スンダリ音楽資料館 その2

ネパールで聞ける音楽の種類について


現在ネパール国内で聞くことのできる音楽についてお話ししようと思います。
主に次の4種類があります。

1 フォークソング(もしくはそれをベースにしたアドニックギート)
2 モダンソング
3 ポップソング
4 欧米のロックミュージックなど

 フォークソング  
 いわゆる民謡というものです。ネパールには地方によって、生活習慣もことばも違うたくさんの民族が住んでいて、それぞれに固有の伝統的な音楽があります。だから、旋律やメロディーを聞いただけで、これはグルン族の音楽だ、とか、これはネワール族の音楽だ、などということが分かってしまうのですね。そういった民族に固有の旋律やリズムを継承しつつ、ことば(歌詞)をネパールの共通語である「ネパール語」で表現したものを一般にネパール民謡、と呼んでいるのです。「アドニック」とはネパール語で「現代風の」という意味。私が認識している限りでは、アドニックギートというと、民謡をベースに、ポップにアレンジされた、日本でいうところの「歌謡曲」に当たる音楽だと思います。

 ……ということなので、楽曲として完成されているもの(テープやラジオなどで聞くことができる)と、その原曲とは、厳密には別のものとして考えたほうがよいようです。このことをものの本(学術書)では、「オリジナルソング」と「民謡」とか言って区別してました。なぜなら、曲の節回しやリズムといったものは、使用言語によって左右されるものなので、歌詞がネパール語に統一されてしまった以上、原曲を完全な形で継承することはできないからです。

 ネパール語によるネパール・フォークソングは、国営ラジオ局を通じてネパール全土で聞くことができます。国は、こうしたネパール・フォークソングを通して、地域ごと民族ごとの「ネパールの人々」から、ひとつの「ネパール国民」というアイデンティティを確立しようとしたわけです。こういった政策は「ネパーライゼイション」と呼ばれています。

近年、少数民族の言語規制に反対した抗議運動や、ストライキが盛んになってまいりました。個人的には、この抗議運動そのものには矛盾を感じる点もありますが(裁判所や市役所などの公的な機関で、少数民族の言語による公文書の処理を求めるデモ行進などをやっているのを見たことがあります。公文書くらい共通語であるネパール語で統一するべきだと思うのですが……)民族の言葉・尊厳を守るという運動と、ネパール国民としての意識の統一を図るという政策は、まだまだ平行線をたどりそうです。

2 モダンソング  
 モダンソングとは、一般にインドの映画音楽をまねて作られたものです。シンセサイザーのピコピコした音色と、男女の掛け合いの歌が印象的な音楽です。ことばがネパール語というだけで、素人の耳にはインド映画の挿入歌とどこが違うのかはわかりません。しかし長く聴き続けると、インド映画の音楽とネパール映画の音楽ははっきり違うことが分かります。それは「インド映画の音楽の方が、アレンジや音色を含めて、かなり洗練されている!」ということです。これは音響機材の違いなのでしょうか?それともアレンジャーのセンスの違いなのでしょうか?どうも、その両方のようです。

3 ポップソング 
 日本でいうところの流行歌といったところでしょうか。香港駐在のイギリス軍の傭兵であったグルカ兵がネパールに持ち込んだ欧米のロックミュージックから、独自の発展を遂げたものだといわれています。アドニックギートが民謡の香りが漂う音楽だとしたら、ポップソングは西欧の香りが立ち込めた音楽といったところですかね。最近の若手のバンドマンやプロデューサーらが作る曲は、言葉以外ほとんど洋楽ですね。英語の歌詞をつけたら、ルーツはもう分からなくなるな。

4 欧米のロックミュージックなど 
 こういった国産ものでない音楽は、国営ラジオではほとんど流されないので、もっぱらミュージックテープ屋さんの店頭で買い求めるものでした。しかし!最近ネパールにはFM曲が3つも出来たので、こういった洋楽をエアチェックできる機会がふえましたね。私のお気に入りのFM94は、一日中センスのいい音楽ばかりかかっていて、ここがネパールだということを忘れてしまうくらいです。ちなみに、現在ネパールには海賊版のテープ・CDが氾濫していますんで、ジャンルはロックあり、レゲエあり、ユーロビートあり、ヒップホップありとあらゆるジャンルの音楽を聴くことが出きるようになりました。


 若い人たちは、フォークソングやポップソングを聞くよりは、外国で流行している音楽に興味を示しているみたい。その点は日本とたいして変わりありません。ネパールのポピュラーソングはヒマラヤの秘境の音楽……といった幻想は、この際捨ててしまいましょう。

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