連射の時代


サ|ザナック/ZANAC

PONY CANYON
FAMILY COMPUTER disc system
1986

ジャンル| 縦スクロールシューティング
目的| 要塞撃破



「ザナック」それはシューティングゲームの名前であると同時に、伝説の名前である。磁気ディスク片面(512kbit/64kbyte)に詰められた、高密度シューティング空間。全12面、8種類の特殊弾(FIRE)の3段階の派手なパワーアップ、人間の動体視力の限界に挑もうとする狂乱のスクロール、弾幕の波紋、散る敵機。ファミコンプラットフォームにおいて、縦スクロールシューティングの一つの到達点であった。

発射弾数や、破壊率によりゲームの難易度が変化するファミコン史上初のAI機能が搭載されたことで話題となった。その当時には市民権を確立していた連射機能付きパッドを使用すると、難しくなってしまうので、連射機能ガエシとして恐れられ、同時に「硬派」「フェア」としてその明確な意志表現に敬意が払われた。

「連射」それは、1983~1986年の状況を理解するための一つのキィワードである。1984年9月にファミコン初のシューティングゲーム「ギャラクシアン」が移植され発売、そしてアーケードの一つの時代を築いた「ゼビウス」および、「エクセリオン」「ギャラガ」という業務用からの移植のシューティングゲームがそれに続いた。

そして「連射」系の存在を決定づけるかのように、1985年の6月21日にコナミから「ハイパーオリンピック」、その4日後の6月25日にはハドソンから「スターフォース」が発売された。85年6月の連射系創世の一週間である。(いま決めた。)ハイパーオリンピックに至っては、十字キーを廃止、コンソールにボタン二つしかない専用コントローラーを同梱するものであった。そこでは物理的にプレイヤーは方向を決める自由を奪われ、ただボタンを叩くことしか許されないのだ。

その連射系の侵攻に対抗すべく援軍があらわれた。それが、連射機能が装着された拡張コントローラーである。ファミコンには、本体に2つコントローラー(最初のボタンはゴムで四角。ついでマルでプラスティック)が外れない形で装着されていた。そのため、それまではコントローラーを買う必要が、ジョイスティックを愛好するアーケードユーザーを除いては認識されていなかった。しかし、その連射機能つきコントローラーは、「存在理由」が十分に備わっていた。

記憶では、その連射機能つきコントローラー、ジョイボール(ハル研究所)は、コントローラーの十字キー部分が、軟式野球の球が乗っているような形であり、それを転がすのではなく、押して動かす構造になっていた。慣れれば使いやすかったのかも知れないが、慣れて使っている人を現在まで知らない。技巧者は、足でジョイボールのABボタンをガシッと押し、本体付属のコントローラーの十字キーで操作した。

ザナックのAIシステムは、このような機械的な部分でのコントローラーの進化に対する、ソフトウェア側からの一つの回答であった。しかし、コントローラーの進化はそれだけではなかった。アスキースティック2ターボでは、スタートボタンを連射する機能が備わっていた。それをゲーム中に押すとどうなるのか。ポーズが連続的にかかり、コマ送り状態になり、弾幕が避けやすくなるのだ。ゲームの面白さと引き替えにではあるが。

そこまでして、勝つことになにか、意味があるのか。プレイやーの心の中に一陣の疑問が吹かずにはいられなかったが、やはり、やると、勝ちにいってしまうのであった。


bitnik.jp
1998