訪問,おもてなし編(1)
玄関で靴を脱ぐときに、前向きで上がるべきか後ろ向きかは大いに悩む点です。正式なマナーとしては、必ず相手に向かって正面を向いて脱ぎます。上がったあと、後ろを向いて脱いだ靴をそろえ、じやまにならない場所に寄せておきます。このとき相手におしりを向けないように斜め後ろの角度を意識して正座、またはひぎをつく体勢でそろえ美しく見えます。最初から後ろを向くのは、相手におしりを向けるとになるので失礼。これは靴をそろえる手間が省けると思いがちですが靴が倒れたり、きれいにそろわなかった場合等またそろえ直さなければならなくなり、かえって二度手間にもなります また、ご主人といっしょの場合は、先にご主人を上げ、その靴をそろえてから自分か上がりましょう。複数て訪問した場合も同様です。ブーツやひも付き靴なと履いたり脱いだりしにしにくい靴は、ひと言■すみません■と断りを入れてあせらずに速やかに。ブーツの場合は、必ず両方ともチャックを下ろしてから脱ぎ、履くときも両方履いからチャックを上げるのがスマートな方法てす。でも正式な訪問のときには、まず脱いだり履いたりするのが楽な靴を選ふべきですね。

訪問,おもてなし編(2)
手みやげというのはおもしろいもので、「これでいいや」と適当に選んだものは、不思議とそれなりにしか相手に喜ばれないものです。つまり、おみやげを選ぷという行為には、贈る側の心が表れているのです。手みやげを選ぷ基本は、だれがもらっても困らず、い〈つあっても困らないもの。 そういう意味でもお花やお菓子は無難で、だれでも喜ぶからいいというアドハイスもありますが、それも考えものです。たとえば相手を考えずにこの言葉とおりに実践すると、お花の先生をしている人に花束を持っていくような失敗をしてしまいますので気をつけましょう。そういったことを考えたうえで、喜んでいただける手みやげを選ぶには、まず事前に相手の好みや家族構成をリサーチしておくことが必要てす。甘党なのか辛党なのか、子どもやお年寄りがいるかとうかなとを事前に調べます。そのうえで「甘いものがお好きと聞いて」と言ってお菓子を手渡すと、いただいた側もうれしく感じるわけです。 これは、あなたのことを考えて持ってきました」 という気持ちが、相手にも伝わるからなのです。心をこめて訪問するということは やはり事前に充分時間をかけることが大切なのです 時間を惜しんたり、面倒くさがって はだめですね。金額の目安は1500〜2000くらいのものからそのおつき合いに応じて4000〜5000円〈らいです。 たとえお詫びでおうかがいしても、お金を包んて持ってい〈ことはタブ−です。


訪問,おもてなし編(3)
おみやげは部屋に通され正式なごあいさつの直後に出すのがいちはん。ただし生ものやアイス等早めに冷蔵庫入れてほしいものは、玄関先で内容を告げてお渡ししてもかまいません。ごあいさつした直後に渡すのがベストと理解したうえで、品物に応じたタイミングを選びましょう。 また紙袋は風呂敷同様に持ち運びのためのものです。持ち運びに使った紙袋ごと渡すというのは、お土産自体にも価値がなくなります。必ず袋から出して、相手にきちんと正面を向けて両手で差し出します。


訪問,おもてなし編(4)
その昔、目下の考が目上の人に贈り物を差し上げるとき「あなたにとってはつまらないものでしょうが、私は一生懸命あなたのために選んできました」と、自分を謙そんし、相手を立てることから生まれたのがこの言葉です。これはたとえ高価なお茶でも「粗茶ですが!」というのと同様です。しかし、「粗品」の意味が「おまけ」のように使われているいま、必要以上に謙そんするのは感心しません。また「つまらないものですが」と言って立派な品物をあげることは、せっかくの品物の価値まで下げてしまいます。こんなときは「これは評判のお菓子で」とか「並んで買ってきたんですよ」など、なぜこれを持ってきたか、どうしてこれを選んだのかなど、その背景を話すべきです。蛇足かもしれませんが、「つまらないものですが」は欧米人にもっとも嫌われる言葉だということも覚えておいてください。


訪問,おもてなし編(5)
昔の日本礼法によると、コートは必ず玄関に入る前に脱ぐものでした。その理由は、コートには外の汚れがついており、保温のために着てきたという自己都合のものなので、着たまま入ることは相手に失礼だと考えられていたのです。でも欧米ではコ−卜を着たまま入り、「どうぞ」と言われてから脱ぐのがマナーです。こうした欧米文化の影響もあり、コートをとこで脱ぐかが複雑な問題になってしまったのです。現代マナーとしては、昔の礼儀作法を大切にしている明治、大正、昭和ヒトケタ生まれの人などの家を訪問するとき、また年始や御歳暮なと伝統を重んじる場面では、玄関前でコートを脱いだほうがいいでしょう。でも、一般的な訪問では、玄関先で脱ぐことも失礼ではありません。ただし、せめて帽子やマフラーなどの小物は、玄関に入る前に必ず取りましょう。


訪問,おもてなし編(6)
席には上座と下座があり、目上の方や年配者には上座に座っていただくのが礼儀です。日本間の場合は床の間の前、洋間なら暖炉の前が上座の基準ですが、その家の構造などによって異なります。たとえ床の間の前でも、入り口に近ければ人が行き来して落ちつきませんので、上座とは呼べません。つまり、上座は入り口から遠く、そのときにいちばん居心地のいい場所だと考えることができます。応接セットがある場合は、長イスがこの場所に置かれていることが多いものです。長イスとはそもそも、どんな体形の人やどんな服装の人でもゆったりとくつろぐことができるつくりになっています。イスはかけたときにいちばんリラックスできるものほと格が上といわれていますので、この場合は長イスが上座です。順番からいうとその次がひじ掛けイス、背もたれだけのイス、移動しやすいスツールと続きます。自宅にこれらを配置するときも、奥のほうに長イスを置いて上座をつくることをおすすめします。 しかし、残念ながらこれもすべての家庭にあてはまるわけではありません。迷ったときは、応接室に通されたとき、相手から「とうぞ」とさされた場所が上座だと考えて間違いありません。でもすすめられるままに座るのではなく、自分の立場や訪問の目的をもうl度よく考えましょう。たとえば、上司の家へ仲人のお願いに行って、上座に座るのは失礼なわけです。そのときは「今日はこちらで結構です」と下座を申し出るべきですね。そういう意味でも上座と下座の定義は、あらかじめ理解しておく必要があるのです。

訪問,おもてなし編(7)
まず年始回りの場合は、前年のうちに必ず約束してから出かけることが前提です。訪問日は相手が指定しないかぎり元日や夜の訪問は避けましょう。約束する際は、2日以降の都合のよい日を相手に尋ね、相手に時間を選んでもらうことが大切です。なかには年始回りに来られるのを嫌がる人もいますので、約束もなく突然訪問することだけは決してしないでください。また、訪問したときには相手がよほどすすめないかぎり、玄関先であいさつし、御年賀の品を渡して失礼します。もし上がることになっても、1時間弱を目安に帰るようにしましょう。おとそでグテングテンになるまでいるなんて、もってのほかです。御年賀の品の金額は2000〜3000円程度を目安に。品物はおめでたいのりや、お菓子ならカステラなど、日持ちのよいものを選んでください。お正月にはとの家庭でも食べ物が豊富に用意されているものです。保存がきくものや、いくつあっても重宝するようなものを選ぶ心づかいが必要です。上司への訪問ですから、子ともは基本的に連れていかないほうがベター。でもどうしても連れていかなければならない場合は、子ともを見せにいく程度の気持ちで行きましょう。子とも連れで家に上がると、相手にお年玉のことなど要らぬ気を使わせることになります。また、上司に子どもがいれば、こちらもまたお年玉で頭を悩ますことになります。子ども連れならなおさら、玄関先で短時間ですますなどの心づかいが必要ですね。

訪問,おもてなし編(8)
「お電話お借りします」と言うときには、すでに財布を出して持っているという気持ちが大切ですね。そして電話が終わったら、「ここに置いておきますね」とひと声かける、そうすると相手が「気を使わなくていいですよ」と言えは「じゃあお言葉に甘えて」と円滑にすむわけです。黙ってお金を置くのは感心できません。またなにも言わないと「電話を借りても払おうともしなかった」と印象を悪くするだけです。つまり″私は支払います。という意識を持ち、そのポーズを見せることが大切なのです。

訪問,おもてなし編(9)
これは親しさの度合いによって、かなり異なります。親しい人なら「お手伝いするわ」などと気軽に言えますが、あまり親しくないとそんな言葉も簡単に言えません。だからといってなにも申し出ないと「気がきかない人」と思われかねません。また、なかには他人がキッチンに入ることを極端に嫌う人もいますから、お手伝いの申し出もケースパイケースです。こんなふうに人間の気持ちは微妙で難しいものですが、問題はやはり気を使ったひと言が言えるかどうかなのです。しかし、会社員同士の約束ではありませんので、人の家に招かれて時間前に行くというのは考えものです。相手はこの時間なら用意がすんでいると思って指定しますので、その時間ちょうどから5分程度遅く訪ねるのが礼儀でしょう。これは、招いてくれる相手の支度時間を思いやってのことです。

訪問,おもてなし編(10)
嫌いな料理なら「おいしそうな料理ですのに、いまはおなかがいっぱいで食べられません。残念ですわ」という言い方がいちばん無難です。でも出された料理には、これは好きだけどあれは嫌い、というものがありますよね。そういう場合は、「これは体質に合わないんです。皆さんおいしいって言うのに本当に残念です」と残念そうに断りましょう。「これは嫌いです」とはっきり言うのは、用意してくれた相手に対して失礼です。あくまでも″食べたいんですけけど!という姿勢を見せることが大切なのです。よく「ダイエット中なので…」と断る人がいますが、これは感心できません。「ちょっと体調を崩してまして、甘いものは控えております」と言ったほうが相手に対する印象もよくなります。つまり、カラダの調子や体質などのせいにするのが、相手に不快感を与えず、上手に断る方法です。

訪問,おもてなし編(11)
子ども連れは相手にとって迷惑な場合もありますので、最初に「子とも連れですみません」と断るのはもちろん、早めに切り上げ「ご迷惑をかけてすみませんでした」とひと言つけ加えて帰る心づかいが必要です。出かけるときには、子どもがおとなしくしていられるおもちゃや本を持参し、迷惑がかからないように気をつけます。そもそも子ともが飽きるほと長くおじゃましていてはいけません。長くても2時間が目安ですね。そうしないと「今日は大変だったわ」なんて言われるのがオチですから。長居するより、短い時間で何度も訪問するほうが、相手に好印象を与えます。子どもには、人といっしょにいるときは、辛抱することや迷惑をかけないことを覚えさせる、そのためにも短時間ずつならしていけばいいのです。そしてキチンとできたらごほうびを与えるなどのしつけが大切です。

訪問,おもてなし編(12)
まず、日ごろから子ともをキチンとしつけることが大切です。ふだんは食べ散らかしてもなにも言わないのに、人の家に行ったからといって急に怒り出すと、子とものほうが戸惑ってしまいます。子どもは他人の家ということで、気持ちも高ぷっています。子どもをしかる前に、まず相手に 「申し訳ごぎいません」と謝って、食べ散らかしたものを一か所にまとめて置いておくか、相手の方が席をはずしたときを見計らって、ティッシュなどに包んで持って帰るなとの配慮が必要です。相手がいる前で、子どもに 「こんなに散らかして!」と怒りながら片づけると、かえって相手に気を使わせることにもなります。こうした処理はあくまでもさり気なく、できるだけ相手に気を使わせずにすませることが大切なのです。帰り際にはくれぐれも「本当にすみませんでした」 のひと言を忘れずに。

訪問,おもてなし編(13)
相手に「遊びに来てね」と言われて、すぐにおじゃまするのは感心できません。とくに近所の人は、生活にまで入ってくるとだんだん境界線がなくなってくるものです。節度を持ったおつき合いをするためには、まず距離をおくことが大切です。 そして、この人ならばずうっとつき合ってもいいと見極めがつくまでは、あまり深入りしないほうがいいし、「遊びに来てね」という言葉だけで本当に行くのはちょっと考えもの。いい人だと思ったらじつは違ったとか、行ってみたらものを売りつけられたとか、パーティ商法だったなどの場合があるからです。人を警戒するばかりてはいけませんが、家にまで上がってのおつき合いかとうか判断できるまでは慎重に「家に遊びに行くのは「この人はいい人だし気が合うわ」と心から思えてからにしても遅くはないんてす。これは、長くいい関係を保つコツでもあるんですよ。

訪問,おもてなし編(14)
電話は相手が忙しかったり寝ていたりその状況がわかりませんから、逆にご迷惑になる場合があります。本来なら「先日はありがとうございました」と一筆書くべきですね。 電話を差し上げるのは「電車、間に合ったかしら」など、相手に心配をかけたときに限ります、ただ、相手宅を去る前に「ご心配なさらないでくださいね」と気づかう姿勢が必要です。 礼状や電話はしなければいけないものととらえるのではなく、「お世話になったから」という気持ちからする、それが心あるおつき合いなのてす。

訪問,おもてなし編(15)
おしぼりは必ずタオル地のものを使用してください。夏は絞って冷蔵庫や冷凍室にちょっと入れて冷やしておく、冬は絞ったタオルを電子レンジで30秒から1分〈らい温めるとちょうどいい熱さになり、お客様にも喜ばれます。よ〈「紙おしぼりを使ってもいいのでしょうか」という質問がありますが、紙おしぼりとはもともと営業用にできたものなのです。だから一般家庭で出すと、相手によってはぴっくりされたり、手を抜いていると思われます。できれば避けたほうが無難です。おしぼりを出し終わったあと、お茶を出します。 お茶は普通のせん茶がいいですね。 抹茶や玉露の高価なものなどは、かえって相手に居心地の悪さを与えますし、ほうじ茶や玄米茶ではカジュアルすぎます。このとき、お茶だけでも失礼ではありませんが、用意してあれば和菓子などのお菓子もつけたほうがいいでしょう お菓子がケーキでしたら、コーヒーや紅茶でも失礼ではありません。 茶道でもそうですが、お菓子は大きな器に入れて、皆さんに好きなものを好きなだけ食べさせる。本来ならそれが最高のおもてなしなのです。気のおけない複数の友人でしたら、大きな器にお菓子を入れてもワイワイ食べてもらえますが、遠慮する間柄でしたら銘々皿に1人ずつ渡したほうが、お客様も手をつけやすいかもしれませんね。そのときときの親しさの度合いに応じて、判断してください。

訪問,おもてなし編(16)
ケーキを持ってくる人は、「本人が食べたいから」や「好きだからいっしょに食べたい」という理由が多いものです。また、相手のものを先に出さずに、自分の買ったケーキを出すと、「私が買ってきたケーキは、まずくて食べられないってこと?」と不快感を与えてしまいます。相手はあなたが用意していることを知らないのですから、「うちもケーキを買いました」など、あえて言うことはありません。いただいたら、「まぁ、ケーキ」と素直に喜んでお出しするのが、相手に対するマナーです。

訪問,おもてなし編(17)
一般家庭は、料亭ではないのですから、思い切って「そろっていなくて当たり前」という逆転の発想を持つことが大切です。そもそも最近の家庭では、大勢のお客様に対応するほど多くの湯飲みをそろえているところは、少ないはずです、だからと言って悩む必要もないし、また恥ずかしがることもありません、また、無理にこういうものをそろえる必要もまったくないのてす。体裁をつくろおうとして、おそろいの湯飲みで出すことだけを考えて、1個たりないから気になるだけなのてす。 こんなときは、逆にいろいろな種類の湯飲みを出してみることをおすすめします。色も形も違う湯飲みを数個ずつ、極端に言えば、みんなひとりずつ違ったほうがいいのかもしれません。これは相手に対しても、失礼なことではありませんし、それぞれ違う湯飲みのことが話題となって、かえってその場が盛り上がるかもしれませんよ。 欧米のパーティなとでは、同しグラスがたくさんあるため、自分の飲んでいるグラスに印をつけるマーキングかあるくらいです。これを考えると、いろいろな湯飲みを出すほうが、自分の湯飲みがどれなのかすぐわかりますし、2杯目以降を差し上げるときにも「その赤い柄の湯飲みが私のよ」って、相手も自分も一目りょう然じゃないですか。 こうした心あるおもてなしが、一般家庭ならではのもですし、きちんと形がそろったものを楽しみたければ、喫茶店やレストランヘ 出かければいいのです。