ゲーム名人のゲーム


タ|高橋名人の冒険島
Takahshi's Adventure Island

HUDSON
FAMILY COMPUTER
1986

ジャンル| アクションRPG
目的| 8エリアをクリアすること



ぼくも名人みたく、早く連打ができるようになりたい!なれるのかな。いつか。高橋名人の冒険島は、一秒間に16回ボタンを叩く、16連打で名を馳せたハドソン社員、高橋利幸をフィーチャリングした横スクロールのアクションアドベンチャーである。業務用タイトル、「ワンダーボーイ」の移植作品で、移植時に高橋名人をメインキャラクターに据えられた。

オレンジ色のスケボーに飛び乗って、刻一刻と減っていくライフゲージ、つまり自分の食欲と、ロードに転がるフルーツやミルクで闘いながら、さっそうと、右手に掲げたオノを頼りに自らの運命が命ずるままに冒険を行う。

高橋名人がナスビが実際に好きか嫌いかは定かではないが、ゲーム上でナスビを取るとパワーダウンする。パルテナの鏡でもナスビがマイナスキャラクターとして使用されていた。ナスビとはいったいゲーム世界でどのような位置づけがなされているのだろうか。「おまえなんかナスビだ!」というのはゲーマーの中で最上位の侮辱のコトバになるかどうかは、定かではない。

高橋名人、80年代のゲームライフを語るときに、その名を避けて通ることはできない。コロコロコミック誌上で「高橋名人物語」がマンガで連載されたり、得意技の一秒間に16回ボタンを押すことができることがインチキであり告発されたというデマが流れたりと、常にその細やかな動向に注意が払われ、少年たちの間で知名度が高かった。また「GAMEKING」という、毛利名人との対戦を描いた映画もつくられた。歌手デビューもし「RUNNER」や、自身が実況する「高橋名人のシンクロナイズド冒険島」などの曲がある。

歌が発売され、雑誌にマンガが掲載され、映画も制作され、ゲームのキャラクターにも取り上げられ、まさにあの時代のあの世代の間のアイドルだった。憧れの対象として、高橋名人関連グッズ一色で染めぬかれた部屋に住む人間もいたのかもしれない。あの頃、16連打に友達と一緒に挑戦した経験を持ち、なぜあのときはあんなに燃えたんだろうと今改めて自分自身に疑問をいだいたりする人もいるだろう。

(文中敬称略)



bitnik.jp
1998