スンダリ音楽資料館 その1

2001年4月1日のライブ演奏曲から
ネパールの楽曲を紹介

1)ネパール現代歌謡曲編
 マクマリ・チョロ / ニストゥリー・マヤルー 
 ジョムソン・バザーロ / ラトラニ
2)ネパールの歌垣・ドホリギート編  
3)ヒマリパリワル〜最新アルバム「ククリ」から〜編  
4)ネオ・ネパーリー、アドニック民謡新作編  

1) ネパール現代歌謡曲編

ネパールにも日本の歌謡シーンと同じようにいわゆる「流行歌」なるものがあります。人気歌手やバンドによって発表される新作歌謡が、毎日、ラジオやカセットテープ屋さんから賑やかに流れてきます。日本のヒットチャートとちがって、1曲の息はとっても長くて、発表されてからのち、何年も人々に愛唱される曲がたくさんあります。4曲ほど、ご紹介しましょう。


1 マクマリ・チョロ

発表されてから30年近くたっているはずなのに、そんなことは微塵も感じられないくらい、今でも親しまれているアドニックギート(現代風にアレンジされたフォークソング)です。
 実は、タカギ君は、この歌のオリジナル歌手であるミラ・ラナ先生から、直々にこの歌を習ったんですね。あのとき彼女は17歳だったとか。15〜16歳の年ごろの村娘が、自分が生まれ育った村や両親のことをとても愛していて、ココを離れて暮らすなんて(お嫁にゆくなんて)考えられないわ、というようなことを歌っています。
 マクマリ・チョロとは、「ベルベットのブラウス」という意味です。ベルベットのブラウスは高価なものの代名詞で、「そういった装飾品は若い私には要らないわ、一番欲しいのは両親の愛情と、この村での生活よ」と歌っているのです。かわいらしい歌です。


2 ニストゥリ・マヤルー

原題の意味は「思い通りにはならない、つれない恋人」って、ところでしょうか。
 田舎の村で小さいときからいつも一緒にいた幼馴染みがカトマンズ(都会)に行ってしまった。今でも私はこんなにあなたのことを好きなのに、あなたはもう帰ってきてくれないのかしら?道のりはそんなに遠くないはずなのに、心はこんなにも遠くに感じられるわ、、、、と苦しい胸の内を歌っています。
 タカギ君がネパールにいた当時で、発表されて2年くらいたつはずなのに、毎日のようにラジオから流れていたもんだから、もう頭にすり込まれてしまった。前出のミラ・ラナ先生が出演したイベントに花を持ってご挨拶に行ったとき、舞台袖でこの曲のオリジナル歌手であるクンティー・モクタン本人とも遭遇し、そのごステージで生歌もきくことができて、「いつかこの歌を私もステージで歌おう」と思ったのでした。


3 ジョムソン・バザーロ

「ジョムソンに12時に風が吹く ああ、我が故郷ポカラ 僕はまだ一人でいるんだよ」という歌い出しのこの曲は、「ネパッチャ」というバンドによって数年前にヒットした、フォークソングテイストを色濃く残した楽曲です。原曲は男性ボーカルですが、4月1日はタカギ君が挑戦。男性3人のバックコーラスが絶妙。


4 ラトラニ

ネパールに行く前から、コンサートでよく歌っていた曲です。「ラリグラスが咲く頃に迎えに行くよ 君がいてくれさえすれば、人生はこんなに楽しいことはない。」と歌うこの歌の主人公は、大都会カトマンズで働く青年。田舎に残してきた彼女をカトマンズに連れていこう、そして花の都カトマンズをあちこち案内してあげよう!と、彼はバイクを飛ばし、九つの谷を越えて?、彼女の住む村まで会いに行くのでした。映画の挿入歌として大ヒットした曲です。

2) ネパールの歌垣・ドホリギート編

ドホリギートとは「掛け合いの歌」のこと。通常は男組と女組に別れての知恵比べ歌合戦の形を取ります。
たとえば、「あなたのように綺麗な人はこの世にはいない〜」と男が歌えば、「あなたのように口がうまい人もこの世にはいないかもね〜」と女が切り返す。ココでへこんでいては男の負け。すかさず「口もうまいが踊りもなかなかさ、どう1曲踊らない〜」と女の手を取るくらいでないと。
 気の利いた歌詞を即興で創作し、決まったメロディーにうまくのせていくわけです。掛け合いがうまく決まれば、会場は爆笑の渦。歌詞のテーマは、恋愛ばかりではなく、世相諷刺などの場合もあります。ネパールではドホリギートの大会も行われます。2001年4月29日に池上会館で行われたコンサートには、大会で何度も優勝した有名なドホリギート・シンガーが、ネパールから来日しました。このコンサートでは、わたしも「シムシメ・パニマ」と「オイナ・ヘレラ」という代表的ドホリソングのメロディーにのせて、ネパール語と日本語で知恵比べ?に挑みました。

3)ヒマリパリワル〜最新アルバム「ククリ」から〜編

ヒマリパリワルとは「ヒマラヤの家族」という意味のネパール語にして、バンドの名前でもあります。バンドのリーダーはタンカ・シェルチャンさん。その昔(1995年頃だったっけ?)タカギ君のステージを見て感動したタンカさんが、タカギ君にファンレターを書いてくれたことから、二人のおつきあいは始まりました。(おつきあいって、音楽家としてのよ。いやねえ〜。(*^_^*))。
 現在。日本には数名のネパール人バンスリ(竹の横笛)奏者がいますが、タンカさんは一番「ネパールらしい笛を吹く人」だとタカギ君は思っています。タンカさんは週末音楽家であり、プロフェッショナルとして、それだけで生計をたてている人ではないけれど、歌や音楽に対する気持ちは、もちろんほかの誰にもひけはとっていない、とタカギ君は思います。

 「ククリ」は、タンカさんが率いる「ヒマリパリワル」が1999年にリリースした、ネパールフォークソングのインストのアルバムです。このアルバムでタンカさんは、素晴らしい新曲を数々発表しています。そのうち1曲に素敵な日本語歌詞がつきました!タンカさんがつけたネパール語の詞とタカギ君がつけた日本語の詞をミックスした「スンダリバンドバージョン・バサンタ」です。「バサンタ」とはネパール語で「春」という意味。甘酸っぱい恋の歌に仕上がりました。
* ミュージック・カセット「ククリ」をご希望の方はご連絡ください。一本500円です。

4)ネオ・ネパーリー、アドニック民謡新作編

……ということで、新作アドニック民謡「バサンタ」の紹介をしてしまったついでに、もうひとつの新作民謡「ドゥンガマ・ジャウン」についても一言。
 ネパール語で「舟で行きましょう」という意味です。これは、タンカさんとタカギ君が初めて二人で作った曲です。ライブの打ち合わせでタンカさんの家に行ったときに、キーボードで簡単なメロディーを作ってもらい、それを膨らませて1曲の歌に仕上げました。マオリフルート(訳せば「蜂笛」。蜂の羽音のような音が出るので蜂笛。バグパイプの音色に似ています。タンカさんは、マウリフルートの数少ない演奏者のひとり)というネパールの楽器があって、この楽器の音が持つ魅力に魅せられたタカギ君が「たゆたうようなゆったりとした歌を作って」とお願いしたことで、この曲が実現しました。

 「ドゥンガマ・ジャウン」の歌詞をご紹介しましょう。

空はすみわたり 風も凪いだから
最後のお茶を飲んだら
もう一度顔をよく見せて

君は君の舟で ボクはボクの舟で
べつべつの河をくだって おなじ海でまた会おう

すぐにきっと会えるから旅の話でまた呑もう
ゆらゆらゆれて流れる キミによく似た満月

空をゆくのではなく レールをゆくのでもなく
人の流れよりゆるやかに
牛の歩みよりかろやかに

君は君の舟で ボクはボクの舟で
べつべつの河をくだって おなじ海でまた会おう

うれしいうわさ聞かせて 風のたよりまた読ませて
朝の窓辺で鳴くのは キミの声で歌う鳥

空は澄みわたり 風も凪いだから
最後のお茶を飲んだら
もう一度顔をよく見せて

君は君の舟で ボクはボクの舟で
べつべつの河をくだって おなじ海でまた会おう
おなじ海でまた会おう
おなじ海でまた会おう

やり方や生きる場所はちがっても、目指すものが同じならば、きっと私たちは、またどこかで出会うことが出来るだろう、という思いを込めて作りました。

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