社会保険労務士関連ニュース(2001年/第2四半期:2001/ 7- 9)

2001年(平成13年)度 第2四半期 2001年 7月〜 9月に新聞等で発表されたニュースです。

【LastUpdate 2001. 9.30】

【Add 2001. 9.30】

  APEC IT職業訓練を充実

2001/ 9/30 日本経済新聞朝刊

  人材担当相会合 労働移動を円滑化
 熊本市で29日に2日間の日程で始まったアジア太平洋経済協力会議(APEC)の人材養成担当相会合が30日に採択する共同宣言(熊本宣言)案が明らかになった。宣言案はアジア太平洋地域の経済が「原則に直面している」と指摘。域内経済の持続的成長には情報技術(IT)などに適応できる労働者の確保が不可欠だとし、新しい技能に対応した生涯学習や職業訓練が重要と強調している。
 宣言案は(1)経済のグローバル化、IT化などに特徴づけられる「ニューエコノミー」に備えた労働市場(2)グローバル化の下ですべての労働者に成功の機会をもたらす知識と技能の向上(3)労使などによる人材養成戦略への参加--の3本柱で構成している。
 労働市場では、ニューエコノミーが「生活水準向上の機会」を提供する半面、「不安定な市場と失業」をもたらす点に言及。各国・地域が職業紹介を充実させたり、社会的な安全網(セーフティーネット)を整備し、円滑な労働移動を確保する決意を示した。
 人材養成の具体策では、基礎教育の充実や技能訓練・生涯学習による技能の格差縮小、効率的で公平な労働市場の促進などを優先課題として位置づけた。共同宣言は10月20日、21日の両日に上海で開催するAPEC首脳会議に報告する。
介護保険料独自に減免 市町村、全額徴収控え

2001/ 9/30 日本経済新聞朝刊

   65歳以上の高齢者からの介護保険料の全額徴収が10月から始まり、高齢者の保険料はこれまでの2倍になる。保険料額は市町村や本人の所得などによって違うが、全国平均で月約2,900円。市町村では負担増への反発を避けるため保険料を独自に減免する動きが広がっている。
 高齢者の保険料は介護保険が始まった2000年4月から半年間は全額免除、同年10月から1年間は本来の半額に減免してきた。10月1日でこの経過措置が終わる。
 厚生労働省によると全国3,249市町村のうち、高齢者向けに独自に保険料減免措置を講じるのは4月時点で139だったが、10月時点でさらに50ほど増える見通しだ。政令指定都市でも京都、広島、仙台などが10月から減免を導入する。厚労省は「減免分は一般会計から補てんせず、全額免除や一律減額はしない」という原則を市町村に指導している。減免措置が過度に広がれば介護保険制度が空洞化すると懸念しているためだ。
「志願退職」厳しい再就職 失業率5%台

2001/ 9/29 日本経済新聞朝刊

   総務省が28日発表した8月の完全失業率(季節調整値)は7月に続き5.0%を記録した。高失業率時代にもかかわらず、自ら早期退職を志願するサラリーマンが後を絶たない。理由は様々だが、給与面の折り合いや年齢制限の壁など、中高年の再就職の道は予想以上に険しい。再就職支援会社の台頭など、求職者の環境が様変わりする中、希望退職者の再就職活動を通して、日本の雇用の現実を探った。
(以下略)
「求職者上回る求人がある」 雇用ミスマッチの強調狙う?

2001/ 9/28 日本経済新聞朝刊

  首相発言で波紋 新規求人倍率を引用
 「公共職業安定所には求職者を上回る年間700万人の求人があり、バブル期に匹敵する水準」--。小泉純一郎首相が27日の所信表明演説で、現在の雇用情勢に触れた部分が波紋を広げている。
 首相が指摘した求人と求職者は、職安に毎月出てくる「新規求人」と「新規求職者」を単純の合計したフローの数字だ。厚生労働省によると、2000年度の新規求人(2000年4月-2001年3月)は725万人。これに対し新規求職者は670万人で、「新規求人倍率」は1.08倍となっている。
 ところが、求人の条件に合う求職者が少ないため、求人の増加を上回るペースで就職できずにいる失業者の総数が積み上がっている。実際、失業者の約4人に1人は失業期間が1年以上に及んでいる。毎月の新規求職者というフローだけでなく、前月から繰り越した求職者も加えたストックの数字である有効求職者は有効求人を上回っている。有効求人を有効求職者で割った「有効求人倍率」は7月に0.60倍まで低下した。
 新規求人倍率は今後の雇用動向をつかむのに活用する先行指標。ただ、このデータだけでは一定期間求職活動を続けているものの仕事が見つからない失業者の動きを正確に知ることはできない。厚労省幹部は「首相の所信表明演説は雇用のミスマッチの解消がいかに重要かを強調したもの」と解説している。
長期入院 医療保険の給付削減

2001/ 9/27 日本経済新聞朝刊

  厚労省指示 介護施設へ転居促す
 厚生労働省は26日、入院期間が6ヶ月を超えた場合は医療保険からの給付を減らし、患者の自己負担を増やす案を中央社会保険医療協議会に示した。入院医療の必要がないのに自己都合で長期入院する高齢者らに追加負担を求め、病院から介護施設に移るように誘導する。来年度の医療制度改革の一環で、医療保険の支出削減を目指す。
 同省は医療費抑制を柱とする医療制度改革試案を25日に公表した。長期入院給付の見直しと診療報酬改定は中医協で検討のうえ、他の施策と併せ年末に最終的な政府案を決める。
 長期入院に対する保険給付の削減は、本来なら自宅や介護施設で暮らせる高齢者が入院し続ける「社会的入院」を減らすのが狙い。難病や精神疾患、結核など長期入院が必要な特定ケースを除き、入院期間が6ヶ月を超えれば患者の自己負担が大幅に増える仕組みにする。入院医療を必要としない高齢者は病院から介護サービス主体の介護保険施設に移るよう促す。
患者自己負担 3割に 医療改革 厚労省試案

2001/ 9/26 日本経済新聞朝刊

  「高齢者」75歳以上が対象 保険料徴収年収で
 厚生労働省は25日、2002年度の実施を目指す医療制度改革の試案をまとめた。健康保険に加入するサラリーマンの医療費の本人負担を2割から3割に引き上げ、3歳から69歳の患者については一律3割負担とする。高齢者医療制度の対象は現行の70歳以上から75歳以上に段階的に引き上げる。医療費の抑制と医療保険財政の立て直しのために、国民と医療機関にそれぞれ負担増を求める。
 厚労省は試案を同日の政府・与党の社会保障改革協議会に報告。政府・与党は同案をもとに、年末までに最終案を決める。関連法案を来年の通常国会に提出し、10月施行を目指す。ただ景気が低迷するなかで国民に新たな負担を強いることには与党内に慎重な声があるほか、日本医師会などの反発も予想され、調整は難航する見通しだ。
 試案によると、健康保険加入するサラリーマンの医療費の本人負担を3割にするほか、その家族が入院した場合の負担も現行の2割から3割にする。自営業者らが加入する国民健康保険では本人・家族ともすでに3割負担となっていた。
 患者負担が1割と優遇されている高齢者医療制度も改め、対象年齢を現在の70歳以上から毎年1歳ずつ引き上げて2006年度には75歳以上とする。70歳から74歳までの患者については2割負担とする。75歳以上でも一定以上の所得があれば2割負担を求める。
 医療機関の負担増となる仕組みとして、高齢者医療費に上限を設ける「伸び率管理制度」を導入する。医療機関全体の高齢者医療費が年度の上限目標を超えた場合、翌々年度以降の診療報酬を引き下げる。これにより医療機関の収入は減る。現在、高齢者医療費は年8%程度伸びているが、4-5%に抑えたい考えだ。
 主に大企業の従業員が入る健康保険組合や、中小企業の従業員が加入する政府管掌健康保険の保険料は現在、月収ベースで徴収しているが2003年度からボーナスを含めた年収ベースで計算して徴収する。政管健保では同時に保険料の事実上の引き上げも実施する。
 現在30兆円の国民医療費は2007年度に36兆2,000億円に増える見通し。改革を実施すれば同年度に2兆1,000億円を期待できるという。坂口力厚生労働相が求めていた年金、医療、介護、労働の保険料徴収の一元化は「早急に準備を開始」と明記。医療保険制度の統合は「避けて通れない」としたが、具体策には触れなかった。
 
 厚生労働省の医療制度改革試案のポイント
<患者の自己負担>
3歳から69歳までの患者負担を一律3割に
75歳以上は1割負担
70歳から74歳は2割
3歳未満の乳幼児は2割
<高齢者医療制度の改革>
対象年齢を現行の70歳以上から段階的に75歳以上に引き上げ
医療費の伸びに上限を設定、超過分は医療機関が負担
<保険料の見直し>
2003年度から健保組合などの保険料をボーナスを含めた年収ベースで計算する「総報酬制」に
<診療報酬・薬価基準の見直し>
医療技術や医療機関の運営コストが適切に反映できるよう体系的に見直し
薬価基準の見直し
<医療の規制緩和、効率化>
健保組合などと医療機関の直接契約で診療報酬の割引を容認
医療機関の広告規制の緩和を検討

【Add 2001. 9.23】

  政府「総合雇用対策」を決定 民間活用 中高年に的

2001/ 9/21 日本経済新聞朝刊

  人材派遣期間最長で3年に 年内実施目指す
 政府の産業構造改革・雇用対策本部(本部長・小泉純一郎)は20日、雇用情勢の悪化に対応するための「総合雇用対策」を決めた。中高年の雇用拡大のため、45歳以上に限って人材派遣の期間を最長3年に延長することなどが柱。これら最優先で取り組む施策は緊急雇用対策法案(仮称)としてまとめ、27日召集予定の臨時国会に提出し、年内実施を目指す。
 
官は後方支援

 対象は(1)規制改革を柱とする雇用創出(2)求人と求職者の条件のずれから生じる雇用のミスマッチの解消(3)セーフティーネット(安全網)整備--の3点セット。いずれも「キーワードは民間活力」と厚生労働省幹部は語る。
 従来型の雇用対策は、職業紹介は公共職業安定所(職安)、能力開発・訓練は公共職業訓練校をそれぞれ使った「官製対策」の色彩が濃かった。今回は民間の人材紹介会社や再就職支援(アウトプレースメント)会社、専修学校、大学、非営利組織(NPO)などの力を総動員する方針に転換した。
 企業のリストラなどで失業した人を雇い入れた事業主に数十万円を支給する緊急雇用創出特別奨励金などの各種雇用助成金は、これまで職安の紹介が要件だったが、10月からは民間紹介でも支給が認められる。
 
甘い規制緩和
 半面、雇用創出につなげる規制改革では踏み込み不足が目立つ。人材派遣では営業、販売など最長1年の派遣期間を45歳以上に限った特例として最長3年に延ばすが、総合規制改革会議の委員の間では「適用対象を35歳以上に拡大すべきだ」との厳しい意見が出ている。
 雇用の受け皿と期待される保育・介護などの福祉分野では、民間の資金や経営ノウハウを使った社会資本整備(PFI)方式の活用といった既定路線をなぞるにとどまった。
 
安全網は不透明
 「雇用ミスマッチの解消など、やや中期的な対策になっており、不良債権処理に伴って当面出てくる失業者の対策には不十分」。20日の自民党厚生労働部会では、出席した議員からこんな指摘が出た。
 短期的な安全網の柱としては、失業者に補助教員、森林作業員などとして一定期間就業してもらう「新公共サービス雇用」を盛り込んだ。
 自民党内では「3年間で100万人以上の雇用吸収を」との声が出ているが、これだと全額国費で6,000億-7,000億円は必要になるとみられ、2001年度補正予算編成の焦点となる。
政府雇用対策 学部・学科の新設弾力化 大学で起業、人材受け皿に

2001/ 9/19 日本経済新聞朝刊

   規制緩和による雇用創出を柱とした政府の総合雇用対策案の全文が18日明らかになった。大学を拠点にしたベンチャー企業を設立しやすくするため、学部や学科の新設・改廃に関する規制を来年度から順次緩和する。再就職を希望する個人の進路相談に乗る「キャリア・カウンセラー」を今後5年間で5万人育てる。
 
転職相談員5万人増
 総合雇用対策は政府の産業構造改革・雇用対策本部(本部長・小泉純一郎首相)の20日の会合で決定する。雇用の受け皿整備、雇用のミスマッチ解消、雇用の安全網整備の3点を一体にしたパッケージで、構造改革による痛みを最小限に抑え、新産業の構築によって新たな成長基盤をつくるのが狙いだ。
 雇用の受け皿整備は新市場と新産業の育成を柱とし、基礎研究力を持つ大学を起業や雇用創出につなげる方策を打ち出した。ベンチャー企業が国立大学の敷地内で低コストで事務所を借り、大学の研究施設を使える「インキュベーションセンター」(育成センター)を設置可能にする規制緩和を今年度中に実施する。
 大学が学部や学科を新設したり、改廃するには文部科学省の認可が必要。対策は(1)学科の認可制は今年度中に見直しの結論を出し、来年度から実施(2)学部の認可制も弾力化の方策を今年度中に検討--とし、大学が産業界の動向などに応じて学部・学科の設定を機動的に変更しやすくする。
 キャリア・カウンセラー(相談員)はサラリーマンなどが自らの進路を選びを、必要な能力・資格を身に付くように助言する。転職支援サービスとして今後需要が伸びると期待されている。
 環境分野では廃棄物の定義の見直しを検討する。現在家庭ごみは一般廃棄物、工場ごみは産業廃棄物と発生源で区別、処理業者も別々の許認可が必要。定義の変更によってリサイクル業への新規参入を促す。
公的サービス 雇用創出へ基金増額

2001/ 9/19 日本経済新聞朝刊

  与党最終案 民間委託を原則に
 自民、公明、保守の与党3党が検討している総合経済・雇用対策の「第2次対策」の最終案が18日明らかになった。都道府県が地域の雇用創出のために活用している「緊急地域雇用特例交付金制度」を見直して基金の金額を上積みし、民間委託を原則として学校の補助教員など公的サービス分野の雇用創出に充てるなどの雇用対策の具体策が柱。19日に総合雇用対策協議会を開いて決定、小泉純一郎首相に提言する。
 対象となるには地方自治体が事業主体となる不法廃棄物処理などの公的サービス。期間は3年以内とし、雇用保険を受給していない失業者が就業対象となる。
人材派遣 最長3年に延長 政府新雇用対策案 45歳以上限定

2001/ 9/18 日本経済新聞朝刊

   政府が検討している新たな雇用対策の全容が明らかになった。45歳以上の中高年に限って人材派遣会社から派遣される場合の期間を緩和し、最長3年する。正社員としての再就職が困難な中高年の雇用の受け皿として派遣会社を活用するねらいだ。自営業者やパートタイマーから失業した約10万人を対象に食費や光熱費などの生活資金を融資する制度も新設。期限付きで雇用する有期雇用契約の規制も緩和するなど、包括的な雇用の安全網づくりをめざす。
 新雇用対策は離職者の再就職支援、失業者の生活支援、失業者の生活支援、新たな雇用機会の創出などを網羅し、産業構造改革・雇用対策本部(本部長・小泉純一郎首相)が20日に決定する総合雇用対策に盛り込む。2001年度補正予算に関連費用を計上するとともに、中高年の雇用拡大を目的とした緊急雇用対策法案(仮称)を今月下旬召集の臨時国会に提出、年内の実施をめざす。
 緊急雇用対策法案は(1)人材派遣期間の延長(2)失業手当の給付期間が切れた後も職業訓練期間中は手当を受けられる訓練延長給付制度の拡充(3)中小企業向けの雇い入れ助成の新設--の3点を内容とし、施行後3年間の時限措置とする。
 人材派遣は現在、営業などの業務について派遣社員の企業への派遣期間が最長1年に制限されている。法案ではこの期間を45歳以上の派遣社員に限って最長3年に延ばす。
 生活資金融資制度は2001年度補正予算で実現をめざす。自営業者やパートタイマーなど雇用保険に加入せず、失業手当をもらえない失業者が対象で、失業中の一定期間に限って月額20万円程度を貸し付ける。
 有期雇用契約については厚労省の省令改正により契約期間の規制を緩和し、最長3年の契約が可能な職種を増やす。

【Add 2001. 9.16】

  健保と病院 個別契約で割引

2001/ 9/16 日本経済新聞朝刊

  厚労省改革案 医療費伸び抑制
 2002年度に予定している医療制度改革の厚生労働省案の全容が14日、明らかになった。健康保険組合などが個別に医療機関と契約を結び、組合員がその医療機関で診療を受ければ医療費を割引する仕組みを導入する。窓口での自己負担を1割とする高齢者医療では、対象を70歳から75歳に引き上げるほか、75歳以上でも一定率以上の所得があれば2割の窓口負担を求める。改革案は医療費の伸びを抑え、医療保険財政の破たんを防ぐのが狙い。厚労省は同案を25日にも公表する予定だが、坂口力厚労相は不十分な点があるとしており、最終的に一部を修正する可能性がある。
 医療機関と健保組合などの直接契約は、低コストで高い質の医療を受ける道を開くとして経済界などが要望していた。
 改革案はこのほか、財政がひっ迫している政府管掌健康保険について2003年度から保険料を引き上げることも盛り込んだ。
 高齢者以外は医療機関で診察を受けた際の自己負担を本人、家族を問わず3割で統一する。ただ、3歳未満の乳幼児については2割とする。

【Add 2001. 9.15】

  医療制度改革 厚労相、原案に不満示す

2001/ 9/15 日本経済新聞朝刊

  「現状がベース、不十分」 財務省も「不支持」
 2002年度に予定している医療制度改革の先行きが不透明になってきた。坂口力厚生労働相は14日に医療保険制度の一元化など「抜本改革」の必要性を強調、同省の事務方が作成中の原案に不満を示した。医療費のさらなる抑制を求める財務省との調整もついていない。月末の厚労省案のとりまとめや政府・与党内の調整は難航しそうだ。
 厚労省は13日までに(1)高齢者医療の対象年齢を70歳から75歳に引き上げ(2)高齢者医療費に上限を設定(3)サラリーマンの窓口自己負担を2割から3割に引き上げ--などの制度改革案を与党の関係議員に提示。25日ごろ正式に公表するつもりだった。
 厚労省は原案を「現在の制度をベースにするならこういうことしかやりようがないというだけの案」と述べ、より抜本的な改革の方向性を示す必要があると指摘した。「患者、保険者、医療機関、役所の4者が痛みを分かちあうべきだ」として、年金、医療、介護の保険料徴収の一元化、医療費の効率化、医療機関に支払う診療報酬の体系見直しに踏み込む考えを示した。
 一方、財務省は厚労省案について「医療保険財政の健全化には全く不十分。小手先の改革に過ぎない」(主計局)と厳しい見方をしている。高齢者医療の抜本的な見直しや、医療費の目標値に関する見解が大きく食い違っており「今のままでは同省案を指示できない」(同)としている。
医療改革 74歳まで3割負担

2001/ 9/14 朝日新聞朝刊

  基本方針 乳幼児 2割に軽減
 厚生労働省が02年度から目指す医療保健制度改革で、患者負担の仕組みについての基本方針が13日、明らかになった。(1)乳幼児が医療機関にかかった場合の患者自己負担は、現行の原則3割から2割に引き下げる(2)70〜74歳は原則3割(現行は原則1割)に引き上げる(3)75歳以上でも高額所得者は2〜3割(同)を負担する--との内容だ。少子高齢化対策として、世代間を通じて、公平な負担を図るねらいがある。
 同省はすでに02年度からの医療制度改革で、患者負担が原則1割の高齢者医療制度の対象を、70歳から75歳に引き上げ、サラリーマン本人の患者負担を現行の2割から3割に引き上げるなどの方針を固めている。坂口力厚生労働相は13日、小泉純一郎首相と首相官邸で会い、医療の質の向上を含めた同省の改革の基本方針を報告。首相も改革を進めるよう指示した。同省は今月末に改革案を公表、与党や医療関係団体との調整がつけば、来年の通常国会に関連法案を提出、成立を図る。
 新たに明らかになった患者負担の仕組みは、乳幼児の場合、現行だと、扶養家族の自己負担は、サラリーマン家庭だと外来で3割、入院が2割、自営業者らの国民健康保険では3割。これを一律2割とする。現状では、負担額や対象年齢は、自治体によって異なる。厚労省は、対象を3割未満とする案を検討している。

【Add 2001. 9. 9】

  再就職あっせん会社利用 企業に助成金 厚労省検討

2001/ 9/ 9 日本経済新聞朝刊

   厚生労働省は失業者の増大に歯止めをかけるため民間を活用した再就職支援の新制度を創設する検討に入った。1ヶ月に30人以上の人員削減に踏み切る企業が再就職支援(アウトプレースメント)会社に委託し、再就職先をあっせんしてもらう場合、企業に対しその費用の一部を助成する。民間のノウハウで「失業なき労働移動」を円滑に進めるねらいだ。
 これまでの再就職支援策は公共職業安定所(職安)を使った場合に適合する制度がほとんどで、民間の再就職支援会社を利用する企業を公的に助成するのは初めて。政府の産業構造改革・雇用対策本部(本部長・小泉純一郎首相)は25日にまとめる緊急雇用対策(仮称)に盛り込み、関連予算を2001年度補正予算案に計上する。
 新しい助成金は大規模な人員削減を予定している企業が対象。労使が合意した離職予定者の再就職援助計画を職安に提出することが条件で、助成額は再就職者1人当たり5万-10万円程度にする方向で調整する。
「過労死招く長時間労働 違法」 遺族ら、一斉告訴・告発

2001/ 9/ 8 日本経済新聞朝刊

   過労死につながる恐れのある違法な長時間労働やサービス残業をさせられたとして、大阪府などの元会社員、亡くなった会社員の遺族らが7日、労働基準法違反や業務上過失致傷罪に当たるとして、企業7社と医療法人、各代表者を一斉に、労働基準監督署や地方検察庁に告訴、告発した。
 過労死を未然に防ごうと6月に電話相談を行った市民グループ「労働基準オンブズマン」(大阪市)などが支援。同グループの弁護士が一括して告訴・告発状を提出するなどした。
 連日午前零時を過ぎる長時間労働が続く中、バイクで通勤途中に事故を起こし死亡した大阪府のコンピュータープログラム会社の男性社員(当時22)の遺族や、時間外手当を支払わない大阪府の教育機器販売会社で1年間に約440時間の残業をしたとする元女性社員(26)らが、労基法違反で労基署に告訴・告発した。
 勤務先の告訴にはちゅうちょする人が多いといい、オンブズマンの弁護士は「今回する告訴事案は氷山の一角。限度を超える長時間労働やサービス残業が刑事罰の対象になることを認識して欲しい」としている。
労働時間 日本は6位後退 ILO2000年調査 バブル崩壊響く

2001/ 9/ 7 日本経済新聞朝刊

   国際労働機関(ILO)は6日までに、2000年の主要各国の平均労働時間で最も長かったのは韓国、先進国では米国がトップだったが、1990年調査で先進国中、最長だった日本は全国で6位に後退したとする調査結果をまとめた。
 各国労働者1人当たりの年間労働時間を国際比較したもので、1位の韓国が2,474時間、2位はチェコの2,092時間、3位が1,978時間の米国の順。
 メキシコ、オーストラリアに続き日本は1,842時間で、90年調査の2,031時間から大幅に短縮した。
 日本はバブル崩壊後の不況や構造改革の影響、情報技術(IT)革命のため労働時間が短くなったとみられている。
 米国は90年に比べると36時間長くなっている。90年以降の好景気と低賃金の移民の流入などで労働時間が長くなったという。
健保、本人負担3割に 厚労省方針 財政悪化を回避

2001/ 9/ 6 日本経済新聞朝刊

  医療費抑制へ検討 / 診療報酬に上限制
 厚生労働省は2002年度に予定している医療制度改革の基本方針を固めた。患者が支払う医療費の自己負担増や医療機関に支払う診療報酬の抑制、政府管掌健康保険の保険料引き上げが柱。健康保険の加入者本人であるサラリーマンの自己負担を医療費の2割から3割に引き上げることなどを検討する。高齢者の自己負担の限度額引き上げも求める考え。医療費の伸びを抑制し、悪化している医療保険財政を立て直すのが狙いだ。
 公的医療保険は大企業の社員らが加入している健康保険組合、中小企業社員が中心の政管健保、自営業者らの国民健康保険などに分かれている。国民健保では加入者がすでに3割を自己負担しており、厚労省は健保組合や政管健保に加入しているサラリーマンの自己負担も引き上げる必要があるとみている。
 健保組合と政管健保の赤字は年間2,000億-3,000億円。本人の3割負担が実現すると、両健保あわせて4,000億円程度財政を改善できるという。
 高齢者医療費は30兆円の国民医療費の3分の1を占める。一般の医療費の約2倍の高い伸び率を示しており、その抑制が課題になっている。
 厚労省は高齢者医療の対象年齢を現在の70歳から75歳に段階的に引き下げ、自己負担増も求める方針。現在は外来で1ヶ月に3,000-5,000円の上限付きで1割を負担するか、1回の診療につき800円を負担し、1ヶ月に5回目からは無料となっている。これを1割負担に統一し上限を引き上げる。一定以上の経済力を持つ高齢者には現役世代並みの自己負担を求めることも検討する。
 診療報酬については2002年4月の改訂時で据え置きや引き下げも視野に入れて改定幅を考える。厚労省は高齢者医療費の伸び率を高齢者人口の伸び率並みの4-5%に抑える目標値の設定を検討している。目標を超えた場合には、翌年以降に医療機関に支払う診療報酬を削減するといった方法も導入する考えだ。
 中小企業従業員らが加入する政府管掌健康保険は慢性的な赤字が続いている。現在の保険料率は従業員の月収の8.5%(これを労使折半)で、ボーナスにかける料率は1%。2003年度にボーナスも含めた年収全体に保険料率をかける総報酬制を導入、保険料負担を事実上増やす方針。年間給与に占めるボーナスの比率が高い大企業では負担が大きくなるとみられる。
 医療制度改革は患者や国民、企業、医師等関係者すべてに痛みを伴う改革とする方針だが、負担増には国民や医療関係団体などの反発が必至だ。
 
 2002年度医療制度改革での主な検討項目
高齢者の負担  
対象者を70歳から75歳へ段階的引き上げ
高所得者は現役世代並み負担
医療機関窓口での負担を1割に統一、1ヶ月の負担上限の見直し
現役世代や企業の負担  
健保加入者本人の外来窓口負担を2割から3割に上げ
政管健保の保険料徴収を月収ベースからボーナスを加えた年収ベースに変更
医療機関などへの影響  
診療医療の据え置きや引き下げ
高齢者医療費の伸びに上限設定、上限超過の場合は後に超過分だけ診療報酬を下げる
薬価や医療材料価格の引き下げ
高校の求人 最低 厚労省まとめ 来春予定者、0.61倍

2001/ 9/ 6 日本経済新聞朝刊

   来春卒業予定で就職を希望している高校生に対する7月末現在の求人倍率は全国平均0.61倍で、1999年調査(0.62倍)を下回り、過去最低になったことが5日、厚生労働省の調査で分かった。前年比0.03ポイントの悪化で、98年の調査以来、4年連続の求職難。失業率が過去最悪の5%台に乗るなど雇用情勢の悪化が高校生にも大きな影響を与えた形だ。
 厚生労働省は10月2日、文部科学省とともに「新規高校卒業者就職問題懇談会」を緊急開催。経済団体に求人を要請し、若者向けの求人開拓推進員として、全国の公共職業安定所で150人を専任で当たらせることを決めた。
 求人数は前年同期比7.1%減の152,000人。求職者も3.2%減の248,000人となった。いずれも84年に調査を始めて以来、最も少なく、採用の中心となる製造業などで100人単位の求人が少なくなったことが目立つという。
 全国で最も求人倍率が高いのは、京浜の1.59倍で、次いで東海の1.01倍、京阪神の0.86倍の順。逆に最も低いのは南九州の0.19倍、次が北海道の0.24倍などとなっている。中学生の求職者は6,100人。求人数は1,200人と前年同期比17.4%の減少。求人倍率は0.19倍と過去最低だった。
雇用過剰感強まる 厚労省8月調査 製造・建設業で顕著

2001/ 9/ 5 日本経済新聞朝刊

   景気の後退を背景に企業の雇用過剰感が強まってきた。厚生労働省が4日発表した8月の労働経済動向調査の結果によると、労働者の過不足判断DI(「不足」と答えた企業の割合と「過剰」と答えた企業の割合の差)はマイナス9と前回(5月調査)より4ポイント悪化した。製造業や建設業の人員過剰が響き、サービス部門の人員不足感も薄れた。
 調査は従業員30人以上の5,342社を対象に8月1日時点の状況を聞き、57%にあたる3,067社の回答を得た。
 内訳をみると、正社員などを示す常用労働者がマイナス10とマイナス幅は前回より4ポイント拡大。パート労働者はプラス4と引き続き不足感が優勢だったものの、プラス幅は前回の9より縮んだ。
 運輸・通信業や金融・保険業は人員不足感が大きくなった。職種別では専門・技術、販売、サービスなどで不足感はなお強いものの、管理、事務、技能工などの過剰感が強まっている。
 また、1年後の労働者数の見通しについて「減少」と答えた企業は32%で、「増加」と答えた企業(12%)を大きく上回った。
派遣労働者 「事前面接」なお半数

2001/ 9/ 4 日本経済新聞朝刊

  厚労省調べ 社会保険加入は改善
 派遣労働者の雇用・社会保険加入が増加する一方、改正労働者派遣法で禁止されている派遣先決定前の派遣先への履歴書提出や、派遣先の「事前面接」が約半数で行われていることが3日、厚生労働省がまとめた実態調査で分かった。派遣労働者の8割以上が正社員や契約社員としての職業紹介を前提にした紹介予定派遣制度を「知らない」と答えるなど、派遣法改正内容の浸透が遅れている実態も浮かび上がっている。
 調査は1999年12月、広範な業務分野への派遣事業が可能になった法改正労働者派遣法が施行されたのを受け、今年1月に派遣元2,000社、派遣先10,000社、派遣労働者10,000人を対象に実施。派遣元699社(回収率35.0%)、派遣先1,223社(同12.2%)、派遣労働者2,029人(同20.3%)から回答を得た。
 派遣労働者の男女比は男性3(29.9%)女性7(69.7%)。平均年齢は34.3歳だった。97年の調査に比べると、男性の比率が2.8ポイント上昇、平均年齢は1.1歳上がった。賃金は平均日額約9,260円、平均年収が約239万円で、ほぼ横ばいだった。
 雇用保険・社会保険の加入状況について、派遣労働者の調査では、雇用保険が78.7%、健康保険が70.1%、厚生年金が67.4%で「加入している」と回答があった。97年より3保険ともそれぞれ5.0ポイント、5.9ポイント、6.5ポイント上昇しており、改善傾向がみられた。
 一方、派遣先の決定前に行われていることを聞いたところ、履歴書の提出(取り寄せ)では、派遣先の50.6%、派遣労働者の43.7%が「よくある」「たまにある」と回答。派遣先の事前面接についても、派遣先の50.5%、派遣労働者の47.4%が実施していることを認めた。
 履歴書の提出や派遣先の事前面接は、個人情報保護の観点や派遣先の直接採用を助長する行為などとして改正派遣法で禁止されている。
 改正派遣法で盛り込まれた紹介予定派遣制度について、派遣労働者の84.0%が「知らない」と回答。派遣先の1年の受け入れ期間制限も7割が制度を知らなかった。厚労省は「制度そのものを知らない派遣労働者が多いのは問題。周知徹底したい」と話している。
ケアハウス1万増設 政府検討 15万人の雇用創出

2001/ 9/ 3 日本経済新聞朝刊

  廃校など提供 民間資本活用
 政府は簡単な介護サービスを提供する施設(ケアハウス)を国の補助金なしで全国に1万ヶ所建設する構想の検討に入った。ケアハウス不足を解消するほか、建設関連などで新たに15万人程度の雇用創出につなげるのが狙い。施設運営などにかかわる規制を緩和し建設・管理費を圧縮、政府の財政支出に頼らず入居者の利用料のみで建設費を償却する方式を考えている。
 政府の産業・雇用問題のアドバイザーに内定した慶大の島田晴雄教授が雇用対策の一環として小泉純一郎首相に提案、首相は厚生労働省や国土交通省などに検討を指示した。従来のケアハウスと区別するため「純ちゃんハウス」と名付けて展開する計画。「財政出動ではなく知恵を使うことで雇用を生み出す構造改革モデル事業にする」(首相周辺)考えだ。
 ケアハウスは食事や入浴の世話など簡単な介護サービスを受けられる「軽費老人ホーム」の一種。収入に応じて比較的安い料金で利用できる。2001年3月末で全国に約44,000人分の施設があるが、需要はこの数倍はあるとみられ今後高齢化に伴い供給不足の深刻化が予想されている。
 構想では、まず地元自治体などが廃校となった学校跡地など遊休地を無償か格安で提供。企業のノウハウを使い社会資本を整備するPFI的手法を導入することで、社会福祉法人が通常4億円以上かけていた建設費を3億円程度に圧縮する。
 運営コストについても、職員の人員配置など施設運営にかかわる規制を緩和することで大幅に節減。15万円程度に設定した入居者の月額利用料のうち3万円を建設費の償還に充てれば金利分も含め約20年で完済する計算だ。
 政府は構想実現に必要となる関連法令の改正や規制緩和に早急に着手する方針。

【Add 2001. 9. 1】

  高齢者医療 75歳以上に

2001/ 9/ 1 日本経済新聞朝刊

  厚労省方針 段階的に引き上げ
 厚生労働省は高齢者医療制度の対象を今の70歳以上から段階的に75歳以上に引き上げる方針を固めた。2002年度に予定する医療制度改革の柱の1つとする。高齢者医療費を減らし、健康保険組合などが高齢者医療費を賄うために負担している拠出金を減らす狙い。ただ70-74歳の高齢者は自己負担が増えるため、見直し実現までには曲折もありそうだ。
 厚労省は医療制度改革案を9月中に公表し、年末に正式決定する方針。現役世代の医療費自己負担の引き上げなども盛り込む。
 高齢者医療費は約30兆円に達する国民医療費の3分の1を占めるが、その7割程度を全国の健保組合や国民健康保険、政府管掌健康保険などが負担する拠出金で、残り3割程度を公費で賄っている。高齢者の自己負担は抑えられており、外来の場合で1ヶ月3,000-5,000円を上限にかかった医療費の1割だけを支払うか、診察1回当たり800円支払い、その月の5回目から無料になる仕組みだ。
 これに対し、70歳未満世代はサラリーマンが加入する健康保険の場合、加入者本人で医療費の2割、自営業者やサラリーマンのOBが加入する国民健康保険の場合、3割を自己負担している。高齢者医療制度の対象年齢が75歳に上がれば、74歳までの高齢者はこれと同様の負担を求められる。急激な負担増とならないように厚労省は経過措置も検討する。一方、健保組合などの拠出金は減るので財政悪化で保険料引き上げなどに追い込まれるケースは減ると期待される。
大学で再学習 全額控除

2001/ 8/27 日本経済新聞朝刊

  雇用対策、厚労省が税制要望 来年度 自己啓発負担軽く
 厚生労働省はサラリーマンの自主的な能力開発を支援する減税制度の創設を2002年度税制改革で要望する。大学・大学院で再教育を受けるのに必要な入学金や学費などを原則として全額、給与所得から控除できるようにする。減税規模は1億5,000万円の見込み。雇用の流動化を前提に、企業の社内教育に依存せず自己啓発を目指す個人の負担を減らすのが狙いだ。
 厚労省が新卒を求めるのは「個人の自己投資費用を給与所得から控除する制度」。現在でもサラリーマンは一定額の給与所得控除(概算控除)を受けられるが、新制度による控除額を上乗せする。確定申告して経費の実額を控除する制度もあるが、勤務先企業から「職務上直接必要」との証明を取る必要があり、「控除できないケースが多い」と判断した。
 例えば、年収500万円の人の給与所得控除額は154万円だが、この人が大学で社会人教育を受ける際に学費などで総額200万円の費用がかかると、所得控除額を46万円上積みできる仕組み。所得控除額の上限は設けない。
 自己投資費用の対象は国内外の大学・大学院、一定の条件を満たす専修学校などへの入学金、学費のほか教材費、通学費。海外留学の場合は航空運賃などの渡航費用、各種の資格取得に必要な検定試験などの受験費用など広く認める。
 政府の経済財政諮問会議の専門調査会は5月の緊急報告で、働く人に自主的な能力開発を促進するため「自己啓発投資優遇税制」の導入を求めた。厚労省の案はこれに沿う内容。従来、社員教育の費用は全額を企業が負担し、税制上は損金扱いとなる。しかし、雇用の流動化や企業の経営合理化を背景に、能力開発は社員個人にゆだねる傾向が強まっている。厚労省は税制の支援対象を「個人重視」にする考えだ。
 ただ、控除対象とする教材費を趣味の書籍購入などとどう区別するかなど、つめが残る。財務省主税局は「自己啓発費用は現在の給与所得控除で対応可能」と反発するとみられる。

【Add 2001. 8.26】

  再雇用助成 民間紹介分も

2001/ 8/26 日本経済新聞朝刊

  10万人見込む 商工会議所も活用 経産・厚労省 失業増に備え
 経済産業省と厚生労働省がまとめた雇用拡大を目指す「地域産業・雇用対策プログラム」が明らかになった。情報技術(IT)、医療・福祉など成長分野の雇用を増やすため、民間の人材紹介会社を通じて離職者を雇い入れた企業に1人当たり70万円の助成金を支給する。全国の商工会議所に求人情報の収集と就職の仲介を要請する。両省は10万人以上の再就職を見込んでいる。
 
 プログラムは28日に平沼赳夫経済産業相、坂口力厚生労働相が発表する。7月の完全失業率は過去最悪の5.0%、失業者数が330万人程度になるのは確実とみられ、こうした雇用情勢の悪化に備えた当面の対策となる。小泉内閣の構造改革の手順を示す「改革工程表」にも明記する方針だ。
 助成金は「新規・成長分野雇用創出特別奨励金」の要件を緩和することで支給する。特別奨励金は、成長分野の企業が60歳未満の離職者を公共職業安定所経由で雇用することを要件に支給しているが、成長分野の求人情報が職安に集まりにくい。2002年3月末までの事業として1999年度の補正予算で900億円を計上したものの、支給実績は約200億円にとどまっている。
 このため、今年10月から民間の人材紹介会社が紹介し、離職者が再就職先を見つけた場合でも支給する。完全失業率が5%以上になると、45歳以上の離職者を雇い入れた企業に賃金の一定額を助成する「特定求職者雇用開発助成金」についても10月から同様に要件を緩和し、人材紹介会社を通じた雇用でも支給する。
 求人情報を幅広く集めるため商工会議所の職業紹介機能を強化する。事務系の求人情報は職安に少なく、経産省は商工会議所を活用することで、事務系の求人情報を集めやすくなるとみている。
 全国の商工会議所に求人情報の収集を求め、その情報を今月から始まった官民一体の求人情報インターネットサービス「しごと情報ネット」に提供する。大阪商工会議所(大商)は職業紹介事業者として厚労省に登録する方針で、両省はこうした商工会議所による求人企業と求職者の仲介を後押しする。
 このほか、大型倒産が起きた場合、職安が事業所まで出向いて就職をあっせんする「アシスト・ハローワーク」を機動的に実施する。地方自治体による事務の外部委託(アウトソーシング)も推進し、自治体が自ら雇用の受け皿を拡大することも検討する。
 

地域産業・雇用対策プログラムの主な内容

民間職業紹介会社を通じて離職者を雇用した情報技術、医療・福祉など新規・成長分野の企業にも助成金を支給
各地の商工会議所を通じた職業紹介の強化
地方自治体の事務の民間や非営利組織(NPO)への移管
官民一体の求人情報検索システム「しごと情報ネット」への情報提供の推進
企業倒産時の出張ハローワーク(公共職業安定所)の機動的な展開
職業紹介機関、能力開発機関、経済団体が連携して就職面談会を開催
雇用・能力開発機構と中小企業総合事業団などが開催する面接会やセミナーの共同開催
親会社→子会社・関連会社 中高年転籍に助成金

2001/ 8/25 日本経済新聞朝刊

  雇用受け皿厚労省方針 定年延長を条件に
 厚生労働省は45歳以上の中高年社員を子会社や関連会社に転籍させる企業を対象にした助成金制度を来年度に創設する方針だ。雇用の受け皿となる子会社が親会社より定年を遅らせることなどを条件に、転籍社員1人当たり30万円を支給する。年金の支給開始年齢の引き上げも踏まえ、リストラ企業の社員も希望すれば61歳以降も働きやすくなる。
 厚労省が新設を目指すのは「移動高年齢者雇用安定助成金」(仮称)で、来年度予算で80億円を概算要求する。来年度から2-3年の時限措置とする見込みで、今年度補正予算を編成する場合は前倒しの計上を求める。
 NTTグループをはじめリストラの一環として、分社化した新設子会社や既存の子会社に社員を出向・転籍させる企業は急増している。子会社に転籍すると給与は2-3割下がったり、希望しても60歳の定年までしか働けず、退職金を含めた生涯賃金が目減りしたりする例も多いという。
 新助成金はリストラ企業の子会社が親会社から45歳以上の社員を受け入れ、定年を60歳から65歳に引き上げた場合などが対象で、従業員1人当たり30万円を国の雇用保険から支給する。従業員が抱く将来の生活不安の緩和を側面から促す効果が見込まれる。
 今年度から公的年金の支給開始年齢は現在の60歳から段階的に65歳まで引き上げられるため、年金を受け取り始めるまでの無収入期間を極力短くする狙いもある。
都市再生 雇用22万人創出 公営住宅、民間で

2001/ 8/24 日本経済新聞朝刊

  国交省が重点政策 建設業の失業増緩和 来年度
 国土交通省は23日、2002年度に重点的に取り組む政策を発表した。国の公共投資関係費を10%削減することによる建設業の失業増加を懸念、都市部で民間事業者による公共賃貸住宅の建設などを推進し、10年間で22万人以上の雇用創出を目指す。高齢化対策として住宅や交通機関で段差をなくすといったバリアフリーを進める。国交省は重点政策を反映した概算要求を月末に財務省に提出する。
 
 国交省の試算によると、2002年度の公共事業関係費を2001年度より10%削減すれば、建設就業者では今後3年間で61万人の失業が発生する。7月の完全失業率(季節調整値)は5.0%と過去最高の水準になる見通しだが、公共投資の削減や不良債権処理などの構造改革が進めば失業率はさらに上昇する可能性が高い。
 国交省は失業率の上昇に歯止めをかけるためにも、雇用創出や投資誘発効果の高い都市再生に向けた投資や政策を推進する。
 具体的には、都市計画道路の整備に向けて、土地開発公社が土地を先行取得しやすくするよう同公社に対する無利子貸付制度をつくる。渋滞解消対策として自治体などの連続立体交差事業に対する貸付制度も整備する。ともに財源には道路整備に使途を限定する道路特定財源をあてる。個人住宅の耐震改修時に補助金を出す仕組みも導入する考えだ。
 
(以下、略)

【Add 2001. 8.21】

  雇用対策 建設業に特別助成金

2001/ 8/21 日本経済新聞朝刊

  厚労省 技術者移動促す
 金融機関の不良債権の最終処理(直接償却など)に伴う建設、流通業などの離職者の増大に備えて厚生労働省が検討していた包括的な雇用対策が明らかになった。建設業を対象に離職した技術者などを雇い入れた同業他社に雇用保険から特別助成する制度を新設する。流通、建設業などの事務職を受け入れる企業の発掘強化策なども盛り込む。小泉内閣の構造改革の痛みを和らげる雇用安全網の柱とする。
 
事務職 受け入れ企業開拓
 内閣府は不良債権の最終処理に伴う企業の倒産やリストラで39万-60万人が離職、特に建設業は平均的なケースで65,000人、卸売業・小売業(流通業)は33,000人が失業すると試算している。「就職支援特別パッケージ」(仮称)とよばれる厚労省の包括雇用対策はこれらの業種を主な対象に、中高年を中心として5万-10万人規模の離職者を円滑に再就職させることをめざす。
 不良債権処理など構造改革に伴う失業者の雇用対策としては、公立学校の補助教員に5万人を採用する構想などもある。厚労省の包括対策はこれらの構想と併せ小泉内閣の構造改革の手順を示す「改革工程表」に雇用安全網として盛り込む。そのうえで厚労省が必要経費を来年度予算で概算要求する予定だが、今年度の補正予算を編成する場合は前倒し計上を求める。
 建設業向けに限った特別助成金は、建設業就業者のうち建築物を設計する建築士や土木工事の施工管理担当者などを別の建設会社が採用した場合、1人当たり約20万円を国が支給する。概算要求額は約20億円になる見込みだ。
 厚労省は現在、建設業の事業主から集める各種助成金のための雇用保険料を従業員賃金の0.45%と他の産業より0.1ポイント高くしている。建設業は臨時就業者などが多く、雇用環境改善のための費用が他の産業より多くかかるためで、この上乗せ財源の一部を特別助成金に移す。
 地方のゼネコン(総合建設会社)には経営基盤を強めるため経営不振の準大手ゼネコンなどの技術者を採用したいという企業もある。新助成金でこうした業界内の人材移動を促す。
 流通関係の販売職、建設業の営業職などの事務職は「業界内では人員過剰」との判断から他産業で受け入れ先企業を発掘する。厚労省の外郭団体、産業雇用安定センターの約240人の転籍支援担当者を5年かけて約400人に増強。離職予定者の仕事歴をもとに受け入れ先企業を探す。
 失業手当については、職業訓練を受けている間は一定額の給付を受けられる訓練延長給付制度を拡充する。中高年の離職者を雇い入れる企業に対する助成金は完全失業率が5%以上になった場合、助成対象年齢を60歳以上から45歳以上に引き下げる。

厚生労働省の包括的な雇用安全網対策の主な内容

建設業技術者・技能労働者向けの特別助成金「建設業労働移動支援助成金」(仮称)の新設
流通の販売職、建設の営業職などの他産業の受け入れ先企業の開拓強化
失業率が5%以上になったときに45歳以上の人を雇い入れた事業主に賃金の一部を助成
失業手当の期限切れ後も訓練期間中は一定額を給付される「訓練延長給付制度」を拡充させ、これまでの中心の3ヶ月コースに加えて6ヶ月コースをより多く用意し、受講機会も拡大
1ヶ月間に30人以上の人員削減を予定している企業に、離職予定者に与える休暇1日当たり4,000円を支給
募集・採用時に年齢制限をしないように事業主に要請
人材派遣「パート型」広がる 派遣先、コスト削減期待

2001/ 8/21 日本経済新聞朝刊

   人材派遣各社が一般事務職を短時間、顧客企業に送り込む「パートタイマー型」派遣市場を積極的に開拓している。同じ仕事を1人ではなく、複数の人間が短時間こなす新しい雇用形態だ。女性一般職の新卒採用中止で不足気味の、比較的簡単な事務要員の不足を補える。通常の派遣よりコストが安い場合も多く、各社は有力市場と見ている。
 短時間のパート型派遣を扱うテンプスタッフ(東京・渋谷)の子会社、グッドジョブ(東京・新宿)は、派遣スタッフ数を首都圏を中心に現在の3,500人から4割増の5,000人まで増やす目標を立てている。OA機器の無料講習会を催して、人材の確保を急ぐ。パソナ(東京・千代田)も来春までに月間派遣数を現在の1.5倍の述べ3,000人規模に広げる。
 パート型派遣の対象となっているのはデータ入力やファイリング(文書の整理・保管)など比較的単純な業務。主に主婦など、決められた短い時間だけ働きたい女性求職者と、効率的に人を確保したい企業のニーズを結び付けた格好だ。業務の繁閑の差が大きい銀行や、通信会社の問い合わせへの対応と行った依頼が多くなっている。
 「認知度が高まると同時に短時間勤務を求める登録者も増えている」(壇上美智子パソナアシスト派遣事業部副事業部長)という。
 各社が顧客企業に請求するパート型の派遣料金は、一般事務職で1時間当たり1,700-2,000円(首都圏、交通費別)が中心となっている。短時間勤務のため、同じ仕事内容の通常派遣よりも200-300円前後安い契約が多い。企業が直接雇用するパートよりは20-50%高いが、派遣会社が出金管理や欠勤者の補充もするため、管理部門の人員を減らしたい企業の需要は根強い。
 ここ数年、一般事務職採用を手控え、退職した女性を派遣社員として採用する企業が増え続けている。ただし1日8時間、週5日間のフルタイム勤務が原則だった。しかし主婦には、所得税の扶養控除(年間原則103万円)限度額内で働きたいといった人や、仕事以外にやりたいことがあるなどの理由でフルタイム勤務には消極的な人も多い。派遣会社側は、こうした潜在労働力を掘り起こし、増加傾向にある単純業務の派遣需要に対応する考えだ。
医療費、大病院がほぼ半分 昨年度の厚労省調査

2001/ 8/21 日本経済新聞朝刊

  1人あたり高額に
 2000年度の医療費のおよそ5割がベッド数200以上の大病院で使われていることが、厚生労働省が20日まとめた医療機関別の医療費の動向調査で明らかになった。重病患者が集まり、高度な医療を提供する大病院ほど1人当たりの医療費が高いためだという。
 昨年度の医療費(生活保護向けの公費負担医療費を含む)の総額は29兆4,000億円で、前年度に比べ1.9%減った。介護保険制度の導入により、医療費で支払っていた介護費用の一部(約1兆7,000億円)が介護保険に移行したためで、これを加えると3.9%増だった。
 医療費のうち歯科や薬局を除く病院、診療所で使われたのは24兆500億円。ベッド数200以上の大病院は11兆4,000億円で全体の47.4%をしめた。施設の数では3%に過ぎない大病院が医療費の約半分を使っている。
企業の3割「予定なし」 男女格差解消の積極策 ポジティブアクション

2001/ 8/20 日本経済新聞朝刊

   職場の男女格差解消に向けた企業の積極的な取り組み(ポジティブアクション)について、約3割の企業が消極的なことが厚生労働省と日経連のアンケート調査で明らかになった。ポジティブアクションは回答した企業の44%がすでに導入しているものの、言葉を知らない企業も1割を超えた。厚労省は「女性活用の必要性に関する認識はまだ低い」として、先月発足した「女性の活用推進協議会」で企業への浸透策を検討する。
 
「初耳」経営陣の1割超す
 調査は今年5月から6月にかけ、日経連が毎年実施している役員アンケート「トップマネージメント調査」に調査用紙を添付する形で実施された。2,031社を対象に実施、7月20日までに回収した316社の回答をまとめた。
 ポジティブアクションという言葉の認知度では、4分の3以上の企業が「意味を知っている」と回答した。「聞いたことはあるが、意味は知らない」が12.3%、「聞いたことはない」も12.0%に上った。
 女性の採用拡大や管理職の増加などポジティブアクションの具体的な取り組みを始めている企業は44.6%。一方、「今のところ取り組む予定はない」と答えた企業も31.2%に上り、企業によって職場の男女格差の解消に対する考え方の違いが鮮明になった。
 「予定はない」と回答した企業にその理由(複数回答)を尋ねたところ、「女性は十分に能力を発揮し活躍している」が最も多く35.1%。「手法がわからない」(12.4%)、「対応する余裕がない」(9.3%)などが続いた。
 厚労省は7月30日、ポジティブアクションの浸透を図るため、企業経営者や経営者団体の代表が参加する「女性の活用推進協議会」を発足した。メンバーには大学教授ら有識者に加え、11社の企業経営者、日経連、東京商工会議所、全国中小企業団体中央会の各理事が加わっている。
 今回のアンケートでもポジティブアクションに取り組むきっかけは「企業トップの方針」が6割以上を占めたことから、経営者らの意識改革を促す取り組みなどについて、検討を進める考えだ。

【Add 2001. 8.19】

  新卒採用試行型に 派遣方式体験入社 適材確保へ急増

2001/ 8/19 日本経済新聞朝刊

   学生の適性や能力を見極めた上で正社員としての道を開く新卒採用の手法を、大企業が相次ぎ導入し始めた。日商岩井や伊藤忠商事は新卒を派遣社員として受け入れて一定期間後に正社員にする「紹介予定派遣」を来春から活用。JCBなども学生に体験入社してもらうインターンシップ制を利用する。「試行採用」の性格を持つ手段により、即戦力の人材を効率よく採用したい企業側と、仕事の中身を重視する学生側の思惑が一致、新卒市場の多様化が加速する。
 
「期待外れ」回避
 日商岩井は来春、子会社を通じ、事務職で50人弱の派遣社員を受け入れ、グループ各社に送り込む。伊藤忠と丸紅も来春、事務職でそれぞれ約100人を確保、グループ各社などに配属させる。いずれも1年程度過ぎたところで適性があると判断した人を選び、正社員になることを働きかける。
 ソニーやパソコン販売のソフマップも今春、それぞれ10人程度を受け入れ、ソフマップはうち1人を7月に正社員として採用した。
 紹介予定派遣は一定条件をクリアした新卒を人材派遣会社から受け入れ、欲しい人材だけ正社員として採用する。面接や試験だけで正社員を採用すると、期待したほど能力を発揮できない新卒が入ることもある。新方式だと実際の仕事ぶりを見てふるいにかけられ、卒業前の学生を面接する手間も省ける。企業側の関心は高まっており、2002年度には人材派遣大手のパソナ(東京・千代田)が3000人、テンプスタッフ(東京・渋谷)が1000人を紹介予定派遣で企業に送り込む。
 
定員の4倍応募
 休暇中などの学生に2-3週間程度、営業や研究開発などの仕事に参加してもらい、優秀な人材の発掘を狙うインターシップ制の採用企業も急増する。ジェーシービー(JCB)は今秋から商品開発、販売促進などの職種で10-20人を受け入れる。東芝は7月、従来の技術職に加え事務職でもインターンを募集、130人の枠に対し約500人の応募があった。
 入社後の職種をあらかじめ示し、専門性の高い人材を採る「職種別採用」も広がっている。協和発酵は来春採用分から事務系を営業、管理など3コースに分け、求める適性と能力を示した上で採用する。日産自動車は今春採用分から商品企画や車両開発など募集職種を明示した。
 
「専門家で鍛える」
 時間をかけて適性や能力を見極める採用手法が広がっている背景には、専門性を備えた即戦力を求める声が高まっていることがある。富士総合研究所の渥美由喜研究員は「入社後に様々な職種を経験させて育てるやり方から、若手の時から専門家として鍛える方針へと、人材育成手法が変わり出している」と見ている。
 正社員の平均生涯賃金が男性で3億4,000万円、女性で2億4,000万円(富士総研調べ)に達することも、正社員を吟味する動機になっている。学生側も仕事の中身で就職先を決めたいという考え方が強まっている。

【Add 2001. 8.18】

  ネットで学習「eラーニング」 職業訓練に導入 厚労省

2001/ 8/18 日本経済新聞朝刊

   厚生労働省は2002年度から離職予定者のために公共職業訓練で、インターネットを使った遠隔教育「eラーニング」を試験的に導入する。仕事が忙しいなどの理由で公共訓練校に通学する時間のない人など約2万人が対象。ネットを使って教育・訓練ソフトを配信し、受講者が自宅や会社でも訓練を受けられるようにする。来年度予算の概算要求に盛り込む。
 eラーニングはパソコンの画面上で都合の良い時間に学習・訓練する仕組み。受講者はネット上にIDとパスワードを入力してソフトの配信を受ける。講師からメールで1人ずつ課題を与えられ、その課題をこなすと次のステップに進むなど、個人の能力開発の進ちょく度合いを把握できる利点もある。
 公共職業訓練は民間の専修学校などへの委託も含めて通学生が原則。しかし、勤め先のリストラなどで将来の離職が決まっていても現在の仕事が多忙で訓練校に通学する時間がとれない人も多く、eラーニングも訓練形態の1つに加える。
 ソフトの配信料は原則無料とする方向だが、厚労省は通信料やネットの接続業者(プロバイダー)との契約料は受講者個人に負担してもらう考え。離職が確定していないものの、将来の離職に備えて受講を希望する人は、一般の公共職業訓練と同様に有料で利用できる。
 ソフトの内容は経理事務などからビル管理、情報システムなどへと順次増やしていく。システムの中核部分となるサーバーはホワイトカラー向けの職業能力開発拠点「アビリティガーデン」(生涯職業能力開発促進センター)か、雇用・能力開発機構に置く見込み。
雇用移動円滑化へ新助成金 失業対策 効果は未知数

2001/ 8/17 日本経済新聞朝刊

  能力開発へ配分 重要に
 雇用保険を財源とする雇用関係の新しい助成金制度が10月からスタートする。現在の約60の助成金を統廃合して支給額を減らす一方、人材移動を手厚く支援するなど従来よりも助成対象にメリハリをつけている。企業のリストラや銀行の不良債権処理に伴う企業破たんなど雇用情勢の悪化に備えた安全網(セーフティーネット)の強化策だが、失業率の上昇を抑制できるかどうか不透明だ。
 新しい助成金の目玉は「労働移動支援助成金」。厚生労働省は従業員を一時的に出向させるなど企業が雇用を維持する場合、賃金の一部を助成してきた従来の政策を転換。この助成金は雇用の流動化を円滑にする初の本格的な支援策となる。
 
離職予定者に休暇
 リストラで1ヶ月に30人以上の人員削減を予定している企業が離職予定者に有給休暇を与えると、企業に1日1人あたり4,000円(上限30日)支給する。一方、離職予定者を採用した事業主は講習費を給付される。人材の送り出し側と受け入れ側の双方を助成し「失業なき労働移動」を進めるのが狙いだ。
 今年4月からリストラなどによる離職者に対して最大330日まで失業手当を給付している。厚労省はこの助成金をうまく使えば、再就職が容易になり、失業手当に頼らなくてすむとみている。
 ただ、雇用の安全網としての効果は未知数だ。離職者が大量発生すると、送り出し企業への助成が膨らむ。離職者の受け入れ先が増えなければ「単にリストラを促しただけの結果に終わりかねない」(労組幹部)との懸念がある。
 
継続雇用に疑問も
 衣替えする既存の助成金もある。「特定求職者雇用開発助成金」は55歳以上の中高年を雇い入れた企業が助成対象だが、60歳以上に引き上げる。代わりに、失業率が急上昇するなどした場合は支給対象を「45歳以上60歳未満」に引き下げる緊急発動の仕組みを盛り込んだ。
 樋口美雄慶大教授は「海外では人材の受け入れ、雇い入れ助成の効果に疑問の声が出ている。企業は助成金を受け入れたときは人を雇うが、助成が切れても雇い続けられるかという問題が残るため、かえって雇用を不安定にする可能性がある」と指摘する。
 樋口氏によると、英国ではブレア政権の下で失業者に能力開発、ボランティア、紹介先企業への訪問などを義務づけ、失業率を低下させるのに成功した。「ただお金をばらまくのではなく、情報提供や相談が大事」とソフト面での支援の重要性を説く。
 
大半はミスマッチ
 日本では、失業者の4分の3程度が求職者と求人企業との条件のズレから生じる「雇用のミスマッチ」によって就職できずにいるとみられている。改善には職業訓練や能力開発の強化が不可欠で、10月にスタートする「キャリア形成促進助成金」はそのための具体的な支援策となる。
 例えば、従業員を専門学校などで訓練する企業は負担した入学料や受講料の4分の1まで助成を受けられる。従来のような企業による従業員教育ではなく、従業員個人が主体的に能力開発する取り組みを後押しする狙いで、ここでも「企業から個人へ」と支援対象を大幅に見直すことにした。
 とはいえ、従業員の能力開発に回す予算はここ数年、雇用関係助成金の約4分の1。従業員が転職しやすくなる能力開発は労働移動を円滑にし、雇用のミスマッチによる失業を防ぐ。失業率が高止まりするなか、助成金の配分を変える必要がありそうだ。
特養ホーム 個室化を推進 厚労省検討 家賃分は自己負担

2001/ 8/17 日本経済新聞朝刊

   厚生労働省は来年度から代表的な高齢者の介護施設である特別養護老人ホームの個室化を進める。特養ホームを新設する場合、2003年度までは従来の相部屋型と新しい個室型のいずれかを選択できるようにし、2004年度からは原則として個室型しか認めない方向で検討している。高齢者の使い勝手や、介護の質を高めるのが狙いだ。個室化に伴って従来は介護保険で負担していた家賃相当分の費用などを入所者が負担する方式に変える。
 特別養護老人ホームは主に社会福祉法人や自治体などが設置・運営しており、介護保険で「介護が必要」との認定を受けた人が利用できる。全国で約4000施設、28万人分が整備されているが、4人部屋が大半になっている。介護サービスを受けながら長期間入所する「生活の場」としては不十分な面があった。
 来年度から新たに認める施設は10室程度の個室を1つの単位とし、各室の中心に共有スペースを配置する形を想定している。少人数のグループを家庭的な雰囲気で介護する「ユニットケア」と呼ばれる方式を採用する。
 既存施設の建て替えでも個室化を進めるように指導する方針だ。
 従来施設の特養ホームは施設整備費の4分の3程度に公費補助が出る。個室型では個室部分の整備費に公費補助が出なくなる見通し。この部分は施設の設置者が新たに自己資金や買い入れ金で賄い、入所者から徴収する家賃相当部分などの負担で償却することになる。
 現在、要介護度3(中程度)の高齢者の場合、特養ホーム入所者の費用は介護保険の1割負担と食費の一部負担を含め月50,000円程度。個室型特養ホームではこれに加え家賃相当部分などを上乗せするため、従来に比べ自己負担が2倍程度になる場合も出てきそう。自己負担は家賃相場が地域によって異なることなどを踏まえ、全国一律ではなく一定幅を許容する方針だ。
 個室型特養ホームは来年度から整備が始まっても実際に運営が始まるのは2003年度になる見通し。厚生労働省ではそれまでに介護保険から個室型特養ホームに支払う介護報酬や入所者の自己負担額について具体的に詰める。
「就職支援員」全国に 職業訓練と紹介、一体で

2001/ 8/14 日本経済新聞朝刊

  失業者向け、来年度から 厚労省方針
 厚生労働省は民間の専修学校などで職業訓練を受けている失業者が短期間で再就職できるように、来年度から全国に約100人の就職支援員を置く方針だ。支援員は訓練期間中も求人情報を提供し、訓練終了後は直ちに官民の職業紹介機関を通じた就職活動を手伝う。訓練と紹介が一体となった「就職ワンストップサービス」を可能にし、就職率を高めるねらいだ。2002年度予算で概算要求する。
 「就職支援アドバイザー」(仮称)と呼ばれる支援員は公共職業訓練校、職業能力開発大学校など全国の73箇所に置く予定。厚労省は民間企業の人事・労務担当経験者などに委託したい考えだ。
 支援員の主な仕事は(1)失業者が訓練を受けている専修学校などに出向いて就職先の希望を聞き、その求人動向などを失業者に情報提供する(2)訓練期間後も直ちに公共職業安定所(ハローワーク)の求人情報を教えたり、民間の職業紹介会社に求職者登録するよう指導する--など。
 現在、厚労省は失業者向けの訓練の大半を民間の専修学校、各種学校に委託しており、2001年度も30万人の委託を計画している。ただ、委託後に失業者が再就職できたかは点検していないのが実情だ。職業訓練と職業紹介が別個に実施され、失業者にとって利便性に欠ける面もある。
 国が民間に委託する失業者向け訓練は会計・経理などの事務系、情報システム・プログラミングなどの情報系の2つで全体の約8割を占める。ただ、民間で訓練を受けた失業者の就職率は3-4割程度とみられ、公共の職業訓練を受けた失業者の就職率(約6割)を大きく下回っている。
介護保険利用でも・・・ 家族負担なお重く

2001/ 8/14 日本経済新聞朝刊

  「1日8時間超」3割 医療経済研調べ
 介護保険の導入後も家族による高齢者介護の負担はまだ重いという調査研究を厚生労働省所管の財団法人、医療経済研究機構がまとめた。介護保険は家族の介護負担の軽減が導入のねらいのひとつだったが、調査では介護保険で受けられる介護サービスを上限まで使ってもなお1日平均の家族介護の時間が8時間を超えるケースが3割あった。介護サービスの上限の緩和など、制度見直しを求める声が強まりそうだ。
 調査は在宅介護サービスを受けている全国の高齢者332人を対象に、調査員が訪問する形で2月に実施した。
 保険による介護サービスを法律で定める上限まで使っている人では、家族の介護時間が1週間当たり28時間(1日平均4時間)以下、29-56時間(同8時間)と答えた人がいずれも35%。57-112時間(同16時間)、113時間以上もそれぞれ22%、8%あった。上限まで使っていない人では28時間以下が49%あったのに対し、29-56時間は17%、57-112時間は14%。総じて介護サービスを上限まで使っている人の方が家族介護の時間も長い。
 サービスの種類別でみても、訪問介護、訪問入浴、訪問介護など4種類以上のサービスを利用している人では1週間の介護時間が113時間以上の人が24%あった。

【Add 2001. 8.12】

  公的年金給付 物価下落に応じ減額

2001/ 8/12 日本経済新聞朝刊

  政府・与党 歳出削減へ検討
 政府・与党は2002年度から厚生年金や国民年金など公的年金の給付額を物価下落に応じて引き下げる方向で検討に入った。高齢者の生活への配慮などを理由に2年連続で給付額の引き下げを見送ってきたが、「聖域なき構造改革」で歳出全般の削減を迫られており、見直しが避けられないと見ている。今後の景気や物価の動向を見ながら、年末の来年度予算編成に向けて調整する。
 
スライド制凍結を解除
 公的年金の給付額は前年の消費者物価の変動を自動的に反映させる「物価スライド制」を採用している。年金のほか、児童扶養手当など諸手当にも同じ仕組みが適用されている。
 2000、2001年度は前年の消費者物価がマイナスになったため、本来は年金給付額を引き下げるはずだった。だが「景気の先行きが不透明ななかで、給付額を引き下げれば個人消費回復の妨げになる」「国政選挙を控えて得策ではない」などの慎重論が高まり、政府・与党は引き下げが難しいと判断。物価スライドの適用を停止する特例法で、年金給付額を2年続けて据え置いてきた。
 給付額の据え置きは年金財政や国庫の負担増になる。前年の消費物価が0.7%下落した2001年度の場合、公的年金給付額(諸手当を含む)は全体で約3,300億円拡大し、国庫負担分として約500億円の追加支出が必要になった。
 政府は2002年度予算の概算要求基準で社会保障関係費の伸びを7,000億円と設定し、高齢化などによる自然増で本来必要となる1兆円から3,000億円程度圧縮した。政府・与党には「医療制度改革で医療費の伸びを抑えるだけでは不十分。年金でも物価スライドの凍結を解除して財政健全化を急ぐべきだ」との声が高まっている。
 2001年6月の消費者物価は前年同月比0.5%のマイナスとなるなど、物価の下落が続いている。仮に2001年の消費者物価が前年比で0.5%下落となった場合に物価スライドを適用すると、夫婦2人の標準世帯では厚生年金(月額238,000円)は月1,090円、国民年金(月額134,000円)で月670円、それぞれ受取額が減る見通しだ。
 もっとも与党内には物価スライドの適用凍結を継続すべきだとの意見も根強く、景気動向も見極めながら、年末の予想編成過程で最終判断する方針だ。

【Add 2001. 8.11】

  雇用対策 年1兆5000億円

2001/ 8/11 日本経済新聞朝刊

  3年程度実施同友会が提言 教育受講券支給など
 経済同友会は10日、構造改革に伴う失業者の増加に備える雇用対策の提言を発表した。再就職支援のための教育受講券(バウチャー)の支給、失業給付の支給期間延長などが柱。毎年約1兆5000億円の財政支出を3年程度実施するように求めている。同友会は同対策で「100万人の失業を防ぐことができる」(小林陽太郎代表幹事)とみている。
 対策は(1)民間の職業紹介機関の機能強化(2)求職者の職業能力の向上への支援(3)失業者の生活支援--の3項目からなる。民間の職業紹介機関の機能強化では、公共職業安定所の業務をきめ細かい相談、職業紹介が可能な民間に委託し、政府が紹介手数料を負担するように提案している。
 職業能力の向上への支援では、公設民営で実践的な職業訓練をする「コミュニティーカレッジ」を全国で200ヶ所開くように求めている。
 また解雇や倒産などで離職した非自発的失業者を対象に、1人100万円相当の教育訓練が受講できる「教育バウチャー」を支給することも盛り込んだ。
 失業者の生活支援では、完全失業率が5%に達した場合に、失業給付の支給日数(現在は最長330日)を一律90日延長するように求めている。
企業の4割 社員減少 厚労省調べ

2001/ 8/11 日本経済新聞朝刊

  正社員・パート、95年比 希望退職見直し機運も
 厚生労働省が10日発表した2000年の産業労働事情調査によると、約4割の企業で1995年時点と比べ正社員、パートタイマーなどの常用労働者が減少した。卸売・小売業・飲食店、鉱業、建設業、製造業などで減ったと答えた企業が多く、情報技術(IT)関連を除くすべての業種で人員削減が進んだことを裏付けている。
 95年時点と比べ労働者が減少した企業は全体の41.6%と、前回の94年調査と比べ14.6ポイント増えた。一方、増加と答えた企業は18.3%と同11.2ポイントのマイナス。「ほぼ同じ」と回答した企業は40.1%だった。
 過去2年間に何らかの雇用調整を進めた企業は全体の52.5%と、前回調査より8.3ポイント低下した。このうち「希望退職者の募集・解雇」をした企業は17.7%と同6.0ポイント上昇した。
 半面、今後も希望退職者の募集や解雇を続けると答えた企業は5.1%にとどまった。
 希望退職や早期退職優遇制度を採用すると、優秀な社員が多数応募する例があり、人材つなぎ止めのために見直し機運が出ている公算もある。
 調査は常用労働者30人以上の約4,500社を対象に昨年8月末時点の状況について実施し、約3,600社から回答を得た。
離職者 昨年661万人

2001/ 8/ 9 日本経済新聞朝刊

  厚労省調査、38万人増 離職者を4年連続上回る
 厚生労働省が8日発表した2000年の雇用動向調査(速報)によると、昨年1年間に仕事を辞めた人(離職者)は661万人となり、前年より38万人増えた。7割弱の離職者が「個人的な事情」を理由としており、勤務先の経営の先行きへの不安や就業条件への不満などから、転職を目指した人が多かったと厚労省はみている。
 昨年1年間に仕事に就いた就職者は608万人と前年比25万人の増加にとどまり、4年連続で離職者が就職者を上回った。
 離職者は転職や解雇などで仕事を辞めた人を指し、このうち再就職したいのに働き口がみつからない人が失業者となる。正社員、契約社員、パートタイマーといった常用労働者に占める離職者の割合は16.0%、就職者の割合は14.7%で、その差は1.3ポイントとなり、前年より0.3ポイント拡大した。
 離職した理由をみると、個人的な事情が67.0%と前年より1.2ポイント上昇。半面、倒産、解雇などの「経営上の都合」は前年比1.8ポイント低下し9.3%となった。昨年1年間でリストラによる人員削減の動きが一服していたものの、リストラとは無関係に離職した個人が多かった格好だ。

【Add 2001. 8. 4】

  派遣社員の正式採用 円滑化

2001/ 8/ 4 日本経済新聞朝刊

  「紹介予定」ルール見直し 厚労省 / 面接時期など前倒し
 厚生労働省は派遣社員の働きぶりを派遣先の企業が一定期間みたうえで正社員として採用できる「紹介予定派遣制度」について、運用ルールを9月にも見直す。具体的には、人材派遣会社と派遣先企業が契約した派遣期間の途中でも正社員として採用しやすいようにする。派遣先企業が派遣社員を正社員として採用する前に実施する面接についても、時期を前倒しできるようにする。このために同省の通達を改める。派遣社員から正社員などへの転換を円滑に進め、雇用の受け皿を広げるのが狙いだ。
 紹介予定派遣は昨年12月に解禁された制度。人材派遣会社と派遣先企業(求人企業)とがあらかじめ契約を結ぶ。派遣期間中の派遣社員の働きぶりが優れていれば、派遣先は正社員として採用できる。
 現行制度でも、求人企業と派遣社員が合意すれば、派遣期間の途中であっても派遣契約を打ち切り、その分だけ早く正社員にすることは可能。だがいまの厚労省の通達では、契約時にこうした規定を「特約」の形で盛り込めるかどうかを明確にしていなかった。
 人材派遣会社からは「派遣先から予定より早く正社員として採用したいと要望が出ても、契約内容に明記していないので手続きに手間取る」などの不満が出ていた。このため厚労省は契約上も特約が可能である点を通達で明確にする。
 また、現在は通達などで、派遣期間の終了予定日から「1週間程度前の日」から求人企業と派遣社員が面接して求人・求職の意思を確認したり、求人企業が知識・能力テストを実施してもよいとしている。
 厚労省は面接などのできる時期を、例えば派遣期間の終了予定日から「2週間程度前」や「3週間程度前」に前倒しできる方向で検討、派遣先企業が余裕を持って配属先の希望を聞くなど採用の準備ができるようにする。
 派遣社員本人が希望した場合は、時期を問わず企業と面接できると通達で明確にする。
 一連の運用ルールの見直しは、小泉純一郎首相の諮問機関である総合規制改革会議が7月にまとめた基本方針を受けた措置。欧米各国では派遣社員の約3割が紹介予定派遣といわれ、日本でも大手の人材派遣会社はすでに100人以上の人材を企業に送り込んでいるという。

【Add 2001. 8. 2】

  パート・派遣 比率高まる 連合総研調べ 影響さまざま

2001/ 8/ 2 日本経済新聞朝刊

  正社員、高度な仕事 専念 / ノウハウ蓄積・伝承 困難
 パートや派遣労働者など正社員以外の「非典型労働者」の活用は、「正社員が高度な仕事に専念できる」と行ったプラス面がある一方、「ノウハウの蓄積が難しい」などのマイナス面もあることが、連合総合生活開発研究所(連合総研)などが1日まとめた調査でわかった。また、8割近い事業所がパートの組合員化を検討さえしていないなど、非正社員の組織化が遅れている実態も浮かび上がった。
 調査は昨年10月から12月にかけ、連合傘下の600の事業所と3,000の職場を対象に実施、332事業所、1,644職場から回答を得た。
 事業所での正社員の構成比率は72.9%で、4分の1強は非典型労働者が占めた。非典型労働者のうち契約社員やパートなどの非正社員が12.2%、派遣労働者や職場内請負社員など外部労働力が14.9%。3年前と比べると約7割で正社員の比率が下がる一方、派遣労働者は57.2%、パートは38.6%の事業所で比率が高まった。
 非典型労働者を増やす理由としては、大半の就労形態で「労務費の削減」が最も多く、パートや派遣労働者、職場内請負社員では6割近くの事業所で人件費の抑制が目的であることがわかった。さらに「正社員でなくてもできる業務」「業務量の変動に対応するため」などが上位となった。
 また、非典型労働者を活用している職場の約3分の2がプラスの影響があると考え、「正社員が高度な仕事に専念できる」「正社員の労働時間の短縮」などの点で評価。マイナス面としては、「ノウハウの蓄積・伝承が難しい」「機密事項が漏えいする危険がある」などが挙がった。
 一方、雇用関係のある非正社員の組合化に向けた取り組みは進んでいない。「組合員化している」と回答した事業所は契約社員で13.2%、パートで4.4%。契約社員で約7割、パートで8割近くの事業所が検討さえしていなかった。
 連合総研は「正社員以外の労働者は量的に増えているだけでなく、質的にも拡大し、様々な使われ方をしているようだ。組合にはそうした職場の実態に即した取り組みが求められている」と分析している。
雇用 6地域で悪化

2001/ 8/ 1 日本経済新聞朝刊

  4-6月失業率 生産拠点再編響く
 雇用情勢が全国的に厳しさを増している。4-6月期の完全失業率(原数値)は全国10地域のうち東北、近畿、九州など6地域で前年同期より悪化した。公共事業の削減や製造拠点の再編に伴う人員削減が続いていたところに、情報技術(IT)関連企業の減速が追い打ちをかけている。
 4-6月期の完全失業率が北海道を抜き全国最悪となった近畿では松下電器産業がリストラ計画を発表。販売子会社でも2003年度までに従業員を削減する方針だ。マイカルやイズミヤなど経営再建中の流通企業も人員削減を加速させており、製造・販売拠点の統合や移転の影響が顕著だ。
 北海道や東北では公共事業削減の影響が特に大きい。
 IT関連企業の失速も雇用に暗い影を落とす。九州では半導体関連産業の不振が深刻。生産ライン休止、新工場の稼働延期や夏休み日数の拡大などが目立つ。九州経済調査協会は「今年度は九州・沖縄でマイナス成長となり、32,000人規模の失業者が生じる可能性がある」と指摘する。
 一方で、雇用の下支えになっている業種もある。顧客からの問い合わせや注文を電話や電子メールで受け付けるコールセンターは、首都圏では人材獲得が難しくなったため、地方分散が進み始めた。コールセンターの集積地となった札幌市では昨年度以降、アマゾンジャパンなど約10社が進出した。札幌市によれば、今年度末までに約2,500人の雇用創出が見込まれる。

【Add 2001. 7.28】

  雇用助成金 緊急発動を新設 厚労省 企業向けを再編・縮小

2001/ 7/27 日本経済新聞朝刊

   厚生労働省は26日、改正雇用対策法の政省令案などを労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)の職業安定分科会に諮問した。雇用保険を財源とする企業向け助成金を大幅に再編・縮小し、雇用情勢が急速に悪化した場合に緊急発動する制度の新設などを盛り込んだ。8月末の答申を経て10月1日から施行する。
 見直しの対象となる雇用関係の主な助成金は、中高年を雇い入れた企業向けの「特定求職者雇用開発助成金」と企業の雇用維持を支援する「雇用調整助成金」(雇調金)。
 特定求職者雇用開発助成金は現在、55歳以上の中高年を雇い入れた企業に支給している。この支給対象年齢を通常は60歳以上に引き上げる。半面、(1)完全失業率が4.5%以上(2)有効求人倍率が0.5%以下で、前年同月比10%以上低下--などの条件をすべて満たすと、対象年齢を45歳以上に引き下げるようにする。雇用情勢に応じて安全網(セーフティーネット)を手厚くし、給付にメリハリをつける狙いだ。
 緊急時の給付対象となる45歳以上の中高年は勤務先のリストラのため離職を予定し、再就職のための援助を受けているサラリーマン。別の企業がこの人を雇い入れると、国が6ヶ月間にわたり賃金の一定額を支給する。
 雇調金は従来、不況業種を指定したうえで、従業員を解雇せず休業をさせる経営不振企業に支給してきたが、今後は業種に関係なく「最近6ヶ月で生産量10%減」などの基準を満たす企業を支援する。現在2年間の支給期間は1年間に短縮する。
 
最低賃金0.68%引き下げ答申

2001/ 7/27 日本経済新聞朝刊

   中央最低賃金審議会は26日、2001年度の最低賃金を上げ幅0.68%を目安にに引き上げるべきだとする答申をまとめ、坂口力厚生労働相に提出した。引き上げ幅は昨年度の0.8%を下回り、4年連続で過去最低となる。全国の労働局毎に地域別の最低賃金を決定し、9月から10月にかけて適用する。
 引き上げ額は地域の物価水準などを考慮し、4段階に分けて目安として示した。最も賃金水準が高い大阪府では日額38円の増加(現行日額は5,560円)。最も賃金水準が低い青森県、宮崎県などでは日額33円増(同4,795円)となった。
医療保険 公費負担減へ独自案 経産省、70歳以上は50%に

2001/ 7/26 日本経済新聞朝刊

   経済産業省は高齢化で財政破たんが懸念される医療保険制度について独自の改革案をまとめた。70歳以上の高齢者向けの保険制度は公費負担を50%にとどめ、70歳未満の一般の医療保険では公費負担をなくすのが特徴。現役世代や高齢者に応分の負担を求め、増税につながりかねない公費負担を抑える。経産省は医療保険制度を安定させることで将来の不安を払しょくし消費拡大などにつなげたい考えで、厚生労働省などに働き掛ける。
 現行の老人保健制度は、医療費の約6割を健康保険組合などの拠出金でまかない、残りを公費と高齢者の負担で補っている。高齢化で医療費が膨らみ、事業主と現役世代などが払う拠出金の負担が重くなっている。財界と日本医師会は拠出金を廃止し、公費を50-90%投入し、残りを高齢者が負担する案を提言している。
 経産省は、財界案では事業主の負担だけが大幅に軽減され、逆に医師会案では高齢者の負担だけが減り、それぞれ公費などに転嫁されていると分析。公費負担を抑え、世代間格差を是正する案をまとめた。
 高齢者向けは、公費で50%負担するが、拠出金を維持し25%を負担。残りは、高齢者が収入などに応じて払う保険料や、実際にかかった費用の一部の自己負担でまかなう。

【Add 2001. 7.22】

  再就職活動 支援企業に助成

2001/ 7/21 日本経済新聞朝刊

  厚労省10月施行 有給休暇1日4000円
 厚生労働省は従業員の転職を支援した企業に対して助成する「労働移動支援助成金」の骨格をまとめた。離職予定者が就職活動をするために有給休暇を与えた企業を対象に、休暇1日当たり4,000円を30日間を上限に支援するほか、職業訓練を受けるための有給休暇を与えた企業にも賃金の一部を助成する。離職者を受け入れた企業には講習費などに一部を支給する。円滑な労働移動を支援するのが狙いで、10月から施行する。
 リストラなどで1ヶ月間に30人以上の人員削減を予定している企業は今年10月から、離職予定者の再就職援助計画を労使双方で作成し、職業安定所に提出するよう義務づけられる。
 助成金はこの計画を作成した企業だけに支給される。具体的には従業員が就職活動のためにとる休暇1日当たり4,000円を支給。上限は30日間。教育訓練のための費用を企業が全額負担した場合は1日当たり1,000円を加算する。
 従来の助成金では経営不振などで一時的に従業員を他社に出向させ、再建後に自社に出向させ、再建後に自社に復帰させる場合なども支給対象としてきたが、新たな助成金は完全に従業員が他社に転籍することを条件とし、支給対象を限定したのが特徴だ。
 また、再就職援助計画の対象となった人を雇い入れた企業は従業員1人あたり100,000円の定額給付金を受けることができる。新たな職場で従業員が仕事に慣れるため、実施訓練などの費用に充てられるようにする。
 厚労省は従業員を雇い入れた企業などに支給している助成金の簡素化を進めており、従来の複数の助成金を統合する形で衣替えする。企業の雇用維持を支援してきた政策を転換、雇用流動化を前提に失業せずに人材が円滑に移動できる方策に力点を置いている。
雇用のミスマッチ 経産省とリクルート調べ

2001/ 7/20 日本経済新聞朝刊

  管理職は過剰気味 / IT技術者は不足
 企画部門や管理職などの人材は過剰気味だが、営業部門や情報技術(IT)関連の専門職は不足--。経済産業省とリクルートが求職者数と企業の求人数にかい離がある「雇用のミスマッチ」の実態を分析したところ、職種によって大きな差があることが明らかになった。
 19日に発表した報告書は60種類の職種を分析している。それによると、求職者数より求人数が多い、いわゆる人材不足の職種は営業や電気回路の設計技術者など27職種。反対に医療事務や商品企画など33職種が求職者数が求人数を上回る人材過剰の状態にあった。
 60職種全体の求人倍率は0.93倍。最も求人倍率が高かったのは法人向け営業の9.95倍。最も低かったのは医療事務の0.05倍だった。
 企業側は求職者に一定の実務経験や資格を求める傾向が強い一方、実際に実務経験や資格を持つ求職者の割合は2割にとどまっている。
高齢者医療費 昨年度7%減どまり

2001/ 7/17 日本経済新聞朝刊

  想定より1兆円増 厚労省まとめ 介護保険への移行小幅
 厚生労働省は16日、2000年度に医療保険制度から支払った医療費の概況をまとめた。原則70歳以上の高齢者を対象とする老人保健制度で使った医療費は前年度比7.0%減の11兆円と初めて減少した。同年度から介護保険制度が始まり、医療保険から支払っていた介護費用の一部が介護保険に移ったことが主因。ただ介護保険への移行は予想ほど進まず、高齢者医療費は政府見込みより1兆円程度膨らんだ。健康保険組合などの財政悪化に拍車がかかる恐れもある。
 2000年度に各医療保険制度から支払った医療費の合計は前年度比2.1%減の27兆9,000億円だった。高齢者分が減った影響で全体も減少に転じた。厚労省では介護保険への移行分がなければ、3.9%増の29兆6,000億円程度になったと見ており、「伸び率はほぼ平年並みで、医療費の増加基調に変化はない」とと説明している。
 高齢者医療費は2000年度の政府予算ベースでは前年度比約12%減の10兆円強になると想定していた。それに比べ約1兆円の見込み違いになる。医療よりも介護が必要な高齢者が入院する「療養型病床群」と呼ばれる施設の医療保険適用から介護保険適用への転換が進まなかったことなどが原因。病院によって医療保険にとどまった方が有利な場合もあるためだ。
 企業の健康保険組合など医療保険制度は予算ベースの医療費を基に高齢者医療費を賄うための拠出金を負担している。予算ベースに比べ医療費が増えたことで追加拠出が必要になる。追加拠出は当該年度の2年後に実施するルールで、2000年度分の不足は2002年度に支払う。健保財政に一層の負担がかかる。
 高齢者分以外では、サラリーマンやその家族が加入する健保組合などの被用者保険で使った分が0.2%増の9兆5,000億円。自営業者らの国民健康保険分が2.7%増の7兆5,000億円だった。
 一人当たりの医療費は高齢者が739,000円、被用者保険125,000円、国保208,000円。
 医療保険制度から支払う医療費に生活保護向けの公費負担医療費などを加えると国民医療費になる。医療保険による医療費は国民医療費の約9割を占める。
雇用創出助成 中小向け縮小 厚労省が10月から

2001/ 7/15 日本経済新聞朝刊

   厚生労働省は従業員を新たに雇い入れた中小企業に賃金の一部を助成する「中小企業雇用創出人材確保助成金」の見直し案をまとめた。賃金の助成率を現行の3分の1から4分の1に引き下げ、助成期間を現行の1年から半年に縮める。半面、助成対象となる人数の上限は現行の6人から8人に引き上げ、一定の雇用創出に配慮する。10月1日から実施する。
 この助成金は、創業や異業種に進出する中小企業の雇用創出を後押しする狙いがあり、2001年度予算では1,079億円。政府は1999年の雇用対策で10万人の雇用創出を目標に掲げ、11万7,000人の実績があったと説明している。厚労省がこの助成金を縮小するのは、雇用保険財政を立て直すため、各種助成金を再編する一環だ。
規制改革 聖域に踏み込む

2001/ 7/13 日本経済新聞朝刊

  (記事、前中略)
有料職業紹介を年内に規制緩和 □雇用
 民間の有料職業紹介事業の大幅な規制緩和を年内に実施するよう求めている。例えば現在はモデルなど一部の職種に限っている求職者からの手数料徴収について「一定の枠組みの下で徴収を認める」と指摘。求人企業から徴収する手数料の上限も廃止を促している。
 現在は公共職業安定所(ハローワーク)が独占している公的機関の職業紹介事業を地方自治体でも実施できるように事実上、国から地方への「権限移譲」も盛り込む。
 人材派遣の規制緩和について厚生労働省は前回の法改正時から3年後の2002年12月以降に検討する方針だが、原案は現在最長1年に限っている営業・販売業務の派遣期間の3年延長は「法改正を必要としない」との理由で年内の実施を促した。
雇用年齢制限 広く容認 厚労省指針案 廃止努力義務に10例外

2001/ 7/11 日本経済新聞朝刊

   厚生労働省は10日、求人の年齢制限廃止の努力義務に関する指針案をまとめた。通常国会で成立した改正雇用対策法で10月から従業員の募集・採用時に年齢制限をしないよう事業主に努力義務を課すが、新規学卒者や定年直前の求職者等10の事例に該当する場合は例外として年齢制限を認めることを盛り込んだ。26日の労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)に諮る予定だ。
 新卒者など以外の主な事例は、技能やノウハウを継承するため、最も少ない年齢層の従業員を補充する必要がある場合など。かなり幅広い例外を認めており、「現状追認の色彩が濃い」との批判も予想される。
 求人の年齢制限廃止の努力義務は、再就職の厳しい中高年の雇用機会を広げる狙い。ただ、雇用慣行を大きく変えることは産業界に慎重論が強く、努力義務の例外を指針の形で明示することにした。
 指針案は事業主に対し、求人に際しては従業員の適性、能力、経験、技能などの必要な項目をできるだけ明確に示すように努力義務を課した。それによって求職者が年齢に関わりなく能力を有効に発揮できる職業を選択しやすくなるような環境整備を促した。厚労省は「例えば頑固で協調性がないとか、適応力がないとの理由だけで企業が中高年を募集しないことがないように求めていく」(職業安定局)と説明している。
 
事業主による求人の年齢制限廃止の努力義務の例外事例

(1)

新規学卒者

(2)

最も少ない年齢層の従業員を補充

(3)

定年直前で長期雇用が困難な人

(4)

就業規則で定めた年功序列賃金のため高賃金になってしまう人

(5)

特定の年齢層向けの商品の販売やサービスを提供する人

(6)

芸術・芸能分野

(7)

労働災害の発生状況からみて採用対象を限定する必要がある

(8)

業務上、高齢化による体力、視力の低下を避ける必要がある

(9)

行政の政策を踏まえ中高年に限定して募集

(10)

労働基準法上の規定で特定の年齢層の就業が禁止、制限されている

【Add 2001. 7. 1】

  介護保険、10月にも見直し 厚労相意向

2001/ 7/ 1 日本経済新聞朝刊

   坂口力厚生労働相は30日、高知県土佐山田町で開かれたタウンミーティングなどで、同省が2003年度に予定している介護保険制度の見直しについて「2003年度は待ち過ぎではないか。(今年10月からの保険料全額徴収開始に合わせて)直せるものがあれば直したい」と語り、見直し時期を前倒しする意向を明らかにした。
 修正内容については、特別養護老人ホームなど施設利用を望む高齢者らが多いことを考慮し、在宅介護を支援する施策の必要性とその充実を強調。さらに「低所得者の利用料・保険料についての市町村の取り組みを厚労省(の事務方)は柔軟に許容すべきだ」と、低所得者の負担軽減策も示唆した。同窓は、ケアプラン作成や要介護認定などについても「変えるべきところはできるだけ早く変える必要がある」として、制度全体を幅広く見直す意向を表明した。