ヒッポQ&A集

 ヒッポに関してよく訊かれる質問に対して、私なりの回答を用意いたしました。まず、これらの疑問質問をいくつかの基本要素に分けましょう。
 まず、テープを聞いているだけでことばが自然習得できるかという点。それから、ファミリに出ているだけでよいのかという点。どれかの言語を選んで集中してやった方がよいのかという点。ファミリによる活動の違いをどうするかという点(消極的な活動をどうしたら積極的な活動に変えられるかなど)。
 これに対する私の答は以下の通りです。もちろん納得のいかない人もいるでしょうが、10年近くヒッポを続けて来た者として、その思いと続けるコツ? などを書きます。

Q1.テープを聞いているだけでことばを自然習得できますか?

A1.聞いているだけでは無理です。聞いているだけでO.K.なのだったらヒッポというシステムを作る必要もなかったはずです。よくある英会話教材の販売会社のようにテープを売るだけで済む訳です。そこでファミリという、お互いのことばを持ち寄り、投げ合う場がある訳です。
 テープを聞いていると色々な音が自分の中に蓄積されてきます。ただし、そのままではことばとは言えません。それを口から出してみる、そして、それに対して反応がある。また、人の口から出てきたことばに対して自分が反応していく、その相互反応の過程、インタラクティブな環境においてのみ、自然にことばが習得され得るのだと考えます。

Q2.ファミリに出ているだけでことばを自然習得できますか?

A2.難しいと思います。もちろんファミリにおいて人から貰うことばはたくさんあります。でも、みんながことばは人から貰えばよいのだと考えてテープを聞かなかったとしたら、活動が成り立ちません。活動の土台としてテープがあり、それがメンバ間共通理解の基礎になっているからです。共通理解があるからこそ、それを元にしたインタラクティブ環境が構築できる訳で、それを抜きにしては、それこそ雑談の環境になってしまうでしょう。
 また、メンバ間の互恵の立場から考えてもテープを聞く必要があります。ことばが貰えるのを待っているだけのメンバが多くなれば、活動は停滞します。もちろん人から貰うことばは非常に大切なのですが、自分が与える側に立つのも、また、大事なことです。別にヒッポに入ったばかりだから何も与えられない、貰うばかりだ、などと考える必要もありません。寧ろ、新しく入ってきたメンバの新鮮な視点が、長年やっているメンバにとって、嬉しかったりします。ことばはいくらあげても減りませんから(増えると言ってもよいかもしれない)、Give & GiveでもGiveする方は困らないと思いますが、Give & Takeで行くことが長続きするコツだと思います。
 ファミリに出る=出席ではなくて、参加だと考えてください。あなたもファミリを作っている一員なのですから。

Q3.どれかの言語を選んで集中してやった方がよいですか?

A3.それでは多言語でやっている意味がありません。是非、色々な言語のテープを聞いて、それに基づいて活動してみてください。多言語であることがヒッポの重大な存在理由なのですから。
 といっても、万遍なくすべてのテープを均等に聞く必要があるかというと、そこまで意識する必要はないと思います。ステイに出かけるたりゲストを受け入れたりする前には、ある特定の言語のテープを集中して聴くこともよくあることです。また、色々聞いているうちに好みの言語というのも出てくるかと思います。ですから、ある一定時期に偏りが生じるのは普通のことだと思います。ある言語がある程度話せるようになるまでは他のを聞かないといった頑なな態度を取らなければ、それでよいのです。
 どれかの言語を選んだり、どれかのテープを選んで、それだけに専念していると、遠からず限界を感じることになると思います。心理的にも負担だと思います。自分で自分を追い込むイメージです。追い込まれて力を発揮するタイプもいますが、年がら年中追い込まれていては、耐えられないのではないでしょうか?
 一つ例外を挙げておくと、ステイから帰って来た時は、ステイ先で使用した言語のテープを集中的に聴いてみるのも面白いかと思います。行く前とはまるで違って聞こえること請け合いです。一気に切れ込みが深まっていく感じがします。

Q4.ファミリの活動を活性化するにはどうしたらよいですか?

A4.……。そんな答があったら教えてください。
 というのはちょっと冷たいですか?ただ、これはそれぞれのファミリによって環境も異なるしメンバも異なるので、これといった答がある訳ではありません。でも、みんなやる気があるのに方法論で空回りしているといったケースは聞きません。ファミリの活動が停滞していると感じたら、その人がまずは動いてみるしかないと思います。
 ファミリの活動も人間の活動ですから、やはり波があります。盛り上がる時もあれば停滞する時もあるのは、それこそ自然の摂理です。また停滞している雰囲気の中ではメンバの気持ちが沈んでしまい、なかなか盛り上がれないというのも真理だと思います。そこをいきなり盛り上がれといっても無理があるので、やはり、流れを変えるところから始めるのがよろしいかと思います。
 せっかくヒッポのファミリは全国にあるのですから、他のファミリと交流してみるのも手っ取り早い手段です。他のファミリでやっていて凄いと思ったことは遠慮せず真似してみましょう。合宿などを企画してそれに向かってみんなで準備をするというのもよいでしょう。日本における共同体というのは協働から生まれるというのが定説ですが、それを適用する訳です。また、近くにいる留学生達と交流してみたり、留学生に限らず、ヒッポ以外のグループと共同企画を打ち立ててみたりするのもよいかもしれません。
 そして、基本に立ち返って、まずはテープを聞いてみましょう。いっぱい聞いてみましょう。いっぱいいっぱい聞いてみましょう。そうして貯まったことばがファミリで溢れ出せば、きっと周りの人も変わってきますよ、きっと。

Q5.テープのことばだけで自分の言いたいことがすべて言えるようになりますか?

A5.自分の言いたいことというのが、まず、日本語であって、それを完璧に他の言語で表現できるようになるか? という意味ならば答は否です。でも、これはどんなにベテランの通訳でも無理なことです。もちろん生活していくのに困らない程度のことは表現できるでしょうが、極論をすれば、日本語で考えたことは日本語でしか表現できません。また、テープに入っている語彙は限られていますから、そこにない語彙はどこかで見つけてくるしかありません。ただ、テープのことばがすべて自分のものになったとしたら、そこからは自分自身で進めるはずです。テープの表現や人から貰った表現で自分の言いたいことを表現できる範囲で表現できるようになったら、そこからは語彙を増やすために辞書を使ったりしても、私は問題ないと思っています。
 テープを聞きつづけることによって(もちろんファミリの活動にも出て)、その言語における赤ちゃんから子供レベルにまでは進める訳です。子供レベルである言語が習得できていれば、そこから先はその言語でその言語を習得するということが可能になってくるので、テープにない表現でも、語彙でも自然に身につけることができるのだと考えられます。

 取り敢えず以上ですが、これで回答になっているかどうか判りません。でも、ヒッポは長く続けるべき活動だと思います。そして、長く続けるには無理はしないことです。疑問は是非周りの人にぶつけてみるべきですし、しんどかったらテープを止めたって、休んだって構いません(こんなこというと本部には受けが悪いかもしれないけど)。ファミリが停滞している時は、自分を見詰め直す期間だと思ってみるのもよいと思います。ファミリが停滞していると感じるのは、自分が暴走しているからなのか(笑)、逆に自分こそが停滞しているからなのか、あるいはその他の原因があるのか、少し考えてみて、考えたら突っ走ってみましょう(爆笑)。まあ、歩きながら考えてもよいのですけどね。
 長年やっていてもやっぱり疑問は尽きませんし、多言語を習得しているかというと、結構選り好みがあって、私は偏っている方だと思います。ただ、嗜好というものも変わることがあります。私の場合、ヒッポに入るまでは英語とドイツ語とが喋れればそれでよいと思っていました。その後ソウルオリンピックあたりがきっかけになって韓國語にも興味を持ち始めましたし、中国の留学生と知り合ってからは中国語(知り合ったというよりも大学院の研究室は日本人より中国人の方が多数派だったのです)、フランスに短期留学(語学じゃないよ)してからはフランス語に興味を持つようになりました。実際、フランスに行くまではフランス語の音に馴染めず、寧ろ嫌いな部類に入る言語でした。男だったらドイツ語! という意識もありました(ドイツの道具とかが好きでしたから。特にドイツ軍の兵器類が)。でも、6週間ほどフランスで生活するうちに、何かドイツ語って田舎臭くて、フランス語の方がおしゃれ、と感じるようになってしまったのだから、好みなんてどこで変わるか分かりません。
 何だか色々詰め込んでしまったので長くなってしまいましたが、参考になれば幸いです。


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