南極大陸、時速300キロの黒い疑惑


ケ|ケッキョク南極大冒険/As a result,The real adventure to the south pole

Konami
FAMILY COMPUTER
1985

ジャンル| 3Dアクション&レース
目的| 南極の基地から基地へとレースすること



南極、それは広大な宇宙に浮かぶ地球の自転軸の南端である。それが、このゲームの舞台である。ドラえもん単行本上において、のび太が南極点の旗のまわりを一周して、それをもって「世界一周をした」と宣言したことでも有名。

プレイヤーは、このケッキョク南極大冒険ワールドの中では、現物を見ずに「ペンギンてこんな感じやろ、もんくないやろ。」と記憶で書かれたような二頭身ペンギンになり、みんみんゼミががなり鳴く真夏の日本の家庭から、地球上最も寒い大陸である南極大陸へと、自らの時間を移転する。氷穴からときおり飛び出してくる、オレンジ(300点)と黄色の魚(500点)をその黒塗りの身体で受けとめながら、基地を目指して見事なスケーティングで進んでいく。

ところで、こちら側、デフォルトワールド(現実世界)では、ペンギンは、海の中では見事なスピードで泳く。しかし歩く姿はユーモラスでポテポテという擬音で表すのが最も適当な感じでスピード感がないことはなはだしい。それと比較してみると、ケッキョク南極大冒険ワールド上では、あたかも別の生物であるかのような機敏な動きをする。時速何キロ出ているかはデジタルに明示されないので計測することは不可能であるが、F1レース(任天堂|ファミリーコンピュータ|1984)での、エフワンカーのスピード感と体感上そう明確な差が認知できないところから、およそ、あの南極大陸を疾走する二頭身の黒い物体は、時速にして優に300キロぐらいは出ているものと思われる。

おかしい。っていうか、逃げろ、それはおそらくはペンギンではない。その黒い羽のある物体にはおそらく、背中にチャックがある、もしくは遺伝子がそうとう操作されているはずだ。彼が通った道の後には、もしふりかえることが許されるならば、彼がカラダで受けとめた魚が、時速300キロの物体にぶつかられた衝撃でミンチになり、点々と血まみれで転がるシーンを目にすることになるだろう。このゲームでは、物体が、基地から基地へと移動していく。その基地は、観測の基地でなく軍事基地なのだろうか。ペンギン風の黒い物体のかわいさの裏にあるモノはなにか。

けっきょくその謎は解かれることなく、このレースは進んでいく。点滅する旗をとると、頭にタケコプターらしきプロペラがつくことから、あの青い手が丸い猫型の物体との関連がとりだたされた。猫型と同時にペンギン型も同時に開発されたのか、その答えがわかるのは猫型が開発されたとされる23世紀をまたねばならない。



参考 ファミコン通信責任編集 1992
「ゲーム年鑑1983~86」 アスキー出版局