社会保険労務士関連ニュース(2001年/第1四半期:2001/ 4- 6)

2001年(平成13年)度 第1四半期 2001年 4月〜 6月に新聞等で発表されたニュースです。

【LastUpdate 2001. 7. 1】

【Add 2001. 7. 1】

  医療費 初の30兆円台

2001/ 6/30 日本経済新聞朝刊

  99年度 65歳以上、50%占める
  厚生労働省は29日、1999年度の1年間に国民が使った医療費(国民医療費)が前年度比3.7%増の30兆9,337億円に上り、初めて30兆円を突破したと発表した。国民1人当たりでは3.6%増の244,200円。国民医療費の国民所得に対する比率も8.08%と、初の8%台に乗った。経済成長が鈍化する中、高齢者が使う分を中心に医療費は増え続けている。
 国民医療費は医療機関での傷病の治療費を推計したもの。正常な出産や健康診断の費用、市販薬購入代金などは含んでいない。
 年齢階層別に見ると、70歳以上が全体の39%に相当する12兆997億円を使っている。65歳以上で見ると全体の50%に達する。1人当たり医療費は70歳以上が85万円で、70歳未満では167,500円だった。
 国民医療費の財源は、全体の52.5%が国民や企業が支払っている医療保険の保険料。国や地方の公費(税金)が32.9%、患者の医療機関窓口などでの自己負担が14.6%。
 2000年度は、介護保険制度が始まり、高齢者医療費の一部が介護保険費用に移ったことから、国民医療費は減少する見通しだ。
求職者から手数料解禁 規制改革会議「方針」明記へ

2001/ 6/30 日本経済新聞朝刊

  期限付き雇用契約 最長5年に延長
 政府の総合規制改革会議(議長・宮内義彦オリックス会長)が検討している「雇用・労働(人材)」分野の規制改革の原案が明らかになった。民間の職業紹介事業で現在は原則禁止している求職者からの手数料徴収を解禁するほか、期限付きの雇用契約(有期雇用契約)の期間を最長3年から同5年に延長する方針を盛り込んでいる。雇用形態の多様化を一段と進め、高齢者などの就業を促す狙いがある。
 原案は総合規制改革会議の人材ワーキンググループ(主査・清家篤慶大教授)がまとめた。同会議は労働・雇用分野を「重点分野」と位置付けており、7月17日にまとめる基本方針に盛り込む見通しだ。
 現在の職業安定法は民間の職業紹介会社が求職者から紹介手数料を徴収できる対象を、自らPRする形で職を得る傾向のある芸能家、モデル、家政婦などに限っている。原案はこの対象を拡大し、一般の求職者からも一定額以下なら手数料をとれるようにする方針を示している。研究・開発職や高度な技術を持つエンジニアなどに需要があると見られる。
 求人企業から徴収する手数料については1999年の法改正で紹介会社による届け出制を導入し、原則自由化した。ただ、例えば手数料が「求職者の賃金の2分の1」を上回ると、厚生労働相が紹介会社に変更を命じることができるとの規定があるので、こうした事実上の上限も原則として廃止する。
 一方、有期雇用契約に関しては、弁護士、公認会計士、研究職など特別な資格や能力がある人や、60歳以上の高齢者などに限って認めている最長3年の契約期間を最長5年に延長、契約の更新も可能にするなど「現在の制度の抜本的見直し」を掲げた。
 このほか、企業が社員の募集・採用時に「25歳以下」などと制限する場合、その理由を明示することを義務づけるとしている。今年10月に施行する改正雇用対策法は採用時の年齢制限をしないように企業に努力義務を課すが、さらに踏み込んだ措置を求める格好だ。
 企業が従業員を解雇できる基準や条件を明示する解雇ルールの規定や、一定の時間を働いたものとみなす「裁量労働制」の見直しなどは中長期的の課題と位置付け、当面の検討課題からは外す方向だ。
離職者39-60万人 不良債権最終処理 内閣府が試算

2001/ 6/29 日本経済新聞朝刊

   民間有識者で構成する内閣府の研究会は28日、不良債権の最終処理(直接償却など)で30万-60万人が離職するとの試算結果をまとめた。再び職に就く人や再就職するつもりのない人を離職者から除くと、失業者の発生は13万-19万人とみている。ただ民間調査機関は100万人超の離職者の発生を予想、景気が後退する中で再就職が進むかどうかの懸念も出ている。構造改革を進めるうえで雇用の安全網の整備などが課題になる。
 (以下略)
ITで雇用創出90年代は240万人 厚労省推計

2001/ 6/29 日本経済新聞朝刊

  サービス・小売業に集中
 厚生労働省は情報技術(IT)の進展によって1990-99年に約240万人の雇用創出効果があったとの推計をまとめた。労働生産性の上昇などで約260万人の雇用が失われた一方、IT関連の精算や需要の増大で約500万人の雇用が生まれたという。
 雇用創出を産業別に見ると、サービス産業が約120万人と全体のほぼ半数を占める。卸売・小売業などが40万人強、運輸・通信業が約15万人、製造業が10万人弱となっている。
 90年代前半までは卸売・小売業などで雇用削減効果が見られたが、90年代はすべての産業で雇用創出は削減効果を上回った。このため厚労省は「過去の技術革新と同様、ITは雇用を増加させる方向で働く」と結論づけている。
 同省は米商務省の「デジタル・エコノミー2000年版」の定義に基づき、99年の日本のIT関連産業雇用者数は338万人と、全体の7.4%を占めると計算。この比率は米国(4.9%、98年)を上回り「日本は後れを取っていない」としている。
介護者、2割強が70歳以上 厚労省調査

2001/ 6/29 日本経済新聞朝刊

   70代以上のお年寄りがお年寄りを介護する「老老介護」が2割を超えていることが28日、厚生労働省の「2000年介護サービス世帯調査(概況)」で分かった。全体としては50-60代が介護するケースが半数を占めたものの、介護保険が導入されても「老老介護」がかなり広がっている実態が浮き彫りになった。最も重い「要介護5」の人に対する介護時間は「ほぼ終日」が6割弱、要介護4でも半数を超えており、介護の厳しさの一端がうかがえる結果となった。
 調査は昨年6月に実施。日常生活で手助けや見守りが必要な40歳以上(65歳未満は要介護認定申請者)の全国約4,300人について、家族による介護状況などを探った。主な介護者としては50-69代が52.5%と半数を超えたが、70代が配偶者などを介護しているケースが17.1%、80代でも5.8%に達し、主な介護者の2割を超えていた。
雇用創出 大学を拠点に 政府対策本部が中間報告

2001/ 6/27 日本経済新聞朝刊

   政府の産業構造改革・雇用対策本部(本部長・小泉純一郎首相)は26日、中間報告を決めた。不良債権処理による失業の増加をにらみ、新産業や市場の創造による雇用の受け皿を確保する戦略が柱だ。特に大学の基礎研究力を活用した起業に力点を置くが、日本の産業連携は緒に就いたばかり。構造改革の痛みを着実に吸収する「雇用の安全網」づくりには雇用関連の規制緩和の促進が急務となる。
(以下、略)

【Add 2001. 6.24】

  社会保障財政 高齢者負担増で改善

2001/ 6/24 日本経済新聞朝刊

  効果 年3兆6000億円 経産省改革案 年金や税制見直し
 経済産業省は社会保障制度の改革案をまとめた。少子高齢化で膨張する国民や企業の負担を抑えるために、所得や資産が多い高齢者に応分の負担を求め、年金制度や税制を見直すことで社会保障財政を年3兆6000億円好転させる効果があると試算した。医療の効率化も推し進めれば国民医療費を4兆6000億円節約できるとみている。
 同省が社会保障改革をまとめたのは「制度が安定すれば国民の安心感を高め、個人消費の喚起や関連産業を育成する効果が期待できる」とみているためだ。改革をテコに景気浮揚をめざす。政府・与党の社会保障改革協議会などの場で提言する方針だ。
 政府の社会保障有識会議は昨年10月、高齢者の負担を増やすべきだとの報告をまとめた。しかし具体論には踏み込んでおらず、経産省の案がたたき台になる可能性もある。
 同省は65歳以上の高齢者世帯の1人当たり所得は年金を含めると平均213万円となり、世帯主が40歳代の家族1人当たりの所得200万円と大差ないという調査結果を紹介。不動産など資産は現役を大きく上回るため所得に応じた負担は可能と判断した。
 医療保険では公的年金以外に所得のある70歳以上に現役世代と同じ割合の保険料や自己負担を求めた場合、公費負担は7000億円、若年層の負担は1兆円軽減できると試算した。
 年金制度では賃金収入のある60-64歳の年金受給者の給付額を一部減額する在職老齢年金制度を65歳以上の高齢者にも同じように適用すれば、給付費が7000億円削減できる。また、公的年金の給付額がほぼ非課税になる公的年金等控除を廃止し、若年層の給与所得控除を適用すると税収が1兆2000億円増えるという。
 こうした給付額や負担増の効果を合わせると財政は3兆6000億円好転するとみている。これによって安定した給付が可能になり、主に若年層の税・社会保険負担の抑制につながる。
 年間約30兆円に達する国民医療費については、医療の効率化で削減できると指摘。医療機関の受け付け、入院患者への給食などの業務を専門業者に外注することや、医療費に占める薬剤費の比率や、入院日数を先進国並みの平均14日程度に減らすことなどで、最大で4兆6000億円の削減が可能と推計した。
 経済省は医療費削減と医療サービスの向上を同時に達成する必要があるとみている。医療機関の参入規制の見直しによる競争促進、患者や健保組合による診療報酬明細のチェック機能の強化、医療内容の標準化などの改善策に取り組むことを提言している。
「リストラ時代家族も自立を」 内閣の研究会

2001/ 6/24 朝日新聞朝刊

    父ちゃんのリストラの危機に備え、母ちゃんも働く世の中に--。内閣府副大臣の諮問機関「家族とライフスタイルに関する研究会」(座長・八代尚宏日本経済研究センター理事長)がまとめた報告書が、「サラリーマン、専業主婦、子供」という家庭は必ずしも安定的でなくなると指摘している。そのうえで、専業主婦を優遇する配属者控除や年金制度を見直すべきだとし、家族1人ひとりの自立を促す意味でも選択的夫婦別姓制度を導入すべきだと主張している。
 現行の配偶者手当の制度では、妻の所得が年間100万円から140万円に増えても実際には2万円の増収にしかならない。報告書は、その「100万円の壁」が妻の労働を妨げているとして見直しを求めている。
401k法案きょう成立

2001/ 6/22 日本経済新聞朝刊

   毎月一定の掛け金を拠出し、その運用成績によって将来の年金額が変わる年金を導入するための確定拠出年金法案が21日、参院厚生労働委員会で可決された。22日午前の参院本会議で可決、成立する見通し。施行は10月1日。従来、企業年金には将来の年金額をあらかじめ定めておく確定給付型しか認められてなかったが、確定拠出年金の導入で選択肢が広がる。
 確定拠出年金には、企業が従業員のために導入する「企業型」と自営業者らが個人で加入する「個人型」を設ける。すでに確定給付型の年金制度を導入している企業が新たに確定拠出年金を設ける場合、従業員1人当たりの掛け金の限度額は月18,000円。従業員はこの掛け金を投資信託などに投資して運用する。

【Add 2001. 6.21】

  出生率1.35 4年ぶり上昇

2001/ 6/21 日本経済新聞朝刊

  昨年、ミレニアム効果?
 2000年に生まれた赤ちゃんは前年より約13,000人増え、1人の女性が生涯に産む子供の平均数を示した「合計特殊出生率」は1.35と4年ぶりに増加したことが20日、厚生労働省が発表した「人口動態統計(概数)」で分かった。しかし過去最低だった前年より0.01上がっただけなのに加え、少子化の要因となる女性の初婚年齢や第1子を産む年齢は引き続き上昇していた。同省は「長期的な少子化の傾向は変わっていない」としている。
 2000年の出生率は1,190,560人で、前年より12,891人増えた。出生率は1993年以降、120万人前後で増減を交互に繰り返している。ミレニアムベビーの効果も期待されたが前々年の出生率を下回っており、同省は「効果があったかどうか、よく分からない」としている。
 公的年金制度などの政策を進める上で前提としている出生率の推計値(2000年は1.38)を下回る傾向は変わらなかった。
医療制度改革 今秋に原案 政府・与党

2001/ 6/21 日本経済新聞朝刊

    政府・与党は20日、社会保障改革協議会・ワーキングチームの合同会議を首相官邸で開いた。席上、小泉純一郎首相は2002年度に予定している医療制度改革について「改革は待ったなしだ。持続可能な制度を構築するため、不退転の決意で臨まなければならない」と述べ、改革の断行に強い意欲を示した。桝屋敬悟厚生労働副大臣は今秋に厚生労働省としてのたたき台を提示する方針を表明した。
夏のボーナス2年連続増

2001/ 6/20 日本経済新聞朝刊

  本社中間集計4.06%増 好業績を映す
 日本経済新聞社が19日まとめた今夏のボーナス調査中間集計(11日時点)によると、1人あたりの支給額は763,837円で、昨年夏実績を4.06%上回った。前年比増は2年連続で、4%台に乗せるのは1991年以来、10年ぶり。企業の2000年度決算が大幅増益で、昨年冬に今夏分も決めた企業のボーナスが大幅な増額になったのに加えて、賃上げは抑えてボーナスを上積みする企業が増えたことも高い伸びにつながった。
 低迷する個人消費の底割れを防ぐのに一定の効果が期待できそうだが、最終集計(7月2日)に向けて、伸び率は下方修正の見通し。ボーナスの決定時期で伸び率を分けてみると、昨年冬に冬夏型で決めた企業は5%台、春闘時の企業は4%前後、この夏に決めた企業は3.5%前後と、企業の景況感は下降線に入っている模様。今後の集計には今夏に決定する企業が加わるため、最終集計は4%台を割る可能性が大きい。
 調査対象の39業種のうちで、31業種が前年実績を上回った。製造業が5.02%増と大幅に伸びる一方で、非製造業の増加は0.53%にとどまった。
 製造業19業種のうち昨年は10業種が前年割れだったが、今年は医薬品と印刷を除く17業種がプラス。電機が9.17%増だったほか、昨年は0.81%減だった精密機械が6%増に転じるなどIT関連業種が伸びている。このほか、業界再編が進む紙・パルプが6.67%増。機械や窯業も6%台を確保した。
 非製造業の20業種のうち、プラスは14業種。ただ、建設が4.01%減となったほか、デフレの影響を直接受ける百貨店・スーパーやその他小売業などが前年実績を割り込んだ。
保育所入所15万人増へ

2001/ 6/20 日本経済新聞朝刊

  男女共同参画会議 働く女性支援へ具体策
 政府の男女共同参画会議(議長・福田康夫官房長官)は19日、働く女性を支援するための「仕事と子育ての両立支援策」を決定し、小泉純一郎首相に提出した。保育所に入所できない「待機児童」をゼロにすることを目指して、2004年度末までに入所児童数を15万人増やすことや、児童の放課後の受け入れ施設を4000カ所増設することが柱。首相は「暮らしの構造改革だ」と述べ、22日にも閣議決定して実現を急ぐ意向を表明した。
 支援策は待機児童の解消に向けて、都市部の保育所の増設などで入所児童数(現在、192万人)を来年度で5万人、その後の2年間で10万人増やすとの目標を明記。新設保育所は学校の空き教室などを利用し、非営利組織(NPO)などによる民営とすることで財政負担を押さえる方針。
雇用創出へ産学官連携

2001/ 6/19 日本経済新聞朝刊

  産業構造改革・雇用対策本部 大学ベンチャー育成
 政府の産業構造改革・雇用対策本部(本部長・小泉純一郎首相)は18日、雇用創出・雇用対策に関する中間報告案をまとめた。金融機関の不良債権の最終処理(直接償却など)に伴って悪化する雇用の新しい受け皿をつくるため、大学での研究成果を事業化する「大学発ベンチャー」企業を3年間で1000社に増やす目標を掲げるとともに、産業界と公的研究機関のトップが対話する「産学官連携サミット」の実施などを盛り込んだ。
 中間報告は週内に正式決定し、9月に具体策を盛り込んだ最終報告をまとめる。中間報告案は今後5年間でストックオプション(自社株購入権)制度の弾力化などで企業の新規開業数を倍増させることや、大学などで受け入れる社会人を現在の30万人から100万人規模に増やす目標を設定した。
雇用創出NPO活用

2001/ 6/18 日本経済新聞朝刊

  離職者1万人を職業訓練 雇用対策中間報告案
  政府は非営利組織(NPO)を受け皿とする雇用創出策に乗り出す。来年度から離職者の職業訓練のうち1万人程度をNPOに委託、受講者に介護サービスなど地域密着の新しいNPOを起業してもらう。起業支援や地域の産業振興などで、NPOの法人格を取りやすくする関連法の改正も検討する。NPOは年間1000法人のペースで増え、新たな雇用吸収が見込まれており、国の支援を強める。
 この政策は、政府の産業構造改革・雇用対策本部(本部長・小泉純一郎首相)が22日に決める雇用創出対策・雇用対策の中間報告に盛り込む。厚生労働省が検討しているのは「ボランティア能力開発コース事業」(仮称)。これまで離職者は公共職業安定所(ハローワーク)を通じて、職業訓練校などで訓練を受け、企業に職を求める例がほとんど。
 来年度から初めて、NPOに1万人規模の職業訓練を委託する。経理などの経験が豊かで非営利活動に関心がある中高年や、就業意欲の乏しい若年層らを受講者に想定。高齢者向けの家事援助や介護サービス、商店街の空き店舗を利用した保育所といった地域密着の小規模ビジネスを起業する力を磨いてもらう。
 厚労省は全国のNPO支援組織などに専門家を派遣。受講者の希望に即した訓練コースづくりや情報提供などについて、受け入れ先のNPOを支援する。
 与党は今秋の臨時国会にNPO法改正案を議員立法で提出する予定。政府は、医療・福祉など現在12の活動分野に起業支援、地域産業振興、技術開発の3つを追加するよう要請する。起業支援のNPOは各地で発足しているが、法人格を得られない団体も多いためだ。今年10月から、一定の条件を満たすNPO法人に寄付した個人や企業向けの優遇税制が始まり、そうした適用を受ける団体を増やす効果を見込んでいる。  

【Add 2001. 6.16】

  専業主婦の免除廃止を 年金保険料 経産省研究会提言

2001/ 6/16 日本経済新聞朝刊

    経済産業省は15日、有識者による「男女共同参画研究会」の報告書を発表した。女性の就業を促すため、世帯主の賃金の配偶者手当や、専業主婦の年金保険料を免除している「3号被保険者制度」を廃止するよう提言した。
 研究会の試算では、こうした手当や制度により妻の年収が103万円、130万円に達すると世帯全体の手取り所得が減少する。減少分を回復するには、それぞれ16日間、21日間ただ働きすることになり、就業を阻害する要因になっているという。
 育児のため就業できない女性を支援するには、2010年までに84万人分の保育サービスを増やさなければならず、9,700カ所の認可保育所と10万人の保育士が必要と試算した。
大学に社会人100万人 政府が雇用対策案

2001/ 6/14 日本経済新聞朝刊

  再就職へ能力開発 人材派遣も規制緩和
 政府の産業構造改革・雇用対策本部(議長・小泉純一郎首相)が まとめる雇用創出策・雇用対策の中間報告案が明らかになった。サラリーマンの転職や再就職に必要な知識や技術を習得する場として大学・大学院を活用し、大学などで受け入れられる社会人を今後5年間で100万人規模に増やす計画を盛り込んだ。人材派遣の規制緩和では、派遣期間の延長など具体策の検討を始める。雇用の受け皿づくりを急ぎ、不良債権の最終処理などに伴う失業者の増大に備える。
 中間報告は18日の本部の会合で議論し、22日に決定する。これを踏まえて具体策を詰め、最終報告は9月にまとめる。
 竹中平蔵経済財政担当相は不良債権処理が進むと、失業者が「数万人から10数万人」出ると予測。経済産業省も同約20万人と推計している。今回の対策はこうした雇用情勢の悪化に備えた内容で、規制緩和による雇用創出、個人の能力開発に力点を置いた。
 能力開発で打ち出したのは「社会人キャリアアップ100万人計画」だ。大学、短大、専修学校に衛星通信を活用した遠隔教育などを導入しやすくしたり、インターネットによる単位取得を促す。具体的には、現在の文部科学省の大学設置基準は、遠隔授業で修得できる単位に上限(60単位)を設けているが、この引き上げなどを検討する。これらにより社会人の受け入れ数(現在30万人程度)を5年間で3倍に増やすという。これらの実現に必要な予算措置なども検討する。
 また、高度な専門知識を備えた人材を育成するため、現在の大学院へのサラリーマンの受け入れ数(1万人弱)を早期に2万人まで倍増させる。雇用保険から授業料などを一定額補助してもらえる社会人を対象とした教育訓練給付制度も拡充。より多くの大学・大学院で受講コースを選べるようにする。社会人の間では、情報技術(IT)や税制、会計学などの知識を身につけたいというニーズが高まっている。
 職業訓練や人材派遣の規制緩和について、政府は1999年に実施した前回の制度改革から3年後の2002年12月以降に検討することにしている。報告案はこれを待たずに検討に乗り出す方向を打ち出した。
 現在の労働者派遣法は販売・営業職などの派遣期間を最長1年に限定したり、製造業などへの派遣は禁止している。中間報告案は派遣期間の延長など対象の拡大に前向きに取り組むと強調した。2003年の通常国会に労働者派遣法改正案などの提出をめざす方向で調整が進む見通し。

【Add 2001. 6.13】

  老人医療費に上限 厚労省、総額抑制へ基本構想

2001/ 6/13 朝日新聞朝刊

  超過分は医療側負担
 政府の経済諮問会議(議長・小泉純一郎首相)が経済運営の基本方針に盛り込んだ「医療費総額の伸びの抑制」について、厚生労働省がまとめた基本構想が12日明らかになった。(1)抑制の対象は70歳以上の老人医療費とする(2)高齢者の増加による医療費の伸びは認めるが、治療費などそれ以外の伸びには歯止めとなる上限を設ける(3)この上限を超えた場合は医療機関の負担とし、医療費の抑制を図る、という内容だ。
 基本構想は、日本医師会など自民党の支持団体の利益に直接メスを入れることとなり、「聖域なき構造改革」の方向に沿ったものだ。しかし医師会は「医療機関が診療を手控え「事故」が起きたらだれが責任を負うのか」(坪井栄孝会長)と反発。患者からも、医療の質を保てるのか、必要な医療が受けられなくなり高齢者の切り捨てにつながらないかと行った疑問も出されそうだ。
 上限の設定は、高齢者増加による伸びが4%の場合、例えば国民所得の伸びが1%なら、高齢者増加分の4%を足した5%とする案などが検討されている。
 超過分の負担の仕組みは(1)その年の超過分を、全国の老人医療に携わる医療機関の間で比例配分する(2)各医療機関は毎月の医療費を診療報酬支払基金に請求しているので、ここで請求分と負担分を調整する(3)具体的には診療行為別に定められている診療報酬の単価(1点10円)を操作し、請求分から負担分を差し引いた水準とする、ことが検討されている。
 これまで政府は予算編成で過去の実績を基に1年間の医療費総額を決め、国の支出分を計上。医療費が増えた場合は補正予算で調整するなど、かかった医療費は「青天井」で賄われてきた。
 同省が総額30兆円に上る国民医療費の4割近くを占める老人医療費を総額抑制の対象のしたのは、過去10年間の平均で国民所得は約2%、国民医療費は約5%の伸びなのに対し、老人医療費は約8%と際だっているからだ。高齢者1人当たりの医療費は一般の約5倍で、長期入院への対応などで医療費を節約する余地があると見ている。
 抑制上限の超過分を医療機関だけに負担してもらうことにしたのは、医療費の抑制に直結するからだ。政管健保や健保組合の財政悪化は老人保健制度の拠出金急増が原因となっており、老人医療費の伸び抑制は赤字に苦しむ保険者の理解を得やすいとも判断している。

【Add 2001. 6.10】

  企業のスポーツの労災認定234人 4月までの1年間

2001/ 6/10 日本経済新聞朝刊

   実業団競技大会など企業のスポーツ活動で負傷して労災認定された社員が今年4月までの1年間で234人に上ったことが9日、厚生労働省のまとめで分かった。申請は260人だった。
 企業が広告宣伝としてのスポーツ活動に力を入れ、スポーツを業務とする社員が増えているため昨年5月に認定基準が見直された。スポーツに関する労災認定状況の集計は初めてで、過去との比較はできないが、これをきっかけに申請と認定が急増したとみられる。
 同省は「見直しでスポーツのケガも労災と認められる余地があることが明確になり、企業の担当者らにもその認識が広まったのではないか」としている。
 集計によると、五輪など国際的な競技大会や国体での試合や練習中のけがで労災認定された企業所属のスポーツ選手は計10人。全日本スキー連盟主催の合宿でけがしたアルペンスキーの木村公宣選手のほか、国体強化選手として練習で負傷したテニス選手やシドニー五輪前の合宿で肩を痛めた野球選手、富山国体の試合中にけがをしたバレーボール選手ら3人も含まれる。
 実業団競技大会でのけがは練習中も含めて計140人。社内運動会などでのけがは84人だった。
厚年基金 給付下げ最多177基金

2001/ 6/ 8 日本経済新聞朝刊

  昨年度 運用悪化で3倍増
 代表的な企業年金である厚生年金基金のうち、2000年度に年金の給付水準を引き下げた基金が前年度の3倍以上の177にのぼり、過去最高となった。株価低迷などによる運用環境の悪化が原因で、企業年金再生の緊急性を浮き彫りにした。確定拠出年金(日本版401k)の導入などを盛る企業年金改革の関連2法案は7日、今国会の成立が確実となり、改革はようやくスタート台に立つ。
 厚年金は将来の年金額をあらかじめ定めておく確定給付型の企業年金。主に企業が拠出する掛け金について4-5.5%程度の予定運用回りを設定、予定以上の利回りを稼げば約束通りの年金を給付できる。予定利回りに達しなければ企業が穴埋めする。運用環境悪化で予定利回りに達しない厚年基金が大半となり、給付水準を引き下げる基金が相次いでいる。
 2000年度に給付水準を引き下げた基金が177に達することは、7日の参院厚生労働委員会の質疑で厚生労働省の辻哲夫年金局長が明らかにした。
 これまでに表面化しているのは繊維産業など母体企業の業績が悪化しているところが大半。ただトヨタ自動車、田辺製薬、富士電機などの有力企業もある。
 給付引き下げは労使の合意などを条件に1997年度から可能となった。引き下げは97年度は7基金、98年度は16基金、99年度は52基金と、毎年増えている。財政悪化などで解散する厚年基金も、2000年度は過去最高の29基金あった。
 これらの厚年基金では予定利回りを5.5%程度から4%程度に引き下げ、あわせて給付水準を下げる例が多い。給付の下げ幅は企業や従業員の年齢によってまちまちだが、これまでは最大で2割程度と言われている。
 国会では、既存の企業年金制度を再編する確定給付企業年金法案が7日、参院厚生労働委員会で可決。8日の参院本会議で成立する見通し。毎月の掛け金を一定とし、将来の年金額はその運用次第で変動する確定拠出年金を導入するための法案も8日の衆院厚生労働委で可決、今国会中に成立する方向だ。企業は両方を活用し、財政が悪化している年金制度の立て直しなどに取り組むことになる。
在宅勤務 対象を拡大

2001/ 6/ 6 日本経済新聞朝刊

  日本IBMは本社の3割 研究開発など生産性高める
 情報技術(IT)関連企業が相次いで在宅勤務制度を本格導入する。日本IBMが年内に約500人を在宅勤務に転換するほか、NEC、日立製作所、松下電器産業も適用社員数を増やす。富士通は来年度以降の導入に向けて検討を始めた。在宅勤務は育児、介護などの理由のある場合に認める場合が多かったが、研究開発部門などの効率向上策と位置付ける企業が増えている。柔軟な勤務体系に切り替えて社員の能力を引き出そうとする動きが広がりそうだ。
 日本IBMは間接部門約5000人の1割に相当する約500人を在宅勤務に切り替える。人事・財務・企画やパソコン部門の開発人員などが対象。本社社員(1300人)のうちでは2、3割が在宅となる。高速インターネットや電話など通信費用は会社が全額負担し、パソコン購入も大半を補助する。自宅から同社のシステムに接続し、ネット上でのチャット(会話型のメール)、遠隔会議など最新のシステムを使い業務をこなせるようにする。
 1週間に1-2日程度の在宅が基本だが、業務に支障がなければ週1日の本社出勤も可能とする。
 富士通は生産性の向上を目指して全社で成果主義の賃金体系を採用しており、在宅勤務に関しても幅広い職種での導入に前向き。特に研究開発部門では技術力の向上と業務の効率を高めるため、来年度以降具体的な検討に入る。
 外資系コンピューター会社の日本SGIは、400人の社員のうち営業など半数の約200人について7月から在宅などオフィス外で勤務する体制に移行する。
 在宅勤務によって企業はオフィススペースや交通費の節約が期待できるほか、「個人の能力や家庭の事情に合わせて勤務形態を自由に選べるようにし、社員1人ひとりの生産性を高める」(日本IBMの大歳卓麻社長)ことを狙っている。
 在宅勤務制度導入の背景には、高速インターネットや携帯パソコンなど自宅でも業務がこなせる情報システムが普及してきたのに加え、勤務時間を限定しない裁量労働制や成果主義賃金の浸透など環境が整ってきたという面もある。
 日本テレワーク協会の調査では、2000年の在宅やサテライトオフィスの勤務人口は米国の10分の1の約246万人で、職種も営業の補助などが中心。しかし専門知識・技術を持つ女性・高齢者や、自由な勤務体系を求める若者を取り込むため企業の導入機運は高く、2005年に445万人に拡大すると予測している。
 政府もIT人材の確保や女性、高齢者などの活用をにらみ、在宅勤務などの導入を促す施策を打ち出している。情報通信システム面での開発支援や、職住近接を狙い企業が郊外に設置するサテライトオフィスへの低利子融資といった施策がある。
企業の新卒採用 活発化

2001/ 6/ 5 日本経済新聞朝刊

  中高年の雇用調整進む 厚労省など調査
 企業が新規学卒者の採用を活発化し始めた。厚生労働省が4日発表した労働経済動向調査(5月1日時点)によると、2002年春の採用予定人数が今春実績より「増加」と答えた企業が、「減少」と答えた企業の割合をすべての学歴で上回った。中高年の雇用調整が進んだ企業では、新卒の採用増に転じる動きが増えてきた。
 厚労省の調査では大卒、高専・短大卒、専修学校卒、高卒とも増加予定の企業の割合が減少予定の割合を上回った。採用を増やす理由は、文科系大卒が「販売・営業部門の増強」、理科系大卒は「技術革新への対応」がそれぞれトップ。高卒、高専・短大卒では「年齢など人員構成の適正化」「中高年などの退職者の増加」が多い。ここ数年、新卒採用を手控えてきた企業が世代間の雇用の不均衡を解消し、一定の労働力を確保するため積極採用に転じた結果とみられる。
 ただ、全体の常用労働者の過不足判断DI(「不足」と答えた企業の割合から「過剰」と答えた割合を差し引いた値)はマイナス6と、前回(今年2月1日現在)おり2ポイント悪化。製造業と建設業のマイナス幅が大きく過剰感は依然強い。
 リクルートワークス研究所(東京・中央)が同日まとめた調査では、大卒の求人倍率が1.33倍と今春実績を0.24ポイント上回り2年連続上昇した。文科系が0.16ポイント高い1.06倍、理科系は0.36ポイント増の1.78倍。業種別では流通業が1.01ポイントと大幅に伸びて4.49倍と高く、製造業も雇用削減を先行してきた電機、自動車、医薬品などが新卒の求人を増やし、0.34ポイント高い1.69倍となった。金融業とサービス・情報業は1倍を割り、伸び率も小幅にとどまった。
 日本経済新聞社が4月にまとめた2002年度の採用計画調査でも、主要企業の大卒採用は前年度比18.7%増、全体でも12.6%増と2年連続のプラスとなった。
 個別企業では、日立製作所が今春を80人上回る980人の新卒採用を予定、トヨタ自動車が大卒採用枠を65人、ホンダも120人弱広げる。医薬品では新薬開発のため外資系の採用増が目立つ。

【Add 2001. 6. 2】

  年金給付に課税強化案 経済諮問会議で検討課題に

2001/ 5/30 日本経済新聞朝刊

  「現役」とバランス
 政府の経済財政諮問会議(議長・小泉純一郎首相)が6月下旬にまとめる中期の経済・財政運営の基本方針作りで、年金に対する課税の強化が検討課題に浮上している。高齢者を一律に優遇している給付時の多額の所得控除を縮小し、現役世代との税負担のバランスをとる狙いがある。実質的な負担増につながるとの反発も根強いが、企業年金制度の改革などを機に議論が進む可能性もある。
 諮問会議は歳出構造の改革に合わせ、高齢化を踏まえた税や社会保険料など歳入構造の抜本的な見直しも検討課題に挙げている。塩川正十郎財務相は28日の参院本会議で年金課税について「税負担は主要国と比べ極めて低い」と発言。高齢者にも負担能力に応じた税負担を求めるための見直しが必要と指摘している。
 国民年金や厚生年金など公的年金は、掛け金に社会保険料控除が適用され、全額を所得から控除できる。年金の給付を受ける段階でも公的年金等控除などがあり、65歳以上の夫婦2人の世帯で年金受給額が年340万円程度を下回れば所得税がかからない。「平均的な年金(厚生年金受給世帯で月約18万円)の受給者はほとんど非課税になっている」(厚生労働省年金局)という。
 これに対し現役世代の給与所得者では、夫婦2人の世帯で給与年収が約220万円を超えれば所得税がかかる。米国の公的年金は給付時は実質的に非課税だが、掛け金の所得控除はできない。「拠出、受給とも事実上非課税になっている日本の優遇ぶりが目立つ」と財務省は指摘する。
 今後の見直しでは、まず公的年金等控除などの縮小で、年金を受け取る段階での非課税枠を減額する案が軸になりそうだ。掛け金については税制を優遇して若い世代の年金制度への加入を促す狙いもあり、一定額の非課税枠を残すことなどが検討されそうだ。
 ただ、年金課税のこうした見直し論は過去にも浮上したが、高齢者の猛反発を懸念する自民党などの反対で立ち消えになってきた。小泉政権も向こう2年程度は新たに増税しない意向を示しているため、短期的に結論を出すのは困難な情勢だ。
 今国会で成立する公算が大きい確定給付企業年金法案と、確定拠出年金(日本版401k)法案など企業年金改革の動きが、年金課税見直しのきっかけになる可能性もある。確定拠出年金など新型の企業年金は、掛け金を積み立てた残高にかかる特別法人税(税率は1%強)が2002年度末まで凍結されている。
 経済界などは新型年金の普及のため、特別法人税の廃止を強く主張している。これに対し財務省は「特別法人税の廃止は、年金課税全体の見直しが前提」と反論してきた。このため経済界などは年金課税の抜本改革の中で特別法人税の廃止を目指す見通しだ。

【Add 2001. 5.29】

  介護保険料減免の市町村 半年間で139に倍増 厚労省4月調査

2001/ 5/29 日本経済新聞朝刊

   厚生労働省が全国の市町村を対象に実施した介護保険事務調査によると、今年4月時点で低収入の高齢者の介護保険料を減免する独自の制度を導入している市町村は東京都狛江市、愛知県半田市など139あり、全体の4.2%を占めた。65歳以上の高齢者から保険料徴収が始まった昨年10月時点の減免は72市町村だったが、半年間でほぼ倍増した。
 調査結果は厚労省が28日の全国介護保険担当課長会議で報告した。
 同省は市町村独自の介護保険料減免について(1)保険料は全額を免除せず、一部の減額にとどめる(2)収入以外の資産も含めて個別に減免の可否を判断(3)財源として税収などの一般財源を活用せず、保険料を充当--の3原則に該当しない方法は「適当ではない」としている。
 調査によると、3原則の範囲内で保険料を減免している自治体は43市町村と、半年前と比べると39増えた。半面、一部の低所得者の保険料を全額免除できるようにしたのは北海道釧路市など73市町村、保険料減免の財源として税収などを充てているのは那覇市など61市町村あった。

【Add 2001. 5.28】

  外国人技術者採用を拡大 NEC・東芝など大手各社

2001/ 5/28 日本経済新聞朝刊

  「IT即戦力」新卒者も対象
 大手企業の間で外国人技術者を採用する動きが広がってきた。特に情報技術(IT)分野で目立っており、NECなど情報関連企業が採用を始めるほか、電機、機械業界やベンチャー企業も採用を拡大。人材派遣各社はアジアの技術者の派遣を一斉に強化する。インターネット関連などの新事業を展開する上で、不足する技術系人材の手当てが欠かせなくなってきたため。政府も海外からのIT技術者の就業を後押しする方針で、幅広い業界で外国人の採用気運が高まりそうだ。
 NECは2001年度の外国人技術者採用を通年採用枠の4割に当たる40人と従来の2倍に引き上げる。留学生の新卒採用枠(5-6人)も新設し、ネット、情報技術システム分野の優秀な人材を集める。グループ会社のNECソフトも今秋から中国の大卒新卒者(IT専攻)の定期採用を開始、今後5年間で50人以上を確保する。
 年間数人程度を不定期で採用してきた東芝は今後「通年採用の枠内で優先的に採る」方針。ウイルス対策ソフト大手のトレンドマイクロは2002年春の新卒採用20人のうち、約半分を外国人でまかなう計画など「即戦力」として期待している。
 情報産業以外でも、日揮が今年初めて外国人の採用制度を導入、今年度はインド、東欧の新卒者5人を採用した。プラント設計に必要な3次元CAD(コンピューターによる設計)などのIT業務を担当する予定で、今後も新卒採用(年間約30人)の1割をめどに外国人を採用する。
 人材派遣も活発になってきた。パソナテック(東京・渋谷)は7月にも、中国・西安市にIT技術者の研修所を開設。現地大学の新卒者や実務経験者を集め、契約社員として年間約100人を日本企業に派遣する。
 各社が採用や派遣を計画しているのは、IT教育が進んでいる中国、台湾、インドなどの出身で、大学・大学院でコンピューター、通信などの専門知識を学んだ技術者が中心。IT産業が集積する米シリコンバレーでも、こうした国、地域出身の技術者が新興企業を支えている。
 日本ではこれまで、外国人の就労について出入国管理法で学歴や「実務経験10年以上」といった条件を設けるなど制約してきた。産業界では中国やインドの企業にコンピューターソフトの開発を委託するなどの例はあったが、言葉や生活習慣などの問題から実際に社員として採用することには慎重だった。
 しかし、ネット関連などの先端分野の事業開拓が今後の成長戦略に不可欠となる中、国内の人材だけでは技術開発に対応できないのに加え、技術者の絶対数の不足も目立ってきた。就労目的で長期滞在する外国人の職種に関する要件で、「技術職」の在留資格を持つ外国人の登録者数は99年末で約1万6,000人。IT関連はこのうち3割程度とみられるが、政府は2005年までに約3万人のIT技術者の受け入れを掲げている。

【Add 2001. 5.27】

  「紹介予定派遣」広がる スタッフから正社員へ

2001/ 5/26 日本経済新聞朝刊

  「派遣経由採用3割」も 大手各社、半年で100-300人
 人材派遣業界で派遣スタッフから正社員への登用に道を開く紹介予定派遣(テンプ・ツー・パーム)制度の採用が拡大している。昨年12月の制度解禁から半年で、大手派遣各社はそれぞれ600-4000人の登録者を集め、各100-300人を実際に企業に送り出した。特に技術者など専門分野の引き合いが強い。即戦力社員への需要が高まる中、「正社員採用の3割は派遣経由になる」(テンプスタッフ)との見方も出てきた。
 大手のアデコキャリアスタッフ(東京・港)は今月上旬までに600人が登録、150人を派遣した。派遣先は半導体や電機メーカーが多く、「当初予想していた中小企業より大手からの反響が大きい」(野口昌弘・営業推進部長)。
 リクルートスタッフィング(東京・千代田)は300人、パソナ(東京・千代田)は150人を送り出した。「1社でシステムエンジニア35人を依頼してきた例もある」(パソナ)。企業への売り込みを控えてきたテンプスタッフ(東京・渋谷)も100人を派遣した。
 需要が多い職種は事務職と営業職、情報技術(IT)の3分野。特にIT技術者は人手不足が深刻なため、「派遣会社経由で優秀な人材を確保する」(アデコキャリアスタッフ)動きが広がっている。派遣期間は事務職で3-6ヶ月、技術職は半年-1年が一般的。
 紹介予定派遣は派遣終了後、正社員に移行するか否か、企業とスタッフ双方が選択できる。アデコの場合、正社員へ移行した比率は75%。大手派遣各社はスタッフの適正判断を充実させ、マッチングの精度を高める考えだ。

【Add 2001. 5.22】

  有期雇用契約見直し 営業職など最長3年に 労働移動を円滑化

2001/ 5/22 日本経済新聞朝刊

  厚労省検討、9月結論
 厚生労働省は労働基準法で定める期限付きの雇用契約(有期雇用契約)の見直しに乗り出す。(1)最長3年となっている対象職種の拡大(2)最長1年の契約期間の原則を最長3年に延長--などを軸に検討、例えば現在は対象外の販売・営業職の社員についても3年の契約を結べるようにする方向だ。サラリーマンなどの就業形態の選択肢を増やし、転職などの受け皿を広げるのが狙い。25日に初会合を開く産業構造改革・雇用対策本部で検討する。
 有期雇用契約は最長1年が原則だが、1999年4月施行の改正労働基準法は「高度に専門的な知識を持つ人」や60歳以上の高齢者などを企業が雇い入れる場合に限り契約期間の上限を最長3年に延長した。
 ただ高齢者を除くと、対象となるのは博士の学位を持っている人や、公認会計士、医師、弁護士、一級建築士、薬剤師など資格を持つ人などに限られている。企業側から「利用しにくい」との声が出ていることを受け、厚労省は雇用拡大のため一般の販売・営業職、事務職を含め対象をどこまで増やせるかを検討する。
 業務内容の要件緩和も課題になる。現行法では(1)新商品、新技術の開発・研究(2)新事業を展開するため一定期間での完了を予定しているプロジェクトに必要な業務--のいずれかの要件を満たす必要がある。
 規制改革委員会は昨年、こうした要件を一部緩和しベンチャー企業が設立時に3年の有期契約社員を採用できるように求めた。この案に加え、厚労省は有期契約の「原則1年」を「原則3年」に延ばす抜本的な見直し策も検討する。
 産業構造改革・雇用対策本部は6月下旬の中間とりまとめで有期雇用契約の見直しの基本的方向を示し、9月の最終結論で具体的内容や労基法改正までの手順を明示する見込みだ。
 ただ労組側は「最長3年契約の対象職種を拡大すれば、その分期間の定めのない社員が置き換えられ、不安定な雇用労働者を増加させる」と反対している。
 有期雇用契約を巡って、経団連は企業が最長5年の契約を誰とでも結べるよう規制緩和を要望した。厚労省は今年3月の時点では「国民の同意が得られているとは判断できない」としていたが方針を転換する。
 
産業構造改革・雇用対策本部の検討項目
<新市場、新産業の育成による雇用創出>
情報通信、医療福祉、環境、物流、土地・都市分野の規制改革、制度改革
リスクマネー供給の円滑化
<人材育成・能力開発>
個人の主体的な能力開発を推進するシステム整備
民間機関、大学・大学院の積極的活用
<安心して働ける就業環境整備>
女性・高齢者の就業環境整備
パート・派遣労働者の社会保険の適用のあり方の見直し
有期雇用の見直しなど就業形態の多様化に対応した労働法制のあり方の検討
<労働市場の構造改革に適した安全網の整備>
不良債権処理に関係する業界との連携による労働移動の円滑化
労働者派遣・職業紹介の規制改革

【Add 2001. 5.20】

  確定拠出年金法 今国会で成立の公算 衆院厚労委、25日審議入り

2001/ 5/19 日本経済新聞朝刊

   確定拠出年金(日本版401k)法案が今国会で成立する公算が大きくなった。衆院厚生労働委員会は18日の理事会で、25日から同法案の実質審議に入ることを決定、昨秋からたなざらしの状態が続いていた法案の審議日程が固まった。6月中旬には衆院を通過、6月29日の会期末までに衆院で可決・成立し、10月にも実施されるとの見方が有力。金融機関や企業の間で確定拠出年金導入に向けた動きが加速しそうだ。
 確定拠出年金は毎月一定の掛け金を積み立て、その運用成績に応じて将来受け取る年金額が変動する仕組み。企業が導入し従業員が加入する方式と、導入しない企業の従業員や自営業者の個人で加入する方式がある。加入者は積立金の運用方法を自分で選ぶ。
 企業が現在、従業員のために導入している年金制度は将来の年金額をあらかじめ決める確定給付型だ。運用の失敗などで年金資産が減少した場合には企業に穴埋めの義務がある。ここ数年は株式相場の低迷などから企業の負担が増加したため、経済界は確定拠出年金法の成立を要望していた。
 確定拠出年金法案は昨年秋の臨時国会に提出されたが、委員会で実質審議に入ることなく継続審議となっていた。
 今国会でも自民党総裁選の影響で、1ヶ月近く審議ができず、一時は成立が危ぶまれていた。
高齢者だけの世帯 600万突破 厚労省まとめ

2001/ 5/18 日本経済新聞朝刊

  子供のいる世帯28% 人数も最低1.75人
 65歳以上の高齢者だけの世帯が初めて600万世帯を突破したことが17日、厚生労働省がまとめた2000年国民生活基礎調査で分かった。25年前(1975年)に比べると約6倍で、7世帯に1世帯の割合。高齢者の1人暮らしは307万世帯で過去最高だった。高齢者世帯の増加は、少子化に伴う現役世代の減少とともに、社会保障や医療、介護保険などの面で重い課題となりそうだ。
 調査は昨年6月と7月、全国約56,000世帯を対象に実施、49,000世帯から回答を得て、全国値を推計した。
 それによると、全国の世帯数は約4,554万5,000世帯で、高齢者だけの世帯は624万世帯(13.7%)。18歳未満の未婚同居者がいる場合も合わせた「高齢者世帯」は626万1,000世帯(同)だった。307万9,000世帯は高齢者が1人で生活する世帯で、前年より約37万世帯増加した。高齢者世帯の約6割強は公的年金や恩給だけで生計を立て、平均所得は約328万9,000円(2.0%)減少した。
 一方、高齢者と一緒に暮らす世帯が34.4%と3世帯に1世帯を超した。18歳未満の子供がいる世帯は28.7%、子供の数は平均1.75人で、いずれも過去最低。世帯数は75年の53.0%から大きく減少し、初めて3割を割り込んだ前年をさらに下回った。

【Add 2001. 5.13】

  失業手当受給者 10年ぶりに減少 昨年度3.6%減

2001/ 5/13 日本経済新聞朝刊

   厚生労働省がまとめた2000年度の雇用保険の実績によると、同年度の失業手当の受給者(月間ベースの平均)は前年度比3.6%減の1,029,000人と10年ぶりに減少した。完全失業率は年度平均4.7%と高水準が続いているものの、失業者数が前年度よりわずかに減ったのが主因だ。
 失業手当は失業者に離職前賃金の約6割を一定期間(最大330日)支給する仕組みで、労使が折半で負担する保険料が主な財源だ。受給者数は「基本手当」と呼ばれる給付を受けた人数で、1991年度から9年連続して増えてきたが、2000年度は前年度より約4万人減った。
 また、全国の公共職業安定所で基本手当の受給資格があると認められた件数は前年度比0.3%減の約249万件、手当を初めて受けた人数は同3.1%減の210万人だった。
 2000年度の完全失業率は平均4.7%と前年度と同水準だが、完全失業者数は前年度より減り、失業手当の受給者数の減少につながった。ただ、厚生労働省は「100万人を上回る受給者数はなお高水準」(職業安定局)とみている。

【Add 2001. 5.12】

  国民年金の空洞化加速 99年末調査

2001/ 5/12 日本経済新聞朝刊

  滞納・未加入364万人 若者目立つ 3年で34万人増
 社会保険庁は11日、1999年末時点で調査した国民年金加入者の実態調査結果をまとめた。国民年金の保険料を2年以上滞納している人と制度に加入していない人の合計は対象者の約16%に当たる364万人で、96年末の前回調査より34万人増えた。若い世代を中心に公的年金への不信感が高まっているほか、景気低迷の影響で保険料の負担感が重くなっていることが原因だ。保険料未納が増えれば年金財政は悪化するので、年金制度の見直し議論が高まる見通しだ。
 国民年金には自営業者や学生が加入者しており、加入者は約2,120万人。現在の保険料月額は13,300円で、40年間払い続ければ、65歳から月約67,000円の年金を受け取る。滞納者は年金受給年齢に達するまでに応じた年金を受け取る。未加入者には年金はでない。
 調査によると、制度には加入しているものの過去2年間に1度も保険料を納めていない滞納者は265万人。前回調査より92万人増加した。
 制度への未加入者は99万人で59万人減った。1995年から未加入者に一方的に年金手帳を送り加入者として扱ったため、統計上の未加入者は減ったが、その大半は保険料を払っていない。
 社会保険庁が滞納者の収入状況を調べたところ、保険料納付者と大きな格差はないこともわかった。滞納者の13%は民間保険会社の個人年金に加入し、月平均16,000円の保険料も支払っていた。「国民年金保険料の負担能力はある」(社会保険庁)が、年金不信と不況が相まって払わない人が増えているようだ。実際、滞納理由を聞いたところ「国民年金をあてにしていない」との回答が20-30歳代を中心に目立った。
 国民年金には満額の年金の3分の1を受給できる保険料免除者もいる。免除者は主に所得の低い人で、現時点で約443万人。滞納・未加入と保険料免除を合わせると、国民年金加入対象者のうちの3割以上が保険料を払っていない。

公的年金加入者の状況

国民年金加入対象者 2217万人

未加入者 99万人(4.5%) 滞納者 265万人(12.0%) 免除者 443万人(20.0%) 保険料納付者 1410万人(63.6%)
新卒の就職率が改善

2001/ 5/12 日本経済新聞朝刊

  大学・高校は4年ぶり 未就職者1万人減る
 今春卒業した大学生の就職率は91.9%で、昨春を0.8ポイント上回ったことが11日、文部科学、厚生労働両省の調査で分かった。前年を上回ったのは4年ぶり。短大生(女子)も同2.8ポイント増の86.8%と2年ぶりに前年を上回った。高卒の就職率も4年ぶりの上昇に転じ、89.2%と過去最低だった前年同期を1.0ポイント上回った。この結果、大卒、短大卒、高卒のみ就職者は合計で約7万2,000人になったとみられ、昨春より約1万人少なくなった。
 大卒と短大卒の調査は、国公私立大学、短大、高等専門学校計88校の卒業者5,300人を抽出して4月1日時点で実施した。
 就職を希望する大学生は全体の64.3%おり、前年同期比1.6ポイント増加した。就職希望者のうち就職が決まったのは、男子が同0.4ポイント増の92.3%。女子が1.7ポイント増の91.2%だった。
 累計では、調査時点で就職していない大学生が約2万8,000人(男子1万5,000人、女子1万3,000人)、短大生は1万5,000人。合わせて約4万3,000人で、昨春より約7,000人減った。
 一方、文部科学省が今春卒業した全ての高校生を対象に実施した調査では、就職率(3月末時点)は89.2%。過去最低だった前年を1.0ポイント上回った。未就職者は2万9,000人で、前年より3,000人減った。
雇用創出 5年で530万人

2001/ 5/12 日本経済新聞朝刊

  経済諮問会議緊急報告 9分野規制緩和 提言
 経済財政諮問会議の専門調査会(会長・牛尾治朗ウシオ電機会長)は11日、サービス部門の雇用拡大に関する緊急報告を発表した。家事代行などの個人・家庭向けサービスや高齢者ケア、医療など9分野で規制緩和を進め、今後5年で約530万人の雇用を新たに創出する目標を提示。具体案として大学の学部・学科設置の自由化、転職や再就職を円滑するための人材派遣の期間延長なども提言した。
 報告の原案は「健康増進サービス」、「コミュニティサービス」など11分野で計500万人の雇用創出策を示していたが、新たに司法試験合格者数の拡大など「司法サービス」を追加して9分野に整理。雇用創出人数も約30万人上積みした。
 9分野の中で最大の雇用増加を見込んだのは個人・家庭向けサービス。家事代行のほか、医療情報の提供サービス、個人の資産運用など生活に密着したサービスを指す。
 「企業・団体向けサービス」は主に情報技術(IT)を活用した企業の顧客管理、物流支援、人材派遣など。住宅関連ではリフォーム、不動産の評価といったサービスを例示した。
 報告はこうした雇用拡大を実現するための規制改革や制度改革の具体策を盛り込んだ。
 例えば規制改革では、保育所、比較的軽度の介護が必要な高齢者向けのケアハウスについて、地方自治体が設立し運営を民間企業にゆだねる「公設民営方式」を拡充すべきだと提言した。
高齢者医療費 重い負担 健保連が改革案試算

2001/ 5/11 日本経済新聞朝刊

   健康保険組合連合会は10日、高齢者医療費の負担制度を改革した場合の医療保険財政の見通しをまとめた。試算によると、高齢者だけが加入する独立型の医療保険制度をつくる案と、サラリーマンと自営業者らを分けグループ内で高齢者医療費を賄う案のいずれでも、今後数年のうちに健康保険組合など大半の医療保険制度が赤字になる。健保連は「医療保険の安定には医療費抑制が不可欠」と指摘している。
 試算は高齢者医療費が今後も過去数年と同じ程度の伸びを続け、現役世代の賃金は据え置くなどの前提で実施した。75歳以上の高齢者だけの独立保険を設け、この高齢者医療費の9割を公費(税金)で賄う日本医師会の案を採用すると、健保組合などは全体で当面黒字になる。しかし70-75歳の医療費負担が膨らむことなどから、2005年には大半の医療保険制度が赤字に転じる。
 サラリーマンと自営業者を分けて65歳以上の高齢者医療費の半分を公費で負担する健保連案でも2005年には大半の医療保険制度が赤字になる。
経済構造改革 雇用創出策など強化 経産相、行動計画を拡充

2001/ 5/11 日本経済新聞朝刊

   平沼赳夫経済産業相は10日、昨年11月に決めた経済構造改革の行動計画を拡充するとともに、効果が大きい分野を重点的に実施する方針を決めた。関係省庁と連携し、情報通信、医療・福祉、環境などの規制緩和による市場創出や、ベンチャー企業振興などによる雇用創出を進める。11日に閣議決定して設置される「産業構造改革・雇用対策本部」で「平沼プラン」として提言し、小泉純一郎首相が提唱する構造改革の具体化を急ぐ考えだ。
 不良債権処理により失業者の増加が懸念されるため、新たな市場と雇用機会の創出に役立つ対策を強化する。情報通信では一段の競争促進や電子商取引の法整備により、新規事業者のビジネスチャンスを拡大。病院、認可保育所、老人介護施設への民間企業の参入を促す。自動車リサイクルの法制化による環境ビジネス拡大も検討する。
 産業競争力の強化や新規産業の育成に役立つような分野には、重点的に法整備や財政支援をしていく考えだ。
医療保険改革 財源、全額保険料に

2001/ 5/10 日本経済新聞朝刊

  経済同友会が独自案 給付外は民間活用
 経済同友会は独自の医療保険制度改革案をまとめた。現在の公的保険の給付範囲を縮小して基本的な診療に限定。これに上乗せする追加の診療サービスは民間の生命保険や損害保険で対応するという二階建ての保険方式を提言している。公的保険の財源は全額、保険料で調達する「純粋保険方式」を採用し、税金投入は極めて限定するように提唱している。
 年間約30兆円にのぼる国民医療費は現在、5割強を保険料、3割強を税金による公費で負担している。同友会は「現行制度では患者や医師の都合で医療費が無駄遣いされている面がある」との判断から原則として公費負担をなくす仕組みを提案した。生活保護を受けているなどに限って税金による「基金」を設立し、保険料を貸し付けられるようにする。
 国民健康保険や主に中小企業の従業員が加入する政府管掌健康保険については、地域単位で10万-50万人程度の加入者を確保できる程度に再編することを求めている。1つの保険の規模を大きくして保険財政を安定させて、保険財政の収支均衡を義務づけるという。
 公的保険に上乗せする民間保険の給付対象としては、先進的医療・画期的な新薬、遺伝子診断や予防診断、健康診断、患者による病室や食事の選択などを挙げた。こうしたサービスは利用者が保険プランを自由に選択できる利点があるとしている。
 経団連と日経連は高齢者だけが加入する独立した医療保険制度を創設し、公費と高齢者の負担を増やす案をまとめている。
2001年春闘賃上げ 1.92%、最低更新 本社最終集計

2001/ 5/10 日本経済新聞朝刊

   日本経済新聞社は9日、2001年春闘の賃上げ調査最終集計結果(対象890社、4月26日現在)をまとめた。平均賃上げ率は1.92%で、初めて2%を割り込んだ前年実績を下回り、4年連続で過去最低を更新した。自動車、電機など製造業は業績回復を背景に低下に一定の歯止めをかけたものの、建設や流通など非製造業の人件費抑制傾向が強まった結果、産業界全体の賃上げ率を押し下げた。
 平均賃上げ額は5,752円。前年の賃上げ率は1.95%、賃上げ額は5,812円だった。製造業19業種のうち業績回復を果たした自動車、電機、造船など11業種の賃上げ率が前年を上回り、製造業全体の賃上げ率は前年比0.01ポイント減の1.99%。
 非製造業では19業種のうち商社、海運などを除く15業種の賃上げ率が前年を下回った。特に建設(前年比0.17ポイント減の1.59%)、百貨店・スーパー(0.12ポイント減の2.04%)などの下げ幅が大きい。
人材派遣料金 能力で格差

2001/ 5/ 9 日本経済新聞朝刊

  同一職種で多様化 IT知識・企画力 高い評価
 人材派遣料金が派遣スタッフ個人の成果を反映する能力主義型に切り替わる。派遣各社とユーザー企業が妥結した春の料金改定をみると、職種によってはほぼ同水準だった料金体系が崩れ、同職種の中でも専門能力に優れる人材の料金が上昇。派遣スタッフ間の料金格差が拡大した。企業は人件費を抑制するため、正社員数の削減に動いている。即戦力として派遣スタッフを選別、料金に格差をつける流れが加速している。
 料金改定はパソナ(東京・千代田)、テンプスタッフ(東京・渋谷)、マンパワー・ジャパン(東京・千代田)など大手人材派遣会社と派遣先企業間で協議。従来は春闘結果にほぼ連動し、職種ごとにベースアップ率が決まっていたが、今年は派遣スタッフ個人の能力を基準に派遣料金を交渉する個別交渉に変わった。
 職種よりも派遣スタッフ個人の料金交渉を重視するのは、1人の派遣スタッフに複数の能力を要求するケースが増えていることもある。例えば、IT関連の知識と営業経験の両方を必要とするようなケースの場合、従来の職種分類に当てはめて料金を設定することが難しく、個人ごとの料金設定にならざるを得ない。
 職種別で料金水準をみると、需要がおう盛な情報技術(IT)や金融・証券関連が堅調だ。システムエンジニア(SE)も人材派遣市場での人材不足を反映して料金は高値を続けている。インターネットの利用拡大でコンピューターシステムを導入したり、大規模に変更する企業が多い。プログラムの計画から開発までを一貫して担当できる「プロジェクトマネジャー」のレベルの人材は不足感が強く、5,000円を超す水準が定着している。1999年12月に解禁された営業職も需要が急増、料金はじり高傾向を見せている。
 一貫して上昇基調を続けた昨年と異なり、一部で天井感が出ており、「当面は横ばいが続く」(テンプスタッフ)との見方が強い。
 職務内容の違いで料金格差が開く動きも広がっている。アシスタントとリーダーの場合、両者の料金に1,000円以上の差がつく例もある。昨年に比べ需要が倍増している営業職を例にみると、顧客の新規開拓を伴わないルートセールスの料金は2,300円前後(首都圏、1時間当たり、交通費含まず)。これに対し営業の企画立案が出来、IT知識保有者になると5,000円を超すケースもある。
 料金が上昇しているにもかかわらず、引き合いが強いのは受け入れ先の企業が人材の一時的な補充という観点を捨て、「どれだけ会社に利益をもたらしたかを評価するようになってきた(上田宗央パソナ社長)ためとみられる。
 一般事務やファイリング(文書の整理)などの職種は据え置かれるケースが目立つ。企業の人件費削減の影響を最も受けている。
 人材派遣は専門性の高い職種に限定されたサービスだったが、人材派遣の重要性が高まるにつれ、求められる派遣スタッフの能力も多様化。職種分類で料金を決めることが難しくなっている。付加価値が高い人材の料金は今後も上昇する可能性が強く、格差拡大の流れは止まりそうもない。
高齢者医療保険を分離

2001/ 5/ 8 日本経済新聞朝刊

  経団連・日経連統一案 健保の拠出金廃止
 経団連と日経連が共同でまとめた医療制度改革の統一案の内容が7日明らかになった。高齢者だけが加入する独立した医療保険制度を創設、現役世代の保険制度とは完全に切り離すのが柱。現行では企業の健康保険組合などが高齢者の医療費を賄うため支払う拠出金が増大する一方のため、拠出金がない独立型にする。拠出金の代わりに公費(税金)と高齢者の負担を増やす。経済界が共同歩調をとることで独立型が2002年度に予定される医療制度改革の有力案となる可能性が出てきた。
公費と自己負担増やす
 経団連と日経連の統一案は経済財政諮問会議のメンバーでもある奥田碩・日経連会長が同会議で月内にも提案する。独立型は日本医師会も同様な提案をしているほか、全国の健保組合の上部団体である健康保険組合連合会にも指示する意見があり、関係者の中では多数派となりつつある。厚生労働省でも「有力な選択肢のひとつとして参考にしたい」(幹部)としている。
 70歳以上の高齢者が使う医療費は現在、「老人保健制度」で賄っている。高齢者医療費の約6割を健康保険組合、中小企業の従業員のための政府管掌健康保険、自営業者らが加入する国民健康保険などが拠出金として負担。残りが公費と患者負担になっている。
 人口の高齢化で高齢者医療費が急増。すでに年間約10兆円に達しており、老人保健制度の仕組みに限界が見え始めている。健保組合では主に拠出金負担のために財政が悪化。1999年度では全組合の7割が赤字の状態だ。財政の穴を埋めるため、労使で原則折半する健康保険料を引き上げる必要に迫られている。
 経団連と日経連の統一提案では拠出金を廃止、健保財政悪化に歯止めをかける。高齢者だけが加入する医療保険制度は使った医療費の大半を公費で負担、残りを高齢者の保険料と治療を受けたときの自己負担で賄う仕組みだ。公費の割合については合意していないが、5-8割で調整する。8割を公費で賄うとすると約5兆円の歳出増につながる計算で、財源については消費税率引き上げなどでの対応を求めている。加入する年齢は当面70歳とし、最終的に65歳まで引き下げる方向で検討する。
 両団体は高齢者だけの医療保険制度とすることで、高齢者から保険料や患者負担が取りやすくなると見ている。高齢者保険は原則として市町村が運営する形とすることで、市町村が医療費の抑制など独自の対応もとりやすくなる。
 日経連はこれまで自営業者とサラリーマンを分離、それぞれの現役世代がOBの医療費を負担する改革案を主張していた。しかし、来年5月の経団連との統合に向け、「従来案では雇用の流動化に対応できない」などの理由から独立型に転換した。ただ独立型では公費の投入が現行制度に比べ大幅に増えるため、財務省は難色を示す可能性が大きい。

【Add 2001. 5. 6】

  在宅介護も実態調査へ 厚労省 要介護度判定を見直し

2001/ 5/ 6 日本経済新聞朝刊

   厚生労働省は6月に初の本格的な在宅介護実態調査を実施する。高齢者の状態別に家庭内でどのような介護が実施されているかを調べ、介護保険で介護の必要度を判定するシステムの見直しの参考とする。現在の要介護度の判定システムは介護施設での介護実態だけを基につくられており、在宅介護も踏まえて見直すべきだとの声があった。
 調査は介護保険の適用を受けている全国約1,000人の高齢者を対象に実施する。対象者宅では7日間にわたって介護を担っている家族やホームヘルパーらが10分単位でどのような介護を実施したかを記録する。家事をしながら高齢者を見守るというような状態も調べる。
 現在の要介護度の判定は高齢者の状態についての調査結果をコンピューターにかけて出てくる1次判定と、医師の所見などを合わせて専門家で議論する2次判定からなる。1次判定については痴ほうの状態が軽く判定される傾向があるなどの問題点が指摘されていた。
 このため、厚労省では在宅介護の実態を調査するとともに、介護施設での調査も改めて実施、1次判定システムの改良に生かす方針だ。施設介護の実態調査は2-3月に全国約4,500人を対象にすでに終了している。今年度中には判定ソフトの改良版をつくり、テストする考えだ。
労災死亡2000人割れ 昨年3年連続

2001/ 5/ 4 日本経済新聞朝刊

   2000年労働災害で死亡した人が3年連続で2000人を下回ったことが3日、厚生労働省のまとめでわかった。死亡者数は1,889人で、前年と比べ103人、5.2%減った。同省は安全衛生方針・目標の設定や計画の作成・実施などを盛り込んだ「労働安全衛生マネジメントシステム」の普及など総合的な安全対策を促していく方針だ。
 志望者を業種別でみると建設業が731人(全体の38.7%)と最も多く、次いで製造業の323人(同17.1%)、陸上貨物輸送の271人(同14.3%)。これら3業種で7割を占める。
 発生原因では陸上貨物輸送などの「道路上の交通事故」が590人、建設業などの「高所からの墜落・転落」が453人で、両者を合わせ全体の55.2%になった。
事業別賃金、全社員に

2001/ 5/ 2 日本経済新聞朝刊

  東芝 部門トップに権限
日立 業績に応じて格差


 電機大手が全社一律の賃金体系の見直しに着手する。東芝は全従業員を対象に、社内カンパニーが給与・賞与の支給基準を業績に応じて独自に設定する。日立製作所も事業グループごとに賃金制度を再構築する。業績の好調な事業や成長分野に配分を厚くする一方、市場が縮小している事業は人件費を抑える狙い。春闘相場のリード役を果たす両者が硬直的な賃金制度の改革に乗り出す中で、事業の統廃合を進める鉄鋼や造船・機械各社にも事業別賃金を導入する動きが出始めた。

最近の主な企業の賃金改革
ソニー 2000年7月から部長級を対象に役職に応じて給与を決める役割給を導入
富士通 2001年度から仕事の過程での評価も昇進・昇給に反映
日産自動車 4月から退職金に成果主義を反映
トヨタ自動車 1999年10月から事務・技術職を対象に能力給の比重を高める賃金制度を導入
川崎重工業 賞与に事業部門の業績を連動させる方向で検討を開始
三井造船 2000年度から全従業員を対象に事業部門の損益を一時金に反映させる仕組みを導入
新日本製鉄 労働組合が業績連動型の一時金導入を提案

 東芝は基準内賃金を含む給与体系、賞与の決定権を各カンパニーに委譲する制度を労働組合に正式提案した。管理職だけでなく、工場の現業職場を含めた全従業員が対象。能力給の導入比率、年俸制の導入、業績評価の基準などを各カンパニーの社長らのスタッフが決める。賃金の原資は各カンパニーの業績に合わせて配分する。
 これまで管理職については全面的に成果主義の賃金制度を導入。ただ「成果」の評価基準は全社一律で、同一の資格・等級の場合は、どのカンパニーに所属していても同じ賃金だった。賞与については一部カンパニーごとの業績を反映させていたが、成長分野では専門企業に比べ雇用条件が見劣りする場合もあった。具体的な改革の中身や実施時期は決めていないが、経営側は早ければ今年度内に導入を決めたい考え。東芝労組は「これから受け入れるかどうかの検討を始める」という。
 日立は今春闘で「事業グループそれぞれが担当している市場に最も適した賃金水準にしたい」との考え方を組合側に伝えた。社内カンパニーに相当する14の事業グループでは、市場が縮小している重電や家電、戦略分野と位置付けている情報関連機器も同一の賃金体系を導入していた。今後、各事業グループごとの業績や業界の平均的な賃金水準に応じて賃金格差を設ける構想だ。
 現在、組合とは具体的な交渉はしていないが、将来は持株会社への移行も検討しており、その移行時期や持株会社設立の方法などとも合わせて賃金制度を変更したい考えだ。
 一方、NECは2002年4月に導入する新賃金制度で各カンパニーの権限を拡大。年功を反映した資格給を廃止し、ポストや仕事の中身で賃金を決める「役割給」を導入するが、役割ごとの賃金水準は各カンパニーが設定する。
 部門別賃金制度が導入されれば、35歳技能職モデルをベースに決めていた電機業界一律の春闘方式の賃金交渉は成立しなくなる。組合側も「事業ごとに異なる賃金制度を導入するのは時代の流れ」(電機連合・鈴木勝利委員長)と基本的には交渉の用意があるとの姿勢を示している。
 電機大手以外では、日立造船が5月から造船部門の約2,200人を対象に独自の賃金体系を導入。他部門に比べ平均約5%賃金を削減する予定。住友金属工業も2002年10月をメドに社内を綱板、鋼管など品種ごとに分社し、それぞれ別の賃金制度を導入する。
規制緩和 雇用500万人創出

2001/ 5/ 1 日本経済新聞朝刊

  教育・福祉など市場拡大を促す 経済諮問会議提言案

 政府の経済諮問会議が国の新しい政策目標として検討している雇用創出の提言案が明らかになった。規制緩和により教育、福祉、医療など11の分野で市場を拡大し、日本経済のサービス化を加速させて約500万人の雇用を新たに生み出すという目標を提示。規制見直しの具体策として大学の学部・学科設置を自由化したり、保育所に補助金を支給する代わりに利用者に直接補助する「保育クーポン」を創設することなどを求めている。諮問会議は2002年度から具体的な雇用創出策をスタートさせ、早ければ5年程度での目標達成をめざす。

 雇用創出の新政策目標は産業構造の転換を促して製造業や建設業などの余剰人員を吸収するとともに、高齢者や女性が働きやすい職場を増やして少子化に伴う労働人口の減少を補うのがねらい。提言案は経済財政諮問会議の下部組織「サービス部門の雇用拡大を戦略とする経済活性化に関する専門調査会」(会長・牛尾治朗ウシオ電機会長)がまとめ、同会議が6月中にまとめる2002年度の経済・財政運営に関する基本方針に盛り込む。
 提言案が挙げた11分野のうち高い雇用創出効果を見込んでいるのは、スポーツなどの健康増進サービスや人材派遣をはじめとする企業向けサービス。これらの分野は既に産業として育ちつつあり、規制緩和で一段と市場を拡大する。
 一方、教育、子育て、医療などの分野は民間の参入が難しく産業化が遅れているため、参入規制の緩和などで事業機会を広げ、雇用創出につなげる。
 大学の学部・学科の設置、学部の定員は現在、文部科学省から認可を得る必要があるが、届け出だけで済むようにする。「敷地面積は校舎面積の3倍以上」といった設置基準も撤廃する。社会人の再教育や生涯教育などのニーズを拾いやすいようにして、新しいタイプの教育産業を育てる。
 保育クーポンは自動を保育所の預けたい保護者に割引券を配り保育所を自分で選べるようにする仕組み。提言案はクーポンを導入する代わり、厚生労働省が認可した保育所に対し実施している公費助成を廃止する方向も打ち出している。
 保育所はいまでも保護者が選べるが、公費助成で保育料が割安になっている認可保育所に入りたい場合は市区町村に希望を出さなければならず、結果として保育所間の競争は制限されている。クーポン制度で事業者間の競争を促せば、多様な育児サービスが生まれてくることが期待される。
 医療分野では、株式発行による資金調達を事業者に解禁し、民間企業でも参入できるようにすることなどを求めている。
 提言案は雇用構造の改革も盛り込んでいる。転職を円滑に進めるための税制見直し案を例示した。

経済財政諮問会議の専門調査会の「サービス産業と雇用創出のシナリオ」
個人向け、家庭向けサービス

55万人

人材派遣、情報技術(IT)関連などの企業向けサービス

80万人

住宅サービス

40万人

健康増進サービス

140万人

タクシーなどの生活空間移動サービス

45万人

地方の特色を生かす「コミュニティ・ビジネス」

10万人

介護など高齢者ケアサービス

20万人

子育てサービス

51万人

教育(生涯教育、社会教育)サービス

4万人

医療サービスの効率化、透明化

25万人

環境関連サービス

30万人

【Add 2001. 4.29】

  高齢者医療費の抑制 切り札は温泉

2001/ 4/29 日本経済新聞朝刊

  診療所併設で効果 国保中央会が報告書

 自営業者らが加入する国民健康保険の上部団体である国民健康保険中央会は、温泉の活用で高齢者の医療費を抑制することができるという報告書をまとめた。全国の温泉地を調査したところ、温泉施設で健康相談を実施したり、診療所を併設したりしている自治体の高齢者医療費が減っている例が多いことがわかった。中央会では「全体の約7割の市町村に温泉があることから、これをうまく活用すべきだ」と話している。
 中央会では温泉を活用した保険事業を実施している全国252市町村の状況を調査し、報告書をまとめた。
 温泉施設に診療所が併設されており、医療的なアドバイスを気軽に受けることができる長野県北御牧村は1994年から97年の間に70歳以上の高齢者1人あたり医療費が約17%減少した。保健婦が温泉に出向いて検診を実施している北海道奈井江町では約4%減った。全般的に「高齢者医療費が減っているケースが目立った」という。
 調査研究会の委員長を務めた医事評論家の水野肇氏は「病院ではなく、温泉施設を高齢者が集まる地域のサロンとして活用するだけでも医療費抑制の効果がある」と話している。
「職場の人間関係」やはり悩みの首位 労働福祉事業団、電話相談を集計

2001/ 4/29 日本経済新聞朝刊

   全国39の労災病院を運営する労働福祉事業団(若林之矩理事長)は28日、昨年4月から実施している「勤労者 心の電話相談」の相談内容などをまとめた。この1年間の相談内容(複数相談)は職場に関するものが多く、「上司との人間関係」が相談総数(3,721件)の12.8%を占めた。「同僚との人間関係」に悩んでいる人は9.8%。「社内でのいじめ」に遭っている人も3.3%いた。
 集計を踏まえ、同事業団は現在11ヶ所の電話相談解説病院を増やすとともに、労災病院に設置しているメンタルヘルスセンターでの対面式カウンセリングなども活用し、働く人の心の健康対策を拡充していく方針だ。
 相談者は女性が多く約60%。職種では事務職が約17%と最も多かった。
 症状(複数相談)は「将来に対する不安」が相談総数の28.9%で最多。次いで「落ち着けない」(21.2%)、「イライラ・不安」(17.9%)、「不眠」(15.9%)と続いた。「自殺願望(自殺せざるを得ないと思い込むこと)」も5.3%あった。
失業1年以上最多の83万人 再就職難を反映

2001/ 4/28 日本経済新聞朝刊

   総務省が27日発表した2月の労働力特別調査によると、失業期間が1年以上に及び完全失業者の数は83万人(前年同月比10万人増)と調査開始以来の過去最高を更新した。完全失業者全体の26.1%を占め、約4人に1人が1年以上の長期にわたって失業生活をおくっている。
 失業期間が3ヶ月未満の失業者数の比率は39.3%と前年同月と比べ3.2ポイント上昇した。
 半面、「3-6ヶ月未満」と「6ヶ月-1年未満」の失業者の比率は低下している。
 厚生労働省は「同じ失業者でも個人の能力や意欲の違いによって、短期間の失業期間を経て再就職できる層と、失業してから長期間再就職できずに滞留している層に分かれ始めた」とみている。
 一方、非労働力人口のうち仕事に就くことを希望している人は982万人と前年同月比41万人減少した。仕事に就くことを希望していても仕事を探していないと失業者とみなされない。就業希望者のうち「適当な仕事がありそうにない」との理由で求職活動をしていない「潜在的失業者」は420万人となり、前年同月より25万人減った。
雇用差別今も根強く 面接で女性に「結婚後は?」

2001/ 4/28 日本経済新聞朝刊

  厚労省調査 大卒の3割経験

 募集・採用などでの男女差別を禁止した改正男女雇用機会均等法が1999年4月に施行されたが、依然として採用時や勤務先での差別的な行為がなくなっていないことが、厚生労働省が27日まとめた調査で明らかになった。面接時に、結婚や出産後も働き続けるかどうか聞かれた体験を持つ大卒女性は3割以上。同省は改正法が浸透していないとして、6月にもルールブックを10万部作製、全国の企業に配布する方針だ。
 調査は2000年3月に大学や短大を卒業した男女約11,000人が対象。入社半年後の同年10月に実施、2,237人から回答があった。
 大卒女性が就職中に出合った差別的行為(複数回答)は、「面接の時、「結婚や出産をしても働き続けますか」ということを女性にだけ質問した」が32.9%と最多。「女性には会社案内を送付しない企業があった」(28.6%)、「男女で募集人数が異なった」(28.3%)も多く、改正法施行後も様々な形で女性に対する差別が残っていることがうかがえる。
 また、就職先での男女差別(複数回答)では34.2%が「女性の管理職、役職者がほとんどいない」。次いで「女性のみに制服が支給されている」(30.9%)が続いた。「女性は結婚・出産を機に退職する慣行がある」を挙げた人も15.7%あり、改正法で禁止している女性の結婚・出産退職慣行が建設業、卸・小売り・飲食店、金融・保険業などで根強く残っている実態が浮かび上がっている。
同期入社の賃金格差広がる

2001/ 4/28 日本経済新聞朝刊

  人事院外郭団体調査 能力主義が浸透

 50歳で年収格差400万円以上の企業は3割増--。企業の人事評価で能力・実績主義が浸透したことで、同期入社社員の間で賃金や昇進の格差が広がっていることが、人事院の外郭団体の調査で27日分かった。業績などを理由に昇進に格差をつけている企業は全体の97.2%に上り、従来型の年功序列の人事制度が崩れている実態が浮き彫りになっている。
 財団法人の日本人事行政研究所が2000年10月に、東証一部上場企業を中心に1,089社を対象にアンケート方式で調査した。回答率は26.7%。
 同期入社間の賃金格差を、「ここ数年間に拡大するようにした」との企業は全体の63.0%に上り、前回調査(1997年)に比べて19.3ポイント増加した。今後についても「拡大させる方向」という回答が同5.4ポイント増の78.7%に達した。
 実際の年収での賃金格差を聞いたところ、30歳代では「50万円未満」が55.6%と最多だったが、40歳代では「50万円以上100万円未満」が30.8%、50歳代では「400万円以上」が32.3%でそれぞれトップに。
 年齢を追うごとに確実に賃金格差が広がっている傾向が浮き彫りになった。
高額医療費 最高の98件 1ヶ月1000万円超

2001/ 4/27 日本経済新聞朝刊

  健保連の昨年度調査 500万円超も15%増

 全国の健康保険組合の上部団体である健康保険組合連合会は26日、2000年度中に健保組合加入者が使った高額医療費の状況をまとめた。1ヶ月の医療費が1000万円を超えた事例は前年度より8件増の98件と過去最高になった。500万円以上の事例も前年度比15%増の2,339件で最多だった。健保連では医療技術の高度化が進んだことが高額医療の増加の理由と見ている。
 1ヶ月の医療費が最も高かったのは拡張型心筋症で1,951万円。約7割が手術費だった。1ヶ月に1,000万円を超えた98のケースを見ると、心臓・循環器系の病気の場合が50件と過半数を占める。健保連では「多額の医療費を使った月から2-3ヶ月のうちに亡くなることも多い」としている。
 多額の医療費を使っても患者の自己負担には一定の限度額があり、大部分は健保組合が負担する。規模の小さい健保組合などは高額療養費の事例が出ると財政破たんしかねないため、健保連は全国の健保組合から集めた保険料の一部で支援を実施している。

【Add 2001. 4.20】

  「中途採用が主体」55% 外資系、即戦力重視さらに 厚生労働省アンケート

2001/ 4/20 日本経済新聞朝刊

   外資系企業が日本の国内で人材を採用する際、就業経験のある人を中途採用する傾向が強まっていることが厚生労働省のアンケート調査でわかった。「中途採用が主体」と答えた企業の割合は55.0%に達し、1995年の前回調査と比べて13.1ポイント高まった。「新卒と中途採用を併用」「新卒主体」という企業は減っており、外資系は即戦力重視の傾向を一段と鮮明にしている。
 調査は昨年12月、外国資本の比率が3分の1を上回る日本法人や外国法人の日本支店、出張所など約500社を対象に実施した。有効回答率は40.1%。それによると、「新卒・中途を併用」と回答したのは17.4%で前回調査から8.0ポイント低下した。「新卒主体」は全体の3.2%。「中途採用主体」と答えた企業に理由(複数回答)を聞いたところ、85.9%の企業が「即戦力を採用するため」と回答した。「欠員補充しかない」が39.9%、「新卒は訓練コストがかかる」が26.5%あった。
来春の採用 大卒18.7%増 本社最終集計

2001/ 4/19 日本経済新聞朝刊

   日本経済新聞社が18日にまとめた2002年度の採用計画調査(4月10日現在)の最終集計によると、主要企業の大学新卒採用は前年度比18.7%増と大幅に伸びた。高卒採用の伸びはマイナスになったが、企業の採用意欲は大卒理工系を中心に強く、全体でも12.6%増と2年連続で伸びた。
 通年で採用する動きも定着してきた。「実施中または計画中」と回答した企業は35.7%。前年調査の29.2%からさらに伸びた。業種別で見ると、医薬品で55.6%、電機で51.4%、自動車・部品で44.0%の企業が通年採用を積極化している。

2002年度の新卒採用計画(伸び率%、▼は減)

 

採用確定社数

採用予定人数

前年度比伸び率

<総合計>

1,599

101,367

12.6

大卒合計

1,683

80,546

18.7

 文科系

992

13,412

12.7

 理工系

996

23,859

23.7

短大・専門学校・高専卒計

1,381

9,646

7.8

高卒計

1,679

12,139

▼6.5

【Add 2001. 4.18】

  建設業向け 再就職支援

2001/ 4/18 日本経済新聞朝刊

  他産業に人材紹介 厚生労働省 不良債権処理に備え

 厚生労働省は建設業就業者の転職や失業後の再就職の支援に乗り出す。建設業の業界団体、全国建設業協会(全建、銭高一善会長)と協力して雇用安定支援推進委員会を新設し、ゼネコン(総合建設会社)や中小の建設会社の従業員の受け入れ先企業を見つけやすくするための情報提供の仕組みを整える。不良債権の最終処理に伴う失業者の増大に備えるのが狙いだ。
 雇用安定支援推進委員会は会員の建設会社(約31,000社、就業者数約130万人)に人材情報の提供を要請。各都道府県の協会が集めた情報を、厚生労働省の外郭団体である財団法人、産業雇用安定センターに集め、センターが他産業の求人企業に出向や転職をあっせんする。
 建設業就業者には資格や知識を持っている個人が多いが、個人の就職活動ではそうした能力を十分に生かしきれない恐れがある。このため、職種、技術、仕事歴などの属性ごとにきめ細かく人材情報を集め、求人企業の条件に合う人材を提供しやすくする。
 1999年度に産業雇用安定センターに登録した建設業関係の求人情報は約1,500人、人材を送り出す側の求職者の情報は約1,200人。厚生労働省は「他産業に比べて建設業は登録件数・人員が少なく、センターの積極的な活用を促したい」としている。
 一方、同省は債権放棄を受けたゼネコンに退職者の再就職先などの聞き取り調査も始めた。退職した人がどのような業種・企業に何人ずつ再就職しているかの実態を把握し、他産業への労働移動を円滑に進める方策を検討する。国土交通省も必要に応じて助成金や給付金の拡充を厚生労働省に要請する。
 建設業就業者数は今年2月現在で約620万人と全就業者数の約1割を占める。建設業界は不動産、流通と並んで過剰な人員を抱え、銀行の不良債権処理が進むとゼネコンやその下請け企業が倒産するなどして大量の失業者が生まれる公算が大きいとされる。
上場企業 希望退職、37社が実施

2001/ 4/18 日本経済新聞朝刊

  商工リサーチ1-3月調べ 特損1000億円近く

 希望退職者を募集する企業が増えている。民間調査会社の商工リサーチによると、今年1-3月に主な上場企業だけで37社が募集した。景気低迷の長期化で企業が人件費の圧縮を急いでおり、1000人を超える大型の募集も目立つ。企業側は臨時の退職金支給などにあてるため、総額で1000億円近い特別損失を計上した。
 募集人数は全体の半分近い17社が100人以上。応募した人数はマツダが2000人を超え、ダイエーも1000人に達した。大手を中心に募集枠を上回る場合がある半面、中堅クラスの企業では枠の半分程度しか埋まらなかったところもあった。
 37社のうち31社が希望退職者に特別退職金などの割増金をどれだけ支払うかを公表していた。支給予定額も含めて31社の合計は981億7,200万円。企業は該当する決算期で、これらの費用を特別損失額として処理する。

【Add 2001. 4.17】

  社会保険制度整備が急務に 経済産業省が人材派遣調査

2001/ 4/17 日本経済新聞朝刊

   経済産業省は労働者派遣業などの実態や政策課題を分析した「人材関連ビジネス実態調査報告書」をまとめた。派遣業者のアンケート調査では社会保険制度の整備を求める意見が多かった。現在の社会保険は長期継続雇用を前提とした制度になっているため、短期間の派遣とそぐわない面が多く、保険料負担や事務コストが重いとの指摘があった。派遣先企業による保険料負担や国民年金・厚生年金の選択制を検討すべきだとの意見もあった。
 一段の規制緩和を求める意見も多かった。法改正で新たに認められた業務の派遣期間が1年間に制限されていることに対し「慣れたころに終わってしまう」として見直しを求める業者が多い。

【Add 2001. 4.14】

  健保、16組合解散 2000年度、大幅に財政悪化

2001/ 4/14 日本経済新聞朝刊

   健康保険組合の解散が急増している。2000年度は戦後の混乱期を除くと過去最高となる16組合が解散。2001年度も4月1日時点で12組合が解散し、年度を通せば前年度を超えるのはほぼ確実だ。高齢者医療費を賄うための拠出金を中心に支出が増える一方、保険料収入は伸び悩んで健保組合の財政が大幅に悪化していることが背景にある。
 健保組合は主に大企業従業員とその家族が加入する医療保険制度。企業単位で設立する場合が多く、全国に約1,700余りの組合があり、約3,200万人が加入する。従業員の月収の平均8.5%程度を原則労使折半で保険料として徴収、それを財源に運営している。
 従来、健保組合の解散は母体企業の倒産に伴う事例が多かった。ここ数年は母体企業が存続していても「財政の好転が見込めず、これ以上の保険料負担にも耐えきれない」として、健保組合だけが解散する例が目立つ。
 解散した健保組合の加入者は通常、政府管掌健康保険に移る。政管健保でも健保組合と同じく、加入者本人が診察を受けた場合、かかった医療費の8割は保険から給付する。保険料率は月収の8.5%(これを労使折半)。健保組合は独自加入者の負担を軽減する仕組みを導入している場合が多いが、政管健保ではこのような利点はない。
 政管健保は中小企業従業員とその家族を中心に約3,700万人が加入。健保組合と同様に財政は悪化しており、保険料率の引き上げなどを検討している。

【Add 2001. 4.13】

  医療費抑制を提言

2001/ 4/13 日本経済新聞朝刊

  健保連 制度改革中間まとめ

 全国の健康保険組合の上部団体である健康保険組合連合会は12日、政府が2002年度の実施を目指している医療制度改革についての中間的な考え方をまとめた。高齢者分を中心に医療費が増え続け、健保組合の財政が急速に悪化していることから、医療費の総額を抑制する手法を検討すべきだと強調している。同連合会では関係団体と協議を進めてさらに具体的な提言をとりまとめる。
 中間まとめでは「どのような制度をつくっても、現在の医療費の伸びが続けば持続性がない」として、医療費抑制策を最優先課題とした。欧米の例などを踏まえ、医療費総額に目標を設定して抑制する手法を検討する。
育児休業「取得する」男性の7.4% 妻も及び腰「ぜひ望む」15% こども未来財団調査

2001/ 4/11 日本経済新聞朝刊

   男性の育児休業取得について。男女ともに5-6割が肯定的に考えているものの、積極的に自分が取得したいという男性や、夫に取得して欲しいと希望している女性は、いずれも1割前後にとどまっていることが10日、「こども未来財団」(東京・中央)の意識調査で分かった。仕事重視の考え方や、育児休業に伴う収入の減少などの不安が、実際の取得に当たって大きな障害になっているという。子育てを巡り、理想と現実に大きなギャップがあることが改めて浮き彫りになった。
 
収入減など心配
 調査は今年1-2月、関東、関西圏に住む4,800人を中心に実施。うち1,040人から回答を得た。
 15歳以下のこどもを持つ男女877人に対し、男性の育児休業を取得すべきかを聞いた結果、「非常にそう思う」と「ややそう思う」とを合わせた回答は、男女で51.3%、女性で64.7%で、いずれも半数以上が肯定的だった。
 しかし、「今後、子供が生まれた場合に取得するかどうか」の質問について、「ぜひ機会があれば、取得する」と答えた男性はわずか7.4%。「ぜひ夫に取得して欲しい」と考えている女性も15.4%にとどまった。
 積極的に取得を考えていない人たちの理由(複数回答)として、男性のトップが「仕事の量や責任が大きいから」の66.7%。女性では「収入が減少し、家計に影響がするから」(61.6%)が最も多かった。さらに、男女ともに5割弱が「職場で理解が得られない」と回答。「男性は子育てよりも仕事を優先すべきだ」(25.4%)、「女性の方が子育てには適していると思う」(21.4%)といった理由を挙げた男性もいた。
 男性の育児休業を巡る意識が高まっているものの、職場環境などの整備がなかなか進んでいない一端を示した形となった。

【Add 2001. 4. 8】

  残業割増賃金 企業の7.9%が未払い

2001/ 4/ 8 日本経済新聞朝刊

  厚生労働省99年調査 厳しい雇用環境映す

 企業が残業などの割増賃金を社員に支払わなかったり、サラリーマンが労使間で定めた労働時間より長く働いたりする例が増えている。厚生労働省の調査によると、1999年で割増賃金の一部でも未払いの企業は全体の7.9%、労働時間が労働基準法に違反した企業は17.6%だった。この5年間で最高水準で、個人の雇用環境の厳しさの一端を示している。
 調査は全国の約3,600の労働基準監督官が企業に監督・指導に入り、集計した。対象は約146,000社。
 労働基準法などによると、企業は残業などの時間外で社員が働いた場合は通常の賃金の25%以上、休日出勤の場合は同35%以上を割増しする形で給与を支払う必要がある。
 1999年の1年間にこうした規定に違反し、割増賃金をきちんと払わなかった企業は11,524社。調査対象企業に占める割合は7.9%と前年に比べて3.3ポイント上昇した。
 現在の労働時間は週40時間が原則だが、労使間で協定を結んで労働基準監督署に届け出ると、一定の時間外労働が可能となる。協定の範囲を超えるなどの形で労働基準法に違反した企業は1999年の1年間で約25,700社。全体の17.6%を占め、前年比4.5ポイント増えた。
 リストラによって解雇される人が出る半面、職場にとどまった社員が従来より長時間働き、仕事をこなす例は多い。それでもなお企業収益の悪化により残業代などを満額もらえないケースが続出したとみられ、厚生労働省は「厳しい雇用環境を反映した」(労働基準局)とみている。
首都圏の昨年 人材派遣100万人突破

2001/ 4/ 7 日本経済新聞朝刊

  パソナソフトバンク インドから技術者
テンプスタッフ 証券外務員を育成

 人材派遣市場が急拡大している。2000年の首都圏の派遣社数(述べベース、日本人材派遣協会調べ)は前年比26%増の106万人と初めて100万人の大台に乗った。関西、愛知県の派遣社数も前年比で3割強増えた。人材派遣各社は、需要の多い金融と情報技術(IT)の人材確保を競っている。
 派遣社数は、主要派遣会社の月末時点の稼働者数を累計した。首都圏は東京・神奈川・埼玉・千葉の1都3県の23社を調査。関西(大阪・京都・兵庫の26社)では同39%増の52万人、愛知県(15社)も同38%増の24万人と、伸び率は首都圏を上回った。
 けん引役が金融とIT分野だ。アデコキャリアスタッフ(東京・港)では、外貨系金融機関への派遣が昨年12月平均で前年同月比2.8%増えた。パソナ(東京・千代田)でも、システムエンジニアの派遣が同48%増。特にIT分野では人材不足から派遣料金が大幅に上昇、職種により2,000円から5,000円(首都圏、1時間当たり)となっている。
 また、マイライン(電話会社事前登録制)の契約獲得のため「大手通信会社からの派遣依頼が相次いでいる」(アデコキャリア)という。
 専門職の人手不足を解消するため、パソナソフトバンクはインドのソフト会社パティニ・コンピューター・システムズ(ムンバイ)と組み、システム開発を指揮するインド技術者を日本企業に送り出す。派遣するのは実務経験5年以上の高度な技術者。初年度50人の派遣を見込む。
 テンプスタッフは証券会社のコールセンターで顧客対応を担うオペレーターの育成制度を設けた。株式取引には「証券外務員」と呼ばれる専門資格が必要だが、有資格者は不足している。インターネットと教室での講義を組み合わせた独自の研修制度を設け、未経験者を育成する。
 人材派遣市場拡大には、規制緩和が追い風になっている。99年12月に改正労働者派遣法の施行により、営業・販売職の派遣が解禁となった。昨年12月には「紹介予定派遣」が認められ、正社員候補としての要員派遣がスタートした。
 「企業の間で正社員を派遣・パート社員に切り替え、人件費を固定費から変動費に転換する動きがさらに広まっている」(富士総合研究所の渥美由喜研究員)ため、中長期的に市場拡大が続く見込みだ。
保険料率0.06ポイント上昇

2001/ 4/ 6 日本経済新聞朝刊

  総合健保組合の今年度平均 月収の8.65%に

 中小企業の従業員が加入している総合健康保険組合の2001年度の平均保険料率は月収の8.65%(これを労使で分担)と、前年度に比べ0.06ポイント上昇することが全国総合健康保険組合協議会のまとめで分かった。40-64歳の従業員から集める介護保険料率(同)も上昇する。高齢者の医療や介護の費用の増加に伴い現役世代の負担が膨らんでいる。
 会社員とその家族が加入する健保組合には大企業が従業員のため設立する単独健保と、中小企業が業種単位で設ける総合健保がある。全国総合健保組合協議会の調べでは、全国に300ある総合健保のうち94%が2001年度に赤字を予想。総合健保全体の経常収支は約1,546億円の赤字で過去最悪となる。
 健保財政の悪化は高齢者が使う医療費を賄うために健保が支払う拠出金が大幅に増えるのが主因。支出増に対応しようと全体の15%、45健保が2001年度に保険料率を引き上げる。この結果、平均保険料率は前年度比0.06ポイント増の8.65%となる。
 総合健保に加入する会社員の平均月収は約35万円。保険料率が0.06ポイント上昇すると労使合計の負担額は月約200円増える。
 40-64歳の総合健保加入者が負担する2001年度の介護保険料率は平均1.22%(労使折半)と、前年度に比べ0.1ポイント程度上昇。労使合計で約400円程度の負担増になる。
賃上げ率 2年連続2%割れ

2001/ 4/ 5 日本経済新聞朝刊

  春闘本社1次集計 景気後退懸念映す

 日本経済新聞社は4日、2001年春闘の賃上げ第1次調査(3月28日現在、423社)をまとめた。平均賃金率は1.94%と過去最低だった2000年実績の1.95%にほぼ並ぶ水準となり、2年連続して2%を割った。企業収益は増加基調にあるものの、景気後退の懸念や経営改革の継続などを理由に各社とも人件費抑制の姿勢を崩していない。
 賃上げ額は前年比29円増の5,886円とほぼ横ばいだった。製造業は円安による輸出採算の改善などで2%台に回復したものの、業績回復が遅れている非製造業で賃上げ率の低下が目立った。今春闘は米国経済の減速や株価の下落で国内景気の後退懸念が強まった結果、経営側は業績の先行き不透明感を強調、賃上げ抑制の姿勢を変えなかった。
 製造業(321社)は円安やリストラ効果で収益が改善。賃上げ率は2.01%と過去最低だった昨年の1.99%からプラスに転じた。トヨタ自動車など自動車大手3社が前年を上回るほか、電機が前年実績を確保した。
 非製造業(102社)は1.72%。過去最低だった前年実績1.8%を下回った。電力が2年連続のベアゼロに終わったほか、鉄道・バスなどの公益部門、建設、陸運など大半の業種で前年実績を下回った。
 調査は5月上旬に最終集計する。集計企業数が1次を大幅に上回るため、1次集計に比べ結果が若干変わる可能性がある。調査には日経リサーチが協力した。平均賃上げ率と額は組合員数を考慮した加重平均で算定。前年実績は今回の集計企業をベースに計算した。

2001年春闘賃上げ回答・妥結状況(3月28日現在、加重平均、単位:円、%)
 

社数

基準内賃金

▽全体

423

5,886

1.94

300,917

 製造業

321

6,102

2.01

302,063

 非製造業

102

5,174

1.72

297,153

 

 

 

 

 

 組合員平均

330

6,248

2.05

303,285

 従業員平均

30

7,613

2.34

321,760

 モデル

63

4,906

1.66

293,291

介護報酬引き上げ検討 ケアマネージャーや家事援助

2001/ 4/ 2 日本経済新聞朝刊

  厚生労働省 2003年度めざす 運営難に対応

 厚生労働省は介護保険から介護サービス事業者に支払う報酬の見直しに乗り出す。現在の報酬では事業運営が厳しい場合が多く、質の高いサービス提供が難しいと判断した。高齢者の介護計画をつくるケアマネジャーの報酬、ホームヘルパーが高齢者宅を訪問して掃除などの世話をする家事援助の報酬の引き上げなどが課題となる。次の介護保険制度の見直し時期である2003年4月の実施を目指す。ただ報酬の引き上げは介護保険料の上昇につながるため、今後の見直しが難航する可能性もある。
 介護保険制度では、事業者が高齢者にサービスを提供した場合の代金をサービス内容や提供時間に応じて決めており、これを「介護報酬」と呼んでいる。介護が必要と認定された高齢者はサービスを受けると1箇月単位で介護報酬を合計して代金を計算、その1割を自己負担し、残りは保険から支払う仕組みだ。
 厚生労働省は今夏以降、全国の事業者の経営実態を調査。この結果を踏まえながら、社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)で見直し方向を固める。
 見直しの課題となっているケアマネジャーは現在、1箇月の介護計画をつくれば高齢者の要介護度に応じて1件6,500-8,400円の報酬がある。同省は1人のケアマネジャーが担当する高齢者を50人とする目安を示しており、目安通りだと平均で月36万円程度の収入となる。
 ただ事業者には「報酬から経費を差し引くと赤字」との声が多い。介護計画策定以外に高齢者の介護報酬額計算なども担っており、「業務量に比べ報酬が低い」との不満も強いため報酬の引き上げを検討する。
 ホームヘルパーによる家事援助サービスの報酬は30分以上60分未満で1,530円。これも事業者が「ヘルパーの給料などを考えると事業が成り立たない」と主張している。訪問介護の中でも入浴などの世話をする身体介護は同じ時間で4,020円の報酬。厚生労働省も「身体介護との格差を広げすぎた」と見ており報酬を上げる方向だ。
 このほか、少人数の痴ほうの高齢者を集めて共同生活で介護するグループホームへの報酬なども引き上げが検討される見通しだ。
 ただ報酬引き上げは国民負担の増加につながる。このため報酬が高齢者の要介護度などに応じて何段階かに分かれているサービスでは、低い報酬を引き上げる代わりに高く設定していた報酬を引き下げるケースなども出てきそうだ。

<介護保険で事業者に支払われる報酬>

訪問介護(30分以上1時間未満のサービス提供の場合)  

身体介護

4,020

家事援助

1,530

身体介護と家事援助の複合型

2,780

護計画の策定(1箇月当たり)

 

高齢者が「要支援」の場合

6,500

高齢者が「要介護1〜2」の場合

7,200

高齢者が「要介護3〜5」の場合

8,400

グループホームでの介護(1日当たり、要介護2〜4は省略)

 

高齢者が「要介護1」の場合

8,090

 

(要介護2〜4略)

 

高齢者が「要介護5」の場合

8,740


(※)単位:円。地域やサービス提供時間帯による加算などもある。高齢者の状態は「要支援」が最も軽く、「要介護5」が最も重い
失業給付上乗せ対象 劣悪な労働条件も

2001/ 4/ 2 日本経済新聞朝刊

   厚生労働省は離職理由によって失業保険の給付日数に差をつける制度が導入されたのを受け具体的な給付日数上乗せ基準を決め、1日から適用を始めた。倒産による失業や解雇などに加え、労働条件が劣悪なために自ら離職した場合も給付日数を上乗せする。3年以上勤務したパート社員が契約更新されなかった場合も上乗せの対象とする。
 新制度は1日以降に失業した人が対象。自己都合や定年退職などで離職した場合は失業手当の給付日数が減らされるのに対し、勤め先の破たんで失業したり、解雇で離職した場合には日数が上乗せされる。
 リストラで3分の1を超える従業員が減少、将来の見込みがないと判断し自ら退職した時も破たんによる失業と同様、上乗せ対象になる。
 労働条件が劣悪なため自ら離職した場合は解雇と同様の扱いをする。(1)残業時間が3箇月連続で45時間超(2)2箇月連続で賃金の3分の1を超える額が未払い(3)6箇月以内に賃金(残業代を除く)が85%未満に削減--がこれに当たる。
 パート社員など期間労働者については、過去に2回以上契約を更新して3年以上働いたのに契約更新されず職を失った場合は給付日数を上乗せする。

失業保険の給付日数

<事故都合や定年退職などで離職した場合>
  1年未満 1年以上5年未満 5年以上10年未満 10年以上20年未満 20年以上
 

90日

90日

120日

150日

180日

<経営破たん、解雇などで離職した場合>
30歳未満

90日

90日

120日

180日

-

30-44歳

90日

90日

180日

210日

240日

45-59歳

90日

180日

240日

270日

330日

60-64歳

90日

150日

180日

210日

240日

【Add 2001. 4. 1】

  中高年の職業訓練民間委託を活用

2001/ 4/ 1 日本経済新聞朝刊

  緊急経済対策 再就職3万人目標

 政府・与党の緊急経済対策に盛り込む雇用対策の原案が明らかになった。専門学校、各種学校など民間の職業訓練機関に委託する職業訓練を、企業の倒産や人員整理などで失業した中高年のホワイトカラー向けに集中的に実施。パソコン研修など個人の技能を高めて約3万人の再就職実現をめざす。2000年度補正予算に計上した中高年を一定期間、試行的に受け入れる企業向けの支援を延長する方針も打ち出す。
 金融機関が不良債権の最終処理を進めると、支援を打ち切られる貸出先企業の倒産などで失業者が大量に発生する可能性がある。今回の雇用対策はこうした企業倒産などでやむを得ず失業した人(非自発的失業者)を対象にする。特に45歳以上は再就職が難しいので、そのための安全網(セーフティーネット)を整える。2001年度予算計上している事業を、これらの人に重点的に振り向けるかたちをとるので、新規予算は不要という。
 職業訓練を民間に委託するのは、全国の公共職業訓練所で教育訓練を受けられる受講者の枠に限界があるためで、全国に3200校以上ある専修学校などを活用する。内容は主に情報技術(IT)、福祉など成長分野への再就職支援になるとみられる。
 中高年を一定期間、試行的に採用した企業への支援事業は5万人を対象にする。
 

     緊急経済対策に盛り込まれる雇用対策原案の主な内容

<安全網の確立>
失業率が5%以上になった場合に中高年などを雇い入れた企業を支援する奨励金の要件緩和の延長
<再就職促進対策の推進>
情報技術(IT)など新規成長分野の企業が中高年などを雇い入れた場合の特別奨励金の要件緩和の延長
中高年を一定期間試行的に受け入れる企業の支援(計5万人)
<職業能力開発の促進>
民間委託による失業者向け職業訓練の対象を中高年ホワイトカラーに重点化(目標:約3万人)