ややっ、見ましたね;_; あなたは 人目ですよ;_;/H

 単発小拙2

 戻れない夜     

         乎簾壁 斉



 痛む頭をさすりながら、周司は目を覚ました。
 そこは、打ちっぱなしのコンクリートの部屋のようだったが、みょうに暖かみの
ある色をしていた。
 いったい、自分はなにをしていたのか……周司には思い出せない。そういえば、
空から、なにか手のようなものが降りてきたような記憶がある。ぼんやりと、とて
も恐ろしい経験をしたような気がするが、はっきりとしなかった。
 近くに、黒いセーターにチェックのミニ、黒いタイツにスニーカーの女の子がが
うずくまっているのが見える。
 目を凝らすと、それはクラスメイトの田彼沙紀※たかなさき※だった。セミショ
ートの髪の毛が、妙になまめかしく、彼を見つめる目はうるんでいるように見える。
 ――どうしちゃったんだろう?
 周司は中学二年。じつはまだ、そういった気分の正体をよく知らなかった。真面
目というのはすこし違うが、友だちがその手の写真誌を持っていても、特に興味が
わかなかったし、オナニーも話だけは知っているが、試してみたこともなかった。
 夢精だけは一度あって、よくわからない気分になったことだけは覚えている。
 沙紀は、震える声で言った。
「岡根くん?」
 周司はぼんやりとうなずくと、ゆっくりと起き上がった。
 そこでようやく、周司は自分の下半身がむきだしであることに気がついた。生え
始めた陰毛が、自分の動きでふわりと揺れて、みょうにこそばゆい。
「わ」
 あわてて下半身を隠す。もちろん、彼にも恥じらいはあったから、沙紀の顔をま
ともに見ることができなくなっていた。
「ねえ、変な感じがしない?」
 周司は、沙紀の言っている言葉の意味がぼんやりとわかっていた。すると、彼女
もこの胸の中がもやもやする感じがわかるのだ。
 けれども、周司は、この感じが、なぜだかひどくうしろめたく思えたので、沙紀
と話を続けることよりも、周囲の観察に集中することに決めた。身体を動かしたと
たん、下半身の寒さが妙に感じられて気恥ずかしさが増す。
 部屋は、それほど広くはなかったが、扉のない入り口がすぐ右手にあった。その
向こうは暗がりになっているが、ずいぶん広そうだ。
 周司は沙紀に目をやると、すぐにその入り口に向かった。
「えっ」
 そこに倒れていたのは、副担任の井野だった。たしか年齢は二八歳、周司の苦手
な英語の教師だ。このあいだ恋人と別れたらしく、あまり教師にお覚えのめでたく
ない周司や仲間がヒステリーの対象になっていた。
「井野じゃないか。なにやってんだ、こんなところで」
 どういうわけだか、周司は井野の服装が妙に気になった。茶色の縦縞織りのセー
ターに、ラフなシャツ、それに水玉模様のロングスカートという、比較的見慣れた
格好なのに、どういうわけか周司にはその姿から目を離すことができなかった。
「ねえ」
 背後から響いた声に、周司はびっくりして飛び上がった。
 いつの間にか、沙紀が立っていた。
「先生見てごらんなさいよ」
 沙紀の声は、妙な響きで周司の頭に響いた。よくわからないが、もやもやした気
持ちがいっそう強くなった気がする。
 井野がうーんと低くうなって寝返りを打った。膝元が割れ、はだけかかったスカ
ートの奥が一瞬見える。冬物の厚い生地だったので、そんなに奥まで見えたわけで
はなかったが、井野のストッキングは穴だらけだった。どこかに擦ったのか、電線
などというなまやさしい状態ではない。
 その瞬間、周司の中でなにかが起こった。
「えっ」
 固くなっていた。小さいころから、いじったり、どうにかすると固くなってしま
って、困ったことがあったが、どういうわけか、いまはそれでもいいと思った。
「先生寝ているから、スカートの中見ちゃいなさいよ」
 沙紀は、ささやくように言う。周司は戸惑ったような表情を浮かべていたが、好
奇心には勝てなかった。
 スカートは、すでに膝のあたりまでめくれていたから、すこし持ち上げるだけで
すぐにその下を見ることができた。そこには、周司が初めて目にするものがあった。
ショーツはパンティストッキングが裂けたときに一緒に破れてしまったらしく、右
側の腰の横に縮んだ布切れのようになってくっついているだけだった。
 そのわりには、井野の身体にはどこもケガがなかったが。
 初めて見るそこは、周司の思ってもみない形だった。前の部分に毛が生えている
ことは母親のそこを見てよく知っていたが、周司が自分でも気づかないうちに井野
の膝をつかんで広げてみると、その間には、わずかに黒ずんだ肉のひだが奇妙な形
で露出していた。
 ひだの間は真っ白いなにかがにじみ出ていて、それがつやつやと光っている。
 周司は、ごくりとつばをのみこんだ。
「女の人ってこうなってるんだ……」
 ますます自分のものが固くなるのがわかる。
「そうよ。井野って、ヒステリー起こしてるときは嫌なヤツだけど、こうして見る
と、結構美人よね」
 周司にはよくわからなかったが、言われてみればそうかも知れなかった。ほんの
すこし面長で、下膨れなところはあったが、教師としてはましな方かも知れない。
「ねえ、匂い、かいでみなさいよ」
 周司は、最初その意味がよくわからなかった。沙紀を振り返りかけて、周司はそ
の意味になんとなく思い当たった。思わず、下半身を隠すのも忘れて、井野の股間
に鼻を近づける。
「干物かなにかみたいな匂いだな」
 沙紀は、ころころと笑った。
「いやだ。ぶち壊しね。でも、いやな匂いじゃないでしょ?」
 周司は顔をしかめたが、なるほど、かいでみるとそれほどいやな匂いではないよ
うな気がする。
 そうこうするうち、周司は頭や、自分のものが、どくんどくんいい始めているこ
とに気がついた。頭に血がのぼって、心なしか目の前が赤く染まっているような気
がする。
「それがふつうなのよ。いいこと教えてあげる。暁子先生ね、岡根くんに犯しても
らいたがってるのよ」
「犯す?」
 周司の頭の中で、沙紀の言葉がぐるぐる渦を巻いた。意味くらいは知っている。
でも、具体的にどうするのか、だいいちそんなことをしてどこがいいのか、周司に
はわからない。
 いや、わからなかった。たったいままでは。
「そうよ。別れた人に、周司くんよく似てるんだって。先生周司くんを怒りながら、
濡れてるのよ」
「濡れる?」
 沙紀は黙って井野暁子の股間を指さした。白い物がちょっぴり量を増やしている。
「知らないの? 本当にしてもらいたいときって、あそこから白いものが出るの。
指で触ってみれば?」
 いけないことだと頭の中で思いながら、周司は魔法にかかったように指先を井野
の股間にのばしていった。そのとき、周司はぼんやりと暁子という名を初めて知っ
た自分に気がついた。
 柔らかいひだに触れた瞬間、暁子の身体がびくんとなったのがわかった。わずか
に開いた口の間からは、悩ましげな声がもれる。指先には、ぬるりとしたなにかが
ついている。周司はぼんやりとそれを目の前に持ってくると、くんくんと匂いをか
いだ。不思議に、あまり匂いはなかった。
「それだけじゃあ先生かわいそうよ。ねえ、もっとちゃんと触ってあげなきゃ」
「え、ちゃんと?」
「そうよ。ほら、先生の口が開いてきてる」
 その“口”が本当の口をさすものではないことが、周司にはすぐにわかった。暁
子の股間のあそこが、ゆっくりと呼吸でもするかのように口を開き始めているから
だ。
「その、開いてきた場所の上の付け根をよく触ってあげて。すごく気持ちいいのよ」
 周司はどぎまぎしながら沙紀を振り返った。
「よ、よくそんなこと知ってるな」
「だって、みんなそうだもの」
 沙紀はそう言うと、さもおかしそうにまた笑った。
「お、おまえもか?」
「もちろん。オナニーって知ってる?」
「し、知ってるよ、ばかにするな」
「男の子はそこをしごくけど、女の子はゆっくりとそこの部分を触るの。すごく気
持ちいいんだから」
 周司は暁子を振り返ると、いまや白い液体を滴らせそうにあふれさせている彼女
の股間に向かった。目的の部分はすぐにわかった。小さなひだの合わせ目のような
場所にゆっくりと指をはわせると、白い液体と一緒にやさしく表面を押す。
「あっ」
 暁子が甘い声をもらす。
「先生ね、いま周司くんにしてもらってる夢を見てるのよ。おかしいよね。目を覚
ませば本当のことになってるのに」
 だが、周司の耳には、ほとんどなにも入ってはいなかった。鼻息を荒くして、周
司は暁子の突起をなでつけるようにさすった。そのたびにもれる甘い吐息に、周司
の頭は熱く、ますます固くなっていく。
 奇妙なことに、暁子のあの部分も、みょうに固くなっていることに周司は気がつ
いた。よくわからなかったが、暁子が周司に反応していることは間違いがなかった。
「ねえ、先生のなめてあげたら?」
「えっ」
 そんなの汚いと思ったのは一瞬だった。周司は両膝を暁子の間につくと、顔を埋
めて白いものにほんのわずか舌をつけた。しょっぱかった。
 そう思った瞬間、周司の鼻を例の匂いが強烈に打った。周司はたまらずに暁子の
ひだにくちびるをつけてなめ上げた。不器用な動きだったが、暁子の声がわずかに
高まる。鼻に触れた暁子の陰毛の感触が、周司の股間をますます固くして――。
 腰から力が抜けるような感じがして、周司は放っていた。何度も、何度も、なに
もしていないのに、腰が勝手に動いて、下半身にためこまれたものをすべて吐き出
そうとするかのように。
 周司は、初めてそれを快感として認識した。
 怒濤のような瞬間が通り過ぎると、周司の中に燃え上がった炎が急速にしぼんで
いくのがわかった。頭から血が引いていき、股間のしこりが消えていく。
 そうして、周司はようやく自分がとんでもないことをしていることに気がついた。
「な、なんだこれ」
「あーあ。しょうがないのね。でも、初めてなんだからしょうがないわよね」
 そう言うと、沙紀は小さな手で周司の左足をつかむと、大きく持ち上げさせて、
その間に顔をうずめた。
「あっ、なにを」
「だって、先生はまだ気絶してるし、これで終わりじゃあ先生がかわいそうよ」
 沙紀は半透明の白いものをたらしたままの周司のその部分にゆっくりと舌をはわ
せた。裏側に舌が動いた瞬間、若い周司のそれはあっという間に固くそそり立つ。
 しかし、沙紀はそれでもなお舌をはわせるのをやめなかった。やがて、元どおり
に固くたくましくなった周司を、小さな口いっぱいにほおばると、せいいっぱいの
力で彼の中身を吸った。周司はふたたび下半身がとろけそうな感覚を味わったが、
一度放った直後でもあって、それ以上先には進まなかった。
「だめよ。先生にもちゃんとしてあげて」
 ほんのわずか周司から口を離すと、沙紀は怒ったように言った。その意味に気づ
くと、周司はあわてて暁子の股間に注意をもどした。すべるような、溶けるような
感触を股間に感じたまま。
 ほんのわずかな間に、暁子の股間の液体は、ほんとうにあふれそうに、いやあふ
れていた。くちびるのようなひだは、いまや周司に中を見てもらいたがっているか
のように大きく口を開き、ほんのわずかではあったが、漆黒の内部をその目の前に
さらしている。周司はわけのわからぬ興奮を覚えて、頂点の突起にむしゃぶりつい
た。
「あ……なに!?」
 沙紀の声に比べるとわずかに低い声が、周司の頭上から聞こえた。暁子の声だっ
た。だが、その声音は、授業中に周司を怒鳴る暁子の声とは明らかに違っていた。
どうすれば、こんなに鼻にかかった声が出せるのだろう、と周司はぼんやりと思っ
た。
「や、やめて、そんな」
「暁子先生」
 周司は顔を上げると、なぜだか名前で呼ぶべきだと感じてそう言った。上気した
暁子の顔に、さらに朱の色が増す。
「だ、だめよ、きみはまだ中二じゃない、それに」
 だが、そこから先は、声にならなかった。周司が指をはわせたからだ。
「い、だ、だめだから……そんな、ああ」
 暁子は泣いていた。あまりの気持ちよさに。背徳の感情ももちろんあったが、そ
れ以上に、生徒に対して抱いていた変態的ともいえる感情が満たされている幸福感
に、涙が止らなかった。
 理性が邪魔をしなければ、彼の頭を抱いて、自分のあの部分にもっと舌をはわせ
てほしいと懇願するところだった。もちろん彼女は教師だったし、ふだん周司にど
ういう態度をとっているかわかっていたから、それはできなかった。
「おねがい、だから、やめて、ねえ」
 周司はわけもわからず、暁子の股間の茂みに頬ずりをした。暁子は必死で抗いの
言葉を口にしながら、身体はまったく反対の動きを起こしていた。両手は周司の頭
をおさえ、やさしくなでさする。
 そう、暁子はようやく自分の本心に気づいていた。健也と別れたのは、彼がいや
になったからではなかった。自分の半分しか生きていないこの少年をより強く求め
ていたからだ。そんな自分を認めるのがいやで、周司につらくあたっていたが、こ
うなってしまえば、暁子も認めざるをえなかった。
 それでも、彼を許容する言葉を口にしなかったのは、最後の理性が残っていたか
らかも知れない。
 周司がのしかかってくる。わずかに垣間見た彼の股間は、下向きであるにもかか
わらず、彼のお腹を打ちそうなまでにそりかえっていた。生え始めなのに根本はす
でに黒くかすんで見えるほどだ。
「ねえ、だめよ、ねえ」
 口ではそう言うが、鼻にかかったその口調は、明らかに相手を誘っていた。
 やがて、熱い鉄のようなものが股間に押しつけられ、ゆっくりと……。

 朝の光は、周司のぼんやりとした意識をすっかりと目覚めさせていた。
「ああ、ちくしょう」
 寝間着の股間が、ぬるぬるになっている。下半身にはまだ燃えるような感覚があ
ったが、それも妙な匂いを放つぬるぬるのせいで台無しだった。
「父さんも母さんも旅行に行っててよかった」
 そうつぶやきながら時計を見た周司の目が点になった。
 最悪なことに、その日から担任は急用で、しばらくの間副担任の井野がHRを担
当することになっていた。あんな夢を見た後では、井野の顔を正面から見ることが
できなかった。まったく、どうしてあんなおばさんの夢を見たりしたんだろう。
 その理由は周司にもわかっていた。昨日の放課後、見てしまったのだ。三年のバ
スケ部の丘路と田彼沙紀が体育館の舞台裏でしていることを。ふたりとも、ほとん
ど服は脱いでいなかったが、一段高い場所に沙紀が腰の端だけを乗せて座り、その
正面から膝を折り、ジャージをほんのすこし下ろした丘路が、沙紀のスカートをた
くしあげ、タイツを降ろして腰を打ち合わせていたのだ。
 最初、それの意味するところがわからなかった周司も、さすがにそれが見られて
はまずい行為だということに気がつくと、あわてたように体育館を逃げ出したのだ
った。
 あのときの沙紀の陶酔したような表情が目について離れない。ふだんは無愛想も
いいところで、やせぎすの彼女は、クラスでも人気がある方だとは言えなかった。
 もっとも、小学校から知っている周司は、彼女がクラスの鼻つまみ者に近かった
状態から、ずいぶんとその立場を変えていることにも気づいていた。初めて彼女を
知った友だちなど、むしろかなり魅力的な相手だと見ているようだった。
 うんざりしながら、周司は井野のがなり声を聞いていた。頭の中のもやもやは晴
れず、勘弁してくれとばかりに哀願するような目で井野を見上げると、井野もまた
困ったような顔になって、それ以上なにも言わなかった。
 放課後になるまで、周司は雲の上を歩いているような気分だった。悪い気分では
なかったが、さりとていい気分とも言いがたい。
「なんてあんな夢を見たんだろう」
 掃除も終わり、誰もいなくなった教室で、ぼんやりと周司はつぶやいた。よく考
えてみると、あの舞台裏はコンクリートの打ちっぱなしになっていたはずだった。
それで、沙紀が出てきたことも納得が行くというものだったが、なぜ相手が井野だ
ったのか、いまだにそれがわからなかった。
「まさか、あのヒス女を?」
 周司は身体を震わせた。
「冗談じゃない」
 だが、本当に冗談ではない、と思ったわけではなかった。
 周司は今朝の寝間着を洗うことを思いつくと、席を立ってカバンを取り上げた。
 今日に限って、本当に学校の中には誰もいなかった。ぼんやりとあたりを見回し
ながら歩いていると、周司は、そのコースが職員室の前を通ることを思い出して、
思わず身体をこわばらせていた。
「井野に出会ったらやだなあ」
 言いながら、なぜか周司はそのまま歩きつづけた。角を曲がると、職員室だった。
扉がほんのすこし開いており、その向こうに井野の後ろ姿が見える。
「うわ」
 小声でそうつぶやいて通り過ぎようとした周司は、ふと井野のようすがおかしい
ことに気がついた。ひどく苦しそうなのだ。腹に手を当て、頭を苦しげに上下させ
ている。
 それでも周司は黙って通り過ぎようとしたが、低くうめく声を聞くと、ため息を
ついて職員室に入った。
 井野は、周司が入っても気づいていないようだった。
「先生」
 周司が思い切って声をかけると、井野はそれまでの苦しみようがうそのように、
椅子を蹴飛ばしてばねのように立ち上がった。
 周司はそのとき気がついた。井野の身につけているものが、夢の中そのままだと
いうことに。
「な、なな、なに、岡根くんじゃないの」
「どうかしましたか? すごく苦しそうでしたけど」
 井野はひどくあわてているらしく、よくわからないことを言っていたが、そのと
きに振り回した手が机の上のノートに触れて、ばさばさと床の上に落としてしまっ
た。
「あ」
 井野が腰をかがめようとする前に、周司がノートを拾い上げると、そのノートの
表には井野のフルネームが書いてあった。
『井野暁子』
 そのときまで、周司は井野の名前を知らなかったはずだった。夢の中の名前は、
周司自身がかってにつけたものだと思っていた。
「暁子っていうんですね」
「え? ええ、そうよ」
 ノートの束を受け取った井野の顔が赤かったのは、夕陽のせいだけではなかった
のかも知れない。
 突然、キスをされた。音を立ててノートが床に落ちる。
 周司は頭の中が真っ白になって、しばらくくちびるを押しつけられたままにされ
ていた。
 先生の匂いは甘かった。母親の放つ匂いとは微妙に違うのは、香水の違いのせい
だけではないような気がした。
「ごめんなさい」
 身体を離すと、井野暁子は消え入るような声でそう言った。
「忘れてね、先生、やっちゃいけないことやっちゃった」
 周司はまだぼうっとしていた。
「早く帰りなさいね? ご両親が心配するわよ」
 そこで、ようやく周司はあたりが薄暗くなり始めていることに気がついた。
「あ、いえ、両親は旅行中なんで」
 周司は思わずそう言ってから、その返事がひどく場違いであることに気づいてい
た。
 暁子はひどくきまりが悪そうにしながら、ノートを拾い上げた。
「先生、具合、大丈夫なんですか?」
 言いながら、周司は気がついた。あれは、苦しんでいたのではないのかも知れな
い。
「え、ええ、ああ、あ、それで心配してくれたの?」
「はい」
 はいなんて言葉、この女……なぜだか、周司はいつの間にか目の前の女性を暁子
と呼んでいる自分に気がついた……いや暁子先生に使ったのは初めてだった。
「そ、そう。なんでもないの。気にしないでいいから。もしあれだったら、校門ま
で一緒に出ましょう。あたしももう用事はないし、最後まで残ってるのあたしだけ
なのよ」
 周司はうなずくと、すこし離れて暁子が帰り支度をするのを待った。
 そこから、玄関までの廊下は長かった。生徒玄関までやってくると、周司は暁子
とは出る場所が違うのだとようやく気づいた。
「ああ、そういえばそうね。じゃあ、ここで」
 そう言って行こうとする暁子に、周司はなぜかこう言っていた。
「ええと、その、靴持ってきますから、ちょっと待っててくださいよ」
 暁子は返事もせず、ただ目を丸くしてうなずくだけだった。
 周司が自分の靴箱に内履きを入れてもどってくると、暁子は周司の足もとを見て
言った。
「でも、それじゃあ汚れちゃうんじゃない?」
 周司も自分の足もとを見ると、苦笑しながら答えた。
Åいいです。どうせ、今日洗い物があるし」
 言いながら、周司はその洗い物が目の前の暁子を夢に見てのものであることを思
い出し、顔がほてるのを感じた。
「どうしたの? なんだか顔が赤いような気がするわ」
 そう言って心配げに見下ろす暁子を見て、周司はどきりとしていた。授業中はあ
んなにいやな女だと思ったのに、どうしてこんなに魅力的に見えるんだろう。美人
ではないよな、と周司は思った。そばかすもほんのわずか残っているし、輪郭もす
こしばかりしまりがない。でも、なぜこんなに彼女の前ではどきどきするんだろう。
「さあ、行きましょう」
 いつもはとげとげしい暁子の口調が、不思議にやわらいでいるような気がした。
「先生」
「なに?」
「別れたって、本当ですか?」
 どうしてこんなことを言ってしまったんだろう、と周司は内心ひどく悔やんだ。
勝手に口がそう言ってしまったとはいえ、これでせっかくなんとかなりかけた暁子
との関係が、またもとにもどってしまう。
 だが、あにはからんや、振り返った暁子の目には涙がたまっていた。
「ええ。前の彼は嫌いじゃなかったけど、もっと好きな人ができちゃったの」
 周司にははっきりとわかった。それは、自分のことだ。
 周司はゆっくりと前に出ると、どうしてそんなことができたのかわからなかった
が、暁子の顔を引き寄せて、やさしくキスをした。
 暁子の反応は、周司の予想を超えたものだった。離しかけた周司のくちびるにす
がりつくようにくちびるを合わせると、そのまま舌を差し入れてくる。周司も最初
がびっくりしていたが、やがて相手の意図に気づくと、そうすることが最善である
とわかっていたかのように、彼女の舌に自分の舌をからませた。それは、映画で見
るような濃厚なものではなかったが、周司にしては最大の冒険だった。
 気がつくと、股間が盛り上がっていた。周司は気恥ずかしくなってそこをおさえ
たが、暁子の手をそれを逃さなかった。
「あたしに感じてくれてるの?」
 うるんだ目で、ほんのすこしいたずらっぽく暁子は笑った。
 周司はほんのすこしむっとした気分になって、暁子のロングスカートの上から彼
女の子感に手をのばす。それはほんのちょっとしたいたずら心からだったが、暁子
の身体は激しく反応していた。背筋がひきつけでも起こしたかのようにびくりとは
ね、甘い吐息をもらしながら周司に身を預けてくる。
 周司は、自分の想像が当たったことを確信して、スカートをたくしあげるとスト
ッキングの上から彼女の股間に指をはわせた。
 そこは、ほてったように熱気を放ち、そして湿っていた。
「先生、もしかしておれのこと想ってオナニーしてたの?」
「ばかね!」
 言いながら、暁子は顔をほてらせ、横を向いた。
「答えてくれなくちゃいやだ」
「そんなの恥ずかしいわ」
「はっきり言って。ぼくを想って、オナニーしてたんでしょう」
 暁子はしばらく身体を震わせていたが、やがてゆっくりとうなずいた。
「そうよ。あなたに犯されてるところを想像しながらオナニーしてたわ」
 その言葉が、暁子の中に残っていた最後の壁をこなごなに打ち砕いていた。
「ぼくも、先生としている夢を見たんだ。洗濯物って、汚れたパンツと寝間着なん
だ」
 沙紀のことは話さなかった。どうでもいいことだと思ったから。
「じゃあ、おあいこね」
 せいいっぱいのウィットをきかせたつもりの暁子のセリフは、のどになにかつま
ったようになって、すっかりだいなしになった。だが、それがいっそう周司の興奮
を高めることになった。
 周司はすがりつくように暁子とくちびるを重ねると、耐えきれないようにスカー
トに手を入れると、熱い股間をまさぐった。本当に熱い。暁子は、念入りに周司の
固い物を触っていたが、ふと気がついたようにジーンズのジッパーを引き下ろした。
石のように固くそりかえったものが、その間から転がり出る。
「中で出しちゃったら、替えがないものね」
 そう言って笑うと、暁子は周司のものを口にふくんだ。ロングのヘアがほんのわ
ずか触っただけで周司は爆発しそうになる。
 暁子は器用に口でしながら、周司のパンツを脱がせていった。下着を脱ぐときは、
さすがに口を離さなければならなかったが、その直前、周司は唐突に暁子の口の中
に放っていた。
「あ、ああ……」
 熱いものが出て行く脱力感を感じながら、周司はため息をついた。暁子は周司の
出したものをすべて飲み込むと、くちびるを手の甲でほんのすこしぬぐいながらに
っこり微笑んだ。
「いいのよ。あなたのを初めて飲んだの、あたしよね?」
 周司は夢を見ているような気分でうなずいた。
「ねえ、おねがい」
 ぼうっとしていると、暁子がより湿り気をおびてきたあの部分をすりよせてきた。
パンティストッキングの上から触るあそこは、わずかに盛り上がっていて、柔らか
くもなく、硬くもない。
 ゆるりとした感触が表面に浮き出してくると、周司はすぐに股間が固くなるのを
感じた。
「すごいのね」
 言いながら、せつなそうに暁子が腰を持ち上げる。周司はこらえきれなくなって、
スカートの中からなんとかストッキングを脱がせようと必死になった。
 ぴりり。
 小気味のいい音をたててストッキングが裂けた。
「ああ、ご、ごめん」
 暁子はほんのわずか苦笑を浮かべながら、壁を背にして座り込んだ。
「いいのよ。ぜんぜん、かまわないわ」
 言いながら、暁子は投げ出してあった自分のカバンをまさぐると、その中から先
の丸い事務用の鋏を取り出した。
「あたしもめんどうになっちゃった。このまま、ショーツも切ってちょうだい」
 周司はそれがひどく不自然に思えたが、すでにぬるぬるとした湿り気で内側が透
けている暁子のパンティを見ると、がまんができなかった。
 ショーツは意外に丈夫だったが、熱情にうかされた少年の障害ではなく、夢の中
とおなじように切り裂かれたパンティが、ストッキングの下で腰にへばりついてい
た。
 明らかにされたその場所は、廊下に据え付けられた非常灯の明かりに照らしださ
れて、より幻想的な感じがした。それが、やはり白いものをたたえて光っている。
「ああ」
 うめくようにそうもらすと、固いしこりを股間に感じながら周司は暁子の間に顔
をうずめた。もうどうすればいいかはわかっていた。暁子のひだの頂点にあるもの
はすでに固くしこりのようになっており、周司の舌に反応して、暁子の全身が震え
た。
「くさくない?」
 ひどく荒い息遣いの下で、暁子はようやくそれだけ言った。
「すごくいい匂いだ。気持ちいいのが伝わってくるんだ」
 それは、本心から言った言葉だった。どういうわけか、暁子の気持ちが伝わって
くるようだった。どくんどくんと脈打つように動くその部分は、周司を得て至上の
喜びをあらわしているかのようだった。その部分が、花のように開き、さらに周司
にその内側を明らかにする。
「よくわからないけどすごくきれいだ。こっちも赤くなってるよ」
 笑いながら、周司はまたも股間から突き上げるものを感じた。
「あっ、う」
「あ、ごめんなさい」
 夢心地からさめたように、あわてて暁子は周司の間に手を伸ばした。またも音を
たてて周司が吸われると、彼はつかれ果てたようになって、ほんのわずかの間暁子
に触る気力もわかなかったが、よくわからない義務感から暁子の股間を触っている
うちに、またも自分が固くなっていくのがわかった。
「痛いや」
「ごめんね、なんども出しちゃうと、痛くなってくるっていうわね……つらかった
らもういいのよ」
 もちろん、暁子の目はそんなこと一言も告げてはいなかった。周司は大きくかぶ
りを振ると、暁子にむしゃぶりつた。くちびるを合わせ、置きどころのない手をさ
まよわせるうちに、周司はふと相手の胸の盛り上がりに気がついた。鼻を鳴らすと、
周司はセーターをたくしあげ、乱暴にシャツのボタンを外していく。興奮してなに
がなんだかわからなかったが、気がつくと、周司は彼女の上半身をすべてたくしあ
げ、あらわになった意外に豊満な胸をもみしだいていた。胸の先は固くとがり、周
司の手のひらに心地好い感触を残す。
「ああ……」
 低いため息が暁子の口から何度ももれた。周司は片手で胸を、片手でひだの間に
指をはわせながら、熱中したように単純な動きを繰り返した。
「ああ、お願い」
 突然、涙をためた目で暁子が懇願した。
「入れて、それを。ねえ、もうがまんできないの」
「それって?」
 彼女を楽しませるために使った労力が、ほんのわずか周司を冷静にさせていた。
よくわからないが、暁子はそのものずばりを口にするのを避けているようだった。
「意地悪しないで! 気が狂いそうよ」
 誰もいないとはいえ、その声は廊下中に響き渡った。周司はどきりとして、暁子
の口を手でふさぐ。その手を、暁子がすごい形相で噛んだ。
「ねえ、おねがいだから」
「ねえ、言ってよ、なにを入れて欲しいの?」
 暁子は身体を震わせながら、周司の股間に自分の股間を押しつけてきた。
「あなたのその立派なペニスよ! 入れて、お願い、あたしをかきまわして!」
 その言葉に、なぜだか周司は頭が爆発しそうになった。どうして言葉ひとつでこ
んなに興奮するんだろう。周司は必死で自分をおさえながら、さらなる興奮の期待
に声を震わせながらたずねた。
「どこに?」
「あたしのヴァギナ……おまんこよ! 入れて、おねがい、早く!」
 暁子も、その気分を楽しんでいることは明白だった。周司は溶けるような気分を
味わいながら、固くそりかえった自分のものを、すっかり口を開けて、中から白い
ものがしたたっている部分にあてた。間違いなく、そこだという確信があった。
 まだ成長途中にある周司のものは、暁子の口にはほんのわずか小さいようだった。
黒く丸い口を開けている部分に押し当て、ゆっくりと埋めていくと、思ったよりも
はるかにすんなりと彼は暁子の中に入っていった。
 中に入ったとたん、暁子はこれ以上ないというほどのため息をつくと、周司の腰
をかかえるように自分の膝ではさみこんだ。
「ゆっくり動いて、ねえ。すごく気持ちいいの」
 周司が腰を動かすと、暁子と接合している部分がにちゃにちゃといやらしい音を
たてた。周司は、自分のまわりになにか柔らかいものがまとわりついているような
感じがして、その部分を見下ろした。暁子はいとおしそうにほおずりすると、よく
見えるようにほんのすこし位置をずらす。
 そこには、彼女のひだをまといつかせて、ゆっくりと出入りするものがあった。
こんなに興奮していたら、むしろ気持ち悪く思うかも知れないが、周司には、それ
がとてつもなくすてきなものに思えた。
「見える? あたしがあなたのペニスにまといついてるの。あなたが中にいるのが
わかるの。あたし、こうなりたかったんだわ……すごく幸せ」
 周司はその言葉に固くいきり立つと同時に、強いしめつけを感じたが、ぬるぬる
したものが決して彼の動きを邪魔しなかった。
 周司は手をのばすと、暁子の胸をふたたび責めはじめた。暁子はため息をついて、
周司を床に寝かせると、その上でゆっくりと腰を使いはじめた。
「もっとはっきり見えるでしょう? ああ、もう止まらないわ。あたしの中から、
どんどんわいてくる」
 その言葉がおおげさではないように、白い液体が周司の陰毛の上にたまっていた。
周司は、自分のものが、暁子の暖かいものに包まれて、愛されている光景を見つめ
ながら、自分も腰を使った。
 それからどれほどの時間がたったろう。
 周司は、暁子の中で数え切れないほど果てていた。ようやくふたりが立ち上がっ
たときには、ふたりとも、おたがいにささえあっていなければ立つこともできない
ほどであった。
「あたしもね、夢を見たの」
「えっ」
「なぜか意識はあるのに、身体が動かなくって、あなたが、あたしを犯すの。もの
すごい快感だった。でもね、そのとき、あなたとおなじクラスの田彼さんがいたの。
あなたの夢にはいなかった?」
「え、ええ、その」
 周司は決まりわるそうにうつむいた。彼の心は、すでに暁子のとりこになってい
たから、夢の中とはいえ、自分の吐き出したものをなめとった沙紀に感じてしまっ
た自分を恥じていたのだ。
「そう。じゃあ、やっぱりあの場にいたのはあなただったのね。体育館の裏で、田
彼さんとバスケ部のコが……その、していたのをあたしも偶然見ちゃったの。でね、
あたしがどうしたかわかる?」
 周司は素直にかぶりを振った。
「あなたのこと想って、隠れてしちゃったの。前からあなたのことを好きだったけ
ど、それまではあたし、理性が邪魔してだめだったわ。でも、あのときなの、どう
でもいいやって思うようになったのは」
「ぼくは、正直ショックだった。田彼のことは小学校から知ってたけど、あんな獣
みたいになるなんて」
「あら、あたしたちだって、そうだったじゃない?」
 周司はうつむくと、顔を上げてにっこりと笑った。
「うん、本当だね……ねえ、暁子先生」
「なに?」
「ずっと、このままでいられるよね?」
 暁子はもちろんそれが不可能だと言うことを知っていたが、無理に笑うと、こっ
くりとうなずいた。
「あたし、本当にしあわせ。あなたが飽きるまで、ずっとこうさせていてね」
「飽きるなんてないさ」
 少年らしい熱情をこめて、周司は言った。そうして、周司は、暁子にキスをする
と、暁子の腰に手を当てて、ゆっくりと職員玄関に向かったのだった。
                         おわってる;_;