セカンドアルバム『アサバディ』制作日記 



2008年

5月11日 東京ロディガーラ(ドホリ)



5月7日にドホリの歌入れがありました。

ドホリ、というのは、ネパールの伝統的な歌のスタイルで、男と女の掛け合いの歌なんです。

ドホリのコンセプトは私が考えて、作曲家の人と構想を練り、メロディーを練り、作詞家の人がさらによい詞を書いてきてくれましたので、なかなかいいドホリが出来ました。

女の子のパートをいっしょに歌っているのは、ネパールのドホリのことで博士論文を書きに来ているアメリカからの留学生アナ・スターさんと言う女性です。彼女はもうドホリのことを何年も研究しているので即興で歌うことも達者です。彼女はステージで歌うことはありますが、レコーディングをして歌うことはまれだそうです。(今回で、2−3回目くらい?)

男の子のパートを歌っているのは「東京ロディガーラ」を作曲をしたサンカルカ・スベディさんというひとと、レコーディングスタジオで働いているスタッフの一人です。本当はネパールの超有名なドホリ歌手に頼もうかと思ったんですが、ギャラが高かったので、急遽変更してスタジオで働いているエンジニアを抜擢して歌ってもらうことにしました。歌うチャンスが出来て彼も喜んでいたし、私も安く済んでよかったです。(笑)


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ネパールに遊びにきた外国人の女の子がネパール人の男の子と恋をする、というストーリーです。「東京ロディガーラ」というのは東京には特に意味はないんですが、ロディガーラというのは、ネパールの習慣で男の子と女の子が出会う場所(建物)のことなんです。日本でも、昔、農村や漁村にそういう習慣があったそうですが、女の子だけ、男の子だけ集まる青年寄り合い所(娘宿、息子宿と呼ばれていたそうです)の若者たちが,たまに気が向くと、夜這いをかけて仲良くなったりするそうです。

「あなたネパール人(外国人)だとは思うけど、名前と民族(国籍)を教えてちょうだいよ。」というのはテゴといって、繰り返し必ずうたうさびみたいなものです。ここが面白ければ曲はヒットします。東京ロディガーラの場合、歌っている女の子はアメリカ人と日本人なので、まさに「一人は確かに外国人だけど、もう一人はどっちだろうか???」と思わせる面白さがあります。ネパール人の男の子ほうも、一人はアーリア顔で、一人はモンゴリアン顔しているので、「一人は確かにネパール人だけど、、、、いや、インド人かも???でもネパール人だったらなに民族かな」と思わせる面白さがあります。

「東京」の部分は、歌う場所や、シチュエーションで換えることも出来ますし、(香港ロディガーラでもいいし、ポカラロディガーラでもいいし、大阪ロディガーラでもいいのです)「ネパール人(外国人)」の部分は、「グルン(マガール、タカリー)」といった、実際の民族を入れてもいいし、「コリアン(アメリカン、チャイニーズ)」という実際の国籍を入れて歌ってもいいし、「独身」とからかってもいいんです。ステージを歌うことになったらもっと楽しいドホリになることでしょう。


アメリカ人(しかもその道の博士論文の研究者)と日本人(ネパール在住9年目の日本人歌手)がネパール人相手にドホリを歌っている〜〜〜!ということに加えて、ネパールを愛するということでは、ネパール人も外国人もない、さらに、民族も国籍も関係ない!ということを訴えることの出来る、実に、ユニバーサルな歌なのです。

ということで、歌詞をご覧ください。


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東京ロディガーラ


女の子; 旅行にネパールに来て、思いがけず素敵な恋人に出会ったわ。東京ロディガーラ! 
あなたネパール人だとは思うけど、名前と民族を教えてちょうだいよ。

男の子:山の上から下まで歩いて探して外国人のあなたに出会えてうれしいなぁ。東京ロディガーラ! 
きみは外国人だとは思うけど、名前と国籍を教えてよ。


女の子;あなたのことがとっても好きになってしまったからここにお嫁に来ようかな、なんて考えてるのよ。
(東京ロディガーラ以下を繰り返し)

男の子;君のその言葉を聞いて嬉しくなりました。あなたならネパールの服を着て暮らせますよ。
(東京ロディガーラ以下を繰り返し)


女の子;美しく平和な、お釈迦様の生まれたこの国で、ネパールの服だって何だって喜んで着ますよ。
(東京ロディガーラ以下を繰り返し)

男の子;(もしそうなったら)背負子をかついで田舎のお祭りに歩いていかないといけませんよ
(東京ロディガーラ以下を繰り返し)

女の子;ネパールのお嫁さんになって畑の仕事をしようかしら
(東京ロディガーラ以下を繰り返し)

男の子;ネパール人も外国人も、愛の名のもとにひとつになりましたね
(東京ロディガーラ以下を繰り返し)

男の子・女の子;あなたを自分のものだと思っていますよ、名前と民族を教えてよ


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ずっと昔から、1曲はドホリを歌いたいと思っていました。
私(外国人)が歌って納得できるようなストーリーがなかったんですが、こういう曲のコンセプトなら、
私のキャラに実にしっくりくるし、苦労した甲斐があるなあ、と終わってみてしみじみしています。


構想3年の末にできたスンダリミカの初ドホリ「東京ロディガーラ」をおたのしみに。