社会保険労務士関連ニュース(2001年/第4四半期:2002/ 1- 3)

2001年(平成13年)度 第4四半期 2002年 1月〜 3月に新聞等で発表されたニュースです。

【LastUpdate 2002. 3.31】

【Add 2002. 3.31】

  公的年金 4月からこう変わる 厚生年金65歳以上も保険料/高所得者は給付減

2002/ 3/31 日本経済新聞朝刊

  4月1日から公的年金の保険料負担や給付の仕組みが一部変わる。厚生年金に加入している60代後半の会社員には新たに保険料負担がかかり、収入に応じて減額される。自営業者らの国民年金では低所得者向けに保険料の半額免除制度が始まる。制度変更のポイントをまとめた。
 ○60代後半の会社員も全員、月収の17.35%の保険料を負担(労使折半)
 ○高所得者の60代後半の会社員の年金減額(報酬比例部分のみ)
 ○国民年金加入者のうち低所得者は保険料半額免除(申請免除)

【Add 2002. 3.30】

  ワークシェア 政府財政支援も検討 政労使合意 「緊急型」導入企業に

2002/ 3/30 朝日新聞朝刊

  雇用不安に対応するためのワークシェアリング(仕事の分かち合い)をめぐる政府、連合、日経連による検討会議が29日、東京都内のホテルで開かれ、「多様就業型」と「緊急対応型」の2方式を軸とする導入5原則を盛った合意を確認した。今後2〜3年間の「緊急対応型」を導入する企業への政府による財政支援の検討を明記。政府は財源を含めた具体策づくりに着手する。
※政府の取り組みについて

(1)

多様な働き方の推進や、働き方に見合う公正な賃金・人事制度のあり方

(2)

04年の次期年金制度改革に合わせ、パートを含めた短時間労働者に対する社会保険の適用拡大

(3)

緊急措置としてのワークシェアに対する具体的な財政支援策
※ワークシェア5原則(骨子)

ワークシェアリングとは、雇用の維持・創出を目的に労働時間短縮を行うもの。多様就業型に早期に取り組む。当面の措置として緊急対応型は選択肢の一つ。

ワークシェアリングは個別労使の自主的な判断と合意による。具体的な方法は労使が十分協議をつくす。

政府、日経連、連合は多様就業型を推進するための環境づくりに積極的に取り組む。

労使は多様就業型の推進に際し、公正な処遇、賃金・人事制度見直しの環境整備に努める。

緊急対応型で経営者は雇用の維持に努め、労働者は所定労働時間短縮に伴う収入の取り扱いに柔軟に対応する。

ワークシェア政労使が合意 「短時間正社員」は前進
 
政労使が29日合意した「ワークシェアリング」は、その実効性はともかく、5%台の高い失業率が続く中で、雇用不安の解消に取り組んでいる姿勢を示すのが第一の狙いといえる。合意の目玉にした多様就業型ワークシェアリングは、パートの積極的な活用で低失業を実現したオランダを参考にしているものの、公正な処遇や社会保険の整備など条件作りを積極的に進めなければ、かけ声倒れに終わる。
 
大企業 雇用削減が加速 2月118万人 中小企業は上向く

2002/ 3/30 日本経済新聞朝刊

  大企業の雇用削減が加速している。総務省が29日発表した2月の労働力調査によると、従業員500人以上の大企業の雇用労働者は前年同月比で118万人減り、過去最大の減少幅となった。
完全失業率は5.3%と前月比横ばいだったものの、「雇用の実態は悪化している」(厚生労働省)との見方が有力だ。
 ※従業員500人未満の中小企業では雇用が増えている。
失業率 横ばい5.3% 2月、女性は最悪5.2%

2002/ 3/29 日本経済新聞夕刊

  総務省が29日発表した2月の完全失業率(季節調整値)は5.3%と前月と同水準となった。女性の失業率は5.2%と前月より0.1ポイント上昇、過去最悪の水準を更新した。厚生労働省が同日発表した求職者1人あたりの求人の割合を示す有効求人倍率は0.50倍と前月より0.01ポイント低下した。
 ※2月の完全失業者数356万人。38万人増。11カ月連続で増加。
平均賃金 昨年1.2%増 「実質」0.1%減

2002/ 3/29 日本経済新聞朝刊

  厚生労働省が28日発表した2001年の賃金構造基本統計調査(速報)によると、サラリーマンなど一般労働者の平均賃金は305,800円と前年比1.2%増えた。サービス業の男性社員の賃金が同2.4%増となり、全体を押し上げたためだ。ただ、学歴、年齢、勤続年数別に労働者の構成割合が前年と同じと仮定した場合の平均賃金は前年比0.1%減で、3年連続のマイナスとなった。
平均賃金はボーナス、時間外を含まない所定内給与。調査は昨年6月時点で、従業員10人以上の約42,000社、約110万人を対象に実施した。
高齢者の介護保険料 過半数、引き上げ検討

2002/ 3/28 日本経済新聞夕刊

  4月でスタートから2年を迎える介護保険制度について、日本経済新聞社が全国47の都道府県庁所在都市(東京都は新宿区)に調査したところ、過半数の24市区が2003年度に65歳以上の高齢者の保険料引き上げを想定していることが明らかになった。高齢者の進展で介護保険財政がひっ迫。2001年度の保険財政が赤字見通しの自治体は前年度の2市から10市に膨らんでいる。
仕事と子育て両立 男性とワークシェアを

2002/ 3/28 日本経済新聞朝刊

  女性労働白書 多様な就業形態 整備提言
厚生労働白書は27日、「女性労働白書(働く女性の実情)」をまとめた。育児負担が大きい30代に焦点をあて、仕事と子育ての両立への課題を取り上げている。白書では子育て期にある30代男性が長時間働いている偏りを見直し、短時間労働制の導入など男女間、世代間でのワークシェアリングにつながる多様な就業形態の整備を提言。保育園の整備など地域における育児事業の拡充を訴えている。
来春の大卒採用2.2%減 本社調査 IT企業大幅/理工系も圧縮

2002/ 3/27 日本経済新聞朝刊

  主要企業の来春の新卒採用数は3年ぶりに減少する見通しだ。日本経済新聞社が26日まとめた2003年度採用計画調査一次集計では、大卒の新卒採用予定は2002年度実績見込み比2.2%減少する。業績悪化に苦しむ情報技術(IT)関連を中心に採用数の上位企業が軒並み減らす。
 ※理工系9.3%減。
 ※非製造業4.8%増。特に百貨店・スーパーは43%増。

【Add 2002. 3.24】

  診療報酬明細書 電子請求へ誘導

2002/ 3/24 日本経済新聞朝刊

  厚生労働省は診療費を医療機関が請求する際に使う診療報酬明細書(レセプト)について、紙から電子請求に切り替えることを促す誘導策を取る。現行のフロッピーディスクによる請求に加え、数年以内にインターネットでの請求も解禁する。
 ※電子請求の割合は現状では1%に満たない。
ワークシェア 短時間正社員を軸に

2002/ 3/23 日本経済新聞朝刊

  1人あたりの労働時間を減らし、仕事を分かち合うワークシェアリングに関する政府と日経連、連合の合意案が明らかになった。短時間勤務の正社員を増やすため、労使が動きに応じた公平な社員の処遇方法の確立に努力し、政府も支援策を検討することを盛り込んだ。大手電機の一部が実施する業績悪化時のワークシェアは「選択肢の一つ」と位置づけるにとどめる。
 ※「多様就業型」のワークシェアを目指す。業務悪化時のワークシェアは「緊急対応型」と区別。
 ※29日に「ワークシェアリング5原則」として発表予定
育児支援で企業に奨励金

2002/ 3/20 日本経済新聞朝刊

  厚生労働省は19日、社員が育児のための時間を確保しやすいようフレックスタイム制などを導入した企業に、奨励金を支給する支援策を盛り込んだ雇用保険法施行規則の改正を行うことを決めた。
 ※「育児両立支援奨励金」の創設
介護施設 低価格で展開 自己負担半額 月15万円

2002/ 3/18 日本経済新聞夕刊

  有料老人ホームなどの民間介護施設に低価格型が相次いで登場し始めた。新タイプの施設では建物の建設費や食費などの運営費を抑えることで、自己負担額を半額程度にしている。
健保医療費削減へ助言 日生など相次ぎ事業化

2002/ 3/16 日本経済新聞朝刊

  日本生命と日立製作所などが相次ぎ、企業の健康保険組合の支出抑制を助言するサービスに進出する。
 ※政府総合規制改革会議の答申した診療報酬明細書(レセプト)の電算化・健保組合によるレセプト審査解禁によるサービス拡大にらむ
健保赤字、最悪の5731億円

2002/ 3/15 日本経済新聞朝刊

  健康保険組合(1,696組合)の2002年度予算は、合計収支が5,731億円の赤字と過去最悪になる見通し。
 ※前年度より約850億円赤字額が拡大。
電機大手 諸手当・補償を削減 人件費圧縮へ労使交渉

2002/ 3/14 日本経済新聞朝刊

  業績悪化が深刻な電機大手は賃上げ決着を受けて、抜本的な賃金改革に向け個別に労使間交渉に入る。松下電器産業と東芝は4月からの緊急対策として、時間外勤務手当てなど各種手当や補償を引き下げる方向で調整する。三菱電機は来年4月からの定期昇給制度の見直しを協議する。各社は業績回復のため総人件費の圧縮を目指す。

雇用維持は一歩前進
今春闘でベア要求を断念し雇用問題を重点目標に置いた鉄鋼、電機は「雇用安定に努力することを明文化する」ことで合意、組合側は一定の成果を得た。
春闘ベアゼロ一斉回答 トヨタ労組も受諾 日産は一時金とも満額

2002/ 3/13 日本経済新聞夕刊

  春闘の形成に影響力を持つ金属労協(IMF・JC)加盟の主要4業種の経営側は13日、賃上げ・一時金(ボーナス)を一斉回答した。好業績のトヨタ自動車がベースアップ(ベア)ゼロで妥結する。造船重機もベアゼロで決着。電機や鉄鋼は定期昇給のみの回答で、企業が足元の業績の明暗にかかわらず人件費を構造的に見直す戦略が浮き彫りになった。
 ※「雇用か賃金か」が争点だった2002年春闘では、ベアゼロを回答。鉄鋼大手5社は「雇用安定協定」締結。

【Add 2002. 3.17】

  都内の中小企業健保9割赤字に 来年度

2002/ 3/10 日本経済新聞朝刊

  東京都の中小企業が設立した86の総合健康保険組合のうち、全体の9割を超える80の健保が2002年度に赤字になる見通し。
国民年金 未納率最悪27%

2002/ 3/ 9 日本経済新聞朝刊

  2000年度 厚生年金は黒字半減
自営業者らが加入する国民年金の保険料未納率は27.0%と1961年度の制度発足以来の最悪を更新。
厚生年金も収入から支出を差し引いた収支算(黒字)が約2兆円と前年度と比べほぼ半減。
 ※社会保険庁が8日発表した2000年度の社会保険事業概況による
派遣料金 事務職下げ拍車

2002/ 3/ 8 日本経済新聞朝刊

  今春の人材派遣料金交渉で、一般事務職の下げ圧力が強まっている。
昨秋10%前後下げが、さらに100-200円程度の下落が不可避な情勢。
 ※合わせて派遣者数伸び率も前年割れ寸前の状況を迎えていることに注意。
政管健保 2006年度再び赤字 保険料上げ 効果一時的

2002/ 3/ 7 日本経済新聞朝刊

   政府が今国会に提出した健康保険改正案に沿って中小企業従業員が加入する政府管掌健康保険(政管健保)が2003年度に保険料を引き上げても、2006年度には再び赤字に転落することが厚生労働相が6日まとめた試算で明らかになった。収支改善のために保険料の歳引き上げか一段の医療費削減策が必要になり、今回の医療制度改革が政管健保の加入者の負担増を抑える効果は一時的なもので終わる。
 健康保険法改正案では、政管健保は2003年4月に月給とボーナスに同率の保険料がかかる「総報酬制」を導入するのと同時に、料率を実質0.7%引き上げ年収の8.2%にすることが決まっている。
高卒内定 深刻74.8%

2002/ 3/ 6 日本経済新聞朝刊

  1月末、37都道府県で最低 IT不況が直撃
 今春の高校卒業予定者の就職が一段と厳しさを増している。1月末時点で日本経済新聞社が集計できた41都道府県の単純平均の就職内定率は74.8%と、前年同期を5.5ポイント下回った。前年を上回ったのは東京都だけで37都道府県が過去最低の水準。情報技術(IT)産業の不振に直撃された鳥取県や秋田県などの落ち込みが目立つ。
 高卒予定者の就職内定率の集計は各都道府県の労働局から聞き取り調査し、千葉県派遣教育委員会の調査結果を用いた。
 東京都では製造業の求人が減少した半面、他店舗化を進める居酒屋やファーストフードなどで大量の求人があり内定率が上昇した。
 内定率が前年同期比2ケタ減となったのは5県。17.7ポイント減少と最大の下落を記録した鳥取県では、液晶の新工場稼働で昨年約120人を採用した鳥取三洋電機が今年はIT不況もあり10人以下。同県の主力産業の電気機械製造業の求人は昨年の518人から今年は87人に激減した。
 TDKなどIT関連への依存型か秋田県も電気機械製造業の求人は135人と、昨年の2割の水準だ。「遠隔地でないと就職先は見つからないが、自宅通勤の希望が強い」(秋田労働局)という。
 自治体も対策に動き出した。内定率が41都道府県で2番目に低い宮城県は、首都圏など県外企業を訪問して就職先を開拓する県立高校に教師の出張費などを補助する。「県内企業だけでは限界がある」(県教委高校教育課)ためで約20校に支給する予定だ。
 北九州市はリストラなどで失職した50歳代を中心に中高年者8人を「求人開拓員」として採用した。29日まで市内の企業を1人100社程度訪問し、市内の高校・短大・大学新卒者の採用を呼びかける。
 自治体自らが職員残業時間を減らして高卒者などを雇うワークシェアリング(仕事の分かち合い)も兵庫県など各地に広がってきた。青森県は今春の卒業予定者に限定し約130人を非常勤嘱託職員として採用する。採用試験は約290人が受験した。
 人材確保の好機とみて、逆に積極採用する企業もある。九州が地盤の外食チェーン、ジョイフル(大分市)は今春、昨年の13倍の134人の高卒者を採用する。
非労働力人口4190万人 求職意欲喪失者が増加 1月過去最高に

2002/ 3/ 6 日本経済新聞朝刊

   失業中の人が就職活動を一時あきらめる例が増えている。失業していても職探しをしていれば労働力人口に分類される。就職活動をやめれば非労働力人口に転じるため、非労働力人口の増加ピッチも加速。1月の非労働力人口は4,299万人。季節調整後では4,190万人と、ともに過去最高となった。厳しい雇用情勢が続くなかで、こうした動きが完全失業率の変動要因になっている。
 完全失業率は労働力人口に占める完全失業者の割合。完全失業者は仕事がないが仕事があればすぐに就職することができる求職者を指す。こうした人が求職活動をやめると、非労働力人口に転じる。
 季節調整値で1月の労働市場をみると、完全失業率を算出する歳の分母である労働力人口は6,716万人となり、前月比0.5%減少した。分子の完全失業者数は355万人と、高水準だった昨年12月の反動で4.3%減となった。この結果、完全失業率は5.3%と前月比0.2ポイント低下した。
 非労働力人口は前月比0.9%増加。総務省が季節調整値の増減を集計し始めた1999年1月以降最大の増加幅で、1カ月間に「完全失業者=>非労働力人口」という経路で労働市場の外に出た人が急増したことがうかがえる。
 斉藤太郎ニッセイ基礎研究所研究員は「景気に明るさが見え始めると非労働力人口の人が求職を再開し労働力人口に転じるので、失業率の上昇要因となる」とみている。
人材派遣 金融関連 3年に拡大

2002/ 3/ 5 日本経済新聞朝刊

  厚労省が規制緩和 製造業解禁も検討
 厚生労働省は雇用の流動化をにらみ、人材分野の規制緩和を相次いで進め、雇用の受け皿づくりを急ぐ。月内にも証券や生損保、情報技術(IT)関連の営業職の人材派遣期間を現行の1年から3年に拡大。さらに製造業への人材派遣の解禁などの抜本策も検討する。成長分野のほかリストラで正社員以外の人材活用を目指す企業にこたえ、雇用確保につながる環境を整える。
 
 厚労省は4日の労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)の分科会に労働者派遣法の政令改正案を示した。今月29日にも施行、月内に改定する政府の規制改革推進3カ年計画に盛り込む。これにより2001年度中に取り組む人材分野の規制緩和策が出そろう。
 人材派遣各社による社員の派遣機関は最長1年が原則だが、厚労省は1999年の法改正によりソフトウェア開発、機械設計など26業務に限り、派遣期間を最長3年に延長した。今回、最長1年のままとなっている職種で、専門性の高い業務について3年の派遣を認める対象を加える。
 具体的には投資家向けに株式や債券を売買する証券外務員、生命保険や損害保険の商品を販売する外務員など金融の販売・営業職を中心に加える。ファイナンシャルプランナー(FP)や証券アナリストも対象とする。
 IT関連の営業はセールスエンジニア(技術営業者)と呼ばれる業務を加える。現在も法律上は最長3年の派遣契約が可能だが、通達では社内の情報処理システム構築のための相談・商品販売が対象に含まれるのかどうか不明確で、今回改定して明記する。人材派遣の対象職種は現在の40万人規模から、今回の規制緩和により50万人以上増える見込みだ。
 厚労省は期限付きの雇用契約(有期雇用契約)や人材紹介に関する政省令などの規制を順次緩和し、求人企業と求職者の条件が合わない「ミスマッチ」に緩和や雇用の場の拡大を推進。今回の人材派遣の規制緩和策で法改正をせずに雇用形態を多様化するための政策の手当はひとまず完了する。
 そのうえで、厚労省は4月以降に労働政策審議会を通じて、抜本的な労働者派遣法改正の議論を始める。現在は法律で禁止されたままの製造業務の派遣解禁や、原則1年の派遣期間を3-5年への延長を軸に検討する。一段の規制緩和に連合では慎重論も強く、派遣社員の権利保護と一体で緩和策を詰める方向だ。
残業時間1月7.4%減 11カ月連続のマイナス 勤労統計

2002/ 3/ 4 日本経済新聞夕刊

   厚生労働省が4日発表した1月の勤労統計(速報)によると、従業員5人以上の企業の所定外労働時間(残業時間)は8.7時間と前年同月比7.4%減り、11カ月連続のマイナスとなった。生産の伸び悩みなどから企業は残業時間を減らし続けているが、減少幅は前月(9.6%)より縮小した。所定内労働時間を含めた総実労働時間は前年同月比2.7%減と2カ月連続で減った。
 製造業の残業時間は前年同月を13.7%下回った。ただ在庫調整の進展を背景に前月比(季節調整値)では2.9%増と2カ月連続で増えた。
 物価動向を加味した実質賃金は前年同月を0.2%下回り、6カ月連続のマイナス。残業時間の減少を反映して所定外給与は前年同月比8.7%減少した。ボーナスなどの特別給与は14.6%減、所定内給与は0.4%減となり、現金給与総額は2.3%減の302,118円と9カ月連続で減った。
 常用雇用は前年同月比0.6%減の14カ月連続で減った。パート社員は1.4%増とプラスを維持したものの、正社員など一般労働者は1.1%減った。

【Add 2002. 3. 3】

  失業半年以上が4割 連合調べ

2002/ 3/ 2 朝日新聞夕刊

   全国の主なハローワーク前で、失業者や求職者を対象に連合(笹森清会長)が聞き取りで実施した「全国雇用アンケート」の結果(速報)がまとまった。約4割が6ヶ月以上の長期失業で、平均の失業期間は5.9ヶ月だった。倒産やリストラなどの非自発的失業は、中高年層を中心に約7割を占め、20代の若年層でも過半数だった。
 調査は2月18日から約1週間で実施。昨年10月に続き2回目で、連合本部と33の地方組織で契約5300人から回答を得た。失業者は約8割。
 6ヶ月以上失業している人は39%。昨年10月調査と単純比較はできないが、昨年10月時点の33%より増えた。年齢が高いほど長期化しており、50代は44%(前回40%)が長期失業で、平均は6.5ヶ月だった。
 失業の理由は、倒産や解雇が58%で、定年などを加えると70%が非自発的失業だった。特に20代の若年層は、自己都合が31%(前回39%)に減り、逆に「非自発的」が55%(同48%)と増えた。50代では、退職勧奨や配転などのいやがらせが13%と、他の年齢層より高くなっている。
新卒採用予定企業 過去最低3割止まり 若年層の雇用 厳冬続く

2002/ 3/ 2 日本経済新聞朝刊

   若い人の働く環境が厳しさを増している。厚生労働省の調査によると、今春卒業見込みの高校生や大学生の採用を予定する企業は約3割にとどまり、過去最低を更新した。業績の悪化した企業が新卒採用を手控え、求職活動自体をあきらめてしまう人も目立つ。1月の完全失業率(季節調整値)は5.3%と0.2ポイント改善したが、若者には”氷河期”が続く見通しだ。
 
失業率 15-24歳 9.5%に悪化 理系も苦戦
 厚労省が1日発表した2月の労働経済動向調査によると、従業員30人以上の3,297社のうち、新卒者の採用を予定する企業の割合はすべての学歴で低下した。例えば、求人が比較的多い理科系大卒者でも31%と前年より7ポイント下がった。
 すべての学歴で1989年の調査開始以来の低水準を更新。前年を上回ったのは運輸・通信業の大卒者だけ。
 採用予定者に占める採用内定者の割合も低下し、収益の先行きが不透明なため新卒採用に慎重な企業の動きがうかがえる。
 総務省が1日発表した労働力調査をみると、学校を卒業したものの就職先が見つからない失業者(学卒未就職者)が13万人と前年同月比で2万人増え、6ヶ月ぶりに増加に転じた。
 
求職を断念
 年齢別の失業率でも若年層の失業率は高止まりしたままだ。完全失業率(実数)をみると、55-64歳は5.6%と前年同月比0.1ポイント低下したのに、15-24歳は9.5%と0.5ポイントの上昇、25-34歳は6.1%と0.6ポイントの上昇となった。
 1月の完全失業率が前月より改善したのは、若い層が仕事探し自体をあきらめてしまったことが影響している。完全失業率は働く意志のある労働力人口に占める完全失業者の割合。現在仕事がなく、仕事があればすぐに就ける求職者がどのくらいを占めるかを指すが、求職活動をやめると、非労働力人口とみなされ、失業率の計算の外に置かれるからだ。
 
27万人増加
 この働く意志のない非労働力人口は25-34歳で前年同月比27万人増えている。65歳以上の世代を除くと増加幅は突出している。こうした人たちの増加は一時的に失業率を押し下げる方向に動くが、雇用の実態を映さず、求職活動を再開すると失業率の上昇圧力となって表面化する。
 第一生命経済研究所の川崎真一郎主任研究員は「低成長になると若年層の失業率が上昇しやすいが、若年層は日本経済の生産性上昇のカギ。彼らを労働市場の入り口で排除するような雇用慣行を改めることが必要」と指摘、年功型賃金の見直しなどを求めている。
細る労働力人口 2050年に30%減

2002/ 3/ 2 日本経済新聞朝刊

  経産省が試算 高齢者・女性活用促す
 
 高齢者や女性のうち、働く人(職を探している人を含む)の割合がこれまで通りにとどまると、日本の労働力人口は2000年の6,766万人から、2050年には4,718万人に30.3%減る--。経済産業省はこんな試算をまとめた。高齢者や女性が働きやすくなるよう、パートや派遣社員の厚生年金や健康保険組合への加入・適用条件の見直しを急ぐよう求める。
 経産省によると、15-64歳の男性の労働力率(人口に占める就業者数と求職者数の合計の割合)は2000年で85.2%。これが15-64歳の女性では59.6%、65歳以上の高齢者は22.6%にとどまる。試算は労働力が変わらないことを前提とした。
 国立社会保障・人口問題研究所が推計した2050年の人口は1億59万人で2000年に比べて20.8%減。労働力人口の減少ピッチはこれを大きく上回る。経産省は高齢者や女性の就業率を高めれば、6300万人程度の労働力人口の維持は可能と指摘。短時間労働など多様な働き方を支えるための労働力条件整備に取り組む。
高齢者医療に新制度 政府・与党

2002/ 3/ 1 日本経済新聞朝刊

  医療改革 患者3割負担も合意
 政府・与党は28日、サラリーマンらの医療費の自己負担を2003年4月から3割に引き上げることや、新たな高齢者医療制度を2004年度までに創設するなどの抜本改革方針を明記した健康保険法改正案を今国会に提出することで最終合意した。ただ、抜本改革は法案の付則にとどまるほか、新制度に不可欠な財源の手当てなどの調整はついておらず、検討が難航する要因になりそうだ。
 与党3党の幹事長・政策責任者と、坂口力労働相、福田康夫官房長官が同日会談。法案の付則として盛り込む医療制度の抜本改革案の内容を協議し、新たな高齢者医療制度について2002年度中に基本方針を策定した上で、その後2年をメドに創設することで一致した。政府はこれを受け、3月5日に法案を国会に提出する予定だ。
 新しい高齢者医療制度の創設が浮上したのは、膨らみ続ける高齢者の医療費が現役世代の医療保険の財政を圧迫しているため。詳細を定める基本方針では、税の投入割合を増やし、現役世代の負担を減らす方向で検討が進む見通しだ。
 ただ、保守党は新制度の財源に「税法式」を挙げ、消費税増税を想定。一方、自民、公明両党には増税への抵抗感が強い財源を確保するメドがたたなければ、新制度の創設自体が宙に浮きかねない。
 政府管掌健康保険については5年以内に組織形態を見直す。政府・与党内では一時、政管健保を民営化する案が浮上したが、与党内から「十分な医療を受けられなくなる」などとして反発が強まったため、「民営化」の文言を法案に明記することは見送った。
 3割程度を巡っては、来年4月実施の堅持を掲げる小泉純一郎首相と、「国民負担増だけが先行するのはおかしい」と主張する自民党厚生労働関係議員が対立し、法案提出が遅れていた。事態を打開するため、政府・与党幹部が医療制度の抜本改革案をまとめた。
 
政府・与党の合意内容
医療費自己負担は3割で据え置き
2002年度中に基本方針を策定

医療制度の統合・再編

診療報酬体系の見直し
2002年度中に基本方針策定、2年をメドに具体化

新しい高齢者医療制度の創設
2年をメドに具体化

政府が設置する病院の統廃合

社会保険庁の業務効率化
3年をメドに具体化

社会保険と労働保険の徴収一元化

医療、介護の負担軽減制度の創設

診療報酬の審査・支払事務見直し
5年をメドに具体化

政管健保の組織形態を見直し
内容検討し具体化(時期明示せず)

医療事故の苦情処理体制の整備

保険給付の内容・範囲の見直し
崩れる日本型慣行 終身雇用「維持できず」5割

2002/ 2/26 日本経済新聞朝刊

  ベアゼロ3割超す 主要企業本社調査
 主要企業の半数が終身雇用を維持できないと考えていることが日本経済新聞社の調査で分かった。右肩上がりの賃金体系を支えたベースアップも今春闘では回答企業の3社に1社が実施しない方針。業績悪化とデフレを背景に労組は賃金より雇用優先に転換したが、緊急避難策に浮上したワークシェアリング導入を検討する企業は5%にとどまる。人件費の軽減と余剰人員解消を急ぐ経営側との隔たりは大きい。
 終身雇用は「人材の長期育成のため将来も堅持する」と答えた企業が19.5%にとどまり、53.9%が見直しを検討している。理由は「人件費負担が高まり現実には困難」「流動化を促す雇用戦略を再構築する」など現状追認派と積極派に分かれるが、年功的な日本型雇用慣行は急速に崩れてきた。
 硬直的な賃金体系を見直す動きも進んできた。今春闘で労組がベア要求を見送ったか、経営側がベアゼロ回答でのぞむ企業は合わせて32.8%にのぼる。年齢や勤続年数に応じて毎年自動的に賃金が上がる定期昇給を見直す企業も4.8%あり、労使間の厳しい攻防が予想される。
 一般社員まで含めた賃金カットを実施、または予定している企業が11.8%ある半面、「業績が良ければ賞与で反映すべきだ」(奥田硯トヨタ自動車会長)との認識が経営側に広がっている。
 「事業部門別の業績連動型賃金」や「異動がない代わりに賃金を抑える地域別賃金」をそれぞれ導入、または検討している企業は42.2%、25.3%あった。業績連動型賃金は鉄鋼や機械、電気、商社、食品、小売業など幅広い業種に広がっている。地域別賃金は松下電器産業やシャープ、森永製菓など地方に生産拠点がある製造業が導入に前向けな姿勢を示し、業績や雇用実態に即した多様な賃金制度の整備が進みつつある。
 雇用確保のため仕事を分かち合うワークシェアリングは、63.2%の企業が導入する考えがないと答えた。「仕事が非効率化する」(58.6%)、「総人件費の低下につながらない」(56.9%)などが理由で、「社員の9割が成果主義のホワイトカラーでは効果があると思えない」(西垣浩司NEC社長)との認識が経営側に根強い。
 雇用維持協定の締結も「経営の自由度を縛られるため合意できない」とする企業が22.9%と、「前向きに考える」(6.8%)を大きく上回った。国内人員が余剰と答えた企業が42.7%と、適性規模の40.7%を上回り、雇用放出圧力が依然強いことが背景にある。
 戦後の雇用慣行を代表する終身雇用と年功型賃金の限界は鮮明になってきたものの、定昇廃止やワークシェアリング導入まで踏み込む企業は少数派。労使とも新たな雇用と賃金形態を模索し始めたが、合意点は見いだせない段階にある。
求人広告1月10%減 「正社員」は22%のマイナス

2002/ 2/26 日本経済新聞朝刊

   社団法人の全国求人情報誌協会が25日発表した1月の求人広告件数は243,741件と前年同月を10.0%下回った。2ヶ月ぶりの減少で、2ケタのマイナスは2年8ヶ月ぶり。景気悪化を背景にした求人の落ち込みが大きくなっている。
 内訳をみると、正社員が前年同月比22.4%減と6ヶ月連続の減少となり、減少幅も前月(12.0%)より拡大した。アルバイトは同0.7%増とプラスを維持したものの、伸びの鈍化が目立つ。
 求人広告件数は足元の雇用情勢を反映し、求職者1人あたりの求人の割合を示す有効求人倍率とほぼ連動して動く。このため厚生労働省が3月1日に発表する1月の同倍率は前月(0.51倍)より低下する公算が大きくなっている。
 地域別にみると、すべての地域で求人広告件数が前年同月比で減少した。減少幅が大きいのは中国・四国(27.3%)、近畿(17.5%)など。求人件数の最も多い関東・甲信越でも3.5%減った。
 求人広告件数は34の企業が発行する119の求人情報誌を集計した。2001年中に創刊した求人誌の情報を追加、2001年各月の数字を修正した。

【Add 2002. 2.24】

  春闘の賃上げ 労使1.7%予想 労務行政研まとめ

2002/ 2/24 日本経済新聞朝刊

   今春闘に賃上げについて、労使双方の幹部が、昨春闘の賃上げ結果に比べて0.3ポイント下回る1.7%と予想していることが23日、民間調査機関、労務行政研究所(東京・港)のまとめで分かった。
 調査は昨年12月から今年1月にかけ実施。大手の労組委員長や労務担当取締役、学識経験者の計424人から回答を得た。
 それによると、予想の賃上げ額は5,282円で、昨春闘の妥協額6,328円(厚生労働省調査)を約1,000円下回っている。
 今回の調査では初めて、ワークシェアリングの導入も質問。学識経験者の約40%が「導入すべきだ」と答えたが、経営側は4%、労働側は7%にとどまった。「導入すべきではない」と答えたのは経営側が24%、労働側が37%だった。
政管健保を民営化

2002/ 2/23 日本経済新聞朝刊

  政府・与党合意 複数の制度に分割
 政府・与党は22日、中小企業の従業員と家族が加入する政府管掌健康保険制度を5年以内に分割・民営化することを柱とした医療保険改革に合意した。複数の医療保険を競わせて効率化し、保険料の引き下げなどにつなげるのが狙いだ。サラリーマンの医療費負担を現行の2割から3割に引き上げることを内容とする健康保険法改正案の付則に盛る。法案は来週中にも国会提出される見通しだ。
 坂口力厚生労働相、福田康夫官房長官、自民党の麻生太郎政調会長、同等医療基本問題調査会長の丹羽雄哉元厚相が会談し合意した。健保法改正案は患者負担の引き上げなど国民に痛みを伴う改革を実施して制度を効率化する必要があると判断した。
 政管健保は社会保険庁は運営する保険制度で約3,700万人が加入している。行政による非効率な運営がかねて批判されていたこともあり、全国で複数の制度に分割・民営化することを目指す。具体的な手法は今後検討するが厚生労働省内には反発も強く、具体化に手間取ることも予想される。
完全失業率 都道府県別に公表

2002/ 2/22 日本経済新聞朝刊

  総務省 来月 自治体の雇用対策支援
 総務省は3月初旬に都道府県別の完全失業率を初めて公表する。1997-2001年の年平均の失業率の推移を「試算値」として示し、各地の雇用情勢が分かるようにする。地方自治体が独自の雇用対策をまとめるのに役立ててもらう考えだ。
 地域別の完全失業率はこれまで北海道から九州まで全国を10ブロックに分け、その平均値を四半期ごとに公表していた。ただ昨年12月の完全失業率が5.6%(季節調整値)と過去最悪を更新するなか、「都道府県別の数値も示してほしい」との要望が自治体などから出ていた。
 北海道を除くと、沖縄県が独自に集計した失業率を毎月公表。東京都は四半期ごとの失業率を昨年から公表し始めているが、今回の試算値により都道府県別に完全失業率の水準を比較できるようになる。完全失業率を示すための労働力調査は全国の4万世帯を対象に毎月実施している。都道府県別の数字もこのデータをもとに集計し直すが、総務省は「精度に難があるので、年平均の水準を示すにとどめる」(統計局)という。

【Add 2002. 2.17】

  健保の医療費補助削減 加入者負担 月2万5000円下げ

2002/ 2/17 日本経済新聞朝刊

  厚労省が指導
 厚生労働省は2002年度の医療制度改革に合わせ、大企業のサラリーマンなどが加入している健康保険組合に対し、加入者への医療費補助を削減するよう指導する。加入者の自己負担が月額2万円を超えると補助する組合が多いが、補助基準を2万5千円超に引き上げるよう求める。健保組合の財政負担は減る半面、入院などで高額の医療費を支払った患者には負担増になる。
 今回の医療制度改革は医療費を抑制するため、患者、医療機関、健保組合などの負担を重くする方向。健保の補助削減指導は医療費が高額になった患者にも応分の負担を求め、改革を徹底する狙いがある。
 健保組合に加入しているサラリーマン本人は外来、入院ともにかかった医療費の2割、その家族は外来で3割、入院で2割を自己負担している。医療保険では1ヶ月の自己負担が63,600円を超えれば、超過分の払い戻しを受けられる高額療養費制度がある。ただ財政に余裕がある健保組合は独自に高額の医療費に対する補助制度を設けて、加入者の負担を減らしている。
 厚労省はこれまで「健保組合事業運営基準」で、独自補助の対象となる医療費を1ヶ月2万円超とするように指導してきた。基準の引き上げは1997年以来5年ぶり。指導に強制力はない。しかし財政が悪化している健保組合では早期に補助基準を変更するとみられる。
 健康保険組合連合会によると、全国1756の健保組合のうち、約7割がこうした補助を実施している。2000年度の補助総額は約500億円だった。
 高齢者医療費を補てんする拠出金の負担で、健保組合の解散や補助内容の見直しが相次いでいるため、ここ数年補助額は減少している。
 政府が今国会に提出する健康保険法改正案では、今年10月に高額療養費の基準を63,600円から72,300円に引き上げることになっている。また来年4月から、サラリーマン本人などの自己負担を現行の2割から3割に引き上げる方針。自己負担が現在の1.5倍になるため、健保組合の医療費補助の対象となる人も増える。
 厚労省は、現行の補助基準のままでは健保組合の補助額が急増して財政を圧迫すると判断した。
残業 月80時間超す労働者 産業医が面接指導

2002/ 2/15 日本経済新聞朝刊

  厚労省が過労死対策
 厚生労働省は14日までに、過労による健康被害を防ぐための総合対策をまとめ、都道府県の労働局や業界団体に通達した。長期間の過重労働を過労死の労災認定として認めた昨年12月の基準見直しを受けた措置。新基準で疲労の蓄積の目安とされた月平均80時間を超える残業をした労働者には、産業医の面接による保健指導を受けさせるよう求めている。
 また通達は、過重な労働によって過労死などの疾病を発生させた企業で労働基準法違反が明らかになった場合には、書類送検など司法処分で対処する厳しい姿勢を打ち出している。
 総合対策では、まず月45時間を超える残業をさせた経営者に対し、労働者の過去の健康診断内容を産業医に提出し、助言指導を受けさせるよう求める。
 新規準で「業務と脳・心臓疾患の発症の関連性が高い」と判断される「発症前1ヶ月に100時間以上、あるいは発症前2-6ヶ月間に月平均80時間以上」の残業を行った労働者については、直接面接による産業医の保健指導を受けさせる。産業医が必要と判断すれば、臨時で健康診断を受診させるよう指導する。
 厚労省は一昨年7月、過労死の労災認定をめぐる2件の訴訟で、最高裁が長期間にわたる勤務状況を考慮し、慢性的な疲労と発症の因果関係を認めたのをきっかけに検討会を設置。昨年12月、検討会報告を受け、長時間労働などが引き起こす過労死の労災認定基準を大幅に緩和した。
医療費3割負担 来年4月 政管健保 保険料率8.2%に

2002/ 2/12 日本経済新聞朝刊

  政府・与党合意
 政府・与党は11日、サラリーマン本人などの医療費の自己負担を2003年4月から現行の2割を3割に引き上げることで合意した。中小企業のサラリーマンが加入する政府管掌健康保険の保険料率(年収ベース、現行は労使折半で7.5%)は8.2%とする。新たな高齢者医療制度の創設や診療報酬体系の見直しなど医療制度の抜本改革は、2002年度中に基本方針を決定する。政府は20日をめどにこれらの内容を盛り込んだ医療制度改革関連法案を国会に提出する。
 小泉純一郎首相が負担引き上げの実施時期などで自らの主張を通した形となったが、自民党の医療関係議員の反発は強く、法案の提出や国会の審議を巡って党内調整が難航する可能性もある。
 自民、公明、保守の与党3党の幹事長・政調会長が11日、都内のホテルで福田康夫官房長官、坂口力厚生労働相らを交えて協議、合意内容を取りまとめた。
 合意では、医療費の自己負担を2割から3割に引き上げることを法案に明記、来年4月1日の実施時期は付則に盛り込む。
 政管健保の保険料については政府・与党で来年4月に引き上げることをすでに決めている。厚生労働省は当初、月給とボーナスに同率の保険料をかける「総報酬制」を導入したうえで来年4月から3割負担を実施した場合、料率が8.3%になるとの試算を示していた。しかし来年度の診療報酬のマイナス改定効果を織り込めば料率が8.2%で済むことから、引き上げ幅を当初の予定より0.1ポイント抑える。
 医療制度の抜本改革に関しては(1)公的医療保険の統合・再編、新たな高齢者医療制度の創設、診療報酬体系の見直しについて2002年度中に基本方針を策定する(2)社会保険病院の統廃合など国の事務の合理化策などは同年度のできるだけ早い時期に具体的な手順を定時する--ことで一致した。自民党の山崎拓幹事長は会談後の記者会見で、合意内容を盛り込んだ法案を「20日ごろに国会に提出できるよう党内手続きを終えたい」と表明した。
 しかし自民党の医療関係議員らは「患者負担を上げる必要がない状況で来年4月に上げるという判断は理解に苦しむ」として反発を強めている。党内で法案提出に向けて関係部会や総務会が混乱したり、法案修正を求める動きが表面化する可能性もある。
 
医療制度改革の政府・与党合意骨子
サラリーマン本人の医療費自己負担の2割から3割への引き上げを2003年4月から実施。薬剤費の別途負担も同時に廃止
政府管掌健康保険の保険料率(年収ベース、現行7.5%)を当初予定の8.3%から8.2%に抑制
医療保険の統合・再編、新しい高齢者医療制度の創設、診療報酬体系の見直しなど抜本改革に関する基本方針を2002年度中に策定
社会保険料の徴収一元化、社会保険病院の統廃合、社会保険庁の合理化について2002年度中のできるだけ早い時期に具体的内容・手順を策定

【Add 2002. 2.10】

  働き盛りの再就職支援 試行雇用を拡充へ

2002/ 2/ 9 日本経済新聞朝刊

  「契約社員から管理職も」人材会社が紹介
 厚生労働省は契約社員が一定期間働いた後に正社員になる道を開く「試行雇用制度」を拡充する。この形態を希望する求職者を人材紹介会社が企業に紹介する制度を新設。適性を見ながら管理職の正社員などを採用したい企業と、正社員として転職や再就職をしたい人とが面談や実務経験を通じて、納得して雇用契約を結びやすくする。主に中堅の事務職向けの再雇用手段となる見通しだ。
 厚労省は16日に新制度を実施するときの紹介手数料、労働条件の明示方法などの指針を盛り込んだ通達をまとめ、人材紹介各社に示す。派遣社員から正社員に転じる道を開く「紹介予定派遣」に続く、新たな雇用契約の形態となる。
 現在、正社員への移行を前提に契約社員を採っている企業は少ないとみられる。また、政府の助成金を使って公共職業安定所(ハローワーク)が実施している試行紹介は、若年層向けに限られている。紹介会社が試行雇用を手がけることで、中高年層を中心に新たな転職・再就職の機会が広がる。
 契約社員は原則として最長1年の雇用契約を企業と結んだ社員。正社員は雇用期間の定めがない。新制度では契約社員として働く期間を正社員採用までの試行期間と位置づける。この方式で採用されれば、企業の雇用関係がない派遣社員より正社員に近い立場で仕事ができる。同省は「トライアル(試行)雇用紹介」と呼んでおり、雇用ミスマッチ解消に役立つと期待している。
 紹介予定派遣は派遣先の企業が派遣が決まる前に派遣社員を面接することなどを禁じている。このため企業にとっては派遣者が本当に希望する人材かどうかが、実際に仕事を始めるまでわかりにくい。新制度を使えば企業が採用前に書類選考、面接、筆記試験などを通じて求職者の適性を把握できる。
 特に管理職などを中途採用する場合、一般に報酬を高めに設定することが多く、最初から正社員として迎えることに慎重になりがちだ。試行雇用なら、契約社員として働いている間に正社員と同種の中核業務に就いてもらうことで、適性をじっくり見極められる。
 契約社員から正社員への移行は企業と社員が合意することが条件になる。大半の契約期間は3ヶ月-6ヶ月になる見込みだ。企業は契約期間中に正社員に切り替えたり、契約期間が切れた後に正社員としての採用を拒んだりできる。派遣社員と異なり、社員を雇用するので企業側の社会保険負担は増える。
 2000年度の民間人材紹介会社への常用求人数は62万人だったが、就職件数は約25万にとどまっている。
 民間紹介各社で組織する日本人材紹介事業協会は「新たな雇用の窓口になる」と、就職率を高める効果に期待している。
医療費3割負担 首相重ねて指示

2002/ 2/ 9 日本経済新聞朝刊

  与党幹事長 11日までに決着
 小泉純一郎首相は8日、首相官邸で自民党の山崎拓幹事長と会談し、サラリーマン本人の医療費自己負担の2割から3割への引き上げを来年4月実施と健康保険法改正案に明記するよう重ねて指示した。与党3党も同日の幹事長会談で、首相の意向に添って政府・与党内調整を進めることを確認、11日までに決着させる方針で一致した。
 首相は山崎氏との会談で、早急に厚労相との意見を調整する意向を示した上で「何とか自分の初心を貫かせて欲しい」と求め、山崎氏は「その線で努力する」と約束した。
 公明党の冬柴鉄三幹事長も8日、国会内で厚労相と会い(1)3割負担は来年4月から実施する(2)医療制度の抜本改革は関連法案の付則に盛り込む--との案を示したが、厚労相は「それでは自民党内が収まらないのではないか」と自民党内の調整に懸念を示した。
 3割負担をめぐっては来年4月実施で譲らない首相と、抜本的な制度改革を選考させるべきだと主張する厚労相、負担率引き上げに反対する自民党の医療関係議員の3者が対立。3党の幹事長としては12日から衆院予算委員会の論戦が始まることから、連休最終日となる11日までの決着が欠かせないと判断した。
 3幹事長は連休中に3党の政調会長と福田康夫官房長官らによる会談を開き、最終決着に持ち込みたい考えだ。
 ただ自民党医療関係議員の3割負担への反発は強く、3幹事長の思惑通りに運ぶかは不透明だ。
ワークシェア 基本給最大20%減

2002/ 2/ 8 日本経済新聞朝刊

  三洋電機、初の労使協定へ
 三洋電機は労働時間を短縮して雇用を維持するワークシェアリング制度を4月から導入、基本給を最大20%減額する。7日までに労使間協定の最終案をまとめた。1人あたり月間5日間(約38時間)を限度に年間最大60日分(約460時間)の労働時間を短縮、人員削減を食い止める。同制度の導入で具体的な賃金協定を結ぶ大手企業は初めて。
 対象はグループ従業員約3万人のうち、製造部門の約1万人。従業員は1日あたりの労働時間を最大2時間ずつ短縮するか、月間休日数を最大5日増やすかを適用部門ごとに選択する。基本給の減額幅は月間1日分の短縮で4%、5日分なら20%となる。月収30万円の従業員が月5日分の労働時間を短縮した場合、月収の95%を占める基本給の約28万5000円が約22万8000円となる計算だ。
 配偶者手当など諸手当は削減しないが、一時金は基本給の減額に連動する。退職金や退職年金は従来通りとする。協定は14日の労働組合中央委員会で決議し、正式に労使で合意する。
 ワークシェアリングを適用する部署は、前年に比べて10%人員を削減したにもかかわらず今後6ヶ月は生産回復が見込めない部門とする。適用期間は6ヶ月以上、3年以内とした。
 ワークシェアリング導入は勤務形態を大幅に変更する必要があるため、半年以内に生産の回復が見込まれる部署は既存の一時休業制度で対応する。ただし、現在90%を会社側が負担している一時休業中の賃金補てん率は70-80%に引き下げることを労働組合に提案しており、別途、労使間で条件の見直しを検討する。
 大手企業では松下電器産業やシャープも労使間でワークシェアリングの議論を開始する。東芝も「話し合いの場はあっていい」(飯田剛史専務)としており、労組も近く協議を申し入れる考え。労使ともにワークシェアリングを中長期的な課題ととらえており、早期の導入には慎重で協議も春闘交渉とは切り離す形で進める。
今春の高卒予定者 内定率最悪67%

2002/ 2/ 8 日本経済新聞朝刊

  8万2000人就職決まらず
 今春、高校卒業予定で就職を希望している生徒の就職内定率(昨年12月末時点)は前年同期比5.0ポイント減の67.8%で、これまで最低だった1999年同期(71.3%)を下回り、過去最低だったことが7日、文部科学省の調査で分かった。
 同省は近く、経済団体に採用枠の拡大を求めるほか、高校の進路指導担当者らを集めて求人先の開拓について説明するなどの対策に乗り出す。
 調査は、全国の国公立高校の卒業予定者のうち就職を希望する約25万3000人を対象に実施。約8万2000人(男子3万7000人、女子4万5000人)の内定が決まっていないことが分かった。
 内定率は男子が72.8%(前年同期比5.0ポイント減)、女子が62.0%(同5.0ポイント減)。学科別では、「工業」が80.8%で最も高く、次いで「商業」が67.8%、「水産」が67.7%、「総合」67.4%などの順。都道府県別では、東京を除き軒並み前年同期を下回った。内定率が高いのは、岐阜(86.9%)、富山(85.4%)、三重(84.4%)など。一方、沖縄(32.4%)、宮城(49.9%)、福岡(53.0%)などが低調だった。
医療機関の公告 医師数など可能に

2002/ 2/ 7 日本経済新聞朝刊

  厚労省が規制緩和案
 厚生労働省は6日、医療機関の広告規制緩和案をまとめ、社会保障審議会(厚労相の諮問機関)医療部会に提示した。医師や看護婦の配置人数、患者の死亡率などを公告できるようにすることが柱。患者が医療機関を選ぶための情報を増やすのが狙い。審議会では死亡率は患者に誤解を与えるなどの反論が相次ぎ、規制緩和案の了承は見送った。同省は一部修正のうえ来年度からの実施を目指す。
 医療機関の広告には虚偽などから患者を守るために厳しい規制がある。従来は医師の名前、診療科名などしか広告できなかった。2001年1月から廃止の略歴なども広告できるようになったが、一層の緩和を求める声が強まっていた。
 厚労省が示した緩和案によると、医師や看護婦の配置人数のほか、病院内に売店や食堂などの設備があること、職員研修などで安全管理体制を整備していることなどを広告可能とする。患者死亡率や手術実績(件数)も広告できるとしたが、死亡率は「病気によって異なる」「重症患者を多く受け入れる病院は高くなる」などの強い異論が出て意見がまとまらなかった。
パート処遇に統一ルール 給与、正社員の8割目安に 厚労省研中間報告

2002/ 2/ 6 日本経済新聞朝刊

   パート労働の今後のあり方を検討する厚生労働省の「パートタイム労働研究会」(座長・佐藤博樹東大教授)は5日、中間報告をまとめた。社員と働き方が全く同じ場合、処遇の決定方式を社員と同じにしたうえで、評価は企業に任せる処遇ルールの確立や、短時間正社員制度の導入によってパートと正社員の行き来が促進される雇用システムづくりなどを盛り込んだ。
 
短時間社員の導入促す
 処遇ルールの具体的な内容はガイドラインで示す方針だが、職務が同じ場合、パートの給与水準を正社員の8割程度を目安にする考え方などが議論されている。同研究会は6月をめどに最終報告をまとめる。
 中間報告は「正社員とパート間に大きな処遇差がある中で、正社員からパートへのシフトが加速、正社員雇用の入り口が狭まっている」と労働市場のアンバランスを指摘。「働きに見合った処遇」を構築するためには、正社員の処遇水準を下げることも含め、「雇用システム全体の見直しに向け労使の合意形成が必要」としている。
 また政労使で検討しているワークシェアリング(労働の分かち合い)がパートの待遇改善の契機になるとの見方を示したうえで、「同一労働同一賃金」の欧州型と異なる「日本型均衡処遇ルール」の確立の必要性を強調。(1)仕事の責任も拘束性も同じなら処遇の決定方式を合わせ、各人の評価は企業にゆだねる(2)決定方式を合わせられない場合も、職務が同じなら処遇差は合理的範囲内にすべき--と提言している。
 合理的範囲内の処遇差については、財団法人「21世紀職業財団」の調査で、パート、正社員、企業のいずれも納得できる賃金水準を「正社員の約8割」と答えたことから、研究会では「公平感という意味で、8割程度を世間相場にしたい」との考え方が体制を占めているという。
 また、多様な働き方を選択できる社会づくりの切り札として、労働時間は短いがフルタイム正社員と同様の役割・責任を負う「短時間正社員制度」の導入を支援。フルタイム正社員とパート非正社員の中間に位置して、育児や介護の両立に悩む正社員やキャリアアップを目指すパートのバイパス役になることを期待している。

【Add 2002. 2. 5】

  医療費3割負担 首相、来年4月指示

2002/ 2/ 5 日本経済新聞夕刊

   小泉純一郎首相は5日の閣議終了後、首相官邸で坂口力厚生労働相、福田康夫官房長官と会談し、今国会に提出する医療制度改革関連法案にサラリーマン本人の医療費の自己負担を2割から3割に引き上げる時期を2003年4月と明記するよう改めて指示した。
 福田官房長官は閣議後の記者会見で「(自民党内に)非常に反対のある中で決定することだから、首相も全力を注がれると思う。早急に決着したい」と述べ、政府・与党間の調整を急ぐ方針を強調した。坂口力厚労相は閣議後の記者会見で「医療保険制度の一元化や診療報酬体型の見直しなど抜本改革の筋道をつけたうえで、3割負担の問題に結論を出すべきだ」と首相に伝えたことを明らかにした。同日朝の自民党厚生労働部会では、2003年4月からの引き上げに「議論の前提となる医療費の試算が間違っている」などとする批判が続出。「自民党の政調部会の頭越しの政策決定は認めない」という声も相次いだ。
希望退職募集 「40歳から」最も多く

2002/ 2/ 3 日本経済新聞朝刊

  民間まとめ 昨年、対象年齢が低下
 民間信用調査機関の東京商工リサーチのまとめによると、2001年中に希望退職者を実施した主な上場企業132社のうち、対象とする年齢を40歳からとする企業が19社で最も多かった。2000年までは45歳とする企業が多かった。企業による事業内容の大幅な見直しなどを受けて、対象年齢が低下してきたようだ。
 希望退職者の募集は、企業が人件費を抑制するために、期間や人数を限定して退職者を募るほか、早期退職金を積み増しすることなどが多い。東京商工リサーチは、上場企業で具体的な内容などが確認できたものを調べた。
 以前は一般的に人件費の高い中高年に限ることが多かったが、近年は中堅社員にも広げるケースが目立ってきた。全社員を対象とした企業(58歳以下などの対象を含む)も17社あったという。
 退職金の積み増しなどによる特別損失額(見込みを含む)は公表した99社の合計で、1884億円にのぼった。
厚年基金、国への申請電子化 2002年度から

2002/ 2/ 3 日本経済新聞朝刊

   厚生労働省は代表的な企業年金である厚生年金基金の国への届け出・申請をインターネット経由で受け付ける仕組みを2003年度末までに整える。2002年度中に運用報告など6つの手続きを先行して電子化する。厚年基金は書類を厚労省の地方組織に届ける手間が省け、パソコンで24時間いつでも申請・届け出が出来るようになる。
 厚年基金には国から20数種類の届け出・申請を義務づけられている。このうち積立金の運用状況や業務に関する報告のほか、役員の就任、業務委託、事業計画などの届け出と滞納処分に関する申請は2002年度中に電子手続きが可能になる。厚労省のホームページに「申請・届け出コーナー」を新設しここで電子申請を受け付ける。
 規約変更の認可申請や予算・決算の届け出など残る手続きも2003年度中に電子化する。厚年基金が申請・届け出書類を地方厚生局に提出している現在と比べ厚年基金、厚労省ともに事務負担が経験する。

【Add 2002. 2. 2】

  3割負担「先送り可能」 医療改革 厚労省、新試算示す

2002/ 2/ 2 朝日新聞朝刊

   小泉首相と自民党厚生族議員らが対立しているサラリーマンの医療費「3割負担」への引き上げ問題で、厚生労働省が与党側に、政府管掌健康保険の保険料を政府案通りに引き上げた場合、3割負担の導入時期を来年4月から1年遅らせることが可能とする試算を示していたことが分かった。
 試算は、昨年末に決まった診療報酬引き下げの効果を反映させたもの。厚生族幹部らは「3割負担の実施を急ぐ根拠はなくなった」として先送りを求める姿勢を強めているが、首相は来年4月から実施する方針を変えておらず、対立に拍車がかかりそうだ。
 厚労省はこれまで、3割負担の導入を急ぐ理由として、中小企業のサラリーマンらが加入する政管健保が03年度に破たんする恐れがあることを挙げ、3割負担を導入したうえで、保険料を年収の8.3%(年額で平均1.8万円の値上げ)にする予定だった。
 ところが、診療報酬引き下げの影響などを反映させて試算し直したところ、政府案通りに保険料率を8.3%に引き上げると、3割負担の導入時期は04年4月までに延ばすことができる、との結果になった。
年俸制、34.8%が導入 社会経済生産性本部が調査

2002/ 2/ 1 日本経済新聞朝刊

   社会経済生産性本部(亀井正夫会長)は31日、日本的人事制度の変容に関する調査結果を発表した。年俸制の導入企業は全体の34.8%に上り、2000年に実施した前回調査に比べて9.6ポイント上昇した。同本部は「景気低迷が長引く中で成果を出す従業員は手厚く報いようと考える企業が増えている」とみている。
 年俸制の対象に係長や主任も入れている企業が11.0%となり、一般従業員(総合職)まで入れている企業も7.6%あった。同制度の業種別導入率では電気機器が57.1%で最も多かった。
 調査は2001年10月中旬から11月上旬にかけて上場企業2,547社を対象に実施し、回答率で13.3%となる339社から回答を得た。

【Add 2002. 1.31】

  実質賃金0.5%減 昨年

2002/ 1/31 日本経済新聞夕刊

  2年ぶりマイナス 残業代落ち込み響く
 厚生労働省が31日発表した毎月勤労統計調査(速報)によると、従業員5人以上の企業の2001年の1人あたり現金給与総額は前年比1.2%減った。前年を下回るのは2年ぶり。景気悪化で年後半から残業時間が減り、所定外給与(残業代)が落ち込んだ。物価変動を考慮した実質賃金も0.5%減少した。
 現金給与は毎月の給与、ボーナスなどの合計で所得税、社会保険料などを差し引く前の金額。2001年の1人あたりの現金給与総額は月平均で351,347円。所定内給与が前年比0.4%減り、残業代も4.2%減と3年ぶりに減少に転じた。ボーナスなどの特別給与は3.1%減と4年連続でマイナス。
 実質賃金の減少は2年ぶり。物価が持続的に下落するデフレ下では賃金が一定であれば実質賃金が上昇する。しかし、2001年は全国の消費者物価の下落(0.8%)を上回るペースで賃金水準が低下し、個人の所得環境が厳しさを増したことを裏づけている。
 就業形態別に現金給与総額をみると、正社員などの一般労働者は0.5%減、パート労働者は1.2%減となった。パート労働者は908万7,000人と3.5%増えたが、正社員との賃金格差が大きいため全体の賃金水準を下押ししているとみられる。
 1人あたりの総実労働時間の月平均は前年比0.8%減の153.1時間と2年ぶりに減少した。所定外労働時間(残業時間)は4.4%減。情報技術(IT)不況を背景に生産・輸出が低迷した製造業の残業時間が8.5%減と大きく落ち込んだ。
 労働者の増減を職種別にみると、一般労働者が1.1%減と4年連続で前年を下回った。パートの増加を上回る減少数となり、全体の労働者数は0.2%減と3年連続で減少した。
 2001年12月の1人あたり現金給与総額は646,987円と前年同月比で3.7%減。冬のボーナスが集中する特別給与は5.8%減った。
人口、50年後1億人割れ

2002/ 1/31 日本経済新聞朝刊

   厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所は30日、長期的な日本の人口動向を予測した「将来推計人口」を正式発表した。出生率(女性1人が生涯に産む子供の数)は長期的に1.39どまりで、5年前の前回推計(1.61)を大幅に下方修正した。日本の人口は2006年の1億2,774万人をピークに、2007年から減少に転ずる見込み。このままでは2015年に1億人を割り、2100年には6,400万人へと半減する。
 少子・高齢化が従来の予測より急ピッチに進むことで、政府は少子化対策の大幅な見直しを迫られる。さらに大学など教育制度から、年金・医療などの社会保障制度、国の労働力をどう確保していくかまで、幅広い分野で制度の再構築が必要となりそうだ。
 全体に占める65歳以上の人口の割合は2000年で17.4%だったが、2025年には28.7%と4人に1人を超す。2050年は35.7%で、前回推計より3.4ポイント増えて3人に1人を超す。
失業率5.6% 12月最悪に 昨年平均、初の5%

2002/ 1/29 日本経済新聞夕刊

   総務省が29日発表した昨年12月の完全失業率(季節調整値)は5.6%と前月より0.1ポイント上昇し、4ヶ月連続で過去最悪を更新した。2001年平均も前年比0.3ポイント上昇の5.0%と過去最悪。12月の完全失業者数は337万人と9ヶ月連続で増え、倒産や解雇で失業を余儀なくされた非自発的失業者が5ヶ月連続で増加した。
 
求人倍率0.51倍に悪化 12月
 厚生労働省が同日発表した求職者1人あたりの求人の割合を示す昨年12月の有効求人倍率(季節調整値)は0.51倍と前月比0.02ポイント低下し、6ヶ月連続で悪化した。2001年平均の有効求人倍率は0.59倍と前年と同水準だった。
 2001年は500人以上の企業で雇用労働者が26万人減り、大企業の人員削減が進んだ。完全失業率は男性が5.2%、女性が4.7%といずれも過去最悪を更新した。
 地域別にみると、2001年平均の完全失業率は近畿が前年比0.4ポイント上昇の6.3%でトップ。以下、北海道(5.9%)、九州(5.6%)の順。情報技術(IT)関連の工場の閉鎖などが相次いだ影響があるとみられる。
 12月の男女別の完全失業率をみると、男性が5.8%と3ヶ月連続の同率で過去最悪の水準。女性は5.1%と前月を0.2ポイント上回った。総務省は「女性の失業率上昇は就業者数が減少したため」(統計局)と説明している。
 年齢別では男性の55歳-64歳の完全失業率が7.5%と依然高水準。さらに男女ともに25歳-34歳で完全失業者の増加が目立ち、雇用環境の悪化が中高年から次第に若年層への広がり始めた。
 完全失業者は前年同月比で39万人増えた。このうち非自発的失業者は前年同月比31万人増の125万人と過去最多となり、2ヶ月連続で自発的失業者(101万人)を上回った。就業者数は前年同月比78万人減の6,362万人と9ヶ月連続で減少した。
 背景には企業が正社員減らしを加速している事情がある。男性を中心に常用の雇用労働者は前年同月比32万人減と5ヶ月連続で減少。
 半面、雇用契約期間が1ヶ月未満は3万人増と5ヶ月連続で増えた。
 昨年12月の有効求人は前月比2.4%減ったものの、有効求職者は0.5%増えた。雇用情勢の先行指標となる新規求人倍率(季節調整値)は0.92倍と前月と同水準だった。
派遣各社 転職手助け

2002/ 1/28 日本経済新聞夕刊

   人材派遣各社が転職の人材紹介事業への進出や拡大を急いでいる。専門部署を新設したり、求人企業探しを担当するコンサルタントを増員している。失業者が急増する中で、中高年の転職や派遣スタッフの正社員採用を支援する紹介予定派遣の需要が高まっているのに対応する。
 
担当者増員や専門部署 正社員採用へ中高年を紹介
 厚生労働省は2月中旬から人材紹介業の手数料規制を緩和し、求職者本人からの手数料徴収を一部で解禁する。求人企業から徴収する手数料の上限を撤廃することも決まっており、各社は紹介業を強化する。
 中堅派遣のアヴァンティスタッフ(東京・中央)は社内の紹介部門と連携、近く中高年の派遣スタッフが派遣先企業の正社員として採用されるのを支援するサービスを首都圏で始める。正社員採用を希望するスタッフに、派遣を経由し正規採用に道を開く紹介予定派遣の利用を提案する。
 同社では首都圏で50歳以上のスタッフ約260人を派遣している。主に定年退職者を派遣してきたが、最近はリストラの影響で正社員志向の強い50歳代の登録が増えているのに対応する。初年度20-30人のあっせんを目指す。
 派遣大手ではテンプスタッフ(東京・渋谷)が今月1日付で、人材紹介事業部を新設した。担当者を配置、これまで手薄だった紹介事業を4月から本格化するとともに、紹介予定派遣の拡大を進める。
 中堅派遣会社のキャプラン(東京・港)は中高年の転職支援部門のコンサルタントを10月までに25人増やし100人体制にする。大企業から出向の形で同社が中高年を受け入れ、転身先を探すサービスが好調なため。増員で再就職先の調査・開拓を強化する。パソナは製薬会社から医薬情報担当者の引き合いが強まっていることから、昨秋以降、東京と大阪で医療業界向け担当を新設した。
 日本人材紹介事業協会によると、紹介業の事業所数は2,741ヶ所と昨年3月末に比べ38%増えた。派遣会社が地方支店で紹介業の許可を取得したほか、新規参入も急増中。紹介市場は1000億円程度とされるが、長引く不況で企業側の求人意欲は伸び悩んでいる。紹介業強化で同分野の競争は激しくなりそうだ。
国民年金保険料 全金融機関で受け入れ

2002/ 1/21 日本経済新聞朝刊

  厚生省が滞納対策 全国7万ヶ所に
 厚生労働省・社会保険庁は国民年金の保険料について納付漏れの防止策を強化する。今は市町村ごとに異なる納付窓口を、2002年4月から郵便局を含む全国約7万ヶ所のすべての金融機関の窓口に広げ、2003年度からはコンビニエンスストアでも受け付ける。払い忘れた人の自宅を訪ねる徴収員も約1,900人増やす。加入者の1割強に達した未納者の増加に歯止めをかける狙いだ。
 
コンビニにも拡大へ
 自営業者や学生らの公的年金である国民年金の加入者数は約2,120万人。サラリーマンの厚生年金のような給与天引きの仕組みがないこともあり、保険料の納付率は低く、全額納付者は加入者数の約6割。1割強は過去2年間1度も納めていない。滞納が広がると年金財政が悪化するうえ、滞納によって老後に必要な年金を受け取れない人が将来増える。
 社会保険庁は地方分権一括法で2002年度から保険料徴収事務が市町村から国に移管するのに合わせ、滞納対策を強化する。
 まず加入者が保険料を払いやすい体制を整える。現在の納付窓口は加入者本人が住んでいる市町村の指定金融機関に限られ、全国で約2万-3万ヶ所。4月からは銀行、信用金庫、農協、郵便局を含む全国どの金融機関でも受け付ける。これまで利用できなかった簡易郵便局も窓口に加える。
 払い忘れた人が早めに気付くよう滞納が始まればすぐ督促状を数カ月おきに年6回送る。現在は未払い期間が1年を超え滞納額がたまってから督促している。
 公的年金は現役世代の保険料が高齢者への年金給付の原資となる。若年層には、自分が払った保険料より受け取る年金総額が少なくなるのではないかという制度への不信感から保険料を滞納する人もいる。こうした人に電話や自宅訪問で制度への理解を求め、納付を呼びかける体制も強化する。
 夜間・休日に滞納者の自宅を訪ねる非常勤の徴収員を2002年度に約1,900人増員する。2003年度からはコンビニでも受付を開始し、24時間納付できるようにする。
 国民年金の保険料は現在月13,300円。40年間払い続ければ65歳から満額の年金(月約67,000円)を受け取れるが、滞納すると滞納期間に応じて年金額が減額される。原則として納付期間が25年に満たなければ年金額はゼロになる。サラリーマンの失業や就職できない若者の増加とともに国民年金の新規加入者が増えており、滞納者も増加傾向にある。

【Add 2002. 1.20】

  育児・介護と仕事の両立 注意指針の具体例

2002/ 1/19 日本経済新聞朝刊

  厚労相に答申 事業主向けに明示
 坂口力厚生労働相は18日、働く人の育児や介護と仕事がうまく両立するよう事業主が注意すべき指針をまとめ労働政策審議会に諮問、同日中に答申を得た。答申を受け、厚労省は関係省令を整備する。
 指針は、改正育児・介護休業法が昨年11月に一部施行されたのを受けて整備された。改正法が禁止している育児休業や介護休業の申し出や取得を理由とする不利益な取り扱いに当たる具体例を挙げている。
 具体例として(1)解雇(2)退職や正社員をパートタイム労働者にする労働契約内容の強要(3)自宅待機命令(4)降格--などを例示。減給やボーナスでの不利益な扱い、不利益な配置変更、就業環境を害することも列挙した。勧奨退職や正社員を非正規社員とするような労働契約内容の変更は、労働の表面上の同意を得ても真意に基づかないと認められる時は、不利益な取り扱いに該当すると指摘。
 事業主が休業予定終了日を超過して休業を労働者に強要することは「自宅待機」に当たり、業務に従事させなかったり、雑務に専念させる行為も「就業環境を害すること」になるなどとしている。
ワークシェア 3月に原則明示 政府・日経連・連合が一致

2002/ 1/16 日本経済新聞朝刊

   政府と日経連、連合は15日、1人あたりの労働時間を減らし、仕事を分かち合う「ワークシェアリング」導入に向け、実務者レベルによる作業委員会の初会合を開いた。当面の緊急避難的な対応と、中長期的に多様な就業を促す方策の2段階に分けて検討。3月の合意に政労使の役割分担といった基本原則を盛り込む方針で大筋一致した。
 政府と労使の3者が決めた検討課題のうち、業績が悪化した企業が一時的に導入する当面の対策では、労働時間短縮に伴う賃金の扱いとワークシェアが実施可能な部門・職種を挙げた。中長期の課題ではパート社員への年金、医療保険の適用方法、労働市場の環境整備などを盛り込んだ。
 課題への基本的な原則や考え方を3月初旬にまとめる合意で打ち出すとともに、少子化・高齢化を視野にワークシェアの意義として「働き方・ライフスタイルの見直し」も示す見通し。会合ではワークシェア導入の是非や具体的な導入方法は個別企業の労使にゆだねるとの立場も確認した。
 実務者レベルの作業委員会は坂口力厚生労働相、奥田硯日経連会長、笹森清連合会長らでつくる政労使ワークシェアリング検討会議の下部組織。1月から2月にかけて4回程度会合を開く予定だ。
 
経団連会員企業「導入せず」85%
 経団連は「ワークシェアリング」について会員企業に調査を実施、15日に中間集計をまとめた。当面導入しないと答えた企業は85%にのぼる。経団連は生産性の低下などから企業は総じて消極的とみている。
 調査は昨年12月から今年1月に1100社に実施、306社から回答を得た。ワークシェアを導入済みと答えた企業は6%、導入予定は9%にとどまった。
 導入済みまたは導入予定の企業のうち、労使協定を通じ所定労働時間を短縮、雇用を創出するところは11%。今春闘では同タイプの導入をめぐり議論が高まる公算が大きいが、少数だった。
 今井敬会長は「ワークシェアリングは定義があいまいなため、もう少し明確にして議論すべきだ」と語った。
療養型病院で入院 3分の2、半年以上 退院後の介護に不安

2002/ 1/16 日本経済新聞朝刊

   療養型病院に入院している医療保険適用患者のうち6ヶ月以内の退院が見込める人は3分の1にとどまり、残る3分の2は入院期間が6ヶ月を超えることが医療経済研究機構の調査で分かった。治療の必要がなくなっても退院すると介護を受けられないなどの理由で入院を続ける人が多い。
 政府は6ヶ月超の入院患者の自己負担の引き上げを来年度にも予定しており、こうした患者の間では今後負担増を避けて退院する動きが広がる見通しだ。
 療養型病院(療養型病床群)は主に高齢者を対象に医療と介護の両方を提供しており、介護が中心の場合は介護保険、医療が中心の場合介護保険、医療が中心なら医療保険を適用する。医療経済研究機構の調査によると、医療保険適用患者のうち6ヶ月以内に退院を見込めるのは34.3%。6ヶ月を超えて入院治療が必要な人は4.6%だけだが、「退院後の患者の受け入れ体制次第」の割合が35.2%に達したためだ。
 厚生労働省は医療制度改革の一環として6ヶ月超の入院患者の自己負担を増やす。難病患者を除きベッド代や食事療養費、看護料などが医療保険の給付対象から外れるため療養型病院で医療保険を適用している患者の大半は負担が重くなる。費用を負担できず退院する人も増える見通しで、退院しても介護なしでは自宅で生活できない人などの受け入れ対策が課題になる。
過労死一転認める 光文社社員突然死訴訟で労基署 「裁量労働制」で初

2002/ 1/16 日本経済新聞朝刊

   出版社「光文社」(東京・文京)の男性社員が入社2年目に突然死したのは過重労働が原因だとして、男性の両親が中央労働基準監督署(同・千代田)を相手に労災不認定処分の取り消しを求めた訴訟で、同労基署は15日、男性の死亡は過労死に当たると認定し、労災保険金を支給すると両親に伝えた。訴訟で係争中に労基署が一転して労災を認めるのは異例で、訴訟は近く集結する。
 訴えていたのは1997年7月に急性心不全で死亡した脇山達さん(当時24)の父、進さん(64)と母、晴枝さん(61)。達さんの職場は、仕事の進め方や時間配分を社員にゆだねる「裁量労働制」が導入されていたが、両親側の弁護士によると、同制度の適用される職場で過労死が認定されたのは初めてという。
 厚生労働省は昨年12月、過労死認定基準を緩和する通達を出した。達さんは死亡前の半年間の時間外労働時間が月80時間を超えていたうえ、深夜勤務も日常化しており、同労基署は「基準改定を真しに受け止め、判決を待たずに処分を見直した」としている。
 両親は「長時間勤務を放置した」などとして光文社に対する損害賠償請求訴訟も起こしており、この訴訟は継続している。

【Add 2002. 1.14】

  パート社員向け社会保険見直し 短時間勤務も加入

2002/ 1/13 日本経済新聞朝刊

  ワークシェアへ環境整備 政労使が検討
 政府と日経連、連合は1人あたりの労働時間を減らし、仕事を分かち合うワークシェアリングの導入に向けて、パート社員に対する社会保険の適用方法の見直しを検討する。勤務時間が短くても厚生年金や健康保険組合に加入できる環境を整え、雇用拡大につなげる狙い。ワークシェアで社員を増やす企業の税金や社会保険料の負担を軽減する案も浮かんでいる。
 
 ワークシェアをめぐり政労使の3者は15日から実務者レベルの作業委員会で具体策の論議をはじめ、3月初旬の合意をめざす。業績が悪化した企業が一時的に実施する当面の措置と、ワークシェア普及に向けて中長期的に必要となる条件整備の2段階に分けて対応策を検討する。
 パート社員への社会保険の適用方法の見直しを検討するのは、「多様就業対応型」と呼ばれるワークシェアを推進する一環だ。これまでの正社員、パート社員の中間に位置する形態の「短時間勤務正社員」を増やし、結果的に大勢の人が分かち合えるようにする。
 現在、パート社員で厚生年金に加入できるのは週の就業時間と1ヶ月の勤務数が正社員の4分の3以上の人。この条件を例えば2分の1以下に引き下げれば、厚生年金や健康保険組合に未加入のパート社員が加入しやすくなり、より安心して働けるようになる。
 従来の正社員が勤務時間(法定労働時間は週40時間)を短くし、その分だけ家庭生活や余暇に回す時間を増やすようにする働き方を選んでも、厚生年金や健保などへの加入が保証される。将来の人口減少をにらんで女性や高齢者社員の就業を促し、日本経済の成長低下に歯止めをかける効果も期待できる。
 厚生年金の保険料は月収の17.35%を労使で折半する仕組み。厚生年金に未加入だったパート社員を抱える事業主の負担は膨らむため、政労使は新たに従業員を雇い入れる事業主の負担を一定期間、減免する案も検討する方向だ。
 ただ、日本では正社員とパート社員の賃金格差が大きい。短時間勤務正社員のような働き方を定着させるため、政労使は「パート社員の処遇のあり方」も検討する。同時に企業内での賃金・人事制度、労働時間管理のあり方も探る。
 
当面の措置=緊急避難的な対応
  労働時間短縮による雇用の維持・創出のあり方(賃金の扱い、実施可能な部門・職種など)
  個別企業で推進するための環境整備
中長期的に必要な条件整備
  企業内での条件整備(賃金・人事制度、職務や労働時間管理のあり方)
  パート社員の処遇、社会保険適用のあり方
  多様な働き方を実現するための環境整備(政労使の役割分担、労働市場の環境整備)
日経連、賃下げも視野

2002/ 1/12 日本経済新聞朝刊

  雇用維持を強調 ワークシェア、緊急避難型 指針を承認
 日経連は11日、臨時総会を開き、今春闘の指針となる「労働問題研究委員会報告」を承認した。景気後退が深刻化していることもあり、定期昇給の見直しだけでなく賃下げを視野に入れて臨む構えだ。仕事を分かち合う「ワークシェアリング」については、一時的に労働時間の短縮とともに賃金を削減して雇用維持する「緊急避難型」の導入を提唱した。
 景気低迷を背景に今春闘では連合が賃金基準の引き上げであるベースアップの統一要求を見送った。これに対し、日経連は同報告で「賃上げは論外。場合によってはベア見送りにとどまらず、(年齢や勤続年数に応じて賃金を上げる)定昇の凍結・見直しなど、これまでにない施策にも思い切って取り組むことが求められる」としている。「これまでにない施策」について奥田会長は「賃下げ」も視野に入れる姿勢を示している。
 奥田会長は総会のあいさつで「政労使が雇用時に最大限努力すべきだ」と強調。その手段の1つとしてワークシェアリングを挙げた。
 ワークシェアリングには緊急避難型以外にも中高年の短時間勤務による雇用確保、法定労働時間の短縮などの形態があるが、奥田会長は緊急避難型が当面最優先課題とし、具体的には「人員が過剰な場合に過剰分だけ労働時間を短縮し、それに相当するだけ賃金を減額するべきだ」との考えを表明した。
 日経連は昨年までの春闘では、将来の労働人口の減少を視野に入れ、働き方の多様化を主張していた。完全失業率が過去最悪を更新し続けるなど雇用情勢が厳しいなかで、方針を転換した。
 
定昇見直し巡り連合が指針批判 
 連合は11日、日経連が同日決議した「労働問題研究委員会報告」に対する見解を発表、賃金改定の考え方について「一時的なコスト削減を目的に(定期昇給)を値切ることは労使関係を揺るがす。総人件費抑制のためには手段を選ばない定昇の見直しは容認できない」と批判した。雇用維持策として提案している緊急避難型のワークシェアリングについて「賃下げの手段として安易に提案されることのないよう徹底すべきだ」と要望した。
 笹森清会長は「(定昇の見直しは)経営側が図に乗って踏み込みすぎ。定昇はすべての組合が確保し、そこから全体に波及効果を求めるという連合のやり方からすると、メスを入れるのは許容できない」と述べた。
医療費負担3割に上げ 法案明記見送り示唆 厚労相

2002/ 1/12 日本経済新聞朝刊

   坂口力厚生労働相は11日、サラリーマン本人の医療費の自己負担を現行の2割から3割に引き上げる健康保険法改正について「数字を(法案に)入れるのは難しい」と述べ、次期通常国会に提出する同法改正案に引き上げの幅や時期を明記しない可能性を示唆した。都内で記者団の質問に答えた。
 自民党などが3割への引き上げに強く反発していることへの配慮とみられる。ただ小泉純一郎首相は2003年4月から3割に引き上げる意向を示しており、法案への明記を見送れば野党から「閣内不一致」として厳しい批判を受けるのは必至だ。
 厚労相は記者団に(1)2003年4月に予定している政府管掌健康保険の保険料の引き上げ幅を大きくする代わりに自己負担を2割に据え置く(2)保険料の上げ幅を小さくして自己負担を3割に上げる--という選択肢があると指摘。医療制度改革で医療費をどの程度抑制できるかなども見極めた上で、最終的に判断するとみられる。
 自民党の厚生関係議員などは「健保の保険料を引き上げれば自己負担を3割にする必要はない」などと主張している。
無年金障害者 早期救済に意欲

2002/ 1/11 日本経済新聞夕刊

  厚労相 政治的解決を示唆
 1991年に国民年金法が改正されるまで年金制度の谷間となっていた学生時代に障害を負ったため、障害基礎年金が支給されなかった「無年金障害者」について、坂口力厚生労働相は11日の閣議後の会見で「政治の場では問題になる。早期に結論を出したい」と述べ、救済に向けた解決を目指す考えを明らかにした。
 現行の国民年金法では20歳になれば加入を義務づけている。しかし、91年4月に改正法が施行されるまでは、学生などは国民年金への加入が任意だったため、未加入の場合、障害を負っても年金を受給できなかった。
 こうした「無年金障害者」26人が昨年7月、「未加入を理由に障害基礎年金を支給しなかったのは違憲」などとして、東京、大阪など全国8カ所で国に不支給処分の決定取り消しと損害賠償を求める訴訟を起こした。裁判では、これまで国側は全国的に争う姿勢を示している。
 厚生省によると、制度改正後も年金への加入手続きをしなかったり、保険料を滞納しているため人年金を受給できない人を合わせ、無年金障害者数は全国に約10万人いるという。
国民健保 全国1000に集約

2002/ 1/ 8 日本経済新聞朝刊

  3分の1に 自治体が共同運営 政府・与党検討
 政府・与党は医療制度改革の一環として全国に約3,200ある国民健康保険を1,000程度に集約する方針だ。市区町村が自営業者らを対象に運営する国民健保は医療費支払いが増大する一方、高齢や低所得の加入者が増え財源が悪化しているところが多い。複数の自治体による共同運営を押し進め、多くの加入者で支える保険原理を徹底させる。高保険料の国民健保の加入者にとっては、保険料上昇を抑制する効果も期待できる。
 
4割が赤字 財政悪化に対応
 国民健保には自営業者をはじめ企業の退職者やその家族を中心に全国で約4,200万人が加入。大手企業のサラリーマンが入る健康保険組合に比べ高齢者や低所得者の割合が高い。1人あたりの保険料負担は全国平均で年76,000円(1999年度)。患者が医療機関にかかった場合の自己負担は3割で、サラリーマン本人の2割より高い。
 現在、全国の国民健保の約4割は支出が収入を上回る赤字に陥っている。全国ベースでみると、2000年度は市区町村の一般会計から2,254億円の財政支援を受けたが、それでも穴埋めできない赤字が998億円あった。
 過疎化などで加入者数が3,000人を下回る零細国民健保も全体の4割を占める。過疎地などの国民健保は高齢化が進み医療費負担が重くなる傾向が強く、加入者の保険料も高い。99年度時点で北海道南幌町の1人あたり年間保険料は約109,000円。東京・新宿区より35,000円高い。政府・与党内では保険財政の基盤強化へ向け規模拡大が必要という意見が強い。
 具体的には隣り合う複数の自治体が廃棄物収集などを共同で実施している「一部事務組合」や「広域連合」という制度の活用を促す。2000年4月に始まった介護保険では一部事務組合や広域連合を活用している例が全国に63(2001年4月時点)あるが、国民健保では3ヶ所にとどまっている。
 保険料が低い国民健保は高保険料の国民健保と統合に消極的になりがちだ。このため厚生労働省は全国の都道府県と共同で保険料格差をならすための無利子融資を始める。2002年度予算案に国費として50億円を盛り込んだ。同年度から3年で計300億円の基金を設け、保険料が高い市区町村に融資。融資を受けた自治体は保険料を下げることで周辺自治体と統合しやすくなる。また、政府・与党は2002年度中に「保険制度の一元化に向けた懇談会」(仮称)を設置する。

【Add 2002. 1. 5】

  中小企業退職金 予定利率1.5%以下に

2002/ 1/ 5 日本経済新聞朝刊

  厚労省、2002年度に法改正
 厚生労働省は全国42万の中小企業が加入する退職金共済について、約束した運用利回り(予定利率)を現行の年3.0%から年1.5%以下に引き下げる。株式相場の低迷などで運用成績が予定利率に届かず、累積損失が増えているため。10年加入のモデル例で退職金支給額は5%以上減額される見込みだ。予定利率を機動的に変更できるようにする法改正案を通常国会に提出、2002年度中の施行をめざす。
 予定利率を下げるのは中小企業退職金共済(中退金)。労働組合側は年1.5%を求めているが、経営者側と学識経験者は「引き下げが不十分」と主張、最終的に年1%程度で決着する公算が大きい。厚労相の諮問機関である労働政策審議会の部会が月内にまとめる建議に盛り込む。中退金の予定利率下げは4回目で過去最低水準となる。 
 中退金は単独では退職金制度を運営できない企業から掛け金を集め、特殊法人の勤労者退職金共済機構が運用、退職金を支払う仕組み。昨年3月末時点で270万円が加入、資産総額は3兆1,000億円。
 2000年度の運用利回り実績は年2.33%となり、207億円の損失が出た。将来の退職金支給のための積み立て不足(累積損失)は2,029億円に膨らんでいる。予定利率の引き下げによって生じる毎年の利益の2分の1は累積損失の解消に充てる。
 現行の年3.0%の予定利率のまま、毎月1万円の掛け金で10年間、中小企業に勤めた人の退職金は140万8,000円。厚労省の試算では加入期間が1998年4月-2008年3月の人の場合、2003年度に予定利率を年1.5%に引き下げると約133万4,000円、同年1.0%だと約130万9,000円になる。

【Add 2002. 1. 2】

  人材派遣業 3割増

2002/ 1/ 1 日本経済新聞朝刊

  2001年 規制緩和で6570社に 厚労省まとめ
 人材派遣業への新規参入が急増している。厚生労働省によると、2001年12月で人材派遣会社(一般)は6,570社と前年より約3割増えた。規制緩和や企業による派遣社員の需要増大を追い風にビジネス機会を広げようとする動きが加速、1年間で1,400社以上が厚労省から派遣事業の許可を得た。同省は3月末までに7,000社に達する可能性があるとみている。
 人材派遣会社には常用の派遣社員だけを派遣する「特定派遣会社」と、例えば社員を登録だけして仕事があるときに企業に対し派遣する登録型も事業にできる「一般派遣会社」がある。
 一般派遣は2001年にほぼ毎月、100社以上の企業が新規参入した。派遣会社の総数は7月に6,000社を突破した。9ヶ月で1,000社が増えるという高水準の増加ペースが続いている。
 背景には人材派遣業の規制緩和がある。1999年12月施行の改正労働者派遣法は対象職種を拡大、製造業や医療関係など一部職種をのぞいて派遣を原則自由化した。2000年12月からは一定期間を派遣社員で働き、その後に正社員に採用される道を開く「紹介予定派遣」も解禁した。
 人材派遣会社、再就職支援(アウトプレースメント)会社、求人情報誌を発行する企業など人材関連ビジネス企業が本格的に人材派遣に乗り出す例が目立つ。東京電力やコクヨといった異業種の関連会社を通じた参入も増えている。
 人材派遣会社の売上高も拡大。2000年度の年間売り上げの総額は1兆6717億円と前年より14.5%増えた。1企業当たりの売上高は一般派遣会社の場合で3億7400万円と4.2%増加した。
 新規参入の増加で業界の競争が激化、派遣料金が低下すると見られていた。ただ2000年度の一般派遣の料金は1人1日当たり平均16,755円と前年度と横ばいだった。
 正社員を減らす代わりに、機動的に人材を増減できる派遣社員を増やそうとする企業の旺盛な需要が料金を一定水準に保った。厚労省は一段の規制緩和を検討する方針で、「事業所数は今後も増え続ける」(職業安定局)と見ている。
出生数最低 117万5000人 新世紀効果も空振り?

2002/ 1/ 1 日本経済新聞朝刊

  厚労省2001年推計 離婚29万件に迫る
 新世紀最初の年に当たる2001年に生まれた赤ちゃんは前年より減って117万5000人で、人口1000人当たりの出生率は9.3と過去最低になる見通しであることが31日、厚生労働省が公表した人口動態統計の年間推計で分かった。出生数は1970年代前半の第2次ベビーブーム以降、減少傾向が続いており、この時期に生まれた世代が結婚適齢期を迎えて"第3次ブーム"の期待もあったが、低迷が続いている。
 
(後略)