 企業破たん増に備え
 厚生労働省は雇用情勢が悪化していることに対応し、2000年5月に作成した緊急雇用対策を期間延長する方針だ。現行規定では5月15日で期限切れとなるが、4-10ヶ月延長する方向で検討している。不良債権の最終処理が進む過程で、企業の経営破たんなどが増え失業者が増えるおそれもある。対策は完全失業率が5%以上となった場合に緊急発動する助成金を含んでおり、失業率の上昇に備える。
 15日に労使の代表を集めて開く緊急雇用問題連絡会議で延長の方向を示し、3月中に細部を決める。
 見直すのは35万人の雇用創出を目標に掲げている「ミスマッチ解消を重点とする緊急雇用対策」。(1)成長産業の雇用支援策を拡充する。(2)完全失業率が5%台に乗った場合に緊急発動する助成金をつくる--の2点が柱。1年間の期間限定だが、これを延長する。2002年3月末まで延ばす案が有力だが、同省は今年10月に雇用に関する助成金を見直す予定であるため、期限を9月末とする案も浮上している。助成金を支給する条件を緩和して、対象を広げることも検討。財源は未消化予算の振り替えで対応する考えで、新たな予算措置はとらない。
混合型年金 2002年度導入 一定金額保証、利回りは変動

2001/ 3/14 日本経済新聞朝刊

  政府 企業の選択肢増やす
 政府は企業が一定の年金を保証するものの、運用環境に応じて年金額が変動する新たな企業年金制度を2002年度に導入する方針だ。将来の年金額をあらかじめ決めておく確定給付型と、運用成績に応じて年金額が変動する確定拠出型の両方の特徴を併せ持った混合型の企業年金となる。企業年金の選択肢を増やすことで、企業の年金負担を軽減するのが狙い。

     3タイプの企業年金の特徴
  確定給付型 確定拠出型 混合型
運用 企業が利回りを保証 利回りの保証はなく加入者がリスクを負担 利回りの保証はあるが、毎年変動する場合も
企業負担 重い 軽い 確定給付型と確定拠出型の中間
年金額 企業が保証 運用次第で変動 保証はあるが、利回りの変動により保証額も変動する場合も

 混合型の制度は確定給付型企業年金の変形型として認める。政府が2002年度の施行を目指して国会に提出している「確定給付企業年金法案」のなかに混合型の設置を可能にするとの条文を盛り込む。法成立後に定める同法の政省令で混合型制度の細則を決める考えだ。
 政府が導入を予定している混合型の制度は米国で「キャッシュ・バランス・プラン」と呼ばれ、普及している制度。企業は将来の確定給付型年金と同様に掛け金の積立金に対し一定利回りを保証。実際の利回りが保証利回りを下回ると企業が穴埋めする。ただ、保証利回りは原則として運用環境などに応じて毎年自由に設定できるようにする。
 将来の確定給付年金は原則的に保証利回りを年5.5%などと固定していたため、現在のように利回りが低迷したときの企業の穴埋め負担が重かった。混合型では企業負担が軽減される。
 政府は今国会に確定拠出企業年金を導入するための法案も提出しており、成立すれば年内にも同企業年金を始めることができる。確定拠出型は毎月一定の掛け金を拠出、その積立金の運用成績次第で年金額が変動するタイプ。企業の穴埋め負担も発生しない。しかし、加入者にとっては将来の年金額が保証されないという不安がある。
 混合型ならば、企業が保証する利回りがあるので、将来の年金額の見当をつけることができる。

【Add 2001. 3.11】

  薬価差益減少続く 2000年度推計

2001/ 3/11 日本経済新聞朝刊

   医療保険が適用される医薬品の公定価格と各医療機関が卸会社から実際に薬を買い入れる際の取引価格の差額が減り続けている。1990年代初めには年間で総額1兆5000億円程度あったが、2000年度にはこの3分の1以下になる可能性も出てきた。薬価差は各医療機関の収入となるため、より多くの薬が使われる原因になっている。医療費抑制を目指す政府は薬価差が生まれない方向に制度改革を進めており、その成果が徐々に表れてきた格好だ。
 健康保険などの医療保険で使う医薬品には厚生労働省が定めた公定価格がある。医療機関は患者に薬を出すと、その代金を公定価格で医療保険に請求する。一方、医療機関は卸会社から公定価格よりも安く薬を購入するので、差益が生まれる。同省の推計によると、91年度には1兆4900億円の差益があった。
 これに対し、厚生労働省は原則2年1度の薬価改定で公定価格引き下げを続けたため薬価差は減少。97年度には1兆円を割った。同省が昨年6月に実施した暫定的な取引価格調査の結果からは2000年度の差額は2000億円台半ばになる。本格調査をすれば差額は増える見通しだが、91年度の3分の1以下になる可能性は高いという。
就職内定率 やや改善

2001/ 3/10 日本経済新聞朝刊

  大学生0.7ポイント上回る 未内定者は6万5千人
 今春卒業予定の大学生の就職内定率(2月1日)は82.3%と前年同期を0.7ポイント上回ったことが9日、文部科学、厚生労働両省の調査で分かった。短大生は同0.6ポイント増の66.8%。未内定者は大学、短大あわせて105,000人と推計される。
 両省は「全体として改善がみられるものの、依然として厳しい状況にある」と分析している。
 調査は国公私立大、短大、高等専門学校計88校の卒業予定者5,300人を抽出して実施。推計では、調査時点で内定していない大学生は65,000人(男子34,000人、女子31,000人)、短大生は40,000人。前年同期より合計で15,000人減少している。
 就職を希望する大学生は全体の66.9%。前年同期比0.5ポイント増加した。就職希望者のうち内定が決まったのは、男子が同0.1ポイント増の83.9%、女子が2.6ポイント増の79.7%。文理別では文系が同0.6ポイント増の81.2%、理系が同1.6ポイント増の87.4%だった。
 高校生の内定率は80.5%(1月末時点)となり、過去最低の水準だった前年同期を1.2ポイント上回った。
健保組合、赤字最大に

2001/ 3/ 9 日本経済新聞朝刊

  来年度 高齢者医療費が重荷
 健康保険組合連合会が8日まとめた全国の健康保険組合の2001年度予算状況によると、全組合の合計収支は過去最大の赤字になる見通しだ。個別にみても全組合の90%は赤字予算となる。高齢者が使う医療費を賄うための拠出金が各健保組合で増え続けていることが主な原因。健保連では高齢者の医療費の負担の仕組みを見直す制度改革を2002年度に確実に実施すべきだと訴えている。
 健保連では全1756組合の76%について予算を調べ、全体の状況を推計した。2001年度は全組合合計で保険料収入を中心に5兆8313億円の経常収入を予定しているが、医療費の支払いなどで6兆3217億円の経常支出を見込む。収支は4904億円の赤字。
厚年基金の破たん時支払い保証 掛け金 健全度に応じ徴収

2001/ 3/ 7 日本経済新聞朝刊

  連合会が改革案 積立金不足なら高く
 厚生年金基金連合会は厚生年金基金の破たん時に加入者に一定の年金を保証する「支払い保証事業」の改革案をまとめた。基金から取る保証事業の掛け金の徴収基準を、それぞれの基金の加入者数に応じて決めている仕組みを改め、積み立て不足が大きい基金ほど掛け金が増えるようにする。破たんする可能性が高い基金の負担を重くし、支払い保証事業の安定性を高めるのがねらいだ。
 連合会は夏にも改革策を正式に決め、2002年度をめどに実施する。支払い保証事業に対しては、規模の大きな基金などが「掛け金負担が重い半面、保証範囲が限定されており保証を受けられる見込みが小さい」との不満を強めていた。掛け金の支払いを停止する基金も現れ、同事業の存続を危ぶむ声が出ていた。
 支払い保証事業に対して基金が支払う掛け金は現在、基金の加入者数に応じて決める部分が大半を占めている。改革案では加入者数によって決める要素を低くする。一方、各基金が年金支給のために積み立てておくべき金額に対して、実際の積立金がどの程度不足しているかに応じて決める要素を高める。制度変更後も1基金当たりの平均年間掛け金額(約200万円、加入者1人あたりでは約300円)は変えない方針だ。積立金が厚い基金の負担が減った分、積み立て不足が大きい基金の負担は増える。
 厚生年金基金は国に代わって厚生年金を支給する代行部分と、上乗せ支給する部分で構成している。支払い保証事業は上乗せ部分を対象にしており、保証の上限は代行部分の3割相当と規定している。仮に約束していた上乗せ年金の支給額が代行部分の5割という基金が解散した場合、3割を超える部分は保証の対象外になる。これでは保証の範囲が小さすぎるとの声が多いため、改革案では代行部分の3割を超えても一定の条件付きで保証する道を設ける方向にしている。
 政府は確定給付企業年金法案で、すべての企業年金に破たん時の支払い保証事業を義務づけることを検討したが、経済界の反対で実現しなかった。同事業の法制化は課題として検討する。連合会の見直し方針は今後の法制化議論にも影響を及ぼしそうだ。
雇用過剰感強まる 厚生労働省2月調査

2001/ 3/ 7 日本経済新聞朝刊

   企業の間で雇用の過剰感がいくぶん強まっている。厚生労働省が6日発表した2月の労働経済動向調査(速報)によると、労働者過不足判断DI(「不足」と答えた企業の割合から「過剰」と答えた割合を引いた値)は昨年11月の前回調査より2ポイント低いマイナス4となった。同DIの低下は1999年5月調査以来、1年9箇月ぶりのことだ。
 業種別にみると、雇用過剰感は建設業、製造業、卸売り・小売業・飲食店で強く、同DIはいずれの業種もマイナス10となった。情報技術(IT)景気の余熱が残っている運輸・通信は不足感が強く、DIはプラス16だった。
 昨年10-12月に残業削減、出向などの雇用調整を実施した企業の割合は21%となり、前回調査(7-9月)より1ポイント上がった。希望退職を募集したのは2%にとどまった。

【Add 2001. 3. 5】

  新規離職者、2ヶ月連続増 1月3.3%

2001/ 3/ 4 日本経済新聞朝刊

   これまでは横ばいだった新規離職者の増加が目立ってきた。1月に新たに失業手当の受給資格を得た人は、前年同月比3.3%増と2ヶ月連続で増えた。もともと失業期間の長期化が目立っている上に、新規離職者が増えると、雇用情勢の一層の悪化が懸念される。
 失業手当の受給資格者は昨年年初から増えたり減ったりしていた。失業率が高止まりしていたのは、失業の長期化が一因とみられてきた。求人と求職者の条件のズレである。「雇用のミスマッチ」のため、就職できない人が多いからだ。総務省の労働力特別調査によると、失業期間が1年以上の失業者は1995年2月時点では18.1%だったが、2000年8月時点では25.8%に増えている。
 失業の長期化に新規離職者の増加が加わると、完全失業者は増え続ける。1月に4.9%と過去最悪に並んだ失業率もさらに上昇する可能性が十分にある。
公務員の人事評価改革案 目標達成型を導入 政府

2001/ 3/ 4 日本経済新聞朝刊

   人事院の「国家公務員の評価・活用に関する研究会」(笹島芳雄座長)は月内に、現行の勤務評定に代わる国家公務員の新たな人事評価システムの最終報告をまとめる。年度初めに各職員が設けた業務目標の達成度を、期末にチェックする「目標管理型」の評価手法を導入するのが最大の柱だ。実績重視の新たな評価方式により、年功で給料やポストが決まる現行の人事制度を抜本的に改める。特に本省課長級以上の基本給は実績評価だけで決まるようにする方針だ。
 研究会の報告を受け、人事院は4月にも現行の勤務評定を定めた人事院規則の改正に着手する。目標管理型の新評価システムを1年ほど試行したうえで、早ければ2002年度にも実施に移す。
 現行の勤務評定は1951年に制定されて以来、基本的に変わっていない。職員の適性などを、定時に出勤したかどうかなど日常的な業務で評価しており、創造性や調整能力などを反映する余地は少ない。新システムの主な評価対象は行政職で、各職員は上司と面談して法案の策定や関係業界、与党への説明、国会への提出などその年に達成すべき業務目標を定める。実際の到達度が高ければ、高い評価を得て昇進や昇級につながる仕組みにする。
 上司と部下が面接を通じて目標を設定することで「各職員の企画力や職務遂行能力を公正、客観的に評価できる」とみている。評価の過程や結果も部下に公表し、透明性を確保する。
医療費経済効果 2015年雇用900万人 日医総研が資産

2001/ 3/ 4 日本経済新聞朝刊

   日本医師会総合政策研究機構(日医総研)は2015年にかかる医療費が様々な産業の生産を誘発し、900万人を超える雇用に結び付くとの試算をまとめた。日医総研では「医療費はもっぱら国民の負担とされるが、経済効果があることも認識すべきだ」と説明している。2002年度に予定されている医療制度改革が医療費削減一辺倒の議論となるのに予防線を張る意味合いもあるようだ。
 日医総研では現時点での医療費約30兆円を基として、高齢者医療費の伸び率を年率0.5%とするなどの前提を置き、2015年の医療費を60兆2000億円と計算した。様々な産業で誘発する生産額を産業連関表から試算すると、162兆円。病院などの医療産業そのものや、医薬品で誘発額は大きいが、住宅賃貸料や小売り、金融などにも4兆-7兆円程度の誘発効果があるという。

【Add 2001. 3. 3】

  特養ホーム 入所者負担引き上げへ

2001/ 3/ 2 日本経済新聞朝刊

  厚生労働省 2002年度めざす 家賃・光熱費分など
 厚生労働省は介護の必要な高齢者を対象とする特別養護老人ホームについて、入所者の自己負担を引き上げる方向で検討に入った。家賃や光熱費まで介護保険から支給しているが、こうした生活費の一部を自己負担にする。保険の給付対象を介護サービスの費用に限定することで、保険財政の悪化を防ぐのが狙いだ。2002年度の実現を目指す。
 特養ホームには施設運営費用として入浴の世話などに必要な介護費用に加え、食費や生活費も「介護報酬」として保険から支給されている。要介護度が3(中度)くらいの平均的な入所者への支給額は約27万円で、うち生活費部分は支給額の約2割、およそ57,000円になる。
 厚生労働省では急速な高齢化の進展で介護費用が大きく膨らみ、現行制度を放置すると保険財政がひっぱくすると判断。水道や電気代のほか家賃とみなされる生活費の一定部分は入所者が支払う必要があるとしている。
 具体的には水道代などの実費は本人負担とする。また特養ホームの部屋と同じ広さのアパートを借りた場合の賃貸料などを参考に、家賃も一部を自己負担にする方向で検討している。
 現在、特養ホームの入所者は支給額の1割相当(27,000円)に食費の一部(23,000円)を加えた平均50,000円の負担で済んでいる。生活費の多くの部分を自己負担に振り替えれば、高齢者の反発も予想されるため、段階的に自己負担を引き上げる考え。低所得者の負担が過重にならないように負担軽減措置も導入する方針だ。
 自己負担引き上げには、介護施設によって負担額が大きく異なるという不公平を是正する狙いもある。現在、有料老人ホームや比較的軽度の介護で済む高齢者のための入居施設(ケアハウス)で介護を受ける人は生活費を全額自己負担している。ケアハウスの自己負担は所得に応じて月7万-15万円と、特養ホームを上回る場合が多い。
具体策は見送り 公的年金一本化

2001/ 3/ 1 日本経済新聞朝刊

  政府懇 農林・厚生統合は了承
 政府の公的年金制度一元化懇談会は28日、農協職員らのための農林共済年金と民間サラリーマンの厚生年金の統合を「妥当」とする報告書を正式にまとめた。公務員や私立学校職員の共済年金を含めた公的年金制度全体の一本化については「21世紀初頭の間に結論を得る」と記述するにとどめ、具体策は示さなかった。政府は報告書を受け3月中に、農林年金と厚生年金を2002年4月に統合するための法案を国会に提出する。
 農林年金は加入者の減少から財政が悪化しているため、公的年金としては最大規模の厚生年金との統合を求めていた。報告書ではこの統合を妥当とし、農林年金は厚生年金に対し移管金を支払うよう求めた。これまでの議論で移管額は合計1兆7600億円とすることが決まっている。
 国家、地方公務員の両共済年金については2004年までに相互に財政支援する仕組みをつくり、一体的な財政運営を進めることを求めた。保険料率などを同じにしていく方向だ。現在は財政状況が良好で保険料率も低い私立学校職員の共済年金に関しては、他の制度との負担の平等化を進めるため、保険料率の前倒し引き上げを検討すべきだと指摘している。
 
サラリーマンの公的年金制度
  加入者数(万人) 年金受給権者数
(万人)
平均年金月額
(万円)
月収に対する保険料率(%)
厚生年金

3,296

822

17.5

17.35

農林共済年金

48

14

18.0

19.49

国家公務員共済

111

58

21.9

18.39

地方公務員共済

331

135

23.5

16.56

私立学校教職員共済

40

6

22.1

13.3

※厚生労働省まとめ、99年3月末時点、保険料率は現時点
技術系、来春採用を拡大 大手企業 IT分野強化

2001/ 2/28 日本経済新聞朝刊

  東芝など100人増 ホンダ新車開発に投入
 大手企業が2002年春の新卒採用を拡大する。電機・情報大手は情報技術(IT)事業などの開発要員を増員するほか、自動車も競争力のカギを握る開発体制の強化を目的に技術系を中心に増やす。採用を抑制してきた鉄鋼はリストラクチャリング(事業の再構築)などにメドをつけ、積極姿勢に転じる。中高年に偏った人員構成を若手の補充で是正する狙いもある。電機などで業績の下方修正が相次いでいるものの、大手企業は研究開発など中長期的な成長力を確保するため、採用増へ動き始めた。
 東芝は2002年春の採用者数(通年採用者を含む)を870人に設定する。今年春採用見込みに比べ120人増やす。大学院修了を含む技術系の大学卒は500人と今春に比べ100人増加する。重点分野の携帯電話機などモバイル事業に開発要員を振り向ける。半導体、パソコンなどの市況は悪化しているが、「IT分野の強化は不可欠」(岡村正社長)とみている。
 三菱電機は大卒技術系採用を100人増やすほか、大卒事務系でも20人増の100人。工場で生産活動に従事する技能職は3年ぶりに200人前後採用する。中途採用も含めた2002年春の採用者数は概算で約1000人と今春見込み比5割増となる見通し。松下電器産業は事務系を前年並みの100人にとどめるが、技術系は5割増の750人に増やす。
 日本アイ・ビー・エムは無償基本ソフト(OS)のLinux(リナックス)に関連するシステム需要に合わせ、100人増の700人とする。日立製作所は既に2001年春の大卒新卒採用者を当初の750人から900人に上方修正した。「2002年春も2001年春の水準は維持する」(採用企画グループ)
 IT関連の研究開発力を強化する動きは電機以外でも加速している。リコーは大卒採用者数を252人から約350人に増やす方針だ。横河電機はほぼ倍増の150人、設計ソフト大手の図研は4割増の100人を採用する計画。
 自動車大手では、ホンダが新卒採用を14%増の830人とする。新車開発部門を中心に大卒技術系の採用を大幅に増やす。日産自動車も2倍超の440人を採用する計画だ。
 リストラが続いていた重厚長大産業にも採用意欲は戻っている。鉄鋼業界ではNKKと川崎製鉄が大卒採用を倍増するほか、住友金属工業は3年ぶりに採用を再開する。
 外資系製薬各社は新薬などの販売攻勢をかけるため、MR(医薬情報担当者)要員を大量に採用する。英系アストラゼネカ(大阪市)は290人を計画している。
 日経連の和田幸郎教育研修部長は「企業収益は悪化し始めているが、産業界でIT技術者の絶対数は不足している」とみる。ただ、事務系採用の抑制基調は続いており、新卒採用は技術系と事務系で明暗が分かれる恐れがある。
 日本経済新聞社の採用計画調査によると、2001年春採用(集計対象1598社)は前年実績比4.9%増と3年ぶりに増加に転じた。今後の景気動向にもよるが、現在検討している大手企業の2002年春採用計画は2年連続して増加する公算が大きい。
国民医療費5.5%増

2001/ 2/27 日本経済新聞朝刊

  来年度見通し30兆7000億円に 増加ペース再加速
 厚生労働省は、2001年度の国民医療費が30兆7000億円と、今年度より5.5%増えるとの見通しを明らかにした。国民医療費は患者負担引き上げの影響でここ数年は年2-4%の伸びにとどまっていた。高齢患者の急増などを背景に、ふたたび医療費の伸びを加速する見込みだ。
 2001年度の国民医療費のうち、約36%に当たる11兆円は高齢者医療費が占める。高齢化で原則70歳以上向け医療保険(老人保健)の適用者が60万人も増え、医療費は今年度に比べ9000億円膨らむと見込んでいる。健康保険組合加入のサラリーマンなど現役世代が使う医療費を合わせた全体では、同1兆6000億円増える見通しだ。
 昨春の介護保険制度導入で、国民医療費に計上していた高齢者医療費の一部が介護保険に移行することになった。このため今年度の国民医療費は29兆1000億円と、過去最高だった1999年度の実績を下回る。
 しかし、2001年度は介護保険への移行に伴う医療費削減効果が小さくなる。厚生労働省は医療費は介護保険制度導入前の増加ペースに戻る可能性が大きいとみている。
 国民医療費は現行制度のままだと2025年頃まで年平均4%程度の高い伸びが続く見通し。同省は2002年度の実施を目指している医療保険改革で、国民医療費にこれよりも低い伸び率の目標値を設定し医療費を抑える案などを検討している。
セクハラ 形だけの対応ダメ

2001/ 2/27 日本経済新聞朝刊

  厚生労働省 企業の指導を強化
 厚生労働省は26日までに、職場のセクハラ防止対策が形だけで防止に役立っていないケースが増えているため、企業への指導を強化することを決めた。全国の労働局雇用均等室に通知し、徹底させる。
 同省は、企業のセクハラ対策として(1)禁止の明確化(2)相談窓口の設置(3)セクハラが起きた場合の適切な対応--の実施を求めてきた。防止対策を取る企業は増えてはいるが、対策を形式的に整えるだけで、実際に機能していないケースが目立っているという。
 同省によると、セクハラの禁止が定められていても社員に周知されていなかったり、企業内に相談窓口があっても相談しづらいなどの声が寄せられている。窓口の担当者がセクハラの加害者だったり、企業内の窓口には行かず、直接雇用均等室に来る例もあった。実際にセクハラが起きた場合も放置したり、内々で処理することが多く「企業に相談したが、対応してもらえない」との苦情も多い。
 同省は(1)就業規則などで禁止を明確化する(2)相談窓口の担当者を複数にしたり、女性を加えるなど利用しやすくする(3)セクハラが起きた場合の対応の手順をルール化する--などと、企業への指導を強めるとしている。
建設業就業者の減少予測

2001/ 2/27 日本経済新聞朝刊

   国土建設省の外郭団体である建設経済研究所は、約660万人いる建設業就業者数の中期予測をまとめた。年間の建設市場(1999年で約70兆円)が2010年までに約1割減るとすると、2009年時点の就業者数は建設業の生産性が年率約2%で上昇し続けた場合で590万人。生産性が同約1%増にとどまると、建設会社の利益が減って雇用を維持できなくなり、490万人まで落ち込むとしている。
基礎年金 国庫5割負担10年かけ

2001/ 2/26 日本経済新聞朝刊

  政府検討 2002年度から段階的上げ
 政府は全国民共通の基礎(国民)年金に対する国庫(税)負担の割合について、現行の3分の1から10年程度かけて2分の1に引き上げる案の検討に入る。国庫負担を増やして保険料の上昇を抑える狙い。2002年度にも引き上げを始める。政府・与党は2004年までに2分の1にする目標を掲げているが、一気に引き上げると2兆円超の財源が必要。段階的な負担引き上げが現実的、との判断に政府は傾いている。
 今夏の参院選後に、社会保障に関する政府・与党の協議会を中心に具体策の検討を進め、年内に結論を出す。ただ与党内には早期に2分の1にすべきだとの声も残り、調整は難航しそうだ。
 基礎年金については、昨春成立した年金制度改革法で、2004年までに国庫負担割合を2分の1に引き上げ、保険料を抑制すると付則に明記している。
 だが国庫負担割合を2分の1にするには2兆4000億円の財源が必要で、全額消費税で賄うには税率を1%以上引き上げなければならない。景気が不透明なことから、政府内では現実的でないとの声が大勢。一部には約140兆円に上る年金保険料積立金を活用する「立て替え案」もあるが、「一時しのぎに過ぎない」と慎重な意見が多い。
 このため、政府内では10年で段階的に2分の1に近づける方式をとり、国庫負担の増加を毎年2000億-3000億円ずつ抑える案が出ている。財源には、公的年金等控除を高齢者の収入などに応じて縮減していく案が浮上している。同控除により高齢者が受け取る公的年金は実質非課税になっており、税の減収額は年1兆円に上る。
 たばこ税などを増税し、得られた税収の一部を引き上げ財源に回す案などもある。政府は引き上げ期間中、これらの税制見直しを計画的に組み合わせ、財源手当が可能とみている。国民、厚生両年金の保険料は1999年度から引き上げを凍結中。政府・与党は国庫負担割合の引き上げ開始をその解除条件にしている。
 国庫負担割合が3分の1のままでは、今は13,300円の国民年金保険料を2025年頃には24,800円に引き上げなければならない。国庫負担を2004年までに一気に2分の1にすると2025年頃には、6,600円安い18,200円に抑えられる。段階的引き上げ方式なら、最終保険料は二方式の中間に落ち着く見通しだ。
厚生労働省 病気別に標準治療法

2001/ 2/26 日本経済新聞朝刊

  指針作り検討 医療費のムダ削減
 厚生労働省は病気ごとに治療法の目安となる指針(ガイドライン)作りに乗り出す。現在は医師によって治療法がばらばらで有効性が疑わしい医療行為もあるとみられるためだ。指針によって医師に標準的な治療を促し、無駄を減らして医療費の抑制につなげる。
 4月にも有識者らで構成する検討会を設け、2001年度中に指針作りの時期などをつめる。指針には高血圧症や糖尿病といった病気ごとに複数の治療法を示し、医師が患者の症状や希望にあった治療法を選択できるようにする。
 国や医師会がまず国内外の医療関係文献や薬、検査などの臨床研究データをもとに指針をまとめる。指針はインターネット上で「電子図書館」(仮称)のような形で公開し、医師だけでなく患者もアクセスできるようにする案が有力だ。
 大学を卒業してからの時間が長い開業医や、経験の乏しい医師も海外で一定の評価を得ている標準治療法を容易に選べるようになり、治療の効率化につながる。共通指針を活用した治療法は「化学的な根拠に基づく医療」を意味する「EBM」と呼ばれ、米国などで広く採用されている。
 標準的な治療法を確立するには、基礎となる膨大な診療情報を医療機関から集めるといった課題も多い。検討会は診療録(カルテ)を紙でなくパソコンで保存できる「電子カルテ」の導入策なども議論することになりそうだ。

【Add 2001. 2.24】

  厚生年金を民営化に

2001/ 2/24 日本経済新聞朝刊

  公的年金「基礎部分」に限定 政策構想フォーラム提言
 経済・財政学者でつくる施策構想フォーラム(代表世話人・大塚啓二郎東京都立大学教授)は23日、公的年金改革について将来にわたって安定した制度をつくるための提言を発表した。高齢者の年金原資を現役世代の保険料で賄う現在の公的年金制度は少子高齢化の進展で維持できないと判断。公的年金は全国民共通の基礎年金部分に限定し、厚生年金の報酬比例部分は各自の年金を各自で積み立てる方式に移行し、民営化すべきだと指摘している。
 同フォーラムは、満額で月7万円弱が支給される基礎年金は最低限の生活保障のための公的年金として堅持すべきだと提言。その財源は保険料ではなく、消費税を充てると説明している。一方、現役世代の収入に比例する厚生年金部分は現役世代の生活レベルを維持するための年金で、公的に保証する必要はないので、各自が金融機関などと契約して保険料を積み立てる方式が妥当だと提案した。
 積み立て方式への移行は激変緩和のため、1980年生まれの人から適用するのが望ましいと指摘。移行の際には旧制度が適用される人の年金原資、約450兆円を確保する必要がある。提言ではまず約束していた年金を平均で約23%削減することでこの費用を100兆円に圧縮、この100兆円は毎年2兆円ずつ国債を発行することで賄うことが可能とみている。旧世代と将来世代の両方に移行のコストを負担してもらうという考え方だ。
「知らなかった」29万人くら替え 国保だと3割負担 退職医療制度なら2割

2001/ 2/24 朝日新聞朝刊

  厚労省が指導 健保組合は負担増に悲鳴
 会社や役所を退職して市町村の国民健康保険(国保)に加入した人が、「退職者医療制度」の適用を申請すれば自己負担が医療費の2割で済む。それを知らずに3割負担の一般加入のままだった人らが1999年度以降、全国で少なくとも約29万人見つかり、厚生労働省の指導で退職者制度に移っていた。会計検査院から制度の不徹底を指摘され、厚労省が市町村に対象者の掘り起こしを指示した。恩恵を受け損なう人が大勢出るほど、医療保険制度が複雑になりすぎているといえそうだ。
 84年に始まった退職者制度は、国保に移った退職者が所属していた健保組合や中小企業の政府管掌健康保険、公務員の共済組合などから拠出金を集め、年金生活を始めた退職者の患者負担を軽くする仕組み。医者にかかりやすくなる退職者の費用負担を自営業者ら国保の一般加入者に押しつけない狙いもある。だが、広く知られていないうえ、制度が複雑で市町村も対象者を十分把握できなかった。
 国保の一般加入者は保険給付の半分が国庫負担となるため、会計検査院は96年、国庫負担を減らすことも狙って、健保組合などの拠出金に支えられる退職者制度への移し替えを求めた。
 昨年1月までに54万人の潜在的な対象者が見つかり、うち29万人が市町村から連絡を受けて退職者制度に移る手続きをした。残る25万人は「再就職した人や、返事のない人もいて、実態はよくわからない」(厚労省)という。
 加入者が急増した退職者制度は昨年度から財政状況が悪化し、今年度は医療費を支払うために1000億円を超す過去最高の借り入れとなる見通しだ。この借入金は2年後に、健保組合などに全額請求される仕組みになっている。健保組合は別の老人医療制度に対する拠出金の負担などが重荷となり、2002年度には積立金が底をつくなど解散寸前となる組合が全体の2割に達する見込みだけに、重いつけ回しとなりそうだ。
 退職者制度の加入者は昨年11月時点で約512万人、99年度の医療費の支払いは約1兆1800億円にのぼる。厚労省は「今年度予算は加入者急増の傾向がわかる前に組み、うまく見込めなかったのは事実だが、本来の制度に移ってもらったわけで問題はない」としている。だが、健康保険組合連合会は「市町村の窓口にすら制度が周知徹底されていなかったツケが、2年後にどんと回ってくる」と当惑を隠さない。
 西村周三・京大教授(医療経済学)の話 国が行き当たりばったりで医療保険制度を改めてきた象徴のような事例だ。制度が複雑すぎて、専門家でさえわかりにくい。健保組合など保険財政がどこも赤字の今こそ、国民にわかりやすい制度へ抜本的に改革する必要がある。
 退職者医療制度 会社や役所を退職して国民健康保険に入り、厚生年金や共済年金を受けている人とその家族が対象。年金に20年(または40歳以降で10年)以上の加入が条件。年金証書を受け取って2週間以内に市町村に届け出る。医療費の自己負担は2割(家族の通院は3割)。70歳になると原則1割負担の老人保健制度に移る。
年金を守れ 「報酬比例部分は個人運用に」

2001/ 2/24 朝日新聞朝刊

  経済学者ら提言 それでも削減の痛みあり
 老後の最低限の生活を保障する基礎年金(一階部分)を守るため、所得水準の落ち込みを補う意味が強い報酬比例部分(二階部分)は個人が保険料を積み立てて運用する制度に切り替えるべきだ--。経済学者らでつくる「政策構想フォーラム」は23日、存続を危ぶむ声さえある公的年金の改革のシナリオを発表した。
 公的年金は、現役世代が払う保険料で高齢者に給付する年金をまかなう「賦課方式」を原則にしている。同フォーラムは、少子高齢化の進展で現役世代に大きな負担がかかり、基礎年金の維持が難しくなると指摘。基礎年金は現行の賦課方式のままとし、報酬比例部分を自己責任で運用する「積み立て方式」に完全分離する必要があると提言している。
 具体的には、1980年以降に生まれた人が保険料を払う対象になった時点で新制度に次々と切り替えていき、79年生まれ以前の人は現行方式のままにすることで混乱を避ける。
 ただ、このケースでも、79年生まれ以前の人に対しては年金給付を一律29.5%削減するか、一律22.9%削減しつつ100兆円の国債発行を組み合わせて対応するといった痛みが避けられないという。提言をまとめた小塩隆士・東京学芸大助教授は「年金改革が遅れるほど負担が増す。政府は一刻も早く取り組むべきだ」としている。
冬のボーナス3年ぶり増加 厚生労働省発表

2001/ 2/24 朝日新聞朝刊

   厚生労働省が23日発表した主要企業の昨年末のボーナスの平均妥結額は79万9232円で、前年と比較できる企業についてみると、前年比0.76%増と3年ぶりに増加した。産業別ではサービス(9.84%増)、非鉄金属、卸・小売りの伸びが高かった。逆に金融(24.09%減)、建設(10.26%減)の落ち込みが目立った。平均妥結額は放送・通信の106万6693円が最も高く、建設、陸運と続いた。
401kに全面移行 すかいらーくグループ

2001/ 2/22 日本経済新聞朝刊

  確定給付年金廃止 人材獲得を狙う
 すかいらーくグループは年金・退職金の額が運用実績で変わる確定拠出年金(日本版401k)を全面的に導入する。外食業界は人材流動性が激しく、すかいらーくグループの従業員の平均勤続年数も9年前後と短い。そのため、勤続年数に関係なく運用の巧拙で年金・退職金が決まる新制度に早期に移行することで、従業員の士気向上や人材獲得などにつながると同社では判断する。
 トヨタ自動車や日立製作所なども401kの導入を検討しているが、現時点では既存の確定給付と並立させる方針。すかいらーくは自社の確定給付を廃止して全面移行する先駆けとなる。
 すかいらーくはこのほど労働組合と確定拠出年金の導入でほぼ合意した模様。当初はグループの主力13社前後(従業員計5,800人程度)を対象とする。政府・与党は今国会で401kの導入を可能にする関連法案の成立を目指しており、同社は法案成立後の導入第1号を狙う。
 同社の年金・退職制度は税制適格年金と退職一時金、業界で使われている「外食産業ジェフ厚生年金基金」を併用している。受取額ベースで全体の1割程度を占めるジェフ基金は新制度導入後も残し、併せて退職金前払い制度も新設する。
雇用助成見直し 自治体が地域計画作成 厚生労働省

2001/ 2/22 日本経済新聞朝刊

   厚生労働省は雇用情勢が悪化した地域の企業に助成金を支給する制度を一部見直す。現在は一定基準を満たすと助成地域を自動的に指定、企業に助成金を支給している。これを各都道府県などが地域雇用計画を作り、同省が審査する手続きに改める。地域の実情に即した対策を促す狙い。今通常国会に提出した地域雇用開発促進法の改正案に盛り、10月実施を目指す。
 地域雇用計画は、都道府県が市町村と共同で作成する。実施期間、現在の雇用状況と、雇用創出の目標、そのための方策を盛り込む。厚生労働省は地域の有識者などに意見を聞いたうえで、審査によって適当と認めた場合にその地域の企業を助成する。
 助成地域の種類も見直す。現在は雇用情勢の厳しい地域を5種類に分けて助成しているが、これを4種類に再編する。求職者が多いが就職が少ない地域は「求職活動援助地域」とし、地域雇用計画に盛り込まれた事業の一部を支援する。
適格年金廃止 中小企業の負担軽減

2001/ 2/22 日本経済新聞朝刊

  厚生労働省 共済へ移行可能に
 厚生労働省は代表的な企業年金制度である税制適格退職年金について、中小企業が退職金を積み立てるための共済制度「中小企業退職共済(中退共)」への移行を可能にする。適格年金は新たな企業年金制度への移行が予定されているが、中小企業にとってコスト負担が大きいとの見方もあり、低コストの中退共にも移行できる道を残す。
 この措置は今国会に提出している確定給付企業年金法案の付則に盛り、2002年度実施を目指す。
 適格年金は全国で約8万件、加入者は990万人に及ぶが、財政状況を監視する仕組みがなく、財政悪化で解散する例も多い。このため確定給付企業年金法案では適格年金を廃止、既存の適格年金については、10年内に同法案で定める新たな企業年金制度などに移行するとしている。
 ただ新企業年金制度は毎年財政状況を検証する仕組みを取り入れるために、企業には負担増になるという側面もある。中小企業が負担に耐え切れないと見て年金制度を廃止するようなことになれば、福利厚生が後退する。このため中退共への移行を可能とする。中退共は国の制度で、毎月の掛け金に応じた一時金が受け取れ、分割払いもできる。

【Add 2001. 2.21】

  鉄鋼大手、新卒採用を拡大 来春 NKK・川鉄は倍増

2001/ 2/20 日本経済新聞朝刊

   鉄鋼大手が2002年春の新卒採用を一斉に拡大する。NKKと川崎製鉄が大卒(大学院を含む)採用を2001年春に比べ倍増、新日本製鉄も増やす方針。住友金属工業は3年ぶりに採用を再開する。鉄鋼大手は業界の悪化で2000年春ごろから採用を抑制してきたが、事業再編などで業績回復にめどがついたため採用拡大に転じる。
 NKKは2002年春の新卒採用(事務系と技術系の合計)を前年春実績の約2倍に相当する150人に増やす。内訳は事務系60人、技術系90人で、いずれも前年春の約2倍に増える。「企業規模などから計算した適正採用数は110-120人」(NKK)だが、2001年春までの3年間はグループ電炉会社の破たん処理などで採用を極端に絞ったため、2002年春は大幅増に踏み切る。
 川鉄の2002年春の新卒採用計画は60人。前年春の2倍弱に増やし、1998-99年の水準に戻す。新日鉄も新規採用を増やす方針。2000-01年春は70人前後に抑制したが、「社内の人口ピラミッドの構造を健全化する」(幹部)ため、採用拡大の検討を始めた。
 住金は3年ぶりに新卒採用を再開、20-30人を採用する。1999年3月期から2期連続で経常赤字を計上し、2000-01年春は採用を見送ったが、「3年連続で採用しないと長期的にみて人事政策面で不都合が生じる」(住金)と判断した。神戸製鋼所は「2002年春の新卒採用については未定」としている。

【Add 2001. 2.18】

  「再就職促進法案」閣議決定 円滑な人材移動促す

2001/ 2/17 日本経済新聞朝刊

   政府は16日の閣議で雇用対策法など21の雇用関連法の改正案から成る「再就職促進関連一括法案」を決定、通常国会に提出した。今年10月の施行を目指す。人員削減を予定する企業に離職者の再就職支援を義務づけたり、中高年の雇用を促進するため求人に求めることなどが主な内容。失業率が高止まっている原因とされる雇用のミスマッチ(求人と求職者の条件のズレ)などを解消、円滑な人材移動の促進を狙っている。
ポイント(1) 社員の転職支援
 企業が1ヶ月間に30人以上の人員削減を予定している場合、対象となる従業員の再就職支援を義務づける。企業は従業員や労働組合の意向を聞きながら(1)再就職のための訓練(2)就職活動に必要な有給休暇(3)求人情報の提供--といった具体的な支援措置を盛り込んだ「再就職援助計画」を作成。人員を削減する1ヶ月前までに計画を最寄りの公共職業安定所に提出、認定を受ける必要がある。職安が内容を不十分と判断したときは修正を求められる。提出しない企業には厚生労働省が行政指導する。
 この計画に沿って従業員に有給休暇を与えたり、職業訓練を実施した場合は費用の一部を助成する。1ヶ月間の人員削減が30人未満の企業でも、同計画を作成して従業員の再就職を支援すれば、同様の助成を受けることができる。
ポイント(2) 求人年齢の制限を廃止
 現在、大半の企業が求人を募る際に「45歳以下」「30歳以下」などと年齢の条件を付けている。日本労働研究機構の調査では企業の9割以上が年齢を設けており、平均年齢は41歳。今後はこうした年齢制限の廃止を企業の努力規定とする。罰則は設けないが、公共職業安定所を通じ求人企業に年齢制限の廃止、緩和を要請する。
 ただ新卒者採用の際や、定年年齢から見て雇用期間が非常に短くなったり、その仕事に必要な技能を身につけることが難しい場合などについては年齢制限を容認する。
ポイント(3) ホワイトカラー能力評価制度
 ホワイトカラーの能力を客観的に評価できる資格制度は現在、十分に整備されていない。労働者の能力を評価する国の技能検定は133種類あるものの、ほぼブルーカラー職種に限られる。民間の資格は1万種類以上あるといわれているが、数が多すぎて能力を評価する尺度になっていない。このため厚生労働省は業界団体などとホワイトカラーの資格制度を作り国家検定に追加する。
 金融機関のの窓口業務、自動車販売など業種、職種ごとに、1級、2級、3級と3段階程度で評価できるようにする方針だ。
 
ミスマッチ解消に時間 労働者の能力開発必要
 企業の求人は増えているにもかかわらず、完全失業率は4.8%(昨年12月)と高止まりしている。その大きな理由は雇用のミスマッチといわれる。2000年平均の完全失業者数は320万人。厚生労働省はこのうち4分の3以上がミスマッチで職に就けないとみている。
 新規求人数に対する就職件数の割合を示す「求人充足率」が低いとミスマッチは大きい。1999年に30%前後だった充足率は、昨年12月に25.0%(季節調整値)にまで低下した。特に情報技術(IT)関連など成長産業で低く、情報サービス業では16.4%にとどまる。企業の求める能力を身につけた求職者が少ないためだ。
 企業は若年層を求める傾向が強いが、求職者は中高年が多い。総務省の労働力特別調査(昨年8月実施)では、45-64歳の失業者のうち4割以上が求人年齢と自分の年齢が合わないためと答える。
 再就職促進関連一括法案はこうしたミスマッチを解消、雇用の流動化を進めることを狙っている。
 ただ、これらの政策の効果が出るまでには時間がかかる。法案全体に企業への要請に依存している部分が大きく強制力が乏しいため、実効性を疑問視する声もある。日本総合研究所の山田久主任研究員は「企業頼みではなく、労働者の主体的な能力開発を支援するような政策が必要」と指摘する。
 
 再就職促進関連一括法案の主な内容と狙い
▼特定不況業種雇用安定法の廃止
構造的不況業種への雇用支援を廃止 => 成長産業に人材供給
▼雇用対策法改正
リストラで一定以上人員削減する企業に従業員の再就職支援を義務づけ => 円滑な労働力移動を後押し
求人時の年齢制限廃止を企業に求める => 年齢面の雇用ミスマッチ解消
▼地域雇用開発促進法改正
求人が多いにもかかわらず、就職が特に少ない地域を重点的に助成 => 能力面の雇用のミスマッチ解消
▼職業能力開発促進法改正
ホワイトカラーの能力評価制度を整備 => サラリーマンの自発的な能力を促し、能力面のミスマッチ解消
従業員の自己啓発支援を企業に求める
企業年金、3制度に再編

2001/ 2/14 日本経済新聞朝刊

  確定給付型で与党が法案了承 「適格」は全廃
 政府は13日、加入者の年金受給額をあらかじめ決めておく確定給付型の企業年金制度の再編案を決めた。加入者保護の強化と企業負担の軽減が目的。税制適格退職年金制度を廃止する一方、厚生年金基金が厚生年金を国に代わって管理している部分を国に返上できるようにする。同日、これらの内容を盛った「確定給付企業年金法案」を与党に示し了承を得た。政府は今の通常国会に法案を提出し、2002年度の施行をめざしている。受給額が運用の巧拙によって変動する企業年金を導入するための「確定拠出年金法案」(日本版401k法案)も今国会で審議する。両法案が成立すれば企業年金に関する加入者や企業の選択肢が広がることになる。
 現行制度で確定給付型の企業年金は、厚生年金基金と税制適格退職年金の2つに分かれる。企業年金法案では厚年基金は存続するが、適格年金を廃止「規約型企業年金」「基金型企業年金」の2制度を新たに設ける。
 適格年金は財政状況を監視する仕組みがなく、年間3,000件以上が解散し、将来の年金給付に不安定な面があるので廃止する。既存の適格年金は2002年度から10年間のうちに他の制度に移行するように義務づける。新たに設ける制度のうち「規約型」は労使が合意した年金規約に基づいて契約した金融機関が年金資金を管理する。適格年金の改良版とも言えるため、既存の適格年金は主にこの制度に移行するとみられる。
 新型の企業年金は年金給付などの面で既存の厚年基金より制度設計の自由度を高める。厚年基金は終身年金部分を組み込む必要があるが、新制度は「終身か、または5年以上」支給すると規定。支給開始年齢についても原則として労使で決めることができるようにする。
 一方、「基金型」は厚年基金と同様に「基金」という法人を設立して年金資金を管理する。厚年基金は国に代わって厚生年金の一部を管理・給付しているが、「基金型」はこの代行部分を持たない。既存の厚年基金は2003年秋にも代行部分を国に返上し、「基金型」に移ることができる。
 厚年基金の母体企業は運用環境の悪化で代行部分の積み立て不足まで穴埋めする状況となっていたので、返上が可能になれば企業の負担が軽減できる。現在、代行部分も株式などで運用されているが、返上の際には株式相場に大きな影響を与えないよう、株式現物でも返上できるようにする。
 「規約型」「基金型」の企業年金は毎年、将来の年金を支給するのに必要な積立金を保有しているかどうかを調べる仕組みを取り入れる。必要な積立金に対し保有額が一定水準以下になった場合は掛け金引き上げなどによる積み立て不足の解消を義務づける。厚年基金は従来こうした仕組みを導入していた。
 新たに設ける2制度も存続する厚年基金も、企業が従業員のために拠出する掛け金は損金算入できる。

【Add 2001. 2.12】

  介護保険証 ICカード化を検討

2001/ 2/12 日本経済新聞朝刊

  厚生労働省 2002年度にモデル事業
 厚生労働省は65歳以上の高齢者に配布している介護保険証をICカードにする検討に入る。情報システム関係の専門家や自治体関係者らで検討会を設置したうえで、2002年度に一部の地域で実際にICカードを使うモデル事業を実施する。保険証をICカードにすることで、様々な情報を入力することができ、介護サービスを受ける際の手続きの簡略化などが期待できるとしている。
 ICカードに入れる情報としては氏名、住所や要介護度のほか、どのような種類の介護サービスをどの程度受けたかというデータなどが考えられている。これらの情報が入るようになれば、高齢者が受けたサービスが要介護度によって決まっている支給限度学内に収まっているかどうかというチェックも即座にできるようになる。来年度に設置する検討会ではICカードやカードの情報を読み取る端末の仕様、費用負担などについても検討する。

【Add 2001. 2.11】

  介護施設経営 企業に解禁 厚生労働省

2001/ 2/11 日本経済新聞朝刊

  2002年度にもケアハウス 入居枠増やす
 厚生労働省は、食事の世話など比較的軽度の介護サービスを必要とする高齢者のための入居施設であるケアハウスの開設と運営を2002年度にも民間企業に開放する方針を固めた。現在は非営利の社会福祉法人などに限定しており、全国で約38,000人の施設しかない。ケアハウスの入居対象となるような独り暮らしの高齢者は270万人を超えており、今後は入居希望者が急増することも予想されるため、民間に開放して供給を増やす。施設整備費の補助も検討するが、施設は長期にわたって安定して運営する必要があるので参入企業には財務面などで条件を設ける方向だ。
 老人ホームの一種であるケアハウスは自炊が難しいといった理由で自力での生活に不安を持つ高齢者が主な対象。入居者は所得に応じて利用料を負担している。入居すれば介護保険の適用を受けて介護サービスを受けることもできる。
 現在は全国に約1000ヶ所(約38,000人分)の施設がある。国は2000年度末に累計で約90,000人分の施設が完成することを目標として予算に必要額を盛り込んでいるが、実績は目標の4割程度にとどまる見込み。特に大都市部での施設不足が目立つ。
 介護サービスを提供している企業の中には施設の経営を望むところも多い。規制緩和を求める声も強く、民間による経営も認めることにした。
 厚生労働省は企業の倒産などでケアハウスの経営が継続できなくなるような事態を防ぐ目的で、参入企業には条件を付ける。浮上しているのは、安定的な経営のために一定額以上の資本金を求めることや、介護事業に従事したことがある職員を雇用するというような人的要件。ケアハウス事業の会計を別建てにして企業のほかの事業が不安定なときも影響しないようにすることや、ケアハウスの専門子会社をつくる場合に認める案も検討している。
 企業にはケアハウス事業で得た収益から配当も認める方向。2002年度中にも具体的な要件を固め、ケアハウスの設置運営基準に関する通知を改正する。
 同省は参入要件を満たした企業には原則として施設整備費の一部を補助する検討を進めている。施設整備に充てるための費用を国が民間企業に直接補助した例がないため、介護保険から施設に支払われるサービス費用(介護報酬)に整備費を事実上含ませることも検討している。こうした補助を出すことで民営ケアハウスの入居者の負担は現行制度並みか、それを大幅に上回ることがないように抑える。
 有料老人ホーム事業などを拡大しているベネッセコーポレーションやニチイ学館などは、環境が整えばケアハウス事業への参入を検討するとみられる。
 

老人福祉施設

  ケアハウス 特別養護老人ホーム
目的 比較的軽度の介護による生活支援 寝たきり高齢者らへの常時介護
対象者 原則60歳以上。
自炊ができないなどの身体機能低下
原則65歳以上。
痴ほう症などで入浴、排せつなどの世話が必要
経営主体と整備費補助金 自治体、社福法人など。施設整備費の3/4を国庫補助 自治体、社福法人。施設整備費の3/4を国庫補助
入居者本人負担(月額) 所得に応じて7万-15万円 平均5万6000円
外資系製薬 新卒採用を本格化

2001/ 2/11 日本経済新聞朝刊

  アストラゼネカやアベンティス 営業担当を確保
 外資系製薬各社が新卒採用に本格的に乗り出す。英系のアストラゼネカ(大阪市)が来春、290人の大量採用を計画しているほか、独系のアベンティスファーマ(東京・港)やスイス系のノバルティスファーマなども採用を増やす。有力な新薬の相次ぐ投入に伴い、医療機関向け営業を担当するMR(医薬情報担当者)の確保を急ぐ。従来、外資系製薬会社は即戦力となる中途採用を中心としてきたが、人材確保のため新卒にも目を向け始めた。
 アストラゼネカは今春、約200人の新卒採用を予定しているほか、来春はさらに増やして290人を採用する。昨年実績はゼロだった。採用予定者の大半はMR。同社は2月に気管支ぜんそく治療薬「アコレート」など有力新薬3製品を投入したほか、今後3年間で15品目以上の新薬品を投入する計画で、MRの増員で拡販する。
 アベンティスファーマも昨年実績がゼロに対し、今春は73人の新卒採用を予定しているほか、来春も同規模を計画。ノバルティスファーマは今春、昨年実績の倍の53人を採用するほか、来春もさらに1割程度増やす。米ジョンソン・エンド・ジョンソングループのヤンセン協和(東京・港)や独系の日本ベーリンガーインゲルハイム(兵庫県川西市)も来春、新卒採用を増やす。
 各社が新卒採用を増やすのは、欧米の親会社の合併・再編に伴い国内でも事業基盤を拡大しているため。国内で最大級の1700人のMRを抱える米系のファイザー製薬(東京・新宿)がさらに500-600人の増員を計画しているなど、人材の獲得競争が激しくなっており、中途採用だけでは必要な人員を確保できないという背景がある。「知名度が高まり採用しやすくなった」(ノバルティスファーマ)という事情もある。
カフェテリア式福利厚生プラン ミズノ

2001/ 2/11 日本経済新聞朝刊

   ミズノは従業員が福利厚生メニューを自由に選べるカフェテリアプラン制度を導入した。保養所など社員間で利用頻度に格差が生じていたメニューを新方式に切り替え、不公平感の解消を狙う。会社側は対象サービスの利用回数に上限を設けられ、総費用を抑制できる。
 カフェテリアプランのメニューは旅行費、療養費、社外スクール費、介護費の補助など14種類。慶弔見舞金のほか、特別勤続手当、業務上必要な転勤者の家賃補助などは従来通り支給する。対象者はミズノ本体と国内主要関係会社の約2800人。各メニューは1ポイント100円として、1人当たり年間一律180ポイント(18,000円)を与える。各自のライフスタイルに合わせて補助金を受けられる。1年で使い切れなかったポイントは翌年1年間は持ち越し可能。
求人情報誌創刊ラッシュ KG情報 ディジット

2001/ 2/10 日本経済新聞朝刊

   出版ベンチャーが今春、求人情報誌を相次いで創刊する。中四国地方で求人誌を手がけるKG情報(岡山市、増田武美社長)はリクルートより約2割安い広告掲載料を武器に首都圏で情報誌を発刊。ディジットも情報技術(IT)関連を充実させた全国紙を創刊して最大手のリクルートを追撃する。対するリクルートも「ビーイング」など主力求人誌を刷新した。IT関連を中心に20-30歳代向けの求人情報需要が回復しているのを背景に攻勢に出る。
 
IT関連需要に照準
 中四国地方の求人情報誌で売り上げ首位のKG情報は4月、首都圏で週刊求人誌「ミュートスATTA(アッタ)首都圏版」を創刊する。一部200円で10万部の販売をめざす。
 広告主の企業は東京23区内に絞り、正社員、派遣・契約社員、アルバイトなど400-500社の求人情報を掲載する。掲載料は白黒1ページが84万円、カラー1ページが109万円。広告の掲載企業を集めた合同会社説明会も定期的に開催する。
 旅行や結婚情報誌などを出版するディジットは4月、月刊の求人誌「アイキャリア」を創刊する。IT関連やベンチャー、外資系企業を中心に全国200社前後の求人情報を掲載する。一部300円で12万部を発行する予定。インターネット上に専用のホームページも開設する。ネット経由で転職希望者の相談事に応じるガイドサービスも始める。
 リクルートは1月末に総合転職情報誌「ビーイング」(25万部)を刷新した。巻頭の特集ページを増やしたほか、広告の掲載企業を対象にリクルートの転職サイトに無料で情報の一部を転載するサービスも始めて、顧客企業の囲い込みをめざす。
 求人情報誌に掲載された2000年の求人広告件数は3年ぶりに上向いて、前年比で27%増の277万件に達した(全国求人情報誌協会調べ)。失業率は全体に高止まりしているが、IT関連を中心に企業の求人意欲は根強い。求人情報誌の需要がまだ伸びるとみて参入が活発化している。
雇用延長 専門職・生産の2分野

2001/ 2/10 日本経済新聞朝刊

  日産、63歳まで就業可能に
 日産自動車は9日、2001年4月から導入する60歳定年後の雇用延長制度の概要を発表した。専門技術や知識が必要な職種と工場での生産要員の2分野に分け再雇用する。1年間の嘱託で63歳まで就業可能。また、2002年度までの3年間で、世界の全従業員の約14%に当たる21,000人を削減する方針は変えないとしている。
 専門技能者の報酬は技能レベルに応じて個別に決める。生産要員の給与体系は一本化するが、定年直前の年収(賞与を除く)と比べると、年金等を含めて9割の水準になる。
 同社の定年退職者は年間300-400。雇用延長の人数枠は明らかにしていないが、「この範囲の定年者数なら、希望者ほぼ全員を雇用できる」(青木征彦常務)見込み。
学生の就業体験「インターン」 松下、採用に直結

2001/ 2/ 9 日本経済新聞朝刊

   大手企業の間に、学生の就業体験「インターンシップ制度」を実際のビジネスに結び付ける動きが広がっている。松下電器産業は大学生らを実習生として受け入れ、勤務評価の高い学生を正社員として採用する新制度の導入を決めた。NECはネット関連分野の研究開発で働いてもらい、学生のアイデアを製品化する。欧米では企業が優秀な学生を選別する手法としてインターンシップ制度が根付いているが、日本ではまだ理科系を中心にした「社会勉強」の色彩が強い。国際競争が激しさを増す中、人材獲得などで同制度を有効に活用する試みは産業界全体に波及する見通しだ。
 
NEC アイデア製品化
 松下電器は「ウォーミングアップ・プログラム」と名付けた新しい制度を導入する。大学3年生と大学院1年生の約100人を公募して、3月中の約2週間、営業や法務など事務系の業務を体験してもらう。日当は1,000円。
 3月下旬には業務成績を3段階で評価し本人に通知。評価の高い学生は、本人が希望すれば来春入社での内定扱いとする。学生側は5月までに松下電器に入社の意思を示す必要があるが、「他社への就職活動は束縛しない」(同社人事部)という。大手企業が採用する目的でインターンシップを実施するのは珍しい。
 松下電器の事務系の来春採用予定数は約100人。インターンシップ制度による採用者数は未定だが、同社は「就職への意識が高い女性らの発掘につなげたい」(人事部)としている。
 日立製作所もこのほど、文化系学部の2年生を対象にして、初めて20人のインターンの募集を始めた。3月に約3週間、広報・宣伝や営業、人事総務、国際関連の4部門で1日1,000円の手当を支払って、就業体験してもらう。
 理科系の学生を対象にした工場実習を受け入れる電機メーカーは多い。日立は文化系学生を募集して、「メーカーの事務系の仕事について、学生の理解を深める」という。
 NECはこのほど中央研究所(川崎市)、関西研究所(奈良県生駒市)で理科系学生約10人を公募で受け入れた。学生は「モバイルインターネット」「ネットサービス設計」など具体的な研究テーマが与えられ、2ヶ月から最長1年間、研究活動を続ける。
 同社は大学の研究室単位で学生の短期就業を受け入れてきたが、工場見学などが中心で実務はなかった。今回は「学生の柔軟な発想を生かし研究成果を出してもらう」(同社事業支援部)。NECや日立はインターンを直接採用する計画はないが、学生との接点を増やすことで優秀な人材の発掘につなげる考えだ。
 
欧米 採用手段に定着
 自らの専攻や将来のキャリアに関連した就業体験ができるインターンシップ制度は、学生にとって職業適性や将来設計を考える機会となる。日本では90年代後半から行政の後押しを受けて、企業が社会貢献の一環として導入する例が増えている。
 米国では大学生の約7割は何らかの形で企業のインターンシップ制度を経験しているといわれる。企業にとっても優秀な学生を探し出す有力な手段であり、日本でも外資系には「インターンシップを経験していない学生はほとんど採用しない」(ボストン・コンサルティング・グループ)という企業もある。
 国内では大手企業だけでなく、1999年度だけで281社の中小企業が通産省(現経済産業省)の補助金を利用して導入した。ただ、欧米とは異なり、日本では採用方法の1つとする例は少ない。
 バブル崩壊以降、日本企業の多くは固定費を抑制するため、人員削減を急いできた。新卒採用者数も低水準で推移する一方、少子化の影響で学生の数そのものが減少。全体的な学力低下も指摘される中、各社は少ない採用の枠内で「即戦力と専門性を備えた学生をいかに多く確保できるかが人事戦略の最大のポイント」(大手商社)だ。インターンシップ制度を採用に活用すれば、現行の採用制度より効果的に学生の実力を測ることが可能になる。
 インターンシップ制度の活用も含めた採用活動は現在、企業の裁量に任されている。ただ、日経連は「昨年末に発表した採用に関する倫理憲章には、卒業学年に達しない学生に対する選考は慎むべきと記している」と指摘し、なし崩し的な採用活動の早期化には懸念を示している。
春闘賃上げ予想 昨年並みの2% 民間調査

2001/ 2/ 9 日本経済新聞朝刊

   労働問題に関する民間調査機関、労務行政研究所が8日発表した調査によると、労使、学識経験者の今春闘の賃上げ予想は平均で2.0%だった。調査を開始した1974年以降では過去最低だった昨年の予想と同水準。収益が改善傾向となる中でも企業は賃上げには慎重とみている。
 昨年12月から今年1月に東証一部上場企業の労組委員長、人事労務担当役員、大学教授など計3,027人を対象に調査し、460人から回答を得た。賃上げの予想額は平均で6,487円。労働側は2.1%(6,716円)、経営側は2.0%(6,468円)としている。
希望退職1000人 組合と合意 ダイエー

2001/ 2/ 9 日本経済新聞朝刊

   ダイエーは8日、希望退職による本体人員1000人の削減や従業員賃金の一律カットなどを柱とする人事・労務関連のリストラについて、同社の労働組合と合意した。年間の労働組合と合意した。年間175億円の人件費削減につなげる。
 希望退職は店長などを除く40歳から59歳までの社員(約5500人)が対象。3月29日から4月4日まで募る。賃金カットは基本給を一律5%削減。3月の給与から1年間実施し、賞与も現行の基準内賃金3.5ヶ月分を3ヶ月分とする。管理職は年俸を一律10%カットする。
ひったくり被害 女性を労災認定 抵抗し刺殺される

2001/ 2/ 9 日本経済新聞朝刊

   大阪市中央区の路上で昨年7月29日未明、奪われたバッグを取り戻そうとした中国人留学生、韓頴(ハン・イン)さん(当時24)が刺殺された事件で、天満労働基準監督署は8日までに、韓さんの死亡を「通勤途中の災害」と労災認定した。
 労災認定により、遺族には一時金(300万円)や年金が給付される。ひったくり関連の被害者の労災認定は極めてまれとみられる。
自動車業界 雇用延長広がる

2001/ 2/ 8 日本経済新聞朝刊

  トヨタグループ、日産など
 自動車業界で60歳定年後の雇用延長制度を導入する動きが広がってきた。日産自動車が2001年度から導入するほか、トヨタ自動車グループの主要各社も4月以降、相次ぎ同制度を導入、拡充する。既にトヨタが4月、ホンダが2003年からの導入を決めており、2001年春闘を機にこうした動きがさらに加速する見込みだ。
 日産は雇用延長の詳細を労使で詰めた上、近く発表する。研究開発部門のエンジニアや工場の熟練技術者らが主な対象となる見込み。会社側は毎年、雇用延長を必要とする分野や人数を提示、希望者を募る。日産は2002年度までの3年間に世界中で21,000人の従業員を減らすが、技術力低下を防ぐには高いノウハウを持った人材の確保が不可欠と判断した。
 一方、トヨタグループ主要各社では、豊田合成が工場の技能員を対象に最高63歳まで、1年契約で雇用延長する制度を4月に導入する。デンソーも「職場のニーズ」で対象者を人選している既存の制度を4月以降、雇用延長を希望する技能員は基準を満たせば、63歳まで原則受け入れる制度に改める。
自動車総連傘下大手 要求格差鮮明に

2001/ 2/ 8 日本経済新聞朝刊

  春闘スタート 一時金、業績で2極化
 国内最大の民間産業別労働組合である自動車総連傘下の大手組合が7日、2001年春闘の賃上げ要求などを会社側に提出し、労使交渉が本格的にスタートした。今春闘では主要12労組の平均賃上げ要求額(定期昇給相当分込み)が過去最低となる一方、一時金(ボーナス)は企業業績を反映し、要求段階から格差が一段と鮮明になっているのが特徴だ。
 「一時金要求は業績がいいところと悪いところで2極化している」。7日の要求提出後、名古屋市内で記者会見した全トヨタ労働組合連合会の佐々木康夫事務局長は業績連動型の要求水準が如実に表れた今春闘の傾向をこう説明した。
 一時金では、2001年3月期の業績急回復が見込まれる日産自動車が前年要求より1.0ヶ月分上乗せした5.2ヶ月分に設定。経営状況が悪化している三菱自動車工業は前年要求に比べ1.0ヶ月分下回る4.0ヶ月分にとどまり、マツダも6年ぶりに前年要求より抑えた。企業業績が明暗を分けた格好だ。
 賃上げ要求はトヨタ自動車、ダイハツ工業、ヤマハ発動機の3労組の9,000円が最高で、最低が日野自動車の7,000円。12労組の平均は前年の8,517円を217円下回る8,300円で過去最低となった。
 ベースアップ(ベア)要求はトヨタ、日産、ホンダ、いすゞ自動車が2,000円、それ以外は格差是正のため2,000円を上回る水準に設定したが、経営側は「国内景気が踊り場に来ている現状ではベアを上げる余地はない」(奥田碩・日経連会長)とクギを刺している。
厚年基金代行返上 2003年秋めど実現

2001/ 2/ 7 日本経済新聞朝刊

  政府、今国会に法案提出
 政府は、代表的な企業年金である厚生年金基金が国に代わって厚生年金の一部を加入者に支給している「代行部分」を2003年秋をめどに国に返上できるようにする方針だ。今国会に提出する企業年金法案に盛り込む。運用利回りの悪化で代行部分の積み立て不足まで基金の母体企業が穴埋めする状況となっているためだ。ただ、企業年金法案の施行が2002年4月を予定しているのに対し、代行返上は1年以上遅れることになる。
 代行返上の実施時期がずれ込むのは、国に返す際に厚年基金加入者の過去の掛け金拠出記録などのデータを整備する必要があるため。企業は新会計基準の導入で2001年3月期から年金・退職金の債務や積み立て不足の開示を求められる。この制度変更も踏まえて経済界は代行返上の早期実施を求めていた。
 厚年基金は代行部分を株式などで運用している。返上に際しては株式を売却、現金化すると株価に影響を与える恐れがあるので、現物のまま返上できるようにすることも決まっている。
社員に自己啓発支援 企業の努力規定に

2001/ 2/ 6 日本経済新聞朝刊

  厚生労働省法改正へ 資格所得に一部助成
 厚生労働省は職業能力開発促進法を改正し、従業員の自己啓発支援を企業の努力規定として盛り込む方針だ。企業が職種ごとに必要な職業能力や資格を明確にしたり、従業員の将来設計についての相談に応じる体制を整備するよう促す。雇用の流動化が進むなかで、企業主導の従業員教育ではなく、従業員による資格取得などへの支援を求める。
 
 今国会に改正案を提出し、10月からの実施を目指す。企業に求める具体的な支援措置は夏までにまとめる。企業にとっても従業員の能力が高まり、生産性向上が期待できるため、協力が得られるとみている。
 将来設計の相談では、従業員が自分の経歴、適性、能力を踏まえたうえで、今後、どのような職務に就きたいかという将来設計をたてるよう指導。そのためにどんな能力を身につけるべきかを助言する。
 努力規定のため、罰則はない。ただ、法律に明記することで、同省は労使交渉などで、従業員が会社側に自己啓発支援を求めやすくなるとみている。ただ、中小企業などでは大企業のような支援は難しいため、4月から全国に「キャリア形成支援コーナー」を設置する方針だ。
 また、同省は企業が従業員の自己啓発を支援した場合、その費用の一部を助成する。従業員の相談窓口設置で専門家に経営相談した場合や従業員の資格取得の費用を負担した場合に、その費用の一部を助成する。
 既にベネッセコーポレーションは年1回、すべての部署が求める人材の能力、経験を公表し、従業員から公募する。同社は応募する従業員の能力開発努力を支援している。日本アイ・ビー・エムも社内で人材公募する場合、求める職務経験、資格などを公表し、自己啓発を促している。
 三和総合研究所の調査(2000年7月)によると、「職業生活の設計をこれまで以上に自分自身で考えたい」という従業員は76.9%にのぼるが、社内で相談や助言が十分に受けられないという従業員は64.5%にのぼる。
求人の年齢制限廃止 企業の努力規定に 労政審答申

2001/ 2/ 6 日本経済新聞朝刊

   労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関、会長・西川俊作秀明大教授)は5日、雇用対策法など雇用関連法の改正案を答申した。求人・採用時の年齢制限廃止を企業の努力規定にするなどが柱。今の通常国会に改正案を提出し、一部を除き、10月1日からの実施をめざす。
 答申では構造的不況業種の雇用を支援している特定不況業種雇用安定法の廃止のほか、雇用対策法、地域雇用開発促進法など4法の改正案が承認された。円滑な再就職を促すために(1)従業員を一定以上リストラする企業に対し、再就職支援を義務づける(2)求人と求職者の条件のズレである「雇用のミスマッチ」の深刻な地域に重点的に支援する--などを盛り込んでいる。

【Add 2001. 2. 4】

  雇用ミスマッチ解消策強化 深刻な地域 職業訓練助成

2001/ 2/ 4 日本経済新聞朝刊

  厚生労働省 企業支援、10月にも
 厚生労働省は求人と求職者のズレである「雇用のミスマッチ」の解消策を強化する。新たな職業訓練助成制度を設け、ミスマッチが深刻な地域に適用する。各地の事情に合ったきめ細かい雇用対策で、失業者の増加を防ぐのが狙い。今国会に地域雇用開発促進法の改正案を提出し、10月からの実施をめざす。
 
各地の実情くむ
 対象となるのは求人が多いにもかかわらず、就職件数の少ない地域(能力開発就職促進地域=仮称)。企業の求める能力を求職者が身に付けていないために就職に結び付かないことが多いとみて、同地域で求職者を新たに雇い入れた企業に対し、職業訓練費の一部を助成する。2001年度予算案に地域雇用開発助成金として88億円が盛り込まれており、この一部を充当する。
 具体的には新規求人件数に対する就職件数の割合である「求人充足率」が一定以下の地域を指定する方向で検討している。企業が新規求人を募集した場合に、1ヶ月間にどの程度、採用できたかを示す指標で、この水準が低いほどミスマッチが大きいといわれる。愛知県、東京都、静岡県では10%台と低い一方、沖縄県、長崎県では40%台と、地域差が大きい。指定基準は今夏までに省令で定める。
 同地域の指定を受ける場合は、地域雇用開発計画の提出を義務づける。計画は都道府県が対象地域と共同で作成し、実施期間、現在の雇用状況、雇用創出の目標、そのための具体策などを盛り込む。その地域で求人の多い業種に対象を絞った職業訓練など、各地の事情に即した政策を促すことでも、ミスマッチの解消を目指す。
 これまで同省のミスマッチ解消策は全国一律で、離職者への公共職業訓練の強化が中心だった。5月の緊急雇用対策でも全国の14万人を対象に公共訓練を実施している。また企業の能力開発への助成策としては、従業員が技術革新や配置転換に対応するために職業訓練した企業にその費用の一部(1人当たり最高10万円)を支援しているが、雇用を促すために職業訓練費を助成する制度はなかった。
雇用関連統計 米並みに拡充 経済諮問会議方針

2001/ 2/ 4 日本経済新聞朝刊

   経済財政諮問会議は、雇用関連の経済統計を米国並みに拡充する方針だ。「サービス産業の就業者人口拡大」という政策目標がどの程度達成できているか、常に把握するのが狙い。定職をもたずアルバイトで職を転々とする「フリーター」といわれる若者の就労状況をはじめ、雇用形態、世代、能力、男女、地域、業種別に雇用の現状がつかめるようにする。
 諮問会議が想定しているのは米労働省などが作成している雇用関連の統計。日本に比べ特に「企業向けサービス業」の分類が細かく、広告、料金請求・集金、速記サービスなどの雇用の状況がつかみやすい。また、雇用コストや労働生産性などはマクロ経済を示す指標としても利用価値が高いとみている。雇用統計の整備により、生産性の高い業種への労働移動が進んでいるかどうか、女性が働きやすい環境が整っているかなどをチェックしたい考え。
不法就労に厳しい味方

2001/ 2/ 4 日本経済新聞朝刊

  外国人労働者で内閣府が調査 失業不安が影響
 内閣府が3日発表した「外国人労働者問題に関する世論調査」(昨年11月実施)によると、外国人の不正就労を「良くないことだ」とする回答が49.2%と約半数に達し、10年前の前回調査を17.1ポイント上回った。「良くないが、やむを得ない」は前回よりも14.6ポイント低い40.4%にとどまった。好景気による人手不足感が残っていた10年前に比べ、外国人犯罪が増加する中、不正就労者への味方が厳しくなっていることがうかがえる。内閣府も「外国人の受け入れによる失業への不安が影響している」とみている。
 調査は全国の20歳以上の男女3000人に実施。回答率は69.0%だった。
 不法就労者への対応策として「すべて強制送還する」との回答は49.6%となり、前回に比べ16ポイント上昇。「労働力が不足している分野では取り締まらないでそのままにする」は前回(11.4%)よりも半減し、5.7%だった。
 不法就労が「良くないこと」の理由(複数回答)では、「日本の法令に違反するから」が56.1%で最も多く、「治安、風紀が悪くなるから」の52.4%が続く。一方、専門技術や知識を必要としない単純労働について「外国人に就労を認めない現在の方針を続けるべきだ」と答えた割合は21.2%となり、前回よりも7.1ポイント上昇した。
 今後、労働力が不足する可能性がある介護サービスの分野で外国人労働者を受け入れることに関しては「認めない」(48.3%)が「認める」(42.8%)を上回った。認めない理由としては「日本語でのコミュニケーション能力が必要」「国内の制度や習慣を理解することが必要」などが多かった。
新卒の年齢制限 容認

2001/ 2/ 3 日本経済新聞朝刊

  厚生労働省 定年直前も理由あれば 雇用実態考慮
 厚生労働省は2日、労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)に対し、新規学卒者の採用では年齢制限を容認するとの方針を示し、了承を得た。定年直前の休職者についても合理的な理由があれば年齢制限を認める。同省は10月から求人の年齢制限廃止を努力義務とする方針を決めているが、現在の雇用慣行を考慮する必要があると判断した。
 求人の年齢制限廃止の努力義務は、再就職の厳しい中高年の雇用機会を拡大することが狙い。今の通常国会に提出する雇用対策法の改正案に盛り込む予定。罰則はつけないが、各地の公共職業安定所を通じて求人企業に年齢制限の廃止や緩和を要請する。
 ただ、産業界などから現在の雇用慣行の実態を踏まえて対処すべきだとの意見が出ていることに配慮して「労働者が能力を有効に発揮するために必要であると認められるとき」と条件を付ける。(1)新卒者を採用する場合(2)定年年齢を考えると雇用期間が短期間になったり必要な技能が身につけられない場合--などは年齢制限を容認する考えで、今夏までに基準を示す。
 厚生労働省の外郭団体の調査では、求人企業の9割以上が年齢制限を設定しており、その平均年齢は41歳。総務省の労働力特別調査(2000年8月調査)では、45-64歳の失業者のうち4割以上が、求人の年齢制限と自分の年齢が合わないために仕事につけないと答えている。
今春賃上げ率4年ぶり上昇 あさひ銀総研予測

2001/ 2/ 3 日本経済新聞朝刊

   あさひ銀総合研究所は2日、2001年春闘の主要企業の賃上げ率は平均で2.2%となり、4年ぶりに上昇するとの予測を発表した。中小企業の賃上げ率も1.6%となり、低下傾向に歯止めがかかるとみている。企業収益の改善が続いていることが背景。ただ、上昇幅が小幅にとどまるうえ、失業率が高止まりするなど雇用不安も残っているため、同研究所は「個人消費を押し上げる効果は限定的」とみている。
農林年金 移管金1兆7600億円で合意

2001/ 2/ 2 朝日新聞朝刊

  来年4月 厚生年金と統合へ
 農協職員らが加入する農林漁業団体職員共済組合(農林年金)を、民間会社員の厚生年金に統合する問題で、政府の「公的年金一元化懇談会」(座長・神代和俊放送大教授)は1日、焦点となっていた農林年金の移管金の条件で合意した。最大の対立点で一致が見られたため、政府は来年4月に両年金を統合する法案を、今国会に提出する方針だ。
 合意した移管金の額は1兆7600億円で、統合時に積立金から1兆6000億円を納め、残りの1600億円は農林年金加入者の保険料に上乗せする。このため、統合後、農林年金加入者の保険料は2004年9月までは2.4%、2008年9月までは1%、厚生年金加入者より負担が重くなる。来年4月統合の場合、農林年金側は1兆6000億円前後、厚生年金側は1兆9600億円を主張していた。
 農林年金は、加入する農協職員らの減少や、年金受給者の割合の増加で財政の悪化が見込まれるため、厚生年金と今年4月の統合を希望していた。しかし、移管金の計算の前提となる加入者数の見通しや、積立金の予定利率などを巡って、「移管金が少ないと統一後の財政が苦しくなる」とする厚生年金側と対立し、先延ばしされていた。
 一元化は、年金財政を安定させ、加入者の負担と給付を同じ水準にするため。懇談会は、国と地方の公務員共済組合や、私立学校教職員共済を含めた一元化の方向について議論を進め、今月報告書をまとめる。
中退共への助成削減

2001/ 2/ 2 朝日新聞朝刊

   厚生労働省は1日、中小企業退職金共済制度(中退共)への加入を促すために続けている、事業主に対する2年間の掛け金助成を削減すると発表した。優遇されすぎとの批判に配慮した。退職金制度が整っていないパートなどに対しては新規加入の際の助成を厚くする。省令を改正し、4月1日から施行する。
 これまでは新しく加入する事業主に掛け金の3分の1を、加入したその月から24ヶ月間、国が助成していた。今後は助成額に月5,000円の上限を設け、助成率を2分の1とするが、期間は加入後4ヶ月目から12ヶ月に改める。全体では削減になるとみられる。
労災保険任意加入認める

2001/ 2/ 2 朝日新聞朝刊

   家政婦紹介所介護を必要とする家庭に紹介されるホームヘルパーも、3月31日から労災保険に任意加入できるようになった。厚生労働省が1日、関係する省令改正案の要綱をまとめた。介護サービス会社や社会福祉法人などに雇用されているヘルパーは労災保険に加入するが、家政婦紹介所に登録しているヘルパーは紹介所と雇用関係がないので労災保険に入れなかった。
 ただ、労災保険の給付を受けるのは、入浴、排せつ、食事などの介護作業に従事していたときに限定される。「犬の散歩や庭の掃除は、業務ではない」(同省労災管理課)ため保険給付の対象にならない。
鉄鋼3社 雇用延長2年前倒し

2001/ 2/ 2 日本経済新聞朝刊

  2001年度から 電機と足並み
 産業界で2001年度から定年退職者の再雇用による雇用延長制度が本格的に動き始める。新日本製鉄、NKK、川崎製鉄の鉄鋼大手3社は2003年度からの実施を検討していたが、前倒しで導入する。トヨタ自動車や三菱電機、東芝など自動車・電機大手でも2001年度から開始する。雇用延長は今年4月から厚生年金の満額支給年齢が段階的に引き上げられるのを受けて、支給開始までの所得を補う手段として労使で検討を進めてきた。構造改革のため大がかりな人員削減に取り組んできた大手製造業が雇用延長導入を急ぐことで、同制度の普及に拍車がかかりそうだ。
 
公的年金変更に対応
 新日鉄は4月から6月に60歳を迎えて6月末に定年退職する技能者の一部を7月に嘱託社員として再雇用する。2001年度は200人前後の定年退職者が出る見込みで、希望者のうち「試験的に会社が必要とする数十人を再雇用する」(新日鉄幹部)。2年間で制度を整備して2003年度から本格導入する。新日鉄は94年からの中期経営計画で55歳以上の社員の転籍制度を導入。現在、55歳以上の技能者の約9割が転籍し、熟練技能者の不足が深刻化していた。
 NKKは4月から、定年退職者を再雇用するシニアパートナー社員制度を導入する。2001年度は定年退職する技能者100人強のうち、約十人を再雇用する。川崎製鉄は2001年度から、定年退職する技能者約300人のうち10-20人を再雇用する。しかし、高炉大手5社のうち業績が低迷している住友金属工業と神戸製鋼所は実施を見送る。
 電機業界では東芝が退職前の8割程度の賃金水準で再雇用する方向で最終調整に入った。三菱電機は課長級以下で希望する社員は原則として全員を再雇用する計画。
 自動車業界でもトヨタとホンダの国内上位メーカーが再雇用延長の導入を決めたが、日産自動車や三菱自動車工業の労使合意が遅れるなど、同じ業界でも業界格差によって対応が異なる展開になっている。
 厚生年金の満額支給年齢は今春から段階的に引き上げられ、2013年度には65歳になる。定年退職してから年金受給までの期間の所得を確保する手法が労使間での大きな課題になっている。企業側では人員体制を業績の変動に応じて柔軟性を持たせるため、定年自体の延長ではなく、定年後の雇用を延長する手法が今後も主流を占めると見られる。
フレックス制導入 中小の相談費助成

2001/ 2/ 2 日本経済新聞朝刊

  厚生労働省 時短促進法も延長へ
 厚生労働省は2001年度から、労働時間の短縮を促進するため、フレックスタイム制など就業時間を柔軟に変更できる制度を導入する中小企業を支援する方針だ。実施する際の専門家への相談費用を助成する。また同省は3月末で廃止期限を迎える時短促進法を5年間延長する方針で、時短促進策の柱とする。
 フレックスタイム制は始業時間、就業時間を会社が一律に決めるのではなく、従業員が自由に決める制度。仕事量の多い時期は労働時間を長くする一方、仕事が少ないときは労働時間を短くすることもできる。業務の繁閑に応じて労働時間を柔軟に変えることで、全体の労働時間を短縮することができる。
 同制度を導入する際は、従業員の作業ローテーションの見直し、就業規則の変更などが必要になる。そのための経営コンサルタント、中小企業診断士などへの相談費用を30万円を上限に助成する。
 1999年度の年間平均労働時間は1848時間で、政府目標の1800時間を達成できなかった。2000年度も達成が困難となっている。同省は時短促進法を延長するための改正案を、今の通常国会に提出する考えだ。
高校生 就職慣行見直しを

2001/ 2/ 2 日本経済新聞朝刊

  文部科学省会議が提言 指定校制・1人1社制に注文 職業体験後押し適性探りやすく
 進学も就職もせずアルバイトなどで生活する「フリーター」の増加が社会問題化するなか、高校生の就職の在り方について検討している文部科学省の専門家会議は1日、企業が特定の高校の生徒だけを採用する「指定校制」などの慣行を見直すよう求めた報告書をまとめた。また、小中学校段階から職業教育を推進すべきだとして、職業体験活動(インターンシップ)の充実を促した。
 報告は、高校生の就職を取り巻く課題として、(1)生徒の職業観・勤労観が成熟していない(2)職業学習や在学中のインターンシップなどの必要性について学校の認識が十分でない(3)慣行にとらわれた就職が進路選択の意欲を妨げている--ことを指摘。
 求人の受け付け開始、選考開始日など就職協定で定めた期日は、学業への影響などから現状維持が妥当としたが、企業と学校間の就職慣行については、卒業生などのアンケートで改善を求まる声が多く、見直しを要望した。
 「指定校制」については、求人情報を指定校以外の学校にも提供し、応募できるような取り扱いの拡大を求めた。また、学校推薦の応募を1人1社に限り、求人と求職を効率的に結びつける機能を果たしてきた「1人1社制」についても、なるべく行わないようにすべきだとし、生徒が同時期に応募できる企業を2、3社を上限に認めることや、公務員との併願を妨げないよう提言した。
 また、フリーター志向の高校生が増えている背景として「学校の就職指導が履歴書の書き方や面接の仕方などにとどまっており、自分の適性を探る学習や体験活動が計画的に行われていない」と指摘。専門的な研修を積んだ教員や、企業OBを「キャリア・アドバイザー」として希望する学校に配置する制度の検討も促した。
日英年金協定きょう発効

2001/ 2/ 1 日本経済新聞朝刊

   日英両国政府は1日、両国間での転勤などに伴い公的年金制度に二重加入する人が出る問題を解消するための年金通算協定(社会保障協定)を結ぶ。同日、ロンドンで公文書を交換、即日発効する。原則として5年未満の滞在であれば赴任先の国の公的年金制度加入を免除する。
事務系職にも技能検定

2001/ 1/29 日本経済新聞朝刊

  厚生労働省来年度から指導 能力を客観判断 設計など1-3級程度
 厚生労働省は来年度から、ホワイトカラーの職業能力を評価する職種別の資格制度を導入する。業界団体などに委託して基準を作り、国の技能検定に追加する。ブルーカラー職種に事実上限られている技能検定を事務、営業、設計などの職種にも広げ、企業がホワイトカラーの求職者の能力を客観的に判断できるようにする。転職や再就職を希望するサラリーマンなどにとっても必要な能力の基準がわかり、自己啓発の目標をたてやすくなる。求人企業と求職者の条件が一致しない「雇用のミスマッチ」を解消し、雇用の流動化を促すのが狙いだ。
 
業界に基準づくり委託
 新たな職業資格に対象分野は今後決めるが、例えば、電機部品の設計、金融機関の窓口業務といったように業種、職種ごとに資格を作る方針。それぞれ1級、2級、3級と3段階程度で能力を評価できるようにする。
 同省は31日に始まる通常国会に職業能力開発促進法の改正案を提出し、国の技能検定の試験科目選定や試験の実施を、業界団体、公益法人、労働組合などに全面的に委託できるようにする。5年程度かけてホワイトカラーの資格制度を整備する計画だ。
 委託を受けた民間団体が基準を作り、筆記試験、実技試験、面接、過去の仕事の実績などからサラリーマンの能力を審査する。同省は、国の技能検定とは別に「翻訳」「金融渉外」など民間が作り国が認定している資格についても、能力を評価するのに有効と判断できるものは、技能検定に取り込んでいく考えだ。
 また既存の民間資格の一部も能力の判定に活用できるようにする。例えば、語学検定で一定以上の資格を取得すれば、語学試験を免除することも可能にする。
 現在の国の技能検定は「大工」「左官」「機械加工」などブルーカラー職種が中心で、ホワイトカラーはほぼ対象外。また民間の資格は1万種類以上あるともいわれ、数が多すぎ、どの資格を取れば、どういう仕事に就職するのに有利か明確でなく、能力を評価する尺度になっていない。このためサラリーマンなどの能力を評価する資格の整備が課題となっていた。
 海外では英国が1986年から民間と共同で資格制度の整備を開始している。業種ごとに5段階で評価するもので、これまで800種類以上の資格を設けている。米国でも94年から同様の制度を導入している。

【Add 2001. 1.27】

  高齢者の医療費負担 診療所、8割が定額制

2001/ 1/24 日本経済新聞朝刊

  厚生労働省まとめ 新制度の混乱回避
 厚生労働省は23日、今月1日の改正健康保険法などの施行を受け、全国医療機関での高齢患者の医療費負担の変更状況をまとめた。全国に約83,000ある診療所(開業医)は70歳以上の高齢患者から医療費の定率1割か定額1回800円(月5回目以降は無料)を撤収する選択制となったが、80.7%の診療所は定額制を採用していた。大半の診療所はひとまず改正前と同じ定額制を選択することで患者の混乱を回避した。政府は定率制を早期に広め高齢患者のコスト意識を高めようとの考えだが、浸透には時間がかかりそうだ。
 
医療保険財政に影響も
 これまで高齢患者は通院1回530円(月5回目以降は無料)を支払うだけで済んでいた。改正老人保健法では高齢患者も現役世代と同じく上限付きでかかった医療費の定率1割を負担する。
 例外的に小規模の診療所だけは定額制を選択する道を残した。日本医師会などが「負担額が変動し、医療機関の事務が煩雑になる」と定率制への一本化に難色を示したためだ。
 同省は1月18日時点での負担方法の変更状況を全国調査。この結果、医科診療所と同じく選択制でおよそ64,000ある歯科診療所は90.4%、在宅の高齢患者を対象とした訪問看護ステーションは82.6%がそれぞれ定額制だった。
 都道府県別の診療所の選択状況もまとめた。定額制の割合が高かったのは岩手県(91.7%)、静岡県(88.1%)の順。逆にもっとも低いのは福岡県(75.0%)で、島根県(76.2%)などが続く。診療所数が1万弱ともっとも多い東京都の定額割合は76.7%と低めだ。
 同省によると、現在、受診件数で外来患者の6割が地域の診療所、残り4割が完全定率制となった病院に通院している。定率制を選択している2割の診療所を勘案すると、患者の過半に定率制が適用されている計算だ。このため「定率制導入という目的はひとまず達成できた。診療所の対応は今後の推移をみたい」(保険局)と静観の構えだ。
 ただ圧倒的な数の診療所が定額制を採用したことで、医療保険財政の先行きにも微妙な影響を与えそう。定率1割制を採用した診療所の本人負担の上限は月3,000円。これに対し定額制の上限も月3,200円(1回800円で月4回まで)とあまり変わらない。しかし定率制は負担額が予測できないだけ患者の不安が強く、定額制に比べ受診抑制効果が強い面があるからだ。

【70歳以上の高齢患者の負担の変化】
 

昨年まで

1月1日から

外来診療の場合 1回530円
(月5回目から無料=月額上限2,120円
診療所の場合は次のいずれか
 ・医療費の1割(月額上限3,000円)
 ・1回800円(月5回目から無料=月額上限3,200円)
200床以上の大病院
 ・医療費の1割(月額上限5,000円)
200床未満の中小病院
 ・医療費の1割(月額上限3,000円)
入院治療の場合 1日1,200円
※低所得者には軽減措置あり
医療費の1割
 (月額上限37,200円)
 ※低所得者には軽減措置あり
企業の25%が年俸制

2001/ 1/24 日本経済新聞朝刊

   社会経済生産性本部は23日、上場企業を対象に年俸制の導入状況を昨年10月に調査した結果を発表した。回答企業301社のうち年俸制を導入している企業は25.2%で、1996年の9.8%に比べて大幅に拡大した。なかでも従業員5000人以上の大企業では31.8%が導入済みだった。導入対象をみると、72.5%の企業が課長以上の全管理職を対象としており、また年俸額に占める査定部分(変動部分)の割合は平均33.7%だった。

【Add 2001. 1.21】

  高額医療費 健保の補助見直し

2001/ 1/21 日本経済新聞朝刊

  厚生労働省指導 「追加負担は加入者」
 厚生労働省は、今月から高額療養費の一部を患者が追加負担する制度が導入されたことに伴い、各健康保険組合に対して加入者を対象とした独自の医療費補助(付加給付)を見直すよう指導した。現行は加入者負担が月額20,000円を超えると健保組合が補助して負担を軽減できる。今後、加入者の追加負担分まで肩代わりすれば健保組合の財政が一段と悪化しかねないため、追加負担分はできるだけ加入者に支払いを求めていくよう促している。
 今月1日施行された改正健康保険法は、健保組合加入者ら69歳以下の患者について(1)医療費が一定額を超えた場合は超過額の1%相当を追加負担する(2)月収56万円以上の高額所得患者は、医療費の月額負担上限額を月63,600円から121,800円に引き上げる--との内容。医療費に連動してある程度患者負担が増える仕組みに改め、保険財政を立て直す。
 ところが多くの健保組合では国の「事業運営基準」に基づき、原則として月額20,000円を超えた部分を加入者に払い戻す付加給付を実施している。さらに追加負担と月額上限がアップした分を付加給付に含めれば、加入者の実質的な負担はこれまでとあまり変わらないことになる。
 同省がこのほど健保組合に出した通知は月額20,000円の加入者最低負担額について、健保法改正を踏まえ「適切な額とすること」と明記。追加負担などは極力加入者負担とすることが望ましいとの見解を示した。具体的な金額設定は各健保組合にゆだねている。

【Add 2001. 1.20】

  就業 2005年に300万人増

2001/ 1/20 日本経済新聞朝刊

  構造改革で目標値設定 経済諮問会議が検討
 政府の経済財政諮問会議は、経済構造改革の進展度を示す指標として「就業者数」を政策運営の目標に掲げる検討を始めた。現在6,500万人前後の就業者人口を2005年をめどに5%程度、約300万人を増やすことを目指す。目標達成に向け、建設業など生産性が相対的に低い業種の就業者が情報、サービス関連の成長産業に移ったり、子供のいる女性が働きやすい環境を整備する。具体策として、福祉や育児分野の規制緩和・撤廃やベンチャー企業への投資を促す税制優遇策などを会議で議論していく。
 就業者数を経済運営の政策目標とする案は諮問会議で牛尾治朗議員(ウシオ電機会長)が提唱。奥田碩議員(トヨタ自動車会長)が賛同し、政府側議員の額賀福志郎経済財政担当相も内閣府の事務当局に、サービス産業の雇用創出を実現するうえで必要な雇用統計の整備を指示した。
 政府目標案によると、全就業者の3-4%が製造業、建設業、鉱業からサービス産業へ移るよう後押しするとともに、規制緩和などで経済のサービス化を促し、就業者5%を達成する。育児・介護や人材派遣、情報処理などに関連する産業を成長分野と見込む。
 サービス産業部門への就業を促す活性化策は(1)民間活力を生かす環境整備(2)労働市場の流動化(3)規制緩和・撤廃(4)企業促進税制--の4本の柱で構成。新規求人の年齢差別撤廃、出産後も働き続けたい女性を支援する保育所の整備、創業を後押しするためのベンチャー企業向け投資に対する税制優遇などに取り組む。経済財政諮問会議は、社会保障や税政を含む財政の中長期見通しを5、6月までに作り、2002年度予算編成作業に反映させる予定。
5%時短で215万人雇用増

2001/ 1/18 朝日新聞朝刊

  家計の消費支出 0.1%増 社会経済生産性本部が試算
 社会経済生産性本部は17日、春闘の焦点の1つである労働時間短縮について、雇用に与える影響を試算した結果を発表した。
 年間の総労働時間が約1,800時間となる5%の時短を実施することを前提とした。時短分の賃金を削減する場合、前と同じ生産を維持するには正規雇用者とパート労働者がともに増え、計215万人の雇用者増につながる。家計の消費支出も0.11%伸び、景気にプラス効果をもたらす、との計算だ。
 時短を実施しても給与を維持した場合、時間当たりの賃金が上昇することになる。人件費の総額を前と同じにするには、正規雇用者を61万人減らし、賃金の安いパート労働者を346万人増やすことになる。差し引き285万人の雇用者増になる。また、連合が今春闘で初めて要求したパート労働者の給与アップを組み合わせた試算でも、150万-208万人の雇用者増が見込まれている。
 いずれの場合でも、現在300万人を超えている失業者を大幅に削減できることになる。社会生産性本部は一昨年、すべての残業をなくせば260万人分の雇用を生むという試算を発表、昨年春には1人ひとりが働く時間を縮めて仕事を分かち合う「ワークシェアリング」推進を提言した。今回の試算も、具体的な時短の進め方について労使が協議を進める際の基礎的な資料を提供する狙いだ。
 
時短と雇用増効果の試算(単位・万人、▼は減)
 

正規雇用者

パート

消費支出増

5%時短・給与削減

168

46

215

0.11%

5%時短・給与維持

▼61

346

285

0.77%

5%時短・給与削減
パート給与1%増

181

▼31

150

▼0.04%

5%時短・給与維持
パート給与1%増

▼46

253

208

0.60%

大卒内定率改善の兆し

2001/ 1/17 日本経済新聞朝刊

  今春就職75.2% 3年ぶり微増
 今春卒業予定の大学生の就職内定率(昨年12月1日時点)は75.2%となり、過去最高だった前年同期を0.7ポイント上回り、わずかながらも3年ぶりに増加に転じたことが16日、文部科学、厚生労働両省の調査で分かった。新卒者の雇用状況は依然厳しいものの、文部科学省は「改善の兆しが出てきた」としている。
 調査は国公私立大学、短大、高等専門学校計88校の卒業予定者5,300人を抽出して実施。推計では、調査時点で内定していない大学生は94,000人(男子49,000人、女子45,000人)、短大生は63,000人。前年同期より合計で10,000人減少している。
 就職を希望している大学生は全体の69.2%。前年同期比1.1ポイント増加した。就職希望者のうち内定が決まったのは、男子が同0.4ポイント増の77.7%、女子が2.2ポイント増の71.0%。文理別では文系が0.6ポイント増の73.7%、理系が同1.2ポイント増の81.9%。短大生(女子のみ)の内定率も、同1.7ポイント増加し、48.5%となった。
 
高卒も改善、68.9%
 今春卒業予定の高校生の就職内定率は昨年11月末現在68.9%で、88年の調査開始以来最悪だった前年同期を1.6ポイント上回った。厚生労働省が16日発表した。男子が74.5%、女子が62.9%とそれぞれ2.4ポイント、0.6ポイント向上。求人倍率は1.05倍で0.02ポイント改善した。
特養ホーム補助見直し 厚生労働省

2001/ 1/16 日本経済新聞朝刊

  不正防止へ定額制検討
 厚生労働省は介護保険の対象である特別養護老人ホームの施設整備に対する補助金制度を抜本的に見直す方針を固めた。特養ホームを開設する社会福祉法人が建設費を水増し請求し、補助金を不正受給する不祥事が後を絶たないためだ。現在は国と都道府県が施設整備費の4分の3相当額を定率で補助している。同省は2003年度にも定額補助方式に切り替える案を軸に、不正受給を防ぐための仕組み作りを急ぐ。
 同省は近く、補助金の実態を把握するため全国調査に乗り出す。不正受給問題の共通点は、社福法人が建設業者と結託するなどして実際よりも高い工事費を申請、補助金を余分に引き出していること。書類審査が中心の現行制度では都道府県が審査段階で不正を見破るのは難しく、改善が急務となっている。
 同省は補助金の透明性を高めるため、現行でも一部の介護施設整備に採用されている定額補助方式への転換を本格検討する。同方式では国などはあらかじめ決められた少ない額を補助するだけで、費用の大半は社福法人が政府系金融機関からの借入金で賄う。
 巨額の借入金を抱え込む社福法人が返済不能に陥らないよう、介護保険から毎月施設に支払われる介護サービス費用(介護報酬)に整備費を上乗せ支給し、総額では現行制度とほぼ同じくらいの補助金を受け取れるようにする。この仕組みは特養ホームと同じ介護保険の対象で、比較的症状が軽い高齢者が入る老人保健施設でも採用している。
 ただ、定額方式を巡っては介護関係者の間で「賃金不足から施設の質が低下しかねない」と懸念する声もある。整備コストが高い都市部に手厚く補助金を配分するといった仕組みも検討課題となりそうだ。
 定額方式を導入することになれば、特養ホームへの介護報酬を大幅に見直す必要が出てくる。このため新方式の導入は2003年度の次回報酬改定以降になる公算が大きい。

【Add 2001. 1.14】

  企業年金マイナス利回り 株価低迷で8% 昨年4-12月R&I推計

2001/ 1/14 日本経済新聞朝刊

  積み立て 新たに10兆円不足
 企業年金の2000年4-12月末の運用利回りはマイナス8%強となり、校長だった前年度(プラス13%)から一転して大幅に悪化した模様だ。格付け投資情報センター(R&I)が運用評価を手掛ける厚生年金基金や税制適格年金等約160の企業年金を対象に推計した。低金利の長期化でここ数年、多くの企業年金が国内株式での運用を拡大してきたが、株式相場の低迷で運用成績は悪化した。年明け以降も株価は軟調で、企業年金の運用成績はさらに悪化する公算が大きく、今年度から導入された退職給付会計に基づく年金の積み立て不足は新たに全体で10兆円程度生じる見通しだ。
 R&Iが推計対象とした約160の企業年金の資産合計は約14兆円で、年金資産合計(約70兆円)の2割に相当する。
 運用利回りを資産別にみると国内株式が25%弱値下がりしたほか、転換社債(CB)も6%強下落した。年金資産に占める国内株式の割合は34%と高く、全体の足を引っ張った。一方、国内債券は2%上昇。為替相場が円安となった影響で、外国債券は17%上昇した。現地通貨ベースでは大幅に下げた外国株式も2%弱の下落にとどまった。
 運用利回りを年換算すると10%強のマイナスとなり、過去最低となる計算。予想利回りを3-5%と見込む企業が多いため、現状の運用環境が続けば、年金関連の積み立て不足が新たに10兆円程度生じる。新たな積み立て不足は全上場企業(上場子会社を除く)の今期の連結経常利益見通し合計(20兆9000億円)の半分近くに相当する。
 2000年度から年金・退職金の実態を明らかにする退職給付会計が導入され、積み立て不足の処理で多額の損失を計上する企業が相次いだ。日経株価指数300採用の主要300社のうち、3月期決算会社の230社(金融などは除く)が2000年9月中間期に特別損失として処理した積み立て不足の総額は、5兆円弱に達した。これから生じる不足分についても、新たな対応を迫られることになる。
 運用利回りの低迷で新たに生じた積み立て不足は、従業員の「平均残存勤務期間」以内に処理する必要がある。一般的な日本企業の残存勤務期間は20年前後とみられるが、企業業績の拡大を背景に早期に償却する企業も目立つ。
難航する公的年金一元化

2001/ 1/13 日本経済新聞朝刊

  厚生と農林 移管金めぐり対立
公務員共済 厚生との関係未定
 サラリーマンの厚生年金と、国と地方の公務員や農協職員らのための共済年金に分かれている公的年金制度を統合する「公的年金の一元化」が難航している。一元化は財政基盤を拡大すると同時に、年金制度の違いによる保険料や年金額の格差を解消することを目指している。しかし、統合の条件で関係者の意見が対立。当初2001年度に予定していた厚生年金と農林共済年金の統合は見送りになった。公務員共済なども含めた一元化の全体像もまだ不透明だ。
資産の差は3600億円
 昨年12月22日に開いた政府の公的年金一元化懇談会。農林年金と厚生年金の統合問題が紛糾した。厚生年金が農林年金を吸収する形になるので、農林年金は厚生年金に「移管金」を支払うことになるが、問題はその金額だった。移管金が少なければ、厚生年金の加入者の負担になるため、懇談会では移管金額を巡って厚生年金側の委員と農林年金側の意見が対立した。
 厚生年金側の委員は「厚生年金は積立金の運用予定利率を年4%と見込んでいる。移管金の計算も4%の利率を前提として計算すべきだ」と主張。これに対し、農林年金側の委員は「厚生年金が予定利率を5.5%から4%に変えたのは1999年度。移管金の計算では、農林年金加入者が98年度以前に支払った保険料に見合う移管金部分は5.5%、99年度以降の部分は4%で計算すべきだ」と反論した。
 予定利率は年金支払いのために積み立てている保険料(積立金)の運用利回り。予定利率が高いほど移管金も少なくて済む。政府の試算によると、厚生年金側の主張に沿った場合、農林年金が厚生年金に支払う移管金は1兆8800億円。農林年金側の主張では1兆5200億円となり、3600億円も違う。
 2001年4月から統合を実施するためには、2001年度の政府予算案に必要経費を計上しておく必要があった。この日の会合で懇談会の合意が得られなかったため、予算計上は間に合わなくなり、来年度の統合見送りが確定した。
「2002年春には実現を」
 農林年金は現時点で約2兆円の積立金を保有しているので、1兆8000億円でも拠出は可能。ただ、農林年金は厚生年金よりも多くの保険料を徴収し、厚生年金より多い年金を支給する設計となっているので、より多い年金支給の財源として積立金の一定額を残そうとしている。
 農林年金を移管する農水省の奥原正明金融調整課長は「懇談会の中立委員の多くは我々の考え方に納得してくれているはず。放置すれば財政は悪化するばかりなので2002年4月には統合してもらいたい」と訴える。
 これに対し、厚生年金側である連合の村上忠行政策グループ長は「厚生年金に加入していない中小零細企業の従業員やパートタイマーをどう救済するかなど厚生年金側には解決すべき問題がたくさんある。農林年金との統合は納得できる形でないと認められない」と強調する。
 一元化懇談会は1月中に再開する予定。政府は2002年4月に統合するには、今月末に始まる通常国会に法案を提出する必要があるとしており、調整を急いでいる。
私学共済も時期不明
 もっとも、全体の合意を取り付けるのは難しそうだ。国家公務員と地方公務員の両共済年金は、2004年度にも一方が財政悪化した場合にもう一方が支援する制度を構築するが、その先の厚生年金との関係をどうするかは未定。私立学校の教職員が加入している私学共済年金は厚生年金との統合を検討する姿勢を示しているものの、財政が良好なこともあり、時期は明確でない。
 97年度にJR、日本電信電話(NTT)、日本たばこ産業(JT)の3つの共済年金を厚生年金に統合して以来進んでいない年金の一元化。完成するまでには曲折がありそうだ。
「春闘賃上げ困難」 日経連指針 雇用を優先

2001/ 1/13 日本経済新聞朝刊

   日経連は12日、臨時総会を開き、今春闘の経営者側の指針となる「労働問題研究委員会報告」を承認した。報告は「雇用問題は当面、賃金よりも雇用安定を重視する」としたうえで、「日本の賃金水準は世界のトップレベルにあり、これ以上の引き上げは困難」と強調。リストラなどで業績を回復した場合も、賃上げではなく、賞与・一時金による還元にとどめるべきだとしている。
 また成果主義に基づく人事・賃金制度の徹底を提言し、中長期的課題として雇用形態の多様化に向け、短時間勤務の正社員の実現を挙げた。
 臨時総会であいさつした奥田碩会長は「労働条件を横並びで決める時代は20世紀で終わった」と述べ、春闘についても賃金引き上げだけでなく、企業経営を取り巻く問題を幅広く協議するよう提唱した。

「雇用も賃上げも」 連合が反論
連合(鷲尾悦也会長)は12日、日経連が採択した労働問題研究委員会(労問研)報告について見解を発表した。報告が労働側の「賃上げによる消費・景気の回復」を批判していることに対し、「賃上げは十分条件ではないが必要条件。消費・雇用の回復には雇用も賃上げも必要である」と反論した。報告にある日本の高賃金・高労働分配率論には「賃上げは個々の支払い能力で判断すべきで一律の賃金抑制は労働者はもとより個々の経営者にとっても余計なお世話だ」とした。
厚年基金解散 最多に 積立金不足が拡大

2001/ 1/12 日本経済新聞朝刊

  2000年度見通し 前払い式に転換も
 代表的な企業年金である厚生年金基金の解散数が2000年度は過去最多に達する見通しとなった。12月末までに16の厚年基金が解散しており、厚生労働省は今年3月までにこれまで最も多かった1998年度の18を上回るのは確実とみている。低金利の長期化や株価の低迷で資産運用利回りが低下、将来の年金支払いに備える積立金不足を解消するメドが立たないとして解散する基金が多いが、退職金や年金を月給に上乗せして支給する前払い型の給与制度を導入するのに伴って基金を解散する企業も出てきた。前払い方式は雇用の流動化にも適しているため、2001年度以降も解散する基金が増えそうだ。
 厚生年金基金は公的年金である厚生年金に上乗せ支給するために企業が設立している。2000年12月末時点で全国に1,814あり、1,100万人あまりのサラリーマンが加入しているが、解散した基金では企業が従業員に約束していた年金を支給できなくなったケースも多い。
 財政悪化による基金の解散が始まったのは94年度から。運用の低迷が原因で、解散基金数は年々増えている。2000年度も、将来の年金給付に必要なだけの積立金を確保することができず、積み立て不足が拡大している基金が解散に追い込まれた。名古屋紡績、北海道中央バスなど繊維、輸送など、環境の厳しい業種での解散が目立っている。
 一方、岐阜銀行などは基金を解散して、年金・退職金の掛け金に振り向けていた分を社員の月給に上乗せして前払いで支払う方式に変えた。2001年3月期から新会計基準の導入におり退職金・年金の積み立て不足を開示しなければならなくなるが、前払い方式を採用し、将来の年金額を約束する確定給付型の年金制度を廃止すれば年金の積み立て不足もなくなる。前払い方式なら従業員も転職が容易になるというメリットもあり、今後さらに広がる可能性がある。
 厚年基金と並ぶ代表的な企業年金である税制適格退職年金でも財政悪化を主な理由として年間3,000件程度解散がある。
 政府は企業年金の解散が増えていることを踏まえ、確定給付型の企業年金の加入者保護を目的とする企業年金法案(仮称)を2001年の通常国会に提出する方針。積み立て不足が発生しない確定拠出型企業年金を導入するための法案も国会に提出、継続審議になっている。
医療改革「2002年度完結せず」 厚生労働次官

2001/ 1/12 日本経済新聞朝刊

   近藤純五郎厚生労働次官は11日の記者会見で、政府・与党が2002年度の実施を目指している医療制度改革について「2002年度に完結はしないだろう」と述べ、抜本改革の完成には時間がかかるとの認識を示した。「抜本改革と言ってもピンからキリまである」としたうえで、真の意味での改革は「国民が少子高齢化の影響を肌身で感じるまでできないのではないか」と語った。
 国民医療費が高齢者分を中心に増え続け、医療保険財政が悪化していることから医療制度の抜本改革は急務になっている。政府・与党は医療費の抑制策、高齢者医療費の負担の仕組みの見直しなどを含めた改革を2002年度に実施すると表明している。
 これに対し、日本医師会の坪井栄孝会長は「2002年度に実施できるのは現行制度の修正程度で、抜本改革は難しい」と発言している。近藤次官はこれについて「坪井会長と私の認識は大きく変わらないのではないか」とも述べた。
賃上げに絞り春闘指導

2001/ 1/11 日本経済新聞朝刊

  連合、ベア1%以上に要求 集中回答日3月14日-16日
 連合は10日、今春闘での第1回拡大戦術委員会を開き、今年の春闘が実質的にスタートした。日経連も12日に開催の臨時総会で今春闘に臨む指針を採択する予定。昨年の春闘は「雇用延長」が最大のテーマだったが、今年は目ぼしい課題がなく、賃上げ一本の春闘になる見込み。労組側は要求を据え置き、業績回復を背景に回答率の底上げを狙う。一方、経営側は昨年のような賃下げ論こそ取り下げたが、景気の先行きが不透明なことなどから厳しい姿勢を崩していない。3月中旬の最大のヤマ場まで激しい攻防が続く。
 連合・戦術委員会では2月末までに要求を提出し経営側と交渉に入ることを確認。集中回答日については3月14-16日とする方針を決定した。要求水準は昨年と同様、過去最低水準の「ベースアップ(ベア)1%以上」に設定。全労連も10日の幹事会で最低賃上げ額を昨春闘と同じ15,000円とする方針を決めた。
 産業別労組の要求は出そろっていないが、春闘相場に大きな影響力を持つ自動車総連や電機連合も昨年と同水準にする方針。要求据え置きについて、金属労協の草野忠義議長(自動車総連会長)は「産業ごとにみても、同一産業内にあっても(業績は)まだら模様。要求水準を引き上げる段階にない」と説明する。
 昨春闘では賃上げ率は平均2.06%(主要企業、厚生労働省調べ)にとどまり、4分の1の労組がベアゼロ・無回答で終わった。連合は今春闘では定期昇給分を確保したうえで、上積みする2段階作戦を指示。笹森清事務局長は「リストラ・合理化を反映し業績が好転している会社もある。きっちりと成果配分を求め取りきろう」と強調した。
 一方、日経連は一律の賃上げを否定し、個別企業ごとに総額人件費の適正化を強調した春闘指針の「労働問題研究委員会報告」を12日の臨時総会で決める。日経連は昨春闘では「賃下げ」の必要性を主張したが、企業業績の大幅改善を受けた今春闘では賃下げまでは踏み込まず、よりソフトな主張にとどめる。リストラなどで従業員の協力を得て業績を回復した企業については、労使交渉によって成果を適正に配分すればいいとの姿勢で臨む。
 企業は年俸制や成果・能力給の導入を進めており、賃上げの一律要求・回答は既に限界。労働者の関心も薄れつつあり、求心力の乏しい春闘になりそうだ。
そごう、人材派遣要請 西武百貨店に30人規模

2001/ 1/11 日本経済新聞朝刊

   民事再生法下で経営再建中のそごうが西武百貨店に20-30人程度の人員派遣を要請したことが10日明らかになった。将来の経営統合を検討している西武百貨店の経営ノウハウを活用して再建を急ぐ考えで、そごう本部の営業・管理部門を中心に受け入れるとみられる。西武百貨店は今後、人員選定などの調整を進め、出向などの形で2月をめどに社員を派遣する見通しだ。
 そごうは1月末の債権者集会で再生計画案の合意を得た後、2月にも本部を部内から横浜市へ移転すると同時に組織を刷新して再生計画をスタートさせる意向。西武百貨店からは既に昨年8月以降、約10人がそごうに派遣されて再生計画の策定業務にあたってきた。
 新たな派遣人員は2月以降の本格的な営業立て直しが任務となる。人員は新本部のほか、店舗の幹部などに就く可能性もある。
 西武百貨店元会長でそごう特別顧問の和田繁明氏は、そごう再建には標準化された店舗運営や商品政策など西武百貨店のノウハウと人的資源の活用が有効と判断した。
 そごうは昨年7月に経営破たんした後、経営責任を明確にするため過去の経営幹部の大半が退職。昨年秋から募集した希望退職者数も想定を約300人上回り約1,560人に上った。今後の経営再建には、幹部・管理職を外部から補強する必要に迫られている。
日本火災、早期転職を支援

2001/ 1/11 日本経済新聞朝刊

   日本火災海上保険は、45歳以上の社員を対象とした早期転職支援制度を実施する。転職者の募集期間は29日から1週間程度、募集人員は100名。応募者には退職金を上積みするほか、転職先をあっせんする専門企業と契約する時に必要な費用を負担する。同社は今年4月に興亜火災海上保険と合併する予定で、経営の合理化を進めている。
医療費伸び抑制へ目標

2001/ 1/10 日本経済新聞朝刊

  政府、2002年度にも 上限、4%未満に
 政府は2002年度にも、約30兆円にのぼる国民医療費に目標値を導入する方向で検討に入った。国民医療費は現行制度を放置すれば年平均で4%の伸びが続く見通しで、これより低い伸び率を設定し、国民医療費の事実上の上限とする。具体的にはサラリーマンの給与の伸びに医療技術の高度化などのコスト増加分を上乗せした目標値を定め、3-5年ごとに見直す案が有力。目標達成へ向けて、特に膨張の目立つ高齢者医療費や、保険から医療機関に支払われる診療報酬の見直しなどを柱とする医療制度の抜本改革案も策定する方針だ。

診療報酬など見直し

 国民医療費は1997年秋の患者負担引き上げなどの影響から、最近は2%前後の伸びにとどまっている。だが厚生労働省の推計によると、高齢化などの影響で2025年度までは平均4%程度の伸びが続く見通し。
 目標値は、サラリーマンの健康保険料の算定ベースである平均給与(標準報酬月額)が一定期間内にどれだけ伸びたかを参考にして決める案が軸。ただ景気低迷で平均給与はここ数年は年平均1%程度しか増えていない。そのまま目標値に用いれば、改革しない場合の医療費の伸びとのかい離が大きすぎるため日本医師会などの反発は必至だ。
 このため平均給与の伸びだけでなく高齢者人口の増加、医療保険の対象となる高価な新薬の開発、医療機器の技術進歩といった医療費増につながるいくつかの要因を加味した上で決めることになりそうだ。
 目標値導入に伴い、医療費抑制策も検討する。高齢者医療と診療報酬のほか、国が1つ1つの薬について定めている公定価格(薬価)の算定基準見直し、過剰な病床(ベッド)の削減をはじめとする医療提供体制の見直しの4つが柱となる。
 高齢者医療改革で政府は、現役世代の将来負担が過重とならないように、2002年度に現行制度に代わる新たな医療保険を創設することを目指している。新制度では目標値を踏まえ、収入に応じて高齢者本人の医療保険料や患者一部負担を引き上げる案が検討課題になるとみられる。
 診療報酬見直しでは、病気ごとに一定額の治療費しか支払わない「包括払い制」の拡大などを進め、医療費抑制につなげる。
 橋本龍太郎内閣(当時)は97年6月、国民医療費の伸びを国民所得の伸びの範囲内に抑えるとする基本方針の堅持を打ち出した。しかし国民所得の伸びが98年度にマイナスに転じるなどしたため、有名無実化している。
外国人のIT技術者 在留規制を緩和

2001/ 1/10 日本経済新聞朝刊

  政府・自民方針 実務2、3年に短縮
 政府・自民党は情報技術(IT)分野の外国人技術者の受け入れを促すため、外国人技術者の入国を制限している在留資格規制を緩和する方針を固めた。技術者の認定基準の1つである「10年以上の実務経験」という要件を2、3年程度に短縮する方向で調整する。各国は国家戦略としてIT分野の優秀な外国人技術者の獲得に動いており、日本としても入国規制の柔軟な運用が不可欠と判断した。2002年までの制度改正を目指す。
 在留資格は出入国管理・難民認定法に関する法務省令で規定されているもので、外交、技術、興行、企業内転勤、留学など分野ごとに資格を定めている。このうち「技術」はプログラマーやシステムエンジニアといったIT分野の技術者が対象になっている。
 ただ外国人が「技術」の在留資格を得るには「従事しようとする業務に関する科目を専攻して大学を卒業したか、同等の教育を受け、10年以上の実務経験がある」ことが必要になる。政府・自民党内では「急激に進歩するIT分野なら2、3年の実務経験があれば十分熟達できる」との意見が強い。法務省は「IT分野は習熟度合いをどこで線引きするか難しい」としており、今後、自民党などと調整を進める。
 政府は昨年11月に策定したIT基本戦略の柱として、2005年までに約3万人の外国人技術者の受け入れを目標に掲げた。少子高齢化のあおりで将来的には国内の若いIT技術者の数が頭打ちになるとみられ、外国人技術者受け入れを促す環境整備が急激になっている。法務省入国管理局によると、技術の在留資格を取得し、日本に暮らす外国人は1998年で15,242人だった。99年は15,668人で、伸び悩んでいる。
期限付き雇用の契約指針を作成 厚生労働省

2001/ 1/10 日本経済新聞朝刊

   厚生労働省は期間を定めた雇用契約である有期労働契約について、契約更新などをめぐる労使のトラブルを防ぐために、企業が考慮すべき項目を指針としてまとめた。契約更新の有無や更新時の判断基準を事前に労働者に示すことが望ましいとしたのが特徴。全国の労働局を通じて周知する。
 まず更新の有無について、「特別の事情がない限り更新しない」、「契約満了の都度更新の可否を判断する」など、その考え方をあらかじめ労働者に示すべきだとしている。その上で更新する場合の判断基準を説明すべきとしている。契約を更新しない場合は、少なくとも30日前に予告し、労働者が望む場合は、更新しない理由を示すことが望ましいとしている。
倒産時の賃金保護強化 返済順位、税金並みに

2001/ 1/ 9 日本経済新聞朝刊

  厚生労働省 財務省と調整
 厚生労働省は企業が経営破たんした際に、不払いとなっている賃金、退職金など労働債権の保護強化に乗り出す。今春にも法制審議会(法相の諮問機関)に対して、担保付きの債権や税金より返済の優先順位が低い不払い賃金の優先順位を税金と同等以上引き上げることを提案する。企業の経営破たんの増加に伴い、労働者の保護を強化する必要があると判断したためだ。ただ、財務省が税収減につながりかねないと反対するなど政府内部で足並みがそろっておらず、調整が難航することも予想される。
 企業が経営破たんした場合、不払いの賃金や退職金は、担保のない一般の債権より優遇される。しかし、件数で破たんの8割以上を占める任意整理や破産の場合、優先順位は担保付き債権、税金、労働債権の順で、従業員が賃金を受け取れないことも少なくない。
 厚生労働省は企業が破たんし失業した従業員が、本来受け取れるべき賃金、退職金を受け取れない事態を重視。民間信用調査会社、帝国データバンクによると2000年1-11月の倒産件数の合計が17,521件と1999年の年間倒産件数を上回るなど倒産件数が増加傾向を示すなかで、労働債権の保護強化が欠かせないと判断した。
 国際的には労働債権を税金より優遇する国が多い。フランスは賃金の一部は最優先して支払われる。米国でも担保付き債権よりは順位は劣るが、賃金の一部は税金より優遇される。国際労働機関(ILO)は1992年に労働債権を税金よりも高い優先順位とする内容の条約を採択しており、日本としても批准に向けて労働債権の保護強化が課題となっていた。
 厚生労働省としては労働債権の返済をあらゆる債権に優先させたい考え。優先順位を税金と同等以上にする案も含めて、今春にも破産法見直しの検討作業に入る法制審に労働債権の保護強化を提案する。
 ただ、財務省は労働債権の優先順位を税金より高くすると税収が減りかねないとして、難色を示している。また「担保付き債権より優先させることには、経済界の反対が大きい」(法務省)。このため、保護の範囲を不払い賃金の一定期間分に限るなどの形で反対にも配慮した調整が進む見通しだ。

【Add 2001. 1. 8】

  製造業の残業時間減る

2001/ 1/ 8 日本経済新聞朝刊

  7ヶ月ぶり 11月 雇用も増えず
 堅調だった製造業の残業時間の増加傾向にややかげりが出てきた。厚生労働省がまとめている毎月勤労統計調査(速報)によると、従業員5人以上の製造業の1人あたりの平均残業時間(季節調整値)は2000年11月に前月比1.2%減となった。減少は7ヶ月ぶり。残業時間は個人所得を通じて消費に影響するほか雇用の先行指標ともいわれるだけに、同省は「製造業の雇用が増えていない段階で残業時間の増加が失速したとすれば影響が懸念される」と警戒している。
 製造業の残業時間は企業の生産活動の拡大を背景に1999年夏以降、増加傾向にあった。しかし、11月の鉱工業生産指数が前月を0.8%下回るなど、ここにきて生産の伸びが一服しており、それが残業時間の減少につながったとみられる。
 通常は残業時間の増加が続いた後、しばらくして雇用が増えるが、今回は製造業の常用労働者は増えていない。
雇用延長、本人に裁量

2001/ 1/ 8 日本経済新聞朝刊

  松下電工 日数・時間で3タイプ
 松下電工は60歳定年後に、働く日数や時間を本人が選べる再雇用制度を4月から導入する。管理職を含めた社員全員が対象で、原則として従来在籍していた部門で仕事を続ける。パートタイムを含む多様な就業条件を認め、定年後の様々な生活スタイルに柔軟に対応して再雇用の人数を増やす。4月の厚生年金の満額支給年齢引き上げをにらみ、大企業が雇用延長に乗り出す中、働く本人に広い裁量を与える仕組みとして注目を集めそうだ。
 新制度の発足時点で62歳までの雇用を保証、2007年までに段階的に65歳まで延長する。新制度の労働時間は(1)週3日8時間ずつ(2)週4日6時間ずつ(3)週5日4、5時間ずつ--の3タイプを中心に月100時間以内を基本とする。正社員と同じフルタイム労働も可能。再雇用後の業務や勤務条件はできる限り本人の意向を反映させ、在籍する部門などが決める。
 希望者は60歳でいったん松下電工を退社し、子会社で人材派遣業のアロービジネスメイツ(ABM、大阪市)と毎年、単年契約を結ぶ。時給は職務能力に従って900-2200円の8段階で、想定される年収は108万-264万円。賞与は無い。将来はABMを通じて松下電工グループ外に派遣するケースもあるという。
 社員は58歳の時点で定年後にも働き続けたいかの意向を確認、希望する業務や労働条件などを所属部署に伝える。59歳になるまでに希望者全員の再雇用内定を目指す。この4月から1年間で定年を迎える社員(400人弱)の7割強が働き続けることを希望、既に80%が再雇用の内定を得ている。
 公的年金の支給開始年齢の引き上げに対応して産業界には60歳定年後の再雇用などで雇用延長を実現する動きが広がっているが、フルタイム勤務を前提としたり、再雇用の対象者や業務内容を会社側主導で決める例が目立っている。
NTT労組 ベア要求を断念

2001/ 1/ 7 日本経済新聞朝刊

  今春闘、業績格差の拡大で
 民間最大の単組であるNTT労働組合(組合員数21万人、津田淳二郎委員長)は5日、今年の春闘で経営側にベースアップの要求をしない方針を決めた。一昨年7月の日本電信電話(NTT)再編で誕生した東西地域会社の業績見通しが、ベアゼロ回答で決着した昨春よりも厳しくなっているほか、グループ各社の業績格差が大きく要求水準をそろえるのが困難と判断した。
 NTT労組が春闘のベア要求を断念するのは初めて。17日に開く中央執行委員会とグループ各社の労組委員長による会議の場で正式決定する。
 NTT労組は昨年の春闘では持ち株会社であるNTT、東日本電信電話(NTT東日本)、西日本電信電話(NTT西日本)、NTTドコモ、NTTデータなどグループ主要8社でベア1.00%の統一要求を出した。だが、固定電話の減少などで業績悪化が続く東西地域各社に引きずられる形で、各社が「ベアゼロ」となった。
 昨年夏に日米が合意した回線接続料引き下げや新電電による新規参入をきっかけとした市内電話の競争激化などで、東西地域会社の2001年3月期の経常損益が合計で720億円の赤字となるなど業績は深刻化。一方、NTTドコモが業績を伸ばすなどグループ内の業績格差も拡大している。昨年末にすでに今春闘で統一要求提出を断念する方針を固めていたが、要求自体を断念することにした。NTT労組は今後は、組合員の雇用確保に全力を尽くす。
 すでに、同労組は一時金では格差を容認しているほか、昨年12月13日の中央委員会では今年4月から個人の成果や業績を重視した人事・賃金制度の導入を労組から”逆提案”している。今回の決定はかねて形がい化が指摘されている春闘の在り方についての議論を活発化しそうだ。

【Add 2001. 1. 5】

  雇用ミスマッチ拡大 採用できる人材4人に1人だけ

2001/ 1/ 5 日本経済新聞朝刊

  IT、不足目立つ
 求職者と求人の条件のズレを示す「雇用のミスマッチ」が拡大している。全国の公共職業安定所に寄せられた新規求人件数に対する就職件数の割合を示す「求人充足率」の低下傾向が続いており、昨年11月は前年同月比5.1ポイント低下して24.9%(季節調整値)となった。企業が4人募集しても、能力などの面で1人しか採用できない状態を示している。特に情報技術(IT)分野の充足率が低く、こうしたミスマッチの改善が雇用対策のカギになることを改めて示している。
 求人充足率は1999年は30%前後だったが、2000年に入ってじりじりと低下。6月以降は20%台半ばを推移している。
 低下の背景には、2つの要因がある。1つはIT分野を中心に求人企業が増えているにもかかわらず、能力の備わった求職者が少ないことだ。
 昨年11月の業種別充足率で見ても、製造業全体で30.6%。伝統的な業種である木材・木製品製造業、非鉄金属製造業などでは40%を超える。半面、サービス業全体では19.5%と製造業より10ポイント以上低く、IT関連会社の多い情報サービス業では17.6%にすぎない。
 IT関連企業では、職安を通じても募集していない大手企業でも人材の確保が難しい。富士通は2000年度中にIT関係の設計者やシステムエンジニア(SE)など計300人を中途採用する計画だが、12月末までに200人程度しか採用できていない。NECはシステム開発要員の確保が困難なため、インドや中国のソフト開発会社に業務の一部を委託している。職安を通じて募集している中小企業の場合、さらに採用が難しい状況だ。
 もう1つは、激しい価格競争などで求人企業の採用条件が厳しく、求職者が敬遠していることだ。典型は卸売り・小売業・飲食店。充足率は20.3%にとどまる。労働省は「求人側が提示している賃金や勤務時間などの条件が求職者の希望条件と大きく違うためだろう」(職業安定局)とみている。
 企業の求人増は続いている。労働省の一般職業紹介状況によれば、11月の新規求人は前年同月比25.7%増。特に情報サービス業では53.8%も増加した。しかし、ミスマッチが解消されていないため、就職難はあまり改善していない。職安への新規求職申込件数に対する就職した件数の割合を示す「就職率」でみると、11月は30.9%。99年11月(29.0%)に比べ1.9ポイントの上昇にとどまる。
 11月の完全失業率(季節調整値)は前月比0.1ポイント悪化して、4.8%となった。株価の低迷や米国の景気減速から求人件数の伸びにブレーキがかかれば、失業率がさらに上昇する懸念もある。
訪問介護 拠点さらに削減

2001/ 1/ 5 日本経済新聞朝刊

  コムスン 月内に50-60ヶ所
 介護サービス大手のコムスン(東京・港、折口雅博会長)は訪問介護サービスを提供する拠点の統廃合を加速する。ピーク時で1,208ヶ所あった拠点を昨年11月末までに約430ヶ所まで減らしたが、もう一段踏み込んで今月末までに370-380ヶ所まで削減する。これに伴い削減する拠点のうち19ヶ所の正社員やサービス利用顧客を同大手のニチイ学館に移管する方向で調整に入った。コムスンは最大で約35億円まで膨らんだ月間の経常赤字を昨年11月に約5億6000万円まで圧縮している。統廃合の上乗せで今年4月の単月黒字化を目指す。
 サービス利用者数が少ないなど単独での採算改善が見込めない50-60ヶ所の拠点を今月中に減らす。拠点の統廃合はこれで終了する。削減する拠点のうち19ヶ所の正社員や非常勤ヘルパー、利用者の一部を、ニチイ学館に移管する方針。すでに7ヶ所の正社員21人と71人の利用者を移管することを決めた。他の拠点は今後詰め、1月下旬には移管を終える。
 コムスンとニチイ学館は昨年11月に業務提携し、提携内容の具体化交渉を進めてきた。ニチイ学館も拠点の統廃合を進めているが、近隣拠点に従業員や利用者を移管するなど自社内で移管を完結できると判断できると判断しており、コムスンへの移管はしない。

【Add 2001. 1. 3】

  医療費 70歳以上1割負担に

2001/ 1/ 3 日本経済新聞朝刊

  改正健保法きょう施行
 原則70歳以上の高齢患者の本人負担を定率制に変更することを柱とした改正健康保険法が1日、施行される。高齢患者はこれまで外来の場合で1日530円(5回目から無料)という定額を支払うだけで済んだが、1日からは上限付きでかかった医療費の原則1割を定率で負担する。
 70歳未満の現役世代は高額所得者に限り、医療費負担の月上限が121,800円に上がる。収入にかかわらず、医療費が一定額を超えたら超過部分の1%を患者が追加負担(低所得者は除く)する仕組みも導入する。40歳以上のサラリーマンの介護保険料も実質的にアップする。
 
 

現行

改正後

外来 定額の一部負担
1日530円(月4回まで)
医療費の1割定率負担 200床以上の大病院 ・院内処方:月5,000円まで
・院外処方:月2,500円まで、薬局2,500円まで
200床未満の中小病院 ・院内処方:月3,000円まで
・院外処方:月1,500円まで、薬局1,500円まで
診療所
(選択制)
・院内処方:月3,000円まで
・院外処方:月1,500円まで、薬局1,500円まで
定額負担 1日800円(月4回まで)
入院 定額の一部負担
1日1,200円
医療費の1割   月額上限37,200円
 (1)市町村民非課税世帯 24,600円
 (2)市町村民非課税で老齢福祉年金受給者 15,000円
食費 1日760円 1日780円((1)650円 (2)300円)
訪問
介護
基本利用料
1日250円
費用の1割(月額上限3,000円)
(定額制の訪問看護ステーションは1日600円)
現役世代
の高額
療養費
患者の自己負担月額上限
一般63,600円
(市町村民税非課税世帯35,400円)
・上位所得者(月収56万円以上)
  121,800円 + (医療費 - 609,000円) * 1%
・一般
  63,600円 + (医療費 - 318,000円) * 1%
・低所得者
  変わらず
健康保険料 健康保険料の上限見直し
健康保険料率と介護保険料率を合わせて月収の9.1%以下
(組合健保は9.5%以下)
健康保険料率だけで月収の9.1%以下
(組合健保は9.5%以下)